説明

封緘紙、封緘方法及び封緘物

【課題】ラベリング時の環境や季節変動の影響によりカールすることなくフラットな状態で貼合することができ、さらに綺麗に剥離することができる封緘紙を提供すること。
【解決手段】表面層(a)、基材層(b)及び吸水量が2〜25ml/m2の水系接着剤受容層(c)を含む熱可塑性樹脂延伸フィルムからなる封緘紙であって、熱可塑性樹脂延伸フィルムの空孔率が20〜50%であり、且つ折曲反発力による120°開放時間が20〜70秒である封緘紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品の開口部に貼着するための封緘紙、その封緘紙を用いた封緘方法、及びその封緘紙を用いて開口部を封緘した封緘物に関するものである。本発明の封緘紙は物品内部の吸湿性材料、例えば粉末飲料(インスタントコーヒー、インスタント紅茶、粉末ココア、粉末ジュース、粉末ドリンク等)、乾燥スープ、即席味噌汁、即席しるこ、お茶漬けの元、焼菓子(ビスケット、せんべい等)、スナック菓子(コーン系菓子、ポテトチップ等)、飴(キャンデー、ドロップ等)、干菓子(落雁、固形ラムネ等)、乾麺(スパゲティ、そうめん等)、即席麺(即席中華麺、即席うどん、スナックめん等)、製粉(小麦粉、米粉、マッシュポテト等)、穀類加工品(パン粉、麩等)、砂糖(白砂糖、黒砂糖、上白糖、三温糖等)、粉乳(粉ミルク、全粉乳、脱脂粉乳、ホエイパウダー等)、乾燥肉(ジャーキー等)、乾燥魚介類(ふかひれ、干しエビ、干し貝、鰹節、煮干し、じゃこ、スルメ等)、乾燥野菜(かんぴょう、干し大根、干し椎茸、干し芋等)、ドライフルーツ(レーズン、イチジク、プルーン、クコの実等)、海藻(寒天、海苔、昆布、乾燥ワカメ等)、茶(緑茶、抹茶、紅茶、烏龍茶等)、その他乾物(乾燥ゆば、高野豆腐、焼麩等)、調味料、香辛料等の乾燥食品、医薬品、及び粉末洗剤、除湿剤、乾燥剤、粉末入浴剤等の生活用品を入れた容器等物品の開口部を確実に密封して、内容物である吸湿性材料を防湿するため等に用いることができる。
また、本発明の封緘紙は、例えばカレー、漬物、納豆等のにおいのある食品を入れた容器の開口部を確実に密封して、内容物である食品のにおいが外に漏れないようにするため等に用いることができる。また、本発明の封緘紙は、例えば調味料、香辛料、ソース、その他飲食品や嗜好品関係の内容物を格納した容器の密封性を確保して、内容物の腐敗や劣化の防止に用いることができる。さらにまた、本発明の封緘紙は、例えば医療用器具や、カルス培養物等を格納した容器の開口部を確実に密封して、内容物に雑菌が混入しないようにすることができる。
【背景技術】
【0002】
従来、物品の開口部を封緘紙で覆っておき、必要に応じて封緘紙を剥離して開口部を開放することがなされている。例えば、インスタントコーヒーや洗剤等の粉体を充填した容器の開口部に封緘紙を貼着しておき、その封緘紙を剥離することにより開口部を通して粉体を取り出すことが行われている。通常の封緘は、封緘紙の裏面に糊を付着して、この封緘紙を容器本体の開口部端面に載置することによりなされている。そして、一般的なインスタントコーヒーの容器では、容器本体に螺合嵌着する蓋体があり、一般的な粉末洗剤の容器では、容器本体にヒンジにて連結された蓋体があり、その蓋体が封緘紙で封緘した開口部全体を覆う構造となっている。
【0003】
上述の封緘紙には、例えば、プラスチックフィルム/紙や、プラスチックフィルム/アルミ箔/紙等の層構成を有するもの(これを「従来の層構成1」という)や、紙/プラスチックフィルム/紙の層構成を有するもの(これを「従来の層構成2」という)がある。従来の層構成1の具体例として、厚さ25μmの延伸ポリプロピレン(OPP)/坪量15g/m2のワックス及び坪量26g/m2のグラシン紙の層構成を有する封緘紙や、防湿セロファン/厚さ20μmのLDPE/坪量25g/m2のグラシン紙の層構成を有する封緘紙を挙げることができる。また、従来の層構成2の具体例として、坪量25g/m2のグラシン紙/厚さ20μmのLDPE/坪量25g/m2のグラシン紙の層構成を有する封緘紙を挙げることができる。これらはグラシン紙側を開口部に貼着するものである(特許文献1)。
【特許文献1】実公平2−32567号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の封緘紙による封緘は、封緘紙の接着面に接着剤を付着して、封緘紙用のラベリングマシンを使用して容器等の物品の開口部を被覆するように貼合することにより行っている。しかしながら、従来の層構成1による封緘紙をこのような工程で封緘した場合、封緘紙の層構成の厚さ方向の対称性が悪いために、マシン貼合時に封緘紙がカールしてしまう。また、従来の層構成2による封緘紙を封緘した場合、紙部分が湿気により吸湿することから、紙の膨張により封緘紙にカールが発生してしまう。いずれの場合も、封緘紙を用いて容器等を封緘しながら生産する場合、カール発生によるラベリングトラブルで歩留まりが悪化しやすい。
このような問題に対処するために、天然紙の代替としてフィルムを使用することが考えられる。しかしながら、フィルムを使用すると、現行の水系接着剤で接着しようとしても、乾燥性が悪くて生産時に時間が掛かったり、貼合された封緘紙が貼合箇所からズレてしまったり、完全密封できなくなったりするなどの問題が生じる。
また現行の封緘紙は、剥離時(開封時)に封緘紙の端部を摘んで剥離するが、封緘紙が綺麗に剥がれないため、剥離後の開口部の見栄えが悪くなるという問題も生じている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで本発明者らは、このような従来技術の課題を解決するために、ラベリング時の環境(湿度、温度など)や季節変動の影響によりカールすることなくフラットな状態で貼合することができ、さらに綺麗に剥離することができる封緘紙を提供することを本発明の目的として設定した。
本発明者らは鋭意に研究を重ね、折性に優れかつ吸水性を有する熱可塑性樹脂延伸フィルムを開発することで、水系接着剤貼合性と剥離性を併せて改善した封緘紙を完成するに至った。すなわち、課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
【0006】
[1] 表面層(a)、基材層(b)及び吸水量が2〜25ml/m2の水系接着剤受容層(c)を含む熱可塑性樹脂延伸フィルムからなる封緘紙であって、熱可塑性樹脂延伸フィルムの空孔率が20〜50%であり、且つ折曲反発力による120°開放時間が20〜70秒である封緘紙。
[2] 前記熱可塑性樹脂延伸フィルムの水蒸気透過率が0〜10g/m2/24hであることを特徴とする[1]に記載の封緘紙。
[3] 前記基材層(b)の空孔率が20〜50%であることを特徴とする[1]又は[2]に記載の封緘紙。
