射出成形体の製造装置
【課題】二次射出によりサイドターンランプ2を一体化する前にハウジング部3にインサート部材5を組込むための部品組込み装置10の片持ち長さを短くして安定化させる。
【解決手段】部品組込み装置を構成する第一可動架台13が基台11から突出したとき、該突出先端部となる位置決め体13dを射出成形装置側に設けた位置決め受け体9aに嵌合して両持ち状態として位置決め支持し、これによってロボット部の片持ちを第二可動架台からの状態として片持ち長さを短くし、安定化させるようにした。
【解決手段】部品組込み装置を構成する第一可動架台13が基台11から突出したとき、該突出先端部となる位置決め体13dを射出成形装置側に設けた位置決め受け体9aに嵌合して両持ち状態として位置決め支持し、これによってロボット部の片持ちを第二可動架台からの状態として片持ち長さを短くし、安定化させるようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ターンランプ等の射出成形体の製造装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、中空状の射出成形体、例えばサイドターンランプを、少なくとも金型面同士の対向方向の離接移動が相対的に行なわれるように構成され、成形体を成形するための型面が形成された第一、第二の金型と、成形体を射出成形するための射出手段とを備えた射出成形装置を用いて形成する場合では、一次射出においてレンズ部とハウジング部とを成形し、これらレンズ部とハウジング部とがそれぞれ保持された第一、第二の金型同士を再度型締めさせて二次射出を行なうことで、レンズ部とハウジング部とが一体化されたサイドターンランプとなるようにした所謂中空体成形手法が知られている。ところで、サイドターンランプは、レンズ部とハウジング部とを一体化する前の段階でハウジング部側に光源(バルブや発光ダイオード)や、光源に接続される端子部材が組み込まれることになるが、前記手法でサイドターンランプを成形する場合では、一次射出の工程と二次射出の工程とのあいだで、一方の金型に保持されたハウジング部に対して光源や端子部材を組み込む必要があり、このような作業をいちいち人手で行なうのは作業性を著しく低下させる。
この改善策として、第一、第二金型の近傍に本発明の作動装置に相当する遠隔操作装置(マニピュレーター、マジックハンド)のような作動装置を設けて、該遠隔操作装置により、第一、第二金型の作動にタイミングを合わせてハウジング部に光源や端子部材を自動的に組み込んだり、二次射出の終了後にサイドターンランプを金型から取り出したりする作業をさせるようにすることが提唱されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公表第WO2006/075694号公報
【特許文献2】特開2004−142210号公報
【特許文献3】特開2004−142391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記遠隔操作装置は、部品の組み込みをする際に、部品をハウジング部に対して正確な位置決めをしてから組込む必要があるが、前記従来のものは、片持ち状になった状態で動くハンド先端部にセットされた部品を組み込むものであるから、部品が光源や端子部材のような小さいものである場合には位置決めはさほど困難はないが、部品が大きくなるほど慣性を受けてハンド先端部が揺れ、このため正確な位置決めが難しくなって組み込み不良(作動不良)が発生し、歩留まりよく成形することができなくなるという問題がある。そのうえ、金型に保持されている成形体に対し、複雑な動きが要求されたような場合では、遠隔操作装置を一層大型化しなければならないばかりでなく、僅かな位置ズレでも精度が著しく低下してしまい、遠隔操作装置の操作に限界が生じるという問題がある。
そこで射出成形するために設けられる一方の固定側金型に対向するようにして例えば上下方向に向く一対のガイドレール(駆動用のスパイラルレール)を設け、該ガイドレールに沿わせる状態で両持ち支持のロボットを固定金型に型持ちされる一次射出されたハウジング部に対向するよう移動させて位置決めし、しかる後、必要な部品の組み込みをするようにして安定した精度の高い部品組み込みができるようにすることを提唱した(特願2007−137375号)。
