説明

射出成形型

【課題】本発明は、1つの母型で形状・体積の異なる複数の成形品を同時に成形する場合に、複数のユニット型を平行に配置して異なる温度に設定した場合でも各ユニット型に均等に型締力がかかるようにすることができ、形状・体積が異なる複数の成形品を母型とユニット型からなる1つの成形型で成形することができる射出成形型を提供することである。
【解決手段】成形品キャビティを持つ第1のユニット型2および第2のユニット型3と、前記ユニット型2,3を収納するスペースを持つ母型1から成る射出成形型のうち、前記ユニット型2,3同士が接する面および前記ユニット型2,3と前記母型1が接する面に断熱手段5を設けた射出成形型であって、前記ユニット型2,3と母型1が接する面のうち前記成形型の型締方向に垂直な面の少なくとも1つに熱による前記ユニット型2,3の型締方向への伸びによる変形を打ち消す変形打ち消し機構14をもつ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像機器のレンズや鏡枠部品などの精密成形品を溶融樹脂の成形で得る際に使用する射出成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、射出成形型のコスト削減や成形型の交換を容易にするために、予め異なるキャビティを持つユニット型を複数設け、複数のユニット型のなかから必要な形状のキャビティを持つユニット型を選択的に交換して使用する方法がとられている。これは射出成形機に常時固定的に備え付けられた母型に、所望のキャビティ形状を有するユニット型を装着して成形を行うものである。
【0003】
複数のユニット型を母型に装着して成形する場合、従来は特許文献1のように複数のユニット型同士が直接的に接した状態で組み付けられており、隣接するユニット型同士で熱の交換が自由に出来る構造となっていた。
一般に、形状・体積の異なる成形品を成形する場合、成形型の成形温度は個別に設定する必要がある。しかしながら、形状・体積の異なる複数の成形品のユニット型を1つの母型に組み付けて同時に成形する場合、特許文献1の構成では各ユニット型を個別に温度制御できない問題があった。
【0004】
そこで、特許文献2では、母型内に組み付けられる複数のユニット型の間に断熱材を配置した上でそれら複数のユニット型を連結する構造をとっている。この場合は、断熱材によって複数のユニット型間での熱交換が極めて小さくなり、個別に温度制御することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平2−32826号公報
【特許文献2】特開平9−39036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2の方法では、複数のユニット型の成形型の温度差がそれほど大きくない場合に有効である。しかしながら、複数のユニット型の成形型の温度差が大きくなる場合には複数のユニット型の熱膨張の差によって成形型に歪みが生じ、複数のユニット型の間に成形型の型締力が均等にかからなくなる可能性がある。
【0007】
例えば、成形型の型材にNAK55(大同特殊鋼製、線膨張率12.5×10−6/K(20〜200℃))を使用し、20℃での厚さを150mmとした2つのユニット型の一方の成形温度を100℃、他方の成形温度を110℃に設定して特許文献2の構成で成形を行ったとする。この場合、100℃に設定したユニット型は、熱膨張により100℃において型締方向の寸法が常温よりも+0.15mmだけ増加する。一方で、110℃に設定したユニット型は、型締方向の寸法が+0.17mmだけ増加する。このため2つのユニット型の型厚に0.02mmの差が生じることとなる。このとき、2つのユニット型のそれぞれの固定側型板と可動側型板は同じ厚さの空間に平行に配置されているため、110℃に設定したユニット型の方には100℃に設定したユニット型より強い型締力がかかることになる。しかしながら、それぞれのユニット型に適した型締力をかけなければ成形品のスラスト寸法に狂いが生じる。例えば、カメラの鏡枠やレンズなどでは1000分の数mm単位での精度が要求されるため、従来の方法では所望の寸法を得ることが困難である。