説明

容器詰飲料

【課題】高濃度に非重合体カテキン類を含有していながら苦味、渋味が低減され長期間の飲用に適し、また飲料の外観が高温保存時に変化しにくく、更に運動時の血中における乳酸の産生を抑制する効果の優れた容器詰飲料を提供する。
【解決手段】(A)非重合体カテキン類0.01〜1.0質量%、(B)キナ酸又はその塩、(C)スクラロース0.0001〜20質量%、(D)ナトリウムイオン0.001〜0.5質量%、(E)カリウムイオン0.001〜0.2質量%を含有し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]が0.0001〜0.5であり、pHが2〜6である、運動時に血中乳酸産生を抑制するための容器詰飲料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動時の血中における乳酸の産生を抑制するために用いる高濃度非重合体カテキン類含有容器詰飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
カテキン類の効果として、運動時の乳酸産生抑制作用等が知られている(非特許文献1)。カテキン類のこの生理効果を発現させるには、大量のカテキン類を摂取する必要があり、効果が発現する用量をより簡便に摂取するために、飲料にカテキン類を高濃度に配合できる技術が望まれている。この方法の一つとして、緑茶抽出物の濃縮物等を利用して、カテキン類を飲料に溶解状態で添加する方法(特許文献1)が知られている。この方法を用いれば、カテキンを高濃度に含有し、苦味、渋味が低減され長期間の飲用に適し、また苦味、渋味の安定性及び喉越しに優れ、透明容器での高温保存時の色調安定性に優れた飲料を製造することができる。
【特許文献1】特開2005−58208号公報
【非特許文献1】Murase T.等 Am.J.Physiol.Regul.Integr.Comp.Physiol.288:R708−R715、2005.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、風味調整にブドウ糖や砂糖等の甘味度が低い甘味料を用いると、飲料の浸透圧が高くなり、胃排出時間が遅く、カテキン類の吸収が遅くなって、運動時の乳酸産生抑制効果が充分に発揮されない問題があることが判明した。
従って、本発明の目的は,高濃度で非重合体カテキン類を含有していながら苦味、渋味が低減され長期間の飲用に適し、また飲料の外観が高温保存時に変化しにくい、運動時の血中における乳酸の産生を抑制するための容器詰飲料及び運動時の血中乳酸産生抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、高濃度で非重合体カテキン類を含有しているにもかかわらず風味、安定性がよく長期間の飲用に耐えられ、しかも運動時の血中乳酸産生抑制効果の優れた容器詰飲料に関して検討した結果、飲料中の非重合体カテキン類に対するキナ酸の比率並びにナトリウムイオン及びカリウムイオン濃度を調整するとともに、スクラロースを配合すると、運動時の血中における乳酸の産生を抑制する効果が優れ、更に緑茶風味がなく長期間の飲用に適し、また透明容器に充填して保存しても長期間色調が安定な高濃度非重合体カテキン類を含有する容器詰飲料が得られることを見出した。
【0005】
本発明は、緑茶抽出物を配合した容器詰飲料であって、次の成分(A)〜(E):
(A)非重合体カテキン類 0.01〜1.0質量%、
(B)キナ酸又はその塩、
(C)スクラロース 0.0001〜20質量%、
(D)ナトリウムイオン 0.001〜0.5質量%、
(E)カリウムイオン 0.001〜0.2質量%
を含有し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]が0.0001〜0.5であり、pHが2〜6である、運動時に血中乳酸産生を抑制するための容器詰飲料を提供するものである。
また、本発明は、
(A)非重合体カテキン類 0.01〜1.0質量%、
(B)キナ酸又はその塩、
(C)スクラロース 0.0001〜20質量%、
(D)ナトリウムイオン 0.001〜0.5質量%、
(E)カリウムイオン 0.001〜0.2質量%
を含有し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]が0.0001〜0.5であり、pHが2〜6である、運動時の血中乳酸産生抑制剤を提供するものである。
更に、本発明は、
(A)非重合体カテキン類 0.01〜1.0質量%、
(B)キナ酸又はその塩、
(C)スクラロース 0.0001〜20質量%、