このものはロボットが両持ち支持されるため、安定性の高い部品組み込みができるという利点はあるが、可動金型を一対のガイドレールのあいだに挟まれる状態で二次射出させるべく型移動を図る必要があるため、部品が大きくなるとガイドレールの対向間隔が広くなってロボット全体が大きくなって装置全体を大型化せざるを得ないだけでなく、ロボット移動のためのエネルギーコストが増大するという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、少なくとも金型面同士の対向方向の離接移動が相対的に行なわれるように構成され、第一半部が支持される第一金型と第二半部が支持される第二金型とを型合わせして両半部同志の突合せ部位に樹脂材を射出して成形体を製造するための射出成形装置と、前記両半部のうちの少なくとも一方の半部に部品を組込むための部品組み込み装置とを設けて構成される射出成形体の製造装置において、前記部品組み込み装置は、基台と、該基台に設けられた第一ガイドレールに案内されて射出成形装置方向に向けて移動自在に設けられる第一可動架台と、該第一可動架台に設けられた第二ガイドレールに案内されて射出成形装置方向に向けて移動自在に設けられる第二可動架台と、該第二可動架台に設けられ、前記部品を半部に組込むための組込み手段とを備え、第一可動架台と射出成形装置とのあいだには、第一可動架台が射出成形装置側に移動したとき基台から片持ち状に突出した第一可動架台の突出端側部位の支持をするための支持手段が設けられ、組込み手段は、前記第一可動架台が射出成形装置に支持された状態で第二可動架台が射出成形装置側に移動したとき、第二可動架台から片持ち状に突出して半部に部品を組込むように構成されていることを特徴とする射出成形体の製造装置である。
請求項2の発明は、支持手段は、前記支持をすることで第一可動架台と射出成形装置とのあいだの位置決めをするように構成されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形体の製造装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、部品を組込むための組込み手段のうち、基台から突出する第一可動架台が射出成形装置側に支持された両持ち支持状態になって安定化され、そして該安定化した第一可動架台に片持ち支持される第二可動架台に設けたロボット部による部品組付けが実行されることになって、片持ち支持部分が短くなり、安定した部品組込みができることになる。
請求項2の発明とすることにより、第一可動架台の射出成形装置側の支持が、該第一可動架台と射出成形装置との間の位置決めをすることになって機能の兼用化が達成されると共に、精度の高い部品組付けを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(A)はドアミラーの正面図、(B)はドアミラーの斜視図である。
【図2】サイドターンランプの分解斜視図である。
【図3】サイドターンランプの断面図である。
【図4】(A)は部品組付け装置の平面図、(B)は同装置の正面図、(C)は同装置の側面図である。
【図5】一次射出工程の概略を示す説明図である。
【図6】第一可動架台が射出成形装置側に移動した工程の概略を示す説明図である。
【図7】第二可動架台が射出成形装置側に移動した工程の概略を示す説明図である。
【図8】インサート部品をハウジング部に組み付けている工程の概略を示す説明図である。
【図9】インサート部品を組み付け終えた工程の概略を示す説明図である。
【図10】二次射出工程の概略を示す説明図である。
【図11】製造されたサイドターンランプを取り出そうとする工程の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図中、1はドアミラーであって、該ドアミラー1の前面側には、本発明の実施により製造されたサイドターンランプ2が組込まれている。因みに、図1には左座席側のドアミラーが示されており、図示するように前後左右が定義される。本実施の形態のサイドターンランプ2は、ハウジング部3、レンズ部4、そして光源(具体的な例として発光ダイオードを採用することができる)5aや基板5bが組込まれたインナー部材5を用いて構成されるが、インナー部材5の前面(表面)を必要において反射面にすることができる。そしてサイドターンランプ2は、後述するようにハウジング部3とレンズ部4とを一次射出した後、インナー部材5をハウジング部3に組込み、しかる後、ハウジング部3とレンズ部4とを互いに突き合わせた状態でその突合せ部に樹脂材6を二次射出して一体化することで製造することができるようになっている。
【0009】
