説明

家屋

【課題】従来の工法による建築可能で、かつ、面部材への過大な応力負担が発生することなく温度緩衝効果を高めることのできる家屋の提供を目的とする。
【解決手段】小屋裏1、および居住スペースを含む屋内空間を断熱処理するとともに、通風路2を介して居住スペースに連通する小屋裏1には、固液相間の相転移温度が20~30℃に調整された潜熱蓄熱体3が配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家屋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蓄熱体を温度緩衝体として使用した家屋としては、特許文献1に記載のものが知られている。この従来例において、建物の面部材に沿って空隙を形成し、該空隙内に蓄熱材が封入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-156170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来例において、建物内で広い面積を占める面部材に沿って蓄熱材を配置することは、例えば、床下のみに蓄熱材を配置する場合に比して全体の蓄熱効果を高めるために有効ではあるが、工法の変更を要する上に建築工数がかかるという欠点に加え、面部材への過大な応力負担が発生するという問題がある。
【0005】
本発明は、以上の欠点を解消すべくなされたものであって、従来の工法による建築可能で、かつ、面部材への過大な応力負担が発生することなく温度緩衝効果を高めることのできる家屋の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば上記目的は、
小屋裏1、および居住スペースを含む屋内空間を断熱処理するとともに、通風路2を介して居住スペースに連通する小屋裏1には、固液相間の相転移温度が20~30℃、望ましくは23~28℃に調整された潜熱蓄熱体3が配置される家屋を提供することにより達成される。
【0007】
本発明において、家屋内で、断熱材11により断熱処理された屋内空間には通風路2を介して居住スペースに連通する小屋裏1が含まれており、該小屋裏1に潜熱蓄熱体3が配置される。
【0008】
小屋裏1に配置された潜熱蓄熱体3は、相転移温度領域以外においては、暖まりにくく冷えにくい顕熱蓄熱体8として挙動して周囲温度の温度変化を抑制し、相転移温度を挟む温度変化に対しては、より積極的に相転移により周囲との熱量の吸熱、放熱を行って周囲温度の温度変化を抑制する熱的緩衝体して機能する。
【0009】
構造的に高い支持強度が期待できる小屋裏1を屋内空間として断熱処理して潜熱蓄熱体3の収容スペースとすることにより、潜熱蓄熱体3の比重がモルタル、コンクリート等の顕熱蓄熱材に比して小さなことと相俟って、多くの潜熱蓄熱体3を居住スペースを狭めることなく格納することが可能になる。この結果、潜熱蓄熱体3における蓄熱、吸熱熱量が飛躍的に大きくなり、小屋裏1において潜熱蓄熱体3により冷却、あるいは加温された空気が居住スペースに自然循環、あるいは強制循環により供給されることによって居住スペース内の温度を一定に保つ機能が高まり、冷暖房装置の使用を抑えることが可能になる。
【0010】
また、屋内空間は、潜熱蓄熱体3の熱的緩衝作用によって温度変化が小さくなるために、冷暖房装置を設定温度を基準とする自動断接運転させている場合には、断接動作が少なくなる。この結果、比較的高い電力を必要する冷暖房装置の起動動作が減少するために、電力節約に有効である。
【0011】
さらに、前記潜熱蓄熱体3は、小屋裏1の床面1aから適宜高さに配置されて該床面1aと潜熱蓄熱体3との間に通風空間4が形成される家屋を構成した場合には、潜熱蓄熱体3の小屋裏1空間との接触面積が大きくなるために、熱交換効率が良好になり、結果、潜熱蓄熱体3による緩衝機能がより向上する。
【0012】
また、家屋は、
家屋基礎5と前記屋内空間との間の床下空間6にヒータ7を埋設した顕熱蓄熱体8を配置するとともに、該顕熱蓄熱体8上に、相転移温度が20~30℃に調整された潜熱蓄熱体3を積層し、
かつ、前記小屋裏1と床下空間6内の空気を小屋裏1と床下空間6とを連結する通風路2を介して強制循環させるように構成することができる。
【0013】
本発明において、家屋基礎5と屋内空間との間の床下空間6を蓄熱材の新たな格納場所とすることにより、蓄熱材の容積を大きくすることが可能になり、緩衝機能を高めることができる。家屋基礎5上の床下空間6の耐荷重は極めて高いために、床下空間6には比重の大きなコンクリート、モルタル等の顕熱蓄熱体8を併用することが可能であり、さらに顕熱蓄熱体8は一般に適度の強度を有するために、顕熱蓄熱体8にヒータ7を埋め込むと、顕熱蓄熱体8をヒータ7の固定手段として使用できるために、施工効率が向上する。
