説明

対物レンズ光学系及びレンズフレアーの低減方法

【課題】収差補正等の対物レンズの基本的な性能を確保することとは独立に、フレアー光による画像の劣化を防止することが可能である。
【解決手段】対物レンズ12、ビームスプリッター18、凹面鏡20、チューブレンズ22、照明用光源14、及びコリメートレンズ16を具えて構成される対物レンズ光学系である。物体面10に対する照明の方式は、照明光がビームスプリッターの反射面18Rで反射され、対物レンズを介して物体面に照射されることによって実現される落射照明方式である。凹面鏡の反射面20Rの幾何学的形状は、対物レンズの最近接物体面12Rの幾何学的形状と同一の形状とされている。最近接物体側面で反射されて結像面に入射するフレアー光と、凹面鏡の反射面で反射されて結像面に入射する反フレアー光が、結像面において互いに干渉して弱め合う構成とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落射照明(epi-illumination)方式の光学装置に用いられる対物レンズ光学系(object lens system)に係り、特に像のコントラストの低下の要因となるレンズフレアー(lens flare)が発生しにくい対物レンズ光学系及びレンズフレアーの低減方法に関する。
【背景技術】
【0002】
落射照明方式の光学装置にあっては、対物レンズが結像レンズとしての役割に加えて、照明系のコンデンサーレンズとしての役割を兼ねている。従って、落射照明方式の光学装置に用いられる対物レンズ光学系は、対物レンズを構成するレンズ群のレンズ面における反射散乱光に起因するレンズフレアーが発生しにくい構成とする必要がある。ここで、落射照明方式の光学装置とは、対物レンズを介して被観察物体へ照明光を照射するとともに、この対物レンズによって被観察物体の像を形成する構成とされた光学装置を指し、金属顕微鏡がその代表例である。
【0003】
レンズフレアーとは、対物レンズを構成するレンズの表面等、光学系の内部で光の一部が反射散乱されることによって発生する迷光によって、像が乱される現象である。対物レンズの収差が良好に補正されているとしても、レンズフレアーが発生すれば、像のコントラストが低下するといった障害が発生し実用上の問題となる。
【0004】
以後、説明の便宜のために、光学系の内部で発生するレンズフレアーの原因となる迷光をフレアー光ということもある。また、迷光によって結像面に形成される明るさの濃淡、すなわち、結像面において像を形成するために必須である明るさの濃淡とは別の明るさの濃淡を、像の雑音成分あるいは単に雑音ということもある。上述の、レンズフレアーによる結像面における障害とは、結像面に形成される雑音の発生を意味する。
【0005】
フレアー光の発生の要因は複数あるが、対物レンズを構成するレンズ群の中で最も被観察物体に近い側に配置されるレンズの被観察物体側に面するレンズ面からの反射光がフレアー光の発生の主要因である。以後、対物レンズを構成するレンズ群の中で最も被観察物体に近い側に配置されるレンズの被観察物体側に面するレンズ面を、最近接物体側面ということもある。
【0006】
最近接物体側面における反射に起因するフレアー光の発生原因は、この最近接物体側面に入射される落射照明光の光線の方向が、この最近接物体側面の法線方向と一致することにある。このように落射照明光の光線の方向が最近接物体側面の法線方向と一致すると、最近接物体側面における反射光は、落射照明光の光線の入射方向と完全に一致して逆進する向きに進行する。
【0007】
このように、落射照明光の光線の方向が最近接物体側面の法線方向と一致することを回避するための方法の一つとして、物体面から最近接物体側面までの距離をd0とし、最近接物体側面の曲率半径をr1とした場合、r1≧2d0を満足するように設計する等の方策が講じられる。
【0008】
低い倍率から中程度の倍率、すなわち5倍から20倍程度の範囲の倍率の対物レンズにあっては、フレアー光の発生原因となる最近接物体側面からの反射光の量を低減するために、物体に最も近接して配置されるレンズの屈折率を大きく設定して屈折力を大きくするのが好都合である。しかしながら、物体に最も近接して配置されるレンズの屈折率を大きく設定すると、このレンズにおいて発生する色収差が大きくなり、後段に配置されるレンズによる色収差補正が十分に行えなくなるという問題がある。色収差を小さく抑えるためには、屈折率の波長分散を小さくすれば良いが、波長分散の小さい物質は屈折率も低いので、レンズ表面の曲率半径を小さく設定しなければ、必要な屈折力を確保できない。レンズ表面の曲率半径を小さく設定すると球面収差が大きくなるという問題が発生する。一般的に、フレアー光の発生を低減することと、収差の大きさを低減することとは相反する。
【0009】
一方、高倍率の対物レンズにあっても、同様にフレアーは発生する(例えば、特許文献1参照)。例えば、アプラナティックレンズは球面収差とコマ収差とがゼロであるレンズであり、空気中にあるアプラナティックレンズはメニスカス形状であり、落射照明光の光線はこのレンズ面の法線方向と一致する。このため、上述したように、メニスカスレンズの表面からの反射光が、フレアーの発生原因となる。
【0010】
そこで、対物レンズの最も被観察物体に近い側に配置される構成レンズの両側のレンズ面のそれぞれの曲率半径に制限を加えて、フレアー光の強度を低減する手段が知られている(例えば、特許文献2及び3参照)。また、対物レンズを構成する複数のレンズ群の配置間隔に制限を加えて、フレアー光の強度を低減する手段が知られている(例えば、特許文献4参照)。
【特許文献1】特開平8-190055号公報
【特許文献2】特許第3384163号公報
【特許文献3】特開2000-249926号公報
