説明

室内空気由来細胞外ベシクルを含む組成物及びその用途

【課題】室内空気由来細胞外ベシクルを含む組成物などの提供。
【解決手段】本発明は、前記細胞外ベシクルを用いて炎症性呼吸器疾患及び肺癌などを診断、予防、及び/又は治療する方法を提供する。具体的に、本発明は、室内空気に存在する細胞外ベシクルを動物に投与して呼吸器疾患動物モデルを製造し、前記動物モデルを用いて呼吸器疾患に対する予防及び治療候補薬物の検索及び/又は発掘を可能とし、呼吸器疾患に対する予防及び/又は治療用ワクチン、呼吸器疾患の原因物質を診断する方法、呼吸器疾患の発生及び悪化を予防するための目的で室温空気中の細胞外ベシクルの活性を抑制し或いは細胞外ベシクルを除去する方法などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空気由来細胞外ベシクルを含む組成物、並びに前記細胞外ベシクルを用いて炎症性呼吸器疾患などを診断、予防、及び/又は治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
室内空気の質(indoor air quality)は、建築物(buildings)を含む構造物(structures)の内部と周辺空気の質(air quality)を意味し、特に、居住者又は棲息者の健康及び安楽な生活に関連している。室内空気には、身体に有害な気体、微細粉塵、細菌、カビなどが汚染している。有害な気体としてはベンゼン、ホルムアルデヒド、ペンタクロロベンゼン、酢酸ブチル、トルエンキシレン、スチレンなどの揮発性有機化合物(volatile organic chemicals、VOC)、ラドンなどが知られている。生物学的汚染物質(biological contaminants)には細菌、カビ、ウイルス、イエダニ、ゴギブリ、動物のフケ、唾液、花粉などが含まれる。特に、イエダニ、カビ、ペット(pet)、ゴキブリ(cockroach)、細菌などから分泌される物質のサイズがマイクロメートル又はそれ以下の場合、吸入されて免疫反応を誘導して炎症性呼吸器疾患を引き起こす。
【0003】
室内空気にはヒト、ペット、イエダニ、ゴキブリなどを含む様々な生命体の皮膚、胃腸管、呼吸器系などに生息している多種の細菌及びカビと共に、建築物を含む構造物の内部と周辺に生息する或いは流入した多様な種類の細菌及びカビが存在する。
【0004】
室内空気に生息すると知られている細菌としては、バシラス(Bacillus sp.)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)、ストレプトミセテス(Streptomycetes)、コリネバクテリアセエ(Corynebacteriaceae)、大腸菌(Eshcerichia coli)などが含まれる。
【0005】
また、前記室内空気に存在する多様な細菌又はこれらに由来する内毒素(lipopolysaccharide、LPS)やペプチドグリカン(peptidoglycan)などによって免疫細胞及び肺表皮細胞で炎症性サイトカインの生成が誘導されることが知られている。
【0006】
一方、グラム陰性細菌は、常に外部へ細胞外ベシクル(outer membrane vesicles)を分泌し、グラム陰性細菌から分泌される細胞外ベシクルは、球状のリン脂質二重層からなっており、20〜200nmのサイズを有する。前記細胞外ベシクルは、LPSだけでなく、宿主の炎症反応を調節することが可能な外膜タンパク質(outer membrane protein)を持っている。最近、本発明者らは、グラム陽性細菌が外部に細胞外ベシクルを分泌し、プロテオーム分析を介して、ベシクル内には炎症を誘導するタンパク質が含まれていることを報告したことがある。
【0007】
炎症性呼吸器疾患は、上気道に発生する鼻炎及び副鼻腔炎、下気道に発生する喘息及び気管支炎、小気道に発生する細気管支炎、肺実質に発生する肺気腫、肺炎などに大別することができる。臨床的に気道閉塞をもたらす疾患として、可逆的な気道閉塞を特徴とする喘息と、非可逆的気道閉塞を特徴とする慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)に分類することができる。慢性閉塞性肺疾患の原因疾患として、慢性閉塞性気管支炎、慢性閉塞性細気管支炎、肺気腫などが含まれる。喘息の原因物質に関連して、室内空気中に存在するタンパク質(アレルゲン)が重要であると知られており、慢性閉塞性肺疾患の原因に関連して、喫煙などの刺激性因子が重要であると知られている。
【0008】
喘息と慢性閉塞性肺疾患の発生における炎症の重要性は既に報告されているが、炎症の様相が異なると知られている。喘息の場合は好酸球性炎症が、慢性閉塞性疾患の場合は非好酸球性又は好中球性炎症が重要であると知られている。ところが、重症喘息患者にはむしろ好中球性炎症が重要であり、特に非可逆的気道閉塞を伴う喘息患者には好中球性炎症が重要であると報告されている。特に、慢性的な肺炎症の発生においては、気道及び肺実質に発生する免疫機能の異常が重要であると知られている。本発明者らは、好酸球性炎症の発生にはTh2免疫反応が、好中球性炎症の発生にはTh1及びTh17免疫反応が重要であることを報告したことがある。
【0009】
また、炎症が癌を引き起こすという事実は前々から提起されていた。最近では、腸内に生息する細菌に由来する毒素に対するTh17免疫反応によって大腸癌が発生すると報告されており、胃に共生すると知られているヘリコバクターピロリ(Helicobacter pylori)によって慢性胃炎だけでなく胃癌も発生すると知られている。慢性閉塞性肺疾患と肺癌の病因に関連して、同一の原因因子により発生する疾病群であるという仮説が提起されているが、最近、臨床研究では吸煙と関係なく慢性閉塞性肺疾患自体が肺癌発生の重要な危険因子であるという事実がこれを裏付ける。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、室内空気には各種細菌などから分泌される細胞外ベシクルが存在し、前記細胞外ベシクルが哺乳動物に吸収されるときに炎症性呼吸器疾患を引き起こすという事実を見出すことにより、これに基づいて本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、室内空気に存在する細胞外ベシクルを含む組成物、及び前記細胞外ベシクルを用いて炎症性呼吸器疾患などを診断、予防、及び/又は治療する方法などを提供しようとする。
【0012】
具体的に、本発明は、室内空気に存在する細胞外ベシクルを動物に投与して呼吸器疾患動物モデルを製造し、前記動物モデルを用いて呼吸器疾患に対する予防又は治療候補薬物をスクリーニングする方法などを提供しようとする。また、本発明は、呼吸器疾患に対する予防用又は治療用ワクチン、呼吸器疾患の原因物質を診断する方法、呼吸器疾患の発生及び悪化を予防するための目的で室内空気中の細胞外ベシクルの活性を抑制し或いは前記細胞外ベシクルを除去する方法、室内空気中の細胞外ベシクルの濃度を測定し、呼吸器疾患の発生に関連した室内空気の質を評価する方法などを提供しようとする。
【0013】
ところが、本発明が解決しようとする技術的課題は上述した課題に制限されず、上述していない他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一側面は、室内空気由来細胞外ベシクルを含む組成物を提供する。
【0015】
前記本発明の一具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペットの分泌物、ヒトのフケ、花粉などに由来することができるが、これに限定されるものではない。
【0016】
前記本発明の他の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは室内空気に存在する細菌から分泌でき、前記細菌は室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペットの分泌物、植物、ヒトのフケで生息する細菌であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0017】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、2種以上の細菌から分泌された細胞外ベシクルの混合物であってもよい。
【0018】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細菌はスタフィロコッカス(Staphylococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセテス(Streptomycetes)、及びコリネバクテリウム(Corinebacterium)を含む。
【0019】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細菌は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、ミクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)、及び大腸菌(Escherichia coli)を含む。
【0020】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、室内空気に存在するカビから分泌されるものを含む。前記カビから分泌される細胞外ベシクルは、室内粉塵に生息するカビから分泌されるものであってもよい。
【0021】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細菌又はカビ由来細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から分離したものであってもよく、前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から自然に分泌されるもの及び人工的に分泌されるものを含む。
【0022】
本発明の別の側面は、室内空気由来細胞外ベシクルを動物に投与して製造された疾病モデルを提供する。
【0023】
前記本発明の細胞外ベシクルは前述と同じである。
【0024】
前記本発明の一具現例によれば、前記動物モデルはマウスであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0025】
前記本発明の疾病は鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、気管支炎、慢性閉塞性肺疾患、細気管支炎、肺炎、及び肺癌などを含む。
【0026】
前記本発明の投与は鼻腔投与、口腔投与、及び気管(trachea)投与を含む。
【0027】
本発明の別の側面は、室内空気由来細胞外ベシクルを用いて疾病予防又は治療候補薬物を探索する方法を提供する。
【0028】
前記本発明の細胞外ベシクルは前述と同じである。
【0029】
前記本発明の疾病は、室内空気に存在する細胞外ベシクルにより発生又は悪化する、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、気管支炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、細気管支炎、肺炎、及び肺癌などを含む。
【0030】
前記本発明の一具現例によれば、前記探索方法は、前記本発明の動物疾病モデルに候補薬物を投与することを特徴とする。
【0031】
前記本発明の他の具現例によれば、前記探索方法は、室内空気由来細胞外ベシクルを体外で細胞に処理するときに候補薬物を処理することを特徴とする。前記細胞は炎症細胞、上皮細胞、及び線維芽細胞などを含む。
【0032】
前記本発明の別の具現例によれば、前記探索方法は、室内空気に存在する細胞外ベシクルと共に候補薬物を投与した後、炎症関連媒介体の水準を測定するものであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
本発明の別の側面は、疾病を予防又は治療するために室内空気由来細胞外ベシクルを含むワクチンを提供する。
【0034】
前記本発明の細胞外ベシクルは前述と同じである。
【0035】
前記本発明の疾病は、室内空気に存在する細胞外ベシクルによる鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、肺癌などを含む。
【0036】
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病は、室内空気に存在する細菌又はカビによる副鼻腔炎、気管支拡張症、肺炎などを含む。
【0037】
前記本発明の他の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で形質転換された細菌又はカビに由来するものを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0038】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、効能を増加させるか副作用を減少させるために化学物質が処理された細菌又はカビに由来するものを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0039】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で化学物質が処理されたものを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0040】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明の別の側面は、室内空気由来細胞外ベシクルを含む感染予防又は治療用ワクチンを提供する。
【0042】
前記本発明の細胞外ベシクルは前述と同じである。
【0043】
前記本発明の感染は、室内空気に存在する細菌又はカビによる感染を含み、例えば、病院の室内空気に存在する細菌又はカビによる感染を挙げることができる。
【0044】
前記本発明の一具現例によれば、前記感染は、細菌又はカビによる副鼻腔炎、気管支炎、気管支拡張症、肺炎及び敗血症などを含む。
【0045】
前記本発明の他の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で形質転換された細菌又はカビに由来するものを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、効能を増加させるか副作用を減少させるために化学物質が処理された細菌又はカビに由来するものを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、効能を増加させるか副作用を減少させるために化学物質が処理されたものを使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0048】
前記本発明の別の具現例によれば、前記細胞外ベシクルは、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用することができるが、これに限定されるものではない。
【0049】
本発明の別の側面は、室内空気由来細胞外ベシクルを用いて、前記細胞外ベシクルによる疾病の発生又は悪化に関連した原因因子を診断する方法を提供する。
【0050】
本発明の別の側面は、室内空気由来細胞外ベシクルを用いて、室内空気に存在する細菌又はカビによる感染の発生又は悪化に関連した原因因子を診断する方法を提供する。
【0051】
前記本発明の細胞外ベシクルは前述と同じである。
【0052】
前記本発明の細胞外ベシクルによる疾病は、室内空気に存在する細胞外ベシクルによる 鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、及び肺癌などを含む。