(D)ナトリウムイオン 0.001〜0.5質量%、
(E)カリウムイオン 0.001〜0.2質量%
含有し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]が0.0001〜0.5であり、pHが2〜6である組成物の、運動時に血中乳酸産生を抑制する容器詰飲料製造のための使用を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明の容器詰飲料は、非重合体カテキン類を高濃度含有し、かつ緑茶風味の他異味・異臭がなく、苦味、渋味が低減され長期間の飲用に適し、苦味、渋味の安定性及び喉越しに優れ、また透明容器に充填して高温保存しても長期間色調が安定であり、運動時の血中乳酸産生を抑制するための非茶系容器詰飲料として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で非重合体カテキン類とは、カテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート等の非エピ体カテキン類及びエピカテキン、エピガロカテキン、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート等のエピ体カテキン類をあわせての総称を指す。
【0008】
本発明の容器詰飲料中には、水に溶解状態にある非重合体カテキン類(A)を、0.01〜1.0質量%含有するが、好ましくは0.03〜0.5質量%、より好ましくは0.04〜0.4質量%、更に好ましくは0.05〜0.3質量%、殊更好ましくは0.06〜0.3質量%、特に好ましくは0.092〜0.26質量%、最も好ましくは0.1〜0.15質量%含有する。非重合体カテキン類含量がこの範囲にあると、多量の非重合カテキン類を容易に取り易く、飲料調製直後の色調の点からも好ましい。当該非重合体カテキン類の濃度は、緑茶抽出物の配合量によって調整することができる。
【0009】
また、運動時に血中乳酸産生抑制効果を出すための成人一日当りの摂取量としては、非重合体カテキン類として好ましくは570mg以上がよいことが分かった。従って、本発明の容器詰飲料においても成人一日当りの摂取量は、非重合体カテキン類として570mg以上が好ましく、一日当りの必要摂取量を確保する点からも、本発明の容器詰飲料1本(350〜500mL)当りの含有量が570mg以上であるものがよい。
【0010】
本発明の容器詰飲料においては、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]は0.0001〜0.5であるが、好ましくは0.0001〜0.16、より好ましくは0.002〜0.15、更に好ましくは0.002〜0.1、特に好ましくは0.002〜0.05である。[(B)/(A)]がこの範囲にあると、強烈な苦味、渋味、強い収斂性が生じなく、飲料の残留感の改善効果が十分得られ、キナ酸の酸味が適度で飲料の風味が損なわれなく好ましい。また、高濃度にカテキン類を含有する飲料特有の飲用後の舌に残る残留感もなく、後味の切れが良く好ましい。キナ酸は酸の形態でも塩の形態でも加えることができ、またキナ酸又はキナ酸塩を含んだ組成物の形で加えてもよい。ここでキナ酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等が挙げられる。
【0011】
キナ酸による非重合体カテキン類の苦味・渋味低減効果及び後味の切れ改善効果の作用機構はいまだ明確でないが、キナ酸がカテキン類と水素結合等による弱い会合体を形成し、カテキン類の味らい細胞自体に吸着し、カテキン類の苦味受容部への接触を制御するものと考えられる。
【0012】
本発明の容器詰飲料は、緑茶抽出物の成分を調整し、更に必要な成分を配合することにより得られるものである。成分調整する方法として、(イ)キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有比率[(B)/(A)]が所定の範囲になるように飲料製造工程で調整する方法;(ロ)緑茶抽出物又はその濃縮物においてキナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有比率を調整する方法等がある。
【0013】