7は射出成形装置であって、該射出成形装置7は、固定金型8と可動金型9とを備えて構成されるが、可動金型9は、固定金型8に対して型締め、型開きするための離接移動(図5において上下方向の移動)と、型開き状態で互いに対向する型面に沿う平行移動(図5において左右方向の移動)とができるようにし、これによって例えばサイドターンランプの射出成形ができるようになっているが、斯かる移動方式については既に出願前周知になった技術(例えば「射出成形事典」2002年4月27日初版第1刷、産業調査会 事典出版センター出版、第606〜610頁に記載される「8.11金型内加工技術」参照)を採用しているので、その詳細については省略する。そして前述したように、固定金型8と可動金型9とを用いた一次射出の工程では、サイドターンランプ2のハウジング部3とレンズ部4とが同時に射出成形され、二次射出の工程では、前記成形されたハウジング部3とレンズ部4との突合せ部に樹脂材6を射出して一体化するようになっているが、本発明を実施するにあたり、一次と二次の射出工程のあいだに、例えばハウジング部3の内面を成膜する成膜工程を必要において実行することもでき、この技術については例えば特許第3677033号公報に詳述しているので、その詳細は省略する。
【0010】
そして本実施の形態では、この一次と二次の射出工程とのあいだに、光源5aや基板5b等の部品が組込まれたインナー部材5を部品として組込む部品組み込み工程がセッティングされている(前述した成膜工程がある場合、部品組み込み工程は必要において成膜工程の前後の何れに設定してもよいことは勿論である。)が、該部品組み込み工程に本発明が実施されており、以下、これについて詳述する。
【0011】
10は射出成形装置7に隣接して設けられる部品組み込み装置であって、該部品組み込み装置10を構成する基台11には、第一ガイドレール12が前記射出成形装置7の方向に向けて第一の可動架台13を誘導するように設けられているが、本実施の形態では第一ガイドレール12は一対が平行するようにして設けられている。そして第一可動架台13は、前記第一ガイドレール12に挟まれるようにして配設され、該第一ガイドレール12に向けて支持体13aが突設されているが、該支持体13aには、前記第一ガイドレール12に摺動自在に外嵌するガイド溝13bが形成されている。14は基台11に設けられる第一駆動モータであって、該第一駆動モータ14から延設される駆動軸14aは、螺旋軸で構成され、そして一方の第一ガイドレール12に支持される支持体13aに形成された螺旋孔13cが噛合しており、これによって第一可動架台13は、第一駆動モータ14が正逆駆動することで第一ガイドレール12に摺動案内されることになって射出成形装置7に対して離接移動ができるようになっている。
【0012】
第一可動架台13には、射出成形装置7側の面に位置決め体13dが突設されており、そして第一可動架台13が射出成形装置7に最も近接する位置に移動することにタイミングを合せて位置決め体13dが射出成形装置7に凹設した位置決め体受け部9aに嵌入することになって、第一可動架台13の射出成形装置7に対する位置決めセットと、第一可動架台13の基台11と射出成形装置7とのあいだの両持ち支持とができるようになっている。因みに、位置決め体受け部9aは、図面では可動金型9に設けられているように記載したが、これは図面を記載する上で便宜上のものであって、実際には可動金型9ではなく、射出成形装置7を構成している基枠や基台等、不動のものに設けることになる。さらに位置決め体と位置決め体受け部とはそれぞれ逆側に設けてもよく、また雄雌嵌合して位置決め状の受け止め支持ができるものであればその構成は問わないものである。
【0013】
一方、15は第二の可動架台であって、該第二可動架台15は、前記第一可動架台13に設けた第二のガイドレール16に摺動自在に嵌合するガイド溝15aが形成されると共に、第一可動架台13に設けた第二の駆動モータ17の駆動軸(螺旋軸)17aに噛合する螺旋孔15bとが設けられている。そして第二可動架台15は、第二駆動モータ17の正逆駆動に基づいて射出成形装置7に対して離接移動することができるようになっている。
【0014】
さらに前記第二可動架台15には、アーム18の基端部が一体的に設けられるが、該アーム18の射出成形装置7側に折曲した先端部には、ロボット部19が設けられ、該ロボット部19には、前記インナー部材5を支持してハウジング部3に組込むための作動をする作動腕19aが設けられている。因みに本実施の形態では、インナー部材5は、第一可動架台13に設けた取付け窓13eから作動腕19aに組込み支持するようになっている。
【0015】
次に、サイドターンランプ2の製造工程について図5以降の図面を用いて説明する。まず図5では、射出成形装置7において一次の射出工程を実行し、ハウジング部3とレンズ部4とを成形しているが、このとき、第一、第二の可動架台13、15は射出成形装置7から離間した基端位置(遠い位置)に位置している。そしてこの位置ではロボット部19が取付け窓13eから覗ける姿勢になっていてインナー部材5がロボット部19の作動腕19aに取付けられる。この取付けについても勿論、機械化することができるが、ここでは省略する。
【0016】