【0053】
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病は、室内空気に存在する細菌又はカビによる 副鼻腔炎、気管支拡張症、及び肺炎などを含む。
【0054】
前記細菌又はカビによる感染は、副鼻腔炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎、及び敗血症などを含む。
【0055】
前記本発明の別の具現例によれば、前記診断方法は、室内空気に存在する細胞外ベシクルに含まれた遺伝物質の塩基配列を分析することであってもよいが、これに限定されるものではない。前記遺伝物質は16S rRNAであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0056】
前記本発明の別の具現例によれば、前記診断方法は、室内空気に存在する細胞外ベシクルに含まれたタンパク質を測定することであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0057】
前記本発明の別の具現例によれば、前記診断方法は、室内空気に存在する細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することであってもよいが、これに限定されるものではない。前記免疫反応の測定は、室内空気に存在する細胞外ベシクルに対する抗体を測定することであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記本発明の診断は室内粉塵を用いて行われてもよい。また、前記診断は、喀痰に由来する試料、胸水に由来する試料、鼻水に由来する試料、小便に由来する試料、及び血液に由来する試料などを用いて行われてもよい。
【0059】
本発明の別の側面は、疾病の発生及び悪化を予防する目的で室内空気中の細胞外ベシクルの活性を抑制し或いは前記細胞外ベシクルを除去する方法を提供する。
【0060】
前記本発明の疾病は、室内空気に存在する細胞外ベシクルによる鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、及び肺癌などを含む。
【0061】
前記細胞外ベシクルの活性の除去は、細胞外ベシクルに熱を処理し、或いは細胞外ベシクルに特異的に作用する化学物質を処理して行われてもよいが、これに限定されるものではない。前記化学物質は、細胞外ベシクル内のタンパク質、LPS(lipopolysaccharide)、ペプチドグリカンの活性を抑制する物質などを含み、前記LPS活性抑制化学物質はポリミキシンB(polymyxin B)であってもよい。
【0062】
前記本発明の一具現例として、前記細胞外ベシクルの活性を除去する装置を用いることができる。前記装置は、前記細胞外ベシクルに熱を処理し、或いは細胞外ベシクルに特異的に作用する化学物質を処理する方法などを用いることができるが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記本発明の他の具現例として、前記細胞外ベシクルを除去する装置を用いてもよい。前記装置は、微細フィルターを含むことができ、10nm〜200nmの孔径(pore size)を有してもよいが、これに限定されるものではない。
【0064】
本発明の別の側面は、呼吸器疾患の発生又は悪化に関連した室内空気の質を評価する方法であって、室内空気中の細胞外ベシクルの濃度を測定することを特徴とする方法を提供する。
【0065】
前記本発明の一具現例として、前記細胞外ベシクルの濃度測定は、細胞外ベシクルの遺伝物質を測定することにより行われてもよく、前記遺伝物質は16S rRNAであってもよい。
【0066】
前記本発明の他の具現例として、前記細胞外ベシクルの濃度測定は、細胞外ベシクルのタンパク質を測定することにより行われてもよい。
【0067】
前記本発明の別の具現例として、前記細胞外ベシクルの濃度測定は、顕微鏡で細胞外ベシクルの数を測定することにより行われてもよく、前記顕微鏡で高解像度光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いてもよい。
【0068】
本発明の別の側面は、室内空気由来細胞外ベシクルを哺乳動物に投与することを含む、疾病を予防又は治療する方法を提供する。
【0069】
前記本発明の細胞外ベシクルは前述と同じである。
【0070】
前記本発明の疾病は、室内空気に存在する細胞外ベシクルによる鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、及び肺癌などを含む。
【0071】
前記本発明の一具現例によれば、前記疾病は、室内空気に存在する細菌又はカビによる副鼻腔炎、気管支拡張症、肺炎、及び敗血症などを含む。
【0072】
前記本発明の投与は皮下注射及び粘膜投与などを含む。
【発明の効果】
【0073】
本発明者らは、室内空気中に細菌等由来の細胞外ベシクルが存在し、前記細胞外ベシクル(特に、グラム陰性細菌由来細胞外ベシクル)が吸入されたとき、肺にTh17及び/又はTh1免疫反応を誘導し、これにより好中球性肺炎症が発生して重症喘息と慢性閉塞性肺疾患などの呼吸器疾患が発生するという事実を発見し、これに基づいて本発明を完成した。したがって、本発明の室内空気由来細胞外ベシクルを応用して次の多様な効果を得ることが可能である。
【0074】
具体的に、本発明は、室内空気に存在する細胞外ベシクルを動物に投与して呼吸器疾患動物モデルを製造し、前記動物モデルを用いて呼吸器疾患に対する予防又は治療候補薬物を検索及び発掘することを可能とする。すなわち、疾病を予防又は治療する薬物を開発するためには、正確な原因物質を把握することが極めて重要である。例えば、原因物質を体外で細胞に投与する過程で候補薬物を処理して効能を検証することができ、前記動物モデルに候補薬物を投与して効能を検証することができる。したがって、本発明は、室内空気に存在する細胞外ベシクルによる疾病を予防又は治療する薬物を開発するために、室内空気に存在する細胞外ベシクルを用いた体外スクリーニングシステム及び/又は動物モデルを介して、室内空気に存在する細胞外ベシクルにより発生する呼吸器疾患を予防又は治療するための薬物を効率よく発掘することができる。
【0075】
また、本発明は、重症喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺癌などの呼吸器疾患の原因因子を正確に診断することを可能とする。すなわち、室内空気に存在する細胞外ベシクルの遺伝物質の塩基配列分析、タンパク質分析、又は免疫反応の測定によって呼吸器疾患の原因因子を診断する方法への応用が可能である。
【0076】
疾病の原因因子を正確に把握することは、疾病を予防又は治療することが可能なワクチンの開発に必須的である。ウイルス性感染疾患の場合は、原因ウイルスを弱毒化した形で体内に投与することにより、ウイルスに対する免疫反応を誘導して予防ワクチンを開発して使用しており、現在、ウイルスにより発生する疾患を予防ワクチンで効率よく予防することができった。本発明は、室内空気に存在する細胞外ベシクルが呼吸器疾患の原因因子であるという事実により、細胞外ベシクルを応用して体内で起きる免疫反応を調節することにより効率的なワクチンの開発を可能とする。
【0077】
また、本発明は、室内空気に存在する細胞外ベシクルが呼吸器疾患の原因因子であるという事実を通じて、室内空気に存在する細胞外ベシクルの濃度を測定することにより、呼吸器疾患の発生又は悪化に関連した室内空気の質を評価することを可能とする。これに加えて、熱処理又は化学物質の処理が可能な空気浄化装置などによって室内空気中の細胞外ベシクルの活性を抑制し或いは病原性細胞外ベシクルを除去することにより、呼吸器疾患の発生及び悪化を予防又は治療することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】採集した室内粉塵から細胞外ベシクルを分離する過程を示す図である。
【図2】室内粉塵から分離した細胞外ベシクルの形状とサイズを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)で分析した結果を示す図である。
【図3】室内粉塵をマウスの鼻腔内に投与して炎症性呼吸器疾患(肺炎症)を誘導する過程を示す図である。
【図4】室内粉塵をマウスの鼻腔内に投与したときの気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)における炎症細胞の数を測定した結果である。
【図5】室内粉塵をマウスの鼻腔内に投与して炎症性呼吸器疾患(肺炎症)を誘導したときに、肺組織からCD4+T細胞におけるサイトカインの発現を細胞内サイトカイン染色(intracellular cytokine staining)で測定した結果である。
【図6】マウスマクロファージに、室内粉塵から分離した細胞外ベシクル(Dust−EV)と水溶性成分(Dust−soluble)を処理し、分泌されたサイトカインの量をELISA法で測定した結果である。
【図7】マウスマクロファージに、室内粉塵から分離した細胞外ベシクル(Dust−EV)を処理したとき、細胞外ベシクルを投与する用量が増加するにつれてTNF−αとIL−6の分微量が増加することを示す結果である。
【図8】室内空気に存在する細胞外ベシクル(Dust−EV)にポリミキシンB(PMB)又は熱(heat)処理した後、マウスマクロファージに投与したときにTNF−αとIL−6の分泌量を測定した結果である。
【図9】室内空気に存在する細胞外ベシクル(Dust−EV)によるin vivo先天免疫反応を評価するためのプロトコルである。
【図10】図9のプロトコルに従い、室内空気に存在する細胞外ベシクル(Dust−EV)によるin vivo先天免疫反応を評価するために、肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)における炎症細胞の数を測定した結果である。
【図11】室内空気に存在する細胞外ベシクル(Dust−EV)を反復的に投与して誘導したin vivo後天免疫反応及びその結果により発生する肺炎症の発生に対する細胞外ベシクル及びベシクル内LPSの役目を評価するためのプロトコルである。
【図12】図11のプロトコルに従い、室内空気に存在する細胞外ベシクル(Dust−EV)及びベシクルへのポリミキシン(Polymyxin B、PBM)処理による肺炎症の発生を評価したものであって、肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)における炎症細胞の数を示すものである。
【図13】図11のプロトコルに従い、室内空気に存在する細胞外ベシクル(Dust−EV)及びベシクルへのポリミキシン(Polymyxin B、PBM)処理による後天免疫反応を評価するために、局所リンパ節から免疫細胞を分離して免疫細胞におけるIFN−γとIL−17の発現様相を細胞内サイトカイン染色(intracellular cytokine staining)で評価した結果を示すものである。
【図14】図11のプロトコルに従い、室内空気に存在する細胞外ベシクル(Dust−EV)及びベシクルにポリミキシンB(Polymyxin B、PMB)処理を施したとき、室内粉塵から分離したベシクルに対する血清内特異抗体をELISA法で測定した結果である。
【図15】室内粉塵から分離した細胞外ベシクル(Dust−EV)に大腸菌の16S rRNA及び大腸菌由来ベシクル(E.coli−OMV)特異抗体に反応するタンパク質が存在することを示す結果である。
【図16】大腸菌由来細胞外ベシクルの1回鼻腔投与の際に炎症性サイトカインの分泌を気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)で測定した結果である。
【図17】大腸菌由来ベシクル(EC−EV)を3週間反復投与したときに発生する肺炎症を評価するためのプロトコルである。
【図18】大腸菌由来ベシクル(EC−EV)を反復投与したときの、肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)における炎症細胞の数を示すものである。
【図19】高用量の大腸菌由来細胞外ベシクル(EC−EV)を4週間反復投与したときの組織学的変化を評価するためのプロトコルである。
【図20】図19のプロトコルに従い、大腸菌由来ベシクル(EC−EV)投与の際に肺組織に、肺胞の破壊を特徴とする肺気腫が発生することを示す結果である。
【図21】イエダニに存在する細胞外ベシクルを分離するためのプロトコルである。
【図22】イエダニから分離した細胞外ベシクルの形状とサイズを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)と動的光散乱法(dynamic light scattering、DLS)で分析した結果を示すものである。
【図23】マウスマクロファージにイエダニ由来細胞外ベシクル(HDM−EV)処理を施したときのサイトカインの量を測定した結果である。
【図24】イエダニ由来細胞外細胞外ベシクル(HDM−EV)によるin vivo先天免疫反応を評価するために、肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)における炎症細胞の数を示す図である。
【図25】イエダニ由来細胞外ベシクル(HDM−EV)によるin vivo先天免疫反応を評価するために、気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)におけるサイトカインの生成を測定した結果である。
【図26】イエダニ由来細胞外ベシクル(HDM−EV)によるin vivo後天免疫反応を評価するために、肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)における炎症細胞の数を示す図である。
【図27】イエダニ由来細胞外ベシクル(HDM−EV)によるin vivo後天免疫反応を評価するために、気管支肺胞洗浄液における、Th17細胞から分泌されるIL−17の生成を測定した結果である。
【図28】室内粉塵で細菌とカビを培養した結果を示すものである。
【図29】室内粉塵に生息する細菌を分離して同定するための過程を示すものである。
【図30】ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(S−EV)及び熱処理したベシクルによるin vitro先天免疫反応を評価するために、マウスマクロファージに前記細胞外ベシクルを投与したときのTNF−αとIL−6を測定した結果を示すものである。
【図31】ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応を評価するためのプロトコルを示すものである。
【図32】図30のプロトコルに従い、ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(S−EV)を鼻腔内に投与し、気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)における炎症細胞の数を測定した結果である。
【図33】図30のプロトコルに従い、ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(S−EV)によるIL−6の分泌を気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)で測定した結果である。
【図34】ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる免疫反応の発生に対する、ベシクル内タンパク質又は熱に抵抗する成分の役割を評価するためのプロトコルを示すものである。
