説明

室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【課題】 硬化後、難燃性に優れ、高温に長時間暴露しても難燃性が低下し難いシリコーン硬化物となり得る縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供する。
【解決手段】 (A)水酸基含有末端基を含有するオルガノポリシロキサン、(B)ケイ素原子結合加水分解性基を含有するシランもしくはシロキサンオリゴマー、(C1)白金化合物からなる難燃性付与剤と(C2)1分子中に少なくとも1個の式、−(R2)(R3)SiO−(R2)(R3)SiO− (式中、R2はアリール基であり、R3はアルケニル基である)で示される結合を有し、1分子中のケイ素原子数が8個以下であるオルガノシロキサン、および(D)無機質粉末からなることを特徴とする、縮合反応で硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関し、詳しくは、硬化後、優れた難燃性を示し、かつ高温に長時間暴露しても難燃性が低下しないシリコーン硬化物になり得る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、白金化合物と無機質充填剤を配合して難燃性を付与した室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は知られている。例えば、特開平4−18451号公報では、分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、シリカ粉末、石英粉末、炭酸亜鉛、白金化合物(塩化白金酸とエチレンを反応させ脱塩酸して得た白金−エチレン錯体)、トリエチルアミン塩、ジブチル錫ジオクトエートからなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されている。
【0003】
また、特開平5−230376号公報では、分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、アルミナ水和物、カーボンブラック、白金化合物{白金−ビニルシロキサン(1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン)錯体}、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シランからなる組成物が提案されている。
【0004】
さらに、特開平5−125285号公報では、分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサン、水酸化アルミニウム粉末、炭酸カルシウム、白金化合物(塩化白金酸のイソプロパノール溶液)とビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シランからなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が提案されている。
【0005】
ところが、この種の白金化合物を配合した室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、一般に、保存安定性に劣り、このものを長期間保存しておく難燃性が低下するという問題点があった。特に、その硬化物を高温下に長時間暴露した場合は、その難燃性が顕著に低下する。このため、これらの組成物の用途は限定されたものとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−18451号公報
【特許文献2】特開平5−230376号公報
【特許文献3】特開平5−125285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、硬化後、難燃性に優れ、高温に長時間暴露しても難燃性が低下し難いシリコーン硬化物となり得る縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は:
(A)25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであり、1分子中に、一般式;(X)a13-aSi−(式中、Xは水酸基または加水分解可能な基であり、R1は一価炭化水素基またはハロゲン原子置換一価炭化水素基であり、aは1、2または3である。)で示される末端基を、平均して1.5個以上含有するオルガノポリシロキサン(100重量部)、
(B)1分子中に、ケイ素原子結合加水分解性基を3個以上含有するシランもしくはシロキサンオリゴマー (0.01〜40重量部)
(C1)白金化合物からなる難燃性付与剤(白金化合物が白金金属換算で組成物中に1〜2,000ppmとなる量)
(C2)1分子中に少なくとも1個の式、
−(R2)(R3)SiO−(R2)(R3)SiO−
(式中、R2はアリール基であり、R3はアルケニル基である)で示される結合を有し、1分子中のケイ素原子数が8個以下であるアリール基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサン{(C1)成分中の白金原子1モルに対して2モル以上となる量}
および
(D)無機質粉末(5〜300重量部)
からなることを特徴とする、縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【発明の効果】
【0009】
以上のような本発明の縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化後、難燃性に優れ、高温に長時間暴露しても難燃性が低下し難いシリコーン硬化物となり得る。このため、かかる特性が要求される用途、例えば、電子機器や電気機器の部品用途において、コーティング剤や接着剤やシール剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
