説明

密閉形圧縮機

【課題】溶接スパッタ等の異物が混入したり、冷媒の漏れの恐れがなく、冷媒として可燃性冷媒を使用した場合でも安全な密閉形圧縮機を提供する。
【解決手段】この発明に係る密閉形圧縮機は、冷媒として可燃性冷媒を用い、圧縮機構部は密閉容器の内周部に対向する外周部に凹部が形成されてなり、密閉容器は、圧縮機構部の凹部に対応する部分が外側から凹部の底部の方向に押し付けられて内外周部共にせん断された状態で凹部内に進入され、外周部に圧縮機構部の凹部と略同様の押付治具による凹所が形成されてなり、これら圧縮機構部の凹部及び密閉容器の押付部により、密閉容器と圧縮機構部相互の固定部が形成されてなり、密閉容器の圧縮機構部の外周部に設けられた凹部への押し込み量が、密閉容器の板厚の30%未満であり圧縮機構部の凹部と押付治具のすきまが0.1mm以上とするものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば冷凍装置や空調装置や給湯装置などに好ましく用いることができる密閉形圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の圧縮機としては、容器に穴あけ加工を施し、圧縮機構部を容器に焼嵌め、穴部外側から溶融金属を流し込み、圧縮機構部などの内蔵部品を容器に溶接固定する方法がある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
容器に穴あけ加工を施さない圧縮機の圧縮機構部の固定方法として、圧縮機構部外周面に近接する複数の下穴を設け、これら下穴に対向する容器を押付治具にて半径方向内向きに押付け、下穴に係合する凸部を容器に形成し、容器の冷却による熱収縮により、容器の複数の凸部が圧縮機構部の下穴間を締め付けて、圧縮機構部を容器に固定するものがある(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−272677号公報(第2頁、図1)
【特許文献2】特開2005−330827号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来技術においては、下記のような課題があった。容器に穴あけ加工を施すものでは、溶接時に穴部から溶接スパッタ等の異物が混入し、圧縮機構部にその異物が入り込み圧縮不良を起したり、溶接不良により容器穴部から冷媒が外部に流出し、冷媒として可燃性冷媒を用いた場合、万が一ある空間に停留し、発火元が存在すると発火、爆発の危険性を招くという課題があった。のリークが発生するという問題点があった。
【0006】
容器に穴あけ加工を施さないものでは、圧縮機構部外周の凹部への容器の押し込み量に対する配慮がなされていないため、容器と圧縮機後部の固定にのみ注力する場合、容器のせん断変形部に微少亀裂を生じ、非常に少量ではあるが冷媒ガスの漏れを生じ、長期的な機器使用において、冷媒が外部に流出し、冷媒として可燃性冷媒を用いた場合、万が一ある空間に停留し、発火元が存在すると発火、爆発の危険性を招くという課題があった。
【0007】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、溶接スパッタ等の異物が混入したり、冷媒のリークの恐れがなく、冷媒として可燃性冷媒を使用した場合でも安全な密閉形圧縮機を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明による密閉形圧縮機は、密閉容器内に圧縮機構部が収納された密閉形圧縮機において、上記圧縮機構部は、上記密閉容器の内周部に対向する外周部に凹部が形成されてなり、上記密閉容器は、該圧縮機構部の凹部に対応する部分が外側から該凹部の底部の方向に押し付けられて内外周部共にせん断された状態で該凹部内に進入され、上記密閉容器の外周部に該圧縮機構部の凹部と略同様の押付治具による凹所が形成されてなり、これら圧縮機構部の凹部及び密閉容器の押付部により、上記密閉容器と圧縮機構部相互の固定部が形成されてなり、
上記密閉容器の圧縮機構部の外周部に設けられた凹部への押し込み量が、密閉容器の板厚の30%未満であると共に、
前記圧縮機構部の凹部は、
円筒がくり抜かれた形状をなし、
前記押付治具は、
円柱形状で、先端が平面であり、
上記圧縮機構部の凹部は、
くり抜かれた前記円筒の外径に相当する前記凹部の内径が、前記円柱形状である前記押付治具の前記円柱形状の直径よりも、0.2mm以上大きく、
