説明

射出成形機の電力監視装置

【課題】射出成形機の使用電力を電力料金の算定根拠となるデマンド時間単位で時刻に対応させて積算、さらに時刻に対応させて射出成形機の電力監視装置を提供する。
【解決手段】計測を開始する時点の時刻情報を取得し、経過時間tおよび積算使用電力量を初期化する(SA100、SA101)。1制御周期毎の電力量を計算し、計算して求めた電力量を制御周期毎に1分間毎に積算し使用電力量を算出し、現在時刻情報を取得する(SA102〜SA107)。稼動状態の情報を取得し、積算使用電力量を算出し、現在時刻情報に対応させて稼動状態の情報および積算使用電力量を記憶装置に記憶する(SA108〜SA110)。経過時間を1分増加し経過時間tがデマンド時間の30分を経過すると、次のデマンド時間30分間の積算使用電力量を算出するためステップSA101へ戻る(SA111、SA112)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機の電力監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力料金は、基本料金と実際に使用した電力量で決まる電力量料金とからなっている。このうち基本料金の算定の根拠となる契約電力は、1年間を通じての最大需要電力を基準として決定される。電力会社は刻々と変わる需要電力を記録型計量器によりデマンド時間(30分単位)の平均使用電力(平均値)として計量している。この平均使用電力のうち、1ヶ月間の最大の値をその月の最大需要電力としている。そのため、図9に示すようにデマンド時間である30分内で積算使用積算電力量が電力量監視値を超えないようにしている。最大需要電力は、工場内における稼動設備が多ければ多いほど大きくなる。設備の使用時間などをずらすと、最大需要電力を小さくすることができ、契約電力の減少につながる。
【0003】
射出成形機を複数台設置して使用する場合、最大需要電力を小さくするために機械の使用時間をずらす必要がある。そのためには射出成形機が稼働する場合、どのように電力が消費されるのかを分析する必要がある。射出成形機は、金型を開閉したり射出・計量などを行うためのモータ、樹脂を溶融するためのヒータ、モータを制御したりヒータの加熱を制御する制御装置等を備えており、それらはそれぞれが電力を使用している。射出成形機の使用電力を把握することは、成形品の生産コストを算出するために重要である。
【0004】
特許文献1には、1サイクル毎の使用電力量を検出して制御装置の表示器や記憶媒体に出力する技術が開示されている。特許文献2には、運転中や成形準備中の使用電力を時刻で表示する技術が開示されている。特許文献3には、成形中の各射出成形機の動作タイミングにより使用電力量が大きくなる時間が重ならないように、複数の射出成形機を管理する管理方法の技術が開示されている。
【0005】
特許文献4には、複数の射出成形機を設置した射出成形工場において平均使用電力を抑えるために、各射出成形機の中間工程(1成形サイクルが終了してから次の成形サイクルが始まるまでの休止工程)を調整して電力量の集中を回避する技術、さらに管理装置を用いて複数の射出成形機における1成形サイクルあたりの電力量および中間工程の電力量を集約し、各射出成形機に対して中間工程時間を指令する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−206150号公報
【特許文献2】特開2007−83432号公報
【特許文献3】特開2007−21861号公報
【特許文献4】特開昭61−180530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
射出成形機を用いて成形を行う場合、成形中以上に射出成形機のシリンダを加温するシリンダヒータや金型を加温する金型ヒータを加熱し、成形の準備を行う段階において最も使用電力量が大きくなる。
したがって、例えば、月曜日の朝や長期休暇の後などに、複数の射出成形機のシリンダヒータや金型ヒータを加熱する昇温作業を一斉に行うと、複数の射出成形機による使用電力量の合計値は成形運転中の合計値よりも高くなる。
【0008】
背景技術で説明したように、電気料金を決めるためのデマンド時間は30分毎の積算値から求めるため、30分毎の使用電力量を把握する必要がある。さらに、使用電力量を削減するための対策を行うためには、射出成形機の稼働状態(ヒータ使用中・成形運転中・金型交換中・樹脂排出中など)と関連させて使用電力を把握する必要がある。
