説明

封着材料

【課題】本発明の目的は、例えば、焼成温度が500℃よりも高い場合であっても、焼成時に表層がビスマス系ガラスに溶け込み難いコーディエライト粉末を作製することにより、焼成時に熱膨張係数が上昇しないとともに、流動性が損なわれない封着材料を提供することである。
【解決手段】ビスマス系ガラス粉末とコーディエライト粉末を含有する封着材料において、コーディエライト粉末が固相反応によって作製されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平面表示装置または電子部品等に好適な封着材料に関するものである。特に、本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)に好適な封着材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から平面表示装置または電子部品等の封着材料として、ガラスが用いられている。ガラスは、樹脂系の接着剤に比べ、平面表示装置または電子部品等の気密性を確保するのに適している。
【0003】
これらのガラスは、その用途に応じて化学耐久性、機械的強度、流動性、電気絶縁性等種々の特性が要求されるが、何れの用途にも共通する特性として、低温で焼成可能であることが挙げられる。それゆえ何れの用途においても、ガラスの融点を下げる効果が極めて大きいPbOを多量に含有した鉛硼酸系ガラス(例えば、特許文献1参照)が広く用いられてきた。
【0004】
しかしながら、最近、鉛硼酸系ガラスに含まれるPbOに対して環境上の問題が指摘されており、鉛硼酸系ガラスからPbOを含まないガラスに代替することが望まれている。
【0005】
鉛硼酸系ガラスの代替候補としてビスマス系ガラスが提案されている(例えば、特許文献2〜4参照)。しかし、これらのビスマス系ガラスは、熱膨張係数等の諸特性において鉛硼酸系ガラスと略同等の特性を有するが、熱的安定性等の特性において、依然として鉛硼酸系ガラスに及ばないのが実情である。
【0006】
ところで、一般的に、封着材料は、ガラス粉末と耐火性フィラー粉末を含有する複合体粉末であり、従来、耐火性フィラーとして低膨張のチタン酸鉛等が使用されてきた。しかし、ガラスの場合と同様にして、耐火性フィラーもPbOを含まない耐火性フィラーに置き換えることが望まれている。例えば、PbOを含有しないフィラー粉末として、コーディエライト(Cordierite)、二酸化スズ、β−ユークリプタイト、ムライト、シリカ、β−石英固溶体、チタン酸アルミ、ジルコン、ウイレマイト等を使用することが検討されている。
【0007】
ビスマス系ガラスと組み合わせて使用する耐火性フィラー粉末は、ビスマス系ガラスと相性がよく、封着材料の焼成時にガラスに失透等を発生させないことが要求される。さらに、耐火性フィラー粉末は、熱膨張係数が低く、且つ封着材料の流動性を阻害しないことも要求される。上記耐火性フィラー粉末の内、これらの要求特性を満足する耐火性フィラー粉末として、コーディエライト、ウイレマイトが挙げられる。特に、コーディエライトは、優れた低膨張特性と有するとともに、低温短時間の焼成で良好な流動性を有するため、注目されている(例えば、特許文献5〜7、非特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開昭63−315536号公報
【特許文献2】特開平8−59294号公報
【特許文献3】特開平10−139478号公報
【特許文献4】特開2006−137637号公報
【特許文献5】特開平7−196339号公報
【特許文献6】特開昭61−168575号公報
【特許文献7】特許第2557326号公報
【非特許文献1】新頭朋子等、「低膨張コーディエライト焼成体の熱膨張制御」、耐火物、日本、1997年、第49巻、第11号、p.611
【非特許文献2】田中正洋等、「コーディエライト組成ガラスの結晶化過程における物性変化」、愛知県瀬戸窯業技術センター報告、日本、1979年、第7号、p.1〜4
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4の段落0009によると、通常、ビスマス系ガラスは、鉛硼酸系ガラスと同様に均質なガラスを得るためには、1000℃以上に加熱して溶解する必要があるが、炉材に耐火煉瓦を使用した場合、このビスマス系ガラスは侵食性が強いために、煉瓦表面からの溶出分(例えばアルカリ金属やジルコニアなど)が増加し、これがガラスの結晶核になって一次焼成(グレーズ工程、仮焼成工程とも称される)時にガラスの結晶化を引き起こす。したがって、ビスマス系ガラスは、耐火物の侵食性が強く、封着材料の焼成時に耐火性フィラー粉末を溶解させやすい特性を有している。
【0009】