これを説明するに、(A)成分は、25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであり、1分子中に、一般式;(X)a13-aSi−(式中、R1は一価炭化水素基またはハロゲン原子置換一価炭化水素基であり、Xは水酸基または加水分解可能な基、aは1、2または3である。)で示される末端基を、平均して1.5個以上含有するオルガノポリシロキサンである。(A)成分は(B)成分と反応して架橋する。上式中、R1はメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、オクタデシル基のようなアルキル基;ビニル基、ヘキセニル基のようなアルケニル基;シクロヘキシル基、シクロペンチル基のようなシクロアルキル基;ベンジル基、β−フェニルエチル基のようなアリールアルキル基;フェニル基、トリル基のようなアリール基で例示される一価炭化水素基が例示される。また、上式中、R1はこれらの炭化水素基の水素原子がハロゲン原子で置換された、1、1、1−トリフロロプロピル基、パーフロロプロピル基のようなハロゲン原子置換一価炭化水素基からなってもよい。これらR1は同一分子内に同種のものばかり存在してもよく、異種のものが混在していてもよい。Xは水酸基、またはアルコキシ基、オキシム基、アセトキシ基、プロペニロキシ基、アミノ基、アミノキシ基、アミド基などで例示される加水分解可能な基である。合成の容易さ、硬化後の機械的性質のバランスなどからR1の大部分または全部がメチル基であることが好ましい。
【0011】
このようなオルガノポリシロキサンの代表例としては、
一般式;
(X)a13-aSiR”-(R2SiO)n−R2SiR”SiR13-a(X)a
(式中、R1とXは前記と同じであり、R”は酸素原子またはアルキレン基である。RはR1と同様な一価炭化水素基またはハロゲン原子置換一価炭化水素基であり、aは1、2または3であり、nは本オルガノポリシロキサンの25℃における粘度が100〜500,000mPa・s、好ましくは、500〜100,000mPa・sの範囲内になるような値である。)で表されるジオルガノポリシロキサンが好ましく使用される。本成分は重合度や粘度の異なるものの混合物や置換基の異なるものの混合物であってもよい。
【0012】
このようなジオルガノポリシロキサンの製造方法は周知であり、例えば、Xが水酸基であり、R”が酸素原子であるものは、水またはシラノール化合物を停止剤としてオクタメチルシクロテトラシロキサンをアルカリ触媒もしくは酸触媒により平衡化重合することにより容易に製造できる。Xがアルコキシ基であり、R”が酸素原子であるものは、両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサンとテトラアルコキシシラン、アルキルトリアルコキシシランもしくはジアルキルジアルコキシシランを縮合反応触媒の存在下で脱アルコール縮合することにより容易に製造できる。Xがアルコキシ基であり、R”がエチレン基であるものは、両末端ビニル基封鎖ジオルガノポリシロキサンとハイドロジェントリアルコキシシラン、ハイドロジェンメチルジアルコキシシランもしくはハイドロジェンジメチルアルコキシシランを白金化合物触媒の存在下でヒドロシリル化反応することにより容易に製造できる。
【0013】
(B)成分のシランまたはシロキサンオリゴマーは、本発明組成物の架橋剤として作用する。これらシランまたはシロキサンオリゴマーの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリメトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、テトラ(β−クロロエトキシ)シラン、テトラ(2,2,2−トリフルオロエトキシ)シラン、プロピルトリス(δ−クロロブトキシ)シラン、メチルトリス(メトキシエトキシ)シランなどのアルコキシシラン類;メチルポリシリケート、ジメチルテトラメトキシジシロキサンなどのアルコキシシロキサン類;メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチル(ジエチルケトオキシム)シラン、テトラ(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(シクロヘキシルアミノ)シラン、ビニルトリス(n−ブチルアミノ)シラン、メチルトリス(N−ブチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N−シクロヘキシルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シラン、1,2,3,4−テトラメチル−1−エチル−2,3,4−トリス(N,N−ジエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、メチルトリ(イソプロペノキシ)シラン、ビニルトリ(イソプロペノキシ)シラン;およびその部分加水分解縮合物が挙げられる。本成分の配合量は(A)成分100重量部に対して0.01〜40重量部であり、好ましくは0.1〜15重量部である。
【0014】
(C1)成分は本組成物の難燃性を付与するための成分である。かかる(C1)成分としては、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とオレフィンとの錯体、白金もしくは塩化白金酸とジケトンとの錯体、白金もしくは塩化白金酸と1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体が挙げられる。これらの中でも、1分子中に少なくとも1個の式:
−(4)(R3)SiO−(4)(R3)SiO−
(式中、R4は炭素数6以下のアルキル基であり、R3は上記と同様である)で示される結合を有し、かつ、1分子中のケイ素原子数が8個以下であるアルキル基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサンを配位子とした白金錯体または該白金錯体と該オルガノシロキサンとの混合物が好ましい。このような(C1)成分は上記白金錯体単独でも良いし、該白金錯体と該白金錯体に配位したアルキル基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサンと同一か同種類のオルガノシロキサンとの混合物のいずれでもよい。白金錯体に配位していないアルキル基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサンの量は通常、白金錯体中の白金原子1モルに対して30モル以下で使用される。
【0015】
このような(C1)成分は、例えば、ハロゲン化白金酸もしくはハロゲン化白金酸塩とアルキル基とアルケニル基を有するシロキサンとを加熱下に反応させることによって製造される(特公昭42−22924号公報参照)。この方法で(C1)成分を製造する場合には、出発原料となるアルキル基とアルケニル基を含有するシロキサン中のアルケニル基は、通常、ビニル基であり、またアルキル基は(C1)成分の白金錯体製造時の副反応防止と経済性の見地から、メチル基であることが好ましい。また、アルケニル基とアルキル基以外の基としては特に限定されないが、特にアリール基が含まれることは(C1)成分製造時の白金収率低下の原因となるため避ける必要がある。
【0016】
かかるアルキル基とアルケニル基を含有するシロキサンとしては、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラビニルテトラメチルシクロテトラシロキサンなどが例示される。本成分の配合量は、(C1)成分中の白金化合物が白金金属換算で組成物中に1〜2000ppmとなる量である。1ppmより白金金属量が少ないと充分な難燃性が得られなくなり、2000ppmを超える量では難燃性がかえって低下し、経済的にも不利になるからである。
【0017】
(C2)成分は、(C1)成分の安定性を高めるために必要な成分であり、1分子中に少なくとも1個の式:
−(R2)(R3)SiO−(R2)(R3)SiO−
(式中、R2はアリール基であり、R3はアルケニル基である)で示される結合を有し、かつ、1分子中のケイ素原子数が8個以下であるアリール基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサンである。本成分の配合量は、(C1)成分中の白金原子1モルに対して2モル以上が必要である。上式中、アリール基としては、フェニル基、トリル基が例示され、フェニル基が好ましい。アルケニル基としてはビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基が例示され、その内、ビニル基が好ましい。このようなアリール基とアルケニル基を有するオルガノシロキサンとしては1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルシロキサン、1,3−ジビニル−テトラフェニルジシロキサンが例示される。
【0018】
本発明の(C1)成分と(C2)成分は、そのまま(B)成分と(D)成分とともに混合してもよい。また、特許第2974692号公報に例示されるように(C1)成分と(C2)成分を予め混合した後、得られた混合物を(A)成分と(B)成分と(D)成分に混合してもよい。さらには、(C1)成分が、1分子中に少なくとも1個の式:
−(4)(R3)SiO−(4)(R3)SiO−
(式中、R4は炭素数6以下のアルキル基であり、R3は上記と同様である)で示される結合を有し、かつ、1分子中のケイ素原子数が8個以下であるアルキル基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサンを配位子とした白金錯体または該白金錯体と該オルガノシロキサンとの混合物である場合、(C1)成分と(C2)成分を混合し、ついでこの混合物を減圧蒸留することにより(C1)成分中のオルガノシロキサンを除去した後、この混合物を(A)成分と(B)成分と(D)成分に混合してもよい。この後者の方法に従えば、(C1)成分中の白金に配位したアルキル基とアルケニル基を有するオルガノシロキサンの一部および白金に配位していないオルガノシロキサンの一部もしくは全部が除去されて(C2)成分のフェニル基とアルケニル基を有するオルガノシロキサンに置換され、より保存安定性に優れた白金化合物とすることができる。このような白金化合物組成物は、高温における安定性と、系中に共存する他物質に対する安定性が従来知られている白金シロキサン錯体より高いという特徴を有する。
【0019】
(D)成分の無機質粉末は、本発明組成物の硬化前の流れ特性や、硬化後の機械的特性、難燃性を改善するために必須とされるものである。かかる無機質粉末としては、乾式法シリカ,湿式法シリカ等の補強性シリカ粉末、石英粉末、けいそう土、酸化アルミニウム,酸化鉄,酸化亜鉛,酸化チタン,酸化セリウムなどの金属酸化物粉末、水酸化マグネシウム,水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物粉末、炭酸カルシウム,炭酸亜鉛などの炭酸塩粉末;タルク、クレー、マイカ、カーボンブラック、ガラスビーズ、およびこれらの表面をトリメチルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、またはオクタメチルシクロテトラシロキサンのような疎水化剤で表面処理したもの、同様に、脂肪酸や樹脂酸で表面処理された炭酸カルシウムが例示される。これらの中でも、乾式法シリカ、湿式法シリカ等の補強性シリカ粉末、石英粉末、酸化セリウム粉末、酸化チタン粉末、カーボンブラック、水酸化アルミニウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末、炭酸マグネシウム粉末、炭酸亜鉛粉末が好ましい。これらの中でも乾式法シリカがより好ましく、その表面が上記のような疎水化剤で処理されたものがさらに好ましい。このような乾式法シリカとその他の上記粉末(例えば、石英粉末、酸化セリウム粉末、酸化チタン粉末、カーボンブラック)を併用することも好ましい。最も好ましい(D)成分として、乾式法シリカ、石英粉末、酸化セリウム粉末およびカーボンブラックからなる混合物や乾式法シリカ、石英粉末、酸化セリウム粉末、カーボンブラックおよび酸化チタン粉末からなる混合が挙げられる。
