説明

射出成形用金型および射出成形品の製造方法

【課題】 リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを従来より抑えることができる射出成形用金型および射出成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】 薄板部11と、薄板部11に設けられたリブ13と、リブ13の根元の内部にリブ13に沿って形成された中空部15とを有する射出成形品10を製造するための射出成形用金型60は、薄板部11のうちリブ13側とは反対側の外装面11aを形成するための金型70と、薄板部11のうちリブ13側の面11bおよびリブ11を形成するために金型70に対向して配置される金型80と、金型80に設けられて中空部15を形成するためのガスを注入するガス注入ピン90とを備え、ガス注入ピン90は、外装面11aと、リブ11の厚み方向の両端の面13aとから略等距離の位置を通る仮想線10a上にガス注入口90cが配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リブの根元の内部にリブに沿って形成された中空部を有する射出成形品を製造するための射出成形用金型および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄板部と、この薄板部に設けられたリブとを有する射出成形品が製造される場合、射出成形品において薄板部の厚み方向の樹脂の厚みは、薄板部の厚み方向にリブが存在する部分(以下「リブ有り部」という。)が薄板部の厚み方向にリブが存在しない部分(以下「リブ無し部」という。)より厚いので、樹脂が冷えて硬化する際にリブ有り部の硬化がリブ無し部より遅い。したがって、リブ有り部において薄板部のうちリブ側とは反対側の面にヒケが発生し、射出成形品の外観上の品質が低下することになる。
【0003】
このようなヒケが発生することを防止する方法として、金型のキャビティに流動化させた樹脂を充填するときに樹脂中にガスを注入する方法が知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。流動化させた樹脂は、金型の成形面に近い方から冷えて硬化していくので、金型の成形面から遠い方が粘度が低い。そして、流動化させた樹脂中にガスが注入されると、ガスは、樹脂のうち粘度が低い部分に流れる。ここで、薄板部の厚み方向の樹脂の厚みにおいてリブ有り部がリブ無し部より厚いので、リブ有り部は、リブ無し部と比較して、樹脂が冷えて硬化する際に硬化が遅れて粘度が低くなっている。したがって、流動化させた樹脂中にガスが注入されると、リブの根元の内部にリブに沿ってガスが流れる。そして、このガスの圧力によって樹脂が金型の成形面に押し付けられるので、樹脂の硬化後に、薄板部にヒケが発生することが防止される。なお、樹脂の硬化後のリブの根元の内部には、ガスによって形成された中空部がリブに沿って残る。
【特許文献1】特開平5−208430号公報
【特許文献2】特開平10−272645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流動化させた樹脂中にガスを注入する方法においては、リブの根元の内部にリブに沿ってガスが流れるように制御することが難しく、ガスがリブの根元の部分から逸れてリブ無し部に流れ出すことがある。リブ無し部にガスが流れ出て中空部が形成されると、その部分の薄板部の樹脂の厚みが中空部の分だけ薄くなる。
【0005】
ここで、射出成形品によっては、薄板部の強度や耐火性が要求されることがある。例えば、薄板部がOA機器のカバーとして使用される場合、薄板部には、衝撃などに対する所定の強度が要求されることに加え、難燃性の樹脂で形成されてOA機器の内部部品の発熱や発火などに備えた所定の耐火性が要求される。薄板部の強度や耐火性を向上するための方法の1つとして、薄板部を形成する樹脂の厚みを厚くするという方法がある。
【0006】
しかしながら、上述したように、リブ無し部にガスが流れ出て中空部が形成されると、その部分の薄板部の樹脂の厚みが中空部の分だけ薄くなるので、薄板部の樹脂の厚みが部分的に必要な厚みに達せず、射出成形品全体が不良品となってしまうことがある。特に、コストを下げるために樹脂の使用量を下げて薄板部の板厚を薄くする場合には、そもそも薄板部の板厚が薄く樹脂の厚みに余裕がないので、リブ無し部に中空部が形成されないように、流動化させた樹脂中にガスが注入されるときのガスの流れを制御する必要性が高い。
