説明

密閉容器内の界面位置検出方法

【課題】複数種の充填物が充填された密閉容器内における充填物間の界面を温度変化付与方式によって検出する方法であって、熱源(ヒーター)および/または冷源を用いることなく、充填物に温度変化を付与することができ、したがってスペース上の問題、安全上の問題が生じない密閉容器内の界面位置検出方法を提供する。
【解決手段】密閉容器10内の充填物12、14に圧力変化を与えることによって、上記充填物に温度変化を与え、温度変化前の充填物の温度と、温度変化後の充填物の温度との温度差から、密閉容器内における充填物間の界面26を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の充填物、例えば液化ガス、液体金属、圧縮ガス、空気等が充填された密閉容器内における上記充填物間の界面を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉容器内の液化ガス、液体金属等の気液界面(液位)を検出する従来の方式としては、フロート方式、レーザー方式、超音波方式、温度変化付与方式が知られている。フロート方式は、基本的には容器設計段階で装置に盛り込んでおく必要があり、高圧容器の場合はフロート方式に改造や追加工をすることはできない。レーザー方式は、容器内に検出装置を付設して使用するものであり、容器内の状態によっては使用することができない。超音波方式は、容器外部から界面位置の判別が可能であるが、容器の肉厚が厚くなったり、容器に保温用ジャケットを設置したりする場合等には界面位置を判別できなくなり、また高価である。
【0003】
温度変化付与方式は、例えば特許文献1、特許文献2に開示されている。特許文献1には、貯槽内の温液体の液面を検出する方法として、貯槽内に複数の熱電対を高さを異ならせて配置するとともに、温液体の温度を変化させて、熱電対間の温度勾配または温度変化時間を検出して液位を検出する方法が記載されている。しかし、特許文献1には、温液体への温度変化付与方法についての記載がない。
【0004】
特許文献2には、液体金属を貯留した容器内に略鉛直に配置される金属性シースと、シース内の下部に設けられた第1の熱電対と、第1の熱電対と距離を隔ててシース内の上部に設けられた第2の熱電対と、第2の熱電対と同じ高さに設けられたヒーターとを備え、第2の熱電対をヒーターにより加温して、第1の熱電対と第2の熱電対との間に生じた温度差から液体金属の液位を検出することが記載されている。しかし、特許文献2の技術では、複数の熱電対と一緒に熱源(ヒーター)をシース内に設置する必要があり、スペース上の問題が生じる。また、可燃性物質の液位を測定する場合、安全上の観点から熱源(ヒーター)を可燃性物質中に入れることはできない。なお、特許文献1の方法において、温液体への温度変化付与方法として特許文献2と同様の手段、すなわち熱源(ヒーター)を用いる方法を採った場合、特許文献2の技術と同様の問題が生じる。
【0005】
【特許文献1】特開平5−288591号公報
【特許文献2】特開平11−326013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、複数種の充填物が充填された密閉容器内における充填物間の界面を温度変化付与方式によって検出する方法であって、熱源(ヒーター)および/または冷源を用いることなく、充填物に温度変化を付与することができ、したがってスペース上の問題、安全上の問題が生じない密閉容器内の界面位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するため、複数種の充填物が充填された密閉容器内における前記充填物間の界面を検出するに当たり、前記密閉容器内の充填物に圧力変化を与えることによって、前記充填物に温度変化を与え、前記温度変化前の充填物の温度と、前記温度変化後の充填物の温度との温度差から、前記密閉容器内における前記充填物間の界面を検出することを特徴とする密閉容器内の界面位置検出方法を提供する。
【0008】
本発明は、密閉容器内の充填物に圧力変化を与え、断熱圧縮作用によって充填物の温度を上げたり、断熱膨張作用によって充填物の温度を下げたりすることにより、充填物に温度変化を与える。したがって、本発明によれば、熱源(ヒーター)および/または冷源を用いることなく、充填物に温度変化を付与することができる。
【0009】
