説明

射出成形機

【課題】 射出成形機の可動盤と固定盤との平行度を高めることを目的とした可動盤ガイド装置を提供する。
【解決手段】 固定盤14と受圧盤15の間に配設されたタイバ16に対して可動盤17が移動自在に取付けられた射出成形機11において、タイバ16とは別に、ベッド13上面以外の部分と可動盤17との間に、可動盤17を直動案内させる可動盤ガイド装置22を配設し、固定盤14に対する平行度をより一層保った状態で、可動盤17を移動させることができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関するものであり、特には射出成形機の型締装置に配設され可動盤を直動案内させる可動盤ガイド装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機の可動盤は、四隅近傍の孔に、内部に潤滑剤が封入されたブッシュが挿入され、該ブッシュに対してタイバが摺動自在に挿通されている。しかし前記ブッシュとタイバとの間には僅かなクリアランスがあり、それが原因で可動盤と固定盤との間の平行度が問題となる場合がある。また可動盤や可動金型の自重によりタイバには下方へ向けて荷重がかかるという問題もある。そこで前記問題に対応する射出成形機としては、特許文献1に示されるものが知られている。特許文献1においては、ベッド上面にリニアガイド装置が配設され、可動盤の下面が移動自在にガイド保持されるようになっている。しかしこの方式はベッド上面、固定盤、可動盤の寸法精度を非常に正確にする必要がある。そしてベッドは一般に鋼板によって構成されているが、鋼板からなるベッド上面には僅かな反りがあるという問題があり、リニアガイド装置を完全にタイバと平行に設置することが非常に困難であるという問題があった。従って特許文献1においては、可動盤と固定盤の平行度を向上させることが困難であった。また特許文献1においては、可動盤の移動する部分の下方のベッドは、通常の場合、金型の温度調節用の温調ホースを通すために、鋼板が貼られていないので、別途にリニアガイド装置を配設することが難しい。
【0003】
【特許文献1】特開平9−262884号公報(請求項1、図1、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明では上記の問題を鑑みてなされたものであって、射出成形機の可動盤と固定盤との平行度を高めることを目的とした可動盤ガイド装置を提供することを目的とする。そして横型射出成形機においては、タイバにかかる下方への荷重を減らすことを目的とした可動盤ガイド装置を提供することを目的とする。そしてまた後からでも簡単に精度よく取付けることができる可動盤ガイド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に記載の射出成形機は、固定盤と受圧盤の間に配設されたタイバに対して可動盤が移動自在に取付けられた射出成形機において、ベッド上面以外の部分と可動盤との間に、タイバとは別に、可動盤を直動案内する可動盤ガイド装置が配設されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の請求項2に記載の射出成形機は、固定盤と受圧盤の間に配設されたタイバに対して可動盤が移動自在に取付けられた射出成形機において、タイバにおける固定盤と可動盤の間および可動盤と受圧盤の間にそれぞれ取付けられた取付部材と、取付部材の間を結合して前記タイバに平行に配設された横架部材と、横架部材と可動盤との間に配設され可動盤を直動案内する直動ガイド部材と、が備えられた可動盤ガイド装置が配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項3に記載の射出成形機は、請求項2において、可動盤の下面には直動ガイド部材のハウジングが配設され、横架部材の上面にはハウジングに直動ガイド部材のレールが配設され、横架部材は、ベッド上面とは非接触に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の射出成形機は、固定盤と受圧盤の間に配設されたタイバに対して可動盤が移動自在に取付けられた射出成形機において、ベッド上面以外の部分と可動盤との間に、タイバとは別に、可動盤を直動案内する可動盤ガイド装置が配設されているので、可動盤と固定盤の平行度を高めることができ、ひいては成形品の寸法精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の実施形態の射出成形機について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態の可動盤ガイド装置が設けられた射出成形機の正面図である。図2は、図1におけるA−A線の断面図である。図3は、図1におけるB−B線の断面図である。
【0010】
図1に示されるように、射出成形機11の型締装置12は、ベッド13の略中央の上面に固定盤14が立設固着されている。そして前記固定盤14に対向して、受圧盤15がベッド13の一側寄りの上面に配設され、前記固定盤14と受圧盤15の間に上側2本と下側2本のタイバ16がそれぞれ平行かつ等間隔に配設されている。また可動盤17の四隅近傍には孔17aが設けられ、該孔17aには内部に潤滑剤が封入されたブッシュ17bが挿入されている。そして前記可動盤17のブッシュ17bに対してタイバ16が挿通され、潤滑作用により両者は摺動自在となっている。また可動盤17が型開閉移動される位置の下方部分のベッド13は、中央部に開口部13aが設けられ、図示しない温調用ホースが金型に取付可能となっている。