【0009】
背景技術で説明した特許文献1に開示される技術は、1サイクル毎の使用電力量を検出して制御装置の表示器や記憶媒体に出力する技術であり、デマンド時間に対応した出力を行うものではなく、特許文献2に開示される技術は、運転中や成形準備中の使用電力を時刻で表示するものであり、デマンド時間に対応した表示を行うものではない。また、特許文献3や特許文献4に開示される技術は、射出成形機が運転中の使用電力量に着目し、複数の射出成形機の使用電力量が重ならないように自動調整をおこなうものであり、デマンド時間に関連したものではなく、射出成形機の稼働状態と関連させた使用電力量の把握はできなかった。
【0010】
そこで本発明の目的は、射出成形機の使用電力を電力料金の算定根拠となるデマンド時間単位で時刻に対応させて積算、さらに時刻に対応させて射出成形機の稼働状態とともに記憶し、記憶された積算使用電力量と稼働状態を時刻に対応させて射出成形機の表示装置の表示画面に表示、射出成形機に接続された印刷機に印刷、射出成形機に接続された記憶装置(内蔵されたメモリも含む)あるいは通信回線を介して外部に送信することにより、射出成形機の使用電力量の変化と稼働状態との関連を容易に把握することができる射出成形機の電力監視装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、射出成形機の使用電力を検出する電力検出手段と、第1の所定時間毎の時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、前記電力検出手段により検出された使用電力に基づき前記第1の所定時間毎の使用電力量を算出する使用電力量算出手段と、前記時刻情報取得手段により取得される時刻情報の時刻における前記射出成形機の稼動状態を検出する稼動状態検出手段と、前記使用電力量算出手段により算出された前記第1の所定時間毎の使用電力量を前記第1の所定時間毎に第2の所定時間毎に加算し積算使用電力量を算出する積算使用電力量算出手段と、前記時刻情報取得手段により取得された時刻情報に対応させて少なくとも前記積算使用電力量算出手段により算出された積算使用電力量および前記稼動状態検出手段により検出された稼動状態を記憶する記憶手段とを備え、
前記記憶手段に記憶された積算使用電力量および稼動状態を時刻情報に対応させて、前記射出成形機に接続された表示装置の表示画面に表示したり、射出成形機に接続された印字装置に印字したり、射出成形機に接続された外部記憶装置に記憶したり、通信回線を介して外部装置に出力することを少なくとも1つ行うことを特徴とする射出成形機の電力監視装置である。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記稼動状態検出手段によって検出される稼動状態は、少なくとも前記射出成形機が成形運転中であることを表す情報および加熱用ヒータを使用中であることを表す情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の電力監視装置である。
請求項3に係る発明は、前記稼動状態検出手段によって検出される稼動状態は、成形品の識別情報が含まれることを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の射出成形機の電力監視装置である。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記電力検出手段は、更に少なくとも前記射出成形機の駆動に使用される電力、加熱用ヒータに使用される電力、これら以外の射出成形機の制御装置等に使用される電力とを区別して検出し、前記使用電力量算出手段は、更に該電力検出手段により区別して検出された電力の前記区別毎の電力量を算出し、前記積算使用電力量算出手段は、更に該使用電力量算出手段により算出された電力量の前記区別毎の積算電力量を算出し、前記記憶手段は、更に前記区別毎の積算電力量を前記時刻情報に対応させて記憶し、前記記憶手段に記憶された前記区別毎の積算電力量、積算使用電力量、および稼動状態を時刻情報に対応させて、前記射出成形機に接続された表示装置の表示画面に表示したり、射出成形機に接続された印字装置に印字したり、射出成形機に接続された外部記憶装置に記憶したり、通信回線を介して外部装置に出力することを少なくとも1つ行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の射出成