前記密閉形圧縮機は、
冷媒として可燃性冷媒を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明による密閉形圧縮機は、密閉容器内に圧縮機構部が収納された密閉形圧縮機において、冷媒として可燃性冷媒を用い、圧縮機構部は密閉容器の内周部に対向する外周部に凹部が形成されてなり、密閉容器は、圧縮機構部の凹部に対応する部分が外側から凹部の底部の方向に押し付けられて内外周部共にせん断された状態で該凹部内に進入され、外周部に圧縮機構部の凹部と略同様の押付治具による凹所が形成されてなり、これら圧縮機構部の凹部及び密閉容器の押付部により、密閉容器と圧縮機構部相互の固定部が形成されてなり、密閉容器の圧縮機構部の外周部に設けられた凹部への押し込み量が、密閉容器の板厚の30%未満であり圧縮機構部の凹部と上記押付治具のすきまが0.1mm以上とするようにしたので、冷媒として可燃性冷媒を使用した場合においても冷媒の漏れがなく、発火、爆発の恐れがなく安全な密閉形圧縮機が得られる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1を示す図で、密閉形圧縮機200を概略的に示す縦断面図。
【図2】実施の形態1を示す図で、図1に示すかしめ部の構造および形成方法を説明するための要部断面図。
【図3】実施の形態1を示す図で、図1に示すかしめ部の構造および形成方法を説明するための要部断面図。
【図4】実施の形態1を示す図で、図1に示すかしめ部の構造および形成方法を説明するための要部断面図。
【図5】実施の形態1を示す図で、図1に示すかしめ部の構造および形成方法を説明するための要部断面図。
【図6】実施の形態1を示す図で、図5に示すかしめ部を密閉容器の外側から見た図。
【図7】実施の形態1を示す図で、図1に示すかしめ部の構造を説明するための要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
図1乃至図7は実施の形態1を示す図で、図1は密閉形圧縮機200を概略的に示す縦断面図、図2は図1に示すかしめ部の構造および形成方法を説明するための要部断面図、図3は図1に示すかしめ部の構造および形成方法を説明するための要部断面図、図4は図1に示すかしめ部の構造および形成方法を説明するための要部断面図、図5は図1に示すかしめ部の構造および形成方法を説明するための要部断面図、図6は図5に示すかしめ部を密閉容器の外側から見た図、図7は図1に示すかしめ部の構造を説明するための要部断面図である。
【0012】
図1において、1は容器である密閉容器、101は密閉容器1に内蔵される内蔵部品の一種である圧縮機構部で、密閉容器1内に収納され圧縮室周囲を覆い圧縮を行う圧縮手段を形成するものである。103は、圧縮機構部に圧縮するガスを供給するための吸入管、2は圧縮機構部101に駆動力を供給する電動機の固定子、3は回転電機である電動機の回転子である。固定子2は密閉容器1に焼嵌めにより固定されている。
【0013】
ここで圧縮機構部101の密閉容器1への固定方法について説明する。圧縮機構部101の外形側は圧縮機の軸線方向に所定の幅を有し、また圧縮機構部101の外周面が密閉容器1に隙間を介して対向するようにしている。つまり、圧縮機構部101は、密閉容器1に対して隙間嵌めの状態である。ここで隙間嵌めとは、圧縮機構部101の外径が密閉容器1の内径より小さく、互いの真円度を考慮しても、配置された時に圧縮機構部101に密閉容器1から荷重が作用しない嵌め合いを意味する。この時外径、内径とは、直交する2ヶ所あるいはそれら2ヶ所にさらに付け加えた3ヶ所以上の箇所で測定される外径、内径の平均値を言うことが多い。圧縮機構部101の外周面には、下穴102が形成されている。図1は縦断面図のために、下穴102が1つしか描かれていないが、図2に示すように、下穴102は、圧縮機構部101の円周方向に、近接した状態の2点が1組となって設けられており、ここでは、複数の下穴102とその下穴102によって挟まれた部位を合わせた圧縮機構部101外周面の部分的な領域を固定部と呼ぶものとする。この固定部が、圧縮機構部101の外周面にほぼ等ピッチ間隔で3ヶ所に設けられており、この場合では下穴102の個数は全部で6個となる。
【0014】