【0011】
受圧盤15には型締駆動機構である型締シリンダ18が設けられ、そのロッド18aが可動盤17に固着されている。なお型締機構は電動トグル方式とし、受圧盤に型締用サーボモータを設け、受圧盤と可動盤の間にトグル機構を設けるようにしてもよい。固定盤14の金型取付面14aには固定金型19が取付けられ、可動盤17の金型取付面17cには可動金型20が取付けられ、両金型19,20が型閉された際には、図示しないキャビティが形成されるようになっている。また固定盤14の反可動盤側であってベッド13の他側寄りの上面には、射出装置21が配設されている。
【0012】
次に可動盤ガイド装置22について説明する。下方の2本のタイバ16には、それぞれ前記タイバ16と平行に可動盤ガイド装置22の一方を構成する、取付部材23,25、横架部材26、リニアガイドウェイ27のレール28等が取付けられている。また前記可動盤17には可動盤ガイド装置22のもう一方を構成する、リニアガイドウェイ27のハウジング24が取付けられている。そして両者から可動盤ガイド装置22が構成されている。従って射出成形機11は、図2、図3に示されるように、可動盤ガイド装置22,22が、タイバ16,16に沿って二つ取付けられている。
【0013】
可動盤ガイド装置22の細部を更に説明すると、図2に示されるように、下方のタイバ16における固定盤14と可動盤17との間の部分には、固定盤14の金型取付面14aに略当接するように、固定盤側(他側)の取付部材23が下方に向けて設けられている。取付部材23は、タイバ16の周面に倣った半円形のタイバ当接面を有する上部取付部材23aと、同じく半円形のタイバ当接面を有し、所定の長さを有する下部取付部材23bからなっている。そしてタイバ16の周面に対して上部取付部材23aと下部取付部材23bのタイバ当接面の側同士を挟み込み、図示しない取付ボルトでタイバ16に係合固着する。なお固定盤側の取付部材23をタイバ16に取付ける位置は、固定盤14に必ずしも当接する必要はないが、可動盤17が型締された際に該可動盤17、可動金型20、温調ホース、およびリニアガイドウェイ27に係合され可動盤17のハウジング24の端部が邪魔にならない位置に取付けられる。
【0014】
下方のタイバ16における受圧盤15と可動盤17との間の部分であって受圧盤15の近傍位置には、受圧盤側(一方)の取付部材25が下方に向けて設けられている。取付部材25の形状は、前記固定盤側の取付部材23と同様なので断面図は省略するが、タイバ16の周面に倣う半円形のタイバ当接面を有する上部取付部材25aと、同じく半円形のタイバ当接面を有し、所定の長さを有する下部取付部材25bからなっている。そしてタイバ16の周面に対して上部取付部材25aと下部取付部材25bのタイバ当接面の側同士を挟み込み、図示しない取付ボルトでタイバ16に係合固着する。なお受圧盤側の取付部材25をタイバ16に取付ける位置は、受圧盤15と当接しない近傍位置が好ましく、可動盤17が型開された際に可動盤17、前記可動盤17に固着されたハウジング24の端部、および型締機構が邪魔にならない位置に取付けられる。
【0015】
また可動盤ガイド装置22は、図1に示されるように、前記下部取付部材23bの下端と下部取付部材25bの下端との間を結合するように、横架部材26がタイバ16と平行(水平方向)に取付けられている。従って前記取付部材23,25と横架部材26は、直角に固着されている。横架部材26は所定の強度を有するような板厚(型締力400KNの射出成形機で最低でも25mm以上)を有し、上面が平面加工された鋼材である。また可動盤ガイド装置22の上部取付部材23a,25aと下部取付部材23b,25bの間、下部取付部材23b,25bと横架部材26との間には、シム等の調整手段が挿入可能に設けられ、横架部材26とタイバ16との平行度が微調整可能となっている。更に図示は省略するが、横架部材26と横架部材26の間にも連結板を取付けてもよい。
【0016】
図1、図3に示されるように、横架部材26の上面には、可動盤17を直動案内する直動ガイド部材であるリニアガイドウェイ27の直線状のレール28が型開閉方向に向けて配設されている。レール28は、可動盤17の型開時の後退限度位置と型閉時の前進限度位置にハウジング24が移動可能な長さおよび位置に設けられている。リニアガイドウェイ27は公知の機構であるので詳細説明は省略するが、レール28の側面には、ハウジング24のスライダ24aに配設されるボール24bが当接される溝部28aが形成されている。また横架部材26の下面はベッド13上面とは非接触に設けられている。従ってベッド13上面にごく僅かな撓み等があったとしてもその影響を受けない。
【0017】
また可動盤17の一側面である下面17dには、可動盤17を直動案内する直動ガイド部材であるリニアガイドウェイ27のハウジング24がレール28に対応して、タイバ16,16が挿通される下方位置に、それぞれ取付けられている。前記ハウジング24には、前記各レール28を跨ぐように、断面略凹状の下方に向けた溝部を有するスライダ24a,24aがレール28の方向に沿って取付けられている。そしてスライダ24aの前記溝部内の側壁面には、転動部材であるボール24bが一部突出するように列設されている。そして前記ボール24bは、レール28の溝部28aに沿って転動されるようになっている。
【0018】