また、成形型の寿命の観点からも複数のユニット型の間に均等に型締力をかけることが望ましく、変形に偏りが生じることは大量生産を行う上でも成形型の耐久性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的は、1つの母型で形状・体積の異なる複数の成形品を同時に成形する場合に、複数のユニット型を平行に配置して異なる温度に設定した場合でも各ユニット型に均等に型締力がかかるようにすることができ、形状・体積が異なる複数の成形品を母型とユニット型からなる1つの成形型で成形することができる射出成形型を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面の態様は、成形品キャビティを持つ少なくとも2つ以上のユニット型と、前記ユニット型を収納するスペースを持つ母型から成る射出成形型のうち、前記ユニット型同士が接する面および前記ユニット型と前記母型が接する面に断熱手段を設けた射出成形型であって、前記ユニット型と前記母型が接する面のうち前記成形型の型締方向に垂直な面の少なくとも1つに熱による前記ユニット型の型締方向への伸びによる変形を打ち消す機構をもつことを特徴とする射出成形型である。
そして、上記構成では、ユニット型を断熱手段で断熱することにより各ユニット型間で交換される熱量が極めて小さくなる。さらに、前記ユニット型の型締方向への伸びによる変形を打ち消す機構を併せて設けたことで、各ユニット型を個別の温度にしたときに熱膨張による変形が吸収され、全てのユニット型に等しく型締力をかけられる。これにより、複数のユニット型の成形型の温度を個別に制御することが可能になり、さらに個別の成形型温度にした場合に熱膨張量の差によって型締め力に差が生じることが防げるため、従来できなかった成形型の温度条件が異なる部品を1つの成形型内で成形できる。さらに成形型を断熱することで与えた熱の逃げを防ぐことが出来、消費するエネルギ−量を減らすことが出来るようにしたものである。
【0010】
好ましくは、前記ユニット型同士が接する面に設けた断熱手段は、任意の大きさの隙間によって形成される空気層である。
そして、上記構成では、上記と同等の成形型の断熱効果を、断熱材などの高価な材料を使わずに隙間によって生じる空気層で実現することで、安価に得ることが出来る。
【0011】
好ましくは、前記変形を打ち消す機構は、前記母型と前記ユニット型の間に設けられた隙間であり、前記隙間の寸法は、前記ユニット型および前記母型を所定の成形温度まで昇温したときの変形量以下で、かつ前記ユニット型および前記母型を所定の成形温度まで昇温したときに複数の前記ユニット型と前記母型が全て同じ強さで当てつくように設定されており、前記ユニット型ごとに前記隙間の寸法を調整するための寸法調整部が設けられている。
そして、上記構成では、上記の効果に加え、変形を打ち消す機構として設けた隙間が、成形型の段取りを行う常温時にユニット型と母型の間に存在することにより母型にユニット型を挿入する際に両者が干渉しにくくなり、挿入性が向上する。
【0012】
好ましくは、前記寸法調整部は、前記母型と前記ユニット型の間に設けられた隙間に配置されたスペーサである。
そして、上記構成では、上記の効果に加え、変形を打ち消す機構として設けた隙間が、成形型の段取りを行う常温時にユニット型と母型の間に存在することにより、母型にユニット型を挿入する際に両者が干渉しにくくなり、挿入性が向上する。また、複雑な機構を用いることなく隙間の調整が可能なため、母型の構造が簡単になることで、上記の効果をより安価に得ることができる。
【0013】
好ましくは、前記寸法調整部は、前記成形型の成形温度に応じて前記ユニット型ごとに前記ユニット型を構成する板の厚さを調整することで設定される。
好ましくは、前記寸法調整部は、前記複数のユニット型を熱膨張の異なる複数種類の材料で作り、前記複数のユニット型がそれぞれの所定の成形温度に到達したとき熱膨張による変形量が等しくなる状態に設定される。
そして、上記構成では、上記の効果に加え、母型にスペーサなどを設ける必要がないため、母型の構造が簡単になることで、上記の効果をより安価にえることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1つの母型で形状・体積の異なる複数の成形品を同時に成形する場合に、複数のユニット型を平行に配置して異なる温度に設定した場合でも各ユニット型に均等に型締力がかかるようにすることができ、形状・体積が異なる複数の成形品を母型とユニット型からなる1つの成形型で成形することができる射出成形型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施の形態の常温での射出成形型を正面方向から見た状態を示す縦断面図。
