説明

室内用アレルゲン不活化建材

【課題】生活空間で使用可能であって、アレルゲンを不活化することができる室内用アレルゲン不活化建材を提供することを目的とする。
【解決手段】室内用アレルゲン不活化建材11は、建材である例えば石膏部12の内部及び表面に、アレルゲンを不活化する酵素(例えばプロテアーゼなど)及びタンパク質変性剤(例えば尿素など)が含まれてなり、住室内環境内で壁面に付着しやすいアレルゲンなどのオンサイト分解が実現し、アレルギー症状の軽減ならびに、アレルギー発症予防に効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内構成建材に関し、詳しくは生活空間におけるアレルゲンを不活化し、アレルギーの発生を抑制することに寄与する、天井材、石膏ボード、壁用材などの室内用アレルゲン不活化建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アレルギー問題がクローズアップされている。アレルゲンとしてはスギ花粉が有名であるが、住宅の高気密化など、最近の住宅事情により、ダニなどの害虫およびその排泄物などによるアレルギーも深刻化している。具体的には、住居内性ダニ類、特に室内塵中に多いチリダニのアレルゲン(Der1、Der2)や、主に春季に猛威を振るうスギ花粉アレルゲン(Crij1、Crij2)等の多くのアレルゲンが生活空間内に存在する。
【0003】
このようなアレルギー対策として、従来から、種々の製品、例えば掃除機やモップなどのハウスダストをまとめて処理する掃除用具などが世に送り出されている。また、一般的に行われているアレルギーから身を守る方法、即ち、アレルゲンを排除する方法としては以下のようなものがある。例えば、スギに代表される花粉の場合には、外出時に着用するマスクに花粉を通過させないような細かいメッシュを入れることによって体内に花粉が取り込まれないようにする方法が、また屋内では集塵機に代表される装置によってそれらを捕獲する方法などが行われている。しかしながら、集塵機などによって居住空間に存在する花粉を積極的に排除したとしても、それは空気中浮遊物質の一部として花粉が捕獲されるに過ぎない。従って、このような方法単独では十分なアレルゲンの除去は困難である。
【0004】
一方、ダニなどに代表される害虫由来のアレルゲンの場合、寝具やソファ、並びに畳や床などの清掃をこまめに行うことで害虫の存在量を減らし、それによってアレルゲン量を軽減させているのが現状である。しかしながら、このような方法では、一時的にアレルゲンの量は減少するものの、害虫が繁殖すればアレルゲン量も増加してしまう。従って、アレルゲン量を十分に低い値で維持するためには相当な人力が必要とされる。また、薬品を用いて害虫駆除を行うことも可能であるが、人体に影響のない安全な範囲での使用に限られるため、十分に駆除しきれない場合もある。
【0005】
例えば、カビや細菌、臭い物質などの増殖を防ぐことを目的とした建築素材としては、以下のような提案がある。
1)活性炭(竹炭などの一般炭も含む)や珪藻土、ゼオライトなどの素材を建築素材に練りこむことで、有害物の物理吸着を狙うような提案がある(特許文献1、特許文献2)。
2)例えば光触媒などの高機能触媒を建築材料表面処理に用いるような提案がある(特許文献3、特許文献4)。
3)例えば抗菌性薬剤(フェノール類のトリハロゲン化合物を含む各種化合物、金属化合物)などを練りこんだ建築素材の提案がある(特許文献5、特許文献6、特許文献7)。
また、アレルゲンを不活化する目的で建築材料中にジルコニウムなどの不活化剤を含有させることが知られている(例えば特許文献8)。
【0006】
【特許文献1】特開2004−244227号公報
【特許文献2】特開2004−285716号公報
【特許文献3】再公表99/051327号公報
【特許文献4】特開2003−192427号公報
【特許文献5】特開2000−001380号公報
【特許文献6】特開平10−017351号公報
【特許文献7】再公表99/051327号公報
【特許文献8】特開2001−212806号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、活性炭などの物理吸着法は、吸着できるアレルゲン量に限界がある、という問題がある。
また、光触媒利用なども効果があると考えられるが、触媒能力の再生には紫外線や、太陽光などの照射(数時間)必須であり、特に室内向け住居用建材として応用することには限界がある。
さらに、菌、カビの増殖に効果がある抗菌性薬剤・化合物に関しては、人体に対する影響は皆無とはいえず、化学物質過敏症の居住空間に用いることは適切ではないという問題がある。
【0008】
上記のようなアレルゲンは、タンパク質(またはポリペプチド)である。したがって、アレルゲンを不活性化させる方法として、タンパク質を変性させる要因、例えば、熱、酸またはアルカリ等を用いてアレルゲンを変性させることが考えられる。この方法も一定の成果は上げることができる。しかし、実際は、ダニや花粉に起因するアレルゲンには非常に安定性の高いものがあり、生活空間で安全に使用できる程度の熱、酸またはアルカリなどでは容易に分解されない場合もあった。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、生活空間で使用可能であって、アレルゲンを不活化することができる室内用アレルゲン不活化建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し目的を達成するために、本発明においては、壁や天井等に備える例えば石膏等の建材に、アレルゲンを不活化する酵素およびタンパク質変性剤を含む。壁や天井等の室内内面にアレルゲンを不活化させる酵素およびタンパク質変性剤を含むことにより、アレルギーの発生を抑制できる室内環境を提供することができる。本発明は、かかる着想に基づくものであり、下記の建材を提供するものである。
