説明

封入粒状固体の調製方法

エポキシ官能性架橋剤およびカルボン酸官能性分散剤を用いて封入粒状固体を調製するための方法であって、該架橋剤が1個以上のオリゴマー分散基を有し、および/または該分散剤が少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する、前記方法。得られる固体は、例えばインクジェット印刷用インクに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体媒体中に分散している封入粒状固体の調製方法、単離された封入粒状固体、およびインク、特にインクジェット印刷用インクにおけるそのような固体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くのインク、練り顔料、塗料などは、粒状固体を液状ビヒクルに均一に分散させるのに有効な分散剤を必要とする。液状ビヒクルは、極性の高い液体(例えば水)から極めて無極性の液体(例えばトルエン)までさまざまであることができる。公知の分散剤は、極性がある範囲内にある液状ビヒクルでしか有効に機能しない傾向にある。そのような極性の範囲外では、粒状固体は典型的には凝結する。したがって、ある範囲の分散剤が、さまざまな極性の液体媒体のために開発されてきた。水と相当量の有機溶媒を含む液体媒体中で粒状固体をうまく安定化することができる分散剤の調製は、とりわけ難しい。
【0003】
従来の分散剤は、物理的相互作用により粒状固体の表面上で吸着される。多くの従来の分散剤は、より強く吸着する材料により粒状固体の表面から容易に置き換わられる可能性があり、このことが分散の不安定化および凝結をもたらす可能性があるという難点を有する。
【0004】
粒状固体を架橋分散剤中に封入することにより、従来の分散剤に付随する問題点に部分的に取り組むことができる。粒状固体を架橋分散剤で封入する方法は、典型的には液体媒体中で実施される。架橋しうる分散剤を、液体媒体中に分散している粒状固体と混合することができる。その後、分散剤は粒状固体の表面上に吸着する。つぎに、該分散剤を、架橋剤を用いてその架橋しうる基を介して架橋すると、分散剤を粒状固体上に“固定する”ことができる。このようなアプローチは、米国特許第6262152号、WO00/20520、JP1997104834、JP1999−152424およびEP732381に記載されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
われわれは、公知の封入アプローチには不十分な点があることを見いだした。具体的には、得られる封入粒状固体は、インクジェット印刷機用インクでの使用に求められる安定性を有さないことが多い。沈殿物質はすべて微細ノズルを容易に詰まらせる可能性があるので、安定性はインクジェット印刷用インクにおいて非常に重要である。
【0006】
われわれはまた、架橋を達成するために採用されることが多い高い温度(100℃を超える)が、粒状固体を不安定化し、凝集および/または凝結させうることを見いだした。このことは、封入粒状固体の平均粒径における増大をもたらし、望ましくない凝集および/または凝結材料を形成させる可能性さえある。このように、微細分散している安定な封入粒状固体の調製には実際的な問題点がある。WO00/20520に記載されているイソシアネート/ヒドロキシル法またはEP732381に記載されているイソシアネート/アミン法は、100℃未満の温度で架橋を達成する例として言及することができる。しかしながら、一部のイソシアネートは、望ましくない毒性学的側面を有すると考えられる。
【0007】
したがって、イソシアネート架橋剤を用いずに封入粒状固体分散液を調製するための方法であって、微細分散している安定な封入粒状固体を提供することができる方法の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点に従って、液体媒体中に分散している封入粒状固体の調製方法であって、粒状固体と液体媒体の存在下で分散剤を架橋剤で架橋し、これにより粒状固体を架橋分散剤中に封入することを含む方法を提供し、ここにおいて、
a)分散剤は少なくとも1個のカルボン酸基を有し;そして
b)架橋剤は少なくとも2個のエポキシ基を有し;
ここにおいて、架橋剤は1個以上のオリゴマー分散基を有し、および/または分散剤は少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する。
【0009】
一態様において、カルボン酸とエポキシ基の架橋反応は、100℃未満の温度および少なくとも6のpHで実施する。
粒状固体は、液体媒体に対し不溶性である無機もしくは有機粒状固体材料またはその混合物を含むことができ、そのような材料またはその混合物であることが好ましい。
【0010】
適した粒状固体の例は、無機および有機顔料;塗料およびプラスチック材料用の増量剤および充填剤;液体媒体中の分散染料および水溶性染料、ここにおいて、該液体媒体は前記染料を溶解しない;蛍光増白剤;溶媒染浴(solvent dyebath)、インクおよび他の溶媒施用系用の織物用助剤;粒状セラミック材料;磁性粒子(例えば、磁気記録媒体に使用するためのもの);殺生剤;農薬;および医薬品である。
【0011】
粒状固体は、好ましくは着色剤、より好ましくは顔料である。
好ましい粒状顔料は、有機顔料、例えば、Colour Index (1971)の第3版およびその後続の改訂版および補遺の“Pigments”という見出しの章に記載されているクラスの顔料のいずれかである。有機顔料の例は、アゾ(ジスアゾおよび縮合アゾを含む)、チオインジゴ、インダンスロン、イソインダンスロン、アンサンスロン、アントラキノン、イソジベンゾアントロン、トリフェンジオキサジン、キナクリドンおよびフタロシアニン系列、特に銅フタロシアニンおよびその核ハロゲン化誘導体、そして同様に、酸性、塩基性および媒染染料のレーキからのものである。カーボンブラックは、無機であるとみなされることが多いが、その分散性においてより有機顔料のように挙動し、適切な粒状固体の他の例である。好ましい有機顔料は、フタロシアニン、特に銅フタロシアニン顔料、アゾ顔料、インダンスロン、アンサンスロン、キナクリドンおよびカーボンブラック顔料である。
【0012】
好ましい無機粒状固体としては、以下のものが挙げられる:増量剤および充填剤、例えば、タルク、カオリン、シリカ、重晶石および白亜;粒状セラミック材料、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、窒化ケイ素、窒化ホウ素、炭化ケイ素、炭化ホウ素、ケイ素−アルミニウム混合窒化物およびチタン酸金属;粒状磁性材料、例えば、遷移金属、特に鉄およびクロムの磁性酸化物、例えば、ガンマ−Fe、Feおよびコバルトをドープした酸化鉄、酸化カルシウム、フェライト、特にバリウムフェライト;ならびに、金属粒子、特に、金属の鉄、ニッケル、コバルトおよびそれらの合金。
【0013】
本発明の方法を用いて、インク、例えばインクジェット印刷用インクに用いるための封入粒状固体分散液を作成する場合、顔料は、シアン、マゼンタ、黄色または黒色顔料であることが好ましい。粒状固体は、単一の化学種であるか、2種以上の化学種を含む混合物(例えば、2種以上の異なる顔料を含む混合物)であることができる。すなわち、2種以上の異なる粒状固体を本発明の方法に用いることができる。
【0014】
液体媒体は無極性であってもよいが、極性であることが好ましい。“極性”液体媒体は一般に、Journal of Paint Technology、Vol. 38、1966の269頁のCrowley et alによる“A Three Dimensional Approach to Solubility”という表題の記事に記載されているように、中程度から強い結合を形成することができる。極性液体媒体は一般に、上記記事で定義されているように、5以上の水素結合数を有する。
【0015】
適した極性液体媒体の例としては、エーテル、グリコール、アルコール、ポリオール、アミドおよび特に水が挙げられる。
液体媒体は水であるか水を含むことが好ましい。これは、水が、とりわけ安定で微細な封入粒状固体をもたらす傾向にあるためである。液体媒体は、好ましくは1〜100重量%、より好ましくは10〜100重量%、特に20〜90重量%、さらに特に30〜80重量%の水を含む。残余分は、1種以上の極性有機液体であることが好ましい。
【0016】
