説明

封止用治具

【課題】複数のワークをマグネットによって適切に固定することが可能な封止用治具を提供する。
【解決手段】封止用治具は、複数のワークの下方の対向する位置に配置された複数のマグネットから構成され、隣のマグネットと異極同士が隣り合うように縦方向及び横方向に複数のマグネットが配置された第1のマグネット群と、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列の外側に配置された複数のマグネットから構成され、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うように複数のマグネットが配置された第2のマグネット群とを有する。上記の封止用治具によれば、ワークが配置されている領域全体の磁力を概ね均一にすることができるため、ワークが反転したり、立ってしまったりする不具合の発生を効果的に防止し、適切にワークを固定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを封止する際に、マグネットを用いて複数のワークを固定する封止用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水晶素子や半導体素子などを有するワークを溶接などによって封止(パッケージ封止)することが行われている。一般的には、マグネットなどによってワークを固定した状態で、上記した封止を行っている。例えば、特許文献1には、複数のマグネットが配置された封止用治具を用いて複数のワークを固定する技術が記載されている。その他に、特許文献2及び3に、マグネットを用いた封止用治具が記載されている。
【0003】
【特許文献1】実開平6−48983号公報
【特許文献2】特開平8−162556号公報
【特許文献3】特開平8−306813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した特許文献1に記載した技術では、封止用治具の端列に配列したマグネットの隣にマグネットが存在しないため、端列を構成するマグネットの磁界がアンバランスになってしまう場合があった。そのため、小型、薄型、或いは細長に構成されたワークを用いた場合に、端列を構成するマグネット上に配置されたワークが立ってしまったり、回転してしまったりする可能性があった。また、特許文献2及び3に記載された技術においても、複数のワークを適切に固定することができなかった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は上記のようなものが例として挙げられる。本発明は、複数のワークをマグネットによって適切に固定することが可能な封止用治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、複数のワークを封止する際に、前記複数のワークを固定する封止用治具は、前記複数のワークが載置された状態において、前記複数のワークの下方の対向する位置に配置された複数のマグネットから構成され、隣のマグネットと異極同士が隣り合うように縦方向及び横方向に前記複数のマグネットが配置された第1のマグネット群と、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列の外側に配置された複数のマグネットから構成され、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うように前記複数のマグネットが配置された第2のマグネット群と、を備えることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の好適な実施形態では、複数のワークを封止する際に、前記複数のワークを固定する封止用治具は、前記複数のワークが載置された状態において、前記複数のワークの下方の対向する位置に配置された複数のマグネットから構成され、隣のマグネットと異極同士が隣り合うように縦方向及び横方向に前記複数のマグネットが配置された第1のマグネット群と、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列の外側に配置された複数のマグネットから構成され、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うように前記複数のマグネットが配置された第2のマグネット群と、を備える。
【0008】
上記の封止用治具は、複数のワークを封止する際に、複数のワークを固定するために利用される。封止用治具は、複数のマグネットから構成される第1のマグネット群と第2のマグネット群とを備えて構成される。第1のマグネット群は、複数のワークの下方の対向する位置に配置された複数のマグネットから構成され、隣のマグネットと異極同士が隣り合うように縦方向及び横方向に複数のマグネットが配置されている。これにより、第1のマグネット群における端列の内側に位置するマグネットによる磁力を概ね均一にすることができる。
【0009】
