説明

射出成形機の操作方法および射出成形機

【課題】大量のエネルギを吸収して溶融状態になっている射出材料が固化するとき、大量に放出する熱を有効に使用できる射出成形機を提供する。
【解決手段】金型(15、16)と金型温調機(30)とが熱媒体供給管(15a、16a)と熱媒体戻り管(15b、16b)とで接続されている射出成形機において、前記熱媒体戻し管(15b、16b)に熱交換器(35)を介装する。この熱交換器により加熱された空気を熱風供給管(40)によりホッパ(3)に送り、ホッパ中の射出材料を予熱・乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する射出成形機の操作方法および射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、従来周知のように、射出装置と金型装置とから構成されている。射出装置は射出シリンダ、この射出シリンダ内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ、射出シリンダ内に射出材料を供給するホッパー等から構成されている。したがって、スクリュを回転駆動しながらホッパから射出材料を射出シリンダに所定量宛供給すると、射出材料はスクリュにより前方へ送られる過程で、摩擦力の他に剪断作用も受け発熱する。また、射出シリンダの外周部にはヒータが設けられているので、射出材料は射出シリンダから伝達される熱と、摩擦、剪断作用等により発生する熱とにより溶融され、そして射出シリンダの先端部の計量室に蓄積される。
【0003】
一方、金型装置は、固定盤に取り付けられている固定側金型、この固定盤に対して型開閉される可動盤に取り付けられている可動側金型、可動盤を固定盤に対して型締めする型締装置等から構成されている。また、可動側金型と固定側金型との型合わせ面すなわちパーティング面には成形品に形状を与えるキャビティが形成されている。さらには、金型装置には金型温調機も設けられている。
したがって、前記したようにして計量されている高温の溶融状態の射出材料を、スクリュを軸方向に駆動して型締めされている金型のキャビティに射出充填し、冷却固化を待って可動側金型を開くと、成形品が得られる。このとき、成形サイクルを短縮するために、高温の射出材料が充填された金型は、金型温調機から給排される熱媒体により冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−273771号
【特許文献2】特開2008−246940号
【特許文献3】特開平5−253993号公報
【特許文献4】特開平9−262885号公報
【0005】
本発明の直接的な先行技術文献にはならないが、特許文献1には金型温度が調節されるようになっている射出成形金型が示されている。すなわち、金型温度調節手段により、充填前の金型のキャビティの温度を溶融樹脂の入り口近くが高く、奥の方が低くなるように制御される金型が示されている。この文献には溶融樹脂を冷却して高温になった熱媒体の熱の利用に関する記載はない。特許文献2には、成形品のコンタミネーションを防ぐため、金型部分を囲むようにして、クリーンブースチャンバーが設けられている射出成形機が示されている。このクリーンブースチャンバー内には、クリーンなエアを吹き出すエア供給ユニットが設けられている。また、クリーンブースチャンバーは、成形品をクリーンブースチャンバーから外部に搬出するための搬出口と、固定盤が貫通している貫通口とで外部に開口している。この貫通口からは、クリーンブースチャンバー内の高温のエアが流出する。そこで、この流出する高温のエアは、エア供給ユニットに循環させるようになっている。
【0006】
特許文献3には、固定側金型と可動側金型の、少なくとも一方の金型内に蓄熱材が給排される空所が形成された熱回収装置が記載されている。この空所と、金型の外部に設けられている蓄熱材供給タンクと蓄熱材貯蔵タンクは、それぞれの管路で接続されている。したがって、空所内に蓄熱材供給タンクから蓄熱材を供給すると、充填された高温の溶融樹脂との間で金型を介して熱交換され、蓄熱材は昇温する。昇温した蓄熱材を蓄熱材貯蔵タンクに貯めておくと、射出前の金型の昇温等に利用することができる。
【0007】
特許文献4には、その内部にスクリュが回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられている射出シリンダと、この射出シリンダに樹脂材料を供給するホッパとを備えた射出成形装置において、射出シリンダの外周部には複数個のヒータが、そしてこれらのヒータの外周部は所定の間隔をおいて冷却ファン付きのカバーが設けられた射出成形装置が示されている。冷却ファン付きのカバーの内部は、熱回収室となっている。この熱回収室とホッパは、熱風路で接続されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2に記載の射出成形機においても、金型から排熱される熱が回収されているようにみえるが、クリーンブースチャンバーから漏れる熱風をクリーンブースチャンバー内に単純に戻すもので、厳密な意味において排熱が回収されているとはいえない。