【0007】
そこで、本発明は、リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを従来より抑えることができる射出成形用金型および射出成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の射出成形用金型は、薄板部と、前記薄板部に設けられたリブと、前記リブの根元の内部に前記リブに沿って形成された中空部とを有する射出成形品を製造するための射出成形用金型であって、前記薄板部のうち前記リブ側とは反対側の面である第1の板面を形成するための第1の金型と、前記薄板部のうち前記リブ側の面である第2の板面および前記リブを形成するために前記第1の金型に対向して配置される第2の金型と、前記第2の金型に設けられて前記中空部を形成するためのガスを注入するガス注入ピンとを備え、前記ガス注入ピンは、前記第1の板面と、前記リブの厚み方向の両端の面とから略等距離の位置を通る仮想線上にガス注入口が配置されていることを特徴とする。
【0009】
薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面と、リブの厚み方向の両端の面とから略等距離の位置は、その位置よりリブ側に近い位置やリブ側とは反対側に近い位置と比較して、薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面を成形する第1の金型の成形面と、リブの厚み方向の両端の面を成形する第2の金型の成形面との何れからも遠い位置であるので、樹脂の硬化時に樹脂の粘度が低い。本発明の射出成形用金型は、薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面と、リブの厚み方向の両端の面とから略等距離の位置を通る仮想線上にガス注入ピンのガス注入口が配置されており、樹脂の硬化時に樹脂の粘度が低い箇所に直接ガスを注入することができるので、その位置よりリブ側に近い位置やリブ側とは反対側に近い位置にガス注入ピンのガス注入口が配置されている構成と比較して、流動化された樹脂中のガスの流れの制御を容易化することができる。したがって、本発明の射出成形用金型は、リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを従来より抑えることができる。
【0010】
また、リブ無し部においては、薄板部の厚み方向の中心が樹脂の硬化時に樹脂の粘度が最も低く、ガスが流れ易い。したがって、薄板部の厚み方向の中心を通る仮想線上にガス注入ピンのガス注入口が配置されていると、リブ無し部にガスが広がり易い。しかしながら、本発明の射出成形用金型は、薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面と、リブの厚み方向の両端の面とから略等距離の位置を通る仮想線、すなわち、薄板部の厚み方向の中心よりリブ側の位置を通る仮想線上にガス注入ピンのガス注入口が配置されているので、リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを抑えることができる。
【0011】
また、本発明の射出成形用金型の前記第1の金型は、前記第1の板面を成形する第1の板面成形面が形成され、前記第2の金型は、前記リブの根元を成形する根元成形面が形成され、前記根元成形面は、自身と対向する前記第1の板面成形面の部材より定積比熱が大きい部材で形成されていることが好ましい。
【0012】
上述したように、リブ無し部においては薄板部の厚み方向の中心にガスが広がり易い。樹脂が硬化するとき、薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面の近傍の温度と比較してリブの根元の近傍の温度が高いと、薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面の近傍の樹脂の粘度と比較してリブの根元の近傍の樹脂の粘度が低いため、リブの根元の近傍、すなわち、薄板部の厚み方向の中心よりリブ側の位置にガスが流れるので、リブ無し部にガスが広がることを抑えることができ、結果として、リブ無し部に中空部が形成されることを抑えることができる。本発明の射出成形用金型は、第2の金型のうちリブの根元を成形する根元成形面が自身と対向する第1の金型の第1の板面成形面の部材より定積比熱が大きい部材で形成されているので、樹脂が硬化するとき、薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面の近傍の樹脂と比較して、リブの根元の近傍の樹脂が冷めにくく温度が高くなる。したがって、本発明の射出成形用金型は、リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを抑えることができる。