一次の射出工程が終了すると、図6に示すように、可動金型9が固定金型8から型離れすることになるが、この型離れに伴い、ハウジング部3は可動金型9側に残り、レンズ部4は固定金型8側に残るように型設計されている。そして可動金型9の型離れ作動にタイミングを合わせるように第一駆動モータ14が駆動することになって、第一、第二可動架台13、15は一体になって可動金型9側に移動する。そしてその移動端に達したとき、前述したように第一可動架台13に設けた位置決め体13dが射出成形装置7に凹設した位置決め体受け部9aに嵌入することになって、第一可動架台13が基台11と射出成形装置7とのあいだに位置決め状態で両持ち支持される。
【0017】
次いで図7に示すように、第二駆動モータ17の駆動に基づき第二可動架台15が可動金型9側に移動することになるが、可動金型9の固定金型8からの離型距離は、インナー部材5が組込まれたロボット部19が両金型8、9間に入り込める幅に設定されている。そしてインナー部材5がハウジング部3の取付け対応位置に位置するまでロボット部19が移動して第二駆動モータ17が停止すると、図8に示すように作動腕19aが作動してインナー部材5をハウジング部3に取付けると、作動腕19aが元位置に移動すると共に、第一、第二駆動モータ14、17が逆駆動して第一、第二可動架台13、15が元位置まで移動する。これと共に、可動金型9が移動することになって、前記インナー部材5が組込まれたハウジング部3とレンズ部4とが互いに突き合わされた後(図9、10参照)、該突合せ部に樹脂材7が二次射出される。そして可動金型9が固定金型8から型離れし、製造されたサイドターンランプ2が取り出される(図11参照)。
【0018】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、射出成形体であるサイドターンランプを射出成形する場合に、ハウジング部3に部品であるインナー部材5を組込む場合に、その部品組込み装置10は、第一可動架台13が基台11から突出して基台11に対して片持ち状態になったとき、該第一可動架台13は、突出先端部に設けた位置決め体13dが射出成形装置7に凹設した位置決め体受け部9aに雄雌嵌合して位置決めされた状態で支持されることになって両持ち支持状態で位置決めされる。この結果、インナー部材5を組込むロボット部19が第一可動架台15に対して片持ち支持状態になるだけでよいことになって、片持ちとなる腕部分が短いものでよく、安定性が向上する。
【0019】
しかもこのとき第一可動架台13は、射出成形装置側に位置決めセットされるため、ロボット部19の精度の良い部品組込みを実行できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、車両に設けられるドアミラーに組込まれるサイドターンランプ等の射出成型体を製造する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
2 サイドターンランプ
3 ハウジング部
4 レンズ部
5 インサート部材
6 二次射出される樹脂材
7 射出成形装置
8 固定金型
9 可動金型
9a 位置決め体受け部
10 部品組込み装置
11 基台
13 第一可動架台
13d 位置決め体
19 ロボット部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ターンランプ等の射出成形体の製造装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、中空状の射出成形体、例えばサイドターンランプを、少なくとも金型面同士の対向方向の離接移動が相対的に行なわれるように構成され、成形体を成形するための型面が形成された第一、第二の金型と、成形体を射出成形するための射出手段とを備えた射出成形装置を用いて形成する場合では、一次射出においてレンズ部とハウジング部とを成形し、これらレンズ部とハウジング部とがそれぞれ保持された第一、第二の金型同士を再度型締めさせて二次射出を行なうことで、レンズ部とハウジング部とが一体化されたサイドターンランプとなるようにした所謂中空体成形手法が知られている。ところで、サイドターンランプは、レンズ部とハウジング部とを一体化する前の段階でハウジング部側に光源(バルブや発光ダイオード)や、光源に接続される端子部材が組み込まれることになるが、前記手法でサイドターンランプを成形する場合では、一次射出の工程と二次射出の工程とのあいだで、一方の金型に保持されたハウジング部に対して光源や端子部材を組み込む必要があり、このような作業をいちいち人手で行なうのは作業性を著しく低下させる。
この改善策として、第一、第二金型の近傍に本発明の作動装置に相当する遠隔操作装置(マニピュレーター、マジックハンド)のような作動装置を設けて、該遠隔操作装置により、第一、第二金型の作動にタイミングを合わせてハウジング部に光源や端子部材を自動的に組み込んだり、二次射出の終了後にサイドターンランプを金型から取り出したりする作業をさせるようにすることが提唱されている(例えば特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公表第WO2006/075694号公報