特許文献3に記載の熱回収装置によると、空所内の蓄熱材と高温の溶融樹脂との間で金型を介して熱交換されるようになっているので、溶融樹脂の熱が蓄熱材に回収され、排熱が有効に利用されていると認められる。しかしながら、実施する上で色々な問題をかかえている。例えば、金型内に空所を格別に設けなければならないので、金型が高価になるという問題がある。格別に設けなければならないので、既存の金型にはそのままでは適用できない。また、キャビティのレイアウトによっては空所の位置に制約を受けることがある。さらには、形状上、空所の熱交換率は悪いという問題もある。空所のレイアウトに制約を受けると、一層効率は落ちることになる。
【0009】
特許文献4に記載の射出成形装置によると、冷却ファン付きのカバーの内部は熱回収室となって、この熱回収室とホッパーは熱風路で接続されているので、必要に応じて冷却ファンを起動して熱回収室に外気を導くと、射出シリンダを冷却することができ、冷却した熱風でホッパーに収納されている樹脂材料を予熱、乾燥することができる。したがって、可塑化能力を向上させることができ、成形サイクルが短くなっても可塑化に対応できるという効果は認められる。しかしながら、改良の余地も認められる。以下、電動射出成形機を例にとってその理由を説明する。表1は電動射出成形機のある成形サイクルにおける成形品1個当たりに供給されるエネルギの配分を示したものであるが、この表1に示されているように、電力エネルギの約70%が固体状の樹脂の可塑化に使用されている。
【0010】
【表1】

【0011】
可塑化された溶融樹脂は金型に射出充填され、そして冷却固化工程を経て成形品が取り出されるが、多量の電力すなわち熱を吸収している溶融状態の樹脂は、冷却固化工程中に多量の熱を放出することになるが、特許文献4に記載の射出成形機においては、この多量の熱は回収されていない。プラスチック熱特性データベースのポリプロピレンに関するデータから計算すると、40℃の1gのポリプロピレンを215℃に加熱・溶融するのに要する熱量は592.1J/gであり、50℃のそれを215℃に加熱・溶融するのに要する熱量は539.0J/gである。50℃に予熱すると、約10%の省エネになる。一般的な成形時の室温は25℃であるので、30℃予熱すると、30%程度の省エネになるが、引用文献4に記載の射出成形装置では、射出シリンダから回収されるようになっているので、換言すると溶融樹脂が強制的に冷却される部分から回収するようにはなっていないので、上記のような高温に予熱することはできない。すなわち、特許文献4に記載の発明は、射出シリンダの外周部に巻かれているヒータから外部へ逃げ出す熱を回収するもので、溶融樹脂が固化するときに放出する大量の熱を利用するようにはなっていない。
【0012】
したがって、本発明は、大量のエネルギを吸収して溶融状態になっている射出材料が固化するとき、大量に放出する熱を有効に使用する、射出成形機の操作方法および射出成形機を提供することを目的としている。また、既存の射出成形機にも容易に適用できる射出成形機の操作方法および射出成形機を提供することも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記目的を達成するために、金型に充填されている射出材料すなわち成形品を熱媒体で冷却するとき、冷却して自らは高温になっている熱媒体の熱を熱交換器を介して得た回収熱により射出材料を予熱あるいは予熱・乾燥するように構成される。熱媒体は、望ましくは金型温調機により金型に給排されるように構成される。そして、前記熱交換器は金型から熱媒体が戻る管路に、望ましくは金型と金型温調機との間の管路に設けられる。また、他の発明は、金型に充填されている射出材料を固定盤と可動盤とを介して空気により冷却し、自ら高温になった空気により射出材料を予熱するように構成される。さらに他の発明は、熱交換器を介して得た回収熱と、固定盤と可動盤とを介して冷却した空気とにより予熱するように構成され、また他の発明は固定盤と可動盤とを冷却する空気の流量を制御するように構成される。これにより、前記固定盤と可動盤の温度が安定する。
【0014】
かくして、請求項1記載の発明は、上記目的を達成するために、射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、前記射出材料の予熱には、前記金型に充填された射出材料を冷却して昇温した熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱を使用するように構成される。請求項2に記載の発明は、射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、前記射出材料の予熱には、前記金型に金型温調機から供給され、そして前記金型に充填された射出材料を冷却して昇温して戻ってくる熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱を使用するように構成される。請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の方法において、前記熱交換器は、射出材料を冷却する熱媒体と、射出材料を予熱する空気との間で熱交換するようになっている。
