説明

容器用樹脂被覆金属板

【課題】食品缶詰素材に要求される多くの特性に対応可能な容器用樹脂被覆金属板を提供する。
【解決手段】金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有する。前記樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着し下記(イ)〜(ヘ)の成分を含有しポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a1)を有する。
(イ)数平均分子量が5000〜30000、ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ロ)数平均分子量が5000〜30000、ガラス転移温度(Tg)が51〜100℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ハ)ポリイソシアネート
(ニ)数平均分子量500〜5000の範囲にあるエポキシ樹脂
(ホ)導電性ポリマー
(ヘ)ドーパント

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、食品缶詰の缶胴及び蓋等に用いられる容器用樹脂被覆金属板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食缶に用いられる金属缶用素材であるティンフリースチール(TFS)、アルミニウム等の金属板には、耐食性、耐久性、耐候性などの向上を目的として、塗装が施されていた。しかし、この塗装を施す工程は、焼き付け処理が煩雑であるばかりでなく、多大な処理時間を要し、さらには多量の溶剤を排出するという問題を抱えていた。
【0003】
そこで、これらの問題を解決するため、塗装鋼板に替わり、熱可塑性樹脂フィルムを加熱した金属板に積層してなるフィルムラミネート金属板が開発され、現在、食品缶詰素材として工業的に用いられている。
【0004】
食品缶詰素材には、加工性、密着性などの基本特性のほか、2ピース缶用途であれば、深絞り成形性、加工・レトルト後密着性や耐食性、耐衝撃性など、多様な機能が求められる。
【0005】
フィルムラミネート金属板を多機能化する方法としては、(1)フィルム内に、付加したい機能を有する改質剤を加え、フィルムそのものを多機能化する方法、(2)フィルムは改質せず、フィルム表面に、付加したい機能を有する改質剤もしくは改質剤を含む樹脂を、コーティングする方法、のいずれかが選択される。
【0006】
上記(1)のフィルムに直接、改質剤を添加する方法は、一定の機能を有するフィルムを大量に生産する場合には、生産効率が高く、収益性の高い方法である。しかし、食品缶詰は、形状や内容物の種類が多種多様であり、缶詰の種類毎に求められる機能が異なるため、この方法は適切でない。なぜならば、フィルムに付与する機能を変更する毎に、樹脂の押し出し装置や、キャスティングドラム、冷却ロールなどの洗浄が必要であるため、製造ラインを長時間停止しなければならず、生産効率が著しく低下してしまうためである。
一方、上記(2)のフィルムの表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法は、フィルムへの付加機能の変更が容易であるため、食品缶詰の多様なニーズに対応できる。改質剤を含むコーティング液の入ったタンクを、洗浄・交換することで、すばやく対応できるからである。
【0007】
このようなフィルム表面に、改質剤を含む樹脂をコーティングする方法としては、例えば、特許文献1の技術が提案されている。特許文献1は、エポキシ樹脂を主成分とし、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、着色剤を含む樹脂層を、金属板とフィルムとの間に形成したものである。
【0008】
しかしながら、エポキシ樹脂は、反応性に富み、金属板との密着性に優れるものの、深絞り成形性が劣るという欠点があるため、2ピース缶用素材として使用可能なフィルムを得ることはできない。特許文献1の樹脂被覆金属板を深絞り缶(DRD缶)に成形しようとしても、缶高さ方向の伸び変形にエポキシ樹脂が追随することができず素材の変形を拘束してしまい、絞り工程で素材が破断してしまう。
【0009】
密着性向上を目的として、フィルムに樹脂コーティングを行う技術が、特許文献2〜5に記載されている。特許文献2〜5の技術は、ポリエステル樹脂とエポキシ樹脂の複合系、もしくはエポキシ樹脂を主成分とする構成である。そのため、特許文献1に記載の技術と同様に、深絞り成形性に難があり、2ピース缶用途には適用できるものではない。また、特許文献2〜5に記載されている実施例の中には製缶加工性や深絞り成形性を評価した例が開示されていないことからも、これらの技術が、深絞り加工が要求される2ピース缶用途を考慮していないことが明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−185915号公報
【特許文献2】特開平4−266984号公報
【特許文献3】特開平8−199147号公報
【特許文献4】特開平10−183095号公報
【特許文献5】特開2002−206079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、かかる事情に鑑み、食品缶詰素材に要求される多くの特性に対応可能な、容器用樹脂被覆金属板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが、課題解決のため鋭意検討した結果、以下の知見を得た。
ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層を、金属板の少なくとも片面に有する。そして、特定の数平均分子量及びガラス転移温度(以下、Tgと称する)を有する飽和型ポリエステル樹脂、ポリイソシアネート、特定の数平均分子量を有するエポキシ樹脂、導電性ポリマーおよびドーパントを含有する樹脂層を金属板との密着層とし、好ましくはその上層にポリエステルを主成分とする樹脂層を積層することで、優れた深絞り成形性、加工後密着性などの基本特性に加え、レトルト処理環境下での意匠性に関わる性能等、多くの機能を有する容器用樹脂被覆金属板を得ることができる。
【0013】
本発明は、以上の知見に基づきなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有し、該樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着し下記(イ)〜(ヘ)の成分を含有しポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a1)を有することを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
(イ)数平均分子量が5000〜30000、ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ロ)数平均分子量が5000〜30000、ガラス転移温度(Tg)が51〜100℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ハ)ポリイソシアネート
(ニ)数平均分子量500〜5000の範囲にあるエポキシ樹脂
(ホ)導電性ポリマー
(ヘ)ドーパント
[2]前記[1]において、前記樹脂被覆層(A)が、前記樹脂層(a1)と、該樹脂層(a1)の上層に形成されるポリエステルフィルム(a2)からなることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[3]前記[1]または[2]において、前記樹脂層(a1)を形成する前記(イ)飽和型ポリエステル樹脂、前記(ロ)飽和型ポリエステル樹脂、前記(ハ)ポリイソシアネートおよび前記(ニ)エポキシ樹脂の合計含有量を100重量部としたとき、以下の組成比からなり、さらに、前記(ホ)導電性ポリマーを、前記(イ)ポリエステル樹脂と前記(ロ)ポリエステル樹脂の合計を100重量部としたとき、0.1〜15.0重量部の範囲で含有し、前記(ヘ)ドーパントを、前記(ホ)導電性ポリマーを形成するモノマー1molに対して0.01〜1.00molの範囲で含有するることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