【図2】第1の実施の形態の常温での射出成形型を側面方向から見た状態を示す縦断面図。
【図3】第1の実施の形態の成形型のユニット型を取り外した母型を射出成形型の正面方向から見た状態を示す縦断面図。
【図4】第1の実施の形態の成形型のユニット型を取り外した母型を射出成形型の側面方向から見た状態を示す縦断面図。
【図5】第1の実施の形態の第1のユニット型の詳細構造を示す縦断面図。
【図6】第1の実施の形態の射出用成形型のスペーサを示す縦断面図。
【図7】第1の実施の形態の成形型を所定の温度に昇温した時点での射出成形型を示す縦断面図。
【図8】本発明の第2の実施の形態における常温での射出成形型を示す縦断面図。
【図9】第2の実施の形態の射出用成形型のユニット型を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施の形態]
(構成)
図1乃至図7は、本発明の第1の実施の形態を示す。図1は常温での射出成形型を正面方向から見た縦断面図を示し、図2は同じく常温での射出成形型を側面方向から見た縦断面図を示す。
本実施の形態の射出成形型は、母型1と、独立した2つ以上、本実施の形態では2つのユニット型(第1のユニット型2および第2のユニット型3)とから構成される。図3および図4は、母型1の構成を示す。母型1は、母型固定側取付板1aと、母型可動側取付板1bと、母型固定側型板1cと、母型可動側型板1dとを有する。母型固定側取付板1aは、射出成形機の固定側プラテン9に固定され、母型可動側取付板1bは、射出成形機の可動側プラテン10に固定されている。さらに、母型固定側取付板1aの内部には、溶融樹脂材料を射出する樹脂流路となるホットランナ4が埋め込まれている。
【0017】
母型1の中には、第1のユニット型2および第2のユニット型3を挿入するための空間であるユニット収納スペース11a、11bが設けられている。これらのユニット収納スペース11a、11bには、予め異なるキャビティを持つ複数のユニット型のなかから必要な形状の成形品キャビティを持つ2つのユニット型である第1のユニット型2および第2のユニット型3が適宜、選択的に交換して使用され、収納されている。
【0018】
第1のユニット型2は、固定側型板2aと、可動側型板2bと、可動側受板2cとから構成されている。同様に、第2のユニット型3は、固定側型板3aと、可動側型板3bと、可動側受板3cとから構成される。
第1のユニット型2の前記固定側型板2a、可動側型板2b、可動側受板2c、および第2のユニット型3の前記固定側型板3a、可動側型板3b、可動側受板3cには、温度調整用の温調媒体として水または油を流すことができる温調管2d、温調管3dがそれぞれ配設されている。(図1、図2参照)
前記固定側型板2aと3aには、ランナ12a、13aおよびスプルー12b、13bの流路が掘り込まれている。そして、前記第1のユニット型2および第2のユニット型3が前記母型1に挿入されるとそれらの流路はホットランナ4の流路6と連通するように配設されている。前記可動側型板2bと3bには、成形品キャビティ12c、13cの形状が掘り込まれており、それぞれ前記ランナ12a、13aおよびスプルー12b、13bの流路に連通している。
【0019】
図5は、第1のユニット型2の詳細構造を示す。なお、第2のユニット型3も同様に構成されている。すなわち、第1のユニット型2の可動側受板2cは、受板本体2c1と、スペーサ2c2と、可動側取付板2c3とから主に構成されている。固定側型板2aにはガイドブッシュ2e2が固定されている。ガイドブッシュ2e2には、固定側型板2aをガイドするガイドピン2e1が摺動可能に挿通されている。
【0020】
スペーサ2c2内には、突出板2jが成形型の型締方向に移動可能に収容されている。突出板2jにはエジェクタピン2iが突設されている。エジェクタピン2iの先端は、受板本体2c1に形成されたピン挿通孔を通して可動側型板2bの成形品キャビティ12c内に挿脱可能に挿入されるようになっている。そして、突出板2jによってエジェクタピン2iを動かし、エジェクタピン2iによって成形品キャビティ12c内の製品を突き出す構成になっている。スペーサ2c2の外周面には固定用溝2hが形成されている。この固定用溝2hに母型1の図示しない係合突部が係脱可能に係合されて第1のユニット型2を母型1に留めるようになっている。
