説明

容器の印刷マークのずれ検出方法、容器成形用シートおよび印刷マークを有する容器の製造方法

【課題】 印刷マークを直接確認することなく、印刷マークのずれを容易に検出することができる容器の印刷マークのずれ検出方法を提供すること。
【解決手段】 印刷マーク7を施したシート8を熱成形し、成形部の輪郭を裁断してなる容器の印刷マークのずれ検出方法において、前記シート8の正規の裁断輪郭から許容されるずれ距離Sをもって、前記シート8に検知マーク9を施し、前記シート8を熱成形、裁断したとき、容器1の周縁部5に前記検知マーク9が現れるのを検知することによって、印刷マーク7がずれていることを認識することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の印刷マークのずれ検出方法、容器成形用シート、および印刷マークを有する容器の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器は、例えば、発泡樹脂シートの少なくとも一方の面にフィルムを貼設して成る成形用シートを、加熱軟化させ真空成形機などによって熱成形し、成形部の輪郭を裁断することによって製造される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平11−34251号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような容器では、成形用シートに予め印刷マークが施され、そのシートを熱成形、裁断するのが一般的であるが、印刷マークがずれた状態で熱成形、裁断が行なわれると、不良品として排除する必要が生じる。
【0005】
しかし、この際、印刷マークが容器内面、或いは底面などにある場合には、外部からそのずれを確認することは難しく、特に、容器が複数積み重ねられた状態にある場合には、印刷マークのずれを外部から確認することは不可能になる。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の実情に鑑みて成されたものであって、その目的は、印刷マークを直接確認することなく、印刷マークのずれを容易に検出することができる容器の印刷マークのずれ検出方法、容器成形用シート、および印刷マークを有する容器の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するため、本発明に係る容器の印刷マークのずれ検出方法は、印刷マークを施したシートを熱成形し、成形部の輪郭を裁断してなる容器の印刷マークのずれ検出方法において、前記シートの正規の裁断輪郭から許容されるずれ距離をもって、前記シートに検知マークを施し、前記シートを熱成形、裁断したとき、容器の周縁部に前記検知マークが現れるのを検知することによって、印刷マークがずれていることを認識することを特徴とする。
ここで、上記シートは、単層のシートでもよく、表面にフィルムを貼設した複合シートであってもよい。また、上記印刷マークとしては、ある範囲内に描かれる文字、記号、絵、模様などが挙げられ、これらの印刷マークが、直接シートに印刷されていても、印刷フィルムをシートに積層することにより施されていてもよい。また、印刷マークと検知マークとは、シートの表裏面において同一面に施されていても、一方が表面に他方が裏面に施されていてもよい。
【0008】
また、本発明に係る容器の印刷マークのずれ検出方法は、上記の本発明において、少なくとも印刷マークが内面に施された容器を熱成形、裁断することを特徴とする。
ここで、上記内面とは、容器の物品が納められる収納部側の面をいう。
【0009】
また、本発明に係る容器の印刷マークのずれ検出方法は、上記の本発明において、上記周縁部に外方へ向けて突出するフランジ部を備えた容器を熱成形、裁断することを特徴とする。
ここで、上記フランジ部とは、容器の側壁上縁から外方に向けて突出する部分をいう。
【0010】
さらに、本発明に係る容器の印刷マークのずれ検出方法は、上記の本発明において、上記フランジ部に折曲部が形成されることを特徴とする。
【0011】
また、上記した目的を達成するため、本発明に係る容器成形用シートは、印刷マークとともに、正規の裁断輪郭から許容されるずれ距離をもって検知マークを施したことを特徴とする。
ここで、上記検知マークは、容器成形において、ずれ方向が一方に限られる場合には、1箇所のみに施してもよく、当然、複数箇所に施してもよい。
【0012】
また、本発明に係る容器成形用シートは、上記の本発明において、上記検知マークを、上記裁断輪郭の周囲に複数施したことを特徴とする。
ここで、上記検知マークの数は、無数に施した場合、即ち、裁断輪郭の全周に亘って
帯状に施した場合を含む。
【0013】
また、上記した目的を達成するため、本発明に係る印刷マークを有する容器の製造方法は、印刷マークを施したシートを熱成形し、成形部の輪郭を裁断してなる印刷マークを有する容器の製造方法において、前記印刷マークとともに、正規の裁断輪郭から許容されるずれ距離をもって検知マークを施したシートを、熱成形、裁断することによって、容器を製造することを特徴とする。