以下、本発明につきさらに詳しく説明する。本発明では、複数種の充填物が充填された密閉容器内における上記充填物間の界面を検出する。この場合、上記充填物としては、例えば、液化ガス、液体金属、圧縮ガス、空気等が挙げられ、界面としては、気液界面(液位)、液液界面、気気界面が挙げられる。
【0010】
本発明では、密閉容器内の複数種の充填物に圧力変化を与えることによって、上記充填物に温度変化を与える。この場合、充填物に圧力変化を与える方法に必ずしも限定はないが、密閉容器内に気体状または液体状の上記充填物を注入することにより、密閉容器内の充填物に圧力変化を与える方法や、密閉容器内の上記充填物の一部を外部に排出することにより、密閉容器内の充填物に圧力変化を与える方法を好適に採用することができる。前者の方法では断熱圧縮作用によって充填物の温度を瞬時に上げることができ、後者の方法では断熱膨張作用によって充填物の温度を瞬時に下げることができる。また、いずれの方法でも、密閉容器にもともと付設されている配管設備等を用いて充填物を密閉容器内に注入したり、密閉容器外に排出したりすることができるため、装置の大規模な改造、追加工事などを行う必要がない。
【0011】
本発明では、上述のように密閉容器内の充填物に温度変化を与え、温度変化前の充填物の温度と、温度変化後の充填物の温度との温度差から、密閉容器内における充填物間の界面を検出する。この場合、上記界面の検出方法に特に限定はないが、例えば後述する実施形態や実施例に示すように、熱電対または測温抵抗体を用いて密閉容器内の充填物の温度を高さ方向に沿って所定間隔ごとに測定するとともに、各箇所において、温度変化前の充填物の温度と温度変化後の充填物の温度との温度差を求め、この温度差が前後の箇所における上記温度差よりも大きく変化した箇所に界面が存在すると判定する方法が挙げられる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る密閉容器内の界面位置検出方法によれば、密閉容器内における充填物間の界面を温度変化付与方式によって検出するに当たり、熱源(ヒーター)および/または冷源を用いることなく、充填物に温度変化を付与することができる。したがって、本発明によれば、下記の利点を得ることができる。
(a)熱電対や測温抵抗体の設置スペースがあればよいので、スペース上の問題が生じない。
(b)温度変化を与える方法が熱源ではないので、安全上の問題が生じない。
(c)密閉容器にもともと付設されている配管設備等を用いて充填物を密閉容器内に注入したり、密閉容器外に排出したりすることができるため、装置の大規模な改造、追加工事などを行う必要がなく、追加で熱電対や測温抵抗体のみを設置すればよいので、安価で簡便なシステムを構成することができる。
(d)密閉容器内の充填物に熱源等を用いる方法に比べて非常に短時間で温度変化を与えられるので、界面検出を熱源等を用いる方法に比べて非常に短時間で行うことができる。
(e)密閉容器の使用状態(高圧状態等)や充填物の内容に制限を受けない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。図1は本発明方法の実施に用いる装置の一例を示す概略図である。図1において、10は密閉容器を示す。この密閉容器10内には、複数種の充填物、すなわち液体(液化ガス)12および気体(圧縮ガス)14が充填されている。密閉容器10内には、高さ方向に沿って所定間隔ごとに複数(本例では7個)の熱電対1〜7が設置され、これら熱電対1〜7によって密閉容器10内の充填物の温度を測定できるようになっている。また、図1において、16は密閉容器10の底部に連結された充填物注入管、18は充填物注入管16に介装された電磁バルブ、20は密閉容器10の底部に連結された充填物排出管、22は充填物排出管20に介装された電磁バルブ、24は熱電対1〜7に接続されたデータ収集用パーソナルコンピュータ(PC)を示す。
【0014】
本例の装置は、例えば、下記(1)または(2)の方法により、密閉容器10内の液体12および気体14に温度変化を与える。
(1)充填物注入管16から密閉容器10内に液化ガスまたは圧縮ガスを注入することにより、断熱圧縮作用によって密閉容器内10内の液体12および気体14の温度を上げる。
(2)充填物排出管20から密閉容器内10内の液体12または気体14の一部を外部に排出することにより、断熱膨張作用によって密閉容器内10内の液体12および気体14の温度を下げる。
【0015】