【図35】図33のプロトコルに従い、ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(S−EV)に熱処理を施した後、鼻腔投与したときに、気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数を測定した結果である。
【図36】図33のプロトコルに従い、ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(S−EV)に熱処理を施した後、鼻腔投与したときに、気管支肺胞洗浄液におけるIL−6の量をELISA法によって測定した結果である。
【図37】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)1μgを1週間隔で3回腹腔投与する過程でマウス血液内のベシクル特異抗体の量を測定して示すグラフである。
【図38】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンを投与したマウスの脾臓細胞に体外で大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIFN−γの量を示すグラフである。
【図39】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンを投与したマウスの脾臓細胞に体外で大腸菌由来細胞外ベシクルを処理したときに分泌されるIL−17の量を示すグラフである。
【図40】大腸菌(EC)感染による敗血症モデルのマウス致死率を示す結果である。
【図41】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症モデルにおける、敗血症による致死率に対する大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)ワクチンの効能を示すグラフである。
【図42】大腸菌(EC)腹腔投与による敗血症モデルにおける、大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)の接種有無による血液内大腸菌数(CFU)を示すグラフである。
【図43】大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を接種したマウスに高用量の大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg)を反復的に(3回)腹腔投与し、6時間後にマウスの血清におけるIL−6を測定した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0079】
室内空気に存在する有害物質を吸入したとき、呼吸器疾患が発生する。アレルギー反応は、免疫学的過敏反応を特徴とし、タンパク質を単独で吸入したときに免疫寛容が誘導されるが、先天免疫反応によりタンパク質に対する免疫寛容の代わりに免疫反応を誘導する物質がタンパク質と共に吸入されたときに、タンパク質に対する記憶を特徴とする後天免疫反応(感作)が発生する。タンパク質に対する感作が誘導されると、低い濃度のタンパク質が吸入されても、タンパク質に対する免疫反応で炎症を誘発する可能性がある。室内空気に存在する有害物質のうち、気体の場合には気体自体の毒性により炎症が誘導されるが、後天免疫反応による炎症を誘導しない。これに対し、室内空気に存在する生物学的汚染物質は先天免疫反応を誘導する物質とタンパク質を共に持っており、先天免疫反応と後天免疫反応を同時に誘導することができるという特徴がある。ところが、未だ室内空気に細菌等由来の細胞外ベシクルが存在し、或いは室内空気に存在する細胞外ベシクルが呼吸器疾患の原因物質であるという事実が報告されたことがない。本発明者らは、室内空気中に細菌等由来の細胞外ベシクルが存在し、これを吸入したときに呼吸器疾患が誘導されるという事実を最初に解明し、本発明を完成するに至った。
【0080】
一方、炎症は好酸球の浸潤有無によって好酸球性炎症と非好酸球性(又は好中球性)炎症に区別することができる。慢性炎症はタンパク質に対する過敏反応(後天免疫反応)を特徴とする免疫機能の異常により発生し、好酸球性炎症はタンパク質に対するTh2免疫反応の結果として発生し、好中球性炎症はTh17及び/又はTh1免疫反応の結果として発生する。
【0081】
本発明者らは、室内粉塵を吸入したときに好中球性炎症が誘導され、室内粉塵に存在する成分の中でも細胞外ベシクルが好中球性炎症を引き起こす主原因因子であり、細胞外ベシクルの活性が、グラム陰性細菌に由来する内毒素(エンドトキシン(endotoxin)又はLPS(lipopolysaccharide))の活性を拮抗する薬物(ポリミキシンB(Polymyxin B))を処理したときに抑制されるという事実に基づいて、室内空気に存在するグラム陰性細菌由来細胞外ベシクルが、好中球性炎症反応を特徴とする呼吸器疾患を引き起こす原因物質であるという事実を最初に解明した。
【0082】
好中球性肺炎症は、非可逆的気道閉塞を伴う重症喘息と慢性閉塞性肺疾患の発生に重要な病態生理である。喫煙を問わず、好中球性炎症を特徴とする慢性閉塞性肺疾患は、肺癌発生の重要な危険因子であって、実際に慢性閉塞性肺疾患者の1/3は肺癌で死亡する。また、Th17免疫反応及びこれによる好中球性炎症により大腸癌が発生するという動物実験結果が最近報告された。これは肺に発生するTh17免疫反応及び/又は好中球性炎症は重症喘息と慢性閉塞性肺疾患の病因に重要であるうえ、肺癌の発生にも密接な関連があることを意味する。
【0083】
本発明は、室内空気由来細胞外ベシクルを含む組成物、及び前記細胞外ベシクルを用いて炎症性呼吸器疾患などを診断、予防、及び/又は治療する方法などを提供する。
【0084】
本発明において、「室内」とは建築物(buildings)を含む構造物(structures)の内部と周辺を含む意味であり、「室内空気」とは室内粉塵だけでなく、室内に生息するイエダニ、ゴキブリ、ペット、植物、ヒトなどから分泌される物質を含む意味である。
【0085】
本発明において、「室内空気由来細胞外ベシクル」とは、建築物を含む構造物の内部と周辺にある空気に存在する細胞外ベシクルを含む意味であり、たとえば、室内空気由来細胞外ベシクルは、室内空気に生息する細菌から分泌された細胞外ベシクル、及び室内に生息するイエダニ、ゴキブリ、ペット、植物、ヒトなどに存在する細菌が分泌して室内空気に存在する細胞外ベシクルを含み、サイズが元来の細胞より小さいことを特徴とするが、これに限定されるものではない。
【0086】
室内空気には様々な細菌とカビが生息するうえ、ヒト、ペット、イエダニ、ゴキブリなどを含む多様な生命体の皮膚、消火器、呼吸器などに生息している多種の細菌及びカビとともに、建築物を含む構造物の内部と周辺に生息する或いは流入した多様な種類の細菌とカビが存在する。室内、特に寝台マットレスやカーペットなどには多量の粉塵が存在し、粉塵には多様な細菌とカビが生息するうえ、イエダニなどの動物から分泌される物質が存在する。真空掃除機を用いて室内粉塵を得た後、ガーゼを用いて髪の毛などの大きい物質を除去してから培養する。この際、室内粉塵で多数のカビと細菌が培養された。また、サイズの大きい物質を除去した室内粉塵を生理食塩水(phosphate buffer saline、PBS)に溶かした後、多数回の遠心分離過程を経て細胞外ベシクルを抽出した。透過電子顕微鏡写真を介して、室内空気から分離した細胞外ベシクルはサイズ50〜100nmの球状であることを確認した。
【0087】
また、室内に在る粉塵が炎症性呼吸器疾患を発生させるかを評価するために、C57BL/6マウスに粉塵を3週間鼻腔投与した。粉塵を最後に鼻腔投与してから24時間経過の後に評価したとき、マウスの気管支肺胞洗浄液(bronchoalvelolar lavege fluid、BALF)における炎症細胞の数が増加し、特に好中球の数が著しく増加することが観察された。前記結果により、室内に在る粉塵が、好中球の浸潤を特徴とする炎症性呼吸器疾患(肺炎症)を誘導することを確認した。
【0088】
前記呼吸器疾患を引き起こす免疫学的メカニズムを評価するために、T細胞に発現するサイトカインをフローサイトメトリー(Flow cytometry)方法で評価した。T細胞による後天免疫反応は、IFN−γを分泌するTh1細胞による免役反応、IL−4、IL−5、IL−13などを分泌するTh2細胞による免役反応、及びIL−17を分泌するTh17細胞による免疫反応に分けることができる。粉塵により発生した好中球性肺炎症は、主にIL−17を生成するCD4+T細胞(Th17細胞)とIFN−γを分泌するTh1細胞によって媒介される炎症反応であることが分かった。Th1及びTh17免疫反応は気道及び肺実質に好中球性炎症を特徴とする炎症性呼吸器疾患(喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎など)及び肺癌の発生に重要な役割を果たすが、特にTh1炎症は肺気腫の発生に重要であり、Th17炎症は肺癌の発生に重要であると知られている。
【0089】
室内粉塵による炎症反応の誘導と関連して、室内粉塵に存在する細胞外ベシクルと水溶性成分の役割を評価するために、マウスマクロファージ(RAW264.7)に、粉塵から分離した細胞外ベシクルと水溶性因子を投与したとき、TNF−αの分泌はいずれにおいても増加したが、IL−6の分泌は主に細胞外ベシクルを投与した場合に増加した。これは、IL−6を基とした免疫反応及び炎症の発生に、室内空気に存在する細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0090】
室内空気に存在する細胞外ベシクルは、室内空気に生息している細菌又はヒト、ペット、イエダニ、ゴキブリなどを含む多様な生命体に生息し、或いは建築物を含む構造物の内部と周辺に生息する多様な種類の細菌によって分泌できる。このような細胞外ベシクルは、細菌タンパク質、LPS、ペプチドグリカンなどの物質を持っており、炎症反応を誘導することができる。
【0091】
室内空気に存在する細胞外ベシクルによるin vitro先天免疫反応を評価するために、マウスマクロファージ(RAW264.7)に、室内粉塵から分離した細胞外ベシクルを処理した。マクロファージは、炎症を誘導することが可能なTNF−α及びIL−6などを分泌し、前記細胞外ベシクル処理の際にTNF−α及びIL−6の量が細胞外ベシクルの用量に比例して増加することが分かった。
【0092】
IL(interleukin)−6は、炎症反応の際に初期に分泌される炎症性サイトカインであって、初期炎症反応の尺度の役割を果たし、Th17細胞免疫反応によって好中球性炎症を誘導することに重要な媒介体として知られている。また、IL−6は、体内細胞でSTAT3シグナリング(signaling)を増加させて肺細胞の増殖、血管新生、免疫反応抑制などを介して肺癌の発生と関連しているだけでなく、抗原に対するT細胞の後天免疫反応の発生においてnaiveT細胞がTh17細胞に分化することに重要な役割を果たす。
【0093】
したがって、室内空気に存在する細胞外ベシクルがマクロファージでIL−6の量を増加させるという事実は、前記細胞外ベシクルが炎症反応を誘導して喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎などの炎症性呼吸器疾患だけでなく、肺癌などを発生させることができることを意味する。
【0094】
前述したように、室内空気に存在する細胞外ベシクルは、炎症反応を誘導しうる様々なタンパク質とLPSなどの物質を含むことができるので、室内空気に存在する細胞外ベシクルにより誘導される炎症反応における前記物質の役割を評価した。
【0095】
ポリミキシンB(Polymyxin B)は、LPSの作用基であるリピドA(lipid A)に反応してLPSの機能を抑制する役割を果たす。これに基づいて、マウスマクロファージに、粉塵から分離した細胞外ベシクルとポリミキシンB(Polymyxin B)を共に処理したとき、細胞外ベシクルにより誘導されるIL−6及びTNF−αの分泌が阻害されたが、これはグラム陰性細菌に由来する細胞外ベシクルが前記媒介体を分泌することに重要であることを意味する。
【0096】
一方、細胞外ベシクルには様々なタンパク質が存在するが、ベシクルに存在するタンパク質の役割を評価するために、100℃で20分間加熱した細胞外ベシクルをマウスマクロファージに処理した。前記ベシクルに熱処理を施した場合、TNF(Tumor necrosis factor)-αの分泌は減少したが、IL−6の分泌はむしろ増加した。これはTNF−αの分泌にはベシクル内タンパク質が重要であるが、IL−6の分泌には熱に耐性を有するベシクル成分が重要であることを意味する。
【0097】
また、室内空気から分離した細胞外ベシクルを実験動物に投与して呼吸器疾患の動物モデルを製造することができる。これに関連して、粉塵から分離した細胞外ベシクルをマウスに投与して肺炎症の発生及びIL−6の分泌に対する影響を評価した。多様な濃度の細胞外ベシクルをマウスの気道に投与したとき、濃度に応じて炎症細胞の流入が増加することを確認した。細胞外ベシクルを投与したマウスにおけるIL−6の生成量が増加した。前記結果は、in vitro実験でベシクルによって炎症細胞からのIL−6の分泌が増加する現象がin vivoシステムにおいても再現されることを意味する。
【0098】
室内粉塵から分離した細胞外ベシクルを反復的に投与したとき、炎症性呼吸器疾患の発生有無を評価した。ベシクルを3週間気道に投与したときに好中球性炎症が発生した。これに対し、ポリミキシンB(Polymyxin B)とベシクルを共に投与したときには炎症が顕著に抑制された。これは炎症の発生にグラム陰性細菌由来細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0099】
また、肺炎症の発生に関与する免疫学的病因を評価した結果、粉塵から分離したベシクルを投与した場合には肺組織内IFN−γ及びIL−17を発現するT細胞が顕著に増加し、ポリミキシンB(Polymyxin B)を前記ベシクルと共に投与した場合には前記細胞の浸潤が顕著に減少した。前記結果は、粉塵に存在する細胞外ベシクルにより発生する好中球性肺炎症がTh1及びTh17免疫反応により誘導され、その発生にはベシクル内のLPS成分が重要な役割を果たすことを意味する。
【0100】
また、室内空気に由来する細胞外ベシクル特異抗体を測定した結果、ベシクルを投与した場合にはベシクル特異IgG1及びIgG2a抗体が有意に増加した。これは、ポリミキシンB(Polymyxin B)をベシクルと共に投与した場合には顕著に減少した。前記結果は室内粉塵に存在する細胞外ベシクルが気道に吸入されたときに血清内ベシクル特異抗体が形成され、その生成にはベシクル内LPS成分が重要な役割を果たすことを意味する。
【0101】
大腸菌はグラム陰性細菌として腸内に存在するが、室内粉塵に大腸菌が存在し、大腸菌が細胞外ベシクルを分泌することが報告されたことがある。室内粉塵から分離した細胞外ベシクルに大腸菌由来細胞外ベシクルが存在するかを評価した。大腸菌由来細胞外ベシクルに特異的に存在する16S rRNAに対するプライマー(primer)から遺伝型を分析したとき、陽性所見を示した。また、大腸菌由来細胞外ベシクルに対する抗体を作り、これを用いて、粉塵から分離した細胞外ベシクルタンパク質に対するウエスタンブロット(Western Blot)を施行したとき、粉塵から分離した細胞外ベシクル内タンパク質が大腸菌由来細胞外ベシクル特異抗体と結合した。前記結果は、室内粉塵には大腸菌由来細胞外ベシクルが存在することを意味する。大腸菌は、主に大腸に生息する菌であって、イエダニ、ゴキブリ、ペット、ヒトなどの腸に生息しながら持続的に細胞外ベシクルを分泌する。これはイエダニなどが大便を介して大腸菌由来細胞外ベシクルを持続的に分泌することを意味する。
【0102】
大腸菌由来細胞外ベシクルを1回気道内に投与して炎症媒介体の分泌を体内で評価したとき、細胞外ベシクルの投与用量に比例してTNF−αとIL−6の分泌が増加した。
【0103】