前記(イ)飽和型ポリエステル樹脂:25〜45重量部
前記(ロ)飽和型ポリエステル樹脂:25〜45重量部
前記(ハ)ポリイソシアネート:10〜30重量部
前記(ニ)エポキシ樹脂:10〜20重量部
[4]前記[1]〜[3]のいずれかにおいて、前記(ハ)ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートより選ばれる1種以上のポリイソシアネートであることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[5]前記[1]〜[4]のいずれかにおいて、前記(ニ)エポキシ樹脂がノボラック型エポキシ樹脂であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[6]前記[1]〜[5]のいずれかにおいて、 前記(ホ)導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキルジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリパラフェニレンビニレン、アルキレンジオキシチオフェンおよび、これら各ポリマーの誘導体、ならびに、これら各ポリマーを構成する単量体の2種以上の共重合物、の中から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
[7]前記[1]〜[6]のいずれかにおいて、前記(ヘ)ドーパントが、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸から選ばれた1種または2種以上の混合物であることを特徴とする容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
[8]前記[2]〜[7]のいずれかにおいて、前記ポリエステルフィルム(a2)が、ポリエステル樹脂の構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位である二軸延伸ポリエステルフィルムであり、該二軸延伸ポリエステルフィルムは、無機粒子および/または有機粒子を含有することを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、食品缶詰素材に要求される多くの特性に対応可能な、容器用樹脂被覆金属板が得られる。そして、食品缶詰に要求される多くの機能を容易に付加できる新たな容器用樹脂被覆金属板として、産業上有益な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】金属板のラミネート装置の要部を示す図である。(実施例1)
【図2】フィルムラミネート金属板の断面構造を示す図である。(実施例1)
【図3】缶胴部に付与したクロスカット傷の位置を示す図である。(実施例1)
【図4】人工傷からの最大腐食幅を測定する方法を示す図である。(実施例1)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の容器用樹脂被覆金属板について詳細に説明する。
本発明の容器用樹脂被覆金属板は、金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有する。そして、この樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着しポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a1)を有し、さらに、前記樹脂層(a1)は、下記(イ)〜(ヘ)の成分を含有する。
(イ)数平均分子量が5000〜30000、Tgが5〜50℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ロ)数平均分子量が5000〜30000、Tgが51〜100℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ハ)ポリイソシアネート
(ニ)数平均分子量500〜5000の範囲にあるエポキシ樹脂
(ホ)導電性ポリマー
(ヘ)ドーパント
まず、本発明で用いる金属板について説明する。
本発明の金属板としては、缶用材料として広く使用されているアルミニウム板や軟鋼板等を用いることができる。特に、下層が金属クロム、上層がクロム水酸化物からなる二層皮膜を形成させた表面処理鋼板(以下、TFSと称す)等が最適である。
TFSの金属クロム層、クロム水酸化物層の付着量については、特に限定されないが、加工後密着性、耐食性の観点から、何れもCr換算で、金属クロム層は70〜200mg/m、クロム水酸化物層は10〜30mg/mの範囲とすることが望ましい。
【0017】
次に、金属板面と密着しポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a1)について説明する。
樹脂層(a1)は、ポリエステル樹脂を主成分とする。
ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層とは、ポリエステルを50mass%以上100mass%以下含む樹脂であり、ポリエステル以外の樹脂を含む場合には、エポキシ、ポリオレフィンなどの樹脂を含有することができる。
【0018】
樹脂層(a1)は下記(イ)〜(ヘ)を含有する。
(イ)数平均分子量が5000〜30000、Tgが5〜50℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ロ)数平均分子量が5000〜30000、Tgが51〜100℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ハ)ポリイソシアネート
(ニ)数平均分子量500〜5000の範囲にあるエポキシ樹脂
(ホ)導電性ポリマー
(ヘ)ドーパント
成分(イ):数平均分子量が5000〜30000、Tgが5〜50℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
樹脂層(a1)を形成する、数平均分子量5000〜30000、Tgが5〜50℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂(イ)は、多塩基酸成分と多価アルコール成分とをエステル化反応させたものであり、少なくとも一方の成分として三官能以上の成分を用いればよい。
多塩基酸成分としては、たとえば、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸などの1種以上のニ塩基酸及びこれらの酸の低級アルキルエステル化物が用いられ、必要に応じて、安息香酸、クロトン酸、などの一塩基酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸などの3価以上の多塩基酸などが併用される。
多価アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1、4ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチルペンタンジオール、1、4-ヘキサンジオール、1、6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの2価アルコールが主に用いられ、さらに必要に応じてグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上の多価アルコールを併用することができる。これらの多価アルコールは単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