【0020】
(D)成分の配合量は、少なすぎると充分な機械的特性、難燃性が得られず、多すぎると粘度が高くなり過ぎて作業性が低下する。このことから、(D)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して5〜300重量部であり、好ましくは10〜200重量部である。(D)成分が補強性シリカや軽質炭酸カルシウムやカーボンブラックのような微細粉末である場合には、5〜60重量部の範囲の配合量であり、その粒子径が比較的大きい場合には、10〜200重量部の範囲の配合量であることが好ましい。
【0021】
本発明組成物には、さらに高伸度、低モジュラス化するために、二官能性シランおよび/またはシロキサンを付加的に配合することができる。このような二官能性シランまたはシロキサンとしては、ジメチルビス(N−メチルアセトアミドシラン)、ジメチルビス(N−エチルアセトアミド)シラン、ジフェニルビス(ジエチルアミノキシ)シラン、メチルフェニルビス(ジエチルアミノキシ)シラン、1,2,3,4−テトラメチル−1,2−ジエチル−3,4−ビス(N,N−ジエチルアミノキシ)シクロテトラシロキサン、ジフェニルジメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、一方の分子鎖末端のみがケイ素原子結合水酸基もしくはケイ素原子結合加水分解性基で封鎖されたジオルガノポリシロキサンなどが例示される。本成分の配合量は(A)成分100重量部に対して0.01〜20重量部の範囲内であり、(A)成分中のX基の濃度、組成物中の水分量などに応じて最適な量を選択して配合すればよい。
【0022】
本発明組成物には、さらに必要に応じて(A)成分と(B)成分の縮合反応を促進するための縮合反応促進触媒(硬化促進触媒)を添加することができる。かかる触媒としては、鉛2−エチルオクトエート、ジブチル錫2−エチルヘキソエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセチルアセトエート、ジブチル錫トリ−2−エチルヘキソエート、鉄2−エチルヘキソエート、コバルト2−エチルヘキソエート、マンガン2−エチルヘキソエート、カプリル酸第一錫、ナフテン酸錫、オレイン酸錫、ナフテン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ナフテン酸チタンのようなモノカルボン酸の金属塩;テトラブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラ−2−エチルヘキシルチタネート、テトラオクタデシルチタネート、トリエタノールアミンチタネート、エチレングリコールチタネート、ジイソプロポキシビス(アセト酢酸エチル)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトン)チタン、ジブトキシビス(アセト酢酸メチル)チタンのような有機チタン化合物;ヘキシルアミン、ドデシルアミンのようなアミン;酢酸ヘキシルアミン、リン酸ドデシルアミンのようなアミン塩;ベンジルトリメチルアンモニウムアセテートのような第4級アンモニウム塩;酢酸カリウムのようなアルカリ金属の塩がある。本成分の添加量は(A)成分100重量部に対して0.001〜10重量部であり、好ましくは0.01から10重量部であり、さらに好ましくは0.01〜5重量部である。
【0023】
本発明組成物には、さらに必要に応じて、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に添加配合することが公知とされる各種添加剤、例えば、顔料、難燃剤、耐熱性向上剤、熱伝導性向上剤、接着促進剤、チクソトロピー性付与剤、硬化遅延剤などを配合することは、本発明の目的を損なわない限り差支えない。本発明の室温硬化性組成物は、1液型でも2液型でもよく、サグタイプ(sag type)であっても、ノンサグタイプ(non-sag type)であってもよい。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例および参考例にて詳細に説明する。実施例中、部とあるのは重量部のことであり、粘度は25℃における測定値である。
【0025】
また、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物の難燃性は下記に示す通り、UL−94に準拠した方法にしたがって測定した。
【0026】
初期難燃性
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物をシート成形用金枠に入れ、25℃60%RH7日間の条件で硬化させて、厚さ0.8mmのシートを作成した。このシートを切断して、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ0.8mmの試験片を作製した。
【0027】