[4] 前記水系接着剤受容層(c)の表面強度が0.8〜2.0kg−cmかつ初期接着力が200〜600gであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載の封緘紙。
[5] 前記表面層(a)が熱可塑性樹脂(A)20〜100重量%を含み、前記基材層(b)が熱可塑性樹脂(A)20〜80重量%と、無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')の少なくとも1種類80〜20重量%とを含み、かつ、前記水系接着剤受容層(c)が熱可塑性樹脂(A)25〜50重量%と、無機微細粉末(B)75〜50重量%とを含むことを特徴とする[1]〜[4]のいずれか一項に記載の封緘紙。
[6] 前記水系接着剤受容層(c)に含まれる前記無機微細粉末(B)が、表面処理剤(C)により親水化処理されていることを特徴とする[5]に記載の封緘紙。
【0007】
[7] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の封緘紙を物品の開口部に水系接着剤を用いて貼着する工程を有することを特徴とする物品の封緘方法。
【0008】
[8] [1]〜[6]のいずれか一項に記載の封緘紙が物品の開口部に水系接着剤で貼着されていることを特徴とする封緘物。
[9] 前記開口部が紙で形成されていることを特徴とする[8]に記載の封緘物。
[10] 前記開口部がカートン紙で形成されていることを特徴とする[8]に記載の封緘物。
[11] 前記物品が吸湿性材料を入れた容器であることを特徴とする[8]〜[10]
のいずれか一項に記載の封緘物。
[12] 前記吸湿性材料が粉末洗剤であることを特徴とする[11]に記載の封緘物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の封緘紙は、温度変化や湿度変化などの環境変化によるカール変形が大幅に抑えられている。また、本発明の封緘方法によれば、このような封緘紙を物品の開口部に容易に貼着することができる。さらに、本発明の封緘物は、封緘紙を剥離したときに開口部に封緘紙が残らない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下において、本発明の封緘紙について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
封緘紙の特性
本発明の封緘紙は、温度変化や湿度変化などの環境変化によるカール変形が大幅に抑えられている。これは、本発明品が従来の層構成を有する封緘紙とは異なり、熱可塑性樹脂フィルムのみから構成するものであり、対称性が保たれているからである。また、本発明の封緘紙全体は樹脂フィルムで構成された積層体であるので、水蒸気(水分)を始めとする各種ガスの透過性を容易に調整でき、透過を抑えることができる。
本発明の封緘紙は、内部、特に芯となる基材層(b)に空孔を持たせることにより、適度な折曲反発力を有している。この折曲反発力は、環境変化によるカール変形を抑えると同時に、外力による変形を抑えるのに有用である。例えば容器等の物品より内容物の一部を取り出したいときに、封緘紙を折り曲げて開口部を作る。この時、折曲反発力が小さすぎると折り曲げた開口部が元に戻らず、本来目的である封緘の効果が得られなくなる。逆に折曲反発力が大きすぎると、開口部からの内容物取り出しが困難になる。
本発明の封緘紙は、本来吸湿性の無い熱可塑性樹脂フィルムからなるが、水系接着剤を用いて、物品の開口部に容易に貼着することができる。このことは、本発明品が吸水量が2〜25ml/m2の水系接着剤受容層(c)を含むためである。水系接着剤受容層(c)には水系接着剤が適用可能である。また、水系接着剤受容層(c)は水分により膨潤しないのでカールの原因ともならない。
本発明の封緘紙は貼着後に、物品より封緘紙を剥離したときに開口部に封緘紙が残りにくい。このことは、水系接着剤受容層(c)が適度な内部凝集力を有しているので、材料破壊が起こりにくいためである。
【0012】
[折曲反発力による120°開放時間]
本発明の封緘紙は、表面層(a)、基材層(b)及び吸水量が2〜25ml/m2の水系接着剤受容層(c)を含む熱可塑性樹脂延伸フィルムであって、折曲反発力による120°開放時間が20〜70秒であることを特徴とする。
本願における「折曲反発力による120°開放時間」は、熱可塑性樹脂延伸フィルムから10cm×10cmに切り出した試験片を2つ折りして1kg加重下で30秒静置した後、加重を取り除いてから試験片が開いて120°の角度に達するまでの時間を測定して求める。ここでいう角度は、2つ折りしたときの屈曲点と、その屈曲点から最も遠い位置にある2つの端部(当該2つの端部は開放するにしたがって互いに遠ざかる関係にある)との間に形成される角度をいう。
【0013】
本発明の封緘紙の折曲反発力による120°開放時間は、20〜60秒であることが好ましく、20〜50秒であることがより好ましく、20〜45秒であることがさらに好ましい。折曲反発力による開放時間が20秒未満である場合は、封緘紙をカートン容器等の開口部に貼合する際に封緘紙が開口部側面から浮いてしまうという問題がある。また戻りが速いために、内容物を取り出す際に不具合を起こす可能性がある。折曲反発力による開放時間が70秒を超える場合は、封緘紙の戻りが遅いために、手で抑える等の別の処置が必要となり、封緘の効果を十分に発揮できない可能性がある。
【0014】
封緘紙の折曲反発力による120°開放時間は、例えば熱可塑性樹脂延伸フィルムの空孔率を調整することによって20〜70秒に調節することができる。中でも、前記基材層(b)の空孔率によって調整することが好ましい。
【0015】
[水蒸気透過率]
本発明の封緘紙を構成する熱可塑性樹脂延伸フィルムの水蒸気透過率(カップ法(JIS−Z−0208)に準拠して測定)は、0〜10g/m2/24hであることが好ましく、1〜9.5g/m2/24hであることがより好ましく、2〜8g/m2/24hであることがさらに好ましい。10g/m2/24h以下であれば、物品内容物(例えば粉末洗剤)が吸湿・凝集しにくいため、内容物の機能を維持しやすい。水蒸気透過率は、例えば熱可塑性樹脂延伸フィルムの樹脂材料や、空孔率、厚さによって調整することができる。
【0016】
[初期接着力]
さらに、本発明の封緘紙を、水系接着剤を使用して、カートン容器等の物品の開口部に接着した場合の初期接着力は、200〜600gであることが好ましく、220〜600gであることがより好ましく、220〜580gであることがさらに好ましい。初期接着力は、例えば用いる水系接着剤の種類を選択したり、塗工量を調整したり、水系接着剤受容層(c)の吸水量や表面強度を調整することによって、調節することができる。この接着力は特に、使用用途や封緘紙の表面強度特性に併せて調節することが好ましい。