【0019】
飽和型ポリエステル樹脂(イ)の市販品としては、例えば、東洋紡績(株)製のバイロン300、500、560、600、630、650、670、バイロンGK130、140、150、190、330、590、680、780、810、890、ユニチカ(株)製エリーテルUE-3220、3500、3210、3215、3216、3620、3240、3250、3300、東亞合成(株)製アロンメルトPES-310、318、334などが挙げられる。
【0020】
ここで、飽和型ポリエステル樹脂(イ)の添加量は、樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(ニ)の合計含有量を100重量部とした場合に、25〜45重量部の範囲であることが望ましい。25重量部未満であると、樹脂層の加工性が低下し、製缶加工に追随せず、破胴してしまう場合がある。一方、45重量部を超えると、樹脂の架橋度が不十分となり、耐レトルト性の劣化や、耐食性が劣化するおそれがある。また、皮膜のTgが低下するため、耐ブロッキング性が低下するおそれもある。好ましくは、20〜40重量部の範囲であり、樹脂層の加工性、耐レトルト性、耐食性等の諸性能を高いレベルでバランスすることができる。
【0021】
成分(ロ):数平均分子量が5000〜30000Tgが51〜100℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
樹脂層(a1)を形成する、数平均分子量5000〜30000、Tgが51〜100℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂(ロ)としては、上記成分(イ)と同様の組成であり、市販品としては、例えば、東洋紡績(株)製のバイロン200、226、240、245、270、280、290、296、660、885、バイロンGK250、360、640、880、ユニチカ(株)製エリーテルUE-3200、9200、3201、3203、3350、3370、3380、3600、3980、3660、3690、9600、9800、東亞合成(株)製アロンメルトPES-316、360などが挙げられる。
【0022】
ここで、飽和型ポリエステル樹脂(ロ)の添加量は、樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(ニ)の合計含有量を100重量部とした場合に、25〜45重量部の範囲であることが望ましい。
25重量部未満であると、樹脂層の加工性が低下し、製缶加工に追随せず、破胴してしまう場合がある。一方、45重量部を超えると、樹脂層のTgが過度に上昇するため、製缶加工に樹脂層が追随せず、金属板との界面で剥離が生じてしまうおそれがある。好ましくは、20〜40重量部の範囲であり、樹脂層の加工性、耐レトルト性、耐食性、耐ブロッキング性等の諸性能を高いレベルでバランスすることができる。
【0023】
本発明では、ポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a1)中に、飽和型ポリエステル樹脂として、加工性、耐レトルト白化性、耐熱水変色性、ブロッキング性をバランスさせるために、Tgの異なる2種類((イ)と(ロ))をブレンドする。飽和型ポリエステル樹脂(イ):(ロ)の比率としては、1(イ):1(ロ)〜1(イ):1.8(ロ)の範囲でブレンドすることが好ましい。飽和型ポリエステル樹脂(ロ)が飽和型ポリエステル樹脂(イ)に対し、1:1.8の比率を上回った場合には、皮膜のTgが高いことにより加工性が低下して、製缶加工時に樹脂層が凝集破壊してフィルムが剥離し、そこを起点に缶胴部が断裂してしまうことがある。一方、飽和型ポリエステル樹脂(ロ)が飽和型ポリエステル樹脂(イ)に対し、1:1の比率を下回った場合には、皮膜のTg低下により耐ブロッキング性、耐レトルト白化性、耐熱水変色性が劣化してしまう。
【0024】
なお、Tgが5〜50℃の範囲と51〜100℃の範囲の2種類を用いたのは、本発明が適用される食品缶詰や蓋などの製造条件や使用環境において、加工性、耐レトルト白化性、耐熱水変色性、ブロッキング性を最も好適にバランスさせることができるからである。Tgが5℃未満では、耐ブロッキング性が確保できないおそれがある。Tgが100℃超となると、加工性が劣化してしまうおそれがある。そして、50℃と51℃の温度範囲を区切りとしたのは50℃を境界として、樹脂の耐ブロッキング性および加工性が大きく変化するためである。
【0025】
また、前記飽和型ポリエステル樹脂(イ)及び(ロ)の数平均分子量が5000未満の場合には、高速でラミネートした場合に下地に追従できずに密着不良を引き起こす例がある。50000を超える場合には、塗料粘度が高いことによりコーティングの際にムラが発生しやすく、これがラミネートの際に不均一になり、外観不良となる例が確認されている。
【0026】
成分(ハ):ポリイソシアネート
樹脂層(a1)には、さらに成分(ハ)としてポリイソシアネートを添加する。イソシアネート基は、ポリエステル樹脂の末端の官能基や、基材であるポリエステルフィルムの表面の官能基と、速やかに反応することができる。これにより、熱融着ラミネート法などの、極めて短時間(1秒未満)の熱処理において、イソシアネート架橋反応による高分子化が可能となる。そして、密着層の強度と加工性を大幅に向上させるとともに、基材フィルムとの強固な密着性を得ることができる。適用するポリイソシアネートとしては、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートが挙げられ、中でも、キシリレンジイソシアネート化合物が、密着性、耐久性などの観点から、最も好適である。
【0027】
また、ポリイソシアネートを添加することによって、イソシアネート架橋反応による分子鎖の三次元ネットワークが形成されるため、レトルト処理環境下での水蒸気による変色を効果的に抑制することができる。水蒸気による変色とは、レトルト殺菌処理中に、樹脂層そのものが白く濁ったように変色する現象であり、レトルト白化と呼ばれている。このレトルト白化は缶外面の意匠性を損なわせるため、消費者の購買意欲を減退させうる大きな問題である。発明者らが鋭意検討した結果、レトルト白化は、缶体を被覆する樹脂層内に水蒸気が浸透することによって樹脂層の界面及び界面近傍に液胞が形成され、液胞部で光が散乱することが原因であると考えた。したがって、特性改善のためには、樹脂層の界面及び界面近傍での液胞形成を抑制することが重要である。樹脂中に侵入した水蒸気は、樹脂中を拡散し、金属板との界面まで到達する。レトルト処理の開始直後は、缶内に充填された内容物が常温に近い状態にあるため、缶の外部から内部にかけて温度勾配が生ずる。即ち、樹脂中を拡散する水蒸気は、金属板に近づくにつれて冷却されることになり、界面及び界面近傍で液化し、凝縮水となって液胞を形成する。液胞がレトルト処理後も界面及び界面近傍に残留することで、光の散乱を招き、樹脂表面が白濁してみえることとなる。したがって、レトルト白化を抑制するためには、界面及び界面近傍における液胞の形成を抑止すればよい。
【0028】
一方、レトルト処理装置には、上記のように加熱媒体として水蒸気を用いるもの以外に、熱水を加熱媒体として用いるレトルト装置がある。熱水を加熱媒体として用いる装置の場合、水蒸気による変色とは異なったメカニズムで、樹脂層そのものが変色し意匠性が劣化するという問題が発生する。これは、レトルト処理の初期段階において、ポリエステル分子鎖の架橋反応が十分に進行していない場合、樹脂層内に浸透した水がポリエステルのカルボニル末端基を触媒としてポリエステル分子鎖の加水分解反応を促すことで、樹脂層内に大きな液胞が形成されることが原因であると考えられている。
