説明

密閉型電池およびその封口体

【課題】本発明は、端子ピンを金属封口板にガスケットを介してかしめ固着する密閉型電池の封口体で、長年の使用によるガスケットと金属封口板の両面および端子ピンの両端の径大部との間の気密性の劣化を防ぎ、電解液が外部へ漏れ出にくくする密閉型電池の封口体を提供する。
【解決手段】金属封口板2の貫通孔21に合成樹脂でできたガスケット1の筒部11を密着接合させて端子ピン挿入孔14となし、筒部11の両端に同じ合成樹脂で金属封口板2の両面に密着させて外周方向に延出させた鍔部12を有するように金属封口板2と一体成形してできた密閉型電池の封口体において、鍔部12の外周縁13に圧縮変形の少ない合成樹脂でできた環状の凸壁を形成して剛性をもたせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉型電池の封口体およびその封口体を用いた密閉型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉型電池は、開口端を有する密閉型電池本体内に正極と陰極の電極および電解液を収容したものであり、その電解液がその開口端から外部へ漏れ出ないように封口体にてその開口端を封止させている。この封口体には電極の正極もしくは陰極と電気接続された外部端子となる端子ピンが設けられている。このような端子ピン付き封口体にあっては、金属封口板の端子ピン挿入孔に合成樹脂でできたガスケットを介して端子ピンの軸部を挿入して、その軸部の両端を突出させて押圧することにより、軸部の径より大きい径大部を形成するようにして端子ピンを金属封口板にガスケットを介してかしめ固着して、ガスケットを金属封口板の両面および端子ピン挿入孔に密着接合させている。このような端子ピンのかしめ加工では、ガスケットに大きな機械的なストレスを与えるので、ガスケットに機械的強度や化学的安定性の高い材料を用いて金属封口板の端子ピン挿入孔と端子ピンの軸部との間を電気的に絶縁させ、かつ密着接合をさせるよう対策を講じている。しかし、端子ピンの突出した軸部を押圧して径大部がガスケットを圧縮すると、ガスケットの端子ピンに近い部位は圧縮密度が高くなり、密閉型電池を長年使用すると、充放電の繰り返しによる温度や内圧の上昇でガスケットが膨張収縮を繰り返し、その結果、ガスケットと金属封口板の両面および端子ピンの両端の径大部との間の気密性が劣化して電解液が外部へ漏れ出やすくなるという問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1において、負極缶の開口部に封口板が固定されると共に、封口板の中央開口部に正極端子板(本願の端子ピン)がかしめ固定され、負極缶の内部に収容された電極体が発生する電力を、正極端子板および負極缶から外部へ取り出すことが可能な電気エネルギー蓄積デバイスにおいて、ガスケットを互いに係合するポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂からなる2種の絶縁部材で構成して、正極端子板と封口板とをこれらの絶縁部材を介してかしめ固着させる際、その両絶縁部材の係合部が、封口板と正極端子板のかしめ部との間に挟圧されて、両絶縁部材が互いに係合したまま相対的なずれた状態で互いに圧着されることにより、正極端子板のかしめ固着に伴って両絶縁部材に生ずることとなる変形量の大部分が吸収され、各絶縁部材に生じる変形は十分に小さくなって、両絶縁部材の変形に伴う破損が防止されるようにした電気エネルギー蓄積デバイスが提案されている。
【0004】
しかし、特許文献1のような2種の絶縁部材から構成されガスケットでは、封口板と正極端子板のかしめ固着時に両絶縁部材の変形に伴う破損が防止されるようにしても、両絶縁部材の外周縁には剛性をもたせていないので、密閉型電池を長年使用すると、充放電の繰り返しによる温度や内圧の上昇でガスケットに膨張収縮が繰り返されることにより、両絶縁部材がその圧着部から外周縁方向に伸びようとする応力歪を吸収することができないので、各絶縁部材と封口板および正極端子板との間および両絶縁部材の係合部間における気密性が劣化することになる。
【0005】