【0017】
[空孔率]
本発明の封緘紙を構成する熱可塑性樹脂延伸フィルムの空孔率は20〜50%であることを特徴とする。25〜50%であることが好ましく、30〜50%であることがより好ましい。本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルムの空孔率が20%以上であれば、カートン容器等の物品の開口部に貼合せる際に、基材折り曲げ方向と反対方向に強い反発力が働くことがないため、カールは発生せず開口部の側面に接着して密封しやすい。結果として、カール発生によるラベリングトラブルも抑えられる。また、空孔率が50%以下であれば、フィルム生産時に延伸割れが発生しにくいため、より安定した生産を行いやすい。
【0018】
特に熱可塑性樹脂延伸フィルムを構成する基材層(b)の空孔率が20〜50%であることが好ましく、30〜48%であることがより好ましい。基材層(b)の空孔率が高いほど、折り目がつき易く、反発力がなくなり、カールは発生しづらく完全な密封が可能である。しかし、あまり反発力が無く折り目がつき易いものでは、使用時(内容物取出時)に元に戻らず、開封後の内容物吸湿の恐れが高くなる。またフィルムを安定に生産するためや、フィルムの水蒸気透過率を低く調整するためには空孔率は50%以下であることが好ましい。空孔率は、無機微細粉末や有機フィラーの含有量と延伸倍率を調整することにより制御することができる。
【0019】
内部に空孔があることは、断面を電子顕微鏡で観察することにより確かめることができる。空孔率は、断面の電子顕微鏡写真を撮影し、その写真に撮影された断面領域内に占める空孔の面積割合(%)を求めることにより得られる。具体的には、熱可塑性樹脂延伸フィルムをエポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて例えばフィルムの厚さ方向に対して平行(すなわち面方向に垂直)な切断面を作製し、この切断面をメタライジングした後、走査型電子顕微鏡で観察しやすい任意の倍率(例えば500倍〜2000倍)に拡大して観察し、さらに空孔部分をトレーシングフィルムにトレースし塗りつぶした図を画像解析装置(ニレコ(株)製:型式ルーゼックスIID)で画像処理を行い、測定範囲を占める空孔の面積割合(%)を求めて空孔率(%)とすることができる。
多層構造である熱可塑性樹脂延伸フィルムは、各層ごとに上記方法により空孔率(%)を求めることができる。従って、基材層(b)の空孔率も同様に求めることができる。
【0020】
[吸水量]
本発明の封緘紙を構成する水系接着剤受容層(c)は、吸水量が2〜25ml/m2であることを特徴とする。該吸水量は10〜25ml/m2であることが好ましい。吸水量が2〜25ml/m2であれば、容器等の物品に高速で封緘紙を貼合することができ、また、貼合時の初期接着力を保持することができる。2ml/m2未満では、水系接着剤の乾燥が遅延するため貼合時に所望の初期接着力が得られず、封緘紙のズレが生じてしまう。また、25ml/m2を超えると、水系接着剤塗工後の接着剤の乾燥が速すぎるため、物品貼着時には既に乾いてしまい、所望の初期接着力が得られない。水系接着剤受容層(c)の吸水量は、例えば水系接着剤受容層(c)の無機微細粉末(B)の配合量や、同無機微細粉末(B)への親水化処理の有無、水系接着剤受容層(c)の厚さを調整することによって調節することができる。
【0021】
[表面強度]
容器等の物品より、封緘紙を剥離した時に、封緘紙の貼合面が材料破壊して容器に接着剤が残ることが無いようにするためには、封緘紙の水系接着剤受容層(c)の表面強度が所定の範囲内にあることが好ましい。具体的には、封緘紙の水系接着剤受容層(c)側の表面に粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名「セロテープ(登録商標)」、品番:「CT−18」)を空気が入らないように貼着し、JAPAN TAPPI No.18−2に記載の方法に準拠し、インターナルボンドテスター(熊谷理機工業(株)製)にて粘着テープを剥離する際の強度を測定した結果が0.8〜2.0kg−cmであることが好ましく、1.0〜1.8kg−cmであることがより好ましい。0.8kg−cm以上であれば、容器から封緘紙を剥離する際に封緘紙の材料破壊が起こりにくく、容器に封緘紙の材料が残存しにくい。2.0kg−cm以下であれば、水系接着剤受容層(c)に充分な吸水性能を発現させることができるため、貼合時に所望の初期接着力が得られやすい。水系接着剤受容層(c)の表面強度は、例えば水系接着剤受容層(c)における無機微細粉末(B)の配合量や延伸倍率を調整することによって調節することができる。
通常、上記の吸水量と表面強度とは増減相反する傾向があるが、用途の要求に応じて調節すれば良い。
【0022】
封緘紙の構成材料
[熱可塑性樹脂]
本発明の封緘紙に使用される熱可塑性樹脂延伸フィルムは、熱可塑性樹脂を含むものである。使用できる熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の結晶性エチレン系樹脂、結晶性プロピレン系樹脂、ポリメチル−1−ペンテン等の結晶性ポリオレフィン系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、ポリフェニレンスルフィド等の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
これらの中でも、水蒸気透過率や耐水性、耐薬品性、生産コスト等の観点より、結晶性ポリオレフィン系樹脂を用いることが好ましく、結晶性プロピレン系樹脂を用いることがより好ましい。結晶性ポリオレフィン系樹脂は、結晶性を示すものである。樹脂のX線回折法による結晶化度は、通常20%以上が好ましく、35〜75%がより好ましい。結晶性を示さないものは、延伸により熱可塑性樹脂フィルム表面に空孔(開口)が十分に形成されない。該結晶化度はX線回折、赤外線スペクトル分析等の方法によって測定することができる。
結晶性プロピレン系樹脂としては、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体を用いることが好ましい。また、エチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、4−メチル−1−ペンテン等のα−オレフィンとプロピレンとを共重合させた様々な立体規則性を有するプロピレンを主成分とする共重合体を使用することもできる。共重合体は2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0023】
[無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')]