また、第2のマグネット群は、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列の外側に配置された複数のマグネットから構成され、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うように前記複数のマグネットが配置されている。これにより、第1のマグネット群のN−S極軸方向の端列のマグネットにおける磁界が、その内側に配列されたマグネットと同等な磁界になるので、この端列のマグネットにおける両極の磁界を等しくすることができる。即ち、第2のマグネット群を設けることにより、第1のマグネット群のN−S極軸方向の端列における磁界がアンバランスになってしまうことを効果的に抑制することができる。したがって、上記の封止用治具によれば、ワークが配置されている領域全体の磁力を概ね均一にすることができるため、ワークが反転したり、立ってしまったりする不具合の発生を効果的に防止し、適切にワークを固定することができる。
【0010】
上記の封止用治具の一態様では、前記第2のマグネット群は、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するマグネットと同じピッチで前記マグネットが配置されている。これにより、第1のマグネット群の端列のマグネットにおける両極の磁界を効果的に均一にすることが可能となる。
【0011】
上記の封止用治具の他の一態様では、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向と垂直方向の端列の外側に配置された複数のマグネットから構成され、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の垂直方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うように前記複数のマグネットが配置された第3のマグネット群を更に有する。N−S極軸に平行な端列を構成するマグネットはその分N極からS極への磁力が多く、ワーク10に付与される磁力が増加する傾向にあるため、第3のマグネット群を更に設けることによって、ワークに付与される磁力を全てのワークにおいて均一にすることが可能となる。
【0012】
好ましくは、前記マグネットは、N極とS極とが形成するN−S極軸方向が、封止用治具における水平方向に概ね一致するように配置される。
【実施例】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例について説明する。なお、以下では、レーザ溶接装置を用いてワークを溶接する例について説明する。
【0014】
[レーザ溶接装置の構成]
図1は、本実施例に係るレーザ溶接装置100の概略構成を示す図である。レーザ溶接装置100は、主に、レーザビーム出射装置35と、ガルバノヘッド36と、トレイ20を備える。レーザ溶接装置100は、トレイ20上に載置された複数のワーク10に対して溶接を行う装置である。図1中の白抜き矢印は、レーザビームの進行する方向を示している。なお、実際には、ワーク10はトレイに形成された溝内に収納されているが、図1では、説明の便宜上、トレイの溝を省略している。
【0015】
レーザビーム出射装置35は、レーザビームLB1を出射し、このレーザビームLB1をガルバノヘッド36に対して照射する。ガルバノヘッド36は、レーザビームLB1を受光し、当該レーザビームLB1を照射する位置をミラーなどによって変更する。そして、ガルバノヘッド2から出射されたレーザビームLB2は、ワーク10に照射される。これにより、ワーク10の溶接が行われる。
【0016】
トレイ20には、複数のワーク10が載置される。ワーク10は、板状のリッド10aと、箱状のパッケージ10bと、電子部品(不図示)と、を備える。例えば、リッド10aは、Niメッキを施したコバール材や、42アロイ材や、ステンレス材や、Agロークラッド材などの金属材料で構成されている。パッケージ10bは、リッド10aと接触する面(シール面)に、例えばAuなどによってメッキを施したセラミック材料で構成される。
【0017】
また、トレイ20は、本実施例に係る封止用治具46上に載置される。封止用治具46は複数のマグネットを備えて構成され、マグネットの磁力をリッド10aに対して付与する。これにより、封止溶接時に、リッド10aをパッケージ10bに対して固定すると共に、ワーク10自体をトレイ20に対して固定する。
【0018】
[封止用治具の構成]
次に、本実施例に係る封止用治具46の構成について、図2乃至図4を用いて説明する。
【0019】
ここで、本実施例に係る封止用治具46について簡単に説明する。本実施例に係る封止用治具46は、複数のワーク10が載置された状態において、複数のワーク10のそれぞれの下方の対向する位置に配置された複数のマグネット(以下、「第1のマグネット群」とも呼ぶ。)を有する。第1のマグネット群においては、隣のマグネットと異極同士が隣り合うように縦方向及び横方向に複数のマグネットが配置されている。第1のマグネット群は、主に、ワーク10を固定するために用いられる。
【0020】
また、封止用治具46は、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端に位置するマグネットの列(以下では、マグネット群の端を構成するマグネットの列を「端列」と呼ぶ。)の外側に配置された複数のマグネット(以下、「第2のマグネット群」とも呼ぶ。)を有する。この場合、第2のマグネット群を構成するマグネットの上方の対向する位置にはワーク10は設けられていない。第2のマグネット群は、ワーク10を固定するためとしてではなく、主に、第1のマグネット群における端列に配置されたマグネットの両極の磁界を等しくするために設けられている。更に、封止用治具46は、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向と垂直な方向の端列の外側に配置された複数のマグネット(以下、「第3のマグネット群」とも呼ぶ。)を有する。この場合、第3のマグネット群を構成するマグネットの上方の対向する位置にはワーク10は設けられていない。