好ましい無極性液体媒体としては、非ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、トルエンおよびキシレン);ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよびクロロトルエン);非ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、6個以上の炭素原子を含有する線状および分岐状脂肪族炭化水素であり、完全または部分的に飽和しているものを含む);ハロゲン化脂肪族炭化水素(例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロホルム、トリクロロエタン);天然無極性液体(例えば、植物油、ヒマワリ油、アマニ油、テルペンおよび脂肪酸グリセリド);および、それらの組合わせが挙げられる。
【0017】
液体媒体は、極性または無極性液体であることができる液体の混合物を含むことができる。液体媒体の少なくとも1成分は極性液体であることが好ましく、より好ましくは、液体媒体の成分はすべて極性液体である。
【0018】
液体媒体が1種を超える液体を含む場合、前記液体媒体は、多相液体(例えば、液−液エマルション)の形にあってもよいが、単一相(均質)液体の形にあることが好ましい。
水以外の極性液体は、水混和性であることが好ましい。
【0019】
好ましい態様において、液体媒体は、水および水混和性有機液体を含む。そのような液体媒体は、広い範囲の架橋剤を溶解および/または分散する助けとなるので好ましい。
液体媒体中に包含されるのに好ましい水混和性有機液体としては、C1−6−アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;水混和性エーテル、好ましくは、テトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール、好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコール、ならびにオリゴ−およびポリ−アルキレングリコール、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくは、グリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)−エトキシ]−エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドンが挙げられる。
【0020】
好ましくは、液体媒体は、水と2種以上、特に2〜8種の水混和性有機液体を含む。
特に好ましい水混和性有機液体は、環状アミド、特に2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドンおよびN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;および、ジオールのモノ−C1−4−アルキルおよびC1−4−アルキルエーテル、より好ましくは、2〜12個の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノール;およびグリセロールである。
【0021】
水と水混和性有機液体の重量比は、両方とも液体媒体中に存在する場合、好ましくは99:1〜5:95、より好ましくは95:5〜50:50、特に95:5〜75:25である。
【0022】
液体媒体は、架橋剤に対しても分散剤に対しても反応性を示さないことが好ましい。したがって、液体媒体は、アミン、イミン、チオール、カルボン酸またはエポキシ基を有する成分を実質的に含まないことが好ましい。
【0023】
分散剤は、1分子あたり好ましくは2個以上、特に10個以上のカルボン酸基を有する。
カルボン酸基(1個以上)は、遊離酸(−COOH)の形または塩の形で分散剤中に存在することができる。塩は、例えば、金属イオン、アンモニウム、置換アンモニウム、第四級アンモニウムまたはピリジニウム塩であることができる。
【0024】
分散剤は、好ましくはポリマーを含み、より好ましくはポリマーである。分散剤は、ポリウレタン、ポリエステル、またはより好ましくはポリビニル分散剤を含むことが好ましく、これらであることがより好ましい。分散剤は、一緒に物理的にブレンドするか化学的に結合する(例えば、グラフトする)ことができるポリマーの組合わせであることができる。
【0025】
カルボン酸基(1個以上)は、少なくとも1個のカルボン酸基を含有するモノマーを共重合することにより、ポリマー分散剤中に組み込むことが好ましい。好ましいポリビニル分散剤は、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、より好ましくはメタクリル酸、アクリル酸およびベータカルボキシエチルアクリレートからの少なくとも1個のモノマー残基を含む。
【0026】
ポリウレタンの場合、カルボン酸基を組み込む好ましい方法は、封鎖(hindered)カルボン酸基を有するジオールを共重合することによる。そのようなジオールの好ましい例は、ジメチロールプロパン酸である。
【0027】
少なくとも1個のカルボン酸基を有するポリエステルは、ジオールモノマーを過剰のジカルボン酸モノマーと反応させることにより調製することができる。カルボン酸基(1個以上)は、封鎖カルボン酸基を有するジオール(上記のようなもの)をジカルボン酸モノマーと共重合することにより組み込むこともできる。
【0028】
分散剤中のカルボン酸基(1個以上)の機能は、主として架橋剤中のエポキシ基と架橋することである。これに加えて、未反応カルボン酸基はすべて、凝結および凝集に対し最終封入粒状固体を安定化する助けとなることができる。カルボン酸基は、極性媒体、さらに特に水性媒体中での安定化基として有効である。
【0029】
カルボン酸基(1個以上)だけが、液体媒体中に分散している最終封入粒状固体を安定化するための基である場合、架橋反応が終了した後に未反応カルボン酸基が確実に残るように、エポキシ基に対しモル過剰のカルボン酸基を有することが好ましい。一態様において、カルボン酸基のモルとエポキシ基のモルの比率は、好ましくは10:1〜1.1:1、より好ましくは5:1〜1.1:1、特に好ましくは3:1〜1.1:1である。
【0030】
分散剤は、他の安定化基を有していてもよい。安定化基の選択およびそのような基の量は、液体媒体の性質にかなりの程度まで依存する。安定化基は、性質において親水性である(例えば、極性媒体の場合)か、性質において疎水性である(例えば無極性媒体の場合)かのいずれかである傾向にある。
【0031】
好ましいポリマー分散剤は、親水性および疎水性モノマーの両方から誘導されるものである。
親水性モノマーは、イオン性または非イオン性基であることができる親水基を含むモノマーである。イオン性基はカチオン性であることができるが、好ましくはアニオン性である。カチオン性基およびアニオン性基の両方が分散剤中に存在すると、両性の安定化をもたらすことができる。好ましいアニオン性基は、フェノキシ、スルホン酸、硫酸、ホスホン酸、ポリリン酸およびリン酸基であり、これらは、先に記載したように、遊離酸または塩の形にあってもよい。好ましいカチオン性基は、第四級アンモニウム、ベンザルコニウム、グアニジン、ビグアニジンおよびピリジニウムである。これらは、水酸化物、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物およびフッ化物などの塩の形にあることができる。好ましい非イオン性基は、グルコシド、サッカライド、ピロリドン、アクリルアミド、そして特に、ヒドロキシ基およびポリ(アルキレンオキシド)基、より好ましくはポリ(エチレンオキシド)またはポリ(プロピレンオキシド)基、特に、式−(CHCHO)Hまたは−(CHCHO)1−4−アルキル[式中、nは3〜200(好ましくは4〜20)である]の基である。分散剤は、単一の非イオン性基、分散剤の全体にわたるいくつかの非イオン性基、または非イオン性基を含有する1種以上のポリマー鎖を含有することができる。ヒドロキシ基は、ポリマー鎖、例えば、ポリビニルアルコール、ポリヒドロキシル官能性アクリル系誘導体およびセルロースを用いて組み込むことができる。エチレンオキシ基は、ポリエチレンオキシドのようなポリマー鎖を用いて組み込むことができる。
【0032】
疎水性モノマーは、疎水基を含むモノマーである。
好ましい疎水基は、おもに、炭化水素、フルオロカーボン、ポリC3−4−アルキレンオキシ、および、3個未満の親水基を含む、より好ましくは親水基を含まないアルキルシロキサンである。疎水基は、疎水性モノマーを伴う側基であるか該モノマーを伴う鎖状であることができるC−C50鎖またはプロピレンオキシドであることが好ましい。
【0033】
ポリマー分散剤の場合、これはホモポリマーであってもよいが、より好ましくはコポリマーである。