【0013】
また、本発明の射出成形用金型の前記第2の金型は、前記リブの根元を成形する根元成形面が形成され、前記根元成形面は、シボ加工が施されていることが好ましい。
【0014】
上述したように、樹脂が硬化するとき、薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面の近傍の温度と比較してリブの根元の近傍の温度が高いと、リブ無し部に中空部が形成されることを抑えることができる。本発明の射出成形用金型は、第2の金型のうちリブの根元を成形する根元成形面にはシボ加工が施されているので、樹脂が充填されるときにリブの根元の近傍の樹脂がシボ加工による抵抗を受けて剪断されたり圧縮されたりして発熱するとともに、樹脂が充填されるときにシボ加工の部分に生成される空気層によって断熱作用が生じるため、薄板部のうちリブ側とは反対側の第1の板面の近傍の樹脂の温度と比較して、リブの根元の近傍の樹脂の温度が高くなる。したがって、本発明の射出成形用金型は、リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを抑えることができる。
【0015】
また、本発明の射出成形用金型の前記第1の金型は、前記第1の板面を成形する第1の板面成形面が形成され、前記第2の金型は、前記リブの根元を成形する根元成形面と、前記第2の板面を成形する第2の板面成形面とが形成され、前記第2の板面成形面のうち前記根元成形面の近傍の部分は、自身と対向する前記第1の板面成形面側に盛り上がっていることが好ましい。
【0016】
この構成により、本発明の射出成形用金型は、第2の板面成形面のうち根元成形面の近傍の部分が自身と対向する第1の板面成形面側に盛り上がっていない構成と比較して、第1の板面成形面と、第2の板面成形面との間の空間が第2の板面成形面のうち根元成形面の近傍の部分において狭いので、リブの根元の部分に存在するガスが第2の板面成形面のうち根元成形面の近傍の部分を越してリブ無し部に流れ出すことを抑えることができる。したがって、本発明の射出成形用金型は、リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを抑えることができる。
【0017】
また、本発明の射出成形品の製造方法は、上述した射出成形用金型を用い、前記第1の金型および前記第2の金型の間に流動化させた樹脂を充填する工程と、前記ガス注入ピンによって前記樹脂中にガスを注入して前記中空部を形成する工程とを備えたことを特徴とする。
【0018】
したがって、本発明の射出成形品の製造方法は、リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを従来より抑えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、リブの根元以外の部分に中空部が形成されることを従来より抑えることができる射出成形用金型および射出成形品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0021】
(第1の実施の形態)
まず、本発明の第1の実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成について説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る射出成形品10の外観斜視図である。
【0023】
図1に示すように、射出成形品10は、厚みが2mmの薄板部11と、薄板部11の周囲から立ち上がった厚みが2mmの壁部12と、薄板部11を補強するために薄板部11に設けられた厚みが1.2mmのリブ13とを備えている。射出成形品10は、薄板部11のうちリブ13側とは反対側の面である第1の板面を外装面11aとして難燃性の樹脂で形成されたOA機器のカバーである。リブ13には、成形時にガスが注入されたガスゲート14が複数設けられている。
【0024】
