説明

密閉型電動圧縮機

【課題】全高の低い密閉型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】密閉容器101の内外を電気的に連絡するターミナル108を前記密閉容器に備えるとともに、潤滑油102と、回転子104及び固定子105からなる電動要素103と、前記電動要素103の略上方に構築された圧縮要素106を前記密閉容器101内に収納し、前記固定子105は積層鋼板からなるコア250と、前記コア250に巻回された巻線253と、前記巻線253の端末と接合されるとともに前記コア250の下面に配設された端子260とを備え、前記端子260と前記ターミナル108をリード線109で接続したもので、ブロック153と固定子105上面との距離を小さくでき、密閉型電動圧縮機の全高を低くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭用冷凍冷蔵庫や自動販売機、エアコン等の冷凍サイクル装置に使用される密閉型電動圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の密閉型電動圧縮機としては、小型にするために、電動要素の上方に圧縮要素を配置したものが一般的である(例えば特許文献1参照)。
【0003】
以下、図面を参照しながら上記従来の密閉型電動圧縮機を説明する。
【0004】
図6は従来の密閉型電動圧縮機の断面図である。図6において、密閉容器1内には固定子5と回転子7からなる電動要素9と、電動要素9の上部に配置された圧縮要素11を収納するとともに、底部に潤滑油15を貯留している。また密閉容器1にはその内外を電気的に連絡するターミナル39が固定されている。使用する冷媒はHFC系冷媒で、潤滑油15はこの冷媒と相溶性の高いエステル系の潤滑油を用いている。
【0005】
圧縮要素11はこれを構成するブロック3の軸受部17内にクランクシャフト19が貫挿され、クランクシャフト19の外径部には回転子7が固着され、コンロッド21を介して偏芯部23とピストン25が連結している。
【0006】
固定子5のコア27に施された巻線29の端末は、コア27の上面に配設された端子31と接続されている。リード線37は圧着端子33とクラスター35を両端に有し、端子31とターミナル39とを電気的に接続している。
【0007】
以上のように構成された密閉型電動圧縮機について、以下その動作を説明する。
【0008】
ターミナル39に電気が印加されるとリード線37に流れ、端子31を介して巻線29に供給される。巻線29に電気が供給されることにより固定子5に回転磁界が発生し、その回転磁界により回転子7が回転する。回転子7が回転することによりクランクシャフト19が回転し、コンロッド21を介してピストン25が往復運動を繰り返す。
【特許文献1】特開2002−70740号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の構成では、端子31がコア27の上面に配設されている為に、端子31もしくは圧着端子33とブロック3とは一定の絶縁距離を確保しなければならい為に密閉型電動圧縮機の全高を低くできないという課題を有していた。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するもので、全高が低い密閉型電動圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明の密閉型電動圧縮機は、コアの下面に端子を配設することによりブロックと固定子上面との距離を小さくできるという作用を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の密閉型電動圧縮機は、コアの下面に端子を配設するので、全高が低い密閉型電動圧縮機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
請求項1に記載の発明は、密閉容器の内外を電気的に連絡するターミナルを前記密閉容器に備えるとともに、潤滑油と、回転子及び固定子からなる電動要素と、前記電動要素の略上方に構築された圧縮要素を前記密閉容器内に収納し、前記固定子は積層鋼板からなるコアと、前記コアに巻回された巻線と、前記巻線の端末と接合されるとともに前記コアの下面に配設された端子とを備え、前記端子と前記ターミナルをリード線で接続したもので、ブロックと固定子上面との距離を小さくでき、密閉型電動圧縮機の全高を低くすることができる。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、炭化水素系の冷媒を用いるとともに、潤滑油は前記冷媒と相溶性のあるものを使用するもので、炭化水素系の冷媒は電気絶縁性が大きいので、端子を炭化水素系の冷媒の寝込んだ潤滑油に浸けることができるので、さらに密閉型電動圧縮機の全高を低くすることがでる。