形機の電力監視装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、射出成形機の使用電力を電力料金の算定根拠となるデマンド時間単位で時刻に対応させて積算、さらに時刻に対応させて射出成形機の稼働状態とともに記憶し、記憶された積算使用電力量と稼働状態を時刻に対応させて射出成形機の表示装置の表示画面に表示、射出成形機に接続された印刷機に印刷、射出成形機に接続された記憶装置(内蔵されたメモリも含む)あるいは通信回線を介して外部に送信することにより、射出成形機の使用電力量の変化と稼働状態との関連を容易に把握することができる射出成形機の電力監視装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における射出成形機の電力監視システムの全体図である。
【図2】電力測定器を用いて射出成形機の使用電力を測定することを説明する図である。
【図3】本発明の射出成形機の電力監視装置が実行する処理のアルゴリズムを示す第1のフローチャートである。
【図4】デマンド時間と時刻とを対応させて電力量を記憶することを説明する図である。
【図5】射出成形機の表示装置に表示される画面の例(その1)である。
【図6】本発明の射出成形機の電力監視装置が実行する処理のアルゴリズムを示す第2のフローチャートである。
【図7】デマンド時間と時刻とを対応させて射出成形機で消費される電力量を、モータ、ヒータ、その他の部分ごとに記憶することを説明する図である。
【図8】射出成形機の表示装置に表示される画面の例(その2)である。
【図9】デマンド時間毎に積算使用電力量を監視することを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明における射出成形機の電力監視システムの全体図である。本発明のシステムでは、工場内に設置されたmax台の射出成形機21〜2max(max台全体のうちのいずれか1台の射出成形機を表すときは以下単に「射出成形機2」という)が、通信回線5を介して管理装置1に接続されている。射出成形機2は図2に示すようにそれぞれ制御装置26を備えている。各射出成形機2はそれぞれ電力線4を介して主電源から電力が供給されている。
【0017】
各射出成形機2にはそれぞれ電力測定器31〜3max(max台全体のうちのいずれか1台の電力測定器を表すときは以下単に「電力測定器3」という)が設置されている。各電力測定器3はそれぞれ設置された各射出成形機2の使用電力を測定する。各電力測定器3で測定された結果は、射出成形機2の制御装置26に送られ、制御装置26において射出成形機2の使用電力量を算出する。管理装置1はCPU、メモリ、通信回路など(図示せず)を備えている。
【0018】
図2は、電力測定器3を用いて射出成形機2の使用電力を測定することを説明する図である。射出成形機2は射出部と型締部(図示せず)を備え、図2は射出部を示し射出成形機2のノズル10にはノズルを加熱するノズル用ヒータ11が装置されている。シリンダ12にはシリンダを加熱するシリンダ用ヒータ13,14が装着されている。ノズル用ヒータ11、およびシリンダ用ヒータ13,14にはそれぞれ、ヒータの温度を測定するための熱電対15,16,17が設けられている。また、ノズル用ヒータ11、およびシリンダ用ヒータ13,14にはそれぞれ、主電源からの電力がリレー19,20,21を介して供給されている。リレー19,20,21を個別にオン・オフ制御することによって、各ヒータ11,13,14を加熱制御することができる。
【0019】
シリンダ12内にはスクリュ22が挿入されており、スクリュ22はサーボモータ23によって駆動されシリンダ12内をノズル10方向に対して前進後退の動作を行う。スクリュ22の前進後退の動作によって射出・保圧・計量の各射出成形の各工程が実行される。サーボモータ23はサーボアンプ25から駆動用電力が供給される。サーボアンプ25には電力測定器3を介して主電源からの電力が供給されている。なお、ロードセル18は、スクリュ22に作用する力を測定する圧力測定手段である。
【0020】
制御装置26は射出成形機2を全体的に制御する装置であり、サーボアンプ25を介してサーボモータ23を駆動制御するサーボCPU27を有する。サーボCPU27にはサーボ制御専用の制御プログラムを格納したROMやデータの一時記憶に用いられるRAMが接続されている。サーボCPU27にはサーボモータ23に内蔵される位置・速度検出器24からの位置・速度フィードバックの情報が入力し、サーボCPU27はサーボモータ23をフィードバックされた情報に基づいてサーボ制御を行う。