本発明の封緘紙を構成する熱可塑性樹脂延伸フィルムに使用することができる無機微細粉末(B)としては、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土、酸化珪素などの無機微細粉末、無機微細粉末の核の周囲にアルミニウム酸化物ないしは水酸化物を有する複合無機微細粉末、中空ガラスビーズ、さらに後記する表面処理剤(C)により親水化処理された無機微細粉末(B)等を例示することができる。中でも重質炭酸カルシウム、焼成クレー、珪藻土は、安価で延伸時に多くの空孔を形成させることができ、空孔率の調整が容易なために好ましい。
【0024】
また有機フィラー(B')としては、空孔形成の目的のために、上記の熱可塑性樹脂よりも融点又はガラス転移温度が高くて非相溶性の樹脂から選択して用いることが好ましい。具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、アクリル酸エステルないしはメタクリル酸エステルの重合体や共重合体、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、環状オレフィンの単独重合体及び環状オレフィンとエチレンなどとの共重合体(COC)等を例示することができる。上記熱可塑性樹脂として結晶性ポリオレフィン系樹脂を使用する場合には、有機フィラー(B')として、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、環状オレフィンの単独重合体及び環状オレフィンとエチレンなどの共重合体(COC)より選択して用いることが好ましい。
【0025】
[表面処理剤(C)により親水化処理された無機微細粉末(B)]
本発明の表面処理剤(C)による無機微細粉末(B)の親水化処理は、無機化合物を湿式粉砕する際に平均分子量1,000〜150,000の水溶性アニオン又はカチオンないし非イオン系高分子界面活性剤で処理することによって行うことができる。また、無機化合物を湿式粉砕する際にアニオン、カチオン又は非イオン帯電防止剤で処理することによって行うこともできる。これらの処理は2段階で両方とも行ってもよい。親水化処理した無機微細粉末の好ましい例として、特開平7−300568号公報に記載されるものを挙げることができる。
【0026】
層構成
本発明の封緘紙に使用できる熱可塑性樹脂延伸フィルムは少なくとも表面層(a)、基材層(b)、及び水系接着剤受容層(c)を含む多層構造である。このものは、例えば表面層(a)と基材層(b)の間、又は基材層(b)と水系接着剤受容層(c)の間に更に他の熱可塑性樹脂フィルム層を含んでもよい。
上記他の熱可塑性樹脂フィルム層は、本発明の封緘紙の機能をより向上し、または新たな機能を追加するために設けるものである。上記他の熱可塑性樹脂フィルム層としては、例えば、ガスバリア性を向上させるためにポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン等の樹脂の層、または銀、アルミニウム、酸化ケイ素、酸化アルミナ等を蒸着した樹脂フィルム、におい物質のバリア性を向上させるためのポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂の層等である。
本発明の封緘紙には両面にそれぞれ印刷や印字を施してもよい。封緘紙の表面には商品名を始めとする各種情報を印刷や印字することができる。封緘紙の裏面には開封後に確認できる各種情報を印刷や印字することができる。
【0027】
[表面層(a)]
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルムに含まれる表面層(a)は、熱可塑性樹脂延伸フィルムの厚さ方向の対称性を確保し、カールを防止するために設けると同時に、各種情報を印刷・印字可能な層であり、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷など一般的な印刷を行うことができる。
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルムに含まれる表面層(a)は、好ましくは熱可塑性樹脂(A)20〜100重量%と、無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')の少なくとも1種類80〜0重量%とを含み、さらに好ましくは熱可塑性樹脂(A)30〜70重量%と、無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')の少なくとも1種類70〜30重量%とを含み、特に好ましくは熱可塑性樹脂(A)40〜60重量%と、無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')の少なくとも1種類60〜40重量%とを含む。
表面層(a)の厚さは、3〜25μmであることが好ましく、4〜20μmであることがより好ましく、5〜15μmであることがさらに好ましい。
【0028】
[基材層(b)]
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルムに含まれる基材層(b)は、内部に空孔を持つことにより、封緘紙に適度な折曲反発力を与えるものである。またフィルムの延伸成形の際に芯材として用いうるものである。
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルムに含まれる基材層(b)は、好ましくは熱可塑性樹脂(A)50〜90重量%と、無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')の少なくとも1種類50〜10重量%とを含み、さらに好ましくは熱可塑性樹脂(A)55〜85重量%と、無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')の少なくとも1種類45〜15重量%とを含み、特に好ましくは熱可塑性樹脂(A)60〜80重量%と、無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')の少なくとも1種類40〜20重量%とを含む。
基材層(b)の厚さは、10〜200μmであることが好ましく、20〜140μmであることがより好ましく、30〜80μmであることがさらに好ましい。
【0029】
[水系接着剤受容層(c)]
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルムに含まれる水系接着剤受容層(c)は、その表面より一定範囲の量の水分を吸収できるので、水系接着剤が適用可能であり、容器等の物品への封緘の機能を発現できるものである。