なお直動ガイド部材は、前記リニアガイドウェイ27に限定されず、同様の構造をしたLMガイド(登録商標)等であってもよい。そして転動部材であるボール24bは、リテーナ入りタイプであってもよい。また転動部材としては、ローラ、車輪を用いたものでもよい。更には直動ガイド部材としては転動部材を用いずに、ターカイト(登録商標)板などの低摩擦素材または油潤滑部材とし、それらの部材間で摺動されるよう構成するようにしてもよい。または横架部材をタイバのような円柱部材として、可動盤の下方に延設されたブラケットに形成されたブッシュに挿通されるようにしてもよい。
【0019】
次に可動盤17の開閉移動と可動盤ガイド装置22の作用効果について説明する。本実施形態によれば、可動盤17の開閉移動時、可動盤17の四隅近傍のブッシュ17bに対してタイバ16が摺動状態に保持されるだけでなく、前記タイバ16とは別に直動ガイド部材であるリニアガイドウェイ27のレール28とハウジング24とが可動盤17の移動をガイドする。従って前記可動盤ガイド装置22は、リニアガイドウェイ27を介して、可動盤17および可動金型20の自重の一部を受ける。そして前記可動盤ガイド装置22は、タイバ16の固定盤側(他方)と受圧盤側(一方)に取付けられているので、タイバ16に対する応力の点で有利であり、前記可動盤17等の自重によりタイバ16の中間付近が下方に向けて撓むといった問題も解消される。そして可動盤17は、前記リニアガイドウェイ27にサポートされて、固定盤14に対して平行な状態を保ったままスムーズに移動させることができる。よって本発明を、射出圧縮成形や射出プレスといった型を完全に型締しない状態で射出装置から射出を行い、キャビティ内の溶融樹脂を圧縮する成形法に用いることにより、固定金型19に対する可動金型20の平行度を向上させることができ、従来以上に寸法精度のよい成形品を成形することができる。そして成形品の種類としては、燃料電池用のセパレータ、導光板、光ディスク、レンズ等の平行度が厳しく求められる成形品において本発明は有効に作用する。
【0020】
また本発明は、次のような応用例を含むものである。可動盤ガイド装置は可動金型の少なくとも一つの側面に対して取付けられるものであればよく、例えば可動盤の横側面に対して取付けられるものでもよい。また可動盤ガイド装置は、上方のタイバに取付けられるものでもよい。更に可動盤ガイド装置の他方の端部は、タイバではなく、固定盤に直接固着されたものであってもよい。更にまたベッド上面の2箇所にブラケットを設け、その間に横架部材をわたした可動盤ガイド装置であってもよい。その場合は、横架部材に対してベッド上面が直接的には非接触である。そしてまた可動盤ガイド装置は、竪型射出成形機の竪方向に設けられたタイバに対して平行に取付けられるものでもよい。竪型射出成形機の場合、少なくとも向かい合う2方向に可動盤ガイド装置を取付けることが好ましい。また竪型射出成形機、横型射出成形機に限らず、金型のパーティング面の側からノズルを当接させて射出を行う場合、ノズルタッチ力に対向する目的でその反対側に本装置を設けてもよい。
【0021】
また本発明については、一々列挙はしないが、上記した本実施形態のものに限定されず、当業者が本発明の趣旨を踏まえて変更を加えたものについても、適用されることは言うまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態の可動盤ガイド装置が設けられた射出成形機の正面図である。
【図2】図1におけるA−A線の断面図である。
【図3】図1におけるB−B線の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
11 射出成形機
12 型締装置
13 ベッド
14 固定盤
15 受圧盤
16 タイバ
17 可動盤
18 型締シリンダ
22 可動盤ガイド装置
23,25 取付部材
24 ハウジング
24a スライダ
26 横架部材
27 リニアガイドウェイ
28 レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と受圧盤の間に配設されたタイバに対して可動盤が移動自在に取付けられた射出成形機において、
ベッド上面以外の部分と可動盤との間に、前記タイバとは別に、可動盤を直動案内する可動盤ガイド装置が配設されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
固定盤と受圧盤の間に配設されたタイバに対して可動盤が移動自在に取付けられた射出成形機において、
前記タイバにおける固定盤と可動盤の間および可動盤と受圧盤の間にそれぞれ取付けられた取付部材と、
前記取付部材の間を結合して前記タイバに平行に配設された横架部材と、
前記横架部材と可動盤との間に配設され可動盤を直動案内する直動ガイド部材と、が備えられた可動盤ガイド装置が配設されていることを特徴とする射出成形機。
【請求項3】
可動盤の下面には前記直動ガイド部材のハウジングが配設され、前記横架部材の上面には前記ハウジングに前記直動ガイド部材のレールが配設され、
前記横架部材は、ベッド上面とは非接触に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−301783(P2007−301783A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131060(P2006−131060)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000155159)株式会社名機製作所 (255)
【Fターム(参考)】