【0029】
そこで、発明者らが上記2種類の変色現象を鋭意検討した結果、イソシアネート架橋反応によるポリエステル分子鎖のネットワークを、熱融着ラミネート段階で十分に形成させることで、上記2種類の変色現象のいずれも抑制できることがわかった。ポリエステル分子鎖のネットワークが、水蒸気および熱水が樹脂内へ浸透し界面に到達するのを抑制するとともに、樹脂強度及び弾性率が上昇することで、液胞の形成及び成長を抑制することができる。また、分子鎖ネットワーク形成に伴うカルボニル末端基量の減少により、急激な加水分解反応も抑制される。
【0030】
ここで、ポリイソシアネートの添加量は、樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(ニ)の合計含有量を100重量部とした場合に、10〜30重量部の範囲であることが望ましい。
10重量部未満であると、熱融着ラミネート段階におけるポリエステル樹脂の末端官能基との架橋反応、もしくはポリエステルフィルム表面の官能基との架橋反応のいずれかが不十分となり、製缶加工時に、フィルムが剥離したり、素材が断裂してしまう場合がある。また、ネットワークの形成が不十分なため、上記レトルト処理における変色を抑制することもできない。一方、30重量部を超えると、ポリエステル樹脂層の耐水性が低下してしまうため、レトルト処理時等にフィルムが缶から剥離してしまうおそれがある。好ましくは、10〜20重量部の範囲である。
【0031】
成分(ニ):数平均分子量500〜5000の範囲にあるエポキシ樹脂
樹脂層(a1)に用いる、数平均分子量500〜5000の範囲にあるエポキシ樹脂(ニ)としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0032】
ビスフェノール型エポキシ樹脂は、例えばエピクロルヒドリンとビスフェノールを、必要に応じて酸またはアルカリ触媒の下、高分子量まで縮合させてなる樹脂、エポキシ樹脂とビスフェノールとを重付加反応させることにより得られた樹脂のいずれであっても良い。上記ビスフェノールとしては、ビス(4-ヒドロキシフェニル)、メタン[ビスフェノールF]、1、1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]、2、2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン[ビスフェノールB]などをあげることができる。上記ビスフェノール類は単独で又は2種以上の混合物として使用できる。
【0033】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製の、JER1004、1007、1009、1010、旭エポキシジャパン(株)製の、AER6097、6099および大日本インキ化学(株)製のエピクロン7050、9050などを挙げることができる。
【0034】
ノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、DIC(株)製のエピクロンN-665、670、673、680、690、695、730、740、770、865、870、ダウケミカル(株)製のXD-7855、旭化成エポキシ(株)製のECN-1273、1299などが挙げられる。
【0035】
エポキシ樹脂の数平均分子量が500未満の場合は、高エーテル化アミノ樹脂との反応性が劣り、十分な架橋が得られず、耐レトルト性や耐熱水変色性が劣化し、更には密着不良が発生する場合がある。また、樹脂層(a1)をコーティングしたフィルムを巻き取った場合に、フィルムとのブロッキングが発生する場合がある。一方、数平均分子量が5000を越える場合、溶液粘度が高くなり、ラミネート性やコーティング時の作業性に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0036】
ここで、エポキシ樹脂(ニ)の添加量は、樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(ニ)の合計含有量を100重量部とした場合に、10〜20重量部の範囲であることが望ましい。
10重量部未満であると、架橋剤との反応性が劣り、十分な架橋構造が形成されず、耐レトルト性や耐食性等が劣化してしまう場合がある。一方、20重量部を超えると、樹脂層の加工性が不十分となり、製缶時に破胴してしまうおそれがある。好ましくは、12〜17重量部の範囲である。
【0037】
成分(ホ):導電性ポリマー
樹脂層(a1)に導電性ポリマーを添加することで、下地金属の不動態化を促進させ、樹脂被覆金属板に傷部耐食性を付与することができる。導電性ポリマーの酸化還元電位は、下地金属の電位に対して貴であるため、下地金属との界面において、下地金属の酸化反応と導電性ポリマーの還元反応が生じ、界面に安定な不動態皮膜を形成する。不動態皮膜は、絶縁体であるとともに緻密であるため、腐食因子に対しバリア層として機能する。そのため、下地金属の耐食性を大幅に向上させることができる。
ここで、導電性ポリマーの酸化還元反応は可逆的であることがわかっており、溶存酸素の還元反応とのカップリング反応によって、元の状態に戻る。すなわち、導電性ポリマーには、その可逆的な酸化還元特性により自身を劣化させることなく、永続的に下地金属を防食する効果が期待できる。
以上の防食プロセスは、腐食環境下における下地金属の自発的な不動態化を促すものであるため、導電性ポリマーには一種の自己補修作用があるものと考えることができる。したがって、フィルムを貫通する傷が生じたとしても、傷部周辺に不動態化皮膜を形成させることで、腐食の進行を著しく抑制することが可能となるのである。
【0038】
使用する導電性ポリマーとしては、π電子共役系ポリマーである、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキルジオキシチオフェン
、アルキレンジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリアセン、及びこれらの誘導体、ならびに各ポリマーを構成する単量体の2種以上の共重合物から選ばれた1種または2種以上の混合物があげられる。中でも、ポリアニリン、ポリピロール、ポリエチレンジオキシチオフェンは電気伝導度が高く、下地金属との界面における電子の授受がスムーズであるため、不動態化能が高く、防食効果が大きい。
【0039】
導電性ポリマーの添加量としては、ポリエステル樹脂(イ)とポリエステル樹脂(ロ)
の合計を100重量部としたとき、これに対し、0.1〜15.0重量部の範囲とするのが好ましい。添加量が0.1重量部未満であると、下地金属との界面における酸化還元反応に寄与するポリマーの絶対量が不足し、界面における不動態化皮膜の形成が不十分となる場合がある。傷部の耐食性は、不動態化皮膜形成能に大きく依存するため、発明者らの期待する性能レベルが得られないこととなる。一方、添加量が15.0重量部を超えると、導電性ポリマーの力学物性が樹脂層(a1)全体の物性に影響を及ぼすようになり、剛直な分子構造ゆえ加工性を大きく劣化させることになる。よって、導電性ポリマーの添加量としては、樹脂層(a1)を形成するポリエステル樹脂に対し、0.1〜15.0重量部の範囲に規定するのが好ましい。
【0040】
成分(ヘ):ドーパント
本発明で規定する導電性ポリマーは、脱ドープ状態では半導体であり、バンドギャップを有する。よって、導電性を付与するためには、ドーパントを添加し、導電性ポリマーの主鎖の共役系からπ電子を奪って、主鎖上に正孔を生成させる必要がある。正孔が、ポリマーの分子鎖上を移動するため、電流が流れるのである。
したがって、本発明で期待する防食効果を発揮させるためには、(ホ)導電性ポリマーを含有するポリエステル樹脂中に、成分(ヘ)のドーパントを添加する必要がある。ドーパントとしては、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸、遷移金属ハライド、アルカリ金属から選ばれた一種または二種以上の混合物が好適である。なかでも、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸が安定した防食能を有するため、特に好適である。