緑茶抽出物の成分を調整する場合には、例えば、固形分中に非重合体カテキン類を20〜90質量%含有する緑茶抽出物を用いるのが好ましい。更には、緑茶抽出物の濃縮物のキナ酸量を調整し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]を0.0001〜0.16とするのが好ましい。ここでいう緑茶抽出物とは、茶葉から熱水及び/又は水溶性有機溶媒により抽出された抽出物である。緑茶抽出物の濃縮物としては、例えば三井農林(株)「ポリフェノン」、伊藤園(株)「テアフラン」、太陽化学(株)「サンフェノン」等の市販されている緑茶抽出物の濃縮物を用いてもよい。
【0014】
緑茶抽出物の成分調整のための精製手段としては、緑茶抽出物又はその濃縮物を水又は水と有機溶媒の混合物に懸濁したものに、有機溶媒を添加することにより生じた沈殿を除去し、次いで溶媒を留去する方法;緑茶抽出物の濃縮物を有機溶媒に溶解し、これに水又は水と有機溶媒の混合物を添加することにより生じた沈殿を除去し、次いで溶媒を留去する方法等が挙げられる。また、固形分中に非重合体カテキン類を20〜90質量%含有する緑茶抽出物の濃縮物を、有機溶媒と水の質量比9/1〜1/9の混合溶液に溶解させ、活性炭及び酸性白土又は活性白土と接触させてもよい。これらの他に超臨界抽出による精製や吸着樹脂に吸着させエタノール溶液で溶離させて得られたもの等であってもよい。ここでいう緑茶抽出物の形態としては、固体、水溶液、スラリー状等種々のものが挙げられるが、特に水溶液、スラリー状が乾燥等の履歴が少なく好ましい。
【0015】
本発明で用いる緑茶抽出物中の非重合体カテキン類の濃度は、20〜90質量%が好ましく、より好ましくは20〜87質量%、更に好ましくは23〜85質量%、特に25〜82質量%であるのが好ましい。緑茶抽出物中の非重合体カテキン類の濃度が、20質量%未満の場合、飲料に配合すべき緑茶抽出物の精製物自体の配合量が多くなる。緑茶抽出物中の非重合体カテキン類の濃度が、90質量%を超える場合、緑茶抽出物に存在する総ポリフェノール以外の遊離アミノ酸等の風味をよくする働きを持つ微量成分等を排除してしまう傾向にある。
【0016】
また、本発明で用いる緑茶抽出物中のカテキンガレート、エピカテキンガレート、ガロカテキンガレート及びエピガロカテキンガレートからなる総称ガレート体の全非重合体カテキン類中での割合が35〜100質量%の方が、非重合体カテキン類の生理効果の有効性上好ましい。調味のしやすさからは、35〜98質量%がより好ましく、特に35〜95質量%が好ましい。
【0017】
本発明で使用するスクラロース(C)は、容器詰飲料中に0.0001〜20質量%含有するが、好ましくは0.001〜15質量%、更に好ましくは0.001〜10質量%、特に好ましくは0.001〜5質量%含有する。0.0001質量%未満であると、甘みがほとんどなく、酸味、塩味とのバランスがとれなく、また運動時の血中乳酸産生抑制効果が得られない。一方、20質量%を超えると、甘すぎて喉にひっかかる感覚が強く、喉越しが低下する。
【0018】
本発明の容器詰飲料中の非重合体カテキン類(A)とスクラロース(C)との含有質量比(A)/(C)は0.0005〜10,000、更に0.0005〜1000、特に0.005〜1000の範囲内にあるのが、運動時の血中乳酸産生抑制効果の点から好ましい。
【0019】
本発明容器詰飲料には、ナトリウムイオン(D)を0.001〜0.5質量%、及びカリウムイオン(E)0.001〜0.2質量%が用いられる。ここで、ナトリウムイオン及びカリウムイオン濃度がこの0.001質量%未満であると、飲む場面によっては味的に物足りなく感じ、効果的なミネラル補給ができなく、また運動時の血中乳酸産生抑制の点からも好ましくない。一方、この0.5質量%を超えると、塩類自体の味が強くなり、長期間の飲用に好ましくない。更に、高温保存時での色調の変化が大きく好ましくない。ナトリウムイオン(D)及びカリウムイオン(E)は、水溶性成分、無機塩に由来する他、更に果汁、茶抽出物中にも存在する。
【0020】
ナトリウムイオン(D)としては、ナトリウム塩化物、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、酒石酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム及びそれらの混合物等のナトリウム塩を配合してもよいし、加えられた果汁又は茶の成分由来のものも含まれる。ナトリウムイオン濃度は浸透圧による水の吸収を容易にさせる上で低い方が望ましいが、体から腸に水を浸透圧吸引しない程度であることが重要である。これを行うために必要なナトリウムイオン濃度は、血漿ナトリウムの場合よりも低いことが好ましい。運動時の血中乳酸産生抑制効果及び高温時の長期間色調の安定性の観点から、本発明容器詰飲料中のナトリウムイオン(D)含有量は、0.001〜0.5質量%、好ましくは0.002〜0.4質量%、更に好ましくは0.003〜0.2質量%である。
