説明

射出成形機の制御方法

【課題】後工程機が停止状態から正常な状態に復帰するまでの間、射出成形機が停止しない程度の成形速度を保って運転し続けるように制御する。
【解決手段】後工程機からの異常信号を受けると、射出成形機は遅延サイクルモードに切り換わる。遅延サイクルモードでは加熱筒から金型装置に射出する一次射出時間、金型装置の型開時間、金型装置内の溶融樹脂の冷却時間、加熱筒の内部へ溶融樹脂を供給する計量時間をそれぞれ延長し、通常成形サイクルでは3.5〜4秒の1ショットの成形サイクルを、遅延サイクルモードでは1〜10分延長し、射出成形機1が止まらない最低限の速度で射出成形機1を運転するように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、射出成形機と後工程機とを連動させ、後工程機の異常時において、後工程機が復旧するまで射出成形機の成形サイクルを遅延させるように制御する射出成形機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、射出成形機においては、射出装置の加熱筒内において加熱された溶融樹脂を金型装置のキャビティに充填し、冷却固化した成形品を金型装置から取り出す成形サイクルを繰り返すものであって、この種の射出成形機の成形サイクルとして、まず、計量工程が行われ、加熱筒内において樹脂を蓄え、金型装置の型閉めが行われた状態で加熱筒内の溶融樹脂の射出工程が行われる。射出ノズルから射出された樹脂は、金型装置内のキャビティ空間に充填され、次に、キャビティ空間内の樹脂の圧力を保持する保圧工程を経て金型装置を冷却させてキャビティ空間内の樹脂を冷却する冷却工程を行い、キャビティ内の樹脂が固化した成形品を型開工程後、金型装置から成形品が取り出す成形サイクルを繰り返す。
【0003】
前記射出成形機において、例えば、DVD等のディスク基板を成形する場合、並設した2台の射出成形機を運転してそれぞれディスク基板を成形し、これら各射出成形機と連動して各射出成形機から取り出された2枚のディスク基板を後工程機によって貼り合わせてDVDとして製造する。すなわち、射出成形機と、この射出成形機で成形した製品に対して後加工を行う後工程機とは、互いに同期させて運転させるように制御する必要がある。このため、後工程機が故障などによって異常が発生して一時的に停止した場合、射出成形機も後工程機と連動させて停止させる必要がある。しかし、射出成形機を停止させた場合、金型装置が冷えて再び運転を開始する際に、正常な成形サイクルを行うまで時間がかかり、成型効率が著しく悪くなってしまう。
【0004】
このため、例えば、特許文献1には、後工程機にトラブルが発生した場合、射出工程の次の冷却工程の時間、あるいはディスク基板の取出しが終了した後、型閉工程が開始されるまでの休止時間を延長することによって、後工程機の異常時において、通常の成形サイクルより長くした射出成形システムの制御方法が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3589598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1のように冷却工程の時間あるいは型閉じが開始されるまでの休止時間を遅延させたとして射出成形機が遅延できる時間には限度がある。すなわち、この種のDVDなどのディスク基板を成形する1ショットの成形サイクルの時間は3.5〜4秒であるのに対し、冷却工程の時間あるいは型閉じが開始されるまでの休止時間を遅延させたとしても1ショットの成形サイクルの時間は16秒程度である。このため、後工程機が復旧するまでの時間が長くなると、射出成形機の運転が困難となり、射出成形機を停止せざるを得ず、生産性の低下を招く、という課題を有していた。
【0007】
本発明は、前記従来の射出成形機の課題を解決して、後工程機にトラブルが発生している状態において射出成形機が停止しない速度で運転を維持して射出成形機の1ショットの成形サイクルの時間をできるだけ延長することが可能な射出成形機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の射出成形機の制御方法は、加熱筒内で加熱された溶融樹脂を金型装置のキャビティに射出し、キャビティ内で冷却固化した成形品を取り出す射出成形機と、この射出成形機と連動して該射出成形機から取り出した成形品に対して加工を行う後工程機と、この後工程機からの異常信号に基づいて前記射出成形機を通常サイクルモードから遅延サイクルモードに切り換える制御手段を備え、前記遅延サイクルモードでは前記制御手段により、1ショットの成形サイクルを1〜10分に延長する成形条件に設定するように制御したことを特徴とする。
【0009】