そこで、特許文献2において、絶縁性、気密性に優れ、絶縁部材(本願のガスケット)と金属板(本願の金属封口板)、電極導出ピン(本願の端子ピン)との間の気密保持性が良好で、経時的な変化が小さく信頼性が高い密閉型電池を提供することを課題として、電極導出ピンの頭部(本願の径大部)との接触面に、貫通孔の周囲を一周する環状の上部凸条部および下部凸条部を形成することにより、電極導出ピンをかしめた際に上下の凸条部に圧力が集中させるようにした電極端子を有する密閉型電池が提案されている。
【0006】
しかし、特許文献2のように貫通孔の周囲において圧力が集中させるようにしているが、外周縁方向に伸びようとする応力歪を吸収するように配慮されていないので、充放電の繰り返しによる温度や内圧の上昇で絶縁部材に膨張収縮が繰り返されることにより、絶縁部材がその凸条部から外周縁方向に伸びようとする応力歪を吸収することができないので、絶縁部材と電極導出ピンの頭部および金属板における気密性が劣化することを十分に防ぐにはいたっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−331656号公報
【特許文献2】特開2006−216411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題点を解消するために、密閉型電池を長年使用することによるガスケットと金属封口板の両面および端子ピンの両端の径大部との間の気密性の劣化を防ぎ、電解液が外部へ漏れ出にくくする密閉型電池の封口体およびその封口体を用いた密閉型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の密閉型電池の封口体に係る請求項1に記載の発明は、金属封口板の貫通孔に合成樹脂でできたガスケットの筒部を密着接合させて端子ピン挿入孔となし、前記筒部の両端に同じ合成樹脂で前記金属封口板の両面に密着させて外周方向に延出させた鍔部を有するように金属封口板と一体成形してできた密閉型電池の封口体において、前記鍔部の外周縁に圧縮変形の少ない合成樹脂でできた環状の凸壁を形成して前記外周縁に剛性をもたせたことを特徴とする。同請求項2に記載の発明は、請求項1記載の密閉型電池の封口体で、前記ガスケットの筒部および鍔部は同じ熱可塑性樹脂でできており、前記鍔部の外周縁は熱硬化性樹脂でできたことを特徴とする。同請求項3に記載の発明は、請求項1記載の密閉型電池の封口体で、前記ガスケットの筒部および鍔部は同じ熱可塑性樹脂でできており、前記鍔部の外周縁は剛性をもたせる充填剤を含有してなる熱可塑性樹脂でできたことを特徴とする。同請求項4に記載の発明は、請求項1から3の何れかひとつに記載の密閉型電池の封口体で、前記金属封口板にはその両面から突出した環状リブを形成してあり、前記鍔部を金属封口板の両面に密着接合させるに際し、前記鍔部の外周縁が前記環状リブを内包してガスケットと金属封口板とを一体成形してできたことを特徴とする。同請求項5に記載の発明は、請求項1から4の何れかひとつに記載の密閉型電池の封口体で、前記筒部には内部にゴム部材からなる芯部を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の密閉型電池の封口体で、端子ピン付き封口体に係る請求項6に記載の発明は、請求項1から5の何れかひとつに記載の密閉型電池の封口体で、その端子ピン挿入孔に端子ピンの軸部を挿入して前記軸部の両端が突出するように前記金属封口板に端子ピンを配置させた状態で、前記軸部の両端を押圧して端子ピンをかしめることにより形成した軸部の径より大きい径大部が前記ガスケットの筒部の鍔部に密着接合されてなり、端子ピンを前記金属封口板から電気的に絶縁させてできた密閉型電池の端子ピン付き封口体であって、前記端子ピンの径大部の外側に前記鍔部の外周縁があることを特徴とする。同請求項7に記載の発明は、請求項1から5の何れかひとつに記載の密閉型電池の封口体で、端子ピンの軸部の少なくとも一端に金属プレートを有し、前記端子ピン挿入孔に端子ピンの軸部を挿入して前記軸部の両端が突出するように前記金属封口板に端子ピンを配置させた状態で、前記軸部の両端を押圧して前記金属プレートを介して端子ピンをかしめることにより形成した軸部の径より大きい径大部が前記金属プレートを介して前記ガスケットの筒部の鍔部に密着接合されてなり、端子ピンおよび前記金属プレートを前記金属封口板から電気的に絶縁させてできた密閉型電池の端子ピン付き封口体であって、前記金属プレートの外側に前記鍔部の外周縁があることを特徴とする。
