説明

射出成形機

【課題】 光学製品を成形する射出成形機において、再生材料をバージンペレットと共に用いる構成としても、常に安定した光学特性をもつ光学製品を成形可能とすること。
【解決手段】 スプルゥ、ランナーをもつ構造の金型を用いて、光学製品を成形する射出成形機において、1ショット毎に取り出された成形物品からスプルゥ部分、ランナー部分からなる再生材料を分離すると共に、分離した再生材料を汎用ペレットと同等以上の大きさに切断して、1ショット毎に取り出して分離・切断した再生材料を、直ちに次の計量工程のための成形原料として1成形サイクル毎同量だけ原料受け入れ部に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板やレンズなどの光学製品を成形するための射出成形機に係り、特に、光学製品を成形するにあたって、製品部分(成形製品部分)以外の不要部分を成形原料として再利用するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機において、成形物品(本願で言う成形物品とは、金型のキャビティで成形される製品部分(成形製品部分)と、金型のスプルゥ、ランナーで成形される不要部分であるスプルゥ部分およびランナー部分とを含むものを指す)の製品部分から分離されるスプルゥ部分、ランナー部分を、成形原料として再利用するようにしたマシン(射出成形機)は、種々出回っている。これらのマシンでは、一般的に、スプルゥ部分、ランナー部分を、粉砕機により汎用ペレット(例えば、直径2mm、長さ3mm程度の大きさのペレット)と同等以下の大きさに粉砕して、再利用するようにしている。
【0003】
また、スプルゥ部分とランナー部分とが一体化したままの状態で、この再利用するための成形原料(再生材料)をマシンの原料受け入れ部に供給することで、粉砕機を用いなくても再生原料の使用を可能にしたマシンの提案もなされている(特許文献1、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平11−198180号公報
【特許文献2】特開平11−286030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、再生原料であるスプルゥ部分、ランナー部分を粉砕機で粉砕して、再生ペレットとするようにした場合には、再生ペレットとバージンペレット(まったく新しく作製されたペレット)とを混合して、マシンの1つの原料受け入れ部に投入することが可能である。しかし、再生原料をバージンペレットの大きさと同等以下の大きさになるように粉砕機で粉砕するので、この粉砕工程で小さな粉が混じり込み、この小さな粉はペレットを混練・可塑化する過程(計量工程)で剪断力を受けないため、十分に可塑化されず(未溶融となり)、光学製品を成形する場合には光学特性を損なうので、光学製品を成形する射出成形機では、再生原料の利用は一般的には行われてはいなかった。
【0005】
前記特許文献1、特許文献2に示された技術では、粉砕機を用いないので小さな粉が混入する虞はないが、良好な光学特性が求められる導光板やレンズなどの光学製品を成形することについての配慮がなされていない。つまり、再生原料とバージンペレットとを用いるに際して、各計量工程において常に同量の再生原料を用いることで、品質の安定化を図ることや、1ショット毎に取り出して分離した再生原料を、直ちに次の計量工程のための成形原料として用いることで、再生原料の特性(例えば、乾燥度)を常に安定させて、同様に品質の安定化を図ることについては、配慮が払われていない。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、光学製品を成形する射出成形機において、再生材料をバージンペレットと共に用いる構成としても、常に安定した光学特性をもつ光学製品を成形可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記した目的を達成するため、スプルゥ、ランナーをもつ構造の金型を用いて、光学製品を成形する射出成形機において、1ショット毎に取り出された成形物品からスプルゥ部分、ランナー部分からなる再生材料を分離すると共に、分離した再生材料を汎用ペレットと同等以上の大きさに切断して、1ショット毎に取り出して分離・切断した再生材料を、直ちに次の計量工程のための成形原料として1成形サイクル毎同量だけ原料受け入れ部に供給するように、構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、1ショット毎に取り出して分離・切断された再生材料(スプルゥ部分、ランナー部分)を適宜の大きさに切断して、1成形サイクル毎に同量だけ原料受け入れ部に供給するようにしているので、適宜の大きさまで切断された再生材料は、1回の投入分が容易・確実に加熱シリンダ内のスクリューに巻き込まれ、したがって、再生原料とバージンペレットとを用いるに際して、各計量工程において常に同量の再生原料を用いることができ、以って、光学製品の品質の安定化が図れる。