請求項1記載の射出成形機の制御方法によれば、制御手段により、1ショットの成形サイクルを1〜10分に延長する成形条件に設定することにより、長い冷却時間においても安定連続成形を可能とし、1ショットの成形サイクルにかかる成形時間を延長する。
【0010】
請求項2記載の射出成形機の制御方法は、前記遅延サイクルモードでは、金型装置の型閉時間、加熱筒から金型装置に射出する一次射出時間、金型装置の型開時間の変更及び計量動作後のノズルバック動作、サックバック遅延の追加により、金型装置内での溶融樹脂の冷却時間を延長することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の射出成形機の制御方法によれば、射出成形機は、成形が開始すると、金型装置の型閉工程、射出ノズルが前進して加熱筒から金型装置に射出する一次射出工程、金型装置内での溶融樹脂の冷却時間、金型装置の型開工程、成形品の取出という一連の射出成形機の作動が開始するが、遅延サイクルモードでは冷却時間を延ばし、一連の射出成形機の作動を遅延させて射出成形機が停止しない速度まで減速させて、1ショットの成形サイクルにかかる成形時間を延長する。
【0012】
請求項3の射出成形機の制御方法は、前記遅延サイクルモードでは、金型装置の型開速度を減速させて型開するように制御した特徴とする。
【0013】
請求項3の射出成形機の制御方法によれば、金型装置の型開速度を落すことによって冷却時間を延長しても安定した連続成形が可能となるように制御し、金型装置の型開時間を延長することができるとともに、型開速度が緩やかとなり、型開する際、キャビティ空間の内周面に貼り付いた基板の取出しが容易になる。
【0014】
請求項4の射出成形機の制御方法は、前記後工程機からの復旧信号を受けると通常成形モードより長く、遅延サイクルモードより短い調整サイクルを予め設定されたショット数繰り返してから通常成形モードに復帰するように構成したことを特徴とする。
【0015】
請求項5の射出成形機の制御方法によれば、後工程機が復旧すると、通常成形モードより長く、遅延サイクルモードより短い成形時間に設定された調整モードを予め設定されたショット数の成形を行った後、通常成形モードに復帰する。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載の射出成形機の制御方法によれば、加熱筒内で加熱された溶融樹脂を金型装置のキャビティに射出し、キャビティ内で冷却固化した成形品を取り出す射出成形機と、この射出成形機と連動して該射出成形機から取り出した成形品に対して加工を行う後工程機と、この後工程機からの異常信号に基づいて前記射出成形機を通常サイクルモードから遅延サイクルモードに切り換える制御手段を備え、前記遅延サイクルモードでは前記制御手段により、1ショットの成形サイクルを1〜10分に延長する成形条件に設定するように制御したものであるから、冷却時間を延長し、射出成形機が停止しない速度まで減速させて、後工程機が復旧まで可及的に射出成形機の1ショットの成形サイクルにかかる成形時間を可及的に延長することができ、後工程機が復旧するまで射出成形機の運転を維持することで後工程機が復旧した時点で通常の成形モードへと短時間で復帰できるため、生産性を高めることができる。
【0017】
請求項2記載の射出成形機の制御方法によれば、前記遅延サイクルモードでは、金型装置の型閉時間、加熱筒から金型装置に射出する一次射出時間、金型装置の型開時間の変更及び計量動作後のノズルバック動作、サックバック遅延の追加により金型装置内での溶融樹脂の冷却時間を延長することにより、射出成形機が停止しない速度まで減速させて、後工程機が復旧まで可及的に射出成形機の1ショットの成形サイクルを延長するように制御することができる。
【0018】
請求項3の射出成形機の制御方法によれば、前記遅延サイクルモードでは、金型装置の型開速度を減速させて型開するように制御したことによってキャビティ空間の内周面に貼り付いた基板の離型安定性を高めることができる。
【0019】
請求項4の射出成形機の制御方法によれば、前記後工程機からの復旧信号を受けると通常成形モードより長く、遅延サイクルモードより短い調整サイクルを予め設定されたショット数繰り返してから通常成形モードに復帰したものであるから、予め設定されたショット数、調整モードで成形を繰り返すことで金型装置を正常な温度まで戻し、その後の通常成形サイクルへの変更が円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。なお、本実施例では成形品としてDVDなどの記憶媒体として用いるディスク基板を成形する射出成形機を例として説明する。
【0021】
図1は本実施例における射出成形機の概念図、図2は射出成形機の動作を示すフローチャート、図3は射出成形機の成形サイクルを示すタイムチャート、図4は設定画面を示す説明図である。