本発明の熱可塑性樹脂延伸フィルムに含まれる水系接着剤受容層(c)は、熱可塑性樹脂(A)25〜75重量%、無機微細粉末(B)75〜25重量%を含み、好ましくは熱可塑性樹脂(A)30〜50重量%、無機微細粉末(B)70〜50重量%を含む。
水系接着剤受容層(c)には、吸水性を向上させるため、上記の表面処理剤(C)により親水化処理された無機微細粉末(B)を使用することが好ましい。水系接着剤受容層(c)の親水性が増すことにより、水系接着剤受容層(c)への水系接着剤等の接着性や乾燥性が良好になる。
水系接着剤受容層(c)の厚さは、3〜25μmであることが好ましく、4〜20μmであることがより好ましく、5〜20μmであることがさらに好ましい。
【0030】
[添加剤]
必要に応じて表面層(a)、基材層(b)及び水系接着剤受容層(c)には、熱安定剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、ブロッキング防止剤、核剤、滑剤、着色剤等の添加剤を配合してもよい。これらは各層に0.01〜3重量%の割合で配合するのが好ましい。
【0031】
封緘紙の製造方法
本発明の封緘紙は、当業者に公知の種々の方法を組み合わせることによって製造することができる。いかなる方法により製造された封緘紙であっても、請求項に記載された条件を満たすものである限り本発明の範囲内に包含される。
【0032】
[各層の形成]
熱可塑性樹脂延伸フィルムを構成する基材層(b)と表面層(a)は、熱可塑性樹脂、無機微細粉末(B)及び/又は有機フィラー(B')を所定の割合で混合し、押出し等の方法により製膜し、熱可塑性樹脂の融点より低い温度(好ましくは5〜60℃低い温度)で1軸方向又は2軸方向に延伸を行うことにより得られる。延伸は製膜中に行ってもよい。
【0033】
熱可塑性樹脂延伸フィルムを構成する水系接着剤受容層(c)は、熱可塑性樹脂及び無機微細粉末(B)、好ましくは表面処理剤(C)により親水化処理された無機微細粉末(B)を所定の割合で混合し、押出し等の方法により製膜し、熱可塑性樹脂の融点より低い温度(好ましくは5〜60℃低い温度)で1軸方向又は2軸方向に延伸を行うことによりが得られる。ここでも、延伸は製膜中に行ってもよい。
【0034】
[積層]
熱可塑性樹脂延伸フィルムの積層フィルム構造は、それぞれの層を別々に成形した後に積層することによって製造してもよいし、積層した後にまとめて延伸して製造してもよい。
例えば、基材層(b)の一方の面に表面層(a)を、他方の面に水系接着剤受容層(c)を積層し、1軸もしくは2軸方向に延伸することにより、全層1軸方向もしくは全層2軸方向に配向した積層構造物として得ることができる。また基材層(b)を1軸方向に延伸し、次いで表面層(a)、水系接着剤受容層(c)を両面に積層し、異なる延伸軸に再度1軸延伸することにより、1軸/2軸/1軸方向に配向した積層構造物として得ることもできる。
上記の他の熱可塑性樹脂フィルム層を含ませるために、各層を別個に延伸して積層することも可能であるが、上記のように各層を積層した後にまとめて延伸する方が簡便であり製造コストも安くなる。これらの方法により、本発明の封緘紙が得ることが好ましい。
【0035】
[延伸]
延伸には、公知の種々の方法を使用することができる。延伸は、樹脂の融点より5℃以上低い温度であり、また2種以上の樹脂を用いる場合は配合量の最大を占める樹脂の融点より5℃以上低い温度で行うことが好ましい。
延伸する場合、延伸の具体的な方法としては、ロール群の周速差を利用したロール間延伸、テンターオーブンを利用したクリップ延伸、またはこれらの組み合わせなどを挙げることができる。ロール間延伸によれば、延伸倍率を任意に調整して、任意の剛性、不透明度、平滑度、光沢度の熱可塑性樹脂延伸フィルムを得ることが容易であるので好ましい。クリップ延伸ではリニアモーターやパンタグラフを用いた同時二軸延伸も可能である。
【0036】
延伸倍率は特に限定されるものではなく、本発明の封緘紙の使用目的と、用いる熱可塑性樹脂の特性を考慮して決定する。ロール間延伸は通常は2〜11倍が好ましく、3〜10倍であることがより好ましく、4〜7倍であることがさらに好ましい。テンターオーブンを利用したクリップ延伸の場合は4〜11倍で延伸することが好ましい。これらを組み合わせた逐次二軸延伸での面積延伸倍率としては、通常は2〜80倍であり、好ましくは3〜60倍、より好ましくは4〜50倍である。また同時二軸延伸での面積延伸倍率としては、通常は2〜80倍であり、好ましくは3〜60倍、より好ましくは4〜50倍である。面積倍率を2倍以上にすることによって、延伸ムラを防いでより均一な膜厚の熱可塑性樹脂延伸フィルムを製造することが容易になる傾向がある。また80倍以下にすることによって、延伸切れや粗大な穴あきをより効果的に防ぐことができる傾向がある。
【0037】
[熱処理]
延伸後の熱可塑性樹脂延伸フィルムには熱処理を行うのが好ましい。熱処理の温度は、延伸温度から延伸温度より30℃高い温度の範囲内を選択することが好ましい。熱処理を行うことにより、延伸方向の熱収縮率が低減し、製品保管時の巻き締まりや、熱による収縮で生じる波打ち等が少なくなる。熱処理の方法はロール加熱又は熱オーブンで行うのが一般的であるが、これらを組み合わせてもよい。これらの処理は延伸したフィルムを緊張下に保持された状態において熱処理するのがより高い処理効果が得られるので好ましい。また、熱処理後には表面にコロナ放電処理やプラズマ処理などの酸化処理を施すのが後の印刷性付与等を考慮した場合に好ましい。本発明の封緘紙の全厚は特に制限されないが、45〜250μmが好ましく、より好ましくは50〜175μm、さらに好ましくは55〜95μmの範囲である。
【0038】
[印刷]
表面層(a)及び水系接着剤受容層(c)には、各種の印刷方式(オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷など)及び/又は印字方式(インクジェット方式、熱転写方式、電子写真方式など)により、印刷及び/又は印字を行うことができる。またアルミニウム、銅、銀などの金属層(金属箔、金属蒸着膜、金属粒子(粒状またはリーフィングタイプ)を含むインキの印刷層等)を設けてもよい。
【0039】
[切断]
次に、本発明の封緘紙として使用するのに適した大きさとサイズにフィルムを切断することができる。切断は当業者に通常用いられている方法で行う。例えば、トムソン刃を用いた打ち抜きや、カッターによる切断などが挙げられる。
本発明の封緘紙の形状とサイズは特に制限されず、貼着する開口部の形状やサイズに応じて適宜決定することができる。したがって、貼着する開口部が円形であれば円形の封緘紙とすることができ、矩形であればそれと相似形の封緘紙とすることができる。通常は、開口部全面を覆うことができる形状と大きさの封緘紙を用意する。例えば、封緘紙は開口部の外形よりも2〜7mm程度径を大きく裁断し、開口部に貼着したときに、径を大きくした余裕部分がシール剥がし用の摘みとして利用することができるようにすることが好ましい。