【0015】
請求項4に記載の発明は、射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記金型が固定盤に取り付けられている固定側金型と可動盤に取り付けられている可動側金型とからなり、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、前記射出材料の予熱には、前記金型に充填された射出材料を前記固定盤と可動盤を介して冷却して昇温した熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱を使用するように構成され、請求項5に記載の発明は、射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記金型が固定盤に取り付けられている固定側金型と可動盤に取り付けられている可動側金型とからなり、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、前記射出材料の予熱には、前記金型に充填された射出材料を前記固定盤と可動盤を介して冷却して昇温した空気を使用するように構成される。請求項6に記載の発明は、射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記金型が固定盤に取り付けられている固定側金型と可動盤に取り付けられている可動側金型とからなり、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、前記射出材料の予熱には、前記金型に充填された射出材料を冷却して昇温した熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱と、前記金型に充填された射出材料を前記固定盤と可動盤を介して冷却して昇温した空気とを使用すると共に、前記空気の量を制御して前記固定盤と可動盤の温度を安定化させるように構成される。
【0016】
請求項7に記載の発明は、射出材料が可塑化される射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料が充填される金型とを備え、該金型には熱媒体供給管および熱媒体戻り管を介して金型温調機から第1の熱媒体が給排されるようになっていると共に、前記射出シリンダには射出材料が入れられるホッパが設けられている射出成形機であって、前記熱媒体戻り管には、該熱媒体戻り管中を流れる第1の熱媒体と、前記ホッパに連なって該ホッパ中の射出材料を予熱する第2の熱媒体との間に熱交換する熱交換器が設けられ、それによって前記金型に充填された射出材料を冷却して昇温した前記第1の熱媒体中の排熱が前記第2の熱媒体中に移動し、前記ホッパ中の射出材料が予熱されるように構成される。請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の成形機において、前記熱交換器は前記金型と前記金型温調機との間の、前記熱媒体戻り管に設けられている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によると、射出材料の予熱には、金型に充填された射出材料を冷却して昇温した熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱を使用するので、換言すると多量の熱を吸収している溶融樹脂が固化するときに放出する大量の熱を射出材料の予熱に使用するので、充分に予熱することができ、より少ないエネルギで可塑化できる。すなわち、射出成形機において最も多く廃棄されている部分から回収して予熱するので、省エネ的に成形できるという効果が得られる。また、一般に射出成形機の金型は熱媒体により冷却されるようになっているが、本発明によると熱交換器を介して回収するようになっているので、既存の金型に熱交換器を付加するだけで、安価に本発明を実施することができるという利点も得られる。また、射出材料を予熱する熱媒体が空気である発明によると、熱応答性がよく、熱媒体の取り扱いが容易という特徴も有する。
【0018】
また、射出材料の予熱に、金型に充填された射出材料すなわち成形品を、固定盤と可動盤を介して冷却して昇温した熱媒体を使用する発明によると、同様に射出材料を予熱することができるが、固定盤と可動盤の温度が下がり、熱による変形量は小さくなり、精密成形に寄与する効果も得られる。このとき、予熱を多少犠牲にして固定盤と可動盤の温度が安定するように風量を調整すると、いっそう変形量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る製造装置を示す正面図である。