【0022】
図1において、1は射出成形機であり、図示しない成形用金型のキャビティに溶融樹脂を充填するための射出装置2と、フロントプレート3とリヤプレート4との間に連結したタイバー5と、加熱筒6の内部に軸方向に進退自在にかつ周方向に回転自在に挿入されるスクリュ7と、前記スクリュ7の基端部が回転自在に支持されるプッシャープレート8と、前記リヤプレート4に回転自在に支持されたボールねじ軸9と、このボールねじ軸9と螺合するように前記リヤプレート4に固定されたボールナット10と、ベルト11とプーリ12を介して前記ボールねじ軸9を回転させることによって前記スクリュ7を軸方向に進退移動させる射出用サーボモータ13と、ベルト14とプーリ15を介して前記スクリュ7を回転させる計量用サーボモータ16、溶融樹脂の圧力を検出するロードセル18と、前記スクリュ7の回転によって前記加熱筒6の先端部に供給される溶融樹脂の圧力により後退する前記スクリュ7の後退速度を検出するエンコーダ19と、演算装置としての図示されないCPUから成り、各種のデータに基づいて射出成形機1を制御する制御手段20などによって構成されている。また、本実施例では成形するディスク基板に穴開加工するカットパンチ(図示しない)と、成形品を取り出すエジェクタピン(図示しない)が進退可能に設けられており、成形サイクル開始信号が出力されると、型閉、ノズル前進、型閉、射出、冷却、型開、取出という一連の成形作動を開始する。
【0023】
次に、図2のフローチャートを参照して射出成形機1の制御について説明する。本実施例における射出成形機1は、該射出成形機1から取り出した成形品に対して後加工を行う図示しない後工程機(図示しない)を備え、後工程機からの信号に基づいて射出成形機1を制御する。まず、射出成形機1を自動運転する際(ステップS1)、後工程機が停止状態にある時(ステップS2)、後工程機からの後工程機準備完了信号がOFFでサイクル遅延信号がOFFの場合(ステップS3)、所定ショット数、射出成形機1の自動運転を継続し(ステップS4)、所定ショット数に達する前に後工程機準備完了信号がONとなった場合(ステップS5)、射出成形機1を通常サイクルで自動運転する(ステップS6)。
【0024】
一方、所定ショット数に達しても後工程機準備完了信号がOFFの場合(ステップS7)、射出成形機1を自動停止する(ステップS8)。そして、後工程機が復旧した場合、すなわち、後工程機から後工程機準備完了信号がON、サイクル遅延信号のOFFの場合、射出成形機1を手動操作に切り換え(ステップS9)、自動運転を再開する(ステップS10)。
【0025】
また、後工程機準備完了信号がOFF、サイクル遅延信号のONの場合(ステップS11)、射出成形機1を所定時間、例えば1〜3分、遅延サイクルモードで運転し(ステップS12)、この間に後工程機が復旧してサイクル遅延信号のOFFとなったら(ステップS13)、所定ショット、例えば15ショット成形した後、自動運転を再開する(ステップS14)。所定時間、例えば10〜15分経過してもサイクル遅延信号のOFFのままの場合(ステップS15)、遅延サイクルモードを所定時間、例えば5〜10分、延長する(ステップS16)。この時間内に後工程機が復旧し、後工程機から後工程機準備完了信号がON、サイクル遅延信号のOFFとなった場合(ステップS17)、所定ショット、例えば15ショット成形した後、射出成形機1の自動運転を再開する(ステップS18)。しかし、ステップS16で遅延サイクルモードの延長時間を経過し(ステップS19)、それでもサイクル遅延信号のONがない場合、射出成形機1を自動停止する(ステップS20)。その後、手動操作に切り換え(ステップS21)、後工程機が復旧した場合、すなわち、後工程機から後工程機準備完了信号がON、サイクル遅延信号がOFFとなった場合、射出成形機1を自動運転する(ステップS22)。
【0026】
次に図3を参照して遅延サイクルモードでの射出成形機1の制御について説明する。遅延サイクルモードでは、制御手段20によって、加熱筒6内のスクリュ7を前進して加熱筒6から金型装置に射出する一次射出時間、金型装置の型開時間、金型装置内の溶融樹脂の冷却時間、加熱筒6の内部へ溶融樹脂を供給する計量時間を延長して射出成形機1が安定連続成形できる長いサイクルで運転する。
【0027】
まず、タイミングt0で型閉工程が開始され、型閉工程が終了したタイミングt1で加熱筒6内のスクリュ7を前進させて加熱筒6から金型装置に溶融樹脂を射出(一次射出)する射出工程が開始されるが、遅延サイクルモードでは制御手段20によってスクリュ7を駆動する射出用サーボモータ13の回転を通常サイクルモードの50%の速度に減速して低速回転させることによって射出時間を延長する。金型装置内に射出された溶融樹脂を所定時間、保圧し、保圧が完了したタイミングt3で金型装置を冷却して金型装置に射出された溶融樹脂を可塑化する。遅延サイクルモードでは、通常成形サイクルで設定された冷却時間に達したタイミングt4で60.0秒、冷却時間を延長する。