図2は、射出成形品10の一部分の平面図である。図3は、図2のIII矢視断面図である。図4は、図2のIV矢視断面図である。なお、図4において、一点鎖線は、後述する仮想線10aを示している。
【0025】
図2〜図4に示すように、リブ13の根元は、リブ13の厚み方向の両側に斜面13aが形成されている。斜面13aは、リブ13に沿って延在している。ガスゲート14は、穴14aが形成されている。射出成形品10は、リブ13の根元の内部にリブ13に沿って中空部15が形成されている。
【0026】
図5は、本実施の形態に係る射出成形用金型60のうち射出成形品10の図3に示す部分を成形する部分の側面断面図である。図6は、射出成形用金型60のうち射出成形品10の図4に示す部分を成形する部分の側面断面図である。なお、図5および図6において、一点鎖線は、後述する仮想線10aを示している。
【0027】
図5および図6に示すように、射出成形用金型60は、薄板部11(図4参照。)の外装面11a(図4参照。)を形成するための第1の金型としての金型70と、金型70に対向して配置されてリブ13(図4参照。)を形成するための第2の金型としての金型80と、金型80に設けられて中空部15(図4参照。)を形成するためのガスを注入するガス注入ピン90とを備えている。
【0028】
金型70は、薄板部11の外装面11aを成形するための成形面70aが第1の板面成形面として形成されている。
【0029】
金型80は、薄板部11のうち厚み方向において外装面11aとは反対側の面11b(図4参照。)を第2の板面として成形するための成形面80aと、リブ13を成形するための成形面80bと、ガスゲート14(図3参照。)の外周面を成形するための成形面80cとが形成されている。また、成形面80bには、リブ13の厚み方向の両端の斜面13a(図3参照。)を成形するための成形面80dが根元成形面として形成されている。金型80は、リブ13の根元に対応する部分81が金型70や金型80の他の部分より定積比熱が大きい部材で形成されている。
【0030】
ガス注入ピン90は、ガスゲート14の穴14a(図4参照。)を成形するための成形面90aが形成されている。ガス注入ピン90は、ガスの流路90bを形成するための溝91aが形成された内部材91と、内部材91を通して内部材91の溝91aとともに流路90bを形成するための貫通孔92aが形成された外部材92とを備えている。ガス注入ピン90は、金型70および金型80の間に充填された樹脂中にガスを注入するためのガス注入口90cが形成されている。なお、ガス注入口90cは、内部材91と、外部材92との間に環状に形成されている。ガス注入口90cの幅は、5μm〜50μm程度であるが、本出願の各図面では理解を容易にするために実際より大きめに描いている。
【0031】
図7は、成形時の射出成形品10および射出成形用金型60の一部の側面断面図である。
【0032】
図7に示すように、ガス注入口90cは、薄板部11の外装面11aと、リブ13の厚み方向の両端の斜面13aとから略等距離の位置を通る仮想線10a(図3〜図6参照。)上に配置されている。なお、図7において、一点鎖線は、薄板部11の外装面11aと、リブ13の厚み方向の両端の斜面13aとから略等距離の位置を説明するための線である。
【0033】
次に、射出成形用金型60を用いた射出成形品10の製造方法について説明する。
【0034】
まず、金型70および金型80の間に流動化させた樹脂を充填する。
【0035】
次に、射出成形用金型60の外部に設けられた図示していないガス発生装置でガスを発生させて、ガス発生装置で発生させたガスを、金型80に設けられた穴を介してガス注入ピン90によって樹脂中に注入して中空部15を形成する。
【0036】
最後に、十分に冷却して樹脂を硬化させた後、金型70および金型80の間から射出成形品10を取り出す。
【0037】
次に、射出成形用金型60の効果について説明する。
【0038】
薄板部11の外装面11aと、リブ13の厚み方向の両端の斜面13aとから略等距離の位置は、その位置よりリブ13側に近い位置やリブ13側とは反対側に近い位置と比較して、薄板部11の外装面11aを成形する金型70の成形面70aと、リブ13の厚み方向の両端の斜面13aを成形する金型80の成形面80dとの何れからも遠い位置であるので、樹脂の硬化時に樹脂の粘度が低い。射出成形用金型60は、薄板部11の外装面11aと、リブ13の厚み方向の両端の斜面13aとから略等距離の位置を通る仮想線10a上にガス注入ピン90のガス注入口90cが配置されており、樹脂の硬化時に樹脂の粘度が低い箇所に直接ガスを注入することができるので、その位置よりリブ13側に近い位置やリブ13側とは反対側に近い位置にガス注入ピン90のガス注入口90cが配置されている構成と比較して、流動化された樹脂中のガスの流れの制御を容易化することができる。したがって、射出成形用金型60は、リブ13の根元以外の部分に中空部15が形成されることを従来より抑えることができる。