【0021】
CNCCPU28は、数値制御用のマイクロプロセッサであり、射出成形機を全体的に制御する自動運転プログラムを格納するROM、データを一時的に格納するRAMが接続されている。入出力回路29はバス32を介してCNCCPU28,PMCCPUに接続されている。入出力回路29は、電力測定器3から射出成形機2の使用電力に関するデータを入力し、ノズル10およびシリンダ12に装着された各ヒータ11,13,14の温度を測定する熱電対15,16,17からの温度検出信号を入力する。また、入出力回路29は、各ヒータ11,13,14への電力の供給のオン・オフを制御する指令信号をリレー19,20,21に出力する。
【0022】
入出力装置付表示装置30は液晶表示装置を備えた表示装置であって、液晶表示回路(LCD表示回路)を介してバス32に接続されている。表示装置の画面には、各種グラフ表示などを行うことができ、本発明に係る表示内容も表示装置に表示させる。通信回路31は、射出成形機2によって使用される使用電力に関する情報を通信回線5を介して管理装置1に出力する通信回路である。
【0023】
射出成形機2はそれぞれ射出成形機を制御する制御装置26を備えている。制御装置26は、入出力インタフェース、サーボCPU、液晶表示装置などを用いる表示装置、通信回路、を備える。射出成形機2は射出成形機の使用電力を測定する電力測定器3を介して主電源から電力が供給される。電力測定器3は、各ヒータ11,13,14、サーボアンプ25、および制御装置26に主電源から供給される電力を計測することができ、射出成形機2の使用電力を計測することができる。制御装置26のCNCCPU28は電力測定器3から射出成形機2の使用電力のデータを取得し、後述する図3あるいは図6に示すアルゴリズムを示すフローチャートの処理を実行することにより、モータの電力量およびその積算電力量、ヒータ11,13,14の電力量およびその積算電力量、制御装置26等その他の電力量およびその積算電力量を算出する。また、射出成形機2の全体で使用される使用電力量および積算使用電力量を算出する。算出された各データはメモリであるRAMに格納することができる。
【0024】
制御装置26で算出した使用電力量は、通信回路31から管理装置1に送られる。または、電力測定器3から制御装置26に入力する使用電力のデータを管理装置1に送り出し、管理装置1内で各射出成形機2の使用電力量を算出するようにしてもよい。あるいは、電力測定器3に使用電力量を算出する機能を持たせ、電力測定器3から制御装置26を介して管理装置1に使用電力量のデータを送信するようにしてもよい。なお、本発明の実施形態においては、後述する電力監視処理のための所定時間(デマンド時間)の電力量積算処理(図3参照)で用いられる射出成形機の過去1分間の積算使用電力量EM(M)が読み込まれることから、所定のサンプリング時間は1分とし、1分間隔で使用電力量を算出する必要がある。
【0025】
なお、射出成形機2の使用電力は射出成形機に取り付けられた電力測定器3を用いて直接測定することに替えて、電動射出成形機の場合には、下記の数1式〜数3式を用いて使用電力を計算で求めてもよい。
サーボ装置の電力=モータ回転数*駆動電流+駆動電流2*モータ巻き線抵抗+サーボアンプの発熱量・・・(数1)
ヒータの電力=ヒータワット数・・・(数2)
制御装置等の電力=定数・・・(数3)
制御装置26は、モータ回転数と駆動電流をサーボモータからのフィードバック情報とサーボアンプからのフィードバック情報として取得できる。モータの巻き線抵抗はモータ固有の値であるから事前に取得しておく。サーボアンプの発熱量は一般に、サーボアンプに流れる電流に比例する。電流から発熱量に変換するための変換計数を実験的に求めておき、その変換係数とアンプを流れる電流との積により、アンプの発熱量を推計する。制御装置26等の電力は、事前に消費電力を実験的に求めておく。ヒータワット数は既知の値であり、ヒータ通電時間も制御装置26によって計測できる。
【0026】
射出成形機2は図2に示される構成以外に、型締用サーボモータ、スクリュ回転用サーボモータなどを備えており、これらに供給される電力も含めて電力測定器3は測定することができる。なお、制御装置26は公知の射出成形機の制御装置と同様に、バス32に接続されるシーケンス制御用にPMCCPU、成形データ保存用RAMを備えている。
【0027】