【0014】
また、ヒータ7により加温された顕熱蓄熱体8への熱量の一部は、潜熱蓄熱体3の相転換熱量として蓄積されるために、顕熱蓄熱体8の過熱状態、およびそれに伴う床温度の上昇を抑えながら、効率的な蓄熱が可能になる。
【0015】
また、小屋裏1空間と床下空間6を適宜の送風手段12により循環させると、屋内空間内の温度均一化が促進される。この結果、蓄熱材の蓄熱、蓄冷作用と相俟って、屋内空間内を所望の温度に保つための冷暖房装置の使用電力を低減することが可能になる。
【0016】
さらに、潜熱蓄熱体3は、内部が小室9に区画された直方体形状の硬質容器10中に潜熱蓄熱剤を封入して形成することができる。潜熱蓄熱剤を硬質で、直方体形状の容器10中に封入することにより、取り扱いが容易になる上に、硬質容器10を積み上げ、あるいは適宜の支持台に載置するだけで潜熱蓄熱体3の設置作業を完了させることが可能になり、施工作業性も向上する。
【0017】
また、内部が小室9により区画された硬質容器10は、小室9間の隔壁9aが補強材として機能するために、薄肉で、かつ、取り扱いに難がない程度の大容量に形成しても、十分な強度を期待でき、硬質容器10の薄肉化による伝熱効率の向上、軽量化、大容量化による施工効率の向上を実現できる。
【0018】
さらに、小室9間の隔壁9aは、容器10の外周壁10aに連続して該外周壁10aとの伝熱要素として機能するために、容量が大きくなっても潜熱蓄熱剤全体との均等な熱量交換が可能になり、蓄熱体として性能を向上させることが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来の工法による建築可能で、かつ、面部材への過大な応力負担が発生することなく温度緩衝効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の家屋を示す説明図である。
【図2】家屋の小屋裏を示す図で、(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は(b)の2C線断面図である。
【図3】家屋の床部を示す図で、(a)は一部を剥離して示す平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1に2階建て木造住宅として構成された本発明の家屋を示す。図において5は地盤上に構築される家屋のコンクリート基礎(家屋基礎)であり、このコンクリート基礎5に支えられて、下階13A、および上階13Bからなる居住スペース13が形成される。
【0022】
図1、3に示すように、居住スペース13を囲む外壁内には断熱材11が収容されて該居住スペース13に対する断熱処理が施される。
【0023】
図1に示すように、断熱処理領域は、上階13Bと屋根部14との間の小屋裏1空間まで延長されるとともに、居住スペース13との間に通風路2が形成され、小屋裏1に潜熱蓄熱体3が配置される。
【0024】
図2に詳細を示すように、潜熱蓄熱体3は、900×500×10(mm)程度の直方体形状のポリプロピレン容器10に20~30℃で固液相転換が発生する潜熱蓄熱剤を封入して形成される。本例において潜熱蓄熱剤には、相転換温度を23~28℃に設定した硫酸ナトリウム+水和物系溶液(Na2SO4・10H2O)が使用され、容器10内は隔壁9aにより10×10(mm)程度の小室9に区画される。
【0025】
なお、図(c)には、隔壁9aの上端と蓋部10bとの間に間隙を設けて各小室9間を連通させたものが示されているが、上記間隙を設けることなく小室9を完全に隔壁9aで仕切ることも可能である。小室9間を連通させることにより、予め容器10を密閉状に形成しておき、適宜箇所に形成した図外の注入口から液状の潜熱蓄熱剤を注入しても各小室9内に潜熱蓄熱剤を行き渡らせ得ることができるために、潜熱蓄熱体3の製造効率を高めることができる。
【0026】
図2に示すように、上記潜熱蓄熱体3は、小屋裏1の床面1a上に設置された支持台15に載せられて所定位置に配置される。支持台15は、潜熱蓄熱体3の底面と小屋裏1の床面1aとの間に通風空間4が形成されるように、潜熱蓄熱体3を床面上適宜高さに保持できるように形成される。
【0027】
なお、図1において小屋裏1は全域にわたって断熱処理が施される場合が示されているが、全域にわたる断熱処理が困難である場合には、小屋裏1の一角に断熱処理を施したスペースを形成し、該小屋裏1の断熱スペース内に潜熱蓄熱体3を収容するように構成することも可能である。