【特許文献4】特許第4066082号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来の対物レンズのフレアー光の強度低減のための手段は、上述したように、収差補正等の対物レンズの基本的な性能に配慮して、これらの性能を確保することが可能である範囲で、フレアー光の強度低減が図られている。すなわち、フレアー光の強度を低減するためにとられる手段は、対物レンズの基本的な性能が確保できる範囲に制限されている。
【0012】
従って、収差補正等の対物レンズの基本的な性能を確保することとは独立に、フレアー光の強度を低減するための手段をとることが可能となれば、対物レンズの更なる性能の向上を期待することができる。
【0013】
そこで、この発明は以上のことに鑑み、収差補正等の対物レンズの基本的な性能を確保することとは独立して、フレアー光による画像の劣化を抑止するための対物レンズ光学系及びレンズフレアーの低減方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明者は、落射照明方式の光学装置に用いられる対物レンズにおけるフレアー光の発生の要因は対物レンズを構成するレンズ群のレンズ面及び被観察物体の被観察対象領域を除く領域の双方又はいずれか一方からの反射光であるので、この反射光を何らかの方法でその強度を弱めるか、除去することができればレンズフレアーの発生を防止できることに注目した。対物レンズを構成するレンズ群のレンズ面とは、対物レンズを構成する複数のレンズのそれぞれのレンズ面を指す。
【0015】
光の干渉を利用して対物レンズを構成するレンズ群のレンズ面及び被観察物体の被観察対象領域を除く領域の双方又はいずれか一方からの反射光の強度を弱めることができれば、収差補正等の対物レンズの基本的な性能を確保することとは独立して、レンズフレアー発生を抑止するための手立てを講ずることが可能であるとの認識に至った。
【0016】
そこで、この発明者は、鋭意検討を重ねた結果、レンズフレアーの発生原因となるフレアー光と、このフレアー光と結像面において反対位相である光を結像面において干渉させて、フレアー光の強度を弱める方法及び手段を見出した。フレアー光を干渉によって結像面において消失させる効果を有する光を、以後、反フレアー光ということもある。
【0017】
ここで、フレアー光と反フレアー光とが反対位相であるとは、結像面においてフレアー光と反フレアー光の両者の位相差が半波長(波長の1/2の長さ)の奇数倍であること、すなわち角度位相で表せばπ(ラジアン)の奇数倍であることをいう。
【0018】
上述のフレアー光と反フレアー光とを結像面において干渉させるという理念に基づくこの発明の要旨によれば、以下の対物レンズ光学系が提供される。
【0019】
この発明の対物レンズ光学系の基本的構成は、落射照明系の対物レンズ光学系であって、対物レンズと反射手段とを具えている。そして、対物レンズを構成するレンズ群のレンズ面から反射されて結像面に入射するフレアー光と、反射手段で反射されて結像面に入射する光が、結像面において互いに干渉して弱め合う条件を実現できる位置に反射手段を設置する構成とされている。反射手段は、フレアー光と結像面において反対位相である反射光を生成する機能を有する構成要素である。反射手段によって生成される反射光は、フレアー光を干渉によって結像面において消失させる効果を有する光であるので、反フレアー光である。
【0020】
フレアー光の主要な発生要因は、対物レンズを構成する複数のレンズのレンズ面の一つである最近接物体側面からの反射光ある。そこで、この発明の第1の対物レンズ光学系は、最近接物体側面からの反射光の結像面における強度を効果的に低減することが可能な対物レンズ光学系である。
【0021】
この発明の第1の対物レンズ光学系は、対物レンズと反射手段とビームスプリッターとを具えて構成される。
【0022】
対物レンズは、被観察物体へ照明光を照射するとともに被観察物体から反射される照明光の反射光によって被観察物体の像を形成する、落射照明による光学装置に用いられる対物レンズである。
【0023】
反射手段は、この反射手段に、等位相波面が平面である入射光が入射されて反射される反射光の等位相波面の形状が、対物レンズに等位相波面が平面である入射光が入射されて、最近接物体側面で反射され、対物レンズ内を逆進して射出される光の等位相波面の形状と等しくなる反射特性を有している。
【0024】
ビームスプリッターは、照明光を対物レンズの光軸に平行な方向に被観察物体に向けて進むように反射し、かつ被観察物体からの反射光を対物レンズの光軸に平行な方向に結像面に向けて進むように透過する形態に配置されている。
【0025】
そして、フレアー光と、反フレアー光とが、互いに結像面において干渉して弱め合う関係となる位置に反射手段が設置されている。ここで、フレアー光とは、ビームスプリッターで反射されて最近接物体側面で反射され、再びビームスプリッターに戻されてビームスプリッターを透過して対物レンズの結像面に入射する光を指す。反フレアー光とは、ビームスプリッターを透過して反射手段で反射されて再びビームスプリッターに戻されて反射されて対物レンズの結像面に入射する光を指す。
【0026】
この発明の第1の対物レンズ光学系において、照明光を白色光としてもよく、波長がλである単色光としてもよい。
【0027】
照明光を白色光とした場合には、フレアー光と、反フレアー光との結像面における位相差を、フレアー光と、反フレアー光とが反対位相の関係となるように設定するのがよい。具体的には、照明光に含まれるスペクトル波長のうち一番強度の強いスペクトル成分の波長がλmであるとした場合、λm/2に等しくなるように設定する。
【0028】
一方、照明光を波長がλである単色光とした場合には、フレアー光と、反フレアー光との結像面における位相差を(λ/2)×(2N-1)に等しく設定するのが良い。ここで、Nは1以上の整数である。