【図2】本発明の第3の実施の形態に係る製造装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、融点の低い金属射出材料でも、また直圧式射出成形機でも実施できるが、射出材料に樹脂材料を、成形機にトグル式型締装置を備えた電動射出成形機を適用した実施の形態について説明する。本実施の形態に係る電動射出成形機は、図1に示されているように、従来周知の射出装置Sと、同様に周知のトグル式型締装置Tとから構成されている。射出装置Sは射出シリンダ2、このシリンダ2内に回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ等から構成され、射出シリンダ2の後方にホッパ3が設けられている。このホッパ3からペレット状の固体樹脂材料が射出シリンダ2に所定量宛供給されるようになっている。スクリュを駆動する駆動部Dは、従来周知のように可塑化用モータ5と、射出用モータ6とを備え、これらのモータの出力軸はベルト、歯車等の減速機あるいはスプライン機構を介してスクリュ軸に結合されている。したがって、スクリュを可塑化方向にも射出方向にも駆動することができると共に、可塑化中にも軸方向に駆動あるいは移動することができる。
【0021】
トグル式型締装置Tも、従来のトグル式型締装置と略同様に構成されているので詳しい説明はしないが、ベットB上に固定的に設けられている固定盤11、ベットB上に軸方向に移動自在に設けられている型締ハウジング12、固定盤11と型締ハウジング12との間に設けられている4本のタイバー13、13、…、これらのタイバー13、13、…が挿通され、軸方向に移動可能な可動盤14、型締ハウジング12と可動盤14との間に設けられているトグル機構20等から概略構成されている。トグル機構20は、一対の短リンク、一対の長リンク、1個のクロスヘッド21、一対のクロスリンク等から構成されている。クロスヘッド21はボールネジ22の先端に、従来周知の態様で取り付けられており、このボールネジ22は型締ハウジング12の略中央部に明けられている透孔に挿通されている。型締ハウジング12には、ボールナット23が回転自在に設けられ、このボールナット23にボールネジ22が螺合している。このボールナット23は、軸方向の移動が規制された状態で型締ハウジング12に設けられているので、ボールナット23を回転駆動すると、ボールネジ22が軸方向に駆動され、クロスヘッド21が型閉じ方向あるいは型開き方向に駆動されることになる。ボールナット23は、サーボモータ24により駆動されるようになっている。
【0022】
上記のように構成されている固定盤11には固定側金型15が、そして可動盤14には可動側金型16がそれぞれ取り付けられている。固定側金型15にはパーティングラインから突き出たコアが形成され、可動側金型16にはパーティングラインから引き込んだ所定大きさの凹部が形成されている。これらのコアと凹部とにより成形品を得るキャビティが構成されている。
【0023】
固定側金型15および可動側金型16には、例えば水のような熱媒体が通る熱媒体流路が従来周知のように形成されている。一方、これらの金型15、16に関連して金型温調機30が設けられている。金型温調機30は、従来周知のように、熱交換器31、送液ポンプ32、電磁開閉弁33、コントローラ34等を備え、この金型温調機30と固定側金型15の熱媒体流路は、熱媒体供給管15aおよび熱媒体戻り管15bで接続され、同様に可動側金型16の熱媒体流路も熱媒体供給管16aと熱媒体戻り管16bとで接続されている。したがって、成形サイクルに入る前のウオーミングアップ中には金型温調機30から供給される温水のような熱媒体により金型15、16を所定温度に加熱することができ、成形サイクルに入ると、熱媒体が送液ポンプ32により固定側金型15と可動側金型16に供給され、高温の溶融樹脂が射出され高温になった金型15、16(換言すると高温の溶融樹脂)は冷却される。そして、熱交換器31、送液ポンプ32へと循環する。このように循環する熱媒体は、熱交換器31において冷水供給管17から供給される冷水と間接的に熱交換される。熱交換器31において熱交換され高温になった温水は温水排出管18から外部へ排水される。
【0024】
ところで、本発明の第1の実施の形態によると、前記した熱媒体戻り管15b、16bには、金型温調機30の上流側において熱回収用の熱交換器35が介装されている。この熱交換器35で回収される熱は、後述するようにしてホッパ3内に収容されている樹脂材料を予熱するようになっている。熱交換器35は、第1、2の放熱管36、37と1本の受熱管38からなっている。これらの管36〜38は、伝熱面積の広いプレート型として構成され、あるいは蛇行した管路から構成され、その外表部には複数枚のフィンが設けられている。このように構成されている第1、2の放熱管36、37には、熱媒体戻り管15b、16bが、そして受熱管38には、例えば断熱ホースからなる熱風供給管40がそれぞれ接続されている。
【0025】