【0011】
第1の発明は、建材内部又はその表面に、アレルゲンを不活化する酵素及びタンパク質変性剤が含まれてなることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材にある。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、建材の表面に疎水層が形成されてなり、該疎水層の表面に、石膏部内にアレルゲンを不活化する酵素及びタンパク質変性剤を含むアレルゲン不活性層を有することを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材にある。
【0013】
第3の発明は、第1の発明において、前記酵素及びタンパク質変性剤を含む繊維が建材内に練り込まれていることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材にある。
【0014】
第4の発明は、第1の発明において、前記建材が天井材、石膏ボード、壁用材のいずれかであることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材にある。
【0015】
第5の発明は、第1乃至4のいずれか一つの発明において、前記酵素がプロテアーゼであることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材にある。
【0016】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記タンパク質変性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、3,5−ジドデシル硫酸リチウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンドデシルサルフェート、コール酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、セチルジメチルエチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニド]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルフォネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニド]−1−プロパンスルフォネート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよび尿素からなる群より選択されることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材にある。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アレルゲンを不活化し、アレルギーの発生を抑制した室内環境を提供することができる。
【0018】
特に、住室内環境内で壁面に付着いやすいアレルゲンなどのオンサイト分解が実現し、アレルギー症状の軽減ならびに、アレルギー発症予防に効果ある。また、アレルギーのみならず、細菌やカビの増殖抑制や、ウイルスなどの不活化にも効果があり、これらが原因となる疾病予防に効果がある。さらに、シロアリなどの有害虫の成育にも効果が期待でき、住宅の長寿命化が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0020】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態について図1を参照して説明する。図1は、室内用アレルゲン不活化建材の断面図である。
図1に示すように、第1の実施形態として示す室内用アレルゲン不活化建材11は、建材である例えば石膏部12の内部及び表面に、アレルゲンを不活化する酵素及びタンパク質変性剤が含まれてなるものである。
ここで、建材とは、石膏等の壁材以外に、天井材、壁用材のいずれかである。また、石膏ボード以外には、例えばセメント、目地、コンクリート、窯業系無機質板、または、それらの複合体を挙げることができる。ここで、前記窯業系無機質板とは、繊維強化セメント板、珪酸カルシウム板、スレート板、パーライトセメント板、軽量起泡コンクリート(ALC)、ガラス繊維強化コンクリート(GRC)、窯業系サイディング等であり、特に限定されるものではない。また、建材の施工は、下地に塗布又は噴霧等の公知の方法により行うようにすればよい。
【0021】
ここで、石膏とは安定した二水化物CaSO42H2O状態の硫酸カルシウムを意味し、天然に得られるミネラル、合成により得られる等価物及び硫酸カルシウム半水化物(スタッコ)あるいは無水物の水和により形成される二水化物材料を含む。ここで使用する用語「硫酸カルシウム材料」は任意の形態の硫酸カルシウム、即ち硫酸カルシウム無水物、硫酸カルシウム半水化物、硫酸カルシウム二水化物、及びその混合物を意味する。
【0022】