【0021】
なお、第1のマグネット群乃至第3のマグネット群は、左右均等な磁性を有するマグネット、言い換えるとN極とS極とが均等なマグネットによって構成される。
【0022】
図2は、図1中の矢印A方向からワーク10、トレイ20、及び封止用治具46を観察した図である。図2に示すように、複数のワーク10は、トレイ20に形成された複数の溝20x内に載置される。例えば、トレイ20には、600個程度のワーク10が載置される。また、トレイ20は、封止用治具46上に載置される。
【0023】
図3は、図2中の切断線B1−B2に沿った、ワーク10、トレイ20、及び封止用治具46の断面図を示している。図3に示すように、封止用治具46は、トレイ20の下方に配置されており、複数のマグネット45a、45bを有して構成される。マグネット45aは、トレイ20が封止用治具46上に載置された状態において、リッド10a及びパッケージ10bに対向する位置に設けられている。即ち、マグネット45aは第1のマグネット群を構成する。詳しくは、マグネット45aは、ワーク10がトレイ20に載置された状態において、ワーク10の中心とマグネット45aの中心が概ね一致するような位置に配置されている。リッド10aは、前述したような金属材料で構成されているため、マグネット45aによって白抜き矢印で示すような磁力を受ける。これにより、リッド10aがパッケージ10bに対して付勢されて、リッド10aはパッケージ10bに対して固定されると共に、リッド10a及びパッケージ10b(ワーク10)はトレイ20に対して固定される。
【0024】
また、マグネット45bは、封止用治具46の端に設けられている。言い換えると、マグネット45bは、前述した第2のマグネット群を構成し、封止用治具46に配置されたマグネットの端列を構成する。マグネット45bの対向するトレイ20上の位置には、ワーク10は配置されていない。そのため、マグネット45bは、ワーク10を固定するための磁力を直接的には付与しない。なお、マグネット45bは、マグネット45aと概ね同一の磁力を有し、概ね同一のサイズを有するマグネットによって構成される。即ち、マグネット45bは、マグネット45aと概ね同一のものが用いられる。
【0025】
図4は、図3中の矢印J方向から封止用治具46を観察した図を示している。封止用治具46は、略平板形状を有しており、複数のマグネット45a、45b、45cが設けられている。この場合、破線領域50内に位置するマグネット45aが第1のマグネット群を構成する。また、破線領域52a、52b内に位置するマグネット45bが第2のマグネット群を構成し、破線領域53a、53b内に位置するマグネット45cが第3のマグネット群を構成する。ワーク10は、破線領域50内にのみ配置されている。言い換えると、破線領域50内のマグネット45aが設けられた位置の上方の対向する位置にのみワーク10が配置されており、破線領域52a、52b、53a、53b内のマグネット45a、45bが設けられた位置の上方の対向する位置にはワーク10は配置されていない。なお、図4中の実線矢印は、マグネット45a、45b、45cにおけるN極とS極とが形成するN−S極軸方向を示している。
【0026】
具体的には、第1のマグネット群は、複数のワーク10が載置された状態において、複数のワーク10の下方の対向する位置に配置されたマグネット45aから構成され、隣のマグネット45aと異極同士が隣り合うように縦方向及び横方向にマグネット45aが配置されている。言い換えると、マグネット45aのN極とS極が隣り合うようにマグネット45aが横方向に配置され、横方向と同様に縦方向にもマグネット45aのN極とS極が隣り合うように配置されている。また、マグネット45aのN極とS極とが形成するN−S極軸方向が封止用治具46の水平方向に概ね一致するように、封止用治具46にマグネット45aが配置されている。このようにマグネット45aを配置することにより、マグネット45aに対向する位置に配置されたワーク10に及ぼす磁力を概ね均一にすることができる。
【0027】
また、第2のマグネット群は、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列の外側に配置された複数のマグネット45bから構成される。第2のマグネット群は、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の両側に一列に、マグネット45aと同じピッチでマグネット45bが配置されて構成される。更に、第2のマグネット群は、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するそれぞれのマグネット45aと異極同士が隣り合うようにマグネット45bが配置されている。即ち、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列と同一の列が、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の2つの端列の外側にそれぞれ配置されている。