そして、次に図2に示すように、各固定部の2点の下穴102間の中心位置上の密閉容器1外周面を加熱中心109として、密閉容器1を密閉容器1の外側から局所的に加熱する。加熱により密閉容器1を熱膨張させた後、図3に示すように、2点の下穴102の直上から下穴102の内径と等しいかわずかに小さい外径を有する円柱状で先端が平面である2つの押付治具111を2点同時に密閉容器1の外側から押付け、図4に示すように、密閉容器1の内側に下穴102に入り込む2つの容器凸部である凸部107が形成され、かしめ部が形成される。これを圧縮機構部101の外周面の3ヶ所でそれぞれほぼ同時に行う。
【0015】
そして図5に示すように、凸部107を形成した後に熱膨張した密閉容器1が冷却すると、熱収縮により2つの凸部107が加熱中心109に向かって引き寄せられるため、2つの凸部107が圧縮機構部101を、この形態では近接する2点1組の下穴102が圧縮機構部101の外周面の円周方向に並んで設けられているので、円周方向に締め付けて、圧縮機構部101が密閉容器1に固定される。従来の溶接による固定方法のように密閉容器1に穴あけ加工を施さないため、冷媒のリークの恐れがない。
【0016】
図4における凸部107を形成する密閉容器1の凹部106は、その内径が押付治具111の外径と等しい。図6は、図5に示すA方向から見た矢視図で、密閉容器1を外側から見た図である。密閉容器1の外周面には、かしめ部である近接した2つの凹部106が形成され、これが全周に3ヶ所に設けられている。図6において、108で示す点線の円は加熱範囲を表しており、局所加熱による熱が影響を及ぼしている範囲である。また、加熱中心109を一点鎖線による仮想線であらわしている。
【0017】
上記凸部を形成するために密閉容器を圧縮機構部外周の凹部に押し込むが、この押し込み量を増加させていくと、密閉容器1の塑性変形量が大きくなり、その変形部に微少な亀裂を生じるようになる。容器の耐圧を考慮すると、この押し込み量Hは密閉容器の板厚の50%程度が好ましいが、長期的な機器の使用を考えたときの微少亀裂からの冷媒の漏れを考慮し、この押し込み量Hは密閉容器の板厚の30%未満、上記凹部と押付け治具のすきまを0.1mm以上としている。またこの実施例においては、密閉容器の板厚は2.6mm、圧縮機構部外周の凹部寸法はφ4.0、押付け治具外径はφ3.85としている。
【0018】
実施の形態2.
この実施の形態2では、上記実施の形態1で示した密閉形圧縮機の局所加熱によるかしめ固定部を4箇所以下としたものである。
【0019】
上記固定部では密閉容器を塑性変形させているために微少な亀裂を生じている可能性があり、長期的な機器の使用を想定すると、冷媒の漏れを軽減する観点から、冷媒が漏れる恐れのある固定部は少ないほうがより安全となる。
【0020】
しかしこの固定部は密閉容器と圧縮機構部を長期的に堅牢に固定する必要があるから、その最低必要数もおのずと計算される。この実施例においては、この圧縮機構部と密閉容器のがたつきを防止する観点からこの固定部の最小数量を3箇所以上とし、その上限数量を6箇所以下とし、圧縮気後部の固定力を確保しつつも冷媒の漏れる恐れを軽減したものである。
【0021】
このように、この発明の上記実施の形態1〜2によれば以下のような効果を奏する。
この発明による圧縮機は、容器内に収納され圧縮室周囲を覆い圧縮を行う圧縮手段を形成する内蔵部品と、前記内蔵部品の外径側であって所定の幅を有し前記容器に隙間を介して対向する内蔵部品の外周面と、前記外周面に設けられ互いに近接して配置された複数の下穴を有する固定部と、前記固定部に対応する容器壁部であって前記容器の外側から押し付けられて前記複数の下穴内に入り込み前記容器と前記内蔵部品を固定する容器凸部と、を備え、容器のせん断変形による微少亀裂を防止するよう前記容器凸部の押し込み量を容器の板厚の30%未満、上記凹部と押付け治具のすきまを0.1mm以上としたので、冷媒として可燃性冷媒を使用した場合においても冷媒の漏れがなく、発火、爆発の恐れがなく安全な圧縮機を得られる効果がある。
【0022】
また、この発明の実施の形態の圧縮機は、前記圧縮手段のシリンダである前記内蔵部品の内径を外径の75パーセントより小さくしたので、シリンダのひずみを小さくでき、高効率の圧縮機を提供することができるという効果がある。
【0023】