【0028】
金型装置内の樹脂の冷却工程と並行してノズルを後退させるノズルバックを行うが、金型装置からノズルを離した後、ノズルから溶融樹脂が漏れる所謂、鼻たれが起こりやすくなるため鼻たれを防止するサックバックを行う。遅延サイクルモードは冷却工程を延長することから、遅延サイクルモードでは可塑化後のタイミングt5から40.00秒遅らせたタイミングt6からサックルバックを開始するとともに、ノズルバックは35.00秒遅らせてタイミングt7から開始する。すなわち、ノズルバックが完了して5秒経過したタイミングt6からサックバックを開始する。なお、遅延サイクルモードにおいてサックバック幅は6.00mm、ノズルバックのストロークは10.0mmに設定している。サックバックが完了したタイミングt8で加熱筒6内の樹脂の圧力を調整して加熱筒6に所定量の樹脂を供給する計量工程を行う。
【0029】
冷却工程が完了したタイミングt9で型開が開始されるが、冷却工程が長くなると、金型装置及び樹脂の温度が安定せず、通常成形サイクルの同じ速度で金型装置を高速で型開すると、キャビティ空間の内周面に固化した樹脂が貼り付きやすくなるため型開を開始するタイミングt9で50%減速させて金型装置の型開速度を落とした状態で型開し、所定時間が経過したタイミングt10で速度を戻して型開きする。また、本実施例では成形するディスク基板に対してパンチ(図示せず)による穴明加工を行う。この穴明工程は、冷却工程と並行して行われるが、前述したように、遅延サイクルモードでは、冷却工程を延長することから、冷却工程を延長に伴ってパンチの前進位置での停止時間も所定時間遅延させる。そして、パンチの前進が終わって穴開工程が終了した後、タイミングt9で金型装置の型開が開始されるとともに、パンチを後退させるが、金型装置の型開速度を減速するのに伴ってパンチの後退するタイミングも遅延する。そして、金型装置の型開が完了したタイミングt12でエジェクトピンを前進させてキャビティ内の樹脂を取り出した後、エジェクトピンを後退させる。このエジェクトピンの後退が完了したタイミングt13で1ショットの成形サイクルが終了する。この後、エジェクトピンの後退が完了したタイミングt13で型閉するとともにノズルを前進させて金型装置に接触させるノズルタッチと加熱筒6内のスクリュ7を前進させて加熱筒6から金型装置に溶融樹脂を射出する射出工程とを開始するが射出工程は、0.60秒遅らせたタイミングt14で開始し、以後、同様な成形サイクルを繰り返す。
【0030】
以上のように、遅延サイクルモードでは、1ショットの成形サイクルの時間をできるだけ延ばして後工程機が復旧するまで遅延サイクルモードを繰り返すことによって、後工程機が復旧した後に成形機が通常成形へ復帰するまでの時間を大幅に短くすることが可能である。すなわち、DVDなどのディスク基板を成形する射出成形機1においては、通常成形サイクルでは1ショットの成形サイクルが2〜3秒であるに対し、遅延サイクルモードでは加熱筒6内のスクリュ7を前進して加熱筒6から金型装置に射出する一次射出時間、金型装置の型開時間、金型装置内の溶融樹脂の冷却時間、加熱筒6の内部へ溶融樹脂を供給する計量時間のそれぞれを延長することによって、1ショットの成形サイクルの時間を1〜10分まで延長することが可能である。このように、射出成形機1が安定連続成形可能な延長サイクル、すなわち、1ショットの成形サイクルの時間を1〜10分まで遅延させることにより、後工程機が復旧するまで射出成形機1を極めて遅い速度で運転を維持することができる。なお、1ショットの成形サイクルの時間が10分を超えると、加熱筒6内において樹脂焼けが発生し、加熱筒6の内壁に炭化した樹脂膜が貼り付く、あるいは炭化した樹脂粉が金型装置内に混入するなど、射出成形機1の故障を引き起こすから、成形サイクルの延長時間は最長で10分に設定する。換言すれば10分以内であれば、射出成形機1に悪影響を与えないで1ショットの成形サイクルの時間を最大限、延長することができる。また、後工程機が復旧した場合、後工程機が復旧した時点から通常サイクルモードに移行するまで予め設定されたショット数、調整サイクルモードで成形動作を行う。調整サイクルモードでは、加熱筒6内のスクリュ7を前進させて加熱筒6から金型装置に溶融樹脂を射出(一次射出)する射出工程から保圧、可塑化、サックバックを経て加熱筒6内のスクリュ7を後退させて加熱筒6内に所定の溶融樹脂を供給する計量工程までの時間を通常形成サイクルよりやや長くなるように設定し、その調整サイクルモードを予め設定されたショット数、繰り返すことによって、正常な通常成形モードへと安定して移行できる。すなわち、遅延サイクルモードでは、冷却工程が長く、金型装置の温度が必要以上に低下してしまうが、予め設定されたショット数、調整モードで成形を繰り返すことで金型装置を正常な温度まで戻すことができで、通常成形サイクルへの変更が円滑に行うことができる。