【0029】
この発明の第1の対物レンズ光学系において、結像面における、フレアー光の強度と反フレアー光の強度とが等しくなるように、反射手段の反射率を設定するのが好適である。又は、結像面における、フレアー光の強度と反フレアー光の強度とが等しくなるように、フレアー光もしくは反フレアー光の強度を調整する光強度調整器を具えるのが良い。
【0030】
反射手段は、ビームスプリッターに対して、対物レンズを構成するレンズのうち被観察物体に最も近い位置のレンズの被観察物体に面する側のレンズと、形状及び素材が同一であるレンズであって、最近接物体側面に対応するレンズ面とするのがよい。
【0031】
この発明の第2の対物レンズ光学系は、第1対物レンズ及び第2対物レンズの2つの対物レンズと、ビームスプリッターとを具えて構成され、第1及び第2対物レンズは、被観察物体へ照明光を照射するとともに被観察物体からの反射光によって被観察物体の像を形成する、落射照明による光学装置に用いられる対物レンズであり、第1対物レンズと第2対物レンズとは相似形状の対物レンズである。第1対物レンズと第2対物レンズとは、当然に同一の大きさで同一の形状の対物レンズであることがより好ましい。
【0032】
ビームスプリッターは、照明光を第1対物レンズの光軸に平行な方向に被観察物体に向けて進むように反射し、かつ被観察物体からの反射光を第1対物レンズの光軸に平行な方向に結像面に向けて進むように透過する形態に配置されている。
【0033】
第2対物レンズは、第1対物レンズを構成するレンズのうち被観察物体に最も近い位置のレンズに対応するレンズが、ビームスプリッターに対して最も離れた位置に配置されている。
【0034】
そして、フレアー光と、反フレアー光とが、互いに結像面において干渉して弱め合う関係となる位置に反射手段である第2対物レンズが設置されている。ここで、フレアー光とは、第1対物レンズの最近接物体側面で反射され、再びビームスプリッターに戻されてビームスプリッターを透過して第1対物レンズの結像面に入射する光を指す。また、反フレアー光とは、ビームスプリッターを透過して第2対物レンズを構成するレンズ群の中で、ビームスプリッターに対して最も離れた位置のレンズのビームスプリッターと反対側に面するレンズ面で反射されて再びビームスプリッターに戻されて反射され、第1対物レンズの結像面に入射する光を指す。
【0035】
以後、第2対物レンズを構成するレンズ群の中で、ビームスプリッターに対して最も離れた位置のレンズのビームスプリッターと反対側に面するレンズ面を、第1対物レンズの最近接物体側面に対応するレンズ面ということもある。
【0036】
第1の対物レンズ光学系の場合と同様に、この発明の第2の対物レンズ光学系においても、照明光は白色光あるいは単色光の何れとしてもよい。
【発明の効果】
【0037】
この発明の対物レンズ光学系の基本的構成によれば、フレアー光と反フレアー光が結像面において互いに干渉して弱め合う構成とされているから、結像面において像の雑音成分が低減され、あるいは理想的には雑音が形成されない状況を実現することが可能である。従って、レンズフレアーによる障害の少ない、あるいは障害を受けない良好な像を形成することが可能である。
【0038】
一方、結像に寄与する光は、落射照明によって照明された被観察物体から散乱する散乱光である。この被観察物体から散乱する散乱光の等位相波面の形状は、被観察物体の形状に依存しており、フレアー光及び反フレアー光の等位相波面とは、大きく異なる幾何学的形状を有している。そのため、落射照明によって照明された被観察物体から散乱する散乱光は、対物レンズを通過することによってフレアー光及び反フレアー光の影響を受けずに、結像面において像を形成することのみに寄与する。すなわち、対物レンズによって形成される像には、フレアー光及び反フレアー光の影響は及ばない。
【0039】
この発明の第1の対物レンズ光学系によれば、反射手段が、この反射手段に、等位相波面が平面である入射光が入射されて反射される反射光の等位相波面の形状が、最近接物体側面に等位相波面が平面である入射光が入射されて反射される反射光の等位相波面の形状と等しくなる反射特性を有している。
【0040】
そのため、反射手段から反射される反射光(反フレアー光)と、最近接物体側面から反射される反射光(フレアー光)との結像面における位相差を、両反射光の等位相波面が重なり合う条件に設定することが可能である。従って、結像面において互いに干渉して弱め合う関係となるように、この両反射光の位相差を一義的に決定することが可能である。
【0041】
また、反フレアー光は、対物レンズのレンズ構成とは独立した構成要素である反射手段によって生成されるので、収差補正等の対物レンズの基本的な性能を確保することとは独立して、フレアー光による画像の劣化を抑止することが可能となる。
【0042】
照明光を白色光とした場合、フレアー光と、反フレアー光との結像面における位相差を、フレアー光と、反フレアー光とが反対位相の関係となるように設定することにより、フレアー光と反フレアー光とを干渉によって消失させることができ、フレアー光により形成される雑音のない画像を得ることが可能である。具体的には、照明光に含まれるスペクトル波長のうち一番強度の強いスペクトル成分の波長がλmであるとした場合、波長がλmであるスペクトル成分に対してフレアー光と、反フレアー光とが反対位相の関係となるように設定することにより、最も効果的にレンズフレアーを低減することが可能である。
【0043】
また、照明光を波長がλである単色光とした場合には、フレアー光と反フレアー光との結像面における位相差を(λ/2)×(2N-1)に等しく設定することにより、フレアー光と反フレアー光とを干渉によって消失させることができ、フレアー光により形成される雑音のない画像を得ることが可能である。