【特許文献2】特開2004−142210号公報
【特許文献3】特開2004−142391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかるに、前記遠隔操作装置は、部品の組み込みをする際に、部品をハウジング部に対して正確な位置決めをしてから組込む必要があるが、前記従来のものは、片持ち状になった状態で動くハンド先端部にセットされた部品を組み込むものであるから、部品が光源や端子部材のような小さいものである場合には位置決めはさほど困難はないが、部品が大きくなるほど慣性を受けてハンド先端部が揺れ、このため正確な位置決めが難しくなって組み込み不良(作動不良)が発生し、歩留まりよく成形することができなくなるという問題がある。そのうえ、金型に保持されている成形体に対し、複雑な動きが要求されたような場合では、遠隔操作装置を一層大型化しなければならないばかりでなく、僅かな位置ズレでも精度が著しく低下してしまい、遠隔操作装置の操作に限界が生じるという問題がある。
そこで射出成形するために設けられる一方の固定側金型に対向するようにして例えば上下方向に向く一対のガイドレール(駆動用のスパイラルレール)を設け、該ガイドレールに沿わせる状態で両持ち支持のロボットを固定金型に型持ちされる一次射出されたハウジング部に対向するよう移動させて位置決めし、しかる後、必要な部品の組み込みをするようにして安定した精度の高い部品組み込みができるようにすることを提唱した(特願2007−137375号)。
このものはロボットが両持ち支持されるため、安定性の高い部品組み込みができるという利点はあるが、可動金型を一対のガイドレールのあいだに挟まれる状態で二次射出させるべく型移動を図る必要があるため、部品が大きくなるとガイドレールの対向間隔が広くなってロボット全体が大きくなって装置全体を大型化せざるを得ないだけでなく、ロボット移動のためのエネルギーコストが増大するという問題があり、ここに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、少なくとも金型面同士の対向方向の離接移動が相対的に行なわれるように構成され、第一半部が支持される第一金型と第二半部が支持される第二金型とを型合わせして両半部同志の突合せ部位に樹脂材を射出して成形体を製造するための射出成形装置と、前記両半部のうちの少なくとも一方の半部に部品を組込むための部品組み込み装置とを設けて構成される射出成形体の製造装置において、前記部品組み込み装置は、基台と、該基台に設けられた第一ガイドレールに案内されて射出成形装置方向に向けて移動自在に設けられる第一可動架台と、該第一可動架台に設けられた第二ガイドレールに案内されて射出成形装置方向に向けて移動自在に設けられる第二可動架台と、該第二可動架台に設けられ、前記部品を半部に組込むための組込み手段とを備え、第一可動架台と射出成形装置とのあいだには、第一可動架台が射出成形装置側に移動したとき基台から片持ち状に突出した第一可動架台の突出端側部位の支持をするための支持手段が設けられ、組込み手段は、前記第一可動架台が射出成形装置に支持された状態で第二可動架台が射出成形装置側に移動したとき、第二可動架台から片持ち状に突出して半部に部品を組込むように構成されていることを特徴とする射出成形体の製造装置である。
請求項2の発明は、支持手段は、前記支持をすることで第一可動架台と射出成形装置とのあいだの位置決めをするように構成されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形体の製造装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明とすることにより、部品を組込むための組込み手段のうち、基台から突出する第一可動架台が射出成形装置側に支持された両持ち支持状態になって安定化され、そして該安定化した第一可動架台に片持ち支持される第二可動架台に設けたロボット部による部品組付けが実行されることになって、片持ち支持部分が短くなり、安定した部品組込みができることになる。
請求項2の発明とすることにより、第一可動架台の射出成形装置側の支持が、該第一可動架台と射出成形装置との間の位置決めをすることになって機能の兼用化が達成されると共に、精度の高い部品組付けを実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(A)はドアミラーの正面図、(B)はドアミラーの斜視図である。
【図2】サイドターンランプの分解斜視図である。
【図3】サイドターンランプの断面図である。