ハロゲン類としては、臭素、塩素、ヨウ素などを用いることができ、プロトン酸としては、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリリン酸、などのポリマー酸、有機カルボン酸、有機スルホン酸、有機ホスホン酸、リン酸類及びポリ酸などを好適に用いることができる。ルイス酸としては、FeCl、FeOCl、TiCl 、ZrCl 、SnCl 、MoCl 、WCl、BF 、BCl 、PF 等の金属ハロゲン化物を用いることができる。
さらに、上記の中でも最も好適なのがプロトン酸であり、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリリン酸、などのポリマー酸が、特に好適である。これらは、自身に皮膜形成能があるため、樹脂層(a1)となる樹脂の連続性を高め、密着性、耐食性に対して効果がある。
【0041】
ドーパントの添加量としては、樹脂中に添加された導電性ポリマー(ホ)を形成するモノマー1molに対し、0.01〜1.00molの範囲が好ましい。ドーパントの添加量が、導電性ポリマーを形成するモノマー1molに対し、0.01mol未満であると、ポリマー主鎖上に生成するキャリヤーの数が不足し、十分な電気伝導性が得られない場合がある。導電性ポリマーの防食効果は、防食対象となる金属とのスムーズな電子の授受に依存するため、導電性の低下は、不動態化能を低下させ、傷部耐食性が劣ることになる。一方、ドーパントの添加量が、導電性ポリマーに対し1.00mol%超とすると、処理液の不安定化やポリエステル樹脂層の加工性劣化をまねき、傷部耐食性を低下させる懸念がある。したがって、ドーパントの添加量としては、導電性ポリマーを形成するモノマー1molに対し、0.01〜1.00mol%の範囲に規定するのが好ましい。
【0042】
樹脂層(a1)の付着量
樹脂層(a1)の付着量は、0.1g/m2以上5.0/m2以下の範囲に規定するのが好ましい。0.1g/m2未満では、金属板表面を均一に被覆することができず、膜厚が不均一になる場合がある。改質剤を添加した場合は、改質剤の付着量が変動することとなり、安定した機能を得ることができず、不適となる場合がある。一方、5.0g/m2超とすると、樹脂の凝集力が不十分となり、樹脂層の強度が低下してしまう恐れがある。その結果、製缶加工時に、樹脂層が凝集破壊してフィルムが剥離し、そこを起点に缶胴部が断裂してしまうことになる。
以上より、付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下、好ましくは0.1g/m2以上3.0g/m2以下、更に好ましくは、0.5g/m2以上2.0g/m2である。
【0043】
着色剤
更に、樹脂層(a1)に染料、顔料などの着色剤を添加することで、下地の金属板を隠蔽し、樹脂独自の多様な色調を付与できる。例えば、黒色顔料として、カーボンブラックを添加することで、下地の金属色を隠蔽するとともに、黒色のもつ高級感を食品缶詰に付与することができる。カーボンブラックの添加量は、樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(ヘ)の合計を100重量部とした場合に、1〜40重量部が望ましい。1重量部未満では黒色度が不十分であるとともに下地金属の色調が隠蔽できず、高級感のある意匠性を付与できない。一方、40重量部を超えると、黒色度は変化しないため意匠性の改善効果は得られないばかりか、ポリエステル樹脂の構造が脆弱となるため、製缶加工時に樹脂層が容易に破壊してしまう。添加量を1重量部以上40重量部以下の範囲とすることで、意匠性と他の要求特性との両立が可能となる。
カーボンブラックの粒子径としては、5〜50nmの範囲のものを使用できるが、ポリエステル樹脂中での分散性や発色性を考慮すると、5〜30nmの範囲が好適である。
【0044】
黒色顔料以外にも、白色顔料を添加することで下地の金属光沢を隠蔽するとともに、印刷面を鮮映化することができ、良好な外観を得ることができる。添加する顔料としては、容器成形後に優れた意匠性を発揮できることが必要であり、係る観点からは、二酸化チタンなどの無機系顔料を使用できる。着色力が強く、展延性にも富むため、容器成形後も良好な意匠性を確保できるので好適である。二酸化チタンの添加量は、樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(へ)の合計を100重量部とした場合に、1〜30重量部であることが望ましい。1重量部以上であれば、充分な白色度が得られ、良好な意匠性が確保できる。一方、30重量部を超えて添加しても、白色度が飽和するため、経済上の理由で30重量部以下とすることが望ましい。より好ましくは、10〜20重量部の範囲である。なお、着色剤の添加量とは、着色剤を添加した樹脂層に対する割合である。
【0045】
容器表面に光輝色を望む場合には、黄色の有機系顔料の使用が好適である。透明性に優れながら着色力が強く、展延性に富むため、容器成形後も光輝色のある外観が得られる。本発明で使用できる有機系顔料を例示すれば、カラーインデックス(C.I.登録の名称)が、ピグメントイエロー12、13、14、16、17、55、81、83、139、180、181、183、191、214のうちの少なくとも1種類を挙げることができる。特に、色調(光輝色)の鮮映性、耐熱水変色性などの観点から、C.I.ピグメントイエロー180、214がより好ましく用いられる。
黄色の有機系顔料の添加量は、樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(ヘ)の合計を100重量部とした場合に、1〜20重量部とすることが好ましい。添加量が1重量部以上であれば、発色に優れるので好適である。20重量部以下とすることで、透明度が高くなり光輝性に富んだ色調となる。
【0046】
このほか、レッド顔料としてC.I.ピグメントレッド101、177、179、187、220、254、ブルー顔料としてC.I.ピグメントブルー15、15:1、15:2、15:3、バイオレット顔料としてC.I.ピグメントバイオレット19、オレンジ顔料としてC.I.ピグメントオレンジ64、グリーン顔料としてC.I.ピグメントグリーン7などが挙げられる。
【0047】
硬化触媒
樹脂層(a1)には、前記の成分(イ)〜(へ)及び着色剤に加えて、架橋を促進させる硬化触媒を添加することができる。硬化触媒としては強酸化合物が挙げられ、スルホン酸化合物またはスルホン酸化合物のアミン中和物が適している。スルホン酸化合物の代表例としては、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸などを挙げることができる。添加量としては、樹脂層(a1)を形成する成分(イ)〜(へ)および着色剤の固形分の合計を100重量部とした場合に、0.5〜5重量部の範囲であることが望ましい。5重量部よりも多い場合は着色剤が過剰に硬化し、加工性が低下するおそれがある。一方、0.5重量部未満の場合には硬化反応が遅いため、耐ブロッキング性が悪化するおそれがある。
【0048】
次いで、樹脂層(a1)の上層に形成されるポリエステルフィルム(a2)について説明する。
樹脂被覆層(A)は、最上層として樹脂層(a1)の上層にポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a2)を形成することが好ましく、さらに好ましくは樹脂層(a2)としてはポリエステルフィルム(a2)である。
【0049】
ポリエステルフィルム組成