【0039】
また、射出成形品10のうち薄板部11の厚み方向にリブ13が存在しない部分においては、薄板部11の外装面11aを成形する金型70の成形面70aと、薄板部11のうち厚み方向において外装面11aとは反対側の面11bを成形する金型80の成形面80aとの何れからも遠い位置である薄板部11の厚み方向の中心が樹脂の硬化時に樹脂の粘度が最も低く、ガスが流れ易い。したがって、薄板部11の厚み方向の中心を通る仮想線上にガス注入ピン90のガス注入口90cが配置されていると、射出成形品10のうち薄板部11の厚み方向にリブ13が存在しない部分にガスが広がり易い。しかしながら、射出成形用金型60は、薄板部11の外装面11aと、リブ13の厚み方向の両端の斜面13aとから略等距離の位置を通る仮想線10a、すなわち、薄板部11の厚み方向の中心よりリブ13側の位置を通る仮想線上にガス注入ピン90のガス注入口90cが配置されているので、リブ13の根元以外の部分に中空部15が形成されることを抑えることができる。
【0040】
上述したように、射出成形品10のうち薄板部11の厚み方向にリブ13が存在しない部分においては薄板部11の厚み方向の中心にガスが広がり易い。樹脂が硬化するとき、薄板部11の外装面11aの近傍の温度と比較してリブ13の根元の近傍の温度が高いと、薄板部11の外装面11aの近傍の樹脂の粘度と比較してリブ13の根元の近傍の樹脂の粘度が低いため、リブ13の根元の近傍、すなわち、薄板部11の厚み方向の中心よりリブ13側の位置にガスが流れるので、射出成形品10のうち薄板部11の厚み方向にリブ13が存在しない部分にガスが広がることを抑えることができ、結果として、射出成形品10のうち薄板部11の厚み方向にリブ13が存在しない部分に中空部15が形成されることを抑えることができる。射出成形用金型60は、金型80のうちリブ13の根元に対応する部分81が金型70や金型80の他の部分より定積比熱が大きい部材で形成されているので、樹脂が硬化するとき、薄板部11の外装面11aの近傍の樹脂と比較して、リブ13の根元の近傍の樹脂が冷めにくく温度が高くなる。したがって、射出成形用金型60は、リブ13の根元以外の部分に中空部15が形成されることを抑えることができる。
【0041】
なお、本実施の形態は、ガス注入ピン90のガス注入口90cが仮想線10a上に配置されている構成であったが、金型80のうちリブ13の根元に対応する部分81が金型70や金型80の他の部分より定積比熱が大きい部材で形成されていることの効果は、ガス注入ピン90のガス注入口90cが仮想線10a上に配置されていない構成であっても得ることができる。
【0042】
以上に説明したように、射出成形用金型60は、リブ13の根元以外の部分に中空部15が形成されることを従来より抑えることができるので、射出成形品10を大量生産する場合であっても射出成形品10の品質を従来より安定化することができる。したがって、射出成形用金型60およびそれを用いた射出成形品10の製造方法は、射出成形品10の量産化に適している。
【0043】
(第2の実施の形態)
まず、本発明の第2の実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成について説明する。
【0044】
なお、本実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成のうち、第1の実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成と同様な構成については、第1の実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0045】
図8は、本実施の形態に係る射出成形品110の一部分の平面図である。図9は、図8のIX矢視断面図である。図10は、図8のX矢視断面図である。なお、図10において、一点鎖線は、仮想線10aを示している。
【0046】