【0028】
この場合、居住スペース13、および後述する床下空間6との間の通風路2は上記小屋裏1の断熱スペースに連通され、循環流は、該小屋裏1の断熱スペース、居住スペース13、および床下空間6との間で形成される。
【0029】
図3に示すように、下階13Aの床材13aとコンクリート基礎5との間に形成される床下空間6の内壁面には、上位コンクリート基礎5の内壁、および壁部の下端部に発泡ウレタンからなる断熱材11を吹き付けることにより断熱処理が施され、さらに、コンクリート基礎5上に顕熱蓄熱体8としてのモルタルが積層され、その上面に上述した潜熱蓄熱体3が積層される。
【0030】
モルタル8内には冬期においてモルタル8を暖めるためのヒータ7が埋設される。本例において、ヒータ7は、内部に発熱体を収容して棒状に形成されるヒータ7が所定ピッチで埋設されており、各ヒータ7を電気的に連結する給電コード7aを介して図外の商用電源に接続される。
【0031】
また、本例において、モルタル8からコンクリート基礎5への伝熱を防止するために、モルタルとコンクリート基礎5との間に断熱層16が配置されるが、コンクリート基礎5は十分大きな熱容量をもつために、省略することも可能である。さらに、床下空間6を利用して図1に鎖線で示すように、家屋外の外気に排気する適宜の熱交換機17を配置することもできる。
【0032】
図1に示すように、上記居住スペース13、小屋裏1、および床下空間6は、通風路2を介して相互に連通するとともに、小屋裏1には、小屋裏1から床下に向かう循環流を発生させるための送風機(送風手段12)が設置される。
【0033】
したがってこの実施の形態において、冬期においては夜間の安価な電力を使用してヒータ7により顕熱蓄熱体8を加温しておくと、顕熱蓄熱体8と潜熱蓄熱体3に蓄えられた熱量が徐々に床下空間6に放熱され、暖気が通風路2を経由して居住スペース13に供給されるとともに、小屋裏1に達した暖気により小屋裏1の潜熱蓄熱体3は暖められて熱量を蓄積する。
【0034】
また、放熱量は、外気温との差が大きくなるほど大きくなるが、床下空間6に配置される潜熱蓄熱体3は相転換温度を超える温度上昇をもたらす過剰熱量が顕熱蓄熱体8に加えられた際、過剰熱量を吸収して顕熱蓄熱体8の温度上昇を抑えるために、間接的に顕熱蓄熱体8における保温性能を高める。
【0035】
これらの結果、居住スペース13の温度が低下すると、顕熱蓄熱体8、および潜熱蓄熱体3が蓄積された熱量を徐々に放出するために、居住スペース13は快適な温度に維持される。
【0036】
さらに、夏期においても、床下空間6は比較的低温に維持されるために、居住スペース13、および小屋裏1から送り込まれる暖気は顕熱蓄熱体8、および潜熱蓄熱体3により冷やされた後、居住スペース13等に送り込まれるとともに、小屋裏1内の空気は潜熱蓄熱体3により冷やされて居住スペース13に送り込まれるために、居住スペース13が快適な温度に維持される。
【符号の説明】
【0037】
1 小屋裏
1a 床面
2 通風路
3 潜熱蓄熱体
4 通風空間
5 家屋基礎
6 床下空間
7 ヒータ
8 顕熱蓄熱体
9 小室
10 容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小屋裏、および居住スペースを含む屋内空間を断熱処理するとともに、通風路を介して居住スペースに連通する小屋裏には、固液相間の相転移温度が20~30℃に調整された潜熱蓄熱体が配置される家屋。
【請求項2】
前記潜熱蓄熱体は、小屋裏の床面から適宜高さに配置されて該床面と潜熱蓄熱体との間に通風空間が形成される請求項1記載の家屋。
【請求項3】
家屋基礎と前記屋内空間との間の床下空間にヒータを埋設した顕熱蓄熱体を配置するとともに、該顕熱蓄熱体上に、相転移温度が20~30℃に調整された潜熱蓄熱体を積層し、
かつ、前記小屋裏と床下空間内の空気を小屋裏と床下空間とを連結する通風路を介して強制循環させた請求項1または2記載の家屋。
【請求項4】
前記潜熱蓄熱体は、内部が小室に区画された直方体形状の硬質容器中に潜熱蓄熱剤を封入して形成される請求項1、2または3記載の家屋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−64286(P2013−64286A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204275(P2011−204275)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(596126568)株式会社益田建設 (8)
【Fターム(参考)】