【0040】
このように、あらかじめ開口部に対応したサイズに切断したフィルムを用意しておき、それを開口部に貼着することにより封緘してもよいが、本発明では、あらかじめ切断していないロール状のフィルムを用意しておき、開口部に貼着した後に適切な位置で切断することもできる。工業的に封緘物を大量生産する場合は、後者の方法を採用することも好ましい。
【0041】
封緘方法
[封緘工程]
本発明の封緘紙は、物品の開口部に水系接着剤を用いて貼着することができ、この工程によって封緘を行うことができる。水系接着剤を用いて貼着する面は、本発明の封緘紙の水系接着剤受容層(c)を表面とする面である。本発明の封緘方法は、この工程を含むものであればその他にいかなる工程を含んでいても構わない。
【0042】
具体的には、水で溶解又は膨潤させた水系接着剤を、本発明の封緘紙の水系接着剤受容層(c)の貼着領域及び/又は開口部の貼着領域に適用し、両者を接合して乾燥させる。水系接着剤の適用方法は、通常用いられている塗工法の中から適宜選択して用いることができる。本発明では、水系接着剤を水系接着剤受容層(c)に塗工することが好ましい。乾燥は自然乾燥でもよいし、高温室に導入したり、温風をあてたりするなどの方法により乾燥を促進してもよい。本発明の封緘紙を用いた場合は乾燥時間が短いため、乾燥のためのエネルギーと時間を節約することができ、効率的な封緘を実現することができる。
【0043】
[水系接着剤]
本発明において使用する水系接着剤とは、水で溶解又は膨潤する接着剤である。例えば、水系溶媒と、天然系高分子もしくは固体可塑剤と高分子からなる所謂「水系接着剤(グルー糊)」を好ましい例として挙げることができる。本発明において使用することができる水系接着剤として、例えばデンプン、膠、カゼイン、セルロース、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、ラテックス、ポリマレイン酸系重合物、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシルメチルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、プルラン、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂の少なくとも一つを含むものが好ましく、これらの中では、デンプン、カゼインを含むものがより好ましい。水系接着剤としては、上記物質を含む水溶液やエマルジョンが使用できる。
【0044】
本発明の封緘紙を開口部に貼着する際に使用する水系接着剤の乾燥塗工量は、封緘紙を構成する熱可塑性樹脂延伸フィルムの吸水量および水系接着剤の固形分濃度により適宜選択される。通常は2〜100g/m2が好ましく、5〜50g/m2がより好ましく、10〜30g/m2がさらに好ましい。水系接着剤の乾燥塗工量が2g/m2以上であれば、封緘紙と開口部との間に実用的な接着強度を持たせやすく、また塗工量が100g/m2以下であれば、水系接着剤の乾燥が進みやすいため、十分な貼着を行いやすい。
【0045】
封緘紙の適用対象
本発明の封緘紙は水系接着剤の種類や性質を適宜選択することにより、種々の開口部を有する物品に適用することができる。
【0046】
[物品(容器等)]
例えば、本発明の封緘紙は容器等の物品に好適に適用することができる。具体的には、固形食品、液状食品、飲料等の食品、医薬品、入浴剤や粉末洗剤などの粉末状工業製品、液状洗剤などの液状工業製品などの広範囲にわたる材料を入れるための物品に本発明を適用することができる。本発明の封緘紙は水蒸気透過率を低く設計することができるため、なかでも、吸湿性材料を入れた物品に適用することが好ましく、特に粉末洗剤のように吸湿性が高い粉末状工業製品を入れた容器に好ましく適用することができる。ここでいう吸湿性材料とは、気温40℃、相対湿度90%の条件下に3日間静置したときの重量増加分が5重量%以上である材料を言う。本発明の封緘紙は、重量増加分が10重量%以上の吸湿性材料に適用すればより効果的であり、重量増加分が25重量%以上の吸湿性材料に適用すればさらに効果的であり、重量増加分が50重量%以上の吸湿性材料に適用すればさらにより効果的である。
さらに例えば、本発明の封緘紙は、透湿度、透気度を低く設定することができるため、なかでも、カレー、漬物、納豆等のにおいのある食品を入れた容器のほか、医療用器具や、カルス培養物等雑菌の混入を嫌う物品を入れた容器に好ましく適用することができる。
【0047】
容器の形状やサイズは、本発明の封緘紙を封緘できるものであれば特に制限されない。例えば、円筒状(上方ないし底面方向に向けてテーパーが付されているものを含む)、角柱状(例えば三角柱状から八角柱状、長方体など)、球状や楕円球状(ただし封緘用開口部は平面であるもの)、かご形の容器などを挙げることができる。
【0048】
[容器以外の適用対象物]
また、本発明の封緘紙は、容器の封緘以外の用途にも用いることができる。例えば、開口部内に設置された物品(例えばレンズ、傷つきやすい部材、吸湿性部材)を保護するために本発明の封緘紙を貼着しておき、物品の使用時に封緘紙を剥離して使用する態様などが挙げられる。また、別の例として、開口部内に印刷された文字(例えばくじ、パスワード)を外から視認できないようにするために不透明な本発明の封緘紙を貼着しておき、文字情報を必要としたときに封緘紙を剥離して文字情報を確認する態様も挙げられる。
【0049】
[物品開口部]
本発明の封緘紙は、開口部が水系接着剤を介した貼着に適した素材で形成されている物品に適用することができ、好ましくは吸湿性材料(紙、木材、セルロイド、ポリビニルアルコール等)で形成されているもの、より好ましくは紙で形成されているものに適用することができる。ここでいう紙には合成紙が含まれる。すなわち、パルプ紙のみならず、パルプ紙にポリエチレン等のフィルムを貼着したものも含まれる。本発明では、特に開口部がカートン紙で形成されているものに好ましく適用することができる。ここでいう開口部の材質は、本発明の封緘紙を貼着する際に接触する部分の材質を意味する。このため、開口部のみが紙で形成されていて、それ以外の部分が紙以外の材料で形成されている物品に対しても、本発明の封緘紙を適用することができる。
【0050】
封緘紙の剥離
開口部に貼着した本発明の封緘紙は、内容物使用時にその一辺や端部を指などで摘んで物品から引き剥がすことにより、容易に剥離させることができる。このとき、容易に引き剥がすことができるようにするために、本発明の封緘紙には摘み部が設けられていてもよい。例えば、半円状又は舌片状の摘み部を設けることができる。摘み部の大きさは、指などで摘むことができる範囲であれば特に制限されない。通常は封緘紙本体から1〜3cm程度外側に伸長させるように構成することができる。