【0044】
結像面において、フレアー光と反フレアー光とを干渉によって効果的に消失させるには、結像面におけるフレアー光の強度と反フレアー光の強度とを等しくすることが効果的である。
【0045】
反射手段の反射率を調整することによって、結像面におけるフレアー光の強度と反フレアー光の強度とを等しく設定することが可能である。あるいは、反射手段の反射率を調整する代わりに、光強度調整器によって、フレアー光の強度あるいは反フレアー光の強度を調整することによっても、結像面におけるフレアー光の強度と反フレアー光の強度とを等しく設定することが可能である。
【0046】
反射手段を、ビームスプリッターに対して、対物レンズを構成するレンズのうち被観察物体に最も近い位置のレンズの被観察物体に面する側のレンズと、形状及び素材が同一であるレンズであって、最近接物体側面に対応するレンズ面とすれば、最近接物体側面の反射率と反射手段の反射率が等しくなる。従って、反射手段をこのように設定すれば、フレアー光の強度と反フレアー光の強度とを等しくすることが可能である。
【0047】
この発明の第2の対物レンズ光学系によれば、反フレアー光を生成する手段に、第2対物レンズが利用される。従って、原理的に、フレアー光と反フレアー光とは同一のメカニズムによって生成される。すなわち、第2の対物レンズ光学系において生成される反フレアー光として、第2対物レンズの、第1対物レンズの最近接物体側面に対応するレンズ面で反射された光成分以外の成分も含まれている。
【0048】
これは、この発明の第2の対物レンズ光学系によれば、第1対物レンズの最近接物体側面以外のレンズ面で反射されたフレアー光成分についても、結像面においてその強度を低減することが可能となる。従って、フレアー光により形成される雑音が一層少ない画像を得ることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、各図は、この発明が理解できる程度に各構成部分を概略的に示してあるに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、各図において同様の構成要素については同一の番号を付して示し、これらの機能等に関して、その重複する説明を省略することもある。
【0050】
<この発明の実施の形態の第1の対物レンズ光学系>
図1を参照して、この発明の実施の形態の第1の対物レンズ光学系の構成と、レンズフレアーの発生防止のメカニズムについて説明する。図1は、この発明の実施の形態の第1の対物レンズ光学系の概略的構成図である。
【0051】
図1に示す第1の対物レンズ光学系は、対物レンズ12、ビームスプリッター18、反射手段である凹面鏡20、チューブレンズ22、照明用光源14、及びコリメートレンズ16を具えている。すなわち、第1の対物レンズ光学系は、物体面10における濃淡が、対物レンズ12及びチューブレンズ22によって結像面24に像として形成される結像光学系である。物体面10には被観察物体が固定されている。以後の説明では、物体面10に固定されている被観察物体を単に物体ということもある。
【0052】
結像面24には、電荷結合素子等の電気的な受光素子が配置され、対物レンズ12及びチューブレンズ22によって形成される像の観測がなされる。また、チューブレンズ22の後段に接眼レンズを配置することによって、肉眼による像の観察を可能とすることができる。
【0053】
物体面10に対する照明の方式は、照明用光源14から出力される照明光がビームスプリッター18の反射面18Rで反射され、対物レンズ12を介して物体面10に照射されることによって実現される落射照明方式である。照明用光源14から出力される照明光は、コリメートレンズ16によって平行光束に形成されて、ビームスプリッター18の反射面18Rで反射され対物レンズ12に入射する。
【0054】
図1では、物体面10において三箇所から散乱される光線について代表して示してある。これらの三箇所のうちの一箇所は、物体面10と対物レンズ12の光軸とが交差する点、他の二箇所は、物体面10と対物レンズ12の光軸とが交差する点から離れた位置の二箇所である。三箇所から散乱されるこれらの光線は、これら三箇所にある点光源から出射された光線であると見なすことができ、結像面24では、これら三箇所の点光源が、それぞれ対応する位置に結像される。
【0055】
この発明の実施の形態の第1の対物レンズ光学系は、物体を一様な明るさで照明し、物体から反射される明るさの濃淡分布が、対物レンズ12によって一旦平行光束に変換され、チューブレンズ22に入射される。すなわち、対物レンズ12によっては結像面24に像が形成されることはなく、チューブレンズ22によって結像面24に像が形成される。すなわち、第1の対物レンズ光学系は、いわゆる無限遠補正光学系(infinity correctionsystem)である。ここで、チューブレンズ22は、結像レンズと呼ばれることもある。
【0056】
対物レンズ光学系を無限遠補正光学系とすることによって、対物レンズ12とチューブレンズ22との間の間隔を変えても、結像面24に形成される像に変化が生じないという利点を得ることができる。対物レンズ12とチューブレンズ22との間の間隔を自由に変更できることから、この間に新たな光学部品を挿入することが容易となり、光学系としてのシステム設計の自由度が大きくなる。
【0057】
落射照明系では、対物レンズ12と結像面24との間にビームスプリッター18を挿入する必要があり、無限遠補正光学系を採用することによって、このビームスプリッター18を挿入することが容易となる。
【0058】