【0028】
第3のマグネット群は、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向と垂直方向の端列の外側に配置された複数のマグネット45cから構成される。言い換えると、第3のマグネット群を構成するマグネット45cは、第1のマグネット群のN−S極軸に平行な2つの端列の外側にそれぞれ配置されている。詳しくは、第3のマグネット群は、マグネット45aと同じピッチで、一列にマグネット45cが配置されて構成される。更に、第3のマグネット群は、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の垂直方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うようにマグネット45cが配置されている。なお、マグネット45cも、マグネット45aと概ね同一のものが用いられる。
【0029】
このように、本実施例では、第1のマグネット群におけるマグネット45aはN−S極軸方向が封止用治具46の水平方向に一致するように配置し、常に隣のマグネット45aと異極同士が隣り合うように横方向及び縦方向にマグネット45aを配列している。したがって、第1のマグネット群における端列の内側に位置するマグネット45aによる磁力を概ね均一にすることができる。更に、本実施例では、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列の外側に第2のマグネット群を配置している。そのため、第1のマグネット群のN−S極軸方向の端列のマグネット45aにおける磁界が、その内側に配列されたマグネット45aと同等な磁界になるので、この端列のマグネット45aにおける両極の磁界を等しくすることができる。即ち、第2のマグネット群を設けることにより、第1のマグネット群のN−S極軸方向の端列における磁界がアンバランスになってしまうことを効果的に抑制することができる。
【0030】
以上より、本実施例に係る封止用治具46によれば、ワーク10が配置されている領域全体の磁力を概ね均一にすることができるため、ワーク10がトレイ20上で反転したり、立ってしまったりする不具合の発生を効果的に防止し、適切にワーク10を固定することができる。そのため、本実施例によれば、ワーク10を軽薄短小に構成し、トレイ20におけるワーク10間のピッチを狭くした場合にも、ワーク10を適切に固定することが可能となる。
【0031】
ここで、図5を参照して、比較例に係るワーク10の固定方法を行った場合に発生する不具合について説明する。比較例では、第2のマグネット群を用いないでワーク10を固定する。図5(a)は、図4中の一点鎖線領域55で囲まれた領域を拡大して示した図であり、マグネット45aなどの磁力線を矢印で示している。なお、比較例に係る固定方法を行った場合に発生する不具合を説明するために、ここでは、一点鎖線で示す領域70に配置されたワーク10を例として挙げる。この領域70にワーク10を配置することは、第2のマグネット群を用いないでワーク10を固定することに対応する。本発明に係る実施例では、前述したように、この領域70にはワーク10は配置しない。
【0032】
図5(a)を参照して、まず、マグネット45a、45b、45cの磁力線について説明する。基本的には、ワーク10は、矢印60(内部が網で描かれた矢印)で示す磁力、即ち1つのマグネットから発生されるN極からS極への磁力によって固定される。ここで、マグネット45aの周辺には6方向の磁力線が存在するが、端に配置されたマグネット45b、45cには矢印63(破線で示す矢印)で示す磁力は存在しない。そのため、マグネット45b、45cにおいては、矢印61(内部が斜線で描かれた矢印)の磁力が強くなる傾向にある。なお、N−S極軸に平行な端列についてはマグネット45c上の磁力が増加するので、ワーク10を固定する力が強くなると言える。
【0033】
図5(b)、図5(c)は、領域70にワーク10を配置した場合に生じる不具合を具体的に説明するための図である。前述したように、マグネット45bはN−S極軸方向の端に配置されているため、両極の磁界がアンバランスになる傾向にある。そのため、図5(b)に示すように、矢印63の磁力が強くなると、ワーク10が矢印80で示すように立ってしまうといった不具合が発生する場合がある。更に、マグネット45bは両極の磁界がアンバランスであるため、最初に封止用治具46にトレイ20を搭載する際に、トレイ20の溝20xからワーク10が飛び出して、図5(c)中の矢印81で示すようにワーク10が90度回転してしまうといった不具合が発生する場合もある。
【0034】
本実施例では、前述したように、領域70にワーク10を配置せず、例えば領域70の隣の領域71にワーク10を配置する、言い換えると端に配置されたマグネット45b、45c上にはワーク10を配置しない。即ち、本実施例では、N−S極軸方向の端列を構成するマグネット45bを第2のマグネット群として用い、N−S極軸方向と垂直方向の端列を構成するマグネット45cを第3のマグネット群として用い、これらのマグネット群の対向する位置にはワーク10を配置しない。そのため、複数のワーク10が配置されるマグネット群(第1のマグネット群)の端列のマグネット45aにおける両極の磁界を等しくすることができ、この端列の磁界がアンバランスになってしまうことを抑制することができる。したがって、本実施例に係るワーク10の固定方法によれば、ワーク10がトレイ20上で反転したり、立ってしまったりする不具合の発生を効果的に防止し、適切にワーク10を固定することができる。即ち、本実施例によれば、トレイ20上で反転したり、立ってしまったりする可能性が高い、小型、薄型、或いは細長に構成されたワークを用いた場合にも、適切にワーク10を固定することができる。