図3は、本発明の射出成形機の電力監視装置が実行する処理のアルゴリズムを示す第1のフローチャートである。以下、ステップに従って説明する。
●[ステップSA100]計測を開始する時点の時刻Tの時刻情報を取得する。時刻情報は、日本標準時に従った時刻でもよいし、計測開始からの総経過時間でもよい。
なお、射出成形機の現在時刻を日本標準時に合わせる手段としては、射出成形機の制御装置に接続された電波時計(図示しない)を使用するか、あるいは日本標準時に合わせてある管理装置1より通信回線を通じて射出成形機に時刻を設定してもよい。
●[ステップSA101]経過時間tおよび積算使用電力量を初期化する。この経過時間tはデマンド時間内での経過時間である。このフローチャートの処理ではデマンド時間を30分としているので、経過時間tは最長で30分である。
●[ステップSA102]電力監視終了の指令があるか否か判断し、電力監視終了の指令があれば計測処理を終了し、電力監視終了の指令がない場合にはステップSA103へ移行する。電力監視終了の指令は、例えばオペレータによる指令、電力監視終了時刻の到来などによって行う。
●[ステップSA103]使用電力量を初期化する。
●[ステップSA104]射出成形機の使用電力を検出する。使用電力の検出は電力測定器を用いて射出成形機に主電源から供給される電力を検出する。供給される電力の検出は制御周期毎に実行する。
●[ステップSA105]ステップSA104で検出した電力の検出値と制御周期の時間とを乗算し1制御周期毎の電力量を計算し、計算して求めた電力量を制御周期毎に積算し使用電力量を算出する。
●[ステップSA106]現在時刻情報を取得する。
●[ステップSA107]計測開始から1分間経過したか否か判断し、1分経過していなければステップSA104へ戻り、電力量の計算と使用電力量の算出を継続し、1分間経過するまで使用電力量の計算および加算を実行する。
●[ステップSA108]稼動状態の情報を取得する。
●[ステップSA109]積算使用電力量を算出する。
●[ステップSA110]現在時刻情報に対応させて稼動状態の情報および積算使用電力量を記憶装置に記憶する。
●[ステップSA111]経過時間tを1つ増加する。
●[ステップSA112]経過時間tは30以下であるか否か判断し、以下である場合にはステップSA103へ戻り処理を継続し、以下でない場合にはステップSA101へ戻り、処理を継続する。
【0028】
上述の処理について補足して説明する。
まず、ステップSA105における使用電力量の算出とステップSA109における積算使用電力量の算出について説明する。射出成形機2に主電源から供給される電力を電力測定器3により制御周期毎に検出する。電力測定器3により検出された電力と制御周期毎の時間を乗算し、1制御周期における電力量を算出する。そして、1分間に渡って電力量の加算を行う。また、積算使用電力量は1分間に加算された電力量をデマンド時間に渡って1分毎に積算していく。
【0029】
ステップSA107の経過時間tが1分経過したか否かで判断したが、経過時間を1分より短く、または長く設定することも可能である。なお、ステップSA107における判断は第1の所定時間毎の判断である。
ステップSA108の稼働状態の情報について説明する。稼働状態(運転状態)Smaは、0:停止中、1:成形運転中、2:金型交換中、3:樹脂排出中を表す。稼働状態(ヒータ関連)Shaは、0:ヒータ不使用、1:ヒータ使用中を表す。稼働状態(成形品の名称)Spaを射出成形機2の制御装置26から取得する。
また、ステップSA112で経過時間tが30分経過したか否かで判断したが、経過時間tを30より短く、または長く設定することも可能である。ステップSA112で経過時間tを30分で判断するようにしているのは、デマンド時間の30分に合わせるためである。なお、ステップSA112における判断は第2の所定時間毎の判断である。
【0030】
図4は、デマンド時間と時刻とを対応させて電力量を記憶することを説明する図である。図4は、図3に示すアルゴリズムの処理を実行し求められた、経過時間tに対応した積算使用電力量ΣEa(t)、稼動状況(経過時間tに対応した稼動状態(運転状態)Sm(t)および経過時間tに対応したヒータの稼動状態Sh(t)、経過時間tに対応した稼動状態(成形品)Sp(t))を時刻Tに対応させて記憶装置に格納することを示している。tは経過時間を表す。なお、図4には表示されていないが、計測を開始した時刻(図3のステップSA100で読み込んだ現在時刻情報)も射出成形機の記憶手段に記憶されている。なお、経過時間tに対応した使用電力量Ea(t)は図3に示すフローチャートの処理では記憶するようにはなっていないが、ステップSA107で1分経過した後に使用電力量Ea(t)を記憶手段に記憶するステップを行う。
