説明

射出成形機の型開き制御方法

【課題】成形不良品の発生を抑制しつつ、成形サイクルタイムを効果的に短縮できる射出成形機の型開き制御方法とする。
【解決手段】型開き動作の前に、可動側金型と固定側金型の接触範囲内で補助的に型開き動作を実施する。この補助的な型開き動作の所要時間を求め、冷却動作完了に合わせ完了するよう補助的な型開き動作を開始することにより、冷却動作と型開き動作の一部を重複させ、効果的に成形サイクルタイムを短縮することができる。また、型開き動作開始時点を必要以上に早めることによる成形不良品の発生を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の型開きを制御する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機としては、固定側金型に可動側金型を密着し、固定側金型と可動側金型が射出保持圧力に耐えるように、大きな型締め力によって強力な圧着力を付与する型閉じ動作、保持圧力を与える保圧動作、次の成形のために樹脂を計量する動作、金型内の樹脂を固化する冷却動作、可動側金型を固定側金型から離す型開き動作、金型内から成形品を排出する排出動作を成形サイクルとするものが知られている。
前述した射出成形機においては、型閉じ、型開きの速度を高速化することで、前述の各動作、つまり成形サイクルタイムを短縮して成形品のコストを低減(コストダウン)することが可能である。
【0003】
しかし、前述の射出成形機においては、金型の冷却完了まで固定側金型と可動側金型が大きな型締め力によって大きな力で圧着されているため、冷却完了後直ちに高速で金型を開き始めると、型締め力の反動(型締め反力)によって強い衝撃が生じ金型破損の原因となる。
【0004】
このことを解消した射出成形機の制御方法が特許文献1に開示されている。
この制御方法は、保圧完了後冷却完了前に金型内の成形品の固化が検知されると、可動側金型を固定側金型と離隔する直前の位置(金型の密着状態を維持する位置)まで低速で移動、つまり型開き補助動作し、冷却完了後に可動側金型を高速で固定側金型と離れる方向に移動、つまり型開き動作を行うようにしている。
このようにすれば、金型を開き始めるときには、型締め力が解除されているので、金型を高速で開き動作しても型締め反力による衝撃が生じることがなく、成形サイクルタイムを短縮して成形品のコストを低減できると共に、型開き時に金型破損の原因となる強い衝撃が生じることがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−16896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来の射出成形機の制御方法は、成形品の固化を検出して型開き補助動作を開始している。その成形品の固化の検出方法は、保圧開始からの時間で検出する第1の検出方法、金型内温度の低下で検出する第2の検出方法、金型内圧力の低下による第3の検知方法が提案されている。
前述の第1の検出方法においては、成形品の固化を時間で正確に検出することは容易でなく、その時間を短く設定すると成形不良品が発生し易い傾向がある。
また、前述の時間を必要以上に長く設定すると、型開き補助動作の完了が冷却完了に間に合わず、冷却完了した後に型開き補助動作が完了し、その後に型開き動作が開始するので、成形サイクルタイムを短縮することができないことがある。
【0007】
前述の第2・第3の検出方法においては、検出用の温度センサ、検出用の圧力センサを金型内に配置する必要があり、部品点数が多くなってコストの増加を伴う。
【0008】
本発明の目的は、成形不良品の発生を抑制しつつ、成形サイクルタイムを効果的に短縮できるようにした射出成形機の型開き制御方法とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の射出成形機の型開き制御方法は、金型の開閉動作をサーボモータで行う射出成形機において、
前記金型の冷却動作中に型開き動作を開始し、当該金型の可動側金型と固定側金型の接触範囲内で型開き動作を完了する第1の型開き動作と、
前記金型の冷却動作完了後に型開き動作を開始し、前記可動側金型と固定側金型を離隔する第2の型開き動作とを有し、
前記冷却動作の完了に合わせ第1の型開き動作が完了するように、その第1の型開き動作を開始するようにしたことを特徴とする射出成形機の型開き制御方法である。
【0010】