ポリマー分散剤は、ランダムポリマー(統計的に短いブロックまたはセグメントを有するもの)を含むことが好ましいが、ブロックまたはグラフトポリマー(より長いブロックまたはセグメントを有するもの)を含むことができる。ポリマー分散剤は、交互ポリマーを含むこともできる。ポリマー分散剤は、分岐状または星形(star)であることができるが、好ましくは線状である。ポリマー分散剤は2個以上のセグメント(例えば、ブロックおよびグラフトコポリマー)を有することができるが、好ましくはランダムである。
【0034】
ポリマー分散剤が2個以上のセグメントを有する態様では、互いに関して少なくとも1個のセグメントが疎水性であり、少なくとも1個のセグメントが親水性であることが好ましい。親水性および疎水性セグメントの好ましい作成方法は、親水性モノマーおよび疎水性モノマーをそれぞれ共重合することによる。分散剤が少なくとも1個の親水性セグメントおよび少なくとも1個の疎水性セグメントを有する場合、カルボン酸基(1個以上)を、疎水性セグメント、親水性セグメント、またはその両方に位置させることができる。
【0035】
ポリビニル分散剤は、任意の適切な手段により作成することができる。ポリビニル分散剤の好ましい作成方法は、ビニルモノマー、特に、(メタ)アクリレート、および芳香族基を含有するビニルモノマー、例えば、ビニルナフタレン、特にスチレン系モノマーのラジカル重合である。適したラジカル重合法としては、懸濁重合、溶液重合、分散重合、および好ましくは乳化重合が挙げられるが、これらに限定されない。ビニル重合は、水を含む液体組成物中で実施することが好ましい。
【0036】
好ましいポリビニル分散剤は、1種以上の(メタ)アクリレートモノマーからの残基を含む。
ポリビニル分散剤はコポリマーであることが好ましい。
【0037】
親水性および疎水性モノマーの両方の残基を含有するコポリビニル分散剤は、実質的にセグメントを含まないことが好ましい。コポリビニル分散剤は例えばラジカル共重合法により作成することができ、該法において、セグメントの長さは、統計的に非常に短いか、事実上存在しないことが多い。このような方法は、しばしば“ランダム”重合とよばれる。セグメントを有するコポリビニル分散剤は、リビング重合、そして特に基移動重合、原子移動重合、マクロモノマー重合、グラフト重合およびアニオンまたはカチオン重合などの重合法により作成することができる。
【0038】
適した親水性ビニルモノマーとしては、非イオン性およびイオン性ビニルモノマーが挙げられる。
好ましい非イオン性ビニルモノマーは、サッカライド、グルコシド、アミド、ピロリドン、ならびに特にヒドロキシおよびエトキシ基を含有するものである。
【0039】
非イオン性ビニルモノマーの好ましい例としては、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ビニルピロリドン、エトキシル化(メタ)アクリレートおよび(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0040】
適したイオン性ビニルモノマーはカチオン性であってもよいが、好ましくはアニオン性である。
好ましいアニオン性ビニルモノマーは、遊離酸の形にあるか塩であってもよいリン酸基および/またはスルホン酸基を含むものである。好ましい例は、スチレンスルホン酸、ビニルベンジルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アクリロイルオキシアルキルスルホン酸(例えば、アクリロイルオキシメチルスルホン酸、アクリロイルオキシエチルスルホン酸、アクリロイルオキシプロピルスルホン酸およびアクリロイルオキシブチルスルホン酸)、メタクリロイルオキシメチルスルホン酸、メタクリロイルオキシエチルスルホン酸、メタクリロイルオキシプロピルスルホン酸およびメタクリロイルオキシブチルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−アルキルアルカンスルホン酸(例えば、2−アクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および2−アクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸)、2−メタクリルアミド−2−アルキルアルカンスルホン酸(例えば、2−メタクリルアミド−2−メチルエタンスルホン酸、2−メタクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸および2−メタクリルアミド−2−メチルブタンスルホン酸)、モノ−(アクリロイルオキシアルキル)ホスフェート(例えば、モノ(アクリロイルオキシエチル)ホスフェートおよびモノ(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフェート)、ならびにモノ(メタクリロイルオキシアルキル)ホスフェート(例えば、モノ(メタクリロイルオキシエチル)ホスフェートおよびモノ(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフェート)である。
【0041】
好ましいカチオン性ビニルモノマーは、第四級アミン、ピリジン、グアニジンおよびビグアニジン基を含むものである。
好ましい疎水性ビニルモノマーは親水基を有さない。好ましい疎水性ビニルモノマーとしては、C1−20−ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、ブタジエン、スチレンおよびビニルナフタレンが挙げられる。特に好ましいのは、C4−20−ヒドロカルビル(メタ)アクリレート、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ラウリルアクリレートおよびステアリルアクリレートである。とりわけ好ましい疎水性ビニルモノマーは、2−エチルヘキシルメタクリレートである。これら疎水性ビニルモノマー中のヒドロカルビル基は、分岐状であってもよいが、好ましくは線状である。
【0042】
ポリエステルは典型的に、ジカルボン酸をジオールでエステル化することにより作成される。カルボン酸の代わりに、酸塩化物、酸無水物、または酸のアルキル(典型的にはメチルまたはエチル)エステルを用いることができる。少量の一官能性および/または三以上の官能性のモノマーを用いることができる。カルボン酸および/またはアルコールの混合物を用いることができる。ポリエステルの他の調製経路は、カプロラクトンのような環状ラクトンの周知の開環である。カプロラクトンを重合するとジオールを得ることができ、これを、ポリエステルまたはポリウレタンの合成の両方に用いることができる。
【0043】
ポリエステルの作成に好ましい疎水性モノマーは、エステル、酸、酸塩化物無水物および環状ラクトン、ならびにC1−50−ヒドロカルビレン、より好ましくはC4−50−ヒドロカルビレン、特にC6−20−ヒドロカルビレン残基を含有するアルコールである。これらのヒドロカルビレン残基は、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレンおよび/またはアルカリレン残基を含むことが好ましい。疎水性モノマーは、ポリエステルの重合に必要とされるもの以外の親水基を含有しないことが好ましい。他の好ましい疎水性モノマーとしては、C3−4−アルキレンオキシ(特にプロピレンオキシ)、フルオロカーボンおよびシロキサンを含有するものが挙げられる。疎水性ウレタン、ポリカーボネートおよびポリビニルは、それらをポリエステルに組み込むことができるように、カルボン酸またはヒドロキシ基を用いて調製することができる。
【0044】
ポリエステルの作成に好ましい親水性モノマーは、未反応のヒドロキシ基および/もしくは酸基、またはエチレンオキシ基を含有する。ポリエチレンオキシジオールが特に好ましい。
【0045】
ポリエステルの作成に適した親水性モノマーは、ヒドロキシおよび/またはカルボン酸基を伴うスルホン酸、例えば、イオン化スルホネート基を有する芳香族ジカルボン酸を含むことができる。ナトリウム−5−スルホイソフタル酸(SSIPA)がとりわけ好ましい。エステル縮合反応を受けやすい基を2個以上有し、スルホン酸基を1個以上有する他の有用なモノマーは、少なくとも1個のスルホン酸基を有するジヒドロキシアリールモノマーである。
【0046】
親水性残基を導入するための他の方法は、保護された親水基(シリル化ヒドロキシル基など)を含有するポリエステルモノマーを組み込むことであり、該親水基は、重合後に脱保護する。保護/脱保護の利点は、分子量および残りの酸/ヒドロキシ官能基を別個に制御できる点である。
【0047】