【0021】
カリウムイオン(E)としては、カリウム塩化物、炭酸カリウム、硫酸カリウム、酢酸カリウム、炭酸水素カリウム、クエン酸カリウム、リン酸カリウム、リン酸水素カリウム、酒石酸カリウム、ソルビン酸カリウム及びそれらの混合物等のカリウム塩を配合してもよいし、加えられた果汁又は茶の成分由来のものも含まれる。長期間色調の安定性の観点から、本発明容器詰飲料中のカリウムイオン(E)は、0.001〜0.2質量%、好ましくは0.002〜0.15質量%、更に好ましくは0.003〜0.12質量%である。
【0022】
ナトリウムイオン(D)及びカリウムイオン(E)に加えて、本発明の容器詰飲料には0.001〜0.5質量%、好ましくは0.002〜0.4質量%、特に好ましくは0.003〜0.3質量%の塩化物イオンを含有させてもよい。塩化物イオン成分は塩化ナトリウム又は塩化カリウムのような塩の形で配合できる。
カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄のような他の微量イオンを加えてもよい。これらのイオンも塩として配合してもよい。
存在するイオンの総レベルには、加えられたイオン添加量と共に、飲料中に天然で存在する量を含む。例えば、塩化ナトリウムが加えられると、その量のナトリウムイオン及びその量の塩化物イオンも、それに応じて各イオンの総量に含まれることになる。
【0023】
本発明の容器詰飲料のpHは2〜6である。2より低いと飲料の酸味、刺激臭が強く飲用に耐えない。また、6より高いと風味の調和が取れなくなり、嗜好性が低下し、安定性も悪くなる。pHは2〜5が好ましく、特に2〜4.5であるのが好ましい
【0024】
本発明の容器詰飲料は、苦渋味抑制剤を配合すると更に飲用しやすくなり好ましい。苦渋味抑制剤としては、サイクロデキストリンが好ましい。サイクロデキストリンとしては、α−、β−、γ−サイクロデキストリン及び分岐α−、β−、γ−サイクロデキストリンが挙げられる。サイクロデキストリンは容器詰飲料中に0.005〜0.5質量%、好ましくは、0.01〜0.3質量%含有するのがよい。
【0025】
本発明の容器詰飲料には、これらの成分の他、酸化防止剤、香料、各種エステル類、有機酸(塩)類、無機酸(塩)類、色素類、乳化剤、保存料、調味料、酸味料、ガム、乳化剤、油、ビタミン、アミノ酸、果汁、果汁エキス類、野菜エキス類、花蜜エキス類、pH調整剤又は品質安定剤等の成分を適宜配合してもよい。
【0026】
飲用には、香料、果汁を嗜好性を高めるために配合してもよい。一般に果汁のことをフルーツジュース、香料のことをフレーバーと呼んでいる。天然又は合成香料や果汁が本発明で使用できる。これらはフルーツジュース、フルーツフレーバー、植物フレーバー又はそれらの混合物から選択できる。特に、フルーツジュースと一緒に茶フレーバー、好ましくは緑茶又は紅茶フレーバーの組合せが好ましい味を有している。好ましい果汁はリンゴ、ナシ、レモン、ライム、マンダリン、グレープフルーツ、クランベリー、オレンジ、ストロベリー、ブドウ、キゥイ、パイナップル、パッションフルーツ、マンゴ、グァバ、ラズベリー及びチェリーである。シトラスジュース、特にグレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、マンダリンと、マンゴ、パッションフルーツ及びグァバのジュース、又はそれらの混合物が好ましい。好ましい天然フレーバーはジャスミン、カミツレ、バラ、ペパーミント、サンザシ、キク、ヒシ、サトウキビ、レイシ、タケノコ等である。果汁は本発明の容器詰飲料中に0.001〜20質量%、特に0.002〜10質量%含有させるのが好ましい。フルーツフレーバー、植物フレーバー、茶フレーバー及びそれらの混合物が香料として使用できる。特に好ましい香料はオレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー及びグレープフルーツフレーバーを含めたシトラスフレーバーである。他のフルーツフレーバーは、リンゴフレーバー、ブドウフレーバー、ラズベリーフレーバー、クランベリーフレーバー、チェリーフレーバー、パイナップルフレーバー等が使用できる。これらのフレーバーはフルーツジュース及び香油のような天然物でも、又は合成物でもよい。香料には、様々なフレーバーのブレンド、例えばレモン及びライムフレーバー、シトラスフレーバーと選択されたスパイス(典型的コーラソフトドリンクフレーバー)等を含めることができる。親油性の濃縮物又は抽出物の香料としては、合成香味エステル類、アルコール類、アルデヒド類、テルペン類、セスキテルペン類等を配合できる。このような香料は本発明の容器詰飲料中に0.0001〜5質量%、特に0.001〜3質量%含有するのが好ましい。