図8〜図10に示すように、射出成形品110の構成は、第1の実施の形態に係る射出成形品10(図2参照。)がリブ13(図2参照。)に代えてリブ113を備えた構成と同様である。リブ113の構成は、リブ13が斜面13a(図3参照。)に代えて曲面113aを備えた構成と同様である。
【0047】
曲面113aは、リブ113の根元においてリブ113の厚み方向の両側に形成されている。曲面113aは、リブ113に沿って延在しており、リブ113の厚み方向の切断面上で円弧を形成している。曲面113aには、シボ加工が施されている。
【0048】
図11は、本実施の形態に係る射出成形用金型160のうち射出成形品110の図9に示す部分を成形する部分の側面断面図である。図12は、射出成形用金型160のうち射出成形品110の図10に示す部分を成形する部分の側面断面図である。なお、図11および図12において、一点鎖線は、仮想線10aを示している。
【0049】
図11および図12に示すように、射出成形用金型160の構成は、第1の実施の形態に係る射出成形用金型60(図5参照。)が金型80(図5参照。)に代えて第2の金型としての金型180を備えた構成と同様である。金型180の構成は、金型80が部分81(図5参照。)を備えておらず、成形面80d(図5参照。)に代えて根元成形面としての成形面180dを備えた構成と同様である。
【0050】
成形面180dは、リブ113の厚み方向の両端の曲面113a(図9参照。)を成形するための面である。成形面180dには、シボ加工が施されている。
【0051】
図13は、成形時の射出成形品110および射出成形用金型160の一部の側面断面図である。
【0052】
図13に示すように、ガス注入口90cは、薄板部11の外装面11aと、リブ113の厚み方向の両端の曲面113aとから略等距離の位置を通る仮想線10a(図9〜図12参照。)上に配置されている。なお、図13において、一点鎖線は、薄板部11の外装面11aと、リブ113の厚み方向の両端の曲面113aとから略等距離の位置を説明するための線である。
【0053】
射出成形用金型160を用いた射出成形品110の製造方法は、射出成形用金型60(図5参照。)を用いた射出成形品10(図3参照。)の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
次に、射出成形用金型160の効果について説明する。
【0055】
射出成形用金型160は、薄板部11の外装面11aと、リブ113の厚み方向の両端の曲面113aとから略等距離の位置を通る仮想線10a上にガス注入ピン90のガス注入口90cが配置されているので、第1の実施の形態に係る射出成形用金型60(図5参照。)と同様な理由によって、リブ113の根元以外の部分に中空部15が形成されることを従来より抑えることができる。
【0056】
第1の実施の形態において説明したように、樹脂が硬化するとき、薄板部11の外装面11aの近傍の温度と比較してリブ113の根元の近傍の温度が高いと、射出成形品110のうち薄板部11の厚み方向にリブ113が存在しない部分に中空部15が形成されることを抑えることができる。射出成形用金型160は、金型180のうちリブ113の根元を成形する成形面180dにはシボ加工が施されているので、樹脂が充填されるときにリブ113の根元の近傍の樹脂がシボ加工による抵抗を受けて剪断されたり圧縮されたりして発熱するとともに、樹脂が充填されるときにシボ加工の部分に生成される空気層によって断熱作用が生じるため、薄板部11の外装面11aの近傍の樹脂の温度と比較して、リブ113の根元の近傍の樹脂の温度が高くなる。したがって、射出成形用金型160は、リブ113の根元以外の部分に中空部15が形成されることを抑えることができる。
【0057】
なお、本実施の形態は、ガス注入ピン90のガス注入口90cが仮想線10a上に配置されている構成であったが、金型180のうちリブ113の根元を成形する成形面180dにはシボ加工が施されていることの効果は、ガス注入ピン90のガス注入口90cが仮想線10a上に配置されていない構成であっても得ることができる。
【0058】
以上に説明したように、射出成形用金型160は、リブ113の根元以外の部分に中空部15が形成されることを従来より抑えることができるので、射出成形品110を大量生産する場合であっても射出成形品110の品質を従来より安定化することができる。したがって、射出成形用金型160およびそれを用いた射出成形品110の製造方法は、射出成形品110の量産化に適している。