【0031】
以上のように、本実施例では、遅延サイクルモードにおいて射出成形機1が停止しない程度の成形条件で運転するように制御して1ショットの成形サイクル時間をできるだけ延長する。すなわち、この種のDVDなどのディスク基板を成形する射出成形機1において、射出成形機1が安定連続成形可能な延長サイクルに必要な成形条件で運転される遅延サイクルモードでは、金型装置から取り出される成形品は不良品となるものの、後工程機が復旧するまで射出成形機1が停止しない程度の極めて長い成形時間を掛けて射出成形機1を運転することができ、通常成形モードへと移行する時間を短縮化でき、生産性を高めることができる。また、後工程機が復旧すると、後工程機から復旧信号が送られ、通常成形モードに戻るが、予め設定されたショット数の成形を行う調整モードを経て通常成形モードに復帰する。調整モードでは通常成形モードより長く、遅延サイクルモードより短くなるように設定する。このように、予め設定されたショット数、調整モードで成形を繰り返すことによって、正常な通常成形モードへと安定して移行できる。すなわち、遅延サイクルモードでは、冷却工程が長く、金型装置の温度が必要以上に低下してしまうが、予め設定されたショット数、調整モードで成形を繰り返すことで金型装置を正常な温度まで戻し、その後の通常成形サイクルへの変更が円滑に行うことができる。
【0032】
以上、本発明の前記実施について詳述したが、本発明は前記実施例にお限定されることなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である、例えば、前記実施例ではDVDなどのディスク基板を成形した例を示したが、成形品としてはディスク基板に限定されるものではなく、各種の成形品を成形する射出成形機に適用可能であって、射出成形機の基本的構成も適宜選定すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態における射出成形機の概念図である。
【図2】本発明の実施の形態における射出成形機の動作を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態における射出成形機の成形サイクルを示すタイムチャートである。
【図4】本発明の実施の形態における設定画面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0034】
1 射出装置
6 加熱筒
20 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱筒内で加熱された溶融樹脂を金型装置のキャビティに射出し、キャビティ内で冷却固化した成形品を取り出す射出成形機と、この射出成形機と連動して該射出成形機から取り出した成形品に対して加工を行う後工程機と、この後工程機からの異常信号に基づいて前記射出成形機を通常サイクルモードから遅延サイクルモードに切り換える制御手段を備え、前記遅延サイクルモードでは前記制御手段により、1ショットの成形サイクルを1〜10分に延長する成形条件に設定するように制御したことを特徴とする射出成形機の制御方法。
【請求項2】
前記遅延サイクルモードでは、金型装置の型閉時間、加熱筒から金型装置に射出する一次射出時間、金型装置の型開時間の変更及び計量動作後のノズルバック動作、サックバック遅延の追加により、金型装置内での溶融樹脂の冷却時間を延長することを特徴とする請求項1記載の射出成形機の制御方法。
【請求項3】
前記遅延サイクルモードでは、金型装置の型開速度を減速させて型開するように制御した特徴とする請求項2記載の射出成形機の制御方法。
【請求項4】
前記後工程機からの復旧信号を受けると通常成形モードより長く、遅延サイクルモードより短い調整サイクルを予め設定されたショット数繰り返してから通常成形モードに復帰するように構成したことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の射出成形機の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−52319(P2010−52319A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220779(P2008−220779)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】