【0011】
本発明の密閉型電池に係る請求項8に記載の発明は、請求項6または7に記載の密閉型電池の端子ピン付き封口体を電解液と電極を有する密閉型電池本体の開口端に設けた密閉型電池であって、前記端子ピンまたは金属プレートと密閉型電池本体内の電極とを接続させるとともに前記金属封口板または密閉型電池本体と密閉型電池本体内の他の電極とを接続させて端子ピン付き封口体を密閉型電池本体の開口端に設けて、密閉型電池本体と金属封口板とを気密性をもたせて固着したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の封口体においては、金属封口板の貫通孔に合成樹脂でできたガスケットの筒部を密着接合させて端子ピン挿入孔となし、前記筒部の両端に同じ合成樹脂で前記金属封口板の両面に密着させて外周方向に延出させた鍔部を有するように金属封口板と一体成形してできており、その端子ピン挿入孔に端子ピンの軸部を挿入して前記軸部の両端が突出するように前記金属封口板に端子ピンを配置させた状態で、前記軸部の両端を押圧して端子ピンをかしめることにより端子ピン付き封口体となし、前記軸部の両端を押圧により軸部の径より大きい径大部にてガスケットの筒部および鍔部を圧縮させるとき、鍔部がその外周縁方向に伸びようとする応力歪が発生するが、前記鍔部の外周縁に圧縮変形の少ない合成樹脂でできた環状の凸壁を形成して前記外周縁に剛性をもたせているので、前記応力歪を吸収させることができる。その結果、内部に電解液を有する密閉型電池にあっては、その長年使用によりガスケットが膨張収縮されても、ガスケットの鍔部がその外周縁方向に伸びようとせずに、ガスケットと端子ピンの両端の径大部との間の気密性の劣化を防止して、電解液が外部へ漏れ出にくくして、密閉型電池本体と金属封口板とを気密性をもたせた密閉型電池を提供することができる。
【0013】
さらに、本発明は、密閉型電池の封口体に用いるガスケットの筒部をゴム部材からなる芯部と前記芯部を包囲する熱可塑性樹脂部材とを一体成形して形成することにより、端子ピンの軸部を金属封口板の端子ピン挿入孔に挿入して前記金属封口板に端子ピンを配置させた状態で、前記軸部の両端を押圧して端子ピンがガスケットを介して金属封口板にかしめ固着される際、端子ピンの軸部が金属封口板の貫通孔に交叉する方向に伸びようとしてガスケットの筒部を圧縮させるが、ガスケットの筒部内のゴム部材の弾力性により金属封口板の貫通孔に交叉する方向の押圧力を向上させて、端子ピンの軸部とガスケットの筒部の内周面との間およびガスケットの筒部の外周面と金属封口板の貫通孔との間の気密性を維持することができ、しかも、ゴム部材であるので、電気的に絶縁もさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態1で端子ピンを有する密閉型電池の封口体を示す断面図である。
【図2】同上の密閉型電池の封口体に使用する金属封口板の断面図である。
【図3】同上の密閉型電池の封口体を示す断面図である。
【図4】同上の密閉型電池の封口体に端子ピンの軸部の両端を押圧して端子ピンを金属封口板にガスケットを介してかしめ固着する分解した断面図である。
【図5】同上の密閉型電池の封口体に端子ピンの軸部の両端を押圧して端子ピンを金属封口板にガスケットを介してかしめ固着する加工状態を示す断面図である。
【図6】同上の密閉型電池の封口体に端子ピンかしめ固着する際の応力発生状態を示す断面図である。
【図7】図6の平面図である。
【図8】本発明の実施形態2で端子ピンを有する密閉型電池の封口体を示す断面図である。
【図9】同上の密閉型電池の封口体に使用する金属封口板の断面図である。
【図10】同上の密閉型電池の封口体を示す断面図である。
【図11】同上の密閉型電池の封口体に端子ピンの軸部の両端を押圧して端子ピンを金属封口板にガスケットを介してかしめ固着する分解した断面図である。
【図12】同上の密閉型電池の封口体に端子ピンの軸部の両端を押圧して端子ピンを金属封口板にガスケットを介してかしめ固着する加工状態を示す断面図である。