大腸菌由来細胞外ベシクルを反復的に投与したときに炎症性呼吸器疾患が発生するかを評価するために、週2回3週間鼻腔投与したとき、気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数が大腸菌由来細胞外ベシクルの投与用量に依存的に増加した。
【0104】
前記の方法で高用量(100ng)の細胞外ベシクルを4週間反復投与して肺気腫の発生を評価したとき、細胞外ベシクルを投与した場合に肺気腫が発生した。これは室内粉塵に大腸菌由来細胞外ベシクルのような病原性ベシクルが高濃度で存在してこれを吸入したとき、非可逆的気道閉塞をもたらす肺気腫が誘導されることを意味する。
【0105】
室内粉塵由来細胞外ベシクルは、粉塵に存在する様々な細菌により生成されてもよく、室内空気に存在するイエダニ、ゴキブリ、ヒト、ペッドなどを含む多様な生命体に生息する細菌が細胞外ベシクルを分泌することができる。
【0106】
本発明者らは、室内粉塵に生息するイエダニから細胞外ベシクルを分離した。イエダニ由来細胞外ベシクルによるin vitro免疫反応を評価するために、細胞外ベシクルをマウスマクロファージに処理した。マクロファージからのTNF−αとIL−6の分泌がベシクルの濃度に比例して増加した。また、ベシクルにより分泌される前記炎症媒介体は、LPSを拮抗するポリミキシンB(Polymyxin B)の処理によって抑制された。これはイエダニに由来する細胞外ベシクルが呼吸器疾患を誘導することができ、これにはグラム陰性細菌から分泌された細胞外ベシクルが含まれていることを意味する。
【0107】
前述したように、イエダニに由来する細胞外ベシクルはin vitro実験で先天免疫反応を誘導することが分かった。これをin vivoシステムで再現されることを評価するために、イエダニ由来細胞外ベシクルを1回マウスの気道に投与して先天免疫反応を評価した。細胞外ベシクルの濃度に依存的に肺への炎症細胞の浸潤が増加した。これと共に、炎症媒介体としてのTNF−γ及びIL−6の分泌も増加した。
【0108】
前記in vivoシステムにおける先天免疫反応結果に基づいて、イエダニ由来細胞外ベシクルを反復的に吸入投与したときに肺炎症の発生有無を評価した結果、イエダニ由来細胞外ベシクルを3週間投与したときに好中球性肺炎症が誘導され、これと共にIL−17の分泌も増加した。
【0109】
前記結果より、イエダニに由来する細胞外ベシクルによって好中球性肺炎症が発生し、これは主にTh17免疫反応によって媒介される現象であることが分かった。
【0110】
本発明者らは、室内粉塵に生息する細菌を分離し、グラム陽性細菌の存在を同定した。その結果、グラム陽性細菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、S.aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)などが同定された。
【0111】
ブドウ球菌はグラム陽性細菌である。最近、本発明者らは、細胞外ベシクルを分泌することを最初に報告したことがある。ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるin vitro免疫反応を評価するために、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスマクロファージに処理した。ブドウ球菌由来ベシクルによってマクロファージからTNF−αとIL−6の分泌が増加した。前記結果は、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルが炎症性呼吸器疾患及び肺癌を誘導することができることを示唆する。
【0112】
前述したように、ブドウ球菌に由来する細胞外ベシクルは、in vitro実験で先天免疫反応を誘導することを確認した。これはin vivoシステムで確認するために互いに異なる濃度(1μg、10μg)のブドウ球菌由来細胞外ベシクルをマウスの気道内に投与した。細胞外ベシクルの投与量が増加するにつれて、マウスの肺に流入した炎症細胞が増加した。特に、好中球の過度な流入を確認することができた。気管支肺胞洗浄液におけるIL−6の分泌量も細胞外ベシクルの濃度が増加するにつれて増加した。
【0113】
前記結果より、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルにより肺炎症が発生することが確認された。IL−6によるTh17後天免疫反応との関連性も予想することができる。
【0114】
これに加えて、in vivoシステムにおけるブドウ球菌由来細胞外ベシクル内タンパク質の役割を確認するために熱処理した細胞外ベシクルをマウスの気道内に投与した。この際、肺癌及びタンパク質特異Th17後天免疫反応を引き起こすことに核心的な役割を果たすIL−6の生成量が全て減少することを確認した。前記結果より、粉塵吸入により発生するTh17免疫反応による肺炎症の発生においてブドウ球菌由来細胞外ベシクル内のタンパク質はIL−6の生成を増加させる役割を果たすことが分かる。
【0115】
疾病の原因因子を解明することは、原因因子を用いた免疫調節を可能とする。本発明者らは、室内空気に存在する大腸菌由来細胞外ベシクルが吸入されたときに炎症性呼吸器疾患が誘発されることを確認した。大腸菌由来細胞外ベシクルを低用量で注射したときに細胞外ベシクル特異抗体が形成され、ベシクルに対する特異T細胞反応でIFN−γとIL−17を分泌するTh1及びTh17免疫反応が誘導された。よって、大腸菌由来細胞外ベシクルをワクチンとして予め注射した後、大腸菌感染を誘導したときに、大腸菌感染が顕著に抑制された。また、前記ベシクルワクチンを予め投与したとき、大腸菌由来細胞外ベシクルの血管吸収により起こる炎症媒介体の分泌が有意に抑制された。これは細菌由来細胞外ベシクルを注射することにより免疫反応を誘導し、これにより室内空気に存在する細胞外ベシクルによる疾病だけでなく、室内空気に存在する細菌に対する感染を効率よく予防することができることを意味する。
【0116】
以下、本発明の理解を助けるために好適な実施例を提示する。ところが、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、本発明の内容を限定するものではない。
【実施例】
【0117】
実施例1.室内粉塵からの細胞外ベシクルの抽出及び特性解明
本発明者らは、室内空気に細胞外ベシクルが存在するか否かを確認するために、室内粉塵から細胞外ベシクルを分離、同定する実験を行った。
【0118】
具体的に、真空掃除機を用いて、特定住居地の寝具に存在する粉塵を収去した。真空掃除機のフィルター内に存在する粉塵を綺麗なガラス瓶に移して質量を測定した。室内粉塵5gを200mLのPBS入りのビーカーに4℃で12時間溶解させた。その後、一次的にガーゼを用いて大きな異物を濾過し、濾過した溶液を高速遠心分離チューブ(high speed centrifuge tube)に分けて入れた後、4℃で10,000×gにて15分間高速遠心分離(high speed centrifugation)を連続的に2回行った。180mLの上澄液を孔径0.45μmのメンブレインフィルター(membrane filter)を1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に分けて入れ、4℃で100,000×gにて4時間超遠心分離(ultracetrifugation)を行った。上澄液は捨て、チューブの下に存在する沈殿物はPBSで溶かして細胞外ベシクルを抽出した。
【0119】
室内粉塵由来細胞外ベシクルの特性解明のために細胞外ベシクルを分離したとき、スクロースクッション方法で追加精製を行った。容量35mLの超遠心分離チューブに0.5mLの2.5Mスクロース、1mLの0.8Mスクロース、及び32mLの異物が除去された溶液を順次仕込み、4℃で100,000×gにて4時間超遠心分離を行った。超遠心分離の後、細胞外ベシクルはその密度によって2.5Mスクロース層と0.8Mスクロース層との間に位置した。チューブの上方から溶液を除去して細胞外ベシクル含有層を分離した。
【0120】
図1は室内粉塵から細胞外ベシクルを得た過程を示す。図2は室内粉塵由来細胞外ベシクルの形状とサイズを透過電子顕微鏡(trasmission electron microscope、TEM)で撮影した結果を示すもので、前記細胞外ベシクルは脂質二重層からなっており、50〜100nmのサイズを有し、球状をしていることが分かる。
【0121】
前記結果より、室内粉塵に細胞外ベシクルが存在し、これは室内空気に細胞外ベシクルが存在することを意味する。
【0122】
実施例2.室内から採集した粉塵による炎症性呼吸器疾患(肺炎症)の誘導
本発明者らは、室内から採集した粉塵が哺乳動物で炎症性呼吸器疾患を引き起こすか否かを評価するための実験を行った。
【0123】
具体的に、室内粉塵又は40μmのフィルター(filter)を通過した室内粉塵100ngを30μLのPBSに溶かした。マウスはC57BL/6、6週齢雌(各群当たり5匹)を使用した。PBS(phosphate buffered saline)に溶かした粉塵を0、1、7、8、14、15日目にマウスの気道内に投与し、16日目にマウスに対して肺炎症を測定した。この際、PBSを投与したマウスを対照群とし、前記粉塵を投与したマウスを実験群とした。
【0124】
ケタミン(ketamin)とキシラジン(xylazine)とを混合した麻酔液をマウスの腹腔に投与して麻酔した後、胸部を切開し、気管を露出させてカテーテルを気道に挿入し、結紮させた。無菌性生理食塩水を1mLずつ2回注入し、気道を洗浄して気管支肺胞洗浄液を得た。気管支肺胞洗浄液を4℃で800×gにて10分間遠心分離した後、細胞ペレット(cell pellet)をPBS溶液に溶かした。前記細胞ペレットをサイトスピン(cytospin)してスライドに塗抹し、Diff Quick染色を行って光学顕微鏡の100倍視野で300個以上の炎症細胞を観察し、これをマクロファージ、リンパ球、好中球、好酸球に分類して各炎症細胞数を測定した。
【0125】
図3は室内粉塵をマウスの鼻腔内に投与して炎症性呼吸器疾患(肺炎症)を誘導する過程を示し、図4は気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数を測定した結果を示す。
【0126】
図4に示すように、粉塵を鼻腔内投与した場合に肺炎症が発生(BAL細胞の増加)することが分かった。特に、好中球(neutrophil)の浸潤が顕著であった。また、粉塵を40μmのフィルター(filter)を通過させることによりサイズの大きい物質を除去して鼻腔投与したとき、好中球の浸潤を特徴とする好中球性肺炎症が発生した。これは、好中球性肺炎症を誘導する物質が、室内粉塵に存在する物質の中で40μm未満の成分であることを意味する。
【0127】
前記結果より、室内から採集した粉塵が哺乳動物に吸入されたとき、好中球性炎症を特徴とする呼吸器疾患が誘発できることが分かる。
【0128】
実施例3.室内から採集した粉塵による好中球性肺炎症の免疫学的発生メカニズム
前記実施例2の結果より、室内粉塵によって哺乳動物で好中球性肺炎症が誘発されることを確認した。これに関連し、本発明者らはその免疫学的メカニズムを解明するための実験を行った。
【0129】
具体的に、前記実施例2の方法によって肺炎症を誘導したマウスから肺を摘出した。摘出された肺組織を剃刀の刃で切り刻んだ後、コラゲナーゼIV型(collagenase type IV)を添加し、37℃で10分間培養した。その後、セルストレーナー(cell strainer)を用いて組織から細胞を分離した後、4℃で800×gにて10分間遠心分離した。
【0130】
遠心分離した肺細胞は、赤血球溶解溶液に10分間入れて赤血球を破壊した。その後、さらに前記の条件で遠心分離を行った。ヘマトサイトメーター(hematocytometer)を用いて細胞を計数し、2×10/mLの濃度でRPMI1640、10% FBS(fetal bovine serum)及び抗生物質(antibiotics)が入っている溶液に溶解させた。細胞を48ウェルプレート(well plate)に入れる一日前に、48ウェルプレート(well plate)にCD3とCD28に対する抗体を各1μg/mLの濃度となるようにPBSを用いて希釈した後、ウェル当たり250μLを入れて10〜18時間4℃を維持させて抗体をウェル(well)にコート(coating)させた。
【0131】
肺細胞が前記の濃度で準備されると、抗体がコート(coating)されている48ウェルプレート(well plate)をPBSで洗浄することにより、プレート(plate)の底部にコート(coating)されずにフリーフォーム(free form)で駆け巡る抗体を除去した。その後、肺細胞を仕込んでから4時間後、細胞外にタンパク質などの物質が分泌されることを阻害するブレフェルジンA(brefeldin A)を10μg/mL入れて2時間さらに培養し、細胞外に分泌されるサイトカインを細胞内に閉じ込めた。培養済みの細胞は、蛍光付きCD4(FITC)、CD8(PE−Cy5)、CD3(APC)抗体を用いて、肺細胞の表面にある各タンパク質を染色した。30分が経過すると、4℃で800×gにて10分間遠心分離して洗浄した後、4%ホルマリン(formalin)を用いて、細胞表面に孔を穿設してサイトカインに対する抗体がよく挿入されるようにした。ホルマリン(formalin)を10分間処理した後、蛍光付きIFN−γ(PE)、IL−4(PE)、IL−10(PE)、IL−17(PE)抗体を用いてサイトカインを30分間染色した。FACS Caliburを用いて、肺に流入したT細胞におけるサイトカインの発現を測定した。
【0132】
図5は前記の方法でCD4+T細胞におけるサイトカインの発現量をフローサイトメトリー(Flow cytometry)方法で測定した結果である。図5の濾過された粉塵(filtered dust)は前記実施例2と同様に粉塵を40μmのフィルター(filter)を通過させたものである。T細胞による後天免疫反応は、IFN−γを分泌するTh1細胞による反応、IL−4を分泌するTh2細胞による反応、及びIL−17を分泌するTh17細胞による反応に大別される。
【0133】
図5に示すように、粉塵により肺炎症を誘導したマウスは、対照群(PBS)に比べて、IFN−γとIL−17を発現するCD4+T細胞が肺組織で増加し、粉塵を40μmのサイズにフィルタリングした場合にはIL−17を発現するCD4+T細胞がさらに増加した。これは、室内粉塵により発生した好中球性肺炎症はIFN−γとIL−17を生成するCD4+T細胞(Th1細胞とTh17細胞)によって起こることを意味する。Th1及びTh17免疫反応は、気道及び肺実質に発生する炎症性呼吸器疾患、例えば重症喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎などの発生だけでなく、肺癌の発生においても重要な免疫学的過敏反応であって、Th1細胞から分泌されるIFN−γは肺気腫の発生に重要であり、Th17細胞から分泌されるIL−17は肺癌の発生に重要な役割を果たす。
【0134】
前記結果より、室内粉塵が、Th1及びTh17免疫反応を誘導し、好中球性肺炎症を特徴とする喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支拡張症、肺炎などの炎症性呼吸器疾患と肺癌を引き起こすことが分かる。
【0135】
実施例4.室内空気に存在する細胞外ベシクルによるin vitro先天免疫反応
前記実施例1で室内粉塵、すなわち室内空気に細胞外ベシクルが存在することを確認したとともに、室内粉塵から分離した細胞外ベシクルによるin vitro先天免疫反応を評価した。このために、マウスマクロファージ(RAW264.7)に、室内粉塵から分離した細胞外ベシクルを処理した。
【0136】