本発明の第2の射出成形機の型開き制御方法は、金型の開閉動作をサーボモータで行う射出成形機において、
前記金型の冷却動作中、計量動作中に型開き動作を開始し、当該金型の可動側金型と固定側金型の接触範囲内で型開き動作を完了する第1の型開き動作と、
前記金型の冷却動作及び計測動作の完了後に型開き動作を開始し、前記可動側金型と固定側金型を離隔する第2の型開き動作とを有し、
前記冷却動作の完了もしくは計量動作完了のどちらか遅い方に合わせて第1の型開き動作が完了するように、その第1の型開き動作を開始するようにしたことを特徴とする射出成形機の型開き制御方法である。
【0011】
本発明の第1の射出成形機の型開き制御方法においては、前記第1の型開き動作の所要時間を演算する型開き動作所要時間演算手段と、
前記金型を冷却する冷却時間を設定する冷却時間設定手段と、
前記金型の冷却動作開始からの経過時間と前記設定した冷却時間とより冷却動作完了までの冷却動作残り時間を求める手段とを有し、
前記冷却動作残り時間が前記型開き動作所要時間と等しいもしくは、小さくなったことを受け、前記第1の型開き動作を開始するようにできる。
【0012】
本発明の第2の射出成形機の型開き制御方法においては、前記第1の型開き動作の所要時間を演算する型開き動作所要時間演算手段と、
前記金型を冷却する冷却時間を設定する冷却時間設定手段と、
前記金型の冷却動作開始からの経過時間と前記設定した冷却時間とより冷却動作完了までの冷却動作残り時間を求める手段と、
前記計量動作の残り時間を推定する計量動作残り時間推定手段とを有し、
前記冷却動作残り時間と計量動作残り時間のどちらか大きい方に対し、前記型開き動作所要時間が等しいもしくは、小さくなったことを受け、前記第1の型開き動作を開始するようにできる。
【0013】
このようにすれば、予め求めておいた型開き動作所要時間に基づいて第1の型開き動作を開始するため、冷却動作もしくは計量動作の動作完了時には、その動作を終えることができることにより、成形サイクルタイムを効果的に短縮することができる。
また、第1の型開き動作を開始する時点を極力遅くして可動側金型と固定側金型に圧着力を付与した状態を長く維持できるので、成形不良品の発生を抑制することができる。
【0014】
本発明の第1又は第2の射出成形機の型開き制御方法においては、前記型開き動作所要時間演算手段は、型締め機構のクロスヘッドの移動量、クロスヘッドの速度及び加減速設定に基づき第1の型開き動作の所要時間を演算するようにできる。
【0015】
本発明の第2の射出成形機の型開き制御方法においては、前記計量動作残り時間推定手段は、射出機構のスクリュー軸の計量完了位置、現在位置、射出軸の現在速度に基づき計量動作残り時間を算出するようにできる。
【0016】
本発明の第1又は第2の射出成形機の型開き制御方法においては、前記第1の型開き動作の所要時間は、過去の動作所要時間の計測結果に基づき求めるようにできる。
【0017】
本発明の第2の射出成形機の型開き制御方法においては、前記計量動作残り間は、過去の計量動作所要時間の計測結果に基づいて推定するようにできる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1の射出成形機の制御方法によれば、冷却動作が開始してから、完了するまでの間に可動側金型と固定側金型を密着させつつも、その圧着力を解除しているため、冷却動作が完了してから高速で型開き動作しても、型締め反力による衝撃が生じることがなく、成形サイクルタイムを短縮して成形品のコストを低減できると共に、型開き時に金型破損の原因となる強い衝撃が生じることがない。
【0019】
本発明の第2の射出成形機の制御方法によれば、冷却動作及び計量動作がそれぞれ開始してから、それぞれ完了するまでの間に可動側金型と固定側金型を密着させつつも、その圧着力を解除しているため、冷却動作及び計量動作がそれぞれ完了してから高速で型開き動作しても、型締め反力による衝撃が生じることがなく、成形サイクルタイムを短縮して成形品のコストを低減できると共に、型開き時に金型破損の原因となる強い衝撃が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】射出成形機の説明図である。
【図2】金型から圧着力を除去し、密着した状態の説明図である。
【図3】成形サイクルを工程順に示す動作フローチャートである。
【図4】第1の型開き動作時の可動側金型の移動を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の射出成形機は、図1に示すように金型1と、型締め機構2と、射出機構3と、制御装置4を備えている。