また、この発明の実施の形態の圧縮機は、容器内に収納され圧縮室周囲を覆い圧縮を行う圧縮手段を形成する内蔵部品と、前記内蔵部品の外径側であって所定の幅を有し前記容器に隙間を介して対向する内蔵部品の外周面と、前記外周面に設けられ互いに近接して配置された複数の下穴を有する固定部と、前記固定部に対応する容器壁部であって前記容器の外側から押し付けられて前記複数の下穴内に入り込み前記容器と前記内蔵部品を固定する容器凸部と、を備え、上記固定部を3箇所以上六箇所以内として冷媒の漏れる可能性を低く抑えたので冷媒として可燃性冷媒を使用した場合においても冷媒の漏れがなく、発火、爆発の可能性の低い安全な圧縮機を得られる効果がある。
【0024】
以上の実施の形態では、以下の特徴を有する密閉形圧縮機について一例を説明した。
密閉容器内に圧縮機構部が収納された密閉形圧縮機において、上記圧縮機構部は、上記密閉容器の内周部に対向する外周部に凹部が形成されてなり、上記密閉容器は、該圧縮機構部の凹部に対応する部分が外側から該凹部の底部の方向に押し付けられて内外周部共にせん断された状態で該凹部内に進入され、上記密閉容器の外周部に該圧縮機構部の凹部と略同様の押付治具による凹所が形成されてなり、これら圧縮機構部の凹部及び密閉容器の押付部により、上記密閉容器と圧縮機構部相互の固定部が形成されてなり、
上記密閉容器の圧縮機構部の外周部に設けられた凹部への押し込み量が、密閉容器の板厚の30%未満であると共に、
前記圧縮機構部の凹部は、
円筒がくり抜かれた形状をなし、
前記押付治具は、
円柱形状で、先端が平面であり、
上記圧縮機構部の凹部は、
くり抜かれた前記円筒の外径に相当する前記凹部の内径が、前記円柱形状である前記押付治具の前記円柱形状の直径よりも、0.2mm以上大きいことを特徴とする密閉形圧縮機。
【0025】
上記固定部は、上記圧縮機構部の外周部に互いに近接して設けられた複数の凹部を用いて形成されてなり、かつ該固定部を周方向に1箇所以上設けてなることを特徴とする密閉形圧縮機。
【0026】
上記密閉容器と圧縮機構部相互の固定部は、三箇所以上六箇所以内であることを特徴とする密閉形圧縮機。
【0027】
上記固定部外周部に形成された凹部が加熱されたものであることを特徴とする密閉形圧縮機。
【0028】
上記圧縮機構部外周部に近接して設けられた凹部間が加熱されたものであることを特徴とする密閉形圧縮機。
【符号の説明】
【0029】
1 密閉容器、2 固定子、3 回転子、101 圧縮機構部、102 下穴、103 吸入管、106 凹部、107 凸部、108 加熱範囲、109 加熱中心、111 押付治具、120 電動機、200 密閉形圧縮機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉容器内に圧縮機構部が収納された密閉形圧縮機において、上記圧縮機構部は、上記密閉容器の内周部に対向する外周部に凹部が形成されてなり、上記密閉容器は、該圧縮機構部の凹部に対応する部分が外側から該凹部の底部の方向に押し付けられて内外周部共にせん断された状態で該凹部内に進入され、上記密閉容器の外周部に該圧縮機構部の凹部と略同様の押付治具による凹所が形成されてなり、これら圧縮機構部の凹部及び密閉容器の押付部により、上記密閉容器と圧縮機構部相互の固定部が形成されてなり、
上記密閉容器の圧縮機構部の外周部に設けられた凹部への押し込み量が、密閉容器の板厚の30%未満であると共に、
前記圧縮機構部の凹部は、
円筒がくり抜かれた形状をなし、
前記押付治具は、
円柱形状で、先端が平面であり、
上記圧縮機構部の凹部は、
くり抜かれた前記円筒の外径に相当する前記凹部の内径が、前記円柱形状である前記押付治具の前記円柱形状の直径よりも、0.2mm以上大きく、
前記密閉形圧縮機は、
冷媒として可燃性冷媒を用いることを特徴とする密閉形圧縮機。
【請求項2】
上記密閉容器と圧縮機構部相互の固定部は、三箇所以上六箇所以内であることを特徴とする請求項1記載の密閉形圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−100831(P2013−100831A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−43814(P2013−43814)
【出願日】平成25年3月6日(2013.3.6)
【分割の表示】特願2008−261180(P2008−261180)の分割
【原出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】