まず、室内粉塵をPBSに溶かした後、細胞外ベシクルと水溶性成分を分離した。前記のベシクルと水溶性成分による先天免疫反応を評価するために、細胞外ベシクルと水溶性成分をマウスマクロファージに処理し、上澄液を集めてサイトカインの量を測定した後、その結果を図6に示した。
【0137】
具体的に、マウスマクロファージ(RAW264.7)を1×10となるように24ウェルプレート(well plate)に24時間培養した。PBSで洗浄した後、DMEM培地に、粉塵から分離した細胞外ベシクル(Dust−EV、0.1μg/mL)及び水溶性成分(Dust−soluble、8μg/mL)をそれぞれ処理した後、15時間培養した。培養液を集めて4℃で800×gにて10分間遠心分離し、上澄液を集めてサイトカインの量をELISA(enzyme-linked immunosorbent assay)法によって測定した。
【0138】
図6に示すように、室内粉塵から分離したベシクルと水溶性成分によりTNF−αの分泌が増加したのとは異なり、IL−6の分泌は主にベシクルにより誘導されることが分かる。これは、IL−6を基とする炎症疾患の発生に、室内粉塵に存在する細胞外ベシクルが重要であることを意味する。
【0139】
これに加えて、前記と同様の方法を用いて細胞外ベシクル100ng/mLと1μg/mLを処理した後、サイトカインの量を測定した結果、ベシクルを投与する用量が増加するにつれてTNF−αとIL−6の分泌量が増加することを確認した(図7参照)。
【0140】
一方、グラム陰性細菌の外膜(outer membrane)にはLPSが存在し、室内粉塵にはLPSが含まれており、LPSが先天免疫反応を誘導するという事実はよく知られている。図8は室内粉塵から分離した細胞外ベシクルによる免疫反応におけるLPSの役割(LPS役割阻害剤:ポリミキシンB(Polymyxin B、PMB))とタンパク質の役割(熱処理による破壊)を評価した結果である。ベシクルによるTNF−αの分泌はPMB又は熱を処理した場合の両方ともにおいて顕著に減少した。これに対し、ベシクルによるIL−6の分泌は、PMBを処理した場合には顕著に減少したが、熱処理を施した場合にはむしろ増加した。
【0141】
実施例3の結果より、室内粉塵がTh17免疫反応を誘導して好中球性肺炎症を誘発することを予想することができる。これに加えて、前記実施例4の結果より、室内粉塵によるTh17免疫反応による好中球性肺炎症は室内粉塵から分離した細胞外ベシクルによってIL−6の分泌が増加したのと関連があることを意味する。すなわち、室内空気に存在する細胞外ベシクルがT細胞をThに分解させるのに核心となるサイトカインIL−6の分泌を増加させ、その結果としてTh17免疫反応を誘導して好中球性肺炎症を発生させることを予想することができる。また、このような炎症性呼吸器疾患を誘導する病原性ベシクルはLPSを含有しているベシクルが重要であることを意味する。
【0142】
実施例5.室内空気に存在する細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応
本発明者らは、実施例4で確認したin vitro先天免疫反応に加えて、室内空気に存在する細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応を評価するための実験を図9の実験プロトコルに従って行った。
【0143】
具体的に、C57BL/6、6週齢雌マウス(各群当たり4匹)を用いて、室内粉塵から分離した細胞外ベシクル0.01mg、0.1mg、1mgを30μLのPBSに溶かして鼻腔内に1回投与し、24時間後に評価した。この際、PBSを投与したマウスを対照群とした。前述の方法によって、麻酔液を用いてマウスを麻酔した後、気管支肺胞洗浄液を得た。気管支肺胞洗浄液を4℃で800×gにて10分間遠心分離した後、細胞ペレット(cell pellet)をPBS溶液に溶かし、流入した炎症細胞の数を測定した。
【0144】
図10は肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液(BAL)における炎症細胞の数を測定した結果である。図10に示すように、対照群(PBS)に比べて、細胞外ベシクルを投与した場合(Dust−EV)はベシクルの用量に比例して気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数が増加することが分かる。また、Th17免疫反応を引き起こす核心サイトカインIL−6の場合、細胞外ベシクルの投与量に比例してその分泌量が増加することが分かる。
【0145】
前記結果より、in vitroシステム及びin vivoシステムで室内粉塵から分離した細胞外ベシクルが先天免疫反応を誘導するという事実を確認し、ひいては室内粉塵から分離した細胞外ベシクルがIL−6の分泌を促進させ、これによりTh17免疫反応が誘導され、好中球性肺炎症を特徴とする呼吸器疾患を引き起こすことが明白である。
【0146】
実施例6.室内空気に存在する細胞外ベシクルによるin vivo後天免疫反応
図11に示したプロトコルに従って、室内粉塵から分離した細胞外ベシクルによるin vivo後天免疫反応を評価する実験を行った。
【0147】
具体的に、C57BL/6、6週齢雌マウス(各群当たり4匹)に、室内粉塵から分離した細胞外ベシクル1μgを30μLのPBSに溶かして週2回3週間鼻腔内投与し、最終投与24時間後に評価した。また、LPSを含有している細胞外ベシクルの役割を評価するために、ベシクルにPMBを処理してこれを投与した実験を同時に行った。
【0148】
図12は肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数を示すもので、対照群(PBS)に比べて、細胞外ベシクル投与群(Dust−EV)における炎症細胞の数が顕著に増加することを確認することができる。また、室内粉塵から分離した細胞外ベシクルにPBMを処理したとき(Dust−EV+PMB)、ベシクルにより増加した炎症細胞の数が顕著に減少した。これは、室内空気に存在するベシクルに反復的に露出されたときに好中球性肺炎症が発生し、その発生にはLPSを含有しているベシクルが重要であることを意味する。
【0149】
これに加えて、本発明者らは、肺炎症の発生に関連した免疫学的病因メカニズムを評価するために、局所リンパ節から免疫細胞を分離して免疫細胞におけるIFN−γとIL−17の発現様相を評価した結果を図13に示した。その結果、粉塵から分離したベシクルを投与した場合、PBSを投与した場合に比べて局所リンパ節内T細胞の数が顕著に増加し、特にIFN−γとIL−17を発現するT細胞が顕著に増加した。また、細胞外ベシクルにPMBを処理した場合には、局所リンパ節内T細胞の数が減少し、IFN−γとIL−17を発現するT細胞の数も顕著に減少した。
【0150】
図14は血清内に存在する室内粉塵から分離したベシクル特異抗体をELISA法で測定した結果である。その結果、ベシクル特異IgG1及びIgG2aの量が、室内粉塵から分離したベシクルを投与した場合には顕著に増加し、ベシクルにPMBを処理した場合にはPBS投与群と同様の程度に減少した。
【0151】
前記結果は、室内空気に存在する細胞外ベシクルによる肺炎症は、好中球性炎症を特徴とし、Th1及びTh17免疫反応によって発生し、その誘発にはLPSを含有しているベシクルが重要であることを意味する。また、室内空気に存在するベシクルを吸入したときに血清内ベシクル特異IgG1及びIgG2a抗体が増加することが分かるため、血清でベシクル特異抗体を測定することにより、反復的に露出された病原性ベシクルを診断することができる。
【0152】
実施例7.室内空気に存在する細胞外ベシクルに対する大腸菌由来細胞外ベシクルの存在確認
前記実施例5及び実施例6の結果より、室内空気に存在する細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応及び後天免疫反応の発生に、LPSを含有しているベシクルが重要であることが分かった。LPSはグラム陰性細菌の外膜に存在する物質であり、LPSを含有しているベシクルはグラム陰性細菌に由来することが自明である。
【0153】
大腸菌はグラム陰性細菌として室内空気に存在し、LPSを含有する細胞外ベシクルを分泌し、ベシクル内にはLPSだけでなく、免疫及び炎症反応を誘導するタンパク質を含有していることを本発明者らが報告したことがある。そこで、本発明者らは、室内粉塵から分離した細胞外ベシクルに対して大腸菌由来細胞外ベシクルの存在を評価した。
【0154】
室内粉塵から分離した細胞外ベシクルに大腸菌由来ベシクルが存在するかを評価するために、大腸菌特異的な16S rRNAプライマー(primer)を用いて遺伝型を評価した。具体的に、粉塵から分離した細胞外ベシクルを100℃で20分間加熱してDNAとRNAを溶出させ、これを鋳型(template)としてcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型として大腸菌特異的な16S rRNAプライマー(primer)を入れ、94℃(40秒)と72℃(40秒)を1サイクルとして2段階(2step)ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction、PCR)を40サイクル行った。
【0155】
その結果、大腸菌由来細胞外ベシクル(E.coli−EV)と同様に、室内粉塵から分離した細胞外ベシクル(Dust−EV)にも大腸菌の16S rRNAが存在することを確認した(図15参照)。
【0156】
また、室内粉塵から分離したベシクルに対して、大腸菌由来ベシクルに含有されたタンパク質の存在を確認した。このために、大腸菌由来ベシクルにより生成された抗体(anti−E.coli EV Ab)を用いてウエスタンブロット(Western Blot)を行った結果、室内粉塵には細菌などを含んでいるペレット(pellet)成分及び室内粉塵から分離したベシクルに、大腸菌由来ベシクル特異抗体に反応するタンパク質が存在することを確認した(図15参照)。
【0157】
前記結果より、室内空気には大腸菌由来細胞外ベシクルが存在することが明白である。
【0158】
実施例8.大腸菌由来細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応
実施例7では室内空気に大腸菌由来細胞外ベシクルが存在することが分かった。これに基づいて、大腸菌由来細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応を評価した。
【0159】
大腸菌由来細胞外ベシクルは大腸菌培養液から抽出した。具体的に、大腸菌を3mLのLB溶液が入っている試験管に37℃で4時間培養した後、その10μLずつを500mLのLB溶液が入っている2Lの8つの三角フラスコに移して37℃で4時間培養した。培養液を容量350mLの12つの高速遠心分離チューブに分けて入れた後、4℃で5000×gにて15分間連続的に2回行った。4L程度の上澄液を孔径0.45μmのメンブレインフィルター(membrane filter)を1回通過させた後、100kDa以下の分子のみを通過させることが可能なQuixstand systemを用いて300mLの量まで濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量50mLの超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に分けて入れた後、4℃で150,000×gにて3時間超遠心分離(ultracentrifugation)を行った。上澄液は捨て、チューブの下部に存在する沈殿物をPBSで溶かして腸内大腸菌由来細胞外ベシクルを抽出した。
【0160】
免疫反応を測定するために、C57BL/6、6週齢雌マウス(各群当たり4匹)を用いて前記の方法で抽出した大腸菌由来細胞外ベシクル1ng、10ng、100ngを30μLのPBSに溶かして1回鼻腔内投与し、2、8、24時間の経過後に媒介体の分泌を評価した。この際、PBSを投与したマウスを対照群とした。前述の方法によって麻酔液を用いてマウスを麻酔した後、気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)を得た。
【0161】
図16は大腸菌由来細胞外ベシクルによる炎症性サイトカインの分泌を気管支肺胞洗浄液で測定した結果である。その結果、ベシクルを投与した場合、対照群に比べて気管支肺胞洗浄液内TNF−αとIL−6の量が8時間目に増加し、これはベシクルの用量に比例いて増加することが分かる。
【0162】
実施例9.大腸菌由来細胞外ベシクルの反復投与による肺炎症
実施例8で大腸菌由来ベシクルが用量依存的にTh17免疫反応を誘導するIL−6の分泌を誘導するという事実に基づいて、大腸菌由来ベシクルを反復的に投与して肺炎症を評価した。
【0163】
図17に示したプロトコルに従って、C57BL/6、6週齢雌マウス(各群当たり4匹)に大腸菌由来細胞外ベシクル10ng、100ngを30μLのPBSに溶かして週2回3週間鼻腔内に投与した後、最終ベシクル投与24時間後に評価した。
【0164】
図18は肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数を示すもので、対照群(PBS)に比べて、大腸菌由来細胞外ベシクル投与群(EC−EV)における炎症細細胞の数が増加し、これはベシクルの投与用量に依存的に増加することが分かる。
【0165】
実施例10.大腸菌由来細胞外ベシクルによる肺気腫
実施例9で大腸菌由来細胞外ベシクルを3週間気道内に反復投与したとき、用量依存的に肺炎症が発生するという事実に基づいて、高用量のベシクルを4週間反復投与して構造的な変化を評価した。
【0166】
図19に示したプロトコルに従って、C57BL/6、6週齢雌マウス(各群当たり4匹)に大腸菌由来細胞外ベシクル100ngを30μLのPBSに溶かして週2回4週間鼻腔内投与した後、24時間目に組織学的変化を評価した。
【0167】
図20は肺組織における肺胞の破壊を示す結果であって、大腸菌由来ベシクルを投与した場合、対照群に比べて、肺胞の破壊を特徴とする肺気腫が発生することが分かる。これをコード長(chord length)に定量したとき、ベシクルを投与した場合は対照群に比べてコード長が大きく増加することが分かる。
【0168】
前記結果は、大腸菌由来細胞外ベシクルを比較的高い濃度で反復的に露出させる場合、非可逆的気道閉塞をもたらす肺気腫が発生することを意味する。
【0169】
実施例11.室内空気に生息するイエダニからの生エキス(crude extract)の製造及び細胞外ベシクルの抽出及び特性解明
本発明者らは、室内に生息するイエダニ(house dust mite、HDM)に細胞外ベシクルが存在するか否かを調べるために、イエダニから細胞外ベシクルを抽出して特性を解明する実験を行った。
【0170】
具体的に、韓国の延世大学校医用節足動物素材銀行からイエダニ20gを購入して綺麗なビーカーに移し、500mLのPBSを入れた後、4℃で24時間攪拌した。その後、高速遠心分離チューブ(high speed centrifuge tube)に分けて入れた後、4℃で10,000×gにて15分間高速遠心分離(high speed centrifugaion)を連続的に2回行った。450mL程度の上澄液を孔径0.22μmのメンブレインフィルター(membrane filter)を1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブ(ultacentrifuge tube)に分けて入れ、4℃で100,000×gにて3時間超遠心分離(ultracentrifugation)を行った。上澄液は捨て、チューブの下部に存在する沈殿物はPBSで溶かして細胞外ベシクルを抽出した。
【0171】