また、無限遠補正光学系を採用することによる他の利点は、対物レンズ12とチューブレンズ22との間においては、物体からの反射光が平行光束の状態となっていることである。このことによって、物体からの反射光とは逆向きに対物レンズ12に入射される平行光束である照明光は、対物レンズ12によって、物体面10に効率よく集光される。すなわち、照明光が物体を最も明るい状態で照明できることとなり、物体を最も効果的に照明できる状態が実現される。
【0059】
以上説明した様に、対物レンズ12は、物体へ照明光を照射するとともに物体から反射される照明光の反射光によって像を形成する、落射照明方式による光学装置に用いられる対物レンズである。ビームスプリッター18は、照明光を対物レンズ12の光軸に平行な方向に物体に向けて進むように反射し、かつ物体からの反射光を対物レンズ12の光軸に平行な方向に結像面24に向けて進むように透過する形態に配置されている。
【0060】
図1に示す第1の対物レンズ光学系において、反射手段として凹面鏡20が利用されている。凹面鏡20の反射面20Rの幾何学的形状は、対物レンズ12の最近接物体面12Rの幾何学的形状と同一の形状とされている。
【0061】
このようにすることで、凹面鏡20に、等位相波面が平面である入射光が入射されて反射される反射光の等位相波面の形状が、最近接物体側面12Rに等位相波面が平面である入射光が入射されて反射される反射光の等位相波面の形状と等しくすることが可能となる。すなわち、反射面20Rと最近接物体面12Rの幾何学的形状とを同一形状とすることによって、凹面鏡20に平行光束を入射して反射される反射光の等位相波面の形状と、最近接物体側面12Rに平行光束を入射して反射される反射光の等位相波面の形状とを等しい形状とすることが可能である。
【0062】
図1では、反射手段として凹面鏡20が利用される例を示してあるが、凹面鏡に限定されるものではない。図2(A)及び(B)を参照して凹面鏡以外で反射手段として、採用可能な光学素子の例を説明する。図2(A)及び(B)は、傾斜屈折率変化が形成された屈折率層を具える等位相波面変換光学素子の説明に供する図であり、図2(A)は等位相波面変換光学素子の概略的断面構成図であり、図2(B)は等位相波面変換光学素子の屈折率層の屈折率分布を示す図である。図2(B)において、横軸が等位相波面変換光学素子の位置座標を示し、縦軸は屈折率の変調成分Δnの値を任意スケールで示してある。
【0063】
等位相波面変換光学素子は、基板26に屈折率層28が接着された構成であり、基板26は反射面26Rが具えられている。基板26は、例えばガラス基板を利用することができる。反射面26Rはガラス基板に銀等の金属薄膜を真空蒸着することで形成できる。屈折率層28は中心に近いほど屈折率が大きくなるように形成されている。屈折率層28の平均屈折率をnとし、この平均屈折率からの偏差である変調成分をΔnとすると、Δnは、屈折率層28の中心部分が極大の大きさとなる。このΔnの分布形状を調整することによって、等位相波面変換光学素子に平行光束を入射して反射される反射光の等位相波面の形状と、最近接物体側面12Rに平行光束を入射して反射される反射光の等位相波面の形状とを等しい形状とすることが可能である。
【0064】
屈折率層28としては全反射型フレネルレンズシートとすることも、また実際に屈折率分布を有する材料で形成することも可能である。屈折率分布を有する材料としては、銀塩を含む乳剤フィルム(Emulsion film)等を利用することが可能である。
【0065】
次に、図3を参照して、対物レンズ12の最近接物体側面12Rで発生するフレアー光について説明する。図3は、対物レンズ12及びチューブレンズ22の断面構造、及び照明光と最近接物体側面12Rで反射する光束の光線を示す図である。最近接物体側面12Rで反射する光束がフレアー光である。図1の挿入図には対物レンズ12と最近接物体側面12Rとを示してあるが、図3ではこれよりも詳しく示してある。
【0066】
図3の右側から左側に向けて進む平行な照明光が、最近接物体側面12Rで一部反射される。最近接物体側面12Rで反射される反射光の内、フレアー光として再び対物レンズ12に入射する光線は、最近接物体側面12Rと対物レンズ12の光軸との交点の近傍で反射される光線である。図3で、このようにフレアー光として再び対物レンズ12に入射する光線を実線で示してある。
【0067】
一方、最近接物体側面12Rで反射される反射光のうち、最近接物体側面12Rと対物レンズ12の光軸との交点から離れた、最近接物体側面12Rの周辺部で反射される反射光は、再び対物レンズ12に入射されることはない。図3では、最近接物体側面12Rの周辺部で反射され対物レンズ12に入射されない反射光の光線を破線で示してある。なお、煩雑を避けるため、図3では、最近接物体側面12Rの周辺部で反射され、対物レンズ12に入射されない反射光を発生させる入射光の光線を省略してある。
【0068】
落射照明光の内、フレアー光の主原因となる成分は、レンズの光軸に平行に近い光線成分であり、レンズ面で反射されて結像面まで到達し、これがフレアー光となる。低倍率の対物レンズは、本来開口数が小さいので、レンズ面で反射されて結像面まで到達する落射照明光の成分が多くなる傾向にある。
【0069】
図4に、対物レンズ光学系で発生する主要な迷光である最近接物体側面12Rで反射される反射光によって、結像面24に形成される濃淡像(雑音)、すなわち結像面におけるフレアー光による像を示す。図4に示すフレアー光による像は、対物レンズ12に対して、この光軸に平行な照明光である平行光束が入射され、最近接物体側面12Rにおいて反射されて、再び結像面24に戻るものとしてシミュレーションした結果得られた像である。
【0070】
図4において、直交する2本の線分の交点が結像面24の中心を示す。結像面24の中心から広がるぼやけた円形に雑音が形成されることがわかる。この雑音が結像面24に形成される像のコントラストを低下させる等の、障害の発生原因となる。