また、ビスマス系ガラスは、鉛硼酸系ガラスやスズリン酸系ガラスに比べて、封着材料の焼成時に耐火性フィラー粉末を溶解させやすい性質を有している。特に、耐火性フィラー粉末がコーディエライト粉末であるとき、その傾向が顕著であった。具体的には、ビスマス系ガラスとコーディエライト粉末を含有する封着材料は、例えば、焼成温度が500℃よりも高い場合、コーディエライト粉末の表層がビスマス系ガラスに溶け込み、そのことに起因して、封着材料の熱膨張係数が高くなり、被封着材との熱膨張係数の不整合が発生し、平面表示装置等の気密信頼性を損なう場合があった。また、コーディエライト粉末の溶け込み量が多くなると、封着材料の流動性も低下し、所望の封着温度で封着できなくなる場合があった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、例えば、焼成温度が500℃よりも高い場合であっても、焼成時に表層がビスマス系ガラスに溶け込み難いコーディエライト粉末を作製することにより、焼成時に熱膨張係数が上昇しないとともに、流動性が損なわれない封着材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、本発明者等は、鋭意検討を行なった結果、固相反応により作製したコーディエライト粉末をビスマス系ガラス粉末と組み合わせることで上記問題を解決できることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明は、ビスマス系ガラス粉末とコーディエライト粉末を含有する封着材料において、コーディエライト粉末が固相反応によって作製されていることを特徴としている。なお、コーディエライト粉末の粒界の有無を観察すれば、コーディエライト粉末が固相反応で作製されたことを容易に判別することができる。すなわち、粒界を有するものが固相反応で作製されたものである。
【0012】
耐火性フィラーの作製方法として、結晶化ガラス法と呼ばれる方法が知られている。この結晶化ガラス法は、まず所望の化学組成を有するように調合されたガラス原料を溶融し、成形、粉砕してガラス粉末を作製した後、これらを焼成して結晶化させる方法である。また、従来、コーディエライト粉末の作製方法は、特許文献5〜7、参考文献1、2等から明らかなように、結晶化ガラス法が採用されてきた。この理由は、結晶化ガラス法で作製したコーディエライト粉末は、α型の結晶構造を有するコーディエライト粉末が得られやすく、熱膨張係数が低く、且つ純度が高く均質なコーディエライト粉末を得られやすいからである。更に、特許文献7の実施例3から明らかなように、結晶化ガラスは、焼成後に粉砕がしやすく、その後再加熱することにより、形状が球状に近いコーディエライト粉末が得られやすいからである。なお、コーディエライト粉末の粒子形状が球状であれば、封着材料の流動性が向上する。
【0013】
一方、本発明に係るコーディエライト粉末は、固相反応で作製する。固相反応により耐火性フィラー粉末を作製する方法は、酸化物等の固体原料を所定組成になるように調合した上で、これを焼成した後、得られた焼成体を解砕、粉砕、分級して耐火性フィラー粉末を作製する方法である。詳細なメカニズムは現在調査中であるが、本発明者等は、固相反応で作製したコーディエライト粉末を使用すれば、焼成温度が500℃より高い場合等であっても、コーディエライト粉末の表層がビスマス系ガラスに溶け込み難くなり、その結果、封着材料の熱膨張係数が変動することなく、被封着材との熱膨張係数の不整合を防止し、平面表示装置等の気密信頼性を確実に維持できることを見出した。
【0014】
また、固相反応で作製したコーディエライト粉末を使用すれば、封着材料の流動性を損なうことなく、所望の封着温度で封着できる。その結果、高温焼成による平面表示装置等の使用部材の特性劣化を抑制することができる。
【0015】
第二に、本発明の封着材料は、コーディエライト粉末の平均粒子径D50が5〜25μmであることに特徴付けられる。ここで、本発明でいう「平均粒子径D50」は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値を指す。
【0016】
第三に、本発明の封着材料は、コーディエライト粉末が、固体原料100重量部に対して、平均粒径D50が5μm以下のコーディエライト微粉末を0.1〜10重量部添加してなる混合物の固相反応によって作製されていることに特徴付けられる。
【0017】
本発明者等は、コーディエライト粉末として、平均粒径D50が5μm以下のコーディエライト微粉末を含有している固体原料の固相反応により作製されたものを用いることにより、封着材料の熱膨張係数を低下できるとともに、流動性も向上できることを見出した。これは固体原料においてコーディエライト微粉末が種結晶として働き、コーディエライト結晶の成長に寄与しているものと推定される。
【0018】
第四に、コーディエライト粉末が、固体原料100重量部に対してCuO粉末を0.1〜5重量部添加してなる混合物の固相反応によって作製されていることに特徴付けられる。
【0019】
CuO粉末も、コーディエライト粉末の固体原料として含有させることにより、封着材料の熱膨張係数の低下および流動性の向上の効果を得ることができる。これはCuO粉末が、発生した結晶同士を集結させ、さらに大きな結晶に成長させる働きをしているものと推定される。
【0020】
第五に、本発明の封着材料は、ビスマス系ガラス粉末45〜95体積%、コーディエライト粉末5〜55体積%含有することに特徴付けられる。
【0021】
第六に、本発明の封着材料は、ビスマス系ガラス粉末が、ガラス組成として、下記酸化物換算のモル%表示で、Bi23 20〜50%、B23 10〜40%、ZnO 0〜30%、CuO 0〜20%、Fe23 0〜5%、SiO2 0〜10%、Al23 0〜10%含有することに特徴付けられる。
【0022】
第七に、本発明の封着材料は、実質的にPbOを含有しないことに特徴付けられる。ここで、本発明でいう「実質的にPbOを含有しない」とは、封着材料において、PbOの含有量が重量%で1000ppm以下の場合を指す。
【0023】
第八に、本発明の封着材料は、PDPに使用することに特徴付けられる。
【0024】