上記熱交換器35によって回収される熱をホッパ3まで運ぶ熱媒体としては、本実施の形態によると、熱容量は小さく熱応答性に優れている空気が適用されている。したがって、熱風供給管40の吸入口にはエアフィルタ41が設けられ、大気が吸入されるようになっている。熱風供給管40はホッパ3まで延びて放熱構造の予熱管43となっている。この予熱管43はホッパ3の外周部または内周部に複数回巻かれて、吸引ブロア42に連なっている。この吸引ブロア42は排気能力が調節できる。
【0026】
上記第1の実施の形態の作用について説明する。本実施の形態によると、熱交換器35は従来周知の熱媒体戻り管15b、16bに介装されているだけの形になっているので、熱交換器35が作用しない状態、例えば吸引ブロア42を停止しておくと、従来周知のようにして樹脂材料を予熱することなく成形できる。次に、成形サイクルに入った状態で予熱する成形例について説明する。駆動部Dによりスクリュを回転駆動してホッパ3中の樹脂材料を所定量宛射出シリンダ2に供給する。樹脂材料はスクリュの回転により生じる熱、射出シリンダ2の外周部から加えられる熱等により可塑化され、スクリュは樹脂圧により背圧に抗して後退し、可塑化された溶融樹脂は射出シリンダ2の前方の計量室に蓄積される。このとき、樹脂材料は例えば50℃に予熱されているので、前述したように少ないエネルギで可塑化できる。トグル機構20により可動側金型16を固定側金型15に対して型締めする。そして、スクリュを軸方向に駆動して、金型15、16により構成されているキャビティに射出・充填する。
【0027】
コントローラ34の指令により、金型温調機30中の送液ポンプ32、電磁開閉弁33等が作動し、熱媒体が熱媒体供給管15a、16aを介して固定側金型15と可動側金型16に供給される。これらの金型15、16を冷却して高温になった熱媒体は、それぞれの熱媒体戻り管15b、16bにより熱交換器31に戻る。熱交換器31において、冷水供給管17により外部から供給される冷水により冷却されて、送液ポンプ32側に戻る。冷水供給管17から供給される冷水は、昇温して温水排出管18から外部へ排出される。このようにして金型温調機30から熱媒体供給管15a、16aを介して循環的に供給される熱媒体により金型15、16、したがって射出された溶融樹脂(成形品)は冷却される。充填された溶融樹脂の温度が所定温度に下がったら、冷却を終わる。可動側金型16を開いて固化した成形品を取り出す。上記の冷却工程中も、成形品取り出し中も、前述したようにして樹脂材料を可塑化しておき、次の成形サイクルに備える。
【0028】
上記のようにして溶融樹脂を冷却しているとき、吸引ブロア42を起動する、あるいは図示されない配管系のバルブを切り換えるなどして熱風供給管40に空気を吸引する。そうすると、熱交換器35において、熱媒体戻り管15b、16bを流れる高温の熱媒体により空気は加熱され、そして加熱された空気はホッパ3を内側あるいは外側から加熱する。これにより、ホッパ3中の樹脂材料は加熱・乾燥される。樹脂材料を加熱した空気は、吸引ブロア42から大気中へ排気される。
【0029】
上記の第1の実施の形態によると、熱交換器35は金型温調機30の上流側の、熱媒体戻り管15b、16bに介装されているので、比較的高い熱を回収できるが、第2の実施の形態として金型温調機30の下流側の、図1においてEXで示されている位置の温水排出管18に設けることもできる。また、ホッパ3を加熱した空気は、吸引ブロア42から排気される旨説明されているが、エアフィルタ41側に戻すように実施することもできる。
【0030】
図2により本発明の第3の実施の形態を説明する。本実施の形態によると、金型温調機は備えていない。したがって、固定側金型から固定盤に伝導される熱および可動側金型から可動盤に伝導される熱とを回収するように実施される。前述した第1の実施の形態に係る構成部材と同様な部材には同じ参照数字を付けて重複説明はしない。本実施の形態によると、固定盤11と可動盤14は、望ましくは中空部材から構成され、その内部にフィンを有する熱回収路38’38’が設けられている。熱風供給管40と熱回収路38’38’は直列に接続され、ホッパ3内の樹脂材料を加熱するようになっている。本実施の形態によると、固定盤11と可動盤14の温度が下がるので、熱膨張による歪み量が小さくなり、精密成形ができるようにもなる。
【0031】
第3の実施の形態も色々変形が可能である。例えば、空気以外の熱媒体を適用することもできる。また、固定盤11と可動盤14に、透孔を穴加工し、これらの透孔に熱の良導体である銅製あるいはアルミニウム製の管を密接するように挿入して熱回収路38’38’とすることもできる。さらには、固定盤11と可動盤14のそれぞれに温度センサを取り付け、これらのセンサにより計測される固定盤11と可動盤14の温度が安定するように吸引ブロア42の回転数を制御することもできる。これにより、熱歪みが小さくなり、より精密な成形ができるようになる。さらには、第1、2の実施の形態と同様に、金型温調機30と熱交換器35とを設け、固定側金型15と可動側金型16からも回収するよう実施することもできる。このときは、熱回収路38’38’から熱を回収する主な目的は、固定盤11と可動盤14の温度変化による熱歪みを抑えることになる。また、ホッパ3を加熱した空気をエアフィルタ41側に戻すように実施することもできる。さらには、表1に示されているように消費エネルギは小さいが、サーボアンプ、サーボモータ、ボールネジ等で生じる熱も、熱交換器で回収することもできる。
