説明

密閉型圧縮機

【課題】吐出ガス冷媒との油分離を十分に行って冷凍機油の吐出量を低下させ、性能や信頼性に優れた密閉型圧縮機を提供すること。
【解決手段】バルブカバー10内部に吐出孔を設けた圧縮機で、バルブカバー10と上軸受9のボス部との隙間からなる噴出し部11を、固定子5の下部コイルエンド7の高さに対して、1/4〜3/4の内部に設定することで、圧縮機内部で吐出ガス冷媒との油分離を十分に行うことが可能となり、冷凍機油吐出量の少ない密閉型圧縮機を構成できるようになる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内に電動要素と圧縮要素とを備えてなる、密閉型圧縮機の構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、冷凍サイクル中に冷凍機油が混入すると、熱交換器の熱抵抗が増え、配管の圧力損失が増大し、冷凍サイクルの効率を低下させることが知られている。また、冷凍機油の吐出量が増加すると、圧縮機は潤滑不足となり、圧縮機の信頼性が損なわれるという問題がある。このため、空気調和装置等に使用される密閉型圧縮機では、様々な油分離手段が設けられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図2は特許文献1に記載された従来の油分離手段を示すものである。図2に示すように、圧縮機要素3で圧縮され、密閉容器1内に吐出されたガスは、固定子5の外周に設けた前記密閉容器1との冷媒通路13及び前記固定子5と回転子6との間に形成されたエアギャップ12を通って前記密閉容器1内の上部空間に導かれる。
【0004】
前記回転子6の上部には薄い鉄板等で作った油分離板14が上部エンドリング15等を利用してカシメ固定されている。また、吐出管16の入口開口端17に、前記油分離板14に平行に、かつ、中央部に穴を有する平行板18を固着させる。前記平行板18の中央穴部19は、前記吐出管16の入口開口端17に固着されている。
【0005】
そして、上部空間に導かれたガスは油分離板14と平行板18の間を通り、吐出管16より吐出されるが、圧縮機運転中は前記回転子6とともに前記油分離板14も回転するので、前記吐出管16の入口開口端17に流入する際、前記油分離板14に油成分は付着し、遠心力によって、半径方向へ吹き飛ばされるが、ガス成分は、前記吐出管16の入口開口端17に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−147082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記従来の構成では、密閉容器内の底部に貯溜された冷凍機油が圧縮機運転中に発泡し、圧縮機要素から吐出されるガスにミスト状に溶け込み、密閉容器内上部に導かれ、その油成分を吐出管入口開口端付近で分離させるよう構成しているため、冷凍サイクルの循環量が増加した場合では、油分離板の回転の遠心力よりも吐出ガスの流速の力の方が強く、十分な油分離作用が期待できないという課題を有していた。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、圧縮機内部、特に電動機要素と圧縮機要素との間で吐出ガス冷媒と油分離を十分に行うことを可能とした密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型圧縮機は、上軸受に内部に吐出孔を設け、これにバルブカバーを固着し、このバルブカバーからの噴出し部を、前記電動機要素の固定子の下部コイルエンドの高さ方向の1/4〜3/4の内部に位置するように配置
したものである。
【0010】
これによって、冷凍機油がミスト状に溶け込んだ冷媒ガスが外周を固定子の下部コイルエンドで囲まれた内部空間に確実に噴出し、その内部で循環、滞留しながらその大部分が固定子の下部コイルエンドを通過、衝突することにより冷媒ガスと冷凍機油とを分離し、冷凍サイクルの循環量が増加しても冷凍機油の吐出を抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の密閉型圧縮機は、圧縮機の油吐出量を低く抑えることができ、冷凍サイクルの効率を低下させることがない。また、圧縮機の潤滑不足により圧縮機の信頼性が損なわれるという問題の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の断面図