【図4】(A)は部品組付け装置の平面図、(B)は同装置の正面図、(C)は同装置の側面図である。
【図5】一次射出工程の概略を示す説明図である。
【図6】第一可動架台が射出成形装置側に移動した工程の概略を示す説明図である。
【図7】第二可動架台が射出成形装置側に移動した工程の概略を示す説明図である。
【図8】インサート部品をハウジング部に組み付けている工程の概略を示す説明図である。
【図9】インサート部品を組み付け終えた工程の概略を示す説明図である。
【図10】二次射出工程の概略を示す説明図である。
【図11】製造されたサイドターンランプを取り出そうとする工程の概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図中、1はドアミラーであって、該ドアミラー1の前面側には、本発明の実施により製造されたサイドターンランプ2が組込まれている。因みに、図1には左座席側のドアミラーが示されており、図示するように前後左右が定義される。本実施の形態のサイドターンランプ2は、ハウジング部3、レンズ部4、そして光源(具体的な例として発光ダイオードを採用することができる)5aや基板5bが組込まれたインナー部材5を用いて構成されるが、インナー部材5の前面(表面)を必要において反射面にすることができる。そしてサイドターンランプ2は、後述するようにハウジング部3とレンズ部4とを一次射出した後、インナー部材5をハウジング部3に組込み、しかる後、ハウジング部3とレンズ部4とを互いに突き合わせた状態でその突合せ部に樹脂材6を二次射出して一体化することで製造することができるようになっている。
【0009】
7は射出成形装置であって、該射出成形装置7は、固定金型8と可動金型9とを備えて構成されるが、可動金型9は、固定金型8に対して型締め、型開きするための離接移動(図5において上下方向の移動)と、型開き状態で互いに対向する型面に沿う平行移動(図5において左右方向の移動)とができるようにし、これによって例えばサイドターンランプの射出成形ができるようになっているが、斯かる移動方式については既に出願前周知になった技術(例えば「射出成形事典」2002年4月27日初版第1刷、産業調査会 事典出版センター出版、第606〜610頁に記載される「8.11金型内加工技術」参照)を採用しているので、その詳細については省略する。そして前述したように、固定金型8と可動金型9とを用いた一次射出の工程では、サイドターンランプ2のハウジング部3とレンズ部4とが同時に射出成形され、二次射出の工程では、前記成形されたハウジング部3とレンズ部4との突合せ部に樹脂材6を射出して一体化するようになっているが、本発明を実施するにあたり、一次と二次の射出工程のあいだに、例えばハウジング部3の内面を成膜する成膜工程を必要において実行することもでき、この技術については例えば特許第3677033号公報に詳述しているので、その詳細は省略する。
【0010】
そして本実施の形態では、この一次と二次の射出工程とのあいだに、光源5aや基板5b等の部品が組込まれたインナー部材5を部品として組込む部品組み込み工程がセッティングされている(前述した成膜工程がある場合、部品組み込み工程は必要において成膜工程の前後の何れに設定してもよいことは勿論である。)が、該部品組み込み工程に本発明が実施されており、以下、これについて詳述する。
【0011】
10は射出成形装置7に隣接して設けられる部品組み込み装置であって、該部品組み込み装置10を構成する基台11には、第一ガイドレール12が前記射出成形装置7の方向に向けて第一の可動架台13を誘導するように設けられているが、本実施の形態では第一ガイドレール12は一対が平行するようにして設けられている。そして第一可動架台13は、前記第一ガイドレール12に挟まれるようにして配設され、該第一ガイドレール12に向けて支持体13aが突設されているが、該支持体13aには、前記第一ガイドレール12に摺動自在に外嵌するガイド溝13bが形成されている。14は基台11に設けられる第一駆動モータであって、該第一駆動モータ14から延設される駆動軸14aは、螺旋軸で構成され、そして一方の第一ガイドレール12に支持される支持体13aに形成された螺旋孔13cが噛合しており、これによって第一可動架台13は、第一駆動モータ14が正逆駆動することで第一ガイドレール12に摺動案内されることになって射出成形装置7に対して離接移動ができるようになっている。
【0012】