アレルゲンは酵素13またはタンパク質変性剤14のいずれか一方によっても不活化し得る。しかし、近年特に問題化しているダニに起因するアレルゲンは安定性が高く、いずれか一方では不活化しにくい場合がある。本発明では、酵素およびタンパク質変性剤を併存させることにより、アレルゲンの不活化する作用をより強化している。酵素もタンパク質でありタンパク質変性剤によって変性し得るものである。しかし、下記に示すように変性しにくい酵素を用いることにより、長期間共存させることは可能である。
【0023】
酵素および/またはタンパク質変性剤とアレルゲンが接触することにより、アレルゲンが不活化される。
【0024】
ここで、前記アレルゲンを不活化する酵素としては好ましくはプロテアーゼが例示される。プロテアーゼとはペプチド結合を分解する性質を有する酵素である。プロテアーゼは酸性、中性、塩基性の何れであってもよい。好ましいプロテアーゼとしては、例えば、トリプシンなどのセリンプロテアーゼ;パパイン、カルパイン、カテプシンBおよびカテプシンLなどのシステインプロテアーゼ;ペプシン、レニンおよびカテプシンDなどのアスパラギン酸プロテアーゼ;並びにメタロプロテアーゼなどが例示される。また、本発明で用いられるプロテアーゼは、耐熱性が高く、またドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤や尿素などに対する耐久性が高いものがより好適である。具体的には、pfu protease S(タカラバイオ社製)などが市販の好適な酵素として入手可能である。
【0025】
前記タンパク質変性剤としては、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、3,5−ジドデシル硫酸リチウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンドデシルサルフェート、コール酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、セチルジメチルエチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニド]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルフォネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニド]−1−プロパンスルフォネート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよび尿素からなる群より選択される1種または2種以上が用いられ、好ましくはドデシル硫酸ナトリウムおよび/または尿素が用いられる。
【0026】
前記石膏部12等の建材中の酵素およびタンパク質変性剤の含有量は適宜調整してよいが、好ましい範囲を示すと、石膏等の建材中の酵素量は、0.4〜400U/g石膏、好ましくは4〜20U/g石膏とするのが好ましい。
【0027】
酵素濃度は、4U/g石膏の酵素濃度があれば、乾燥石膏上ではダニアレルゲンは十分に分解される。しかし、ダニアレルゲン量がどれくらいあるかによって、必要酵素濃度は変動するので、適宜調整するようにすればよい。
【0028】
また、酵素自体の不活化(経年劣化)も考えられるの、経年劣化を考慮する必要もある。
さらに、一般家庭におけるダニアレルゲンの存在量は大きく変動する(例えば、DerIIで2.1〜32.0μg/g fine dust、Sakaguchi et al. J Allergy clin immunol, 1993より)。
ここで、ダニ抽出物(ダニアレルゲン)16μlは、分解されない場合では、抽出段階で26.67μl/mlとなる。このときのダニスキャン(商品名、DaniScan、アサヒフード&ヘルスケア社より販売)での測定ではおおよそ45μg/g dustとなる。
よって、適用したダニ抽出物の添加量(16μl)は、一般家庭における最大ダニ汚染量とほぼ匹敵するものと考えられる。
【0029】
後述する実施例に示すように、乾燥石膏では、25℃(室温)で、1時間でほぼ全てのダニアレルゲンが分解していることが確認されており、前記文献におけるSakaguchiらの調査結果で得られた一般家庭のダニ汚染は、4U/g石膏の酵素濃度で対応できるものと考えられる。但し、前記文献の試験結果が一般の家庭におけるダニ汚染量そのものを代表する数値であるとは限定できるものではないことから、おおよそ100のダニ汚染量までをカバーする必要があるからである。また、必要最低量としては1/10程度の酵素濃度でも対応できる可能性がある。
【0030】
よって、石膏等の建材中の酵素量は、0.4〜400U/g石膏、好ましくは4〜20U/g石膏とするのが好ましいこととなる。
【0031】
また、酵素の至適pHについては、通常のアルカリ性の石膏と混合する場合には、特には限定されるものではないが、一般にpH10程度までは酵素活性が低下しないので、上限をpH10とすればよい。
【0032】
アレルゲン不活化溶液には、アレルゲン不活化の有効性を阻害しない範囲で、必要に応じて、pH調整剤、界面活性剤、増粘剤、乳化剤、水溶媒、着色剤、マスキング剤、消臭剤、可塑剤、帯電防止剤、殺菌剤、防カビ剤、害虫忌避剤、噴射剤、分散剤などの他の添加物を配合してもよい。
【0033】