【0059】
(第3の実施の形態)
まず、本発明の第3の実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成について説明する。
【0060】
なお、本実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成のうち、第1の実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成と同様な構成については、第1の実施の形態に係る射出成形品および射出成形用金型の構成と同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0061】
図14は、本実施の形態に係る射出成形品210の一部分の平面図である。図15は、図14のXV矢視断面図である。図16は、図14のXVI矢視断面図である。なお、図16において、一点鎖線は、仮想線10aを示している。
【0062】
図14〜図16に示すように、射出成形品210の構成は、第1の実施の形態に係る射出成形品10(図2参照。)が薄板部11(図2参照。)およびリブ13(図2参照。)に代えて薄板部211およびリブ213を備えた構成と同様である。
【0063】
薄板部211の構成は、薄板部11が面11b(図2参照。)に代えて第2の板面として面211bを備えた構成と同様である。面211bは、リブ213の根元の近傍の部分211cが面11a側に凹んでいる。部分211cは、リブ213に沿って延在している。
【0064】
リブ213の構成は、リブ13が斜面13a(図3参照。)に代えて段213aを備えた構成と同様である。段213aの側面213bは、リブ213の根元においてリブ213の厚み方向の両側に形成されている。側面213bは、リブ213に沿って延在している。
【0065】
図17は、本実施の形態に係る射出成形用金型260のうち射出成形品210の図15に示す部分を成形する部分の側面断面図である。図18は、射出成形用金型260のうち射出成形品210の図16に示す部分を成形する部分の側面断面図である。なお、図17および図18において、一点鎖線は、仮想線10aを示している。
【0066】
図17および図18に示すように、射出成形用金型260の構成は、第1の実施の形態に係る射出成形用金型60(図5参照。)が金型80(図5参照。)に代えて第2の金型としての金型280を備えた構成と同様である。金型280の構成は、金型80が部分81(図5参照。)を備えておらず、成形面80a(図5参照。)および成形面80d(図5参照。)に代えて第2の板面成形面としての成形面280aと、根元成形面としての成形面280dとを備えた構成と同様である。
【0067】
成形面280aの構成は、成形面280dの近傍の部分280bを成形面80aが備えた構成と同様である。部分280bは、自身と対向する成形面70a側に盛り上がっている。
【0068】
成形面280dは、リブ213の厚み方向の両端の側面213b(図15参照。)を成形するための面である。
【0069】
図19は、成形時の射出成形品210および射出成形用金型260の一部の側面断面図である。
【0070】
図19に示すように、ガス注入口90cは、薄板部211の外装面11aと、リブ213の厚み方向の両端の側面213bとから略等距離の位置を通る仮想線10a(図15〜図18参照。)上に配置されている。なお、図19において、一点鎖線は、薄板部211の外装面11aと、リブ213の厚み方向の両端の側面213bとから略等距離の位置を説明するための線である。
【0071】
射出成形用金型260を用いた射出成形品210の製造方法は、射出成形用金型60(図5参照。)を用いた射出成形品10(図3参照。)の製造方法と同様であるので、説明を省略する。
【0072】
次に、射出成形用金型260の効果について説明する。
【0073】
射出成形用金型260は、薄板部211の外装面11aと、リブ213の厚み方向の両端の側面213bとから略等距離の位置を通る仮想線10a上にガス注入ピン90のガス注入口90cが配置されているので、第1の実施の形態に係る射出成形用金型60(図5参照。)と同様な理由によって、リブ213の根元以外の部分に中空部15が形成されることを従来より抑えることができる。
【0074】