ポリウレタンは、ジイソシアネートとジオールの縮合により作成することが好ましい。少量の一官能性および/または三以上の官能性のモノマーを用いることができる。イソシアネートおよび/またはアルコールの混合物を用いることができる。
【0048】
ポリウレタンの作成に好ましい疎水性モノマーとしては、イソシアネートと、C1−50−ヒドロカルビレン、より好ましくはC4−50−ヒドロカルビレン、特にC6−20−ヒドロカルビレン残基を含むアルコールが挙げられる。ヒドロカルビレン残基は、アルキレン、シクロアルキレン、アリーレン、アラルキレンおよび/またはアルカリレン残基を含むことができる。疎水性モノマーは、ウレタンの重合に必要とされるもの以外の親水基を含有しないことが好ましい。ポリウレタンを作成するための他の好ましい疎水性モノマーは、シロキサンおよびフルオロカーボン基を含有する。疎水性ポリカーボネート、ポリエステルおよびポリビニルは、それらをポリウレタンに組み込むことができるように、イソシアネートまたはヒドロキシ基を用いて調製することができる。
【0049】
適した疎水性イソシアネートの例としては、エチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−ジフェニル−メタンジイソシアネートおよびその水素化誘導体、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素化誘導体、ならびに1,5−ナフチレンジイソシアネートが挙げられる。ポリイソシアネートの混合物、とりわけ、トルエンジイソシアネートの異性体混合物またはジフェニルメタンジイソシアネートの異性体混合物(またはそれらの水素化誘導体)、そしてまた、ウレタン、アロファネート、尿素、ビウレット、カルボジイミド、ウレトンイミンまたはイソシアヌレート残基の導入により修飾されている有機ポリイソシアネートを用いることができる。
【0050】
好ましい疎水性アルコールは、C3−4−アルキレンオキシ(特にプロピレンオキシ)、フルオロカーボン、シロキサン、ポリカーボネート、およびC1−20−ヒドロカルビルポリ(メタ)アクリレート残基を含有する。
【0051】
ポリウレタンを作成するための疎水性ジオールの好ましい例としては、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、プロピレンオキシジオール、ポリカプロラクトンからのジオール、ポリバレロラクトンからのジオール、ポリC1−20−アルキル(メタ)アクリレートジオール、シロキサンジオール、フルオロカーボンジオール、およびアルコキシル化ビスフェノールAジオールが挙げられる。
【0052】
ポリウレタンの作成に好ましい親水性モノマーは、エチレンオキシ、スルホン酸、リン酸、または第四級アンモニウム基を含有する。スルホン酸基を含有するモノマーの好ましい例は、ビス(2−ヒドロキシエチル)−5−ナトリウムスルホイソフタレートである。第四級アンモニウム基を含有するそのようなモノマーの好ましい例は、第四級アンモニウム塩ジオール、例えばジメタノールジエチルアンモニウムブロミドである。酸性および/または第四級アンモニウム基は、先に記載したように塩の形にあってもよい。エチレンオキシ基を含有する好ましいポリウレタンモノマーは、ポリエチレンオキシドジオール、および特にEP317258に記載されているようなポリオキシアルキレンアミンであり、該特許の教示を本明細書中で援用する。
【0053】
親水性残基は、得られた親水性ポリウレタンが重合後に未反応ヒドロキシ基を有するようにイソシアネート基に対し過剰のヒドロキシ基を用いることにより、ポリウレタンに組み込むことができる。また、シリル化ヒドロキシ基などの保護された親水基を含有するモノマーを用いることもできる。前記保護基は、重合後に脱保護することができる。
【0054】
分散剤は、封入粒状固体の調製方法に用いられる液体媒体、そしてまた、該封入粒状固体が用いられるあらゆる最終目的組成物(例えばインク)に用いられる液状ビヒクルに適合するように選ぶことが好ましい。したがって、例えば、封入粒状固体が水性インクジェット印刷用インクに用いられる場合、分散剤はおもに親水性の特徴を有することが好ましい。同様に、封入粒状固体が油を基剤とした(非水性)塗料またはインクに用いられる場合、分散剤はおもに疎水性の特徴を有することが好ましい。
【0055】
架橋剤が1個以上のオリゴマー分散基を有する態様において、分散剤は、特徴において分散剤であり続けるという条件で、および該分散剤が、架橋剤で効果的に架橋するのに十分なカルボン酸基を有するという条件で、あらゆる酸価を有することができる。
【0056】
架橋剤が1個以上のオリゴマー分散基を有する態様において、分散剤は少なくとも125mgKOH/gの酸価を有することが好ましい。
すべての態様において、分散剤の酸価(AV)は、好ましくは130〜320、より好ましくは135〜250mgKOH/gである。われわれは、そのような酸価を有する分散剤が、改善された安定性を示す封入粒状固体を結果として提供することを見いだした。この改善された安定性は、インクジェット印刷に用いられる要求の厳しい液状ビヒクルにおいて特に有用であり、ここにおいて、前記液状ビヒクルは、より分散しにくい粒状固体を含み、そして、オリゴマー分散基を少ししか有さない、特にオリゴマー分散基を有さない架橋剤を含む。
【0057】
分散剤は、好ましくは500〜100000、より好ましくは1000〜50000、特に1000〜35000の数平均分子量を有する。分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(“GPC”)により測定することが好ましい。
【0058】
分散剤は液体媒体に完全に溶解する必要はない。すなわち、完全に透明な非散乱性溶液は必須ではない。分散剤は、界面活性剤様のミセル状に凝集して、液体媒体中にわずかに濁った溶液をもたらしてもよい。分散剤は、分散剤の一部がコロイドまたはミセル相を形成する傾向にあるようなものであってもよい。分散剤は、液体媒体中に、静置中に沈降または分離することのない均一で安定な分散液をもたらすことが好ましい。
【0059】
分散剤は液体媒体に実質的に溶解して、透明または濁った溶液をもたらすことが好ましい。
好ましいランダムポリマー分散剤は透明な組成物をもたらす傾向にあるが、2個以上のセグメントを有するあまり好ましくないポリマー分散剤は、液体媒体中に上記濁った組成物をもたらす傾向にある。
【0060】
本発明の重要な特徴は、分散剤を架橋前に粒状固体上に吸着させ、これにより比較的安定な分散液を形成する点である。その後、この分散液を、架橋剤を用いて架橋する。とりわけ、この予備吸着および予備安定化は、本発明とコアセルベーションアプローチの差異を示すものであり、ここにおいて、該アプローチではポリマーまたはプレポリマー(分散剤ではない)を粒状固体、液体媒体および架橋剤と混合し、得られた架橋ポリマーは架橋中または架橋後にのみ粒状固体上に沈殿する。
【0061】
分散剤が少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する態様において、架橋剤はオリゴマー分散基を有さなくてもよいが、架橋剤は1個以上のオリゴマー分散基を有することが好ましい。
【0062】
本明細書中で用いるオリゴマーという用語は、いかなる分子量上限にも、反復単位に関する上限数にも限定されるものではない。
われわれは、意外にも、1個以上のオリゴマー分散基を有する架橋剤が、得られる封入粒状固体の安定性を増大させることを見いだした。この増大した安定性は、インクジェット印刷に用いられる要求の厳しい液状ビヒクルにおいて特に有用であり、ここにおいて、前記液状ビヒクルは、より分散しにくい粒状固体を含み、および/または、125mgKOH/g未満の酸価を有する分散剤を含む。
【0063】
オリゴマー分散基は、好ましくはポリアルキレンオキシド、より好ましくはポリC2−4−アルキレンオキシド、特にポリエチレンオキシドであるか、これを含む。ポリアルキレンオキシド基は、得られる封入粒状固体の安定性を改善するステアリン安定化(stearic stabilisation)を提供する。
【0064】
ポリアルキレンオキシドは、好ましくは3〜200個、より好ましくは5〜50個のアルキレンオキシド、特に5〜20個のアルキレンオキシド反復単位を含有する。
すべての態様において、少なくとも2個のエポキシ基を有する好ましい架橋剤は、エピクロロヒドリン誘導体である。
【0065】
好ましい架橋剤は2個のエポキシ基を有する。
2個のエポキシ基を有しオリゴマー分散基を有さない好ましい架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテルおよびポリブタジエンジグリシジルエーテルである。
【0066】