前記室内用アレルゲン不活化建材11、例えば室内の壁、天井などを構成する建築材料として好適である。室内用アレルゲン不活化建材11は必要に応じて室内全面または一部に設けてよい。室内内面の一部に設置する場合には、アレルゲンの付着・集積しやすい場所に設けることが好ましい。例えば、室内に入ってきた外気がぶつかる場所、室内で空気が対流する箇所、ダニ、ノミなどが集まりやすい場所、あるいは、犬・猫などのペットの飼育場所およびこれらの周辺などが挙げられる。
【0034】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態について図2を参照して説明する。図2は、室内用アレルゲン不活化建材の断面図である。
図2に示すように、第2の実施形態として示す室内用アレルゲン不活化建材11は、アレルゲンを不活化する酵素及びタンパク質変性剤を含む繊維15が練り込まれてなるものである。
前記繊維としては、例えば綿や羊毛などの天然繊維,レーヨンや酢酸セルロースなどの再生繊維,ポリエチレンやポリエチレンテレフタレートやポリアミドなどの合成繊維の不織布または編織物、ガラス繊維、金属繊維等を挙げることができ、これらの繊維に固定して、酵素及びタンパク質変性剤を含むようにすればよい。
また、繊維が混入した例えば石膏ボード等は耐久性が向上し、アレルゲン不活化と併用効果を奏するものとなる。
【0035】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態について図3を参照して説明する。図3は、室内用アレルゲン不活化建材の断面図である。
図3に示すように、第3の実施形態として示す室内用アレルゲン不活化建材11は、下地部21に、第1の実施形態にアレルゲンを不活化する酵素及びタンパク質変性剤を含む繊維が練り込まれてなる石膏部12を含んでなるアレルゲン不活性層20を有するものである。この下地は、建築用の下地であれば特に限定されるものではない。また、アレルゲン不活性層20の表面に壁紙22を貼付けたものである。壁紙の細孔を通してアレルゲンが侵入した場合に、アレルゲン不活性層20によって不活化するようにしている。
【0036】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態について図4を参照して説明する。図4は、室内用アレルゲン不活化建材の断面図である。
図4に示すように、第4の実施形態として示す室内用アレルゲン不活化建材11は、例えば石膏からなる下地部21とアレルゲン不活性層20との間に、疎水層23を有するものである。この疎水層23は石膏等の表面の剥離を防止するものであり、例えば界面活性剤を含む水分保持層や、保水性を有する不溶性部材を挙げることができる。この不溶性部材としては、例えば、発泡ウレタン樹脂、繊維集合体などを板状に形成したものを用いることができる。また、アレルゲン不活性層20は不溶性部材を湿らす程度に保持させることが好ましいので、この疎水層23から水分を補給して、適度に酵素及びタンパク質変性剤をしみ出させることができ、アレルゲンとの接触の機会を向上させるようにすることもできる。
【実施例1】
【0037】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
<湿潤石膏でのアレルゲン不活化試験>
先ず、0.1gのCaSO4・2H20(和光純薬製、以下石膏と略)を1.5mlのディスポチューブに小分けする。
上記に、10Mの尿素を含むPBSを80μlと、酵素液(pfu protease S、タカラバイオ製)4μlを加え良く混ぜ、湿潤状態の石膏を作成した(酵素濃度:4U/g石膏)。以降では、これを湿潤石膏と称す。
湿潤石膏に16μlのダニ抽出物(ダニアレルゲンとして使用、コスモバイオ製)を加え、インキュベーションした。なお、適用するダニ抽出物の添加量(16μl)は、一般家庭における最大ダニ汚染量とほぼ匹敵するものとした。
抽出緩衝液(PBSに0.2%Tween20、0.2%BSA、0.05%NaN3、4mMのPMSF)を加えたもの)500μlを、インキュベーション終了後のサンプルに添加した。氷中にてマイルドに攪拌し、ダニアレルゲンを抽出。遠心機にかけて上清を回収し、ダニアレルゲン定量試験に用いた。
【0038】
ダニアレルゲンはダニスキャン(商品名、DaniScan、アサヒフード&ヘルスケア社より販売)にて定量した。
【0039】
不活化率は以下の式で算出した。
不活化率(%)=(1−インキュベーション後のダニアレルゲン量/インキュベーション前のダニアレルゲン量)×100
【0040】
その結果を、図5に示す。
図5には、△:45℃、○:35℃、●:25℃の各インキュベーション条件での、アレルゲン不活化率の経時変化を示したものである。図中のプロットにおけるバーは標準偏差を示す(n=3)。
【0041】
本試験により湿潤状態での石膏において、室温でもダニアレルゲンは不活化されることが明らかとなった。更に、加熱器などを用いて温度をかければアレルゲン不活化はより高性能化できる。室内環境で最も頑強なアレルゲンであるダニアレルゲンが不活化を確認できたことにより、より弱い(アレルゲンやタンパク質としての生化学的安定性)花粉などのアレルゲン不活化にも対応できることが推定される。
【実施例2】
【0042】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
<乾燥石膏でのアレルゲン不活化試験>