ここで、上記シートは、単層のシートでもよく、表面にフィルムを貼設した複合シートであってもよい。また、上記印刷マークとしては、ある範囲内に描かれる文字、記号、絵、模様などが挙げられ、これらの印刷マークが、直接、シートに印刷されていても、印刷フィルムを、シートに積層することにより施されていてもよい。
【0014】
また、本発明に係る印刷マークを有する容器の製造方法は、上記した本発明において、周縁部に外方へ向けて突出するフランジ部を備え、少なくとも印刷マークを内面に有する容器を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る容器の印刷マークのずれ検出方法、容器成形用シート、および印刷マークを有する容器の製造方法によれば、容器内、或いは容器底壁下面に施された印刷マークのずれを、直接確認することなく、検知マークの有無により外部から間接的に確認することができるので、検知が容易となる。特に、容器を複数積み重ねた状態でも、印刷マークのずれを確認することができるので、容器の成形からその後の工程に至るまでの間の流れ作業の中で、特別な検知工程を設けることなく、印刷マークのずれを検知することができるので、設備の簡略化を図ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、上記した本発明に係る容器の印刷マークのずれ検出方法、容器成形用シート、および印刷マークを有する容器の製造方法の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
ここで、図1は、本発明に係る容器の印刷マークのずれ検出方法が適用される容器を示した一部切欠き斜視図、図2は、本発明に係る容器成形用シートの平面図、図3は、図2に示した容器成形用シートの部分断面図、図4は、印刷マークのずれがない正常な容器を示した平面図、図5は、その正常な容器を複数積み重ねた状態を示した側面図、図6は、印刷マークがずれた場合の状態を示した容器の平面図、図7は、その印刷マークがずれた容器を複数積み重ねた状態を示した側面図である。
【0017】
図1に示した容器1は、底部中央に接地面よりも上方に位置する円板状底壁2を有し、その周縁に、接地する環状底壁3を有し、さらに、該環状底壁3の外周縁に、前記接地する環状底壁3よりも上方に位置する環状底壁4を有している。
【0018】
また、この容器1は、上端部に環状の周縁部5を有しており、該周縁部5は、上方に突出する円弧状に形成された折曲部を有するフランジ部5aを備えている。また、この容器1は、前記周縁部5の内縁から下方に向けて径が小さくなるテーパ状側壁6を有し、該テーパ状側壁6の下端は、前記した環状底壁4の外縁に連続している。そして、この容器1には、前記円板状底壁2の上面に、印刷マーク7が施されている。
【0019】
上記した容器1は、図3に示したように、ポリスチレン樹脂などからなる発泡樹脂シート8aの両面に、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂などからなるフィルム8b,8cを貼設した複合シート8を、加熱軟化させ真空成形機などによって熱成形し、成形部の輪郭を裁断することによって製造される。
【0020】
上記フィルム8bには、図2に示すように、2点鎖線aで示す正規な円板状底壁2に相当する部位に印刷マーク7が施され、2点鎖線bで示す正規な周縁部5の外縁に相当する輪郭円(正規の裁断輪郭)から印刷マークの許容されるずれ距離Sだけ離れた位置に、複数の検知マーク(この実施の形態では4個の検知マーク)9がほぼ等間隔に印刷されている。なお、印刷マークと検知マークは、容器成形用シートの表裏面の内、同一面に施されていることが好ましい。
【0021】
そして、上記複合シート8から容器1が熱成形、裁断された際に、図4に示したように、印刷マーク7が円板状底壁2の所定範囲内に収まっている場合には、周縁部5に検知マーク9が現れることはない。
この場合には、この容器1,1・・を複数積み重ねた状態でも、図5に示すように、検知マーク9が外部から確認することができないので、それをもって、印刷マーク7が許容する範囲に収まっているものとして認識することができる。
【0022】
一方、複合シート8が熱成形、裁断されて容器1が形成される際に、印刷マーク7が、図6に示したように許容範囲からずれた場合には、成形された容器1の周縁部5、特に上方に突出する円弧状に形成されたフランジ部5aに、検知マーク9が現れる。
そして、このような容器1,1・・・を複数積み重ねた場合には、図7に示したように、検知マーク9が外部から確認することができる。即ち、検知マーク9が周縁部5に現れている容器1は、印刷マーク7が許容する範囲に収まっていないものとして認識することができる。なお、容器形状が周縁部5が外方へ向けて突出するフランジ部、更には、折曲部を有する形状の該フランジ部を備えたものであることにより検知マーク9の確認がより容易になる。ここで、上記折曲部を有する形状のフランジ部は、上方に突出する円弧状に形成されたフランジ部に限らず、容器の周縁部の内縁から水平部に突出する水平部と該水平部から垂直方向或いは傾斜方向の下方へ延びる延設部により構成される段状のフランジ部や、容器の周縁部の内縁から垂直方向或いは傾斜方向の下方へ延びる延設部により構成されるフランジ部など、フランジ部の上面或いは下面が容器の側面方向から見ることができる形状であり、周知のフランジ部形状を採用することができる。