2個のエポキシ基および1個以上のオリゴマー分散基を有する好ましい架橋剤は、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルである。
【0067】
3個以上のエポキシ基を有しオリゴマー分散基を有さない好ましい架橋剤は、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリトリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテルおよびトリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルである。
【0068】
分散剤がカルボン酸基を1個だけ含む場合、架橋剤は、少なくとも10個のエポキシ基と所望により1個以上のオリゴマー分散基とを含むポリマーであることが好ましい。ポリマー架橋剤の好ましい例は、グリシジル(メタ)アクリレートを含むポリビニルコポリマーである。
【0069】
架橋剤は、特に液体媒体が水性である場合、液体媒体に溶解することが好ましい。より好ましくは、架橋剤は、1重量%の架橋剤を含有する水と架橋剤との混合物が25℃の温度において溶液の形にあるような水への溶解度を有する。
【0070】
われわれは、液体媒体に実質的に溶解しない架橋剤は、粒状固体の凝結または凝集を引き起こす傾向にあることを見いだした。
架橋剤は、架橋剤を溶解するのを助ける1個以上のエチレングリコール基を有することが好ましい。
【0071】
分散剤中のカルボン酸基(1個以上)を架橋するために、1種以上の架橋剤を用いることができる。
1種を超える架橋剤を用いる場合、これらは同数または異なる数のエポキシ基を有することができる。
【0072】
架橋剤上に存在する架橋基のみがエポキシ基であることが好ましい。
したがって、一態様において、本発明は、液体媒体中に分散している封入粒状固体の調製方法であって、粒状固体と液体媒体の存在下で分散剤を架橋剤で架橋し、これにより粒状固体を架橋分散剤中に封入することを含む方法を提供し、ここにおいて、
a)分散剤は少なくとも1個のカルボン酸基を有し;
b)架橋剤は少なくとも2個のエポキシ基および1個以上のエチレングリコール基を有し;そして、
c)カルボン酸とエポキシ基の架橋反応は、100℃未満の温度および少なくとも6のpHで実施する。
【0073】
他の態様において、架橋剤は1個以上のオリゴマー分散基を有し、分散剤は少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する。われわれは、架橋剤中のオリゴマー分散基と少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する分散剤の両方からの複合効果により、液状ビヒクル中で優れた安定性を示す封入粒状固体が得られることを見いだした。
【0074】
カルボン酸基とエポキシ基の反応を架橋の手段として用いることができることは公知である。しかしながら、そのような反応は、ルイス酸を用いて、および/または低いpH(5未満)および約150℃の温度で行われる傾向にある。われわれは、意外にも、エポキシ/カルボン酸架橋反応を少なくとも6のpHで達成する場合、反応を100℃未満の温度で実施することができることを見いだした。驚いたことに、そのような架橋反応は、水であるか、または水を含む液体媒体中で実施することもできる。塩基性pHの水はエポキシ基を加水分解する傾向にあり、架橋反応の有効性を大きく低下させると予想されることを考えれば、これも予想外のことである。
【0075】
架橋では低い温度が好ましい。これは、液体媒体中での粒状固体の凝結および粒径成長がより低レベルになるためである。架橋反応は、好ましくは10℃〜90℃、より好ましくは30℃〜70℃の温度で実施する。
【0076】
架橋反応に関するpHは、好ましくは7〜14、より好ましくは7〜12、特に好ましくは8〜11である。
架橋反応が開始する前は、分散剤中のカルボン酸基は、先に記載したように、塩および/または遊離酸の形にあることができる。しかしながら、100℃未満の温度でカルボン酸基とエポキシ基の反応をより良好に達成するためには、われわれは、カルボン酸基の少なくとも一部が塩の形で存在することが重要であることを見いだした。塩の形は、架橋前にpH(本発明の第1の観点に従った方法に存在するすべての成分のpH)を少なくとも6に調整することにより得ることができる。
【0077】
pH調整は、任意の適した塩基を加えることにより行うことができる。好ましい塩基としては、金属の水酸化物、酸化物、炭酸塩、ならびにアミン、置換アミンおよびアルカノールアミンが挙げられる。特に好ましい塩基は、アルカリ金属水酸化物、アンモニア、トリエチルアミンおよびトリエタノールアミンである。特に好ましいアルカリ金属水酸化物は水酸化カリウムである。
【0078】
架橋反応の時間は、温度とpHにある程度まで依存する。しかしながら、好ましい時間は1〜24時間、より好ましくは1〜8時間である。
好ましくは、架橋は、粒状固体、分散剤、架橋剤および液体媒体を混合することを含む方法により実施する。
【0079】
成分は、任意の適切な方法、例えば、振盪、撹拌などにより混合することができる。
架橋は、以下の成分を規定の割合で含む組成物を混合することを含む方法により実施することが好ましい:
a)30〜99.7部、好ましくは50〜97部の液体媒体;
b)0.1〜50部、好ましくは1〜30部の粒状固体;
c)0.1〜30部、好ましくは1〜30部の分散剤;および
d)0.001〜30部、好ましくは0.01〜10部の架橋剤;
ここにおいて、部は重量基準であり、部の合計a)+b)+c)+d)=100である。
【0080】
粒状固体、液体媒体および分散剤は、任意の順序で、または同時に混合することができる。混合物を機械的処理に付して、例えば、ボールミル粉砕、ビーズミル粉砕、グラベルミル粉砕(gravel milling)によるか、より複雑な技術、例えば超音波処理、ミクロ流動化(microfluidizing)(MicrofluidicsTM機を用いて)によるか、分散液が形成するまで流体力学的キャビテーション(例えばCaviProTM装置を用いて)を用いて、粒状固体の粒径を所望のサイズに減少させてもよい。粒状固体を、独立して、または液体媒体および/もしくは分散剤との混合物中で処理して、その粒径を減少させてもよい。その後、残りの成分(1種または複数)を加えて、本発明に適した混合物を提供することができる。
【0081】
所望の場合、混合物を濾過または遠心分離して、十分に分散していない、または大きすぎる粒状材料を架橋前に除去してもよい。詳細には、本方法は、分散剤、粒状固体および液体媒体を含む混合物を、架橋前に、好ましくは10ミクロン未満、より好ましくは5ミクロン未満、特に1ミクロン未満の孔径を有するフィルターに通して濾過することを含むことが好ましい。
【0082】
粒状固体の機械的処理中に架橋剤が存在する場合、これは、固体の粒径が十分に減少する前に分散液の望ましくない予備架橋を引き起こす可能性がある。粒状固体を分散剤および液体媒体の存在下で粉砕する場合、温度は40℃以下、特に30℃以下であることが好ましい。
【0083】
架橋剤は、粒状固体、分散剤および液体媒体を含む混合物に、粒状固体の粒径を減少させるためのあらゆる機械的処理の後に加えることが好ましい。架橋は架橋剤を加えている最中に生じることができるが、架橋剤の添加終了後に架橋の少なくとも大部分が生じることがより好ましい。これは、組成物の全体にわたり架橋剤がより均一に分散するのを促進し、より均一な架橋をもたらす。
【0084】
架橋剤を粒状固体、分散剤および液体媒体を含む混合物に加えている最中の架橋を抑制するためには、架橋剤を前記混合物に40℃未満、特に30℃未満の温度で加えることが好ましい。
【0085】
本方法は、架橋剤を添加する前の粒状固体のZ平均粒径より最大50%大きなZ平均粒径を有する封入粒状固体をもたらすことが好ましい。
封入粒状固体は、好ましくは500nm未満、より好ましくは10〜500nm、特に10〜300nmのZ平均粒径を有する。従来、500nm未満のZ平均サイズを有する粒状固体は、効果的に安定化するのが難しい。このサイズの粒状固体は、塗料およびインク、特にインクジェット印刷用インクにとりわけ有用である。
【0086】
Z平均粒径は、公知のあらゆる方法により測定することができるが、好ましい方法は、MalvernTMまたはCoulterTMから入手可能な光相関分光法(photo correlation spectroscopy)による。
【0087】