この試験片を垂直方向にクランプで固定し、下からメタンガスを使用したバーナーの炎(20mm)を10秒間接炎後、直ちにバーナーを遠ざけて燃焼時間(試験片が消炎するまでの時間)を測定した。消炎後直ちにバーナーを再び10秒間接炎し、同様にして燃焼時間を測定した。この操作を試験片5本について行い、計10回の測定値を合計して合計燃焼時間とした。また、10回の測定値のうち最大値を最大燃焼時間とした。
【0028】
加熱後の難燃性
初期難燃性の測定方法で得た長さ127mm、幅12.7mm、厚さ0.8mmの試験片を70℃に設定した加熱オーブン中にいれ、7日間加熱した。その後、これを取り出し、上記と同様にして難燃性を測定した。また、初期難燃性の測定方法で得た長さ127mm、幅12.7mm、厚さ0.8mmの試験片を150℃に設定した加熱オーブン中にいれ、21日間加熱した。その後、これを取り出し、上記と同様にして難燃性を測定した。
【0029】
参考例1−白金化合物組成物の調製
白金−1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(OMGプレシャスメタルジャパン株式会社より購入、商品名;Pt−VTSC、白金金属12重量%含有)10gに1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン10gを加え均一に混合して白金化合物組成物(A)を製造した。
【0030】
参考例2−白金化合物組成物の調製
白金−1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液(OMGプレシャスメタルジャパン株式会社より購入、商品名;Pt−VTSC、白金金属12重量%含有)100gに1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルシロキサン100gを加え混合した後、50℃、0.03torrの条件で減圧蒸留を行って1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサンを除去し、白金化合物組成物(B)を得た。この組成物中の白金含有率は10重量%であった。
【0031】
[実施例1]
分子鎖末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(粘度16000mPa・s)58部、ヘキサメチルジシラザンで表面処理された乾式法シリカ粉末(BET法比表面積130m/g)6部、平均粒子径5μmの石英粉末22部、平均粒子径5μmの酸化セリウム粉末6部、平均粒子径0.2μmの酸化チタン粉末3部、平均粒子径35nmのアセチレンブラック(電気化学工業株式会社製、商品名;デンカブラック)1部、メチルトリメトキシシラン2部、硬化促進触媒としてのジイソプロポキシビス(アセト酢酸エチル)チタン2部、白金−1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液0.027部(白金金属換算で32ppm)、1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサン0.027部を湿気遮断下で均一になるまで混合して室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を調製した。
【0032】
この組成物をアルミチューブに入れて密封した。ついで、この組成物をシート成形用金枠に入れ、25℃60%RH7日間の条件で硬化させて、厚さ0.8mmのシートを作成した。このシートを切断して、長さ127mm、幅12.7mm、厚さ0.8mmの試験片を作製した。この試験体について初期難燃性および加熱後の難燃性を測定し、それらの結果を表1に示した。
【0033】
[実施例2]
1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサンと白金−1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液の替わりに、参考例1で作製した白金化合物組成物(A)0.054部を使用した以外は、実施例1と同様にして組成物を製造した。この組成物から実施例9と同様にして試験体を作製し、その初期難燃性と加熱後の難燃性を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0034】
[実施例3]
1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサンと白金−1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン溶液の替わりに、参考例2で作製した白金化合物組成物(B)0.032部を使用した以外は、実施例1と同様にして組成物を製造した。この組成物から実施例9と同様にして試験体を作製し、その初期難燃性と加熱後の難燃性を測定した。これらの結果を表1に示した。
【0035】
[比較例1]
1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサンを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造した。この組成物から実施例9と同様にして試験体を作製し、その初期難燃性と加熱後の難燃性を測定した。これらの結果を表1に併記した。
【0036】
【表1】

94V−0とは、10秒の接炎を2回行った際10秒以内に燃焼が停止し、2回目の接炎後のグローイング(Glowing)が30秒以内に消失し、フレーミングドリップ(flaming drip)の無いことを意味する。
94V−1とは、10秒の接炎を2回行った際30秒以内に燃焼が停止し、2回目の接炎後のグローイング(Glowing)が60秒以内に消失し、フレーミングドリップ(flaming drip)の無いことを意味する。
【0037】