【図13】本発明の実施形態3で端子ピンを有する密閉型電池の封口体を示す断面図である。
【図14】同上の密閉型電池の封口体を示す断面図である。
【図15】同上の密閉型電池の封口体に端子ピンの軸部の両端を押圧して端子ピンを金属封口板にガスケットを介してかしめ固着する分解した断面図である。
【図16】本発明の実施形態4で密閉型電池の封口体を示す断面図である。
【図17】同上で端子ピンを有する密閉型電池の封口体を示す断面図である。
【図18】本発明の端子ピン付き封口体を用いた密閉型電池を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
(実施形態1)
図1から図7において、Aは密閉型電池の封口体であり、Bは端子ピン3を有する密閉型電池の封口体であり、外部へ出力する端子として、この端子ピン3自体若しくは図示しないが端子ピン3に被冠したキャップを用いることができる。
【0017】
図2は、図18に示す密閉型電池Cの密閉型電池本体8の開口端81を閉じる蓋となる形状の金属封口板2を示す断面図で、この金属封口板2は、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅および銅合金の何れかの金属材でできており、端子ピン3を設ける円形状または角形状の貫通孔21が形成されている。また、図示しないが、必要に応じて密閉型電池本体8の内圧が一定値を越えると破断してガスを放出する安全弁を備える孔や電解液82を注入する孔が形成されていてもよい。
【0018】
図3において、Aは密閉型電池の封口体で、金属封口板2とこの金属封口板2の表面および貫通孔21を電気的に絶縁する合成樹脂でできたガスケット1とからなる。
【0019】
金属封口板2とガスケット1は、円板状でもよいが、図7では、細長板状を示している。ガスケット1は、筒部11とその両端に外周方向に延出した鍔部12とからなり、合成樹脂で一体成形してできている。この筒部11は円筒または角筒の形状で金属封口板2の貫通孔21に密着接合されて端子ピン挿入孔14となり、鍔部12は金属封口板2の表面に密着接合されている。これら筒部11と鍔部12とが一体成形される合成樹脂としては、PFA樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体樹脂)、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、PP樹脂(ポリプロピレン樹脂)、PEEK樹脂(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)およびFEP樹脂(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)などの熱可塑性樹脂が例示できる。また、鍔部12の外周縁13はその厚さ方向に突出した環状の凸壁の形状で、筒部11および鍔部12の材質とは異なる圧縮変形の少ない合成樹脂でできた外周縁13が形成されており、この外周縁13は筒部11および鍔部12と2色成形により一体成形して、筒部11および鍔部12の成形部材よりも剛性が高くなるようにしている。このように、外周縁13を筒部11および鍔部12よりも剛性が高くなるようにするには、外周縁13の成形材料にはPPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)を用い、筒部11および鍔部12の成形材料にはPFA樹脂(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体樹脂)を用いるようにして硬い合成樹脂と柔らかい合成樹脂との組み合わせを選定すればよいが、圧縮変形の少ない合成樹脂、例えば、上記熱可塑性樹脂にガラス繊維や無機フィラーなどを含有させるか、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの熱硬化性樹脂が用いられる。このように、鍔部12の外周縁13はその厚さ方向に突出した環状の凸壁の形状となっているが、鍔部12の外周縁13以外の部分よりも剛性が高くなるようにすればよいので、筒部11とその両端に外周方向に延出した鍔部12とが同じ合成樹脂で一体成形しているのであれば、外周縁13以外の部分においてもその厚さ方向に突出した凸部が形成されるなど平坦でなくてもよい。