第九に、本発明の封着材料は、ビスマス系ガラス粉末とコーディエライト粉末を含有する封着材料において、ビスマス系ガラス粉末のガラス転移点が400℃以下であるとともに、コーディエライト粉末の平均粒子径D50が5〜25μmであり、且つ500℃で10分間焼成した後の封着材料の熱膨張係数をα1、500℃で40分間焼成した後の封着材料の熱膨張係数をα2としたときに、(α2−α1)≦4×10-7/℃の関係を満たすことに特徴付けられる。ここで、本発明でいう「ガラス転移点」は、示差熱分析(DTA)装置で測定した値を指す。また、「熱膨張係数」は、押棒式熱膨張係数測定(TMA)装置を用いて、30〜300℃の温度範囲で測定した値を指す。熱膨張係数の測定試料の焼成は、昇降温速度10℃/分で行い、試料の取り出しは室温で行う。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の封着材料において、コーディエライト粉末の平均粒子径D50は5〜25μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。コーディエライト粉末の平均粒子径D50が5μmより小さいと、低膨張特性を損なう虞があることに加えて、コーディエライト粉末の微粉割合が多くなり、コーディエライト粉末を固相反応で作製したとしても、焼成時に微粉成分がビスマス系ガラスに多少溶け込むことから、封着材料の流動性を損なわれる虞がある。コーディエライト粉末の平均粒子径D50が25μmより大きいと、ビスマス系ガラスとの熱膨張係数差が大きくなり過ぎ、焼成後の封着層にマイクロクラックが生じやすくなる。
【0026】
本発明の封着材料は、ビスマス系ガラス粉末を45〜95体積%、コーディエライト粉末を5〜55体積%含有することが好ましく、ビスマス系ガラス粉末を60〜80体積%、コーディエライト粉末を20〜40体積%含有することがより好ましい。両者の割合をこのように規定した理由は、コーディエライト粉末が5体積%より少ないと、低膨張化効果等のコーディエライト粉末を添加した効果が得られにくく、55体積%より多くなると、相対的にビスマス系ガラスの割合が少なくなるため、封着材料の流動性が乏しくなる。
【0027】
本発明に係るコーディエライト粉末は、コーディエライトの原料を粉砕混合した後に固相反応させることが好ましい。具体的には、原料の平均粒子径D50が20μm以下(より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下)となるまで粉砕混合することが好ましい。原料を粉砕混合すれば、原料粉末が機械的衝撃を受けながら混合されることから、原料同士の反応が促進され、その後の焼成で結晶化度の高いコーディエライト粉末を作製することができる。また、原料を粉砕混合すれば、原料の比表面積が大きくなり、固相反応を効率よく進行させることができる。なお、粉砕混合は、ボールミル等の粉砕機を使用する。ここでいう「平均粒子径D50」は、レーザー回折式粒度分布測定装置で測定した値を指す。
【0028】
図1は、粉砕混合前のコーディエライトの原料のX線チャートである。図2は、このコーディエライトの原料をボールミルで36時間粉砕混合した後のX線チャートである。図1、2から、粉砕混合により原料成分の結晶ピーク強度が低下して、コーディエライト原料が非晶質の状態に近づいているとともに、粉砕混合により原料同士の反応が進行していることが分かる。
【0029】
本発明に係るコーディエライト粉末は、既述の理由により、ガラス原料を使用しない。それ故、固相反応に供するコーディエライトの原料として、原料コスト等を勘案すると、化合物原料、あるいは複合成分による天然原料を用いることが適当である。特に、コーディエライト(SiO2 51.36%、Al23 34.86%、MgO 13.8%)以外の成分、つまり不純物となる成分が最小限となるように、カオリン、タルク、水酸化マグネシウム、カオリン、酸化珪素、水酸化マグネシウム等の原料を適宜組み合わせて使用するのが適当である。カオリンはSiO2とAl23の導入原料であり、タルクはSiO2とMgOの導入原料である。これらの原料は産地によって不純物量が大きく異なるので、注意が必要である。特に、MgO以外のアルカリ土類金属酸化物であるCaOとBaOの混入や、アルカリ金属酸化物であるNa2OやK2Oの混入しないように注意する必要がある。ソーダ長石、カリ長石、ドロマイトはNa2O、K2O、CaOなどの成分も同時に入るので安価ではあるが使用しないことが好ましい。
【0030】
本発明の封着材料において、コーディエライトの固体原料のR2O(RはNa、Kを指す)含有量は、0.5重量%以下が好ましく、0.3重量%以下がより好ましい。R2Oの含有量が0.5重量%より多いと、作製されるコーディエライトの融点が低下することに起因して、コーディエライトの焼成温度を上昇させることができず、その結果、結晶化度の高いコーディエライト粉末を得難くなる。コーディエライト粉末の結晶化度が低ければ、コーディエライト粉末を固相反応で作製したとしても、封着工程でコーディエライト粉末がビスマス系ガラスに多少溶け出す虞があり、封着材料の熱的安定性を低下させる虞が生じる。また、コーディエライトの固体原料のR’O(R’はCa、Baを指す)含有量は、0.5重量%以下が好ましく、0.3重量%以下がより好ましい。R’Oの含有量が0.5重量%より多いと、作製されるコーディエライトの融点が低下することに起因して、コーディエライトの焼成温度を上昇させることができず、その結果、結晶化度の高いコーディエライト粉末を得難くなる。コーディエライト粉末の結晶化度が低ければ、コーディエライト粉末を固相反応で作製したとしても、封着工程でコーディエライト粉末がビスマス系ガラスに多少溶け出す虞があり、封着材料の熱的安定性を低下させる虞が生じる。