【0071】
以上説明した様に、フレアー光は、最近接物体側面12Rで反射されて生成される。最近接物体側面12Rで反射された反射光は、対物レンズ12の内部を通過して、ビームスプリッター18を透過し、チューブレンズ22に入射され、このチューブレンズ22によって、結像面24に集光されレンズフレアーである雑音を形成する。一方、反フレアー光は、照明用光源14から出射されてコリメートレンズ16で平行光束にされてビームスプリッター18を透過して凹面鏡20の反射面20Rで反射されることによって生成される。反射面20Rで反射された反射光は、再びビームスプリッターに入射されて反射され、チューブレンズ22に入射され、このチューブレンズ22によって、集光されて結像面24に反フレアー光として入射する。
【0072】
フレアー光と、反フレアー光とが、互いに結像面24において干渉して弱め合う関係となる位置に反射手段である凹面鏡20が設置されている。この条件を満たす凹面鏡20の位置は、照明光が白色光である場合は、照明光に含まれるスペクトル波長のうち一番強度の強いスペクトル成分の波長がλmであるとした場合、フレアー光と反フレアー光との結像面24における、波長がλmであるスペクトル成分の位相差がλm/2に等しくなるように凹面鏡20を設定する。
【0073】
一方、照明光を波長がλである単色光とした場合には、フレアー光と、反フレアー光との結像面24における位相差を(λ/2)×(2N-1)に等しく設定するのが良い。ここで、Nは1以上の整数である。
【0074】
照明光が白色光である場合、位相差がλm/2と等しい場合に限定される理由は、ビームスプリッター18と凹面鏡20の反射面20Rとの間にある空気の屈折率分散の影響があるためである。すなわち、照明光が白色光である場合、(λm/2)×(2N-1)Nで与えられる位相差の値が大きな場合(Nが大きな場合)は、フレアー光と、反フレアー光との結像面における干渉効果が明瞭に発現しなくなる。
【0075】
フレアー光と反フレアー光とが、互いに結像面24において干渉して弱め合う関係となる位置に反射手段である凹面鏡20を設置するには、具体的には以下のようにすれば良い。
【0076】
まず、物体面10に表面構造を持たない鏡面を置き、その上で、照明光をこの第1の対物レンズ光学系に入射させる。この状態で結像面24における明るさが最小となるように、ビームスプリッター18と凹面鏡20の反射面20Rとの間隔LMを調整する。このように調整することによって、ガラス等の透明体であってその裏面を観察対象とする場合、ガラス面の表面反射に起因するフレアー光も除去することが可能となる。また、観察対象が多層構造を有しており、その中間層を観察する場合等において、観察対象以外の多層膜面からの反射に起因するフレアー光も除去することが可能となる。
【0077】
ガラス等の透明体であってその裏面を観察対象とする場合、被観察対象領域は裏面であり、表面は被観察対象領域から除かれた領域である。また、観察対象が多層構造を有しておりその中間層を観察する場合、被観察対象領域は中間層であり、中間層以外は被観察対象領域から除かれた領域である。
【0078】
物体面10の位置に光を反射する物体を一切置かず、その上で、照明光をこの第1の対物レンズ光学系に入射させ、この状態で結像面24における明るさが最小となるように、ビームスプリッター18と凹面鏡20の反射面20Rとの間隔LMを調整すると、最近接物体側面12Rにおける反射光に起因するフレアー光のみを除去することが可能となる。これに対して、物体面10に表面構造を持たない鏡面を置き、同様に間隔LMを調整すると、最近接物体側面12Rにおける反射光に起因するフレアー光と、被観察物体の被観察対象領域を除く領域からの反射光に起因するフレアー光のみを除去することが可能となる。
【0079】
上述の、間隔LMの調整に当たり、物体面10の位置に光を反射する物体を一切置かずに調整するか、物体面10に表面構造を持たない鏡面を置き調整を行うかは、被観察物体の光学的な特性に基づいて適宜判断すればよい。ガラス等の透明体であってその裏面を観察対象とする場合や、観察対象が多層構造を有しておりその中間層を観察する場合のように、被観察物体に付随する被観察対象領域を除く領域に、乱反射する複雑な表面構造ではなく正反射する平面反射面を含んでいる場合には、物体面10に表面構造を持たない鏡面を置きその上で間隔LMの調整を行うのが好適である。
【0080】
照明光が白色光である場合は、間隔LMは一通りに確定される。一方、照明光が、波長がλである単色光である場合は、間隔LMは、(λ/2)×(2N-1)を満たす複数通り見つけ出される。この場合は、結像面24における明るさが最小となる条件を満たす位置であれば、凹面鏡20は何れの位置に配置しても良い。
【0081】
波長がλである単色光である照明光を得るには、レーザ光源を用いるのが良い。レーザ光源であれば、出力光は単色性に優れており、また可干渉距離(コヒーレンス長)も長い。そのため、間隔LMとして与えられる(λ/2)×(2N-1)を満たす位置は、Nの値が非常に大きい場合も含まれる。従って、結像面24における明るさが最小となる条件を満たす位置を見つける操作が容易であるという利点がある。
【0082】
この発明の実施の形態の第1の対物レンズ光学系において、結像面における、フレアー光の強度と反フレアー光の強度とが等しくなるように、反射手段の反射率を設定するのが好適である。このように設定することによって、間隔LMがλm/2あるいは(λ/2)×(2N-1)を満たす場合に実現される、干渉によるフレアー光の強度の低減効果が最も効果的に得られる。フレアー光と反フレアー光の強度差がΔIであるとすると、このΔIに相当する光強度以下に結像面24における明るさを低減することができない。
【0083】