本例の装置では、上記のようにして密閉容器10内の液体12および気体14に温度変化を与えた場合、熱電対1〜4で測定した気体14の温度と、熱電対5〜7で測定した液体12の温度とでは、温度変化率が異なる。すなわち、熱電対7による測定温度と熱電対6による測定温度との差分、熱電対6による測定温度と熱電対5による測定温度との差分、というように熱電対位置の前後で測定温度の差分をとっていくと、熱電対5による測定温度と熱電対4による測定温度との差分が、その他の差分と比較して大きくなる。これは比熱が異なることから起こる現象であり、したがって熱電対4と熱電対5の間に界面26があることがわかる。
【0016】
なお、上記例では、図1のように密閉容器10の底部に充填物注入管16および充填物排出管20が連結されたものを示したが、密閉容器10に対する充填物注入管16および充填物排出管20の連結位置は、特に制限されるものではなく、密閉容器10の天井部であってもよく、側面部であってもよい。
【0017】
また、上記例では、1種類の気体と1種類の液体との界面(気液界面)を検出した例を示したが、2種類以上の液体の液液界面、2種類以上の気体の気気界面が存在する場合や、上記気液界面、液液界面あるいは気気界面が複数存在する場合でも、本発明は適用可能である。
【実施例】
【0018】
以下の実験を行った。図2に示すように、内部に液化二酸化炭素30が5.12MPaの圧力で存在し、かつ、内部に高さ方向に沿って所定間隔ごとに6個の熱電対31〜36が設置された容量900Lの高圧密閉容器40内に、5.75MPa/hrの圧力勾配で二酸化炭素ガスを注入して断熱圧縮を行い、その際の高圧密閉容器40内の充填物の温度変化を熱電対31〜36により測定した。結果を表1および図3のグラフに示す。なお、熱電対31〜36としては、福音特殊金属株式会社製のシース熱電対Tタイプを用いた。
【0019】
【表1】

【0020】
図3からわかるように、一番下の熱電対36は上記圧力上昇で0.8℃しか温度が上昇しておらず、他の熱電対31〜35と比較して明らかに温度上昇分が小さい。これは、気体と液体の比熱が異なることから起こる現象であり、このことから熱電対35と熱電対36の間に気液界面42が存在することが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明方法の実施に用いる装置の一例を示す概略図である。
【図2】実施例で用いた高圧密閉容器を示す概略図である。
【図3】実施例で測定した高圧密閉容器内の充填物の温度変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0022】
1〜7 熱電対
10 密閉容器
12 液体
14 気体
16 充填物注入管
20 充填物排出管
24 PC
26 気液界面
30 液化二酸化炭素
31〜36 熱電対
40 高圧密閉容器
42 気液界面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種の充填物が充填された密閉容器内における前記充填物間の界面を検出するに当たり、前記密閉容器内の充填物に圧力変化を与えることによって、前記充填物に温度変化を与え、前記温度変化前の充填物の温度と、前記温度変化後の充填物の温度との温度差から、前記密閉容器内における前記充填物間の界面を検出することを特徴とする密閉容器内の界面位置検出方法。
【請求項2】
前記密閉容器内に気体状または液体状の前記充填物を注入することにより、前記密閉容器内の充填物に圧力変化を与えることを特徴とする請求項1に記載の密閉容器内の界面位置検出方法。
【請求項3】
前記密閉容器内の前記充填物の一部を外部に排出することにより、前記密閉容器内の充填物に圧力変化を与えることを特徴とする請求項1に記載の密閉容器内の界面位置検出方法。
【請求項4】
前記密閉容器内の充填物の温度を、熱電対または測温抵抗体により測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の密閉容器内の界面位置検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−175629(P2008−175629A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8096(P2007−8096)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】