前述の金型1は、固定プラテン10に取り付けた固定側金型11と、可動プラテン12に取り付けた可動側金型13を有する。
この金型1は図示しない冷却手段で冷却される。
前述の型締め機構2は、可動プラテン12に連結したトグル20と、そのクロスヘッド21に螺合したボールねじ22と、型締め用モータ23を有し、その型締め用モータ23で回転される軸24に設けた駆動プーリ25とボールねじ22に設けた従動プーリ26にて亘ってベルト27を巻掛け、型締め用モータ23でボールねじ22を回転することでトルグ20によって可動プラテン12を固定プラテン10に向けて往復移動し、型閉じ動作、第1の型開き動作、第2の型開き動作を行う。
【0022】
前述の型閉じ動作は、型締め用モータ23を回転してクロスヘッド21を移動することで、トグル20によって可動プラテン12を固定プラテン10に向けて移動して図1に示すように、可動側金型13を固定側金型11に密着し、大きな型締め力で強力な圧着力を付与する動作である。
前述の第1の型開き動作は、図1に示す前述した型閉じ状態から型締め用モータ23を駆動してクロスヘッド21を移動することで、トグル20を図2に示す状態に作動し、圧着力を解除して可動側金型13と固定側金型11を接触範囲内で圧着力が生じることなく、密着した状態とする動作である。
前述の第2の型開き動作は、図2に示す状態から型締め用モータ23を駆動して可動プラテン12を固定プラテン10から離れる方向に移動し、可動側金型13と固定側金型11を離隔する動作である。
【0023】
このようであるから、型締め機構2のクロスヘッド21を図1に示す型閉じ位置から若干だけ型開き方向に移動して第1の型開き動作をし、固定側金型11と可動側金型13の圧着力を除去して密着した状態に維持することができ、その状態から型締め機構2のクロスヘッド21をさらに型開き方向に移動して第2の型開き動作をすることで可動側金型13を固定側金型11と離隔して型開きできるので、効率良く型開き動作ができる。
【0024】
前述の射出機構3は、筒状のハウジング30内に回転及び移動自在に設けたスクリュー軸31と、このスクリュー軸31を前進、後退する射出用モータ32と、前記スクリュー軸31を回転する回転用モータ33と、樹脂材料(ペレット)をホッパー34に供給する図示しない材料供給手段と、ハウジング30内の樹脂材料を加熱する図示しないヒータを有する。
前述の射出用モータ32は、ボールねじ35を回転し、そのボールねじ35に螺合した可動体36をスクリュー軸31に回転可能に連結し、射出用モータ32を回転するとスクリュー軸31が前進、後退移動する。前進は金型1に向かう方向の移動で、後退は金型1と離れる方向の移動である。
前述の回転用モータ33で回転される軸に駆動プーリ37を設け、スクリュー軸31に従動プーリ38を長手方向にスライド自在に設け、この従動プーリ38と駆動プーリ37にベルト39を巻掛け、回転用モータ33を回転するとスクリュー軸31が回転する。
【0025】
前述の制御装置4は、型締め用モータ23、射出用モータ32、回転用モータ33に動作指令を出力すると共に、前述した冷却手段、材料供給手段に動作指令を出力し、型閉じ動作、射出動作、保圧動作、冷却動作、計量動作、第1・第2の型開き動作を行う。
【0026】
本発明の射出成形機は前述の構成に限ることはなく、従来から知られている構成の射出成形機を用いることも可能である。
つまり、本発明に用いる射出成形機は、型閉じ動作、射出動作、保圧動作、冷却動作、計量動作、第1の型開き動作、第2の型開き動作、成形品排出動作を成形サイクルとするものであれば良い。前述した以外の動作を有した成形サイクルでも良いことは勿論である。
【0027】
次に、本発明の射出成形機の制御方法の一例を図3のフローチャートに基づいて説明する。
まず、制御装置4から型締め用モータ23に型閉じ指令を出力して型締め機構2を作動することで前述した型閉じ動作をする(ステップ1)。
【0028】
前述の型閉じ動作完了後に、制御装置4から射出用モータ32に射出指令を出力してスクリュー軸31を前進(金型1に向けて移動)し、ハウジング30内の溶融樹脂を金型1内に射出する(ステップ2)。このとき、ハウジング30の先端部は固定プラテン10の孔10aに嵌合している。
【0029】
前述の射出動作完了後も射出用モータ32が回転し続け、金型1内に射出した樹脂に圧力を加え続けて保圧する(ステップ3)。