【0023】
以上、本発明に係る容器の印刷マークのずれ検出方法、容器成形用シート、および印刷マークを有する容器の製造方法の一実施の形態を説明したが、本発明は、何ら既述の実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変形及び変更を加え得ることは当然である。
【0024】
例えば、上記実施の形態では、1枚の複合シート8から、1つの容器1を得ているが、1枚の複合シート、例えば、広幅、長尺の複合シート8から、複数の容器1,1・・・を得るようにしてもよいことは勿論である。
【0025】
また、上記実施の形態では、平面視で円形の容器1を示しているが、その他の形状、例えば、矩形状の容器1であってもよい。
【0026】
さらに、上記実施の形態では、発泡樹脂シート8aの両面に、フィルム8b,8cを貼設した複合シート8を成形用シートとして使用しているが、非発泡の樹脂シートに直接印刷マークなどを印刷した成形用シート8を使用して容器を成形してもよい。
【0027】
また、上記実施の形態では、材料取りの関係、即ち、円形容器の場合には、4隅に余分なスペースが生じることから、そのスペースを有効利用するように検知マーク9が45度の角度をもって周囲4箇所に印刷されているが、検知マーク9の数は、例えば、ずれる方向が一方向に決まっている場合などには、1箇所でもよく、逆に、全周に亘って連続的に、複数、或いは帯状に配置してもよい。
【0028】
さらに、上記実施の形態では、印刷マーク7が、容器1内部の円板状底壁2の一箇所に配置されている例を示したが、印刷マーク7が、容器の側壁の内外面、或いは底壁下面などに配置される場合にも、本発明を適用することができる。なお、本発明は特に容器の内面及び/又は底面に印刷マークが配置される容器に対して特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る容器の内面に表示された印刷マークのずれ検出方法が適用される容器を示した一部切欠き斜視図である。
【図2】本発明に係る容器の内面に表示された印刷マークのずれ検出方法を実施するための容器成形用シートの平面図である。
【図3】図2に示した容器成形用シートの部分断面図である。
【図4】印刷マークのずれがない正常な容器を示した平面図である。
【図5】正常な容器を複数積み重ねた状態を示した側面図である。
【図6】印刷マークがずれた場合の状態を示した容器の平面図である。
【図7】印刷マークがずれた容器を複数積み重ねた状態を示した側面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 容器
2 円板状底壁
3,4 環状底壁
5 周縁部
5a フランジ部
6 側壁
7 印刷マーク
8 複合シート(容器成形用シート)
8a 発泡樹脂シート
8b,8c フィルム
9 検知マーク
S 許容されるずれ距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷マークを施したシートを熱成形し、成形部の輪郭を裁断してなる容器の印刷マークのずれ検出方法において、前記シートの正規の裁断輪郭から許容されるずれ距離をもって、前記シートに検知マークを施し、前記シートを熱成形、裁断したとき、容器の周縁部に前記検知マークが現れるのを検知することによって、印刷マークがずれていることを認識することを特徴とする、容器の印刷マークのずれ検出方法。
【請求項2】
少なくとも印刷マークが内面に施された容器を熱成形、裁断することを特徴とする、請求項1に記載の容器の印刷マークのずれ検出方法。
【請求項3】
上記周縁部に外方へ向けて突出するフランジ部を備えた容器を熱成形、裁断することを特徴とする、請求項1または2に記載の容器の印刷マークのずれ検出方法。
【請求項4】
上記フランジ部に折曲部が形成されることを特徴とする、請求項3に記載の容器の印刷マークのずれ検出方法。
【請求項5】
印刷マークとともに、正規の裁断輪郭から許容されるずれ距離をもって検知マークを施したことを特徴とする、容器成形用シート。
【請求項6】
上記検知マークを、上記裁断輪郭の周囲に複数施したことを特徴とする、請求項5に記載の容器成形用シート。
【請求項7】
印刷マークを施したシートを熱成形し、成形部の輪郭を裁断してなる印刷マークを有する容器の製造方法において、前記印刷マークとともに、正規の裁断輪郭から許容されるずれ距離をもって検知マークを施したシートを、熱成形、裁断することによって、容器を製造することを特徴とする、印刷マークを有する容器の製造方法。
【請求項8】
周縁部に外方へ向けて突出するフランジ部を備え、少なくとも印刷マークを内面に有する容器を製造することを特徴とする、請求項7に記載の印刷マークを有する容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−7966(P2007−7966A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−190729(P2005−190729)
【出願日】平成17年6月29日(2005.6.29)
【出願人】(000131810)株式会社ジェイエスピー (245)
【Fターム(参考)】