イエダニ由来細胞外ベシクルの特性解明のために細胞外ベシクルを分離するとき、opti−prep溶液を用いて追加精製を行った。容量10mLの超遠心分離チューブに分離した沈殿物を溶かした4.8mLの50%opti−prep溶液、3mLの40%opti−prep溶液 、及び2.5mLの10%opti−prep溶液を順次入れ、4℃で100,000×gにて2時間超遠心分離を行った。超遠心分離の後、40%opti−prep層と10%opti−prep層との間に白層が位置することを確認した。チューブの上方から1mLずつ分けて入れた後、opti−prep solusionを除去するためにそれぞれ9mLのPBSと混ぜた後、容量10mLの超遠心分離チューブに入れ、4℃で100,000×gにて2時間超遠心分離(ultracentrifugation)を行った。上澄液を捨て、チューブの下部に存在する沈殿物はさらに1mLのPBSに溶かして細胞外ベシクルを抽出した。
【0172】
図21はイエダニから細胞外ベシクルを得る過程を示す図である。図22はイエダニ由来細胞外ベシクルの形状とサイズを透過電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)及び動的光散乱法(dynamic light scattering、DLS)を用いて測定した結果を示す。図22より、イエダニ由来細胞外ベシクルは脂質二重層からなっており、100〜200nmのサイズを有し、球状をしていることが分かる。
【0173】
前記結果は、イエダニ抽出物(extract)に細胞外ベシクルが存在することを示す結果である。
【0174】
実施例12.室内空気に生息するイエダニ由来細胞外ベシクルによるin vitro先天免疫反応
実施例11ではイエダニ由来細胞外ベシクルが存在することが分かった。イエダニから分離した細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応を評価した。このために、マウスマクロファージ(RAW264.7)にイエダニ由来細胞外ベシクルを処理した。
【0175】
具体的に、マウスマクロファージ(RAW264.7)を1×10となるように24ウェルプレート(well plate)に24時間培養した。PBSで洗浄した後、DMEM培地に、イエダニから分離した細胞外ベシクル(HDM−EV)100ng、1μg、10μgをそれぞれ処理した後、15時間培養した。培養液を集めて4℃で800×gにて10分間遠心分離し、上澄液を集めてサイトカインの量をELISA法によって測定した。
【0176】
図23に示すように、イエダニから分離したベシクルによってTNF−αとIL−6の分泌が誘導されることが分かる。処理用量が増加するにつれてTNF−αとIL−6の生成が増加することを確認した。
【0177】
実施例13.室内空気に生息するイエダニ由来細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応
実施例11ではイエダニ由来細胞外ベシクルが存在することが分かり、実施例12ではイエダニ由来ベシクルによる免疫反応を確認することができた。これに基づいて、イエダニ由来細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応を評価した。
【0178】
具体的に、C57BL/6、6週齢雌マウス(各群当たり5匹)を用いて、イエダニ由来細胞外ベシクル0.1μg、1μg、10μgを30μLのPBSに溶かして鼻腔投与し、12時間後に炎症細胞の浸潤と媒介体の分泌を評価した。この際、PBSを投与したマウスを対照群とした。前述の方法によって麻酔液を用いてマウスを麻酔した後、気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)を得た。
【0179】
図24はイエダニ由来細胞外ベシクルによる炎症を評価した結果であって、肺炎症の指標である気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数を示す。図24に示すように、対照群(PBS)に比べてイエダニ由来細胞外ベシクル投与群(EV)における炎症細胞の数が増加し、これはベシクルの投与用量に比例して増加することが分かる。
【0180】
図25はサイトカインの分泌を気管支肺胞洗浄液で測定した結果である。図25に示すように、ベシクルを投与した場合、対照群に比べてBAL fluid内TNF−αとIL−6の量が増加し、これはベシクルの用量に依存的に増加することが分かる。特に10μgのベシクルを投与した群ではTNF−αとIL−6の量が有意に増加することを確認した。
【0181】
実施例14.室内空気に生息するイエダニ由来細胞外ベシクルの反復投与による肺炎症
実施例13ではイエダニ由来細胞外ベシクルによる免疫反応を確認することができた。これに基づいて、イエダニ由来細胞外ベシクルによるin vivo後天免疫反応を評価した。
【0182】
具体的に、C57BL/6、6週齢雌マウス(各群当たり5匹)を用いて、実施例13で効果があったイエダニ由来細胞外ベシクル10μgを1日1回3日間鼻腔投与して感作させた後、週2回2週間鼻腔投与した。24時間後、炎症細胞の浸潤及び炎症媒介体の分泌を評価した。この際、PBSを投与したマウスを対照群とした。前述の方法によって麻酔液を用いてマウスを麻酔した後、気管支肺胞洗浄液(BAL fluid)を得た。
【0183】
図26は炎症細胞の浸潤を示す結果であって、イエダニ由来ベシクル(HDM EV)を投与した場合、対照群(PBS)に比べて気管支肺胞洗浄液内の炎症細胞の数が大きく増加し、特に好中球の数が顕著に増加していた。
【0184】
図27は後天免疫反応の類型を分析するために気管支肺胞洗浄液におけるサイトカインの生成量をELISA法で測定した結果であって、Th17細胞から分泌されるIL−17がイエダニ由来細胞外ベシクルの投与によって有意に増加することを確認することができた。
【0185】
前記結果は、イエダニに存在する細胞外ベシクルが吸入されたとき、Th17免疫反応を媒介とする好中球性肺炎症が発生することを意味する。
【0186】
実施例15.室内粉塵における細菌とカビの培養及び細菌同定
室内空気に存在する細胞外ベシクルは、室内粉塵に存在する多様な細菌又はカビによって生成できる。本発明者らは、真空掃除機を用いて、特定住居地の寝具に存在する粉塵を収去した。真空掃除機のフィルター内に存在する粉塵を綺麗なガラス瓶に移して質量を測定した。室内粉塵5gを200mLのPBSが入っているビーカーに4℃で12時間溶かし、カーゼを用いてサイズの大きい物質を除去した。このときの粉塵液を1とし、濃度を1/10ずつ希釈して細菌とカビの成長が可能な培養液入りのプレート(plate)に粉塵液を塗抹した。一定の時間が経過した後、成長した細菌とカビを確認した。図28に示すように、室内粉塵に多様な細菌とカビが生息していることが分かった。
【0187】
その後、本発明者らは、室内粉塵に生息する細菌を分離、同定する実験を行った。室内粉塵に生息する細菌を分離する方法を図29に示した。具体的に、寝台から集めた粉塵を実施例1と同様の方法で溶かした後、ガーゼ(gauze)を用いてサイズの大きい物質を除去した。このときの粉塵液を1とし、濃度を1/10ずつ希釈し、細菌の成長が可能な培養液入りのプレート(plate)に粉塵液を塗抹した。一定の時間が経過した後、サイズと色が異なる様々なコロニー(colony)を確認し、各コロニー(colony)を接種して3mLの栄養液入りの試験管に37℃で培養した。生化学的方法を用いて細菌を同定する微生物自動検査システム(VITEK)装備を用いて、粉塵に生息する細菌を同定した。その結果、グラム陽性細菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)などを同定した。
【0188】
これにより、粉塵にある細胞外ベシクルはグラム陽性細菌から分泌されるものを含んでいることを予測することができる。
【0189】
実施例16.ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるin vitro免疫反応及びベシクル内タンパク質の役割
最近、本発明者らは、グラム陽性細菌としてのブドウ球菌が細胞外ベシクルを分泌することを最初に発見して報告した。室内空気に存在するグラム陽性細菌由来細胞外ベシクルによる呼吸器疾患の発生への役割を評価するために、ブドウ球菌培養液から、実施例1の方法でブドウ球菌から分泌される細胞外ベシクルを分離し、呼吸器疾患の病因に対する役割を評価した。
【0190】
具体的に、ブドウ球菌を3mLの栄養液が入っている試験管に接種した後、37℃で6時間培養し、その5mLを500mLの栄養液が入っている2Lの三角フラスコに移して37℃で4時間培養して吸光度(600nm)値が1.0となるようにした。培養液を容量500mLの高速遠心分離チューブ(high speed centrifuge tube)に入れた後、4℃で10,000×gにて20分間遠心分離を行った。細菌を除去した上澄液を孔径0.45μmのメンブレインフィルター(membrane filter)を1回通過させた後、分子量100kDa以下のタンパク質を除去することが可能なメンブレインを装着したQuixstand systemを用いて25倍濃縮した。濃縮液を孔径0.22μmのメンブレインフィルターを1回通過させた後、容量70mLの超遠心分離チューブ(ultracentrifuge tube)に入れ、4℃で150,000×gにて3時間超遠心分離(ultracetrifugation)した。沈殿物をPBS(phoshate buffered saline)で懸濁(resuspension)した後、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを得た。
【0191】
ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるin vitro免疫反応を評価するために、マウスマクロファージ(RAW264.7)を1×10となるように24ウェルプレート(well plate)に24時間培養し、PBSで洗浄してFBS(fetal bovine serum)を除去した後、DMEM培地にブドウ球菌由来細胞外ベシクルを1μg/mL、10μg/mLで処理して対照群とした。この際、100℃で20分間沸かして熱に弱い成分の機能を除去したブドウ球菌由来細胞外ベシクルを処理した細胞を実験群とした。各細胞外ベシクルを15時間処理した後、培養液を集めて4℃で800×gにて10分間遠心分離し、上澄液を集めてサイトカインの量をELISA法によって測定した。図30はそれぞれ代表的な炎症性サイトカインとしてのTNF−αとIL−6を測定した結果を示す。
【0192】
図30に示すように、TNF−αの場合、熱を処理した細胞外ベシクル(Heat−S−EV)1μg/mLを処理した群はその生成量が1/2以下に減少したが、10μg/mLを処理した群は大きい差異がなかった。これに対し、IL−6の場合、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルに熱を処理した群(Heat−S−EV)はIL−6の生成量がベシクルの濃度を問わず顕著に減少することが分かる。
【0193】
前記結果は、ブドウ球菌由来細胞外ベシクル内のタンパク質又は熱に弱い成分がIL−6による炎症反応を起こすことに重要な役割を果たすことを意味する。
【0194】
実施例17.ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるin vivo先天免疫反応及び肺炎症
ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによるin vivo免疫反応を評価するために、C57BL/6、6週齢雌マウス(各群当たり3匹)を使用した。PBSに溶かしたブドウ球菌由来細胞外ベシクル1μg、10μgをマウスの気道内に投与した群を実験群とし、PBSを気道内に投与した群を対照群とした。細胞外ベシクルを1回投与した後、翌日にマウスに対して初期肺炎症とサイトカインIL−6の量を測定した(図31の実験プロトコルを参照)。
【0195】
図32はブドウ球菌由来細胞外ベシクルを気道内に投与し、気管支肺胞洗浄液から炎症を評価した結果である。その結果、細胞外ベシクルを気道内に投与した群(S−EV)の場合、濃度に比例して気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数が増加した。特に炎症細胞中の好中球の数が顕著に増加することが分かる。
【0196】
また、気管支肺胞洗浄液からTh17免役反応における核心物質IL−6の生成量をELISA法で確認した結果、図33に示すように、ブドウ球菌由来細胞外ベシクル(S−EV)の濃度に比例してIL−6の分泌量も増加することが分かる。
【0197】
前記結果より、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルを哺乳動物に吸入させたときに好中球性肺炎症が発生し、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルはTh17免役反応において核心的な役割を果たすIL−6の生成を増加させることが分かる。
【0198】
実施例18.ブドウ球菌由来細胞外ベシクルによる先天免役反応の発生におけるタンパク質又は熱に弱い成分の役割
前記実施例16のin vitro実験に加えて、先天免役反応の発生に対するブドウ球菌由来細胞外ベシクル内のタンパク質の役割をin vivo実験によって検証した。
【0199】
具体的に、マウスはC57BL/6、6週齢雌(各群当たり3匹)を使用した。細胞外ベシクル1μg、10μgをマウスの気道内に投与した群を対照群とした。細胞外ベシクルを100℃で20分間沸かした群を実験群とした。マウスに細胞外ベシクルを1回投与した後、翌日にマウスに対して初期肺炎症とサイトカインIL−6の量を測定した(図34の実験プロトコルを参照)。
【0200】
図35はブドウ球菌由来細胞外ベシクルを気道内に投与し、気管支肺胞洗浄液における炎症反応を評価した結果である。その結果、熱処理を施した細胞外ベシクル10μgを気道内に処理した群(Heat−S−EV 10μg)と、対照群(S−EV 10μg)とは肺炎症(気管支肺胞洗浄液における炎症細胞の数)に大きい差異が無かった。
【0201】
図36は気管支肺胞洗浄液におけるIL−6の量をELISA法で測定した結果を示すもので、肺炎症結果とは異なり、熱処理を施したブドウ球菌由来細胞外ベシクル(1μg、10μg)を投与した群は対照群に比べてIL−6の生成量が顕著に減少することを確認した。
【0202】
前記結果より、ブドウ球菌由来細胞外ベシクルのタンパク質又は熱に弱い成分がIL−6による免役反応及び炎症性呼吸器疾患の発生に重要な役割を果たすことを再び確認した。
【0203】
実施例19.大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの免疫学的特性
実施例8の方法によって分離した大腸菌由来細胞外ベシクル1mgを1週間隔で3週間3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔に注入した。毎注入6時間、24時間、7日後にマウスの血液を得て、血液内に存在する細胞外ベシクル特異的な抗体を測定した。大腸菌由来ベシクル200ngがコートされた黒色86ウェルプレートに、1% BSA/PBSで1:500希釈されたマウス血清を入れ、常温で2時間培養した後、ぺルオキシダーゼ(peroxidase)が結合したマウス抗体を介して観察した。
【0204】
図37はマウス血液内大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)特異抗体の量を時間経過に伴って観察した結果である。図37に示すように、細胞外ベシクル特異抗体は、1回細胞外ベシクル投与7日後から形成され始め、2番目と3番目の細胞外ベシクル投与後にさらに多くの抗体が形成され、3番目のベシクルワクチン接種完了7日後に最も高い抗体形成の度合いを示した。
【0205】