本発明の方法は、中程度の温度で、良好な毒性学的側面を有する架橋剤を用いて実施することができる。本方法は、低減したレベルの凝集および/または凝結および粒状固体の粒径における最小限の成長をもたらす。したがって、この方法は、小さな粒径が重要な用途でとりわけ有用である。例えば、インクジェット印刷において、大きな粒子は、印刷ヘッドに用いられる極小ノズルを詰まらせる可能性があるため望ましくない。さらに、低い温度を用いることができることにより、温度に敏感な粒状固体、例えば、医薬品および農薬の封入および分散が可能になる。
【0088】
封入工程中に形成しうるあらゆる少量の凝集および凝結材料は、濾過し、フィルター上に残った乾燥した凝結および凝集材料の重量を測定することにより、測定することが好ましい。このために、1ミクロンの孔径を有するフィルターを用いることが好ましい。加熱および架橋反応の開始前に、本発明の第1の観点に従った方法に用いる成分を予め濾過することも好ましい。このフィルターも同様に、1ミクロンの孔径を有することが好ましい。このようにして、例えば粒状固体の不十分な機械的分散に由来する材料も測定するのではなく、架橋反応に起因する凝集および凝結材料のみを測定する。
【0089】
光学顕微鏡法を用いて、視覚的定性評価か、または定量的なデジタル画像の取込(capture)および解析のいずれかにより、封入反応中の凝集および/または凝結の程度を測定することも可能である。
【0090】
本発明の第2の観点に従って、本発明の第1の観点の方法により得ることができる、または得られた液体媒体中に分散している封入粒状固体を提供する。
得られた封入粒状固体はそれ自体が粒状である。すなわち、本発明は、乾燥中に起こる架橋の形、または成分を不動の固体または半固体にゲル化する架橋の形には関連しない。
【0091】
実質的にすべての封入粒状固体粒子が、架橋分散剤中に封入された単一の固体粒子を含むことが好ましい。
所望の場合、本発明はさらに、封入粒状固体を液体媒体から単離する段階を含むことができる。これは、例えば、好ましくは液体媒体を蒸発させることにより、または、あまり好ましくないが、封入粒状固体を沈殿または凝結させた後濾過することにより、実現する。
【0092】
好ましい蒸発方法としては、凍結乾燥、噴霧乾燥および撹拌乾燥が挙げられる。好ましい沈殿および凝結方法としては、金属塩の添加および遠心分離が挙げられる。
本発明の第3の観点に従って、本発明の第2の観点に従った液体媒体中に分散している封入粒状固体から封入粒状固体を単離する方法により得ることができる、または得られた封入粒状固体を提供する。
【0093】
本発明の第1の観点に従った方法により調製した封入粒状固体は、液状ビヒクルと封入粒状固体を含む組成物を提供するのに有用である。“液状ビヒクル”という用語は、最終用途の配合物、例えば、インク、塗料などの中に存在する液体(1種または複数)をさす。
【0094】
封入粒状固体は液状ビヒクル中に分散していることが好ましい。より好ましくは、前記分散液は実質的に均一である。
したがって、本発明の第4の観点に従って、液状ビヒクルと、本発明の第1の観点に従った方法により得られた、または得ることができる封入粒状固体とを含む組成物を提供する。
【0095】
該組成物は、1種以上の液体を該方法の生成物に加えることにより、および/または該方法の生成物を濃縮することにより、および/または該方法の生成物を単離し、単離した封入粒状固体を液状ビヒクルと混合することにより、調製することができる。好ましくは、該組成物は、1種以上の望ましい液状ビヒクル成分を、本発明の第1の観点に従った方法から得られる液体媒体中に分散している封入粒状固体に加えることにより調製する。この後者の方法では、(“乾燥”状態で)封入粒状固体は単離されず、より小さな粒径の封入粒状固体が液状ビヒクルと一緒にもたらされる傾向にある。
【0096】
好ましくは、上記組成物はインクであり、ここにおいて、粒状固体は着色剤、より好ましくは顔料である。
液状ビヒクルは、封入粒状固体の調製方法で用いられる液体媒体と同一または異なっていることができる、すなわち、場合によっては、本発明の方法の生成物は、形はどうあれ液体成分を変化させることを必要とせず、インクなどの最終用途に直接有用であることができる。
【0097】
液状ビヒクルが高い比率の水を含み、所望の組成物(例えばインク)を作成するために必要な他の液体は本発明の第1の観点に従った方法を実施した後に加えることが、しばしば望ましい。
【0098】
インクジェット印刷用組成物の場合、液状ビヒクルが、水と、好ましくは水混和性有機液体である有機液体の両方を含むことが好ましい。好ましい水混和性有機液体は先に記載したとおりである。水と水混和性有機液体の好ましい比率は、先に記載したとおりである。
【0099】
好ましい組成物は、
a)本発明の第1の観点に従った方法により得ることができる、または得られた封入粒状固体を0.1〜50部、より好ましくは1〜25部;
b)水および/または水混和性有機液体を含む液状ビヒクルを50〜99.9部、より好ましくは99〜75部;
含み、ここにおいて、すべての部は重量基準であり、成分a)およびb)の和は100部になる。
【0100】
本発明の組成物は、特に粒状固体が顔料である場合、インクジェット印刷用インクでの使用、または該インクとしての使用にとりわけ適している。
インクジェット印刷の場合、本発明の第4の観点に従った組成物は、25℃の温度において、好ましくは30mPa.s未満、より好ましくは20mPa.s未満、特に10mPa.s未満の粘度を有する。
【0101】
インクジェット印刷の場合、本発明の第4の観点に従った組成物は、25℃の温度において、20〜65ダイン/cm、より好ましくは25〜50ダイン/cmの表面張力を有することが好ましい。
【0102】
本発明のインクジェット印刷用組成物は、インクジェット印刷用インクでの使用に適した追加的成分、例えば、粘度調整剤、pH緩衝剤(例えば、1:9のクエン酸/クエン酸ナトリウム)、腐敗抑制剤、殺生剤、染料、および/またはコゲーションを低減する添加剤を含むこともできる。
【0103】
本発明の第5の観点に従って、像を基材上に印刷するための方法であって、本発明の第4の観点に従った組成物を、該基材に、好ましくはインクジェット印刷機を用いて施用することを含む方法を提供する。
【0104】
本発明の第6の観点に従って、本発明の第4の観点に従った組成物を用いて好ましくはインクジェット印刷機により印刷された紙、プラスチックフィルムまたは繊維材料を提供する。好ましい紙は、普通紙か、または、酸性、アルカリ性もしくは中性特性を有することができる処理紙である。市販の紙の例としては、Photo Paper Pro (PR101)、Photo Paper Plus (PP101)、Glossy Photo Paper (GP401)、Semi Gloss Paper (SG101)、Matte Photo Paper (MP101)(すべてCanonから入手可能);Premium Glossy Photo Paper、Premium Semi gloss Photo Paper、ColorLifeTM、Photo Paper、Photo Quality Glossy Paper、Double-sided Matte Paper、Matte Paper Heavyweight、Photo Quality Inkjet Paper、Bright White Inkjet Paper、Premium Plain Paper(すべてSeiko Epson Corpから入手可能);HP All-In-One Printing Paper、HP Everyday Inkjet Paper、HP Everyday Photo Paper Semi-glossy、HP Office Paper、HP Photo Paper、HP Premium High-Gloss Film、HP Premium Paper、HP Premium Photo Paper、HP Premium Plus Photo Paper、HP Printing Paper、HP Superior Inkjet Paper(すべてHewlett Packard Inc.から入手可能);Everyday Glossy Photo Paper、Premium Glossy Photo Paper(ともにLexmark Inc.から入手可能);Matte Paper、Ultima Picture Paper、Premium Picture Paper、Picture Paper、Everyday Picture Paper(Kodak Inc.から入手可能)が挙げられる。プラスチックフィルムは、不透明または透明であることができる。オーバーヘッドプロジェクター用スライドとしての使用に適した透明プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、セルロースジアセテートおよびセルローストリアセテートフィルムが挙げられる。