【0031】
本発明の封着材料において、平均粒径D50が5μm以下のコーディエライト微粉末の固体原料中の含有量は、固体原料100重量部に対して0.1〜10重量部であることが好ましく、1〜5重量部であることがより好ましい。コーディエライト微粉末の含有量が0.1重量部未満であると、熱膨張係数の低下および流動性向上の効果が得られにくくなる。一方、コーディエライト微粉末の含有量が10重量部を超えても、さらなる効果は期待できない。
【0032】
コーディエライト微粉末の平均粒径D50は、小さいほど反応表面積が大きくなるため、結晶が成長しやすく、封着材料の熱膨張係数の低下および流動性向上の効果が得られやすい。具体的には、5μm以下であり、2μm以下であることが好ましい。下限は特に限定されないが、現実的には0.1μm以上である。
【0033】
本発明の封着材料において、コーディエライトの固体原料中のCuO粉末の含有量は、固体原料100重量部に対して0.1〜5重量部であることが好ましく、0.2〜1重量部であることがより好ましい。CuO粉末の含有量が0.1重量部未満であると、熱膨張係数の低下および流動性向上の効果が得られにくくなる。一方、コーディエライト微粉末の含有量が5重量部を超えても、さらなる効果は期待できない。
【0034】
CuO粉末の粒径は特に限定されず、ガラス原料等に通常用いられる粒径のものを使用すればよい。なお、CuO粉末を原料粉末とともに粉砕しながら混合することにより、原料粉末との反応が促進されるため好ましい。
【0035】
固体原料中に、平均粒径D50が5μm以下のコーディエライト微粉末およびCuO粉末の両方を含有する場合、コーディエライト結晶の成長がより促進され、封着材料の熱膨張係数の低下および流動性向上の効果がより一層得られやすくなるため好ましい。
【0036】
コーディエライト粉末は、焼成工程を経て、固相反応によりコーディエライト結晶を形成させる。焼成温度(最高温度)は、1200〜1450℃が好ましく、1300〜1400℃がより好ましい。焼成温度が1200℃より低いと、コーディエライトの結晶化度が低下し、コーディエライト粉末の熱膨張係数が大きくなり、所望の低膨張化効果を享受し難くなる。また、焼成温度が1450℃より高いと、焼成時にコーディエライト結晶が形成されず、原料が融液化しやすくなる。
【0037】
焼成時間(最高温度保持時間)は、5〜25時間であることが好ましく、10〜25時間であることがより好ましい。結晶化させる最高温度付近で5時間以上保持すれば、作製するコーディエライト粉末が100kg以上であっても、一回の焼成で作製することができる。一方、結晶化させる最高温度付近で25時間より長く保持しても、得られるコーディエライト粉末の結晶化度がほとんど変化しない。
【0038】
本発明の封着材料において、ビスマス系ガラス粉末は、ガラス組成として、下記酸化物換算のモル%表示で、Bi23 20〜50%、B23 10〜40%、ZnO 0〜30%、CuO 0〜20%、Fe23 0〜5%、SiO2 0〜10%、Al23 0〜10%含有することが好ましい。以下、ビスマス系ガラスのガラス組成を上記のように限定した理由を説明する。なお、以下の%表示は、特に限定のある場合を除き、モル%を指す。
【0039】
Bi23は、ガラスの軟化点を下げるための主要成分であり、その含有量は20〜50%、好ましくは25〜45%である。Bi23の含有量が20%より少ないと軟化点が高くなり過ぎ、500℃以下で焼成できなくなる傾向がある。一方、Bi23の含有量が50%より多いと安定なガラスが得られなくなる傾向があり、特に焼成時にガラスが失透しやすくなる。
【0040】
23は、ガラス形成成分として必須の成分であり、その含有量は10〜40%、好ましくは18〜40%である。B23の含有量が10%より少ないとガラスが不安定になって失透し易くなる。また、失透を生じない場合でも、焼成時に結晶の析出速度が極めて大きく、封着等に必要な流動性が得られない傾向がある。一方、B23の含有量が40%より多いと、ガラスの粘性が高くなり過ぎて500℃以下の温度で焼成が困難になる。
【0041】
ZnOは、ガラスの安定化に大きな効果があり、その含有量は0〜30%、好ましくは15〜25%である。その含有量が30%より多いと、ガラスが結晶化しやすくなって、ガラスの流動性が悪くなる傾向がある。
【0042】
CuOは、焼成時のガラスの失透性を抑制するための成分であり、その含有量は0〜20%、好ましくは0〜15%である。CuOが20%を超えると、ガラスが結晶化しやすくなり、ガラスの流動性が悪くなる傾向がある。
【0043】
Fe23は、ガラスを安定化するための成分であり、その含有量は0〜5%、好ましくは0〜2%である。Fe23が5%を超えると、逆にガラスが不安定になる傾向がある。一方、ガラスの熱的安定性を向上させる観点から、Fe23を微量添加するのが好ましく、例えば0.1%以上添加するのが好ましい。
【0044】
SiO2は、ガラスを安定化させるための成分であり、SiO2の含有量は0〜10%、好ましくは0〜7%である。SiO2の含有量が10%よりも多いと、ガラスの粘性が高くなり過ぎて、500℃以下の温度で熱処理できない場合がある。
【0045】
Al23は、ガラスを安定化させるための成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは0〜5%である。Al23の含有量が10%より多いと、ガラスの粘性が高くなり過ぎ、500℃以下の温度で熱処理できない場合がある。