第一可動架台13には、射出成形装置7側の面に位置決め体13dが突設されており、そして第一可動架台13が射出成形装置7に最も近接する位置に移動することにタイミングを合せて位置決め体13dが射出成形装置7に凹設した位置決め体受け部9aに嵌入することになって、第一可動架台13の射出成形装置7に対する位置決めセットと、第一可動架台13の基台11と射出成形装置7とのあいだの両持ち支持とができるようになっている。因みに、位置決め体受け部9aは、図面では可動金型9に設けられているように記載したが、これは図面を記載する上で便宜上のものであって、実際には可動金型9ではなく、射出成形装置7を構成している基枠や基台等、不動のものに設けることになる。さらに位置決め体と位置決め体受け部とはそれぞれ逆側に設けてもよく、また雄雌嵌合して位置決め状の受け止め支持ができるものであればその構成は問わないものである。
【0013】
一方、15は第二の可動架台であって、該第二可動架台15は、前記第一可動架台13に設けた第二のガイドレール16に摺動自在に嵌合するガイド溝15aが形成されると共に、第一可動架台13に設けた第二の駆動モータ17の駆動軸(螺旋軸)17aに噛合する螺旋孔15bとが設けられている。そして第二可動架台15は、第二駆動モータ17の正逆駆動に基づいて射出成形装置7に対して離接移動することができるようになっている。
【0014】
さらに前記第二可動架台15には、アーム18の基端部が一体的に設けられるが、該アーム18の射出成形装置7側に折曲した先端部には、ロボット部19が設けられ、該ロボット部19には、前記インナー部材5を支持してハウジング部3に組込むための作動をする作動腕19aが設けられている。因みに本実施の形態では、インナー部材5は、第一可動架台13に設けた取付け窓13eから作動腕19aに組込み支持するようになっている。
【0015】
次に、サイドターンランプ2の製造工程について図5以降の図面を用いて説明する。まず図5では、射出成形装置7において一次の射出工程を実行し、ハウジング部3とレンズ部4とを成形しているが、このとき、第一、第二の可動架台13、15は射出成形装置7から離間した基端位置(遠い位置)に位置している。そしてこの位置ではロボット部19が取付け窓13eから覗ける姿勢になっていてインナー部材5がロボット部19の作動腕19aに取付けられる。この取付けについても勿論、機械化することができるが、ここでは省略する。
【0016】
一次の射出工程が終了すると、図6に示すように、可動金型9が固定金型8から型離れすることになるが、この型離れに伴い、ハウジング部3は可動金型9側に残り、レンズ部4は固定金型8側に残るように型設計されている。そして可動金型9の型離れ作動にタイミングを合わせるように第一駆動モータ14が駆動することになって、第一、第二可動架台13、15は一体になって可動金型9側に移動する。そしてその移動端に達したとき、前述したように第一可動架台13に設けた位置決め体13dが射出成形装置7に凹設した位置決め体受け部9aに嵌入することになって、第一可動架台13が基台11と射出成形装置7とのあいだに位置決め状態で両持ち支持される。
【0017】
次いで図7に示すように、第二駆動モータ17の駆動に基づき第二可動架台15が可動金型9側に移動することになるが、可動金型9の固定金型8からの離型距離は、インナー部材5が組込まれたロボット部19が両金型8、9間に入り込める幅に設定されている。そしてインナー部材5がハウジング部3の取付け対応位置に位置するまでロボット部19が移動して第二駆動モータ17が停止すると、図8に示すように作動腕19aが作動してインナー部材5をハウジング部3に取付けると、作動腕19aが元位置に移動すると共に、第一、第二駆動モータ14、17が逆駆動して第一、第二可動架台13、15が元位置まで移動する。これと共に、可動金型9が移動することになって、前記インナー部材5が組込まれたハウジング部3とレンズ部4とが互いに突き合わされた後(図9、10参照)、該突合せ部に樹脂材7が二次射出される。そして可動金型9が固定金型8から型離れし、製造されたサイドターンランプ2が取り出される(図11参照)。
【0018】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、射出成形体であるサイドターンランプを射出成形する場合に、ハウジング部3に部品であるインナー部材5を組込む場合に、その部品組込み装置10は、第一可動架台13が基台11から突出して基台11に対して片持ち状態になったとき、該第一可動架台13は、突出先端部に設けた位置決め体13dが射出成形装置7に凹設した位置決め体受け部9aに雄雌嵌合して位置決めされた状態で支持されることになって両持ち支持状態で位置決めされる。この結果、インナー部材5を組込むロボット部19が第一可動架台15に対して片持ち支持状態になるだけでよいことになって、片持ちとなる腕部分が短いものでよく、安定性が向上する。
【0019】
しかもこのとき第一可動架台13は、射出成形装置側に位置決めセットされるため、ロボット部19の精度の良い部品組込みを実行できることになる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、車両に設けられるドアミラーに組込まれるサイドターンランプ等の射出成型体を製造する場合に利用することができる。