【符号の説明】
【0032】
2 射出シリンダ 3 ホッパ
11 固定盤 14 可動盤
15 固定側金型 16 可動側金型
20 トグル機構
15a、16a 熱媒体供給管
15b、16b 熱媒体戻り管 30 金型温調機
35 熱交換器 40 熱風供給管
42 吸引ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、
前記射出材料の予熱には、前記金型に充填された射出材料を冷却して昇温した熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱を使用する、ことを特徴とする射出成形機の操作方法。
【請求項2】
射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、
前記射出材料の予熱には、前記金型に金型温調機から供給され、そして前記金型に充填された射出材料を冷却して昇温して戻ってくる熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱を使用する、ことを特徴とする射出成形機の操作方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法において、前記熱交換器は、射出材料を冷却する熱媒体と、射出材料を予熱する空気との間で熱交換するようになっている、ことを特徴とする射出成形機の操作方法。
【請求項4】
射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記金型が固定盤に取り付けられている固定側金型と可動盤に取り付けられている可動側金型とからなり、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、
前記射出材料の予熱には、前記金型に充填された射出材料を前記固定盤と可動盤を介して冷却して昇温した熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱を使用する、ことを特徴とする射出成形機の操作方法。
【請求項5】
射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記金型が固定盤に取り付けられている固定側金型と可動盤に取り付けられている可動側金型とからなり、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、
前記射出材料の予熱には、前記金型に充填された射出材料を前記固定盤と可動盤を介して冷却して昇温した空気を使用する、ことを特徴とする射出成形機の操作方法。
【請求項6】
射出材料を可塑化する射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料を充填する金型とを備え、前記金型が固定盤に取り付けられている固定側金型と可動盤に取り付けられている可動側金型とからなり、前記射出シリンダに予熱された射出材料を所定量宛供給して可塑化する方法において、
前記射出材料の予熱には、前記金型に充填された射出材料を冷却して昇温した熱媒体がもっている熱を熱交換器を介して得た回収熱と、前記金型に充填された射出材料を前記固定盤と可動盤を介して冷却して昇温した空気とを使用すると共に、前記空気の量を制御して前記固定盤と可動盤の温度を安定化させることを特徴とする、射出成形機の操作方法。
【請求項7】
射出材料が可塑化される射出シリンダと、この射出シリンダにより可塑化された射出材料が充填される金型とを備え、該金型には熱媒体供給管および熱媒体戻り管を介して金型温調機から第1の熱媒体が給排されるようになっていると共に、前記射出シリンダには射出材料が入れられるホッパが設けられている射出成形機であって、
前記熱媒体戻り管には、該熱媒体戻り管中を流れる第1の熱媒体と、前記ホッパに連なって該ホッパ中の射出材料を予熱する第2の熱媒体との間に熱交換する熱交換器が設けられ、それによって前記金型に充填された射出材料を冷却して昇温した前記第1の熱媒体中の排熱が前記第2の熱媒体中に移動し、前記ホッパ中の射出材料が予熱される、ことを特徴とする射出成形機。
【請求項8】
請求項7に記載の成形機において、前記熱交換器は前記金型と前記金型温調機との間の、前記熱媒体戻り管に設けられている、ことを特徴とする射出成形機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−5640(P2011−5640A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148171(P2009−148171)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】