【0046】
本発明に係るビスマス系ガラスは、任意成分として下記の酸化物を含有可能である。
【0047】
CeO2は、ガラスの溶融時または焼成時の失透を抑制する効果があり、その含有量は0〜5%、好ましくは0〜2%である。CeO2の含有量が5%より多いと、ガラスが失透しやすくなり、ガラスの流動性が損なわれる虞が生じる。
【0048】
Ta25は、必須成分ではないが、耐候性を向上させるとともに、焼成時にガラス表面に発生する結晶を抑制する効果があり、その含有量は0〜10%、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%である。Ta25の含有量が10%を超えると、逆にガラス組成内のバランスを欠き、溶融時に失透を生じやすくなる。なお、Ta25は、他の元素に比較して高価であるので、その含有量を10%より多くすることは現実的ではない。
【0049】
BaOは、ガラスの溶融時または焼成時の失透を抑制する効果があり、その含有量は、0〜15%、好ましくは0〜10%である。BaOの含有量が15%より多いと、逆にガラス組成内のバランスを欠き、ガラスの熱的安定性が損なわれ、その結果、ガラスが失透しやすくなる。
【0050】
SrO、MgO、CaOは、ガラスの溶融時または焼成時の失透を抑制する効果があり、それぞれの成分の含有量は0〜5%、好ましくは0〜2%である。各成分の含有量が5%より多いと、逆にガラス組成内のバランスを欠き、ガラスが失透や分相しやすくなる。
【0051】
BaO、SrO、MgO、CaOは、合量で0〜20%が好ましい。これらの成分の合量が20%より多いと、ガラスの熱膨張係数が高くなり過ぎたり、封着強度が弱くなる等の問題が生じる虞がある。
【0052】
Cs2Oは、ガラスをより低粘性化する成分であり、その含有量は0〜5%、好ましくは0〜3%である。Cs2Oの含有量が5%を超えると、ガラスの化学耐久性が低下する傾向がある。
【0053】
2は、ガラスをより低粘性化する成分であり、その含有量は0〜20%、好ましくは0〜10%である。F2の含有量が20%を超えると、ガラスの化学耐久性が低下する傾向がある。
【0054】
Sb23は、ガラスの失透を抑制するための成分であり、その含有量は0〜5%が好ましい。Sb23は、ビスマス系ガラスのネットワーク構造を安定化させる効果があり、ビスマス系ガラスにおいて、Sb23を適宜添加することによって、Bi23の含有量が40%以上の場合であっても、ガラスの失透を抑制することができる。なお、Sb23は、導入原料として五酸化アンチモンを使用することができる。
【0055】
WO3は、ガラスの失透を抑制するための成分であり、その含有量は0〜10%、好ましくは0〜5%である。ビスマス系ガラスにおいて、ガラスの軟化点を下げるためには、Bi23の含有量を多くする必要があるが、Bi23の含有量が多くなると、焼成時にガラスから結晶が析出して、ガラスの流動性が阻害される傾向がある。特に、Bi23の含有量が多い場合、例えば40%以上の場合、その傾向が顕著になる。しかし、ビスマス系ガラスにおいて、WO3を適宜添加することによって、Bi23の含有量が40%以上であっても、ガラスの熱的安定性が低下する事態を抑止することが可能となる。ただし、WO3の含有量が10%より多くなると、逆にガラス組成内のバランスを欠き、ガラスの軟化点が高くなり、その結果、ガラスの流動性が悪化する。
【0056】
In23、Ga23は必須成分ではないが、ガラスの失透を抑制するための成分であり、その含有量は合量で0〜10%、好ましくは0〜5%である。In23、Ga23は、ビスマス系ガラスのネットワーク構造を安定化させる効果がある。In23、Ga23は、他の元素に比較して高価であるので、その含有量を合量で10%より多くすることは現実的ではない。
【0057】
なお、上記成分以外にも、ガラスの粘性や熱膨張係数の調整のために、La23、TiO2、ZrO2、V25、Nb25、MoO3、TeO2、Ag2O、Na2O、K2O、Li2O等をそれぞれ5%まで添加することが可能である。但し、PbOのように環境上問題のある成分を添加することは意識的に避けるべきであり、PbOは実質的に含有しないことが好ましい。
【0058】
以上の組成を有するビスマス系ガラスは、550℃以下、好ましくは500℃以下の温度で良好な流動性を示す非晶質のガラスである。
【0059】
封着材料の機械的強度等を上昇させる目的でコーディエライト粉末以外の耐火性フィラー粉末を添加することができる、例えば、ウイレマイト、酸化錫、ジルコニア、ジルコン、アルミナ等を特性を損なわない範囲で適宜添加することが可能である。具体的には、これらの耐火性フィラー粉末の含有量は、封着材料中に合量で50体積%以下であることが好ましい。封着材料の流動性なども考慮すると10〜40体積%であることがより好ましく、20〜35体積%であることがさらに好ましい。
【0060】
PDPに使用される封着材料は、以下のような熱処理工程を経る。まず、PDPの背面基板の外周縁部にビークル内に分散された封着材料を塗布し、高温でビークル成分を熱分解または焼却して、一次焼成を行う。封着材料を均一に分散させるビークルは、有機溶媒や樹脂等を含有している。ビークルに使用される樹脂は、ガラスの軟化点以下の温度で良好に熱分解するニトロセルロースまたはアクリル樹脂等が一般的に使用されている。封着材料とビークルは、三本ロールミル等の混練装置を用いて、均一に分散される。一次焼成は、封着材料に使用する樹脂が完全に熱分解する温度条件で行われ、仮に樹脂の熱分解が不完全であると、その後に供させる二次焼成(封着工程、シール工程とも称される)で封着材料内に樹脂の残渣が残存し、その結果、封着材料に失透または泡等のPDPの気密性を確保する上で致命的な欠陥が生じやすくなる。次に、封着材料の二次焼成が行なわれ、PDPの前面基板と背面基板を封着する。最後に、排気管を通してPDP内部を真空排気した後、希ガスを必要量注入して排気管を封止する。このようにしてPDPは作製される。