【0105】
本発明の第7の観点に従って、チャンバーと本発明の第4の観点に従った組成物とを含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、前記組成物が該チャンバー内に存在する前記インクジェット印刷機用カートリッジを提供する。
【0106】
本発明の方法により得ることができる、または得られた封入粒状固体は、封入粒状固体、液状ビヒクル、ならびにバインダーを含む表面コーティングおよび塗料に用いることもできる。粒状固体は、着色剤、増量剤または充填剤であることが好ましい。インクと同様に、塗料は、単離した封入粒状固体を用いて作成することができるが、より好ましくは、本発明の第1の観点に従った方法から得られた液体媒体中に分散している封入粒状固体を用いる。
【0107】
したがって、本発明の第8の観点に従って、本発明の第1の観点に従った方法により得ることができる、または得られた、封入された粒状の着色剤、増量剤または充填剤;バインダー;および液状ビヒクルを含む組成物を提供する。バインダーは、液体媒体が蒸発除去された後、および/または基材中に吸収された後に、組成物を結合することができるポリマー材料である。
【0108】
適したバインダーとしては、天然および合成ポリマーが挙げられる。好ましいバインダーとしては、ポリ(メタ)アクリレート、スチレン系ポリマー(polystyrenics)、ポリエステル、ポリウレタン、アルキド、多糖類(例えばセルロース)およびタンパク質(例えばカゼイン)が挙げられる。バインダーは、組成物中に、封入粒状固体の重量に基づき、好ましくは100%より多く、より好ましくは200%より多く、さらにより好ましくは300%、もっとも好ましくは400%より多く存在する。
【0109】
本発明を以下の実施例によりさらに例示する。ここにおいて、すべての部およびパーセンテージは、特記しない限り重量基準である。
【実施例】
【0110】
分散剤(1)の調製
モノマー供給組成物を、メタクリル酸(172部)、メタクリル酸メチル(478部)、メタクリル酸2−エチルヘキシル(350部)およびイソプロパノール(375部)を混合することにより調製した。開始剤供給組成物を、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(22.05部)およびイソプロパノール(187.5部)を混合することにより調製した。
【0111】
イソプロパノール(187.5部)を反応器内で80℃に加熱し、継続的に撹拌し、窒素ガス雰囲気でパージした。モノマー供給組成物および開始剤供給組成物を反応器内に徐々に供給し、その間、内容物を撹拌し、温度を80℃に維持し、窒素雰囲気を維持した。モノマー供給物および開始剤供給物を両方とも、2時間かけて反応器内に供給した。反応器の内容物をさらに4時間にわたり80℃で維持した後、25℃に冷却した。その後、得られた分散剤を、減圧下での回転式蒸発により反応器の内容物から単離した。これを分散剤(1)とした。分散剤(1)は、11865の数平均分子量、112mgKOH/gの酸価、29225の重量平均分子量、およびGPCにより測定して2.5の多分散性を有するアクリルコポリマーであった。
【0112】
分散剤(2)〜(4)の調製
段階(i)
モノマー供給組成物(2)〜(4)を、表1の各行の成分を混合することにより調製した:
【0113】
【表1】

【0114】
段階(ii)
開始剤供給組成物(2)〜(4)を、表2の各行の成分を混合することにより調製した:
【0115】
【表2】

【0116】
段階(iii)
分散剤(2)〜(4)を調製するための重合。
分散剤(2)〜(4)を、段階(i)で調製したモノマー供給組成物(2)〜(4)および段階(ii)で調製した開始剤供給組成物(2)〜(4)を分散剤(1)の調製で用いたものの代わりに用いた点を除き、分散剤(1)とまったく同様に調製し単離した。
【0117】
GPCにより立証された分散剤(2)〜(4)の分子量は、表3に挙げたとおりであった;
【0118】
【表3】

【0119】
分散剤溶液(1)〜(4)
分散剤(1)〜(4)(150部)をそれぞれ水(470部)に溶解し、水酸化ナトリウム水溶液で中和して、約9のpHを有する水溶液を得た。これにより、約24重量%の分散剤を含有する分散剤溶液(1)〜(4)が得られた。
【0120】
練り顔料(1)
粒状固体(ClariantからのC.I.ピグメントブルー15:3、60部)を分散剤溶液(1)(340部)と混合した。混合物をBlackleyミルで3時間微粉砕した。これにより、170nmのZ平均粒径、8.7のpH、および15重量%の顔料含量の粒状固体を含み、練り顔料(1)と名付けた練り顔料が得られた。
【0121】
練り顔料(2)〜(8)
粒状固体(C.I.ピグメントブルー15:3またはカーボンブラック)を、表4に記載したような分散剤溶液(2)〜(4)の1種と混合した。その後、この混合物に水を加えて400部にした。混合物を垂直式Blackleyビーズミルで数時間微粉砕した。
【0122】
【表4】

【0123】
表4に挙げた分散剤の量は、分散剤溶液ではなく正味の分散剤の量である。したがって、例えば、正味の分散剤1部は、20重量%の分散剤を含有する分散剤溶液5部に相当する。
【0124】
微粉砕後、最終的なZ平均粒径を測定した。結果を表4の最終列に示す。
実施例1−封入粒状固体分散液(1)
約526の数平均分子量を有するポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(すなわち架橋剤)(Aldrichにより供給されており、カタログ番号47、569−6を有するもの、0.229部)を、約25℃の温度で練り顔料(1)(50部)に徐々に加えた後、混合物を加熱して、40〜50℃の温度で6時間撹拌した。架橋反応中の混合物のpHは9.5であった。得られた封入粒状固体分散液(1)は170nmのZ平均粒径を有しており、これはまったく増大しなかった。
【0125】
実施例2〜8−封入粒状固体分散液(2)〜(8)
封入粒状固体分散液(2)〜(8)を、練り顔料1の代わりに表5に示した練り顔料を用い、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量および架橋反応中のpHが表5に挙げたとおりであった点を除き、封入粒状固体分散液(1)とまったく同様に調製した:
【0126】
【表5】

【0127】
得られた封入粒状固体のZ平均粒径、および練り顔料から封入粒状固体へのZ平均粒径における増大の%は、表5に示すとおりであった。すべての場合において、封入粒状固体を形成する架橋反応は、粒状固体のZ平均粒径にわずかな増大しかもたらさなかった。
【0128】
封入粒状固体分散液および練り顔料の安定性の試験
封入粒状固体分散液(2)〜(8)および練り顔料(2)〜(8)を、各分散液または練り顔料(正味の粒状固体を3部含有する)を、ブチルセロソルブTM(10部)、ブチルカルビトールTM(16部)、ピロリドン(5部)、界面活性剤(1部)、および全体で100部にするのに足る水と混合することにより、それらの安定性について試験した。このようにして形成した混合物は、かなり大量の水混和性有機液体(インク全体に基づき約31重量%)を含有するインクジェット印刷用インクであった。
【0129】
【表6】

【0130】
表6に示すように、封入粒状固体分散液(2)〜(8)を含有するインクジェット印刷用インクは、封入していない練り顔料を含有するインクに比べ、貯蔵後のZ平均粒径においてはるかに小さな増大を示した。したがって、封入粒状固体分散液を含有するインクは非常に安定である。
【0131】
実施例9−安定性に対する酸価(AV)の影響に関する検討
この実施例では、インクの安定性に対する酸価の影響を調査した。安定性に対し酸価が有しうるあらゆる差異を明らかにするために、この実施例で選んだ特定の顔料は、これまでの実施例で用いた顔料に比べはるかに安定化しにくいものである。
【0132】
それぞれ154および112のAVを有する分散剤9および10を以下のように調製した:
モノマー供給組成物を、メタクリル酸MAA、メタクリル酸メチルMMA、メタクリル酸2−エチルヘキシル2EHMAおよびイソプロパノールを混合することにより調製した。開始剤供給組成物を、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)AZBNおよびイソプロパノール(187.5部)を混合することにより調製した。モノマーと開始剤の重量部を表7に挙げる:
【0133】
【表7】

【0134】