【0020】
また、金属プレート4は、端子ピン3の両端を押圧してかしめる際に、端子ピン3の径大部33でガスケット1が損傷するのを防止するためのワッシャであるが、このような金属プレート4を用いずに、径大部33のみでもよい。一方、金属プレート5は、金属プレート4と同様な作用のワッシャであるとともに、その一端は金属封口板2から離れる方向に突出させたリード板51に接続されており、このリード板51は、密閉型電池本体8内の電極体2の正極(または陰極)の電極と電気接続されるようにリード板51に接続されている。
【0021】
図4において、上述のように形成した密閉型電池の封口体Aの下方位置に、端子ピン3がその軸部31の一端の径大部32に予め金属プレート5を当接または固着した状態で配置させ、上方位置に金属プレート4を配置させる。
【0022】
図5は、このようにして配置された端子ピン3が金属プレート4、5およびガスケット1を介して金属封口板2にかしめ固着される加工状態を示す。軸部31の一端の径大部32に予め金属プレート5を取り付けて後、軸部31の他端を端子ピン挿入孔12に挿入して金属封口板2の表面から突出させてその他端に金属プレート4を取り付けて金属封口板2の表面(図では上面および下面)に金属プレート4、5を有するように端子ピン3を配置させた状態で、軸部31の両端を矢印P方向およびQ方向に押圧することにより、その他端はR方向に延出して軸部31の径より大きい径大部33が形成される。この場合、端子ピン3には図中で上面側の一端に予め径大部32が形成されているが、下面側に形成しておいてもよい。また、予め径大部を形成せずに、軸部31を端子ピン挿入孔12に挿入できるようにしてその両端を矢印P方向およびQ方向に押圧してR方向に延出させて径大部32、33を形成してもよい。このように、端子ピン3の軸部31の両端を矢印P方向およびQ方向に押圧して径大部32、33が形成されるようにして端子ピン3がガスケット1を介して金属封口板2にかしめ固着されることにより、端子ピン3の軸部31と金属封口板2の貫通孔21とはガスケット1の筒部11を介して電気的に絶縁しかつ密着接合されるとともに、端子ピン3の径大部32、33にある金属プレート4、5と金属封口板2の表面とはガスケット1の鍔部12を介して電気的に絶縁しかつ密着接合される。
【0023】
端子ピン3の軸部31の両端を矢印P方向およびQ方向に押圧してR方向に延出させて径大部32、33を形成すると、ガスケット1の筒部11および鍔部12は端子ピン3の径大部32、33や金属プレート4、5の部位において圧縮密度が高くなるとともに、図6および図7の矢印に示すように、応力が発生して、ガスケット1の筒部11および鍔部12は圧縮されて矢印R方向に伸びようとする応力歪が発生する。ところが、この鍔部12が矢印R方向にある外周縁13は剛性が高いので、この外周縁13にて矢印R方向に伸びようとする応力歪を少なくして、ガスケットが膨張収縮を繰り返してもガスケットと金属封口板の両面および端子ピンの両端の径大部との間の気密性の劣化を防ぎ、電解液が外部へ漏れ出にくくした密閉型電池の封口体Aまたは端子ピン3を有する密閉型電池の封口体Bが得られる。従って、ガスケット1の鍔部12の外周縁13の位置は、筒部11に近い位置で、端子ピン3の径大部32、33や金属プレート4、5の部位よりも離れた位置を設定すればよい。
【0024】
なお、図3に示す金属封口板2とガスケット1からなる封口体Aは、金属封口板2の貫通孔21にガスケット1の筒部11を配置させ、金属封口板2の表面(図1においては上面および下面)にガスケット1の鍔部12を配置させて、ガスケット1と金属封口板2とを一体成形してできている。この場合、ガスケット1と金属封口板2とを密着接合させるようにする必要があり、好ましくは、金属封口板2の貫通孔21と金属封口板2の表面またはガスケット1の筒部11の外周面とガスケット1の鍔部12の内面(金属封口板2に対面する面)にメルカプト基、チオカルボニル基、シアノ基、イソシアナート基、アミノ基、アンモニウム基、ピリジニウム基、アジニル基、カルボキシル基、ベンゾトリアゾール基、トリアジンチオール基等の何れかまたはこれらを組み合わせた化学的処理剤からなる接着剤の薄膜層を形成して後、ガスケット1の筒部11と端子ピン1の貫通孔21およびガスケット1の鍔部12と金属封口板2の表面とを一体に成形することにより、さらに強固に密着接合される。