【0061】
本発明の封着材料は、PDPに好適に使用することができる。本発明の封着材料は、PDPの作製工程のように複数回の焼成がある場合であっても、コーディエライト粉末の表層から成分がビスマス系ガラスに溶出し難いとともに、封着材料の熱膨張係数が大きく変化することもなく、しかも封着材料の流動性も損なうことがないため、本用途に好適に使用することができる。特に、本発明の封着材料は、一次焼成温度が高い場合であっても好適に使用することができる。また、封着材料の一次焼成温度を高温化、例えば500℃以上にすれば、蛍光体ペーストの焼成と封着材料の一次焼成を同時に行うことができ、PDPの製造効率を向上させることが可能となる。本発明の封着材料は、熱的安定性も良好であるため、このような場合であっても良好に使用することができる。
【0062】
本発明の封着材料は、ビークルと混練し、ペーストとして使用することができる。封着材料をペーストに加工すれば、スクリーン印刷、ディスペンサー等の塗布機で容易に封着材料を被封着物に塗布することができる。
【0063】
本発明の封着材料は、ビスマス系ガラス粉末とコーディエライト粉末を含有する封着材料において、ビスマス系ガラス粉末のガラス転移点が400℃以下であるとともに、コーディエライト粉末の平均粒子径D50が5〜25μmであり、且つ500℃で10分間焼成した後の封着材料の膨張係数をα1、500℃で40分間焼成した後の封着材料の膨張係数をα2としたときに、(α2−α1)≦4×10-7/℃の関係を満たすことが好ましい。ビスマス系ガラス粉末のガラス転移点が400℃より高いと、封着材料の流動性が悪化し、500℃以下での焼成が困難になる。(α2−α1)を4×10-7/℃以下とするためには、焼成時のコーディエライト粉末の溶け込み量を低減する必要がある。上述の通り、コーディエライト粉末を固相反応で作製すれば、コーディエライト粉末の溶け込み量を効果的に抑止することができる。(α2−α1)が4×10-7/℃より大きいと、焼成時のコーディエライト粉末の溶け込み量が多いことに起因して、封着工程後に封着層と被封着材の熱膨張係数が整合せず、封着工程後に被封着材に不当な応力が残留しやすくなり、平面表示装置等の気密信頼性を確実に維持することが困難になる。コーディエライト粉末の平均粒子径D50を5〜25μmに規制する理由は、段落0025に記載した理由と同様である。
【実施例】
【0064】
本発明の封着材料を実施例に基づいて詳細に説明する。
【0065】
本発明に係るコーディエライト粉末は次のようにして作製した。まず、表1に示したコーディエライトの原料aはカオリンとクレーと水酸化マグネシウム、原料bはカオリンと純珪粉と水酸化マグネシウム、原料cはカオリンとタルクと水酸化マグネシウムを用いた。
【0066】
表2に表1で示した原料a〜cの成分比率を示す。表2から明らかなように、カオリンおよびクレーはSiO2とAl23を供給する。タルクはSiO2とMgOを供給する。純珪粉は99.7重量%の純分であり、水酸化マグネシウムは67.0重量%の純分であった。表2から明らかなように、表1で示した原料は、混入する不純物であるR2OやR’Oが少ないものを選定した。
【0067】
【表1】

【0068】
【表2】

【0069】
原料a〜cをコーディエライトの理論組成である重量%でSiO2が51.36%、Al23が34.86%、MgOが13.78%となるように、各成分を秤量した。これをアルミナ製ボールミルに投入し、60時間粉砕混合した。原料aに関し、粉砕混合前のX線チャートを図1に示す。なお、原料a〜cは、粉砕混合前に振動式混合機で混合されている。
【0070】
粉末X線回析はリガク株式会社製RINT2100を用いた。測定条件は、管球Cuで40KV、40mA、スキャンスピード4.0°/分とした。なお、粉末X線回析は、測定前に試料の粉砕を行わず、得られた粉末試料をそのまま測定試料とした。
【0071】
これらの混合粉末をそれぞれアルミナ坩堝に移し、1350℃10時間焼成した。焼成後、坩堝から焼成体を取り出し、解砕した。これらの解砕物をボールミルで30分間粉砕した後、325meshの試験篩で分級した。原料aを用いたコーディエライト粉末aが平均粒径D5011μm、原料bを用いたコーディエライト粉末bが平均粒径D5013.5μm、原料cを用いたコーディエライト粉末cが平均粒径D5012.6μmであった。コーディエライトの結晶析出は、粉末X線回折の結晶ピークで確認した。図3にコーディエライト粉末aのX線チャートを示す。
【0072】
また、比較例で使用するコーディエライト粉末dを作製した。まずコーディエライトの理論組成である重量%でSiO2が51.36%、Al23が34.86%、MgOが13.78%となるように、純珪粉、酸化アルミ、酸化マグネシウムを調合し、これを白金坩堝中において、1650℃12時間溶融した。溶融後、これを急冷し、フィルム状のガラスを得て、これを粉砕し粉末状にしたものをコーディエライトの原料dとした。次いで、上記と同様に、原料dを1350℃10時間焼成し、解砕、粉砕後、325meshの試験篩で分級し、平均粒径D5011.3μmのコーディエライト粉末dを得た。コーディエライトの結晶析出は、粉末X線回折の結晶ピークで確認した。図4にコーディエライト粉末dのX線チャートを示す。