この保圧動作開始(射出動作完了)と同時に制御装置4から冷却手段に冷却指令を出力し、金型1の冷却動作を開始する。これと同時に制御装置4内に設けた冷却時間設定手段としての冷却タイマー(図示せず)をスタートする(ステップ4)。
【0030】
前述の型締め機構2による第1の型開き動作に要する時間(型開き動作所要時間)Toを制御装置4で算出し、記憶する(ステップ5)。
前述の型開き動作所要時間Toは、冷却動作に要する時間、計量動作に要する時間の少なくとも一方の時間よりも短い。
【0031】
前述の型開き動作所要時間Toの算出は次のように行う。
前述の型締め機構2のクロスヘッド21の移動量L(図1に示す位置から図2に示す位置までの移動量)と、クロスヘッド21の設定速度Vstd(型締め用モータ23を定格回転速度Vbで駆動したときのクロスヘッド21の移動速度)を制御装置4の型開き動作所要時間演算手段(図示せず)に入力し、図4に示すように、クロスヘッド21が設定速度Vstdに到達するまでの加速時間Tacc、クロスヘッド21が停止するまでの減速時間Tdec、クロスヘッド21が設定速度Vstdで移動する時間Tstdを前述の演算手段にて算出し、それらに基づいて、前述の型開き動作所要時間Toを算出する。
【0032】
前述の加速時間Tacc、減速時間Tdecは、Vstd/Vb+Tbで算出される。ただし、Vstdは設定速度、Vbは型締め用モータ23の定格回転速度、Tbは定格回転速度までの到達時間である。
前述の移動量Lと設定速度Vstd、各時間Tacc、Tstd、Tdecの間には、L={(Tstd)+(Tstd+Tacc+Tdec)}×Vstd/2が成り立ち、Tstdについて整理すると、
Tstd=L/Vstd−(Tacc+Tdec)/2となる。
【0033】
To=Tacc+Tstd+Tdecより、
To=L/Vstd+(Tacc+Tdec)/2となる。
【0034】
このようであるから、クロスヘッド21の移動量L、設定速度Vstd、型締め用モータ23の定格回転速度Vb、定格回転速度までの到達時間Tbにより、型開き動作所要時間Toを算出できる。
この型開き動作所要時間Toの算出は、どこのステップで実施しても良いし、予め算出したり、過去の実際の動作所要時間を計測して求めて制御装置4に記憶しても良い。
【0035】
また、型締め機構2がシリンダを利用して可動プラテン12を移動する構成の場合には、そのシリンダの圧力を、可動側金型13が固定側金型11に密着したときの低圧力より圧力上昇して高圧力とし、可動側金型13と固定側金型11の圧着力を強くするので、そのシリンダの圧力を高圧力から低圧力に圧力降下させることが第1の型開き動作となる。
この場合には、シリンダの圧力が高圧力から低圧力まで圧力降下する時間が型開き動作所要時間である。
つまり、本発明における型開き動作所要時間は、型締め機構の構成によって設定される時間である。
【0036】
前述の制御装置4は、射出動作完了から設定した時間が経過(例えば、タイマーがタイムアップ)後、回転用モータ33に計量動作指令を出力し、スクリュー軸31を回転すると共に、材料供給手段を駆動開始してホッパー34からハウジング30に樹脂ペレットを供給し、ハウジング30の先端部内30aに背圧を生じさせ、計量動作を開始する(ステップ6)。
【0037】
前述のようにして計量動作開始し、図示しない圧力センサで検出したハウジング30の先端部内30aの圧力が設定圧力となると、制御装置4は射出用モータ32に後退指令を出力し、スクリュー軸31を後退する。
これと同時に、射出用モータ32の回転数をエンコーダ等の回転検出器32aで検出し、その回転数によって制御装置4がスクリュー軸31の位置、後退速度を演算する。
そして、制御装置4に予め設定した計量動作完了位置までスクリュー軸31が後退したら計量動作完了と判断し、射出用モータ32、回転用モータ33の停止指令を出力して停止し、計量動作完了とする(ステップ14,15)。
【0038】
前述の冷却タイマがタイムアップしたら、制御装置4は冷却動作停止指令を出力し、金型1の冷却動作を完了する(ステップ16)。
【0039】
前述のように、計量動作、冷却動作しているときに、制御装置4は図示しない計量動作残り時間推定手段で計量動作完了までの残り時間Tmを算出(推定)する(ステップ7)と共に、冷却動作残り時間を求める手段、例えば前述の冷却タイマの設定時間とタイマ作動してからの経過時間の差によって冷却完了までの残り時間Tcを算出する(ステップ8)。
【0040】