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、突極集中巻の巻線はコアからのはみ出しが極めて小さくできるので、さらに密閉型電動圧縮機の全高を低くすることができる。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、電動要素はPWM方式のインバーターによって駆動されるもので、PWM方式は、充電部からの電流漏れが多いので端子もしくは端子に圧着固定された圧着端子よりの電流漏れが多くなるにも関わらず、電気絶縁性が大きい炭化水素系冷媒を用いるため、密閉容器外への電流漏れを小さくでき、PWM方式のインバーターによって駆動されるものでも密閉型電動圧縮機の全高を低くすることができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、密閉容器とリード線との間に絶縁フィルムを配置したもので、リード線が密閉容器と直接に接触しないためリード線を密閉容器に近接して配置できるため、さらに密閉型電動圧縮機の全高を低くすることができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によってこの発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における密閉型電動圧縮機の断面図、図2は、同実施の形態における密閉型電動圧縮機の要部断面図、図3は、同実施の形態における固定子の平面図、図4は、同実施の形態における固定子の外観図、図5は、同実施の形態における絶縁フィルムの正面図である。
【0020】
図1から図5において、密閉容器101内には回転子104と固定子105よりなる電動要素103と、電動要素103の上方に構築され電動要素103によって駆動される圧縮要素106を収納するとともに、底部には潤滑油102が貯留されている。
【0021】
本圧縮機に使用される冷媒は炭化水素系冷媒のR600a(図示せず)であり、潤滑油102はR600aと相溶性の高い鉱油やアルキルベンゼン油を用いている。
【0022】
電動要素103と圧縮要素106はともに密閉容器101に収容されスプリング107で支持されている。
【0023】
密閉容器101に固定したターミナル108は電気(図示せず)を連絡するものでリード線109を通して電動要素103に電気を供給する。 ターミナル108にはPWM方式のインバーター制御回路201が結線され、インバーター制御回路201には商用電源202が供給されている。
【0024】
次に、圧縮要素106の詳細を以下に説明する。
【0025】
クランクシャフト150は回転子104を圧入固定した主軸部151および主軸部151に対して偏芯して形成された偏芯部152を有する。ブロック153は略円筒形の圧縮室154を有するとともに主軸部151を軸支する軸受け部155を有し、電動要素103の上方に形成されている。ピストン156は圧縮室154に勘入され、偏芯部152とコンロッド157によって連結されている。
【0026】
次に電動要素103の詳細を以下に説明する。
【0027】
固定子105を構成するコア250は所定間隔をおいて特極のティース部251が形成された円環状の鉄板コア252を積層されて形成されている。ティース部251には絶縁体を介して巻線253が巻かれており、連絡線254は各巻線間をおのおの1本で連絡しており、突極集中巻きの固定子を形成している。巻線253の端末は端子260と結線され、端子260はコア250の下部に固定されている。固定子105はコア250を介してボルト255によりブロック153に固定されている。
【0028】
端子260とターミナル108とを連絡するリード線109の両端には、圧着端子271とクラスター272が取り付けられており、圧着端子271は端子260に接続されており、クラスター272はターミナル108に接続されている。圧着端子271および端子260は潤滑油102に浸漬している。
【0029】
ポリエステルフィルムで出来た絶縁フィルム301はリード線109と密閉容器101内面の間に配設され、ピン291a、291b、291cに、孔302a、302b、302cを挿入することでターミナル108とクラスター272の間に狭持されている。
【0030】
以上のように構成された密閉型電動圧縮機について、以下その動作、作用を説明する。
【0031】
商用電源202から供給される電力はインバーター制御回路201を通してターミナル108に送られ、リード線109により巻線253に供給され、電動要素103の回転子104を任意の回転数で回転させる。回転子104はクランクシャフト150を回転させ、偏芯部152の偏芯運動がコンロッド157を介してピストン156を駆動することでピストン156は圧縮室154内を往復運動しR600a冷媒(図示せず)を連続して圧縮する。
【0032】