【0025】
(実施形態2)
図8から図12は、鍔部12の外周縁13に剛性をもたせて筒部11を外周方向へ圧縮させたとき鍔部12の合成樹脂の密度が密になって発生する応力歪を吸収して圧縮変形が少なくなるよう剛性をより一層高くするための異なる実施形態で、Aは密閉型電池の封口体であり、Bは端子ピン3を有する密閉型電池の封口体であり、他の符号は図1から図7に示す実施形態1と同じである。
【0026】
金属封口板2は実施形態1と同じ金属材でできており、その両面から突出した環状リブ22が形成されている。この場合、環状リブ22の突出高さは、ガスケット1の鍔部12の外周縁13に環状リブ22が内包されて外周縁13に剛性をもたせるようにする高さである。例えば、外周縁13が鍔部12の表面から突出した環状の凸壁で形成されたものであれば、環状リブ22は鍔部12の厚さよりも大きく設定すればよい。この環状リブ22は、金属封口板2と同様なステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、銅および銅合金の何れかの金属材からなる金属環を金属封口板2の両面に溶接などで固着するかセラミックや合成樹脂で一体に形成されているが、このような金属封口板2別体とせずに、金属封口板2に上面に突出させた切り起こし片を環状に形成し、下面には上面の切り起こし片のない部位から逆方向に突出させた切り起こし片を環状に形成してもよい。
【0027】
このように形成された金属封口板2の環状リブ22が筒部11の鍔部12の外周縁13の部位にあり、筒部11を金属封口板2の貫通孔21の部位にある配置で金属封口板2とガスケット1とを一体成形することにより、この筒部11は金属封口板2の貫通孔21の内周面に密着接合されて端子ピン挿入孔14を形成し、この筒部11の両端は外周方向に延出された平板状の鍔部12が形成されている。この鍔部12の外周縁13には上記環状リブ22を内包されて外周縁13に剛性をもたせることにより、この鍔部12が矢印R方向にある外周縁13は剛性が高いので、端子ピン3の軸部31の両端を矢印P方向およびQ方向に押圧してR方向に延出させて軸部31の径より大きい径大部32、33を形成する際に、矢印R方向に伸びようとするガスケット1の鍔部12の応力歪をこの外周縁13にて少なくするようにしている。このようにして形成された密閉型電池の封口体Aは、軸部31の一端の径大部32に予め金属プレート5を取り付けて後、端子ピン3の軸部31の他端を端子ピン挿入孔12に挿入して金属封口板2の表面から突出させ、その他端に金属プレート4を取り付けて金属封口板2の表面に金属プレート4を有するように端子ピン3を配置させた状態で、軸部31の両端を押圧して他端に径大部33を形成することにより、端子ピン3を有する密閉型電池の封口体Bが得られる。
【0028】
(実施形態3)
図13から図15は、密閉型電池の封口体の異なる実施形態で、特に、外部へ出力する端子を端子ピン自体を用いずに、金属プレート4に設ける端子6の実施形態を示し、Aは密閉型電池の封口体であり、他の符号は図1から図7に示す実施形態1と同じである。
【0029】
金属プレート4の一部(図では左の部位)を金属封口板2から離れる方向に突出させたリード板41がガスケット1の外周縁13の凸壁の内壁に接するかまたは離間して設けられており、端子ピン3との中間位置を折り曲げ加工をして突出させてこの突出させた部位に外部へ出力する端子6が設けられている。
【0030】
この場合、図14は、実施形態1の図3と同じ構成の密閉型電池の封口体Aの断面図を示し、図15は、端子ピン3の軸部31の両端を押圧して端子ピン3を矢印P方向およびQ方向に押圧してR方向に延出して軸部31の径より大きい径大部32、33を形成するように金属封口板2にかしめ固着するが、実施形態2の図9に示す金属封口板2および図10に示す封口体Aを適用してもよい。
【0031】
(実施形態4)
図16および図17は、本発明に付加して端子ピン挿入孔12の部分における改良発明を示し、Aは密閉型電池の封口体であり、Bは端子ピン3を有する密閉型電池の封口体であり、他の符号は図1から図7に示す実施形態1および図13から図15に示す実施形態3と同じである。