前述の計量動作残り時間Tmの算出について説明する。
前述したスクリュー軸31の計量動作完了位置Pfと、スクリュー軸31の後退しているときの現在位置Pnと、スクリュー軸31の後退しているときの速度Vinjに基づき(Pm−Pf)/Vinjによって計量動作残り時間Tmを算出する。
なお、前述のハウジング30の先端部内30a内の実際の検出圧力と目標圧力との差を検出して、計量動作残り時間Tmを補正することが好ましい。
目標圧力>検出圧力のときには計量動作残り時間Tmを小さく補正する。
目標圧力<検出圧力のときには計量動作残り時間Tmを大きく補正する。
前述の補正量は過去の実績を反映する。
前述の計量動作残り時間は、過去の実際の計量動作の計測結果に基づいて推定しても良い。
【0041】
前述の計量動作残り時間Tmと冷却動作残り時間Tcを制御装置4で比較し、大きい方を射出動作残り時間Trとする(ステップ9)。
つまり、射出動作残り時間Trとは、成形品を正確に成形完了し、かつ次の成形動作に悪影響を及ぼさない状態となるまでの時間である。
【0042】
前述の射出動作残り時間Trと前述の型開き動作所要時間Toを制御装置4で比較する(ステップ10)。
そして、射出動作残り時間Trが型開き動作所要時間To以下(To≧Tr)となった時点で制御装置4は第1の型開き指令を出力し、型締め用モータ23を回転してクロスヘッド21を図1に示す位置(金型1に圧着力を付与している位置)から、その圧着力を解除する所定位置、例えば図2に示す位置に向けて移動し、第1の型開き動作を開始する。
【0043】
なお、射出動作残り時間Trが型開き動作所要時間Toと同一となった時点で制御装置4が第1の型開き指令を出力することが好ましい。
この場合、両者の時間の同一とは、算出誤差等を考慮して射出動作残り時間Trが型開き動作所要時間Toよりも若干、例えば1〜2秒長い場合を含むものとする。
【0044】
そして、クロスヘッド21が所定位置に到達したら、制御装置4は第1の型開き指令の出力を停止し、型締め用モータ23を停止することで第1の型開き動作を完了する(ステップ13)。
例えば、ステップ11で第1の型開き指令を出力した時点から型締め用モータ23の回転数をエンコーダ等の回転検出器23aで検出して制御装置4に入力し、その回転数に基づきクロスヘッド21の移動量を算出する。
そして、算出した移動量が前述した移動量Lとなったときに所定位置に到達したと判断し、制御装置4は第1の型開き指令の出力を停止し、型締め用モータ23を停止することで第1の型開き動作を完了する。
【0045】
この後に、冷却動作が完了すると共に、計量動作が完了したときに、制御装置4は型締め用モータ23に第2の型開き指令を出力し、第2の型開き動作をして可動側金型13を固側定金型11から離隔する(ステップ17)。
この状態で金型1内から成形品を排出する(ステップ18)。
【0046】
前述のように第1・第2の型開きの動作を制御することで、冷却動作、計量動作と一部の型開き動作が重複し、成形サイクルタイムを効果的に短縮でき、冷却動作及び計量動作がそれぞれ完了した時点で、第1の型開き動作が完了しているから、高速で型開き動作しても金型1に型締め反力による衝撃が生じることがなく、成形サイクルタイムを効果的に短縮できると共に、型開き時に金型破損の原因となる強い衝撃が生じることがない。
【0047】
しかも、冷却動作の残り時間と、計量動作の残り時間の長い方を規準とし、型開き動作所要時間に基づき第1の型開き動作を開始する時点を決定しているので、冷却動作の開始時点と計量動作の開始時点がずれている場合でも両方の動作がそれぞれ完了した時点では第1の型開き動作が完了するようにでき、成形サイクルタイムを効果的に短縮できる。
【0048】
しかも、第1の型開き動作を開始する時点を、極力遅くして可動側金型13と固定側金型11に圧着力を付与した状態を長く維持できるので、成形不良品の発生を抑制することができる。
【0049】
前述の実施の形態では、冷却動作、計量動作の残り時間と型開き動作所要時間によって第1の型開き動作を開始する時点を決定したが、冷却動作に要する時間、計量動作に要する時間と型開き動作所要時間によって決定しても良い。
【0050】
例えば、型開き動作所要時間Toを、冷却動作に要する時間と計量動作に要する時間の少なくとも一方よりも短くする。
そして、冷却動作を開始した時点と冷却動作所要時間で冷却動作の完了する時点を算出する。例えば冷却タイマのタイムアップ時点によって求める。