【0021】
本実施の形態の射出成形型には、前記ユニット型2、3同士が接する面および前記ユニット型2、3と前記母型1が接する面に断熱手段5が設けられている。ここで、ユニット収納スペース11a、11bの中には、第1のユニット型2と第2のユニット型3の取り付け位置を位置決めする位置決め部材8が設けられている。そして、第1のユニット型2と第2のユニット型3は、位置決め部材8によって所定の位置に収まるようになっている。その際、前記母型1のユニット収納スペース11a、11bの中に前記第1のユニット型2および第2のユニット型3を挿入した状態で組み付けられたとき、第1のユニット型2と第2のユニット型3との間には、隙間5aが空くように配置される。これにより、前記母型1のユニット収納スペース11a、11bの中に前記第1のユニット型2および第2のユニット型3を挿入した状態で組み付けられたとき、前記母型1と前記第1のユニット型2および第2のユニット型3は隙間5aを介して隣接する。この隙間5a内の空気層によってユニット型2、3同士が接する面の断熱手段5が形成されている。
【0022】
また、母型固定側取付板1aには、第1のユニット型2と対応する部分に第1のスペーサ72、第2のユニット型3と対応する部分に第2のスペーサ73がそれぞれ配設されている。さらに、第1のスペーサ72の第1のユニット型2と接する面および第2のスペーサ73の第2のスペーサ73と接する面には、断熱材5bがそれぞれ設けられている。この断熱材5bは、例えばガラス繊維を結合材で固めたもので、熱伝導率0.59W/m・K、耐熱温度180℃程度のものである(株式会社ミスミ製、断熱材:MHI300(ミスミ材質型式)、参照URI http://cp.misumi.jp/spe_order/heat_cer_material.html)。
【0023】
また、ユニット型2、3と前記母型1が接する面のうち前記成形型の型締方向に垂直な面の少なくとも1つには、熱による前記ユニット型の型締方向への伸びによる変形を打ち消す変形打ち消し機構14が設けられている。この変形打ち消し機構14は、成形型の昇温を開始する前の常温時、前記可動側型板2cと断熱材5bが取り付けられた母型可動側取付板1bとの間に隙間Δxを形成するとともに、前記可動側型板3cと断熱材5bが取り付けられた母型可動側取付板1bとの間に隙間Δxを形成したものである。これらの隙間Δxと、隙間Δxとは次の通り設定される。
【0024】
すなわち、成形型の昇温を開始する前の常温時、前記可動側型板2cと断熱材5bが取り付けられた母型可動側取付板1b、前記可動側型板3cと断熱材5bが取り付けられた母型可動側取付板1bの間には、それぞれ隙間ΔxおよびΔxが空く。ここで、成形型を所定の成形温度まで昇温したときの状態を考える。第1のユニット型2の成形温度を温度T℃に、第2のユニット型3の成形温度を温度T℃に昇温し、温度はT>Tであるとする。
【0025】
隙間Δxは前記第1のユニット型2を成形温度Tに昇温したときの熱膨張量より小さく、隙間Δxは前記第2のユニット型3を成形温度Tに昇温したときの熱膨張量より小さい。すなわち前記第1のユニット型2および第2のユニット型3が成形温度である所定の温度になったとき、前記の隙間ΔxおよびΔxは無くなり、前記可動側型板2c、3cと前記母型可動側取付板1bに設けられた断熱材5bは接する。(図7参照。) 前記の隙間ΔxおよびΔxは、第1のスペーサ72および第2のスペーサ73の前記成形型の型締方向の寸法によって決まる。
【0026】
第1のユニット型2、第2のユニット型3の前記成形型の型締方向の全長をL、第1のユニット型2および第2のユニット型3の成形型材料の線膨張係数をα、第1のユニット型2と第2のユニット型3の型温の差をΔT=(T−T)で表すと、第1のスペーサ72および第2のスペーサ73の厚さの差はαΔTLとなるように構成される。すなわち第1のユニット型2および第2のユニット型3の熱膨張で生じる厚みの差分を第1のユニット型2および第2のユニット型3と母型1との間に設けた第1のスペーサ72および第2のスペーサ73の厚みの差分で補正するものである。