また、1ショット毎に取り出して分離・切断した再生材料を、直ちに次の計量工程のための成形原料として用いるので、成形に用いる再生原料の特性(例えば、乾燥度)が常に安定したものとなり、この点でも、光学製品の品質の安定化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。図1、図2は、本発明の一実施形態(以下、本実施形態と記す)に係るインラインスクリュー式の射出成形機の要部構成を半断面で示す斜視図である。本実施形態の射出成形機は、光学製品としての例えば導光板を成形するマシンであり、図示していないが、金型として、普く公知のスプルゥ、ランナーをもつ金型構造の、金型を用いる構成となっている。
【0010】
図1、図2において、1は、図示せぬベース盤上に固設された加熱シリンダ保持ブロック(以下、保持ブロック1と記す)、2は、その基端部を保持ブロック1に固定された加熱シリンダ、3は、加熱シリンダ2内に回転並びに前後進可能であるように配設され、図示せぬ計量用サーボモータの駆動力で回転駆動され、図示せぬ射出用サーボモータの駆動力で直線駆動されるスクリューである。また、4は、保持ブロック1と加熱シリンダ2の基部とに穿設された穴とで構成される第1の原料受け入れ部、5は、保持ブロック1と加熱シリンダ2の基部とに穿設された穴とで構成される第2の原料受け入れ部であり、第2の原料受け入れ部5は第1の原料受け入れ部4よりも、スクリュー3の先端側からみて後方側に配置されている。
【0011】
第1の原料受け入れ部4には、光学製品成形用の例えばアクリル系樹脂からなるバージンペレット(例えば、直径2mm、長さ3mm程度の大きさのバージンペレット)6が、例えば数成形サイクル毎に所定量だけ供給される(図1の状態)。
【0012】
第2の原料受け入れ部5には、1ショット毎に取り出された成形物品からスプルゥ部分、ランナー部分からなる再生材料を分離すると共に、これを汎用ペレットと同等以上の大きさに切断したもの(これを切断再生材料7と記す)が、直ちに次の計量工程のための成形原料として、1成形サイクル毎に同量だけ供給される(図2の状態)。
【0013】
図3は、本実施形態の射出成形機で成形される成形物品の1例を示す図である。図3の(a)において、符号11で総括的に示す成形物品は、金型のキャビティで成形される製品部分(成形製品部分)12と、金型のスプルゥ、ランナーで成形されるスプルゥ部分13およびランナー部分14とからなっており、ここでは、携帯電話機の液晶表示部のバックライトを拡散・導光するための導光板である成形製品12を、4個取りする例を示している。なお、本願で言うランナー部分14とは、小さなゲート部分14aを含むものである。
【0014】
図3の(b)は、図3の(a)に示した成形物品11を分離・切断した様子を示す図である。図3の(b)に示すように、成形物品11は、製品部分(つまり、目的の成形製品)12と、再生材料(スプルゥ部分13、ランナー部分14)とに、ホットニッパーを用いて切断・分離され、再生材料は、汎用ペレットと同等以上の大きさとなるように、ホットニッパーを用いて、複数のピース(ここでは、7個のピース)に切断・分離されて、前記した切断再生材料7とされる。なお、ホットニッパーを切断手段に用いる所以は、切断に際して小さな粉を全く発生させないようにするためである。
【0015】
図4は、本実施形態の射出成形機における成形原料(バージンペレット6および切断再生材料7)の供給系の機能構成を、ブロック化して示す図である。図4において、21は作業ロボットで、成形物品取り出し手段21aと成形物品分離・切断手段21bとを有する。成形物品取り出し手段21aは、型開きおよびエジックトの完了状態において、1ショット毎に金型から成形物品11を取り出して、これを成形物品分離・切断手段21bに受け渡す。成形物品分離・切断手段21bは、受け取った成形物品11を、ホットニッパーを用いて、図3の(b)に示すように成形製品(製品部分)12と切断再生材料7とに切断・分離して、成形製品(製品部分)12は成形製品搬送手段22に受け渡し、切断再生材料7は再生材料搬送手段23に受け渡す。
【0016】
成形製品搬送手段22はベルトコンベアで構成され、成形物品分離・切断手段21bにより整列して載置された成形製品(製品部分)12を、所定箇所まで搬送する。再生材料搬送手段23は、切断再生材料7を空気流によって前記第2の原料受け入れ部5へと搬送する機能を持つものであり、作業ロボット21によって1ショット毎に取り出されて、切断分離された切断再生材料7を、直ちに次の計量工程のための成形原料とするように、1成形サイクル毎の所定タイミングに、毎回同量の切断再生材料7を第2の原料受け入れ部5に供給する。