【0051】
また、本発明の封緘紙には、ノッチを設けておいてもよい。例えば、飲料を入れた容器を封緘した場合は、開口部全体にわたって封緘紙を剥離せずに飲み口だけを剥離させたいこともある。このようなときは、剥離させたい領域に対応する封緘紙外縁にノッチを設けておき、そのノッチを利用して所望の領域を剥離させることもできる。ノッチは複数設けてもよい。
【実施例】
【0052】
以下に、製造例、実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。製造例及び実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は本発明を逸脱しない限り適宜変更できる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0053】
製造例1〜12、14、15
[熱可塑性樹脂延伸フィルムの製造]
表1に使用した材料の詳細を記載した。表中の「MFR」はメルトフローレートを意味する。表2に各熱可塑性樹脂延伸フィルムの製造にあたって使用した材料の種類と配合量(重量%)、延伸条件、層数及び層の厚さを記載した。表2に記載される材料の番号は、表1に記載される材料の番号に対応している。
【0054】
[製造例1]
製造例1において、表2に記載の配合物[a]と配合物[b]と配合物[c]をそれぞれ250℃に設定された3台の押出機で個別に溶融混練して、a/b/cの3層構造になるように共押出成形し、冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを表2に記載の延伸温度(1)に加熱した後、縦方向にロール間で5倍に延伸し、1軸延伸フィルムを得た。得られたフィルムの延伸温度(1)より20℃高い温度で熱処理を行い、両面に、放電処理機(春日電機(株)製)を用いて40W/m2/分のコロナ処理を行って3層構造の1軸延伸フィルムを得た。
【0055】
[製造例2]
製造例2において、表2に記載の組成を有する配合物[a]と配合物[b]と配合物[c]をそれぞれ250℃に設定された3台の押出機で個別に溶融混練して、a/b/cの3層構造になるように共押出成形した後、冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを表3に記載の延伸温度(1)に加熱して縦方向にロール間で5倍に延伸し、次いで表3に記載の延伸温度(2)に加熱してテンター延伸機を用いて横方向に8倍延伸し、延伸温度(1)より20℃高い温度で熱処理を行い、得られたフィルムの両面に、放電処理機(春日電機(株)製)を用いて40W/m2/分のコロナ処理を行って3層構造の2軸延伸フィルムを得た。
【0056】
[製造例9]
製造例9において、表2に記載の組成を有する配合物[a]と配合物[b]と配合物[c]をそれぞれ250℃に設定された押出機で個別に溶融混練してa/b/cの3層構造になるように共押出成形し、冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。得られたフィルムの両面に、放電処理機(春日電機(株)製)を用いて40W/m2/分のコロナ処理を行って3層構造の無延伸フィルムを得た。
【0057】
[製造例3〜8、10〜12、14、15]
製造例3〜8、10〜12、14、15において、表2に記載の組成を有する配合物[b]を250℃に設定された押出機で溶融混練して、押出成形した後、冷却装置にて70℃まで冷却して無延伸フィルムを得た。この無延伸フィルムを表2に記載の延伸温度(1)に加熱して縦方向にロール間で5倍に延伸し、次いで配合物[a]及び配合物[c]をそれぞれ250℃に設定された押出機で個別に溶融混練して、前記縦1軸延伸フィルムの両面にそれぞれ積層後、表2に記載の延伸温度(2)に加熱後テンター延伸機を用いて横方向に8倍延伸し、延伸温度(2)より20℃高い温度で熱処理を行い、得られたフィルムの両面に、放電処理機(春日電機(株)製)を用いて40W/m2/分のコロナ処理を行って1軸延伸/2軸延伸/1軸延伸された3層延伸フィルムを得た。
【0058】
[製造例13]
製造例13として、特開平10−212367号公報の実施例8と同様の延伸フィルムを用いた。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
試験例
製造例1〜15で得られた熱可塑性樹脂延伸フィルムについて、以下の試験を行って評価した。結果を表3に示す。
【0062】
[吸水量]
製造した熱可塑性樹脂延伸フィルムの水系接着剤受容層(c)の表面の吸水量を、コッブ法(JIS−P−8140)に準拠し、コッブサイズ測定器(熊谷理機工業(株)製)を使用して120秒間接触した後、吸水量を測定することにより求めた。3点データの平均値を測定値とした。
◎ :10ml/m2〜25ml/m2
○ :2ml/m2以上10ml/m2未満
× :2ml/m2未満又は25ml/m2を超える
【0063】
[水蒸気透過率]
製造した熱可塑性樹脂延伸フィルムの水蒸気透過率を、カップ法(JIS−Z−0208)に準拠し、吸湿剤として塩化カルシウムを透湿カップに入れて、当該樹脂延伸フィルムで蓋をして蜜ろうで密封してから、温度40℃、相対湿度90%の恒温恒湿槽に放置して、24時間毎に取り出して、透湿度を測定した。3点データの平均値を測定値とした。
○ :0〜10g/m2/24h
× :10g/m2/24hを超える
【0064】
[空孔率]
製造した熱可塑性樹脂延伸フィルムの厚さ方向に対して平行かつ面方向に垂直な切断面を作製し、この切断面をメタライジングした後、走査型電子顕微鏡で観察しやすい任意の倍率(例えば500倍〜2000倍)に拡大して観察し、さらに空孔部分をトレーシングフィルムにトレースし塗りつぶした図を画像解析装置(ニレコ(株)製:型式ルーゼックスIID)で画像処理を行い、空孔の面積割合(%)を求めて空孔率(%)とした。基材層(b)の空孔率(%)も上記方法により求めた。それぞれ、3点データの平均値を空孔率とした。
【0065】
[折れ性]
製造した熱可塑性樹脂延伸フィルムを試験片として10cm×10cmに切り出し、1kg荷重で2つ折り(MD方向(フィルム流れ方向)及びTD方向(MD方向に対して垂直方向)に平行)に30秒保持した直後から、当該試験片が開いて0°から120°の角度に達するまでの時間を測定した。試験片3点データの平均値を測定時間とした。
○ :20〜70秒
× :20秒未満、または70秒を超える
【0066】
[接着面の表面強度]
