説明

密閉型圧縮機

【課題】電動要素および圧縮された冷媒ガスの高温化に起因した密閉型圧縮機の性能および信頼性の低下を抑制する。
【解決手段】電動要素および圧縮要素を収容した密閉容器101の内表面に、皮膜109などの輻射効果を高める処理を施したものである。これによって、密閉容器101の内面に塗装もしくは化学的処理により、輻射率の高い皮膜109を形成し、密閉容器101内の輻射熱の放熱性を高め、密閉型圧縮機の性能の低下と信頼性の低下をそれぞれ抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用電気冷凍冷蔵庫やショーケースなどに使用される密閉型圧縮機に関し、特に、密閉型圧縮機の密閉容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護に対する要求はますます強まってきており、冷蔵庫やその他の冷凍サイクル装置などにおいても、特に高効率化が強く要望されている。
【0003】
従来、この種の密閉型圧縮機としては、密閉容器の外表面に塗装を施したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、図面を参照しながら上記従来の密閉型圧縮機を説明する。
【0005】
図3は、特許文献1に記載された従来の密閉型圧縮機の断面図、図4は、同従来の密閉型圧縮機における密閉容器の要部拡大断面図である。
【0006】
図3および図4に示すように、従来の密閉型圧縮機は、密閉容器1の底部に冷凍機油3を貯留するとともに冷媒ガス5が充填され、圧縮機本体7が密閉容器1内に内装されている。
【0007】
密閉容器1の外表面は、塗装処理され塗膜9が形成されている。
【0008】
圧縮機本体7は、電動要素11と圧縮要素13から構成される。
【0009】
以上のように構成された従来の密閉型圧縮機について、以下その動作を説明する。
【0010】
密閉型圧縮機は、通電によって電動要素11が動作し、それを動力にして圧縮要素13が冷媒ガス5の圧縮および冷凍サイクル(図示せず)への吐出動作を繰り返し行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平3−000994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記特許文献1に記載された従来の密閉型圧縮機の構成では、電動要素11および圧縮された冷媒ガス5が非常に高温となり、圧縮要素13および密閉容器1内がそれによって加熱され、高温となって性能および信頼性を悪化させるという課題を有していた。
【0013】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、効率が高く、性能のよい、信頼性の高い密閉型圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型圧縮機は、密閉容器内に、電動要素によって駆動される圧縮要素を収容し、密閉容器の内表面に、輻射効果を高める処理を施したものである。
【0015】
すなわち、密閉容器の内面での輻射効果を高める処理として、塗装もしくは化学的処理による輻射率の高い皮膜を形成することにより、密閉容器内の輻射熱の放熱を高め、放熱性を向上させることができる。
【0016】
ここで、高温の固体表面から低温の固体表面に、その間の空気やその他の気体の存在の有無に関わらず、直接電磁波(赤外線)の形で伝わる伝わり方を輻射とし、その熱を輻射熱、伝わり易さを輻射率と定義する。
【0017】
なお、この他、熱の伝わり方としては、伝達と対流がよく知られている。
【発明の効果】
【0018】
本発明の密閉型圧縮機は、密閉容器内の温度上昇を最小限に抑えることで効率が高く、性能のよい、信頼性の高い密閉型圧縮機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の断面図
【図2】同実施の形態1における密閉型圧縮機の密閉容器の要部拡大断面図
【図3】従来の密閉型圧縮機の縦断面図
【図4】従来の密閉型圧縮機における密閉容器の要部拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
請求項1に記載の発明は、電動要素によって駆動される圧縮要素を収容した密閉容器の内表面に、輻射効果を高める処理を施したものである。
【0021】
かかることにより、密閉容器内の熱を、輻射によって密閉容器の外へより多く放熱させることができる。その結果、密閉容器の内部の温度上昇を最小限に抑えることができ、効率の向上が図れるとともに、性能を高め、高い信頼性も得ることができる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記輻射効果を高める処理を、塗装による塗膜の形成処理としたものである。
【0023】
かかることにより、比較的容易に処理することができ、密閉容器の内面が複雑な形状であっても容易に適用できる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記輻射効果を高める処理を、化学的な壁面状態の調整による皮膜の形成処理としたものである。
【0025】
かかることにより、比較的容易に処理することができ、且つ内表面へ強固に密着する皮膜が得られ、さらに、密閉容器の内面が複雑な形状であっても容易に適用できる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記輻射効果を高める処理を、前記密閉容器の外表面にも施したものである。
【0027】
かかることにより、密閉容器内の熱を、密閉容器の外へより多く放熱させることができる。
【0028】
請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載の発明において、前記輻射効果を高める処理を、前記密閉容器の内表面あるいは外表面において少なくとも部分的に施したものである。
【0029】
かかることにより、例えば、密閉容器の接合には、密閉容器の溶接部が、内外面とも4,000度以上の高温となるアーク溶接などが適用されるが、このアーク溶接時の熱の影響を受ける範囲には輻射効果を高める処理を行わないことで、耐熱温度の低い塗料や表面処理とすることができる。また、輻射効果を高める処理を、オイルの降りかかる部分に施すことで、高温のオイルとの熱の授受を促すことができる。さらには、輻射効果を高める処理を、高温となる吐出部やヘッド周辺に備えることで、効果的に放熱することができる。
【0030】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載の発明において、前記輻射効果を高める処理によって形成される皮膜の膜厚を、10μm以下としたものである。
【0031】
かかることにより、膜厚が厚くなることによる熱伝達の悪化を防止し、放熱効果を高めることができる。