本発明で使用するポリエステルフィルムは、レトルト後の味特性を良好とする点、製缶工程での摩耗粉の発生を抑制する点で、エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とすることが望ましい。エチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを主たる構成成分とするポリエステルとは、ポリエステルの93mass%以上がエチレンテレフタレート及び/またはエチレンナフタレートを構成成分とするポリエステルである。さらに好ましくは95mass%以上であると金属缶に飲料を長期充填しても味特性が良好であるので望ましい。
一方、味特性を損ねない範囲で他のジカルボン酸成分、グリコール成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、ジフェニルカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を挙げることができる。
グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族グリコール、シクロヘキサンジメタノール等の指環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等が挙げられる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコール成分は2種以上を併用してもよい。
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合してもよい。
【0050】
粒子
本発明で用いるポリエステルフィルムは、無機粒子および/または有機粒子を含有することができる。本発明で用いるポリエステルフィルムにおける粒子とは、組成的には有機、無機を問わず特に制限されるものではないが、耐摩耗性、加工性、味特性等の点から体積換算平均粒子径が0.005〜5.0μmであることが必要であり、特に0.01〜3.0μmであることが好ましい。また、耐摩耗性等の点から、下記式に示される相対標準偏差が0.5以下であることが必要であり、さらには0.3以下であることが好ましい。
【0051】
【数1】

【0052】
粒子の長径/短径比としては、1.0〜1.2であることが必要である。モース硬度としては、突起硬さ、耐摩耗性などの点から7未満であることが必要である。
また、これらの効果を十分に発現させるには、上記からなる粒子を0.005〜10mass%含有することが必要である。
【0053】
具体的には、無機粒子としては、湿式および乾式シリカ、コロイダルシリカ、ケイ酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー等が挙げられる。中でも、粒子表面の官能基とポリエステルとが反応してカルボン酸金属塩を生成するものが好ましく、具体的には、粒子1gに対し、10−5mol以上有するものが、ポリエステルとの親和性、耐摩耗性などの点で好ましく、さらには2×10−5mol以上であることが好ましい。
また、有機粒子としては、さまざまな有機高分子粒子を用いることができるが、その種類としては、少なくとも一部がポリエステルに対し不溶の粒子であればいかなる組成の粒子でも構わない。また、このような粒子の素材としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリメチルメタクリレート、ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂などの種々のものを使用することができる。中でも、耐熱性が高く、かつ粒度分布の均一な粒子が得られやすいビニル系架橋高分子粒子が特に好ましい。
このような無機粒子および有機高分子粒子は、単独で用いても構わないが、2種以上を併用して用いることが好ましく、粒度分布、粒子強度など物性の異なる粒子を組み合わせることにより、さらに機能性の高いポリエステル樹脂を得ることができる。
【0054】
また、本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加型粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を用いても構わない。
【0055】
更に、ポリエステルフィルムが二軸延伸ポリエステルフィルムであると、耐熱性・味特性の観点から好ましい。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、逐次二軸延伸のいずれであってもよいが、延伸条件、熱処理条件を特定化し、フィルムの厚さ方向の屈折率が1.50以上であることが、ラミネート性、成形性を良好とする点で好ましい。さらに、厚さ方向屈折率が1.51以上、特に1.52以上であると、ラミネート時に多少のばらつきがあっても成形性、耐衝撃性を両立させる上で面配向係数を特定の範囲に制御することが可能となるので好ましい。
【0056】
また、二軸延伸ポリエステルフィルムは、製缶工程で絞り成形後に200〜230℃程度の熱履歴を受けた後にネック部を加工する際の加工性、耐衝撃性の点で固体高分解能NMRによる構造解析におけるカルボニル部の緩和時間が270msec以上であることが好ましい。さらに好ましくは、280msec以上、特に好ましくは300msec以上である。本発明の効果を妨げない範囲において、他の粒子、例えば各種不定形の外部添加粒子、及び内部析出型粒子、あるいは各種表面処理剤を用いても構わない。
【0057】
ポリエステルフィルム(a2)の厚み
本発明で用いるポリエステルフィルムの厚さは、5〜100μmが好ましい。ポリエステルフィルムの厚さが5μm未満では、被覆性が不十分であり耐衝撃性と成形性が確保できない。一方、100μmを超えると、上記特性が飽和して何ら改善効果が得られないばかりか、金属表面への熱融着時に必要となる熱エネルギーが増大するため、経済性を損なってしまう。このような観点から、より好ましいポリエステルフィルムの厚さは8〜50μm、さらに好ましくは10〜25μmである。
【0058】
次いで、本発明の容器用樹脂被覆金属板の製造方法について説明する。
【0059】
ポリエステルを主成分とする樹脂層(a1)の形成方法
一例として、ポリエステル樹脂層(a1)を、ポリエステルフィルム(a2)の表面に形成する方法について述べる。
主成分となるポリエステル樹脂を有機溶媒中に溶解させるとともに、本発明が規定する樹脂層(a1)の添加成分及び任意添加成分を有機溶剤中に溶解または分散させてコーティング液を調製する。このコーティング液を、ポリエステルフィルム(a2)製膜時もしくは製膜後に、フィルム表面に塗布し乾燥することで、樹脂層(a1)を形成する。
【0060】
ポリエステル樹脂を溶解させるための有機溶剤としては、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素溶剤、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン溶剤、酢酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤などを挙げることができ、これらの1種以上を適宜選定して使用することができる。
また、本発明で規定する架橋剤、硬化触媒、着色剤としてカーボンブラック、アゾ系顔料などの添加剤も、有機溶剤中に分散させて使用することができる。この際、分散剤を併用すると、添加剤の均一性が付与できるため好適である。
【0061】
コーティング液をポリエステルフィルムに塗布する方法としては、ロールコーター方式、ダイコーター方式、グラビア方式、グラビアオフセット方式、スプレー塗布方式など、既知の塗装手段が適用できるが、グラビアロールコート法が最も好適である。コーティング液塗布後の乾燥条件としては、80℃〜170℃で20〜180秒間、特に80℃〜120℃で60〜120秒間が好ましい。乾燥後の樹脂層(a1)とポリエステルフィルム(a2)を合計した付着量は、0.1g/m2以上5.0g/m2以下の範囲が好ましい。