【0031】
図5は、射出成形機の表示装置に表示される画面の例(その1)である。図5の表示例は、積算使用電力量ΣEa(t)を縦軸に時刻Tを横軸とした折れ線グラフ、および時刻Tに対応して稼動状態(運転状態)Sm(t)、ヒータの稼動状態Sh(t)、ならびに稼動状態(成形品)Sp(t)を帯グラフとして表示している。
積算使用電力量ΣEa(t)はデマンド時間の30分で初期化され、デマンド時間内での射出成形機2の使用電力量の増加度合いを把握することが可能である。折れ線グラフは、射出成形機2の記憶手段に格納されたデータ(図4参照)を用いて表示される。同様に、射出成形機2の稼動状態を表すデータも記憶手段に格納されたデータ(図4参照)を用いて表示される。図5に示されるように、デマンド時間内での積算使用電力量の折れ線グラフと射出成形機の稼動状態とを同じ時刻Tに対応させて表示させることができる。
【0032】
図5に示される表示内容は表示装置の表示画面に表示させるだけではなく、射出成形機2の制御装置26に接続されている印刷装置(図示せず)により紙媒体に印刷するようにしてもよい。または、制御装置26に接続された外部記憶装置(図示せず)や通信回線を介して管理装置1などの外部装置に出力するようにしてもよい。
【0033】
図4や図5を用いて説明した本発明の実施形態では、射出成形機2で使用される電力を全体として把握していた。射出成形機2の使用される電力量の管理を行おうとすると、より詳細に射出成形機2を構成するモータ、ヒータ、または制御装置26などその他のそれぞれの使用電力を独立して検出し、それぞれの電力量に関するデータを収集する必要がある。
【0034】
図6は、本発明の射出成形機の電力監視装置が実行する処理のアルゴリズムを示す第2のフローチャートである。このアルゴリズムのフローチャートは、前述したように、射出成形機で使用される電力を射出成形機のモータ、ヒータ、および制御装置等その他に区分けして独立に検出し、それぞれの電力量を求める処理を行う。以下、各ステップに従って説明する。
●[ステップSB100]計測を開始する時点の時刻情報を取得する。時刻情報は、日本標準時に従った時刻でもよいし、計測開始からの総経過時間でもよい。
なお、射出成形機の現在時刻を日本標準時に合わせる手段としては、射出成形機の制御装置に接続された電波時計(図示しない)を使用するか、あるいは日本標準時に合わせてある管理装置1より通信回線を通じて射出成形機に時刻を設定してもよい。
●[ステップSB101]経過時間t、各積算電力量、および積算使用電力量を初期化する。なお、各積算電力量は、モータの積算電力量、ヒータの積算電力量、および制御装置等その他の積算電力量である。
●[ステップSB102]電力監視終了の指令があるか否か判断し、電力監視終了の指令があれば計測処理を終了し、電力監視終了の指令がない場合にはステップSB103へ移行する。
●[ステップSB103]モータの電力量、ヒータの電力量、制御装置等その他の電力量、および使用電力量を初期化する。
●[ステップSB104]射出成形機のモータの電力、ヒータの電力、制御装置等その他の電力を検出する。各電力の検出は電力測定器を用いて射出成形機に主電源から供給される電力を検出する。供給される電力の検出は制御周期毎に実行する。
●[ステップSB105]ステップSB104で検出した各電力の検出値と制御周期の時間とを乗算し1制御周期毎の電力量を計算し、計算して求めた電力量を制御周期毎に積算し各電力量および使用電力量を算出する。なお、使用電力量は各電力量の総和として求められる。
●[ステップSB106]現在時刻情報を取得する。
●[ステップSB107]計測開始から1分間経過したか否か判断し、1分経過していなければステップSB104へ戻り、電力量の計算と使用電力量の算出を継続し、1分間経過するまで使用電力量の計算および加算を実行する。
●[ステップSB108]稼動状態の情報を取得する。
●[ステップSB109]モータの積算電力量、ヒータの積算電力量、制御装置等その他の積算電力量、および積算使用電力量を算出する。積算使用電力量は各積算電力量の総和である。