【0032】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載の発明において、前記輻射効果を高める処理の材料を、輻射率50%以上の材料としたものである。
【0033】
かかることにより、一般的な塗装処理と比べてより高い放熱効果を得ることができる。
【0034】
請求項8に記載の発明は、請求項1から7のいずれか一項に記載の発明において、前記輻射効果を高める処理後の面の色相を、黒色もしくは黒色に近い色としたものである。
【0035】
かかることにより、一般的な未処理品と比べてより高い放熱効果を得ることができる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0037】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における密閉型圧縮機の断面図、図2は、同実施の形態1における密閉型圧縮機の密閉容器の要部拡大断面図である。
【0038】
図1および図2において、密閉型圧縮機を構成する密閉容器101の内部の底部には、冷凍機油103が貯留され、また、冷媒ガス105として、例えば、地球温暖化係数の低い炭化水素系のR600aなどが封入されている。
【0039】
さらに、密閉容器101は、鉄板の絞り成型によって形成され、密閉容器101の外表面には、防錆のための塗料の塗膜107が形成され、また、内表面には、輻射率の高い塗装または化学的表面処理を施した皮膜109が形成されている。
【0040】
そして、一端が密閉容器101内に連通し、他端が冷凍サイクル(図示せず)の低圧側に接続される吸入管111が密閉容器101に溶接などの適宜手段によって固定されている。
【0041】
さらに、密閉容器101内には、圧縮要素113とこの圧縮要素113を駆動する電動要素115とを備えた圧縮機本体117が、密閉容器101に対して弾性的に支持され、収納されている。
【0042】
輻射効果を高める処理は、化学的な壁面状態の調整による皮膜109を形成する表面処
理で可能となる。その皮膜109の形成を、密閉容器101の外表面にも施すことにより、密閉容器101内の熱をより多く放熱することができ、密閉容器101内部の温度上昇を最小限に抑えることができる。その結果、効率の向上が図れるとともに、性能を高め、且つ高い信頼性も得ることができる。
【0043】
また、密閉容器101の内表面と外表面の少なくとも一箇所以上に輻射効果を高める処理を部分的に施すことにより、例えば、密閉容器101の接合にはアーク溶接などが適用されるが、溶接時、密閉容器の溶接部は内外面とも4,000度以上の高温となるが、このアーク溶接時の熱の影響を受ける範囲には、輻射効果を高める処理を行わないことで、耐熱温度の低い塗料や表面処理であっても適用することができる。
【0044】
さらに、オイルの降りかかる部分に施すことで、高温のオイルとの熱の授受を促すことができ、高温となる吐出部やヘッド周辺に施すことで効果的に放熱することができる。
【0045】
また、輻射効果を高める処理により形成される皮膜109の膜厚を、10μm以下としたことにより、膜厚が厚くなることによる熱伝達の悪化を防止し、より高い放熱効果を得ることができる。
【0046】
さらに、輻射効果を高める処理の皮膜109の材料を、輻射率50%以上の材料とすることにより、一般的な塗装処理と比べてより高い放熱効果を得ることができる。
【0047】
また、輻射効果を高める処理後の面の色相を黒色、もしくは黒色に近い色にすることにより、一般的な未処理品と比べてより高い放熱効果を得ることが可能となる。
【0048】
以上のように構成された密閉型圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
【0049】
密閉型圧縮機は、電動要素115が電流により駆動し、それを動力として、圧縮要素113によって冷媒ガス105の圧縮および冷凍サイクル(図示せず)への吐出が繰り返される。
【0050】
ここで、本実施の形態1における密閉容器101は、その内表面に輻射率の高い塗装または化学的な表面処理による皮膜109が形成されているため、運転によって発生する密閉容器101内の熱を、高い輻射の効果によってより良好に放熱することができる。したがって、密閉容器内の熱を、密閉容器外へより多く放熱させることが可能となり、これにより、効率の向上が図れるとともに、性能を高め、高い信頼性得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上のように、本発明にかかる密閉型圧縮機は、冷却システムの性能を安定させ、効率を向上することができ、家庭用電気冷蔵庫に限らず、エアーコンディショナー、自動販売機やその他の冷凍装置などの用途にも広く適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
101 密閉容器
107 塗膜
109 皮膜
113 圧縮要素
115 電動要素

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動要素によって駆動される圧縮要素を収容した密閉容器の内表面に、輻射効果を高める処理を施した密閉型圧縮機。
【請求項2】
前記輻射効果を高める処理を、塗装による塗膜の形成処理とした請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項3】
前記輻射効果を高める処理を、化学的な壁面状態の調整による皮膜の形成処理とした請求項1に記載の密閉型圧縮機。
【請求項4】
前記輻射効果を高める処理を、前記密閉容器の外表面にも施した請求項1から3のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項5】
前記輻射効果を高める処理を、前記密閉容器の内表面あるいは外表面において少なくとも部分的に施した請求項1から4のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項6】
前記輻射効果を高める処理によって形成される皮膜の膜厚を、10μm以下とした請求項1から5のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項7】
前記輻射効果を高める処理の材料を、輻射率50%以上の材料とした請求項1から6のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。
【請求項8】
前記輻射効果を高める処理後の面の色相を、黒色もしくは黒色に近い色とした請求項1から7のいずれか一項に記載の密閉型圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100796(P2013−100796A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246060(P2011−246060)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】