【0062】
樹脂層(a1)をコーティング後のポリエステルフィルム(a2)を金属板表面にラミネートする方法
樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム(a2)を樹脂層(a1)が金属板面と密着するように金属板表面にラミネートする。例えば、金属板をフィルムの融点を超える温度で加熱し、その表面に樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム(a2)を圧着ロール(以下、ラミネートロールと称す)を用いて接触させ熱融着させる方法を用いることができる。なお、このとき、上述したように、樹脂層(a1)をコーティングしたポリエステルフィルム面をラミネートロールを用いて金属板に接触させ熱融着させることが必要である。
ラミネート条件については、本発明に規定する樹脂層が得られるように適宜設定される。例えば、ラミネート開始時の温度を少なくともフィルムの融点以上とし、ラミネート時にフィルムの受ける温度履歴として、フィルムの融点以上の温度で接している時間を1〜20msecの範囲とすることが好適である。このようなラミネート条件を達成するためには、高速でのラミネートに加えて、融着中の冷却も必要である。ラミネート時の加圧は特に規定するものではないが、面圧として9.8〜294N/cm2(1〜30kgf/cm)が好ましい。この値が低すぎると、樹脂界面の到達する温度が融点以上であっても時間が短時間であるため溶融が不十分であり、十分な密着性を得難い。また、加圧が大きいとラミネート金属板の性能上は不都合がないものの、ラミネートロールにかかる力が大きく設備的な強度が必要となり装置の大型化を招くため不経済である。
【実施例1】
【0063】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0064】
金属板の製造
金属板として、クロムめっき鋼板を用いた。冷間圧延、焼鈍、調質圧延を施した厚さ0.18mm、幅977mmの鋼板に対して、脱脂、酸洗後、クロムめっき処理を行い、クロムめっき鋼板を製造した。クロムめっき処理は、CrO、F、SO2−を含むクロムめっき浴でクロムめっき、中間リンス後、CrO、Fを含む化成処理液で電解した。その際、電解条件(電流密度・電気量等)を調整して金属クロム付着量とクロム水酸化物付着量を、Cr換算でそれぞれ120mg/m、15mg/mに調整した。
【0065】
缶内面側の樹脂被覆要フィルムの製造
表2に示すグリコール成分と酸成分を表2に示す比率にて重合したポリエステル樹脂に、表2に示す粒子を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物を常法に従い、乾燥、溶融、押し出して、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルム(a2)を得た。
次いで、表1に示すポリエステル樹脂を主成分とする樹脂、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂、導電性ポリマー、ドーパント、有機顔料などの各種添加剤を、表1に示す比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解してコーティング液を作製した。このコーティング液を上記にて得られた二軸配向ポリエステルフィルム(a2)の片側の面に、グラビアロールコーターにより所定の乾燥付着量となるように塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層(a1)の付着量を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。
【0066】
【表1】

【0067】
【表2】

【0068】
缶外面側の樹脂被覆要フィルムの製造
表4に示すグリコール成分と酸成分を表4に示す比率にて重合したポリエステル樹脂に、表4に示す粒子を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物を常法に従い、乾燥、溶融、押し出して、冷却ドラム上で冷却固化させ、未延伸フィルムを得た後、二軸延伸・熱固定して、二軸配向ポリエステルフィルム(a2)を得た。
次いで、表3に示すポリエステル樹脂を主成分とする樹脂、ポリイソシアネート、エポキシ樹脂、導電性ポリマー、ドーパント、有機顔料などの各種添加剤を、表3に示す比にてトルエンとメチルエチルケトンの混合溶媒中に溶解してコーティング液を作製した。このコーティング液を上記にて得られた二軸配向ポリエステルフィルム(a2)の片側の面に、グラビアロールコーターにより所定の乾燥付着量となるように塗布・乾燥し、乾燥後の樹脂層(a1)の付着量を調整した。乾燥温度は、80〜120℃の範囲とした。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
容器用樹脂被覆金属板の製造
図1に示す金属帯のラミネート装置を用い、前記で得たクロムめっき鋼板1を金属帯加熱装置2で加熱し、ラミネートロール3により、クロムめっき鋼帯1の一方の面に、缶内面側の樹脂被覆層(A)をラミネート(熱融着)するとともに、他方の面に缶外面側の樹脂被覆層(A)をラミネート(熱融着)した。その後、金属帯冷却装置5にて水冷を行い、ポリエステル樹脂被覆金属板を製造した。上記ラミネートロール3は内部水冷式とし、ラミネート中に冷却水を強制循環し、フィルム接着中の冷却を行った。樹脂フィルムを金属板にラミネートする際に、金属板に接する界面のフィルム温度がフィルムの融点以上になる時間を1〜20msecの範囲内にした。
以上より製造された容器用樹脂被覆金属板(本発明例)の片面側の被膜断面構造を図2に示す。
【0072】
容器用樹脂被覆金属板の評価
以上より製造された容器用樹脂被覆金属板の特性について、下記の(1)〜(5)の方法によりそれぞれ測定、評価した。
(1)成形性
容器用樹脂被覆金属板にワックスを塗布後、直径200mmの円板を打ち抜き、絞り比2.00で浅絞り缶を得た。次いで、この絞り缶に対し、絞り比2.20で再絞り加工を行った。この後、常法に従いドーミング成形を行った後、トリミングし、次いでネックイン−フランジ加工を施し深絞り缶を成形した。このようにして得た深絞り缶のネックイン部に着目し、フィルムの損傷程度を目視観察した。評価対象は、缶の内外面である。
(評点について)
◎:成形後フィルムに損傷も白化も認められない状態
○:成形後フィルムに損傷が認められないが、部分的に白化が認められる状態
×:缶が破胴し、成形不可能
(2)耐レトルト白化性
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶の、底部(缶外面側)を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにして、蒸気式レトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。レトルト処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
なお、蒸気式レトルト殺菌炉とは、加熱媒体として、純粋な飽和蒸気を使用し、缶を振動させないで加熱殺菌する炉のことである。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観にかすかな曇り発生
×:外観が白濁(白化発生)
(3)耐熱水変色性
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶の、底部(缶外面側)を対象とした。缶内に常温の水道水を満たした後、蓋を巻き締めて密閉した。その後、缶底部を下向きにして、熱水式レトルト殺菌炉の中に配置し、125℃で90分間、レトルト処理を行った。処理後、缶底部外面の外観変化を目視で観察した。
なお、熱水式レトルト装置とは、加熱媒体として熱水を使用して、缶を振動させないで加熱殺菌する炉のことである。