製造した熱可塑性樹脂延伸フィルムの水系接着剤受容層(c)の表面に、粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名「セロテープ」、品番:「CT−18」)を貼着し、JAPAN TAPPI No.18−2に記載の方法に準拠し、インターナルボンドテスター(熊谷理機工業(株)製)にて粘着テープを剥離した際の強度(kg−cm)を測定した。得られた強度と実使用上の良否判断は、以下の基準にて評価した。3点データの平均値を測定値とした。
○ :0.8〜2.0kg−cm
× :0.8kg−cm未満又は2.0kg−cmを超える
【0067】
【表3】

【0068】
実施例1〜8及び比較例1〜7
製造例1〜15において得られた各熱可塑性樹脂延伸フィルムから封緘紙(102mm×170mm)を切り出し、封緘紙の水系接着剤受容層(c)の4辺に水系接着剤((株)小泉商会:フジアットAL−8)を15mm幅で直線状に塗工して、吸湿性材料として粉末洗剤(P&G製、商品名「ボールド」)を入れた封入用カートン容器に当該試験片を貼合後、以下に記載の実用試験を実施した。結果を表4に示す。
【0069】
実用試験例
[初期接着強度]
製造した熱可塑性樹脂延伸フィルムについて、初期接着力を接着力測定機(JTトーシ(株)製、商品名「ASM−01」)を使用して測定した。樹脂延伸フィルム(幅40mm)の試験片を2つ準備し、一方の試験片に水系接着剤を塗布して塗布後1秒放置し、その後、他方の試験片と1秒間圧着し、さらに圧着後1秒間放置後に引張試験(引張速度:300mm/分)から剪断力を測定し、その最大荷重を記録した。3点データの平均値を測定値とした。
◎ :400g〜600g
○ :200g以上400g未満
× :200g未満又は600gを超える
【0070】
[パウダー漏れ]
各実施例、比較例において作成した封緘紙について、接着後20秒後に貼合カートン容器を横にして洗剤パウダー漏れ発生の有無を確認した。
○ :3回実施し1回も粉漏れ発生が無いもの
× :3回実施し1回でも粉漏れ発生が有るもの
【0071】
[接着状態]
各実施例、比較例において作成した封緘紙について、カートン容器に貼合して20秒後の当該サンプルの接着状況を確認した。
○ :3回実施し1箇所も端部浮き発生無いもの
× :3回実施し1箇所でも端部浮き発生有るもの
【0072】
[剥離性]
各実施例、比較例において作成した封緘紙について、水系接着剤が完全乾燥後、封緘紙を剥離して接着部分における基材残りの具合について、以下の基準で面積を目視評価した。
○ :3回実施し3回とも封緘紙が綺麗に剥離するもの
× :3回実施し1回でもカートン容器断面に材料破壊して基材が残るもの
【0073】
[洗剤防湿性]
各実施例、比較例において作成した封緘紙について、カートン容器に貼合作成して水系接着剤が完全乾燥後、気温40℃、相対湿度80%の環境に3日間保管してから封緘紙を剥離して粉末洗剤状態を観察した。
○ :3点実施し3点とも粉末洗剤に凝集がないもの
× :3点実施し1点でも粉末洗剤に凝集発生するもの
【0074】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の封緘紙は、湿度変化などの環境因子による影響を受けてカール変形することなく、既存の水系接着剤(グルー糊)方式の利便性を生かして容易に貼合することができる。また、本発明の封緘紙は、内容物の吸湿を防ぎ、容器に貼合後、容器面に封緘紙を残すことなく容易に容器から剥離することができる。従って、本発明の封緘紙を使用すれば、洗剤容器生産等の際の歩留まりを改善し、保管時は内容物を水分から保護し、使用時に不具合は無く、極めて有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面層(a)、基材層(b)及び吸水量が2〜25ml/m2の水系接着剤受容層(c)を含む熱可塑性樹脂延伸フィルムからなる封緘紙であって、熱可塑性樹脂延伸フィルムの空孔率が20〜50%であり、且つ折曲反発力による120°開放時間が20〜70秒である封緘紙。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂延伸フィルムの水蒸気透過率が0〜10g/m2/24hであることを特徴とする請求項1に記載の封緘紙。
【請求項3】
前記基材層(b)の空孔率が20〜50%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の封緘紙。
【請求項4】
前記水系接着剤受容層(c)の表面強度が0.8〜2.0kg−cmかつ初期接着力が200〜600gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の封緘紙。
【請求項5】
前記表面層(a)が熱可塑性樹脂(A)20〜100重量%を含み、前記基材層(b)が熱可塑性樹脂(A)20〜80重量%と、無機微細粉末(B)及び有機フィラー(B')の少なくとも1種類80〜20重量%とを含み、かつ、前記水系接着剤受容層(c)が熱可塑性樹脂(A)25〜50重量%と、無機微細粉末(B)75〜50重量%とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の封緘紙。
【請求項6】
前記水系接着剤受容層(c)に含まれる前記無機微細粉末(B)が、表面処理剤(C)により親水化処理されていることを特徴とする請求項5に記載の封緘紙。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の封緘紙を物品の開口部に水系接着剤を用いて貼着する工程を有することを特徴とする物品の封緘方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の封緘紙が物品の開口部に水系接着剤で貼着されていることを特徴とする封緘物。
【請求項9】
前記開口部が紙で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の封緘物。
【請求項10】
前記開口部がカートン紙で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の封緘物。
【請求項11】
前記物品が吸湿性材料を入れた容器であることを特徴とする請求項8〜10のいずれか一項に記載の封緘物。
【請求項12】
前記吸湿性材料が粉末洗剤であることを特徴とする請求項11に記載の封緘物。

【公開番号】特開2008−179418(P2008−179418A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334253(P2007−334253)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000122313)株式会社ユポ・コーポレーション (73)
【Fターム(参考)】