【0027】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の射出成形型の使用時には、まず、第1のユニット型2と第2のユニット型3との間を隙間5a内の空気層による断熱手段5で断熱することにより、第1のユニット型2と第2のユニット型3との間で交換される熱量が極めて小さくなる。
【0028】
さらに、ユニット型2、3と前記母型1が接する面の変形打ち消し機構14によってユニット型2、3の熱による変形を吸収する手段を併せて設けたことで、第1のユニット型2および第2のユニット型3を個別の成形温度に設定したときに熱膨張による第1のユニット型2および第2のユニット型3の熱変形の差異が吸収され、全てのユニット型2,3に等しく型締力をかけられる。
【0029】
(効果)
そこで、上記構成のものにあっては次の効果を奏する。すなわち、本実施の形態の射出成形型では、第1のユニット型2と第2のユニット型3の成形型の成形温度を個別に制御することが可能になり、さらに第1のユニット型2と第2のユニット型3をそれぞれ個別の成形温度に設定した場合に熱膨張量の差によって第1のユニット型2と第2のユニット型3との間に型締め力に差が生じることが防げる。そのため、従来できなかった成形型の成形温度条件が異なる部品を1つの成形型内で成形できる。さらに成形型を断熱することで与えた熱の逃げを防ぐことが出来、消費するエネルギー量を減らすことが出来る。
【0030】
また、第1のユニット型2と第2のユニット型3との間の断熱効果を、断熱材などの高価な材料を使わずに隙間5aによって生じる空気層による断熱手段5で実現することで、安価に得ることが出来る。
さらに、第1のユニット型2と第2のユニット型3との間の変形の差異を吸収する手段として設けた変形打ち消し機構14の隙間Δx、Δxが成形型の段取りを行う常温時に第1のユニット型2と第2のユニット型3と母型1との間に存在することにより母型1にユニット型2,3を挿入する際に両者が干渉しにくくなり、挿入性が向上し、成形型の段取り作業性が向上する。
【0031】
これにより、1つの母型1で形状・体積の異なる複数の成形品を同時に成形する場合に、複数のユニット型2、3を平行に配置して異なる温度に設定した場合でも各ユニット型2、3に均等に型締力がかかるようにすることができ、形状が異なる複数の成形品を母型1とユニット型2、3からなる1つの成形型で成形することができる射出成形型を提供することができる。
【0032】
[第2の実施の形態]
(構成)
図8および図9は、本発明の第2の実施の形態を示す。本実施の形態は、第1の実施の形態(図1乃至図7参照)の射出成形型のユニット型2、3と前記母型1が接する面の変形打ち消し機構14の構成を次の通り変更した変形例である。なお、図8および図9中で、図1乃至図7と同一部分には同一の符号を付してその説明を省略し、ここでは異なる部分について説明する。
【0033】
すなわち、本実施の形態の変形打ち消し機構21は、第1のユニット型2の型締方向の厚さL02と第2のユニット型3の型締方向の厚さL03とによって前記の隙間ΔxおよびΔxを決める構成にしたものである。
前記の隙間ΔxおよびΔxは、前記第1のユニット型2および第2のユニット型3の型締方向の厚さL02およびL03によって決まる。前記第1のユニット型2を常温からT℃まで昇温したときの温度差をΔT、線熱膨張係数をαとすると、前記第1のユニット型2の変形量はαΔT02である。
【0034】
同様にして前記第2のユニット型3を常温からT℃まで昇温したときの変形量はαΔT03となる。そのため、前記第1のユニット型2と第2のユニット型3の型締方向の厚さの差は、α(ΔT02−ΔT03) となるように構成される。すなわち、熱膨張で生じる厚みの差分を第1のユニット型2と第2のユニット型3の厚みの差分で補正するものである。
【0035】
(作用)
次に、上記構成の作用について説明する。本実施の形態の射出成形型では、ユニット型2、3と前記母型1が接する面の変形打ち消し機構21によってユニット型2、3の熱による変形を吸収する手段を併せて設けたことで、第1のユニット型2および第2のユニット型3を個別の成形温度に設定したときに熱膨張による第1のユニット型2および第2のユニット型3の熱変形の差異が吸収され、全てのユニット型2,3に等しく型締力をかけられる。
【0036】
(効果)