(評点について)
◎:外観変化なし
○:外観がわずかに変化(変色発生)
×:外観が変化(顕著な変色が発生)
(4)成形後密着性1
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(5)成形後密着性2
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。缶の内部に水道水を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施し、缶胴部よりピール試験用のサンプル(幅15mm、長さ120mm)を切り出した。切り出したサンプルの長辺側端部からフィルムの一部を剥離する。剥離したフィルムを、剥離された方向とは逆方向(角度:180°)に開き、引張試験機を用いて、引張速度30mm/min.でピール試験を行い、幅15mmあたりの密着力を評価した。評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点)
◎:10.0(N)/15(mm)以上
○:5.0(N)/15(mm)以上、10.0(N)/15(mm)未満
×:5.0(N)/15(mm)未満
(6)傷部耐食性評価1
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶外面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れる。続いて、クロスカット傷を付与した缶に対し、JISZ2371に準拠した塩水噴霧テストを300時間行い、傷部からの片側最大腐食幅を測定した。測定方法を図4に示す。評価対象は、缶外面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅0.5mm未満
○:片側最大腐食幅0.5mm以上〜1.0mm未満
×:片側最大腐食幅1.0mm以上
(7)傷部耐食性評価2
上記(1)の成形性評価で成形可能(○以上)であった缶を対象とした。図3に示すように、缶内面の缶胴部2箇所に、下地鋼板に達するクロスカット傷を入れる。続いて、缶の内部に、1.5%NaCl+1.5%クエン酸ナトリウム混合液を充填した後、蓋を巻き締めて密閉した。続いて、レトルト殺菌処理を130℃、90分間の条件で実施した後、温度38℃の恒温槽内で、20日間経時させた。その後、缶を切り開き、クロスカット傷部からの片側最大腐食幅を測定した。測定方法は、(6)傷部耐食性評価1と同様である。また、評価対象は、缶内面の缶胴部である。
(評点について)
◎:片側最大腐食幅1.0mm未満
○:片側最大腐食幅1.0mm以上〜3.0mm未満
×:片側最大腐食幅3.0mm以上
以上により得られた結果を表5および表6に示す。
【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

【0075】
表5、表6より、本発明例は、食品缶詰素材に要求される成形性、耐レトルト白化性、耐熱水変色性、成形後密着性について、良好な性能を有することがわかる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例は、いずれかの特性が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0076】
食品缶詰素材として、食品缶詰の缶胴及び蓋等を中心に、世界のあらゆる市場で使用可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 金属板(クロムめっき鋼板)
2 金属帯加熱装置
3 ラミネートロール
4a、4b フィルム
5 金属帯冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板の少なくとも片面に、ポリエステル樹脂を主成分とする複層構造の樹脂被覆層(A)を有し、該樹脂被覆層(A)は、前記金属板面と密着し下記(イ)〜(ヘ)の成分を含有しポリエステル樹脂を主成分とする樹脂層(a1)を有することを特徴とする容器用樹脂被覆金属板。
(イ)数平均分子量が5000〜30000、ガラス転移温度(Tg)が5〜50℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ロ)数平均分子量が5000〜30000、ガラス転移温度(Tg)が51〜100℃の範囲にある飽和型ポリエステル樹脂
(ハ)ポリイソシアネート
(ニ)数平均分子量500〜5000の範囲にあるエポキシ樹脂
(ホ)導電性ポリマー
(ヘ)ドーパント
【請求項2】
前記樹脂被覆層(A)が、前記樹脂層(a1)と、該樹脂層(a1)の上層に形成されるポリエステルフィルム(a2)からなることを特徴とする請求項1に記載の容器用樹脂被覆金属板。
【請求項3】
前記樹脂層(a1)を形成する前記(イ)飽和型ポリエステル樹脂、前記(ロ)飽和型ポリエステル樹脂、前記(ハ)ポリイソシアネートおよび前記(ニ)エポキシ樹脂の合計含有量を100重量部としたとき、以下の組成比からなり、
さらに、前記(ホ)導電性ポリマーを、前記(イ)ポリエステル樹脂と前記(ロ)ポリエステル樹脂の合計を100重量部としたとき、0.1〜15.0重量部の範囲で含有し、
前記(ヘ)ドーパントを、前記(ホ)導電性ポリマーを形成するモノマー1molに対して0.01〜1.00molの範囲で含有するることを特徴とする請求項1または2に記載の容器用樹脂被覆金属板。
前記(イ)飽和型ポリエステル樹脂:25〜45重量部
前記(ロ)飽和型ポリエステル樹脂:25〜45重量部
前記(ハ)ポリイソシアネート:10〜30重量部
前記(ニ)エポキシ樹脂:10〜20重量部
【請求項4】
前記(ハ)ポリイソシアネートが、イソホロンジイソシアネート及びキシリレンジイソシアネートより選ばれる1種以上のポリイソシアネートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
【請求項5】
前記(ニ)エポキシ樹脂がノボラック型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
【請求項6】
前記(ホ)導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアルキルチオフェン、ポリアルキルジオキシチオフェン、ポリイソチアナフテン、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセン、ポリパラフェニレンビニレン、アルキレンジオキシチオフェンおよび、これら各ポリマーの誘導体、ならびに、これら各ポリマーを構成する単量体の2種以上の共重合物、の中から選ばれる一種または二種以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板。
【請求項7】
前記(ヘ)ドーパントが、ハロゲン類、プロトン酸、ルイス酸から選ばれた1種または2種以上の混合物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の容器用ポリエステル樹脂被覆金属板。
【請求項8】
前記ポリエステルフィルム(a2)が、ポリエステル樹脂の構成単位の93mass%以上がエチレンテレフタレート単位及び/またはエチレンナフタレート単位である二軸延伸ポリエステルフィルムであり、該二軸延伸ポリエステルフィルムは、無機粒子および/または有機粒子を含有することを特徴とする請求項2〜7のいずれかに記載の容器用樹脂被覆金属板。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−6282(P2012−6282A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144745(P2010−144745)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】