●[ステップSB110]現在時刻情報に対応させてモータの積算電力量、ヒータの積算電力量、制御装置等その他の積算電力量の各積算電力量、積算使用電力量、および稼動状態の情報を記憶装置に記憶する。
●[ステップSB111]経過時間tを1つ増加する。
●[ステップSB112]経過時間tは30以下であるか否か判断し、以下である場合にはステップSB103へ戻り処理を継続し、以下でない場合にはステップSB101へ戻り、処理を継続する。
【0035】
上述の処理について補足して説明する。
まず、ステップSB105における使用電力量の算出とステップSB109における積算使用電力量の算出について説明する。射出成形機2に主電源から供給される電力を電力測定器3により制御周期毎に検出する。電力測定器3により検出された電力と制御周期毎の時間を乗算し、1制御周期における電力量を算出する。そして、1分間に渡って電力量の加算を行う。また、積算使用電力量は1分間に加算された電力量をデマンド時間に渡って1分毎に積算していく。
【0036】
ステップSB107の経過時間tが1分経過したか否かで判断したが、経過時間を1分より短く、または長く設定することも可能である。なお、ステップSB107における判断は第1の所定時間毎の判断である。
ステップSB108の稼働状態の情報について説明する。稼働状態(運転状態)Smaは、0:停止中、1:成形運転中、2:金型交換中、3:樹脂排出中を表す。稼働状態(ヒータ関連)Shaは、0:ヒータ不使用、1:ヒータ使用中を表す。稼働状態(成形品の名称)Spaを射出成形機2の制御装置26から取得する。
【0037】
また、ステップSB112で経過時間tが30分経過したか否かで判断したが、経過時間tを30より短く、または長く設定することも可能である。ステップSB112で経過時間tを30分で判断するようにしているのは、デマンド時間の30分に合わせるためである。なお、ステップSB112における判断は第2の所定時間毎の判断である。
【0038】
図7は、デマンド時間と時刻とを対応させて電力量を記憶することを説明する図である。図7は、図6に示すアルゴリズムの処理を実行し求められた、経過時間tに対応した積算使用電力量ΣEa(t)、稼動状況(経過時間tに対応した稼動状態(運転状態)Sm(t)および経過時間tに対応したヒータの稼動状態、Sh(t)、経過時間tに対応した稼動状態(成形品)Sp(t))を時刻Tに対応させて記憶装置に格納することを示している。tは経過時間を表す。なお、図7には表示されていないが、計測を開始した時刻(図6のステップSB100で読み込んだ現在時刻情報)も射出成形機2の記憶手段に記憶されている。経過時間tに対応したモータの電力量Em(t)、経過時間tに対応したヒータの電力量Eh(t)、経過時間tに対応した制御装置等その他の電力量Ec(t)、経過時間tに対応した使用電力量Ea(t)を記憶装置に記憶することは、図6に示すフローチャートの処理に付加してもよい。
【0039】
図8は、射出成形機の表示装置に表示される画面の例(その2)であり、デマンド時間と時刻とを対応させて射出成形機で消費される電力量を、モータ、ヒータ、制御装置等その他ごとに記憶することを説明する図である。図8の表示例は、モータの積算電力量ΣEm(t)、ヒータの積算電力量ΣEh(t)、制御装置等その他の積算電力量ΣEc(t)、および積算使用電力量ΣEa(t)を縦軸にとり時刻Tを横軸とした折れ線グラフ、ならびに時刻Tに対応して稼動状態(運転状態)Sm(t)、ヒータの稼動状態Sh(t)、および稼動状態(成形品)Sp(t)を帯グラフとして表示している。
【0040】
モータの積算電力量ΣEm(t)、ヒータの積算電力量ΣEh(t)、制御装置等その他の積算電力量ΣEc(t)、および積算使用電力量ΣEa(t)はデマンド時間の30分で初期化され、デマンド時間の30分内での射出成形機2の使用電力量の増加度合いを把握することが可能である。折れ線グラフは、射出成形機2の記憶手段に格納されたデータ(図7参照)を用いて表示される。同様に、射出成形機2の稼動状態を表すデータも記憶手段に格納されたデータ(図4参照)を用いて表示される。図8に示されるように、デマンド時間内での積算電力量の折れ線グラフと射出成形機2の稼動状態とを同じ時刻Tに対応させて表示させることができる。
【0041】
図8に示される表示内容は表示装置の表示画面に表示させるだけではなく、射出成形機2の制御装置26に接続されている印刷装置(図示せず)により紙媒体に印刷するようにしてもよい。または、制御装置26に接続された外部記憶装置(図示せず)や通信回線を介して管理装置1などの外部装置に出力するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 管理装置