【0017】
また、図4において、24は、バージンペレット6を一定の乾燥状態に保って貯蔵したバージンペレット貯蔵手段であり、このバージンペレット貯蔵手段24から、バージンペレット計量手段25が、所定量(例えば、数成形サイクル分の量)のバージンペレット6を計量して取り出し、計量して取り出したバージンペレット6をバージンペレット搬送手段26に受け渡す。バージンペレット搬送手段26は、バージンペレット6を空気流によって前記第1の原料受け入れ部4へと搬送する機能を持つものであり、バージンペレット6を適宜のタイミングで第1の原料受け入れ部4に供給する。
【0018】
以上のように本実施形態では、1ショット毎に取り出して分離・切断された切断再生材料7を、1成形サイクル毎に同量だけ第2の原料受け入れ部5に供給するようにしているので、適宜の大きさまで切断された切断再生材料7は、1回の投入分が容易・確実に加熱シリンダ2内のスクリュー3に巻き込まれ、したがって、再生原料(切断再生材料7)とバージンペレット6とを用いるに際して、各計量工程において常に同量の再生原料を用いることができ、以って、光学製品の品質の安定化が図れる。また、1ショット毎に取り出して分離・切断した再生材料を、直ちに次の計量工程のための成形原料として用いるので、成形に用いる再生原料の特性(例えば、乾燥度)が常に安定したものとなり、この点でも、光学製品の品質の安定化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係るインラインスクリュー式の射出成形機の要部構成を半断面で示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るインラインスクリュー式の射出成形機の要部構成を半断面で示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るインラインスクリュー式の射出成形機で成形される成形物品の1例を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るインラインスクリュー式の射出成形機における、成形原料(バージンペレットおよび切断再生材料)の供給系の機能構成をブロック化して示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 加熱シリンダ保持ブロック(保持ブロック)
2 加熱シリンダ
3 スクリュー
4 第1の原料受け入れ部
5 第2の原料受け入れ部
6 バージンペレット
7 切断再生材料
11 成形物品
12 製品部分(成形製品部分)
13 スプルゥ部分
14 ランナー部分
21 作業ロボット
21a 成形物品取り出し手段
21b 成形物品分離・切断手段
22 成形製品搬送手段
23 再生材料搬送手段
24 バージンペレット貯蔵手段
25 バージンペレット計量手段
26 バージンペレット搬送手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプルゥ、ランナーをもつ構造の金型を用いて、光学製品を成形する射出成形機において、
1ショット毎に取り出された成形物品からスプルゥ部分、ランナー部分からなる再生材料を分離すると共に、分離した再生材料を汎用ペレットと同等以上の大きさに切断して、1ショット毎に取り出して分離・切断した前記再生材料を、直ちに次の計量工程のための成形原料として1成形サイクル毎同量だけ原料受け入れ部に供給する手段を設けたことを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形機において、
前記した切断をホットニッパーで行うことを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
請求項1に記載の射出成形機において、
バージンペレットを、前記した原料受け入れ部とは異なる他の原料受け入れ部に供給する手段を設けたことを特徴とする射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−247950(P2006−247950A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−65735(P2005−65735)
【出願日】平成17年3月9日(2005.3.9)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【Fターム(参考)】