そこで、凹面鏡20の反射面20Rの反射率を調整することによって、反フレアー光の強度を調整して、結像面24における、フレアー光の強度と反フレアー光の強度とが等しくなるように設定するのが好ましい。このような設定は、対物レンズの構成レンズのうち物体に最も近い位置のレンズの物体に面する側のレンズと形状及び素材が同一であるレンズを用い、最近接物体側面12Rに対応するレンズ面を反射面20Rとして利用することで最も簡便に実現される。
【0084】
また、ビームスプリッター18と凹面鏡20の反射面20Rとの間に光強度調整器34を挿入し、反フレアー光の強度を調整して、結像面24における、フレアー光の強度と反フレアー光の強度とが等しくなるように設定するのが簡便に実行できる点で優れている。光強度調整器34としては、NDフィルタ(Neutral Densityフィルタ)等が適宜利用できる。
【0085】
<この発明の実施の形態の第2の対物レンズ光学系>
図5を参照して、この発明の実施の形態の第2の対物レンズ光学系の構成と、レンズフレアーの発生防止のメカニズムについて説明する。図5は、この発明の実施の形態の第2の対物レンズ光学系の概略的構成図である。
【0086】
図5に示す第2の対物レンズ光学系は、第1対物レンズ30及び第2対物レンズ32の2つの対物レンズと、ビームスプリッター18とを具えて構成されている。また、第1の対物レンズ光学系と第2の対物レンズ光学系との相違点は、光強度調整器34を具えていないこと、及び凹面鏡20の代わりに第2対物レンズ32が配置されている点である。第1の対物レンズ光学系と第2の対物レンズ光学系とは、これ以外の構成要素は共通する。ただし、第1の対物レンズ光学系の対物レンズ12と第2の対物レンズ光学系の第1対物レンズ30とは同一のレンズであるが、説明の便宜上名称を変えてある。また、第1対物レンズ30と第2対物レンズ32とは、完全に同一サイズで同一の形状の対物レンズである。
【0087】
第1対物レンズ30と第2対物レンズ32とは、ビームスプリッター18の反射面18Rに対して面対称の関係となる位置に配置されている。
【0088】
第2の対物レンズ光学系において、フレアー光は、第1対物レンズ30の最近接物体側面30Rで反射され、再びビームスプリッター18に戻されてビームスプリッター18を透過して第1対物レンズの結像面24に入射する光である。また、反フレアー光は、ビームスプリッター18を透過して第2対物レンズ32を構成するレンズ群の中で、ビームスプリッターに対して最も離れた位置のレンズのビームスプリッターと反対側に面するレンズ面32Rで反射されて再びビームスプリッター18に戻されて反射され、第1対物レンズ30の結像面24に入射する光である。
【0089】
第2の対物レンズ光学系においては、反フレアー光を生成する手段に、第2対物レンズ32が利用されている。従って、原理的に、フレアー光と反フレアー光とは同一のメカニズムによって生成される。すなわち、第2の対物レンズ光学系において生成される反フレアー光として、第2対物レンズ32の、第1対物レンズの最近接物体側面30Rに対応するレンズ面32Rで反射された光成分以外の成分(迷光成分)も含まれている。このレンズ面32Rで反射された光成分以外の成分については、第1対物レンズ30においても同様に発生している。
【0090】
第1の対物レンズ光学系においては、レンズ面12R及びレンズ面20Rで反射された以外の迷光成分については無視されていた。しかしながら第2の対物レンズ光学系においては、これらの迷光成分についても、結像面24において干渉による打消し合いが起こり、第1の対物レンズ光学系における場合以上にフレアー光により形成される雑音が一層少ない画像を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】この発明の実施の形態の第1の対物レンズ光学系の概略的構成図である。
【図2】(A)は等位相波面変換光学素子の概略的断面構成図であり、(B)は等位相波面変換光学素子の屈折率層の屈折率分布を示す図である。
【図3】対物レンズ及びチューブレンズの断面構造、及び照明光と最近接物体側面で反射する光束の光線を示す図である。
【図4】結像面におけるフレアー光による像を示す図である。
【図5】この発明の実施の形態の第2の対物レンズ光学系の概略的構成図である。
【符号の説明】
【0092】
10:物体面
12:対物レンズ
14:照明用光源
16:コリメートレンズ
18:ビームスプリッター
20:凹面鏡
22:チューブレンズ(結像レンズ)
24:結像面
26:基板
28:屈折率層
30:第1対物レンズ
32:第2対物レンズ
34:光強度調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
落射照明系の対物レンズ光学系におけるレンズフレアーの低減方法であって、
対物レンズを構成するレンズ群のレンズ面及び被観察物体の被観察対象領域を除く領域の双方又はいずれか一方で反射されて結像面に入射するフレアー光と、
反射手段で反射されて前記結像面に入射する反フレアー光を、
前記結像面において互いに干渉させて、レンズフレアーを低減することを特徴とするレンズフレアーの低減方法。
【請求項2】
落射照明系の対物レンズ光学系であって、
対物レンズと反射手段とを具え、
前記対物レンズを構成するレンズ群のレンズ面及び被観察物体の被観察対象領域を除く領域の双方又はいずれか一方で反射されて結像面に入射するフレアー光と、
前記反射手段で反射されて前記結像面に入射する反フレアー光が、
前記結像面において互いに干渉して弱め合う条件を実現できる位置に前記反射手段が設置された構成とされていることを特徴とする対物レンズ光学系。
【請求項3】
対物レンズと反射手段とビームスプリッターとを具える対物レンズ光学系であって、