0.1gのCaSO4・2H20(和光純薬製、以下石膏と略)を1.5mlのディスポチューブに小分けした。上記に、10Mの尿素を含むPBSを80μlと、酵素液(pfu protease S、タカラバイオ製)4μlを加え良く混ぜ、湿潤状態の石膏を作成した(酵素濃度:4U/g石膏)。
これをガラスプレート(顕微鏡用スライドグラス)に2cm2となるよう塗布する。湿潤石膏を塗布したスライドグラスは真空乾燥機にて1時間、室温で乾燥させた。この乾燥したものを乾燥石膏と称する。
【0043】
乾燥石膏に16μlのダニ抽出物(ダニアレルゲンとして使用、コスモバイオ製)を加え、インキュベーションした。インキュベーション終了後、速やかに1.5mlのディスポチューブに乾燥石膏を回収した。
抽出緩衝液(PBSに0.2%Tween20、0.2%BSA、0.05%NaN3、4mMのPMSF)を加えたもの)500μlを、incubation終了後のサンプルに添加。氷中にてマイルドに攪拌し、ダニアレルゲンを抽出。遠心機にかけて上清を回収し、ダニアレルゲン定量試験に用いた。
ダニアレルゲンはダニスキャンにて定量した。
【0044】
その結果を、図6に示す。
図6には、△:45℃、○:35℃、●:25℃の各インキュベーション条件での、アレルゲン不活化率の経時変化を示したものである。
【0045】
本試験により乾燥状態での石膏において、室温でもダニアレルゲンは不活化されることが明らかとなった。更に、加熱器などを用いて温度をかければアレルゲン不活化はより高性能化できる。室内環境で最も頑強なアレルゲンであるダニアレルゲンが不活化を確認できたことにより、より弱い(アレルゲンやタンパク質としての生化学的安定性)花粉などのアレルゲン不活化にも対応できることが推定される。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は建材、特に住宅など居住空間を構成するための建材として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態材の室内用アレルゲン不活化建材の断面図である。
【図2】第2の実施形態材の室内用アレルゲン不活化建材の断面図である。
【図3】第3の実施形態材の室内用アレルゲン不活化建材の断面図である。
【図4】第4の実施形態材の室内用アレルゲン不活化建材の断面図である。
【図5】湿潤状態での石膏インキュベーション温度ごとのアレルゲン不活化率経時変化を示す図である。
【図6】乾燥状態での石膏インキュベーション温度ごとのアレルゲン不活化率経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
11 アレルゲン不活化建材
12 石膏部
13 酵素
14 タンパク質変性剤
15 繊維
20 アレルゲン不活性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建材内部又はその表面に、アレルゲンを不活化する酵素及びタンパク質変性剤が含まれてなることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材。
【請求項2】
請求項1において、
建材の表面に疎水層が形成されてなり、該疎水層の表面に、石膏部内にアレルゲンを不活化する酵素及びタンパク質変性剤を含むアレルゲン不活性層を有することを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材。
【請求項3】
請求項1において、
前記酵素及びタンパク質変性剤を含む繊維が建材内に練り込まれていることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材。
【請求項4】
請求項1において、
前記建材が天井材、石膏ボード、壁用材のいずれかであることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一つにおいて、
前記酵素がプロテアーゼであることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記タンパク質変性剤が、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸リチウム、3,5−ジドデシル硫酸リチウム、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンドデシルサルフェート、コール酸ナトリウム、N−ラウロイルサルコシン、N−ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、セチルジメチルエチルアンモニウムブロミド、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニド]−2−ヒドロキシ−1−プロパンスルフォネート、3−[(3−コールアミドプロピル)ジメチルアンモニド]−1−プロパンスルフォネート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルおよび尿素からなる群より選択されることを特徴とする室内用アレルゲン不活化建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−183235(P2006−183235A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−374508(P2004−374508)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】