【0027】
飲料には、酸味料を配合してもよい。酸味料は本発明の容器詰飲料のpHを2〜6に維持するために用いられる。酸はそれらの非解離形で、あるいはそれらのナトリウム塩、カリウム塩として用いてもよい。好ましい酸としては、クエン酸、リンゴ酸、フマル酸、アジピン酸、グルコン酸、酒石酸、アスコルビン酸、酢酸、リン酸又はそれらの混合物を含めた食用有機酸及び無機酸が挙げられる。特に好ましい酸はクエン酸及びリンゴ酸である。これらの酸味料は飲料成分を安定化させる酸化防止剤としても役立つ。これ以外の酸化防止剤の例には、アスコルビン酸、植物抽出エキス等が挙げられる。
【0028】
飲料には、ビタミンを配合してもよい。好ましいビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンC及びビタミンEが挙げられる。ビタミンD及びビタミンBのような他のビタミンも用いることができる。
【0029】
飲料には、ミネラルを配合してもよい。好ましいミネラルはカルシウム、クロム、銅、フッ素、ヨウ素、鉄、マグネシウム、マンガン、リン、セレン、ケイ素、モリブデン及び亜鉛である。特に好ましいミネラルはマグネシウム、リン及び鉄である。
【0030】
本発明の容器詰飲料の飲料としては、非茶系飲料とするのが好ましい。非茶系飲料としては、本発明の容器詰飲料に必須の成分の他、例えば苦渋味抑制剤、香料、果汁、野菜エキス、酸味料、ビタミン、ミネラル、二酸化炭素等から選ばれる成分を配合するのが好ましい。非茶系飲料としては、例えばソフトドリンクである炭酸飲料、果実エキス入り飲料、野菜エキス入りジュースやニアウォーター、スポーツドリンク、アイソトニック飲料、ダイエット飲料等が挙げられ、特にスポーツドリンクとするのが好ましい。また、本発明の容器詰飲料は、運動に際して血中の乳酸産生を抑制する効果に優れているため、容器に運動時に飲用すると血中の乳酸産生を抑制できる旨記載することができる。
【0031】
本発明の容器詰飲料に使用される容器は、一般の飲料と同様にポリエチレンテレフタレートを主成分とする成形容器(いわゆるPETボトル)、金属缶、金属箔やプラスチックフィルムと複合された紙容器、瓶等の通常の形態で提供することができる。ここでいう容器詰飲料とは、希釈せずに飲用できるものをいう。
【0032】
本発明の容器詰飲料は、例えば、金属缶のように容器に充填後、加熱殺菌できる場合にあっては食品衛生法に定められた殺菌条件で製造されるが、PETボトル、紙容器のようにレトルト殺菌できないものについては、あらかじめ上記と同等の殺菌条件、例えばプレート式熱交換器等で高温短時間殺菌後、一定の温度迄冷却して容器に充填する等の方法が採用される。また無菌下で、充填された容器に別の成分を配合して充填してもよい。更に、酸性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを中性に戻すことや、中性下で加熱殺菌後、無菌下でpHを酸性に戻す等の操作も可能である。
【実施例】
【0033】
カテキン類の測定
フィルター(0.8μm)でろ過し、次いで蒸留水で希釈した試料を、島津製作所製、高速液体クロマトグラフ(型式SCL−10AVP)を用い、オクタデシル基導入液体クロマトグラフ用パックドカラム L−カラムTM ODS(4.6mmφ×250mm:財団法人 化学物質評価研究機構製)を装着し、カラム温度35℃でグラジエント法により測定した。移動相A液は酢酸を0.1mol/L含有の蒸留水溶液、B液は酢酸を0.1mol/L含有のアセトニトリル溶液とし、試料注入量は20μL、UV検出器波長は280nmの条件で行った。
【0034】
キナ酸の測定:HPLCによる日本食品分析センター法
検体2gを超音波処理後濾過し、高速液体クロマトグラフで測定した。
機種:LC−10AD(島津製作所(株))
検出器:紫外可視分光光度計 SPD−6AV(島津製作所(株))
カラム:TSKGEL OApak、φ7.8mm×300mm(東ソー(株))
カラム温度:40℃
移動相:0.75mmol/L硫酸
反応液:0.2mmol/Lブロムチモールブルー含有
15mmol/Lリン酸水素ニナトリウム溶液
測定波長:445nm
流量:移動相0.8mL/min、反応液0.8mL/min
【0035】
ナトリウムイオン量の測定:原子吸光光度法(塩酸抽出)
試料5gを10質量%塩酸(定溶時に1質量%塩酸溶液になるように)に入れ、その後イオン交換水で定溶し吸光度測定を行った。