ここで、従来は充電部である端子260もしくは端子260に圧着固定された圧着端子271を潤滑油102中に浸漬させると、電流が、端子260もしくは圧着端子271より潤滑油102を介して密閉容器101に流れ、所定のリーク電流の値以下に抑えることができないと考えられており、そのため端子を潤滑油に浸漬しない位置に配設していた。これは特に従来から使用してきたHFC系冷媒とエステル系の潤滑油は共に極性を有することから電気を通しやすい性質があったことによる。
【0033】
一方、最近環境に優しいという理由で多く使われ始めたR600a冷媒は極性が極めて小さく、よってこれと相溶性の高い鉱油やアルキルベンゼン油も同じく極性が極めて小さいのである。
【0034】
本実施の形態1の密閉型電動圧縮機は、こういったR600a冷媒や鉱油またはアルキルベンゼン油の、極性が極めて小さいという特性に着目し、敢えて、端子260を固定子105の下部に固定し圧着端子271とともに冷媒の溶け込んだ潤滑油102に浸漬させたのである。
【0035】
そして密閉容器101へのリーク電流を確認した結果、リーク電流が増加しやすいPWM方式のインバーター制御回路201を使用しているにもかかわらず、リーク電流を規定の電流値以下に抑えることができることが分かった。
【0036】
この結果、端子260をコア250の下部に配設することができ、固定子105の上面には充電部となる端子260が無く、固定子105とブロック153との距離を小さくでき、密閉型電動圧縮機の全高を低くすることができたものである。
【0037】
一方、固定子105は巻線253を集中的に巻いているので巻線間の渡りが少なく、巻線253の全長が短いものとなる。よって、突極固定子105の巻線253はコア250からのはみ出しが極めて小さくできるので、固定子105とブロック153との距離は極めて小さくできる。ゆえに本実施の形態1の密閉型電動圧縮機はさらに全高が低いものとなる。
【0038】
また、リード線109と密閉容器101との間には絶縁フィルム301が配置されており、圧着端子271の下方よりも絶縁フィルム301の端部が密閉容器101の底部の方にまで達している。また、絶縁フィルム301の幅は十分に広いものとしている。よって端子260もしくは端子260に圧着固定された圧着端子271を、密閉容器101との最小沿面絶縁距離まで近づけることができ、本実施の形態1の密閉型電動圧縮機はさらに全高を低くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上のように、本発明にかかる密閉型電動圧縮機は、全高を低くすることが可能となるので、冷蔵庫に加えてエアーコンディショナーや自販機の密閉型電動圧縮機の用途にも展開できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態1における密閉型電動圧縮機の断面図
【図2】同実施の形態における密閉型電動圧縮機の要部断面図
【図3】同実施の形態における固定子の平面図
【図4】同実施の形態における固定子の外観図
【図5】同実施の形態における絶縁フィルムの正面図
【図6】従来の密閉型電動圧縮機における断面図
【符号の説明】
【0041】
101 密閉容器
102 潤滑油
103 電動要素
104 回転子
105 固定子
106 圧縮要素
108 ターミナル
109 リード線
201 インバーター制御回路
250 コア
251 ティース部
253 巻線
260 端子
301 絶縁フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器の内外を電気的に連絡するターミナルを前記密閉容器に備えるとともに、潤滑油と、回転子及び固定子からなる電動要素と、前記電動要素の略上方に構築された圧縮要素を前記密閉容器内に収納し、前記固定子は積層鋼板からなるコアと、前記コアに巻回された巻線と、前記巻線の端末と接合されるとともに前記コアの下面に配設された端子とを備え、前記端子と前記ターミナルをリード線で接続した密閉型電動圧縮機。
【請求項2】
炭化水素系の冷媒を用いるとともに、潤滑油は前記冷媒と相溶性のある請求項1記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項3】
コアに設けた複数の突極に各々巻線を巻回した突極集中巻の電動要素を備えた請求項1又は2に記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項4】
電動要素はPWM方式のインバーターによって駆動される請求項2に記載の密閉型電動圧縮機。
【請求項5】
密閉容器とリード線との間に絶縁フィルムを配置した請求項1又は2に記載の密閉型電動圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−77578(P2006−77578A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−259242(P2004−259242)
【出願日】平成16年9月7日(2004.9.7)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】