【0073】
図4から明らかなように、ガラス原料から作製したコーディエライト粉末dは、固相反応で作製したコーディエライト粉末aと結晶パターンがほとんど同一であった。しかし、コーディエライト粉末dとコーディエライト粉末aを顕微鏡観察したところ、コーディエライト粉末dは粒界が観察されなかったが、コーディエライト粉末aは粒界が観察された。
【0074】
次に、ビスマス系ガラスの作製方法について説明する。
【0075】
表3のガラス組成となるように各種酸化物、炭酸塩等のガラス原料を調合したガラスバッチを準備し、これを白金坩堝に入れて950℃で2時間溶融した。続いて、溶融ガラスをステンレス製の金型に流し出して成形し、ガラス試料No.1〜5を作製した。得られた各試料について、ガラス転移点、30〜300℃における熱膨張係数、焼成温度、焼成後の表面結晶を評価した。その結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
ガラス転移点は、リガク株式会社製のTAS−300示差熱分析装置により求めた。なお、測定時の昇温条件は5℃/分とした。
【0078】
熱膨張係数は、成形したガラスを直径5mm、長さ20mmの円柱状に研磨加工し、リガク株式会社製のTAS−100押棒式熱膨張係数測定装置を用いて測定した。
【0079】
焼成温度は、以下のようにして測定した。まず、作製したガラスを粉砕してガラス粉末を得、ガラスの真比重に相当する重量のガラス粉末を外径20mm、高さ約5mmのボタン状に加圧成形した。次いで、このボタン状の試料をガラス基板の上に載せて電気炉に入れ、10℃/分の速度で昇温し、ピーク温度で10分間保持した上で、10℃/分の速度で室温まで降温した。得られたボタン状の焼成体の外径が21〜22mmの範囲となったピーク温度を焼成温度とした。
【0080】
焼成体の表面結晶の評価は、顕微鏡により上記焼成温度の測定で用いたボタン状の焼成体の表面外観を観察することで行った。焼成体の表面に結晶が析出していなかったものを「○」とし、焼成体の表面に結晶が析出していたものを「×」として評価した。
【0081】
本発明の封着材料の実施例A〜Eを表4に示し、本発明の封着材料の比較例F、Gを表5に示す。ガラス粉末とコーディエライト粉末の混合比は、表4、表5に示す通りである。
【0082】
【表4】

【0083】
【表5】

【0084】
熱膨張係数α1は、500℃10分間焼成した試料の30〜300℃の温度範囲における熱膨張係数を測定したものであり、熱膨張係数α2は500℃40分間焼成した試料の30〜300℃の温度範囲における熱膨張係数を測定したものである。なお、熱膨張係数の測定は、ガラス試料の熱膨張係数の場合と同様とした。
【0085】
表面結晶の評価は、下記の通り行った。まず、各試料の合成密度に相当する重量の粉末を金型により外径20mmのボタン状に乾式プレスし、これを40mm×40mm×2.8mm厚のガラス基板上に載置し、空気中で10℃/分の速度で昇温した後、500℃40分の条件で焼成した上で室温まで10℃/分で降温し、ボタン状の焼成体を得た。なお、合成密度とは、ガラス粉末の密度とコーディエライト粉末の密度を、所定の体積比で混合させて算出される理論上の密度である。表面結晶の評価は、ボタン状の焼成体の外観を顕微鏡で観察し、焼成体の表面に結晶が析出していないものを「○」とし、結晶が析出しているものを「×」として評価した。なお、ガラス基板は、高歪点ガラス(日本電気硝子株式会社製PP−8C)を使用した。
【0086】
接着力の評価は、下記の通りに行った。各試料の合成密度に相当する重量の粉末を金型により外径20mmのボタン状に乾式プレスし、これを40mm×40mm×2.8mm厚のガラス基板上に載置し、500℃10分間の条件で焼成したボタン状の焼成体上に別のガラス基板を被せて、500℃40分間の条件で再び焼成して貼り合せた。なお、昇降温速度は、10℃/分とした。得られた試料をプラスチックハンマーで叩き、ボタン状の焼成体とガラス基板が剥がれない場合を「○」とし、剥がれた場合を「×」とした。
【0087】
表4から明らかなように、本発明の実施例である試料A〜Eは、α2−α1が0.4〜1.1×10-7/℃であり、焼成体の表面状態が良好であり、また接着力も良好であった。
【0088】
一方、表5から明らかなように、本発明の比較例である試料F、Gは、α2−α1が4.2〜4.4×10-7/℃であった。
【0089】
次にコーディエライト粉末e〜gを次のようにして作製した。原料粉末cをコーディエライトの理論組成である重量%でSiO2が51.36%、Al23が34.86%、MgOが13.78%となるように、各成分を秤量し、さらに、コーディエライト微粉末(平均粒径D501.9μm)およびCuO粉末を表6に記載の割合で添加した。得られた混合物をアルミナ製ボールミルに投入し、48時間粉砕混合した。
【0090】
【表6】

【0091】
これらの混合粉末をそれぞれアルミナ坩堝に移し、1420℃で24時間焼成した。焼成後、坩堝から焼成体を取り出し、解砕した。これらの解砕物をボールミルで30分間解砕した後、325meshの試験篩で分級した。原料eを用いたコーディエライト粉末eが平均粒径D5015.5μm、原料fを用いたコーディエライト粉末fが平均粒径D5017.1μm、原料gを用いたコーディエライト粉末gが平均粒径D5016.6μmであった。
【0092】