【0032】
密閉型電池の封口体Aは、密閉型電池Cの密閉型電池本体8の開口端81(図18参照)を閉じる蓋となる形状で貫通孔21を有する金属封口板2と、この金属封口板2の表面および貫通孔21を電気的に絶縁する合成樹脂でできたガスケット1とからなる。ガスケット1は、実施形態1と同様な合成樹脂でできており、金属封口板2の貫通孔21に密着接合して端子ピン挿入孔12となる筒部11とその両端に設けた金属封口板2の表面に密着接合する径大な筒状のできた鍔部12とからなるが、さらに、この合成樹脂でできた筒部1には、その内部にシリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、エチレンプロピレンゴムなどのゴム部材からなる環状の芯部7を有し、この芯部7を包囲するように実施形態1と同様な熱可塑性樹脂部材と一体成形されている。
【0033】
このようにしてできた密閉型電池の封口体Aは、実施形態3にて示す図15と同様なかしめ加工により端子ピン3を有する密閉型電池の封口体Bが得られる。すなわち、端子ピン3の軸部31の他端を端子ピン挿入孔12に挿入して金属封口板2の表面から突出させてその他端に金属プレート4を取り付けて金属封口板2の表面に金属プレート4、5を有するように端子ピン3を配置させた状態で、軸部31の両端を矢印P方向およびQ方向押圧してR方向に延出させて他端に径大部33を形成することにより、図17に示す端子ピン3を有する密閉型電池の封口体Bが得られる。
【0034】
この場合、図17は、実施形態3の図13と同じ構成の端子ピン3を有する密閉型電池Bの断面図を示すが、実施形態1の図1に示す端子ピン3を有する密閉型電池Bを適用してもよい。また、実施形態2の図9に示す金属封口板2を適用してもよい。
【0035】
このようにして、端子ピン3の軸部31の両端を押圧して端子ピン3がガスケット1を介して金属封口板2にかしめ固着される際、ガスケット1の筒部11内の芯部7のゴム部材の弾力性により金属封口板2の貫通孔21に交叉する方向(左右方向)に伸びる押圧力を向上させて、端子ピン3の軸部31とガスケット1の筒部11の内周面との間の気密性を維持することができる。さらに、この芯部7のゴム部材の弾力性により金属封口板2の貫通孔の貫通方向(上下方向)に伸びる押圧力を向上させて、ガスケット1の筒部11の外周面と金属封口板2の貫通孔21との間の気密性を維持することができるとともに、端子ピン3の径大部32、33とガスケット1の筒部11および鍔部12との間の密着性を向上させている。しかも、芯部7がゴム部材でできているので、金属封口板2の貫通孔21の大きさに影響されず、所望の弾性力が得やすい。
(実施形態1から4を適用した密閉型電池)
【0036】
図18において、Bは実施形態1から実施形態4に示す端子ピン3を有する密閉型電池の封口体であり、Cは密閉型電池でその代表例としてリチウム電池が挙げられる。以下、実施形態1から実施形態4を適用した密閉型電池を説明する。
【0037】
8は、一端が開口した角筒状または円筒状の外殻となる密閉型電池本体で、金属封口板2を有する封口体Bで密閉されている。この密閉型電池本体8は端子ピン3の部位を正極端子もしくは負極端子としたとき、その対となって負極端子もしくは正極端子となるように、アルミニウムまたはその合金などの金属部材とするか、または、内表面にアルミニウム箔または蒸着やメッキなどの金属膜が形成された合成樹脂で形成してもよい。この密閉型電池本体8の内部には電解液82および絶縁体100にて支持された電極体9が収納されている。この電極体9は、電極の正極もしくは負極と電気接続された前述のリード板51を有し、図示しないが、リチウム含有コバルト酸化物を活物質とするシート状の正極と、黒鉛を活物質とするシート状の負極とをセパレータを間にして構成されている。
【0038】
密閉型電池本体8の開口端81には、リード板51が電極体9の電極の正極もしくは負極と接続されるようにかつこの開口端81が閉じられるように封口体Bが設けられており、この開口端81は封口体Bの金属封口板2とレーザ溶接などにより固着されて、密閉型電池本体8の開口端81が密閉されている。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明の密閉型電池の封口体およびその封口体を用いた密閉型電池は電極体と外部端子と電気接続をさせる端子ピンを金属封口板にガスケットを介してかしめ固着する密閉型電池に有用である。