【0035】
[変形例]
本発明は、第3のマグネット群を用いて封止用治具を構成することに限定はされない。即ち、第3のマグネット群を用いないで封止用治具を構成しても良い。N−S極軸に平行な端列のマグネットの両極の磁界は概ね等しく、ワーク10を立たせる原因となる磁力が小さいため、第3のマグネット群を用いなくても、前述したような不具合がワーク10に発生する可能性がほとんどないからである。なお、N−S極軸に平行な端列を構成するマグネットはその分N極からS極への磁力(図5中の矢印60に対応する)が多く、ワーク10に付与される磁力が増加する傾向にあるため、ワーク10に付与される磁力を全てのワーク10において均一にする必要がある場合には、第3のマグネット群を設けることが好ましい。
【0036】
本発明は、レーザビームを用いて溶接を行う装置(レーザ溶接装置)に対する適用に限定はされない。本発明は、電子ビームを用いて溶接を行う装置などに対しても適用することができる。
【0037】
以上のように、本実施例に係る封止用治具は、複数のワークが載置された状態において、複数のワークの下方の対向する位置に配置された複数のマグネットから構成され、隣のマグネットと異極同士が隣り合うように縦方向及び横方向に複数のマグネットが配置された第1のマグネット群と、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列の外側に配置された複数のマグネットから構成され、第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うように複数のマグネットが配置された第2のマグネット群と、を備える。これにより、ワークがトレイ上で反転したり、立ってしまったりする不具合の発生を効果的に防止し、適切にワークを固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施例に係るレーザ溶接装置の概略構成を示す図である。
【図2】ワークが載置されたトレイの状態を示す図である。
【図3】ワーク及び封止用治具などの断面図を示す。
【図4】封止用治具におけるマグネットの配置を説明するための図である。
【図5】比較例に係るワークの固定方法を行った場合に発生する不具合を説明するための図である。
【符号の説明】
【0039】
10 ワーク
10a リッド
10b パッケージ
20 トレイ
35 レーザビーム出射装置
36 ガルバノヘッド
45a、45b、45c マグネット
46 封止用治具
100 レーザ溶接装置
LB1、LB2 レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークを封止する際に、前記複数のワークを固定する封止用治具であって、
前記複数のワークが載置された状態において、前記複数のワークの下方の対向する位置に配置された複数のマグネットから構成され、隣のマグネットと異極同士が隣り合うように縦方向及び横方向に前記複数のマグネットが配置された第1のマグネット群と、
前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列の外側に配置された複数のマグネットから構成され、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うように前記複数のマグネットが配置された第2のマグネット群と、を備えることを特徴とする封止用治具。
【請求項2】
前記第2のマグネット群は、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の端列を構成するマグネットと同じピッチで前記マグネットが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の封止用治具。
【請求項3】
前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向と垂直方向の端列の外側に配置された複数のマグネットから構成され、前記第1のマグネット群におけるN−S極軸方向の垂直方向の端列を構成するマグネットと異極同士が隣り合うように前記複数のマグネットが配置された第3のマグネット群を更に有することを特徴とする請求項1又は2に記載の封止用治具。
【請求項4】
前記マグネットは、N極とS極とが形成するN−S極軸方向が水平方向に概ね一致するように配置されることを請求項1乃至3のいずれか一項に記載の封止用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−313543(P2007−313543A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146492(P2006−146492)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(596041928)株式会社パイオニアエフ・エー (38)
【Fターム(参考)】