1,22,2n,2max 射出成形機
1,32,3n,3max 電力測定器
4 電力線
5 通信回線
10 ノズル
11 ノズル用ヒータ
12 シリンダ
13,14 シリンダ用ヒータ
15,16,17 熱電対
18 ロードセル
19,20,21 リレー
22 スクリュ
23 サーボモータ
24 位置・速度検出器
25 サーボアンプ
26 制御装置
27 サーボCPU
28 CNCCPU
29 入出力回路
30 入出力装置付表示装置
31 通信回路
32 バス
Em(t) 経過時間tに対応したモータの電力量
Eh(t) 経過時間tに対応したヒータの電力量
Ec(t) 経過時間tに対応した制御装置等その他の電力量
Ea(t) 経過時間tに対応した使用電力量
ΣEm(t) モータの積算電力量
ΣEh(t) ヒータの積算電力量
ΣEc(t) 制御装置等その他の積算電力量
ΣEa(t) 積算使用電力量
Sm(t) 経過時間tに対応した稼動状態(運転状態)
Sh(t) 経過時間tに対応したヒータの稼動状態
Sp(t) 経過時間tに対応した稼動状態(完成品)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機の使用電力を検出する電力検出手段と、
第1の所定時間毎の時刻情報を取得する時刻情報取得手段と、
前記電力検出手段により検出された使用電力に基づき前記第1の所定時間毎の使用電力量を算出する使用電力量算出手段と、
前記時刻情報取得手段により取得される時刻情報の時刻における前記射出成形機の稼動状態を検出する稼動状態検出手段と、
前記使用電力量算出手段により算出された前記第1の所定時間毎の使用電力量を前記第1の所定時間毎に第2の所定時間毎に加算し積算使用電力量を算出する積算使用電力量算出手段と、
前記時刻情報取得手段により取得された時刻情報に対応させて少なくとも前記積算使用電力量算出手段により算出された積算使用電力量および前記稼動状態検出手段により検出された稼動状態を記憶する記憶手段とを備え、
前記記憶手段に記憶された積算使用電力量および稼動状態を時刻情報に対応させて、前記射出成形機に接続された表示装置の表示画面に表示したり、射出成形機に接続された印字装置に印字したり、射出成形機に接続された外部記憶装置に記憶したり、通信回線を介して外部装置に出力することを少なくとも1つ行うことを特徴とする射出成形機の電力監視装置。
【請求項2】
前記稼動状態検出手段によって検出される稼動状態は、少なくとも前記射出成形機が成形運転中であることを表す情報および加熱用ヒータを使用中であることを表す情報を含むことを特徴とする請求項1に記載の射出成形機の電力監視装置。
【請求項3】
前記稼動状態検出手段によって検出される稼動状態は、成形品の識別情報が含まれることを特徴とする請求項1または2のいずれか1つに記載の射出成形機の電力監視装置。
【請求項4】
前記電力検出手段は、更に少なくとも前記射出成形機の駆動に使用される電力、加熱用ヒータに使用される電力、これら以外の射出成形機の制御装置等に使用される電力とを区別して検出し、
前記使用電力量算出手段は、更に該電力検出手段により区別して検出された電力の前記区別毎の電力量を算出し、
前記積算使用電力量算出手段は、更に該使用電力量算出手段により算出された電力量の前記区別毎の積算電力量を算出し、
前記記憶手段は、更に前記区別毎の積算電力量を前記時刻情報に対応させて記憶し、
前記記憶手段に記憶された前記区別毎の積算電力量、積算使用電力量、および稼動状態を時刻情報に対応させて、
前記射出成形機に接続された表示装置の表示画面に表示したり、射出成形機に接続された印字装置に印字したり、射出成形機に接続された外部記憶装置に記憶したり、通信回線を介して外部装置に出力することを少なくとも1つ行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の射出成形機の電力監視装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−240977(P2010−240977A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−92039(P2009−92039)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】