前記の方法で3回の大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)接種が完了した7日後にマウスから脾臓細胞を分離した。分離された脾臓細胞(2×10)に大腸菌由来細胞外ベシクル100ngを入れて72時間培養した後、脾臓細胞が分泌する免役反応関連サイトカインとしてのIFN−γ、IL−17、IL−4の量をそれぞれELISA法で測定した。
【0206】
図38はマウス脾臓細胞に大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を処理したときに分泌されるIFN−γの量を示す結果である。図38に示すように、 大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループから得た脾臓細胞に比べて、 細胞外ベシクルを接種したマウスから得た脾臓細胞におけるIFN−γの分泌が増加した。
【0207】
図39はマウス脾臓細胞に大腸菌由来細胞外ベシクル(EC_EV)を処理したときに分泌されるIL−17の量を示す結果である。図39に示すように、大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループから得た脾臓細胞に比べて、 細胞外ベシクルを接種したマウスから得た脾臓細胞におけるIL−17の分泌が増加した。
【0208】
前記結果より、大腸菌由来細胞外ベシクルの接種の際に細菌感染に対する防御メカニズムとしてのB細胞で生成される抗体反応とT細胞免役反応が誘導されることを確認した。特に、T細胞免役反応は、細菌感染に対する防御に重要なIFN−γを分泌するTh1免役反応とIL−17を分泌するTh17免役反応が大腸菌由来細胞外ベシクルの接種によって効率的に誘導された。
【0209】
実施例20.大腸菌感染による敗血症に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能
大腸菌由来細胞外ワクチンの効能を評価するために、大腸菌の感染による敗血症動物モデルを確立した。大腸菌1×10、1×10、1×1010CFUをC57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔内に注入して5日間8時間間隔でマウスの生存率を観察した。
【0210】
図40は大腸菌(EC)の感染によるマウス致死率を示す結果である。図40に示すように、大腸菌1×1010CFUを注入した場合はマウスが24時間内に死亡し、大腸菌1×10、1×10CFUを注入した場合はマウスの生存には影響がなかった。
【0211】
実施例19の方法によって大腸菌由来細胞外ベシクル0.5μg、1μgを1週間隔で3週間3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり10匹)の腹腔内に注入した。3回の大腸菌由来細胞外ベシクルの接種が完了した7日後、大腸菌1×1010CFUを腹腔に注入して5日間8時間間隔でマウスの生存率を観察した。図41は前述の方法で確立された大腸菌の感染による敗血症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能を観察した結果である。図41に示すように、5日後に大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されていないマウスの生存率20%に比べて、大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスグループの生存率は80〜100%であった。
【0212】
前記方法によって、大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回腹腔内に接種した後、大腸菌1×1010CFUをマウスの腹腔に注入して6時間後に、血液内に存在する大腸菌の数を測定して図42に示した。
【0213】
図42に示すように、大腸菌由来細胞外ベシクルの接種の際に、大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されていないマウスから得た血液内の大腸菌数に比べて、ベシクルが接種されたマウスから得た血液内の大腸菌数が顕著に減少した。
【0214】
前記結果は、大腸菌由来細胞外ベシクルをワクチンとして予め投与したとき、大腸菌による感染を効率よく予防することができることを意味する。
【0215】
実施例21.大腸菌由来細胞外ベシクルによる炎症の発生に対する大腸菌由来細胞外ベシクルワクチンの効能
大腸菌由来細胞外ベシクルによる炎症の発生に対するベシクルワクチンの効能を評価するために、実施例19の方法によって大腸菌由来細胞外ベシクル1μgを1週間隔で3回C57BL/6(雄、6週、グループ当たり5匹)の腹腔に注射して接種した後、大腸菌由来細胞外ベシクルを腹腔投与し、しかる後に、血液から炎症媒介体の分泌を測定した。
【0216】
図43は大腸菌由来細胞外ベシクルが接種されたマウスに高用量の大腸菌由来細胞外ベシクル(5μg、3回)を注入して6時間後に、マウスの血液を採取し、血清内のTh17免役反応を誘導する炎症媒介体IL−6の量を測定した結果である。大腸菌由来細胞外ベシクルを接種していないマウスグループに比べて、大腸菌由来細胞外ベシクルを接種したマウスグループにおけるIL−6の量が顕著に減少した。
【0217】
前記結果は、低用量の大腸菌由来細胞外ベシクルをワクチンとして予め投与したとき、大腸菌由来細胞外ベシクルにより発生する炎症を効率よく予防することができることを意味する。
【0218】
以上の説明は本発明を例示的に説明したものに過ぎない。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲内において、多様な修正、変更及び置換が可能であろう。よって、本発明に開示された実施例及び添付図面等は、本発明の技術思想を限定するためのものではなく、説明するためのものである。これらの実施例及び添付図面等によって本発明の技術思想の範囲が限定されないのは、当業者には明白である。
【産業上の利用可能性】
【0219】
本発明の室内空気由来細胞外ベシクルを用いて炎症性呼吸器疾患などを診断、予防、及び/又は治療することができる。具体的に、本発明の室内空気由来細胞外ベシクルを動物に投与して呼吸器疾患の動物モデルを製造し、前記動物モデルを用いて呼吸器疾患に対する予防又は治療候補薬物を効率よく検索及び/又は発掘することが可能である。また、本発明は重症喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺癌などの呼吸器疾患の原因因子を正確に診断することを可能とし、ひいては前記疾病を予防及び/又は治療することが可能なワクチンの開発に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気由来細胞外ベシクルを含む組成物。
【請求項2】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペットの分泌物、ヒトのフケ、及び花粉よりなる群から選ばれるものに由来する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記細胞外ベシクルが、室内空気に存在する細菌から分泌されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記細菌から分泌される細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペット、植物、及びヒトのフケよりなる群から選ばれるものに生息する細菌から分泌されるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記細菌から分泌される細胞外ベシクルが、2種以上の細菌から分泌された細胞外ベシクルの混合物である、請求項3に記載の組成物。
【請求項6】
前記細菌が、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセテス(Streptomycetes)、及びコリネバクテリウム(Corinebacterium)よりなる群から選ばれるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項7】
前記細菌が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、ミクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)、及び大腸菌(Escherichia coli)よりなる群から選ばれるものである、請求項3に記載の組成物。
【請求項8】
前記細胞外ベシクルが、室内空気に存在するカビから分泌されるものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記カビから分泌される細胞外ベシクルが、室内粉塵に生息するカビから分泌されるものである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から分離したものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から自然に分泌されるものである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から人工的に分泌されるものである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
室内空気由来細胞外ベシクルを動物に投与して製造された疾病モデル。
【請求項14】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペット、ヒトのフケ、及び花粉よりなる群から選ばれるものに由来する、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項15】
前記細胞外ベシクルが、室内空気に存在する細菌又はカビから分泌されるものである、 請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項16】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペット、及び植物よりなる群から選ばれるものに生息している細菌又はカビから分泌されるものである、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項17】
前記細胞外ベシクルが、2種以上の細菌又はカビから分泌された細胞外ベシクルの混合物である、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項18】
前記細菌が、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセテス(Streptomycetes)、及びコリネバクテリウム(Corinebacterium)よりなる群から選ばれるものである、請求項15に記載の疾病モデル。
【請求項19】
前記細菌が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、ミクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)、及び大腸菌(Escherichia coli)よりなる群から選ばれるものである、請求項15に記載の疾病モデル。
【請求項20】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から分離したものである、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項21】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から自然に分泌されるものである、請求項20に記載の疾病モデル。
【請求項22】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から人工的に分泌されるものである、請求項20に記載の疾病モデル。
【請求項23】
前記疾病が、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、及び肺癌よりなる群から選ばれるものである、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項24】
前記動物がマウスである、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項25】
前記投与が鼻腔投与、口腔投与、又は気管(trachea)投与である、請求項13に記載の疾病モデル。
【請求項26】
室内空気由来細胞外ベシクルを用いて疾病予防又は治療候補薬物を探索する方法。
【請求項27】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペット、ヒトのフケ、及び花粉よりなる群から選ばれるものに由来する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記細胞外ベシクルが、室内空気に存在する細菌又はカビから分泌されるものである、 請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペット、及び植物よりなる群から選ばれるものに生息している細菌又はカビから分泌されるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記細胞外ベシクルが、2種以上の細菌から分泌された細胞外ベシクルの混合物である、請求項26に記載の方法。
【請求項31】
前記細菌が、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセテス(Streptomycetes)、及びコリネバクテリウム(Corinebacterium)よりなる群から選ばれるものである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記細菌が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、ミクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)、及び大腸菌(Escherichia coli)よりなる群から選ばれるものである、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から分離したものである、請求項26に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から自然に分泌されるものである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から人工的に分泌されるものである、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記疾病が、室内空気に存在する細胞外ベシクルにより発生又は悪化する、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、及び肺癌よりなる群から選ばれるものである、請求項26に記載の方法。
【請求項37】
前記方法は請求項13の疾病モデルに候補薬物を投与することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項38】
前記方法は室内空気由来細胞外ベシクルを体外で細胞に処理するときに候補薬物を処理することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞が炎症細胞、上皮細胞、又は線維芽細胞である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記方法は室内空気に存在する細胞外ベシクルと共に候補薬物を投与した後、炎症関連媒介体の水準を測定することを特徴とする、請求項26に記載の方法。