同様に、計量動作を開始した時点と計量動作所要時間で計量動作の完了する時点を算出する。例えば、スクリュー軸31が計量完了位置まで移動するのに要する時間を算出して求める。
【0051】
両方の動作の遅い方の完了時点と型開き動作所要時間に基づき、第1の型開き補助動作を開始する時点を決定し、その遅い方の完了時点には第1の型開き動作が完了するようにする。
【0052】
要するに、本発明は、冷却動作及び計量動作がそれぞれ開始した時点から、冷却動作及び計量動作がそれぞれ完了する以前の時点の間に、第1の型開き動作が開始、完了するようにすれば良い。
なお、成形不良品の発生に影響を与えるのは計量動作よりも冷却動作が大きいので、冷却動作のみに基づいて第1・第2の型開き動作を制御しても効果がある。
【符号の説明】
【0053】
1…金型、2…型締め機構、3…射出機構、4…制御装置、11…固定金型、13…可動金型、23…型締め用モータ、32…射出用モータ、33…回転用モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型の開閉動作をサーボモータで行う射出成形機において、
前記金型の冷却動作中に型開き動作を開始し、当該金型の可動側金型と固定側金型の接触範囲内で型開き動作を完了する第1の型開き動作と、
前記金型の冷却動作完了後に型開き動作を開始し、前記可動側金型と固定側金型を離隔する第2の型開き動作とを有し、
前記冷却動作の完了に合わせ第1の型開き動作が完了するように、その第1の型開き動作を開始するようにしたことを特徴とする射出成形機の型開き制御方法。
【請求項2】
金型の開閉動作をサーボモータで行う射出成形機において、
前記金型の冷却動作中、計量動作中に型開き動作を開始し、当該金型の可動側金型と固定側金型の接触範囲内で型開き動作を完了する第1の型開き動作と、
前記金型の冷却動作及び計測動作の完了後に型開き動作を開始し、前記可動側金型と固定側金型を離隔する第2の型開き動作とを有し、
前記冷却動作の完了もしくは計量動作完了のどちらか遅い方に合わせて第1の型開き動作が完了するように、その第1の型開き動作を開始するようにしたことを特徴とする射出成形機の型開き制御方法。
【請求項3】
前記第1の型開き動作の所要時間を演算する型開き動作所要時間演算手段と、
前記金型を冷却する冷却時間を設定する冷却時間設定手段と、
前記金型の冷却動作開始からの経過時間と前記設定した冷却時間とより冷却動作完了までの冷却動作残り時間を求める手段と、
前記冷却動作残り時間が前記型開き動作所要時間と等しいもしくは、小さくなったことを受け、前記第1の型開き動作を開始する請求項1記載の射出成形機の型開き制御方法。
【請求項4】
前記第1の型開き動作の所要時間を演算する型開き動作所要時間演算手段と、
前記金型を冷却する冷却時間を設定する冷却時間設定手段と、
前記金型の冷却動作開始からの経過時間と前記設定した冷却時間とより冷却動作完了までの冷却動作残り時間を求める手段と、
前記計量動作の残り時間を推定する計量動作残り時間推定手段とを有し、
前記冷却動作残り時間と計量動作残り時間のどちらか大きい方に対し、前記型開き動作所要時間が等しいもしくは、小さくなったことを受け、前記第1の型開き動作を開始する請求項2記載の射出成形機の型開き制御方法。
【請求項5】
前記型開き動作所要時間演算手段は、型締め機構のクロスヘッドの移動量、クロスヘッドの速度及び加減速設定に基づき第1の型開き動作の所要時間を演算するようにした請求項3又は4記載の射出成形機の型開き制御方法。
【請求項6】
前記計量動作残り時間推定手段は、射出機構のスクリュー軸の計量完了位置、現在位置、射出軸の現在速度に基づき計量動作残り時間を演算するようにした請求項4記載の射出成形機の型開き制御方法。
【請求項7】
前記第1の型開き動作の所要時間は、過去の動作所要時間の計測結果に基づき求めるようにした請求項3又は4記載の射出成形機の型開き制御方法。
【請求項8】
前記計量動作残り間は、過去の計量動作所要時間の計測結果に基づいて推定するようにした請求項4記載の射出成形機の型開き制御方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−171273(P2012−171273A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36938(P2011−36938)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】