【符号の説明】
【0040】
1 ガスケット
11筒部
12鍔部
13外周縁
2 金属封口板
21貫通孔
3 端子ピン
31軸部
32、33径大部
4、5金属プレート
7 芯部
8 密閉型電池本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属封口板の貫通孔に合成樹脂でできたガスケットの筒部を密着接合させて端子ピン挿入孔となし、前記筒部の両端に同じ合成樹脂で前記金属封口板の両面に密着させて外周方向に延出させた鍔部を有するように金属封口板と一体成形してできた密閉型電池の封口体において、前記鍔部の外周縁に圧縮変形の少ない合成樹脂でできた環状の凸壁を形成して前記外周縁に剛性をもたせたことを特徴とする密閉型電池の封口体。
【請求項2】
前記ガスケットの筒部および鍔部は同じ熱可塑性樹脂でできており、前記鍔部の外周縁は熱硬化性樹脂でできたことを特徴とする請求項1記載の密閉型電池の封口体。
【請求項3】
前記ガスケットの筒部および鍔部は同じ熱可塑性樹脂でできており、前記鍔部の外周縁は剛性をもたせる充填剤を含有してなる熱可塑性樹脂でできたことを特徴とする請求項1記載の密閉型電池の封口体。
【請求項4】
前記金属封口板にはその両面から突出した環状リブを形成してあり、前記鍔部を金属封口板の両面に密着接合させるに際し、前記鍔部の外周縁が前記環状リブを内包してガスケットと金属封口板とを一体成形してできたことを特徴とする請求項1から3の何れかひとつに記載の密閉型電池の封口体。
【請求項5】
前記筒部には内部にゴム部材からなる芯部を備えたことを特徴とする請求項1から4の何れかひとつに記載の密閉型電池の封口体。
【請求項6】
請求項1から5の何れかひとつに記載の密閉型電池の封口体で、その端子ピン挿入孔に端子ピンの軸部を挿入して前記軸部の両端が突出するように前記金属封口板に端子ピンを配置させた状態で、前記軸部の両端を押圧して端子ピンをかしめることにより形成した軸部の径より大きい径大部が前記ガスケットの筒部の鍔部に密着接合されてなり、端子ピンを前記金属封口板から電気的に絶縁させてできた密閉型電池の端子ピン付き封口体であって、前記端子ピンの径大部の外側に前記鍔部の外周縁があることを特徴とする密閉型電池の端子ピン付き封口体。
【請求項7】
請求項1から5の何れかひとつに記載の密閉型電池の封口体で、端子ピンの軸部の少なくとも一端に金属プレートを有し、前記端子ピン挿入孔に端子ピンの軸部を挿入して前記軸部の両端が突出するように前記金属封口板に端子ピンを配置させた状態で、前記軸部の両端を押圧して前記金属プレートを介して端子ピンをかしめることにより形成した軸部の径より大きい径大部が前記金属プレートを介して前記ガスケットの筒部の鍔部に密着接合されてなり、端子ピンおよび前記金属プレートを前記金属封口板から電気的に絶縁させてできた密閉型電池の端子ピン付き封口体であって、前記金属プレートの外側に前記鍔部の外周縁があることを特徴とする密閉型電池の端子ピン付き封口体。
【請求項8】
請求項6または7に記載の密閉型電池の端子ピン付き封口体を電解液と電極を有する密閉型電池本体の開口端に設けた密閉型電池であって、前記端子ピンまたは金属プレートと密閉型電池本体内の電極とを接続させるとともに前記金属封口板または密閉型電池本体と密閉型電池本体内の他の電極とを接続させて端子ピン付き封口体を密閉型電池本体の開口端に設けて、密閉型電池本体と金属封口板とを気密性をもたせて固着したことを特徴とする密閉型電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−234785(P2012−234785A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114153(P2011−114153)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(305011787)睦月電機株式会社 (9)
【Fターム(参考)】