【請求項41】
前記炎症関連媒介体がTNF(Tumor necrosis factor)−α又はIL(Interleukin)−6である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
室内空気由来細胞外ベシクルを含む、疾病予防又は治療用ワクチン。
【請求項43】
前記疾病が、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、及び肺癌よりなる群から選ばれるものである、請求項42に記載のワクチン。
【請求項44】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペットの分泌物、ヒトのフケ、及び花粉よりなる群から選ばれるものに由来する、請求項42に記載のワクチン。
【請求項45】
前記細胞外ベシクルが、室内空気に存在する細菌から分泌されるものである、 請求項42に記載のワクチン。
【請求項46】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペット、及び植物よりなる群から選ばれるものに生息している細菌又はカビに由来するものである、請求項42に記載のワクチン。
【請求項47】
前記細胞外ベシクルが、2種以上の細菌から分泌された細胞外ベシクルの混合物であることを特徴とする、請求項42に記載のワクチン。
【請求項48】
前記細菌が、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセテス(Streptomycetes)、及びコリネバクテリウム(Corinebacterium)よりなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項45に記載のワクチン。
【請求項49】
前記細菌が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、ミクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)、及び大腸菌(Escherichia coli)よりなる群から選ばれるものであることを特徴とする、請求項45に記載のワクチン。
【請求項50】
前記細胞外ベシクルが細菌又はカビ培養液から分離したものである、請求項42に記載のワクチン。
【請求項51】
前記細胞外ベシクルが細菌又はカビ培養液から自然に分泌されるものである、請求項50に記載のワクチン。
【請求項52】
前記細胞外ベシクルが細菌又はカビ培養液から人工的に分泌されるものである、請求項50に記載のワクチン。
【請求項53】
前記細胞外ベシクルが、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で形質転換された細菌又はカビに由来するものである、請求項42に記載のワクチン。
【請求項54】
前記細胞外ベシクルが、効能を増加させるか副作用を減少させるために化学物質が処理された細菌又はカビに由来するものである、請求項42に記載のワクチン。
【請求項55】
前記細胞外ベシクルが、効能を増加させるか副作用を減少させるために化学物質が処理されたものである、請求項42に記載のワクチン。
【請求項56】
前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与して使用することを特徴とする、請求項42に記載のワクチン。
【請求項57】
室内空気由来細胞外ベシクルを含む、感染予防又は治療用ワクチン。
【請求項58】
前記感染が、室内空気に存在する細菌又はカビによる感染である、請求項57に記載のワクチン。
【請求項59】
前記感染が、病院の室内空気に存在する細菌又はカビによる感染である、請求項58に記載のワクチン。
【請求項60】
前記感染が、細菌又はカビによる副鼻腔炎、気管支炎、気管支拡張症、肺炎、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項57に記載のワクチン。
【請求項61】
前記細胞外ベシクルが、室内空気に存在する細菌又はカビから分泌されるものである、 請求項57に記載のワクチン。
【請求項62】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵に生息している細菌又はカビから分泌されるものであることを特徴とする、請求項57に記載のワクチン。
【請求項63】
前記細胞外ベシクルが、2種以上の細菌から分泌された細胞外ベシクルの混合物であることを特徴とする、請求項57に記載のワクチン。
【請求項64】
前記細菌が、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセテス(Streptomycetes)、及びコリネバクテリウム(Corinebacterium)よりなる群から選ばれるものである、請求項61に記載のワクチン。
【請求項65】
前記細菌が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、ミクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)、及び大腸菌(Escherichia coli)よりなる群から選ばれるものである、請求項61に記載のワクチン。
【請求項66】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から分離したものである、請求項57に記載のワクチン。
【請求項67】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から自然に分泌されるものである、請求項66に記載のワクチン。
【請求項68】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から人工的に分泌されるものである、請求項66に記載のワクチン。
【請求項69】
前記細胞外ベシクルが、効能を増加させるか副作用を減少させる目的で形質転換された細菌又はカビに由来するものである、請求項57に記載のワクチン。
【請求項70】
前記細胞外ベシクルが、効能を増加させるか副作用を減少させるために化学物質が処理された細菌又はカビに由来するものである、請求項57に記載のワクチン。
【請求項71】
前記細胞外ベシクルが、効能を増加させるか副作用を減少させるために化学物質が処理されたものである、請求項57に記載のワクチン。
【請求項72】
前記細胞外ベシクルは効能を増加させるか副作用を減少させる目的で薬物を併用投与することを特徴とする、請求項57に記載のワクチン。
【請求項73】
室内空気由来細胞外ベシクルを用いて、前記細胞外ベシクルによる疾病の発生又は悪化に関連した原因因子を診断する方法。
【請求項74】
室内空気由来細胞外ベシクルを用いて、室内空気に存在する細菌又はカビによる感染の発生又は悪化に関連した原因因子を診断する方法。
【請求項75】
前記細胞外ベシクルによる疾病は、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、肺癌、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記細菌又はカビによる感染は、副鼻腔炎、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、肺炎、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記診断は室内空気に存在する細胞外ベシクルの遺伝物質の塩基配列を分析することである、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項78】
前記診断は室内空気に存在する細胞外ベシクルのタンパク質を測定することである、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項79】
前記診断は室内空気に存在する細胞外ベシクルに対する免疫反応を測定することである、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項80】
前記免疫反応の測定は室内空気に存在する細胞外ベシクルに対する抗体を測定することである、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記診断は室内粉塵を用いて行われる、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項82】
前記診断は患者の血液に由来する試料を用いて行われる、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項83】
前記診断は患者の喀痰、鼻水、又は小便に由来する試料を用いて行われる、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項84】
室内空気由来細胞外ベシクルの活性を除去することを含む、疾病の発生及び悪化を予防する方法。
【請求項85】
室内空気由来細胞外ベシクルを除去することを含む、疾病の発生及び悪化を予防する方法。
【請求項86】
前記疾病が、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、肺癌、及び敗血症よりなる群から選ばれるものである、請求項84又は85に記載の方法。
【請求項87】
前記細胞外ベシクルの活性除去は細胞外ベシクルに熱を処理することを含む、請求項84に記載の方法。
【請求項88】
前記細胞外ベシクルの活性除去は細胞外ベシクルに特異的に作用する化学物質を処理する段階を含む、請求項84に記載の方法。
【請求項89】
前記化学物質が、細胞外ベシクル内のタンパク質、LPS(lipopolysaccharide)、又はペプチドグリカンの活性を抑制する物質であることを特徴とする、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記LPS活性抑制化学物質がポリミキシンB(polymyxin B)である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
前記方法は前記細胞外ベシクルの活性を除去する装置を用いることを特徴とする、請求項84に記載の方法。
【請求項92】
前記装置は請求項87〜90のいずれか1項の方法を用いることを特徴とする、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記方法は前記細胞外ベシクルを除去する装置を用いることを特徴とする、請求項85に記載の方法。
【請求項94】
前記装置が微細フィルターを含むことを特徴とする、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
前記微細フィルターは10nm〜200nmの孔径(pore size)を有することを特徴とする、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
呼吸器疾患の発生又は悪化に関連した室内空気の質を評価する方法であって、室内空気中の細胞外ベシクルの濃度を測定することを特徴とする方法。
【請求項97】
前記細胞外ベシクルの濃度測定は細胞外ベシクルの遺伝物質を測定することにより行われることを特徴とする、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
前記遺伝物質が16S rRNAであることを特徴とする、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
前記細胞外ベシクルの濃度測定は細胞外ベシクルのタンパク質を測定することにより行われることを特徴とする、請求項96に記載の方法。
【請求項100】
前記細胞外ベシクルの濃度測定は、顕微鏡で細胞外ベシクルの数を測定することにより行われることを特徴とする、請求項96に記載の方法。
【請求項101】
前記顕微鏡は高解像度光学顕微鏡又は電子顕微鏡を用いることを特徴とする、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
室内空気由来細胞外ベシクルを哺乳動物に投与することを含む、疾病予防又は治療方法。
【請求項103】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペット、ヒトのフケ、及び花粉よりなる群から選ばれるものに由来する、請求項102に記載の方法。
【請求項104】
前記細胞外ベシクルが、室内空気に存在する細菌又はカビから分泌されるものである、請求項102に記載の方法。
【請求項105】
前記細胞外ベシクルが、室内粉塵、イエダニ、カビ、ゴキブリ、ペット、及び植物よりなる群から選ばれるものに生息している細菌又はカビから分泌されるものである、請求項102に記載の方法。
【請求項106】
前記細胞外ベシクルが、2種以上の細菌から分泌された細胞外ベシクルの混合物である、請求項102に記載の方法。
【請求項107】
前記細菌が、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトミセテス(Streptomycetes)、及びコリネバクテリウム(Corinebacterium)よりなる群から選ばれるものである、請求項104に記載の方法。
【請求項108】
前記細菌が、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、ミクロコッカス・ライレ(Micrococcus lylae)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、シュードモナス・スタッツェリ(Pseudomonas stutzeri)、シュードモナス・ルテオラ(Pseudomonas luteola)、及び大腸菌(Escherichia coli)よりなる群から選ばれるものである、請求項104に記載の方法。
【請求項109】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から分離したものである、請求項102に記載の方法。
【請求項110】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から自然に分泌されるものである、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
前記細胞外ベシクルは細菌又はカビ培養液から人工的に分泌されるものである、請求項109に記載の方法。
【請求項112】
前記疾病が、室内空気に存在する細胞外ベシクルにより発生または悪化する、鼻炎、副鼻腔炎、鼻咽頭癌、喘息、慢性閉塞性肺疾患、気管支炎、気管支拡張症、細気管支炎、肺炎、及び肺癌よりなる群から選ばれるものである、請求項102に記載の方法。
【請求項113】
前記投与が皮下注射又は粘膜投与であることを特徴とする、請求項102に記載の方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate


【公表番号】特表2013−507354(P2013−507354A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−533068(P2012−533068)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際出願番号】PCT/KR2010/005125
【国際公開番号】WO2011/043538
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(512002884)イオン メディックス インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】