本発明の封着材料の実施例H〜Kを表7に示す。ガラス粉末とコーディエライト粉末の混合比は、表7に示す通りである。
【0093】
【表7】

【0094】
各特性を評価するための試料は以下のようにして作製した。各試料の合成密度に相当する重量の粉末を金型により外径20mmのボタン状に乾式プレスし、これを40mm×40mm×2.8mm厚のガラス基板上に載置し、510℃/480℃/480℃の各焼成温度で3段階の焼成を行いボタン状の焼成体を得た。具体的には、各段階において、10℃/分の速度で昇温した後、前記焼成温度で10分間保持し、その後室温まで10℃/分で降温した。なお、ガラス基板は、高歪点ガラス(日本電気硝子株式会社製PP−8C)を使用した。
【0095】
熱膨張係数αは、30〜300℃の温度範囲における熱膨張係数を測定したものである。なお、熱膨張係数の測定は、ガラス試料の熱膨張係数の場合と同様とした。
【0096】
屈伏点Tfは、成形したガラスを直径5mm、長さ20mmの円柱状に研磨加工し、リガク株式会社製のTAS−100押棒式熱膨張係数測定装置を用いて測定した。
【0097】
流動径の測定は、前述の3段階焼成において、第1段階である510℃の焼成で得られた焼成体の直径を測定した。
【0098】
表7から明らかなように、コーディエライト粉末として、固体原料にコーディエライト微粉末またはCuO粉末を添加してなる混合物の固相反応により作製されたものを用いた試料H〜Jは、コーディエライト微粉末またはCuO粉末を添加していない固体原料の固相反応により作製されたコーディエライト粉末を用いた試料Kと比較して、熱膨張係数αが低く、流動性が良好であり、さらに屈伏点Tfが低いものであった。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の封着材料は、フィールドエミッションディスプレイ、PDP、蛍光表示管等の平面表示装置の封着に好適である。また、本発明の封着材料は、水晶振動子、ICパッケージ、光学ガラス部品等の電子部品の封着に好適である。特に、本発明の封着材料は、PDPの封着に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】固相反応に供されるコーディエライトの原料のX線チャートである。
【図2】固相反応に供されるコーディエライトの原料をボールミルで36時間粉砕混合した後のX線チャートである。
【図3】本発明に係る固相反応により作製したコーディエライト粉末のX線チャートである。
【図4】結晶化ガラス法により作製した従来のコーディエライト粉末のX線チャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビスマス系ガラス粉末とコーディエライト粉末を含有する封着材料において、コーディエライト粉末が固相反応によって作製されていることを特徴とする封着材料。
【請求項2】
コーディエライト粉末の平均粒子径D50が5〜25μmであることを特徴とする請求項1に記載の封着材料。
【請求項3】
コーディエライト粉末が、固体原料100重量部に対して、平均粒径D50が5μm以下のコーディエライト微粉末を0.1〜10重量部添加してなる混合物の固相反応によって作製されていることを特徴とする請求項1または2に記載の封着材料。
【請求項4】
コーディエライト粉末が、固体原料100重量部に対してCuO粉末を0.1〜5重量部添加してなる混合物の固相反応によって作製されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の封着材料。
【請求項5】
ビスマス系ガラス粉末45〜95体積%、コーディエライト粉末5〜55体積%含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の封着材料。
【請求項6】
ビスマス系ガラス粉末が、ガラス組成として、下記酸化物換算のモル%表示で、Bi23 20〜50%、B23 10〜40%、ZnO 0〜30%、CuO 0〜20%、Fe23 0〜5%、SiO2 0〜10%、Al23 0〜10%含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の封着材料。
【請求項7】
実質的にPbOを含有しないことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の封着材料。
【請求項8】
プラズマディスプレイパネルに使用することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の封着材料。
【請求項9】
ビスマス系ガラス粉末とコーディエライト粉末を含有する封着材料において、ビスマス系ガラス粉末のガラス転移点が400℃以下であるとともに、コーディエライト粉末の平均粒子径D50が5〜25μmであり、且つ500℃で10分間焼成した後の封着材料の膨張係数をα1、500℃で40分間焼成した後の封着材料の膨張係数をα2としたときに、(α2−α1)≦4×10-7/℃の関係を満たすことを特徴とする封着材料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−94711(P2008−94711A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−237369(P2007−237369)
【出願日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(000232243)日本電気硝子株式会社 (1,447)
【Fターム(参考)】