そこで、本実施の形態では第1実施形態の効果に加え、第1の実施の形態の母型1に設けられていた第1のスペーサ72および第2のスペーサ73を無くすことができるので、第1の実施の形態に比べて型構造が一層、簡単になる。そのため、第1の実施の形態で得られる作用・効果を、より安価に得ることができる。
【0037】
[変形例]
また、上記実施の形態では、第1のユニット型2と前記第2のユニット型3との間の熱膨張量の差を補正する手段として、第1のユニット型2および第2のユニット型3と母型1との間に設ける隙間に差をつける方法を示したが、これに限定されるものではない。例えば、それ以外の手段として、熱膨張の異なる材料で型厚の等しい2つのユニット型を作り、成形温度に設定したときにも2つのユニット型の型厚が等しくなるような構成をとる変形例も可能である。
【0038】
この変形例で使用する材料および成形条件の組合せの例を次に示す。一方のユニット型(型Aとする)をDAC10、日立金属製、線熱膨張係数11.1×10−6/K(200℃)で製作し、他方のユニット型(型Bとする)を鉄鋼材料(炭素鋼)、S55C、線熱膨張係数12.6×10−6/K(25〜200℃)で製作し、ユニット型の成形温度(型温)を(型Aの型温)=(型Bの型温+10℃)の関係が成り立つように設定した場合、成形温度付近で2つのユニット型AとBの熱膨張量はほぼ等しくなり、均等な型締めが可能となる。
【0039】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施できることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、例えば、画像機器のレンズや鏡枠部品などの精密成形品を溶融樹脂の成形で得る際に使用する射出成形型を使用する技術分野や、これを製造する技術分野に有効である。
【符号の説明】
【0041】
1…母型、2…第1のユニット型、3…第2のユニット型、5…断熱手段、5a…隙間、5b…断熱板、14…変形打ち消し機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形品キャビティを持つ少なくとも2つ以上のユニット型と、前記ユニット型を収納するスペースを持つ母型から成る射出成形型のうち、前記ユニット型同士が接する面および前記ユニット型と前記母型が接する面に断熱手段を設けた射出成形型であって、
前記ユニット型と前記母型が接する面のうち前記成形型の型締方向に垂直な面の少なくとも1つに熱による前記ユニット型の型締方向への伸びによる変形を打ち消す機構をもつことを特徴とする射出成形型。
【請求項2】
前記ユニット型同士が接する面に設けた断熱手段は、任意の大きさの隙間によって形成される空気層であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形型。
【請求項3】
前記変形を打ち消す機構は、前記母型と前記ユニット型の間に設けられた隙間であり、
前記隙間の寸法は、前記ユニット型および前記母型を所定の成形温度まで昇温したときの変形量以下で、かつ前記ユニット型および前記母型を所定の成形温度まで昇温したときに複数の前記ユニット型と前記母型が全て同じ強さで当てつくように設定されており、
前記ユニット型ごとに前記隙間の寸法を調整するための寸法調整部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形型。
【請求項4】
前記寸法調整部は、前記母型と前記ユニット型の間に設けられた隙間に配置されたスペーサであることを特徴とする請求項3に記載の射出成形型。
【請求項5】
前記寸法調整部は、前記成形型の成形温度に応じて前記ユニット型ごとに前記ユニット型を構成する板の厚さを調整することで設定されることを特徴とする請求項3に記載の射出成形型。
【請求項6】
前記寸法調整部は、前記複数のユニット型を熱膨張の異なる複数種類の材料で作り、前記複数のユニット型がそれぞれの所定の成形温度に到達したとき熱膨張による変形量が等しくなる状態に設定されることを特徴とする請求項3に記載の射出成形型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−86390(P2013−86390A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229715(P2011−229715)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】