波長:589.6nm
フレーム:アセチレン−空気
【0036】
カリウムイオン量の測定:原子吸光光度法(塩酸抽出)
試料5gを10質量%塩酸(定溶時に1質量%塩酸溶液になるように)に入れ、その後イオン交換水で定溶し吸光度測定を行った。
【0037】
血中乳酸量の測定
看護師が、簡易血中乳酸測定器を用いて、運動前と運動後の血中乳酸値を測定した。
【0038】
実施例1
次の製法で緑茶抽出物を製造及び非重合体カテキン類(A)及びキナ酸(B)の含有質量比(B)/(A)を調整した。非重合体カテキン類の分析結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
この緑茶抽出物を用いて表2に示す組成の容器詰非茶系スポーツ飲料を調製した。なお、PETボトルに充填した飲料を98℃、30秒のUHT殺菌法で殺菌した。
【0041】
【表2】

【0042】
表2には、得られた容器詰飲料を55℃、4週間保存した後の色の変化を評価した結果を示した。その結果、本発明の容器詰飲料は、高温で保存しても色調が変化しなかった。
【0043】
実施例2
被験者に、本発明1(Catechin)あるいは比較例3(Control)を、1日1本、12週間継続摂取した後、エルゴメーターによる漸増的運動負荷の前後で血中乳酸産生量を測定した。
結果を図1に示す。本発明の容器詰飲料を飲用したヒトにおいては、運動後の血中の乳酸量は低い値であった。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】運動時に血中に産生される乳酸に対する飲料の効果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑茶抽出物を配合した容器詰飲料であって、次の成分(A)〜(E):
(A)非重合体カテキン類 0.01〜1.0質量%、
(B)キナ酸又はその塩、
(C)スクラロース 0.0001〜20質量%、
(D)ナトリウムイオン 0.001〜0.5質量%、
(E)カリウムイオン 0.001〜0.2質量%
を含有し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]が0.0001〜0.5であり、pHが2〜6である、運動時に血中乳酸産生を抑制するための容器詰飲料。
【請求項2】
非重合体カテキン類(A)とスクラロース(C)との含有質量比[(A)/(C)]が0.0005〜10,000である請求項1記載の容器詰飲料。
【請求項3】
容器詰飲料が非茶系飲料である請求項1又は2記載の容器詰飲料。
【請求項4】
(A)非重合体カテキン類 0.01〜1.0質量%、
(B)キナ酸又はその塩、
(C)スクラロース 0.0001〜20質量%、
(D)ナトリウムイオン 0.001〜0.5質量%、
(E)カリウムイオン 0.001〜0.2質量%
を含有し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]が0.0001〜0.5であり、pHが2〜6である、運動時の血中乳酸産生抑制剤。
【請求項5】
(A)非重合体カテキン類 0.01〜1.0質量%、
(B)キナ酸又はその塩、
(C)スクラロース 0.0001〜20質量%、
(D)ナトリウムイオン 0.001〜0.5質量%、
(E)カリウムイオン 0.001〜0.2質量%
含有し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]が0.0001〜0.5であり、pHが2〜6である組成物の、運動時に血中乳酸産生を抑制する容器詰飲料製造のための使用。
【請求項6】
(A)非重合体カテキン類 0.01〜1.0質量%、
(B)キナ酸又はその塩、
(C)スクラロース 0.0001〜20質量%、
(D)ナトリウムイオン 0.001〜0.5質量%、
(E)カリウムイオン 0.001〜0.2質量%
含有し、キナ酸又はその塩(B)と非重合体カテキン類(A)との含有質量比[(B)/(A)]が0.0001〜0.5であり、pHが2〜6である容器詰飲料の、運動時に血中乳酸産生を抑制するための使用。

【図1】
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【公開番号】特開2007−143528(P2007−143528A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345602(P2005−345602)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】