【符号の説明】
【0021】
2 サイドターンランプ
3 ハウジング部
4 レンズ部
5 インサート部材
6 二次射出される樹脂材
7 射出成形装置
8 固定金型
9 可動金型
9a 位置決め体受け部
10 部品組込み装置
11 基台
13 第一可動架台
13d 位置決め体
19 ロボット部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも金型面同士の対向方向の離接移動が相対的に行なわれるように構成され、第一半部が支持される第一金型と第二半部が支持される第二金型とを型合わせして両半部同志の突合せ部位に樹脂材を射出して成形体を製造するための射出成形装置と、
前記両半部のうちの少なくとも一方の半部に部品を組込むための部品組み込み装置とを設けて構成される射出成形体の製造装置において、
前記部品組み込み装置は、
基台と、
該基台に設けられた第一ガイドレールに案内されて射出成形装置方向に向けて移動自在に設けられる第一可動架台と、
該第一可動架台に設けられた第二ガイドレールに案内されて射出成形装置方向に向けて移動自在に設けられる第二可動架台と、
該第二可動架台に設けられ、前記部品を半部に組込むための組込み手段とを備え、
第一可動架台と射出成形装置とのあいだには、第一可動架台が射出成形装置側に移動したとき基台から片持ち状に突出した第一可動架台の突出端側部位の支持をするための支持手段が設けられ、
組込み手段は、前記第一可動架台が射出成形装置に支持された状態で第二可動架台が射出成形装置側に移動したとき、第二可動架台から片持ち状に突出して半部に部品を組込むように構成されていることを特徴とする射出成形体の製造装置。
【請求項2】
支持手段は、前記支持をすることで第一可動架台と射出成形装置とのあいだの位置決めをするように構成されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形体の製造装置。
【請求項1】
少なくとも金型面同士の対向方向の離接移動が相対的に行なわれるように構成され、第一半部が支持される第一金型と第二半部が支持される第二金型とを型合わせして両半部同志の突合せ部位に樹脂材を射出して成形体を製造するための射出成形装置と、
前記両半部のうちの少なくとも一方の半部に部品を組込むための部品組み込み装置とを設けて構成される射出成形体の製造装置において、
前記部品組み込み装置は、
基台と、
該基台に設けられた第一ガイドレールに案内されて射出成形装置方向に向けて移動自在に設けられる第一可動架台と、
該第一可動架台に設けられた第二ガイドレールに案内されて射出成形装置方向に向けて移動自在に設けられる第二可動架台と、
該第二可動架台に設けられ、前記部品を半部に組込むための組込み手段とを備え、
第一可動架台と射出成形装置とのあいだには、第一可動架台が射出成形装置側に移動したとき基台から片持ち状に突出した第一可動架台の突出端側部位の支持をするための支持手段が設けられ、
組込み手段は、前記第一可動架台が射出成形装置に支持された状態で第二可動架台が射出成形装置側に移動したとき、第二可動架台から片持ち状に突出して半部に部品を組込むように構成されていることを特徴とする射出成形体の製造装置。
【請求項2】
支持手段は、前記支持をすることで第一可動架台と射出成形装置とのあいだの位置決めをするように構成されていることを特徴とする請求項1記載の射出成形体の製造装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−58493(P2010−58493A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41790(P2009−41790)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【分割の表示】特願2008−223187(P2008−223187)の分割
【原出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000149468)株式会社大嶋電機製作所 (89)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【分割の表示】特願2008−223187(P2008−223187)の分割
【原出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000149468)株式会社大嶋電機製作所 (89)
【Fターム(参考)】
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