実施例1、2、3および比較例1から明らかなように、(A)成分〜(D)成分からなる本発明の縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、特に、(C1)成分の白金化合物からなる難燃性付与剤と(C2)成分のアリール基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサンを含有しているので、硬化後、難燃性に優れ、高温に長時間暴露しても難燃性が低下し難いシリコーン硬化物になり得るという特徴を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであり、1分子中に、一般式;(X)a13-aSi−(式中、Xは水酸基または加水分解可能な基であり、R1は一価炭化水素基またはハロゲン原子置換一価炭化水素基であり、aは1、2または3である)で示される末端基を、平均して1.5個以上含有するオルガノポリシロキサン(100重量部)、
(B)1分子中に、ケイ素原子結合加水分解性基を3個以上含有するシランもしくはシロキサンオリゴマー (0.01〜40重量部)
(C1)白金化合物からなる難燃性付与剤(白金化合物が白金金属換算で組成物中に1〜2,000ppmとなる量)
(C2)1分子中に少なくとも1個の式、
−(R2)(R3)SiO−(R2)(R3)SiO−
(式中、R2はアリール基であり、R3はアルケニル基である)で示される結合を有し、1分子中のケイ素原子数が8個以下であるアリール基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサン{(C1)成分中の白金原子1モルに対して2モル以上となる量}
および
(D)無機質粉末(5〜300重量部)
からなることを特徴とする、縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物
【請求項2】
(A)成分中のXがアルコキシ基であり、(B)成分中の加水分解性基がアルコキシ基である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
(C1)成分が1分子中に少なくとも1個の式、
−(R3)(R4)SiO−(R3)(R4)SiO−
(式中、R3はアルケニル基であり、R4は炭素数6以下のアルキル基である)で示される結合を有するアルキル基とアルケニル基を含有する2価のオルガノシロキサンを配位子とし、アルキル基とアルケニル基を1分子中に含有し、8個以下のケイ素原子有する白金錯体または該白金錯体と該オルガノシロキサンとの混合物からなる難燃性付与剤である請求項1記載の組成物。
【請求項4】
(C2)成分が1,3−ジビニル−1,3−ジフェニルジメチルジシロキサンであるである請求項1記載の組成物。
【請求項5】
(D)成分が、補強性シリカ粉末、石英粉末、酸化セリウム粉末、酸化チタン粉末、カーボンブラック、水酸化アルミニウム粉末、炭酸カルシウム粉末、酸化アルミニウム粉末、水酸化マグネシウム粉末、炭酸マグネシウム粉末、炭酸亜鉛粉末、およびこれらの混合物から選ばれる無機質粉末である請求項1記載の組成物。
【請求項6】
補強性シリカ粉末が乾式法シリカ粉末である請求項5記載の組成物。
【請求項7】
(D)成分が、補強性シリカ粉末、石英粉末、酸化セリウム粉末、酸化チタン粉末およびカーボンブラックの混合物である請求項1記載の組成物。
【請求項8】
(1)縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中に白金金属換算で1〜2,000ppmとなる量の(C1)白金化合物からなる難燃性付与剤を、
(A)25℃における粘度が100〜500,000mPa・sであり、1分子中に、一般式;(X)a13-aSi−(式中、Xは水酸基または加水分解可能な基であり、R1は一価炭化水素基またはハロゲン原子置換一価炭化水素基であり、aは1、2または3である)で示される末端基を、平均して1.5個以上含有するオルガノポリシロキサン(100重量部)、
(B)1分子中に、ケイ素原子結合加水分解性基を3個以上含有するシランもしくはシロキサンオリゴマー (0.01〜40重量部)
(C2)1分子中に少なくとも1個の式、
−(R2)(R3)SiO−(R2)(R3)SiO−
(式中、R2はアリール基であり、R3はアルケニル基である)で示される結合を有し、1分子中のケイ素原子数が8個以下であるアリール基とアルケニル基を含有するオルガノシロキサン{(C1)成分中の白金原子1モルに対して2モル以上となる量}
および
(D)無機質粉末(5〜300重量部)
からなる組成物と混合する。
(2)上記縮合反応により硬化する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化させる。
ことを特徴とする方法。
【請求項9】
(C1)成分と(C2)成分が事前に混合された混合物を、(A)成分、(B)成分および(D)成分と混合することを特徴とする請求項8記載の方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の方法で製造された硬化物。
【請求項11】
電気・電子部品用のコーティング剤、シール剤または接着剤であることを特徴とする請求項10記載の硬化物。

【公開番号】特開2009−167420(P2009−167420A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105326(P2009−105326)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【分割の表示】特願2003−515585(P2003−515585)の分割
【原出願日】平成14年7月26日(2002.7.26)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】