前記対物レンズは、被観察物体へ照明光を照射するとともに該被観察物体から反射される前記照明光の反射光によって該被観察物体の像を形成する、落射照明による光学装置に用いられる対物レンズであり、
前記反射手段は、当該反射手段に、等位相波面が平面である入射光が入射されて反射される反射光の等位相波面の形状が、前記対物レンズを構成するレンズ群の中で前記被観察物体に最も近い位置のレンズの該被観察物体に面する側のレンズ面に、等位相波面が平面である入射光が入射されて反射される反射光の等位相波面の形状と、等しくなる反射特性を有しており、
前記ビームスプリッターは、前記照明光を前記対物レンズの光軸に平行な方向に前記被観察物体に向けて進むように反射し、かつ前記被観察物体からの反射光を当該対物レンズの光軸に平行な方向に結像面に向けて進むように透過する形態に配置されており、
かつ、前記ビームスプリッターで反射されて前記対物レンズを構成するレンズ群の中で最も前記被観察物体側に配置されるレンズの該被観察物体側に面するレンズ面で反射され、再び前記ビームスプリッターに戻されて前記ビームスプリッターを透過して前記対物レンズの結像面に入射するフレアー光と、前記ビームスプリッターを透過して前記反射手段で反射されて再び前記ビームスプリッターに戻されて反射されて前記対物レンズの前記結像面に入射する反フレアー光とが、互いに前記結像面において干渉して弱め合う関係となる位置に前記反射手段が設置されている
ことを特徴とする対物レンズ光学系。
【請求項4】
前記照明光は、該照明光に含まれるスペクトル波長のうち一番強度の強いスペクトル成分の波長がλmである白色光であって、
前記フレアー光と前記反フレアー光との前記結像面における、波長がλmであるスペクトル成分の位相差がλm/2に等しくなるように前記反射手段が設置されていることを特徴とする請求項3に記載の対物レンズ光学系。
【請求項5】
前記照明光は、波長がλである単色光であって、
前記フレアー光と、前記反フレアー光との前記結像面における位相差が、(λ/2)×(2N-1)に等しくなるように前記反射手段が設置されていることを特徴とする請求項3に記載の対物レンズ光学系。
ここで、Nは1以上の整数である。
【請求項6】
前記結像面における、前記フレアー光の強度と前記反フレアー光の強度とが等しくなるように、前記反射手段の反射率が設定されていることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の対物レンズ光学系。
【請求項7】
前記結像面における、前記フレアー光の強度と前記反フレアー光の強度とが等しくなるように、前記フレアー光もしくは前記反フレアー光の強度を調整する光強度調整器を具えることを特徴とする請求項3から5のいずれか一項に記載の対物レンズ光学系。
【請求項8】
前記反射手段は、前記ビームスプリッターに対して、前記対物レンズを構成するレンズのうち前記被観察物体に最も近い位置のレンズの該被観察物体に面する側のレンズと、形状及び素材が同一であるレンズの、前記対物レンズを構成するレンズのうち前記被観察物体に最も近い位置のレンズの該被観察物体に面する側のレンズ面に対応するレンズ面であることを特徴とする請求項3〜7のいずれか一項に記載の対物レンズ光学系。
【請求項9】
第1対物レンズ及び第2対物レンズの2つの対物レンズと、ビームスプリッターとを具える対物レンズ光学系であって、
前記第1及び第2対物レンズは、被観察物体へ照明光を照射するとともに該被観察物体からの反射光によって該被観察物体の像を形成する、落射照明による光学装置に用いられる対物レンズであり、
前記第1対物レンズと前記第2対物レンズとは相似形状の対物レンズであり、
前記ビームスプリッターは、前記照明光を前記第1対物レンズの光軸に平行な方向に前記被観察物体に向けて進むように反射し、かつ前記被観察物体からの反射光を前記第1対物レンズの光軸に平行な方向に結像面に向けて進むように透過する形態に配置されており、
前記第2対物レンズは、前記第1対物レンズを構成するレンズ群の中で前記被観察物体に最も近い位置のレンズに対応するレンズが、前記ビームスプリッターに対して最も離れた位置に配置されており、
かつ、前記ビームスプリッターで反射されて前記第1対物レンズを構成するレンズ群の中で最も前記観察物体側に配置されるレンズの該被観察物体側に面するレンズ面で反射され、再び前記ビームスプリッターに戻されて前記ビームスプリッターを透過して前記第1対物レンズの結像面に入射するフレアー光と、前記ビームスプリッターを透過して前記第2対物レンズを構成するレンズ群の中で、前記ビームスプリッターに対して最も離れた位置のレンズの前記ビームスプリッターと反対側に面するレンズ面で反射されて再び前記ビームスプリッターに戻されて反射され、前記第1対物レンズの前記結像面に入射する反フレアー光が、互いに前記結像面において干渉して弱め合う関係となる位置に前記第2対物レンズが設置されている
ことを特徴とする対物レンズ光学系。
【請求項10】
前記照明光は、該照明光に含まれるスペクトル波長のうち一番強度の強いスペクトル成分の波長がλmである白色光であって、
前記フレアー光と前記反フレアー光との前記結像面における、波長がλmであるスペクトル成分の位相差がλm/2に等しくなるように前記第2対物レンズが設置されていることを特徴とする請求項9に記載の対物レンズ光学系。
【請求項11】
前記照明光は、波長がλである単色光であって、
前記フレアー光と、前記反フレアー光との前記結像面における位相差が、(λ/2)×(2N-1)に等しく設定されていることを特徴とする請求項9に記載の対物レンズ光学系。
ここで、Nは1以上の整数である。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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