【図2】従来の密閉型圧縮機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の密閉型圧縮機は、密閉容器内の上部に電動機要素を収納し、下部に前記電動機要素により駆動される圧縮機要素を収納し、前記密閉容器内の底部に冷凍機油を貯溜し、前記圧縮機要素の上軸受にバルブカバーを固着した密閉型圧縮機であって、前記バルブカバーと前記上軸受ボス部との隙間からなる噴出し部を、前記電動機要素の固定子の下部コイルエンドの高さ方向の1/4以上3/4以下に位置するように配置されている。これにより、冷凍機油がミスト状に溶け込んだ冷媒ガスが外周を固定子の下部コイルエンドで囲まれた内部空間に確実に噴出し、その内部で循環、滞留しながらその大部分が固定子の下部コイルエンドを通過、衝突することにより冷媒ガスと冷凍機油とを分離した状態で、固定子外周に設けた冷媒通路を通過して密閉容器外部に吐出され、冷凍サイクルの循環量が増加しても冷凍機油の吐出を抑えることができる。
ある実施形態において、塩素を含まないHCFC、HFCを冷媒として用いる。
ある実施形態において、自然冷媒を冷媒として用いる。
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における密閉型圧縮機の断面図である。密閉容器1内の上部に電動機要素2と、下部に電動機要素2により駆動される圧縮機要素3を収納する。圧縮機要素3は気液分離器4より吸入された冷媒ガスを高温高圧にし、密閉容器1内に排出するものである。電動機要素2は固定子5と回転子6とから成り、固定子5の下部コイルエンド7は密閉容器1内径近傍で圧縮機要素3側にリング状に盛り上った形状である。
【0016】
図1において、圧縮機要素3の上軸受9に圧縮機要素3により吐出されたガスを受けるバルブカバー10を設けている。バルブカバー10の噴出し部11を、上軸受9のボス部との隙間に位置するようリング状に吐出させ、噴出し部11の開口部を固定子5の下部コイルエンド7の高さ(Ls)の1/4以上3/4以下の間に位置するよう設ける。
【0017】
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
まず、前記圧縮機要素3により圧縮されたガスは、バルブカバー10の噴出し部11を通り密閉容器1内に吐出されるが、噴出し部11の開口部が固定子5下部コイルエンド7の高さの1/4以上3/4以下の間に位置するため、吐出された冷凍機油がミスト状に溶け
込んだ冷媒ガスは外周を固定子5の下部コイルエンド7で囲まれた内部空間に噴出し、その内部で循環、滞留しながらその大部分が固定子5の下部コイルエンド7を通過、衝突により冷媒ガスと冷凍機油とを分離することが出来る。これにより、冷凍サイクルの循環量が増加しても圧縮機内部から冷凍機油の吐出を抑えることができる。
なお、冷媒には、塩素を含まないHCFC、HFCを用いることができる。また、二酸化炭素やアンモニア等の自然冷媒を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、空気調和器や冷蔵庫等の種々の冷凍機器の圧縮機に適用できる。
【符号の説明】
【0019】
1 密閉容器
2 電動機要素
3 圧縮機要素
4 気液分離器
5 固定子
6 回転子
7 下部コイルエンド
9 上軸受
10 バルブカバー
11 噴出し部
12 エアギャップ
13 冷媒通路
14 油分離板
15 上部エンドリング
16 吐出管
17 入口開口端
18 平行板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内の上部に電動機要素を収納し、下部に前記電動機要素により駆動される圧縮機要素を収納し、前記密閉容器内の底部に冷凍機油を貯溜し、前記圧縮機要素の上軸受にバルブカバーを固着した密閉型圧縮機であって、
前記バルブカバーと前記上軸受ボス部との隙間からなる噴出し部を、前記電動機要素の固定子の下部コイルエンドの高さ方向の1/4以上3/4以下に位置するように配置した密閉型圧縮機。
【請求項2】
塩素を含まないHCFC、HFCを冷媒とした請求項1記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
自然冷媒を冷媒とした請求項1記載の密閉型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−219762(P2012−219762A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88735(P2011−88735)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】