イソプロパノール(187.5部)を反応器内で80℃に加熱し、継続的に撹拌し、窒素ガス雰囲気でパージした。モノマー供給組成物および開始剤供給組成物を反応器内に徐々に供給し、その間、内容物を撹拌し、温度を80℃に維持し、窒素雰囲気を維持した。モノマー供給物および開始剤供給物を両方とも、2時間かけて反応器内に供給した。反応器の内容物をさらに4時間にわたり80℃で維持した後、25℃に冷却した。その後、分散剤を、減圧下での回転式蒸発により反応器の内容物から単離した。両分散剤のMwおよびMnおよび酸価を表7に挙げる。
【0135】
分散剤溶液(9)(AV154)
分散剤9(150部)を水に溶解し、水酸化カリウム水溶液で中和して、pH10.1の水溶液を得、これを分散剤溶液(9)とした。ポリマー含量は30.6%であった。
【0136】
分散剤溶液(10)(AV112)
分散剤10(150部)を水に溶解し、水酸化カリウム水溶液で中和して、pH10.9の水溶液を得、これを分散剤溶液(10)とした。ポリマー含量は21.2%であった。
【0137】
顔料分散液(9)
ピグメントブルー15:4水性ペースト(Sun Chemicalsからのもの、260部)を、分散剤溶液(9)(147部)および水(192部)と混合した。混合物をMini-Zedaビーズミルで3時間微粉砕した。分散液は100nmの粒径(d90)を有していた。該分散液は、15重量%の顔料含量を有していた。
【0138】
顔料分散液(10)
ピグメントブルー15:4水性ペースト(Sun Chemicalsからのもの、260部)を、分散剤溶液(10)(212部)および水(127部)と混合した。混合物をMini-Zedaビーズミルで3時間微粉砕した。分散液は115nmの粒径(d90)を有していた。該分散液は、15重量%の顔料含量を有していた。
【0139】
封入粒状固体分散液(9)および(10)
ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(架橋剤、0.35部)を約25℃の温度で各顔料分散液(70部)に徐々に加えた後、混合物を加熱して、50℃の温度で6時間撹拌した。分散液の粒径、pHおよび粘度を表8に示す。分散液はすべて、表8に示すように、低い粘度および小さな粒径を有していた:
【0140】
【表8】

【0141】
インクジェットインクにおける安定性の評価
封入粒状固体分散液(9)および(10)を、表9に記載した配合を有するインク9および10に仕上げた:
【0142】
【表9】

【0143】
インク9および10を、60℃で1週間の貯蔵後に粒径成長または粘度をモニタリングすることにより、安定性について評価した。粒径または粘度における変化が小さいほどインクは安定である。この評価の結果を表10に示す:
【0144】
【表10】

【0145】
上記表は、154mgKOH/gのAVの分散剤から誘導されるインク9が、112mgKOH/gのAVの分散剤から誘導されるインク10に比べ優れた安定性を有していたことを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体媒体中に分散している封入粒状固体の調製方法であって、粒状固体と液体媒体の存在下で分散剤を架橋剤で架橋し、これにより粒状固体を架橋分散剤中に封入することを含み、ここにおいて、
a)分散剤は少なくとも1個のカルボン酸基を有し;そして
b)架橋剤は少なくとも2個のエポキシ基を有し;
ここにおいて、架橋剤は1個以上のオリゴマー分散基を有し、および/または分散剤は少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する、
前記調製方法。
【請求項2】
分散剤が少なくとも125mgKOH/gの酸価を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分散剤が135〜250mgKOH/gの酸価を有する、請求項1または2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
オリゴマー分散基が、ポリアルキレンオキシドであるか、ポリアルキレンオキシドを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ポリアルキレンオキシドが3〜200個のアルキレンオキシド反復単位を含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポリアルキレンオキシドが5〜20個のアルキレンオキシド反復単位を含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ポリアルキレンオキシドが、ポリエチレンオキシドであるか、ポリエチレンオキシドを含む、請求項4〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
カルボン酸とエポキシ基の架橋反応を、100℃未満の温度および少なくとも6のpHで実施する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
架橋剤が液体媒体に溶解する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
架橋剤が2個のエポキシ基を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
架橋反応を30℃〜70℃の温度で実施する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
架橋反応を7〜12のpHで実施する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1に記載の液体媒体中に分散している封入粒状固体の調製方法であって、
a)分散剤が少なくとも1個のカルボン酸基を有し;
b)架橋剤が少なくとも2個のエポキシ基および1個以上のエチレングリコール基を有し;そして、
c)カルボン酸とエポキシ基の架橋反応を、100℃未満の温度および少なくとも6のpHで実施する、
前記方法。
【請求項14】
架橋を、以下の成分:
a)30〜99.7部の液体媒体;
b)0.1〜50部の粒状固体;
c)0.1〜30部の分散剤;および
d)0.001〜30部の架橋剤;
ここにおいて、部は重量基準であり、部の合計a)+b)+c)+d)=100である、を含む組成物を混合することを含む方法により実施する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、または得られた、液体媒体中に分散している封入粒状固体。
【請求項16】
得られた封入粒状固体を液体媒体から単離するさらなる段階を含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法により得られた、または得ることができる封入粒状固体。
【請求項18】
液状ビヒクルと、請求項1〜14および16のいずれか一項に記載の方法により得られた、または得ることができる封入粒状固体とを含む組成物。
【請求項19】
25℃の温度において30mPa.s未満の粘度を有する、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
液状ビヒクルが、水と水混和性有機液体を99:1〜5:95の重量比で含む、請求項18または19に記載の組成物。
【請求項21】
請求項18、19または20のいずれか一項に記載の組成物を基材に施用することを含む、像を基材上に印刷するための方法。
【請求項22】
印刷を、インクジェット印刷機を用いて実施する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
請求項18、19または20のいずれか一項に記載の組成物を用いて印刷された紙、プラスチックフィルム、または繊維材料。
【請求項24】
チャンバーと組成物を含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該組成物が該チャンバー内に存在し、該組成物が請求項18、19または20のいずれか一項で請求したとおりである、前記インクジェット印刷機用カートリッジ。
【請求項25】
粒状固体が着色剤である、請求項18〜20のいずれか一項に記載の組成物。

【公表番号】特表2008−524369(P2008−524369A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546163(P2007−546163)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004767
【国際公開番号】WO2006/064193
【国際公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】