射出成形用金型260は、成形面280aのうち成形面280dの近傍の部分280bが自身と対向する成形面70a側に盛り上がっていない構成と比較して、成形面70aと、成形面280aとの間の空間が成形面280aのうち部分280bにおいて狭いので、リブ213の根元の部分に存在するガスが、成形面280aのうち部分280bを越して、射出成形品210のうち薄板部211の厚み方向にリブ213が存在しない部分に流れ出すことを抑えることができる。したがって、射出成形用金型260は、リブ213の根元以外の部分に中空部15が形成されることを抑えることができる。
【0075】
なお、本実施の形態は、ガス注入ピン90のガス注入口90cが仮想線10a上に配置されている構成であったが、金型280の成形面280aのうち成形面280dの近傍の部分280bが自身と対向する金型270の成形面70a側に盛り上がっていることの効果は、ガス注入ピン90のガス注入口90cが仮想線10a上に配置されていない構成であっても得ることができる。
【0076】
以上に説明したように、射出成形用金型260は、リブ213の根元以外の部分に中空部15が形成されることを従来より抑えることができるので、射出成形品210を大量生産する場合であっても射出成形品210の品質を従来より安定化することができる。したがって、射出成形用金型260およびそれを用いた射出成形品210の製造方法は、射出成形品210の量産化に適している。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る射出成形品の外観斜視図である。
【図2】図1に示す射出成形品の一部分の平面図である。
【図3】図2のIII矢視断面図である。
【図4】図2のIV矢視断面図である。
【図5】射出成形用金型のうち射出成形品の図3に示す部分を成形する部分の側面断面図である。
【図6】射出成形用金型のうち射出成形品の図4に示す部分を成形する部分の側面断面図である。
【図7】成形時の図1に示す射出成形品および図5に示す射出成形用金型の一部の側面断面図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る射出成形品の一部分の平面図である。
【図9】図8のIX矢視断面図である。
【図10】図8のX矢視断面図である。
【図11】射出成形用金型のうち射出成形品の図9に示す部分を成形する部分の側面断面図である。
【図12】射出成形用金型のうち射出成形品の図10に示す部分を成形する部分の側面断面図である。
【図13】成形時の図8に示す射出成形品および図11に示す射出成形用金型の一部の側面断面図である。
【図14】本発明の第3の実施の形態に係る射出成形品の一部分の平面図である。
【図15】図14のXV矢視断面図である。
【図16】図14のXVI矢視断面図である。
【図17】射出成形用金型のうち射出成形品の図15に示す部分を成形する部分の側面断面図である。
【図18】射出成形用金型のうち射出成形品の図16に示す部分を成形する部分の側面断面図である。
【図19】成形時の図14に示す射出成形品および図17に示す射出成形用金型の一部の側面断面図である。
【符号の説明】
【0078】
10 射出成形品
10a 仮想線
11 薄板部
11a 外装面(第1の板面)
11b 面(第2の板面)
13 リブ
13a 斜面(リブの厚み方向の両端の面)
15 中空部
60 射出成形用金型
70 金型(第1の金型)
70a 成形面(第1の板面成形面)
80 金型(第2の金型)
80d 成形面(根元成形面)
90 ガス注入ピン
90c ガス注入口
110 射出成形品
113 リブ
113a 曲面(リブの厚み方向の両端の面)
160 射出成形用金型
180 金型(第2の金型)
180d 成形面(根元成形面)
210 射出成形品
211 薄板部
211b 面(第2の板面)
213 リブ
213b 側面(リブの厚み方向の両端の面)
260 射出成形用金型
280 金型(第2の金型)
280a 成形面(第2の板面成形面)
280b 部分(第2の板面成形面のうち根元成形面の近傍の部分)
280d 成形面(根元成形面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板部と、前記薄板部に設けられたリブと、前記リブの根元の内部に前記リブに沿って形成された中空部とを有する射出成形品を製造するための射出成形用金型であって、
前記薄板部のうち前記リブ側とは反対側の面である第1の板面を形成するための第1の金型と、前記薄板部のうち前記リブ側の面である第2の板面および前記リブを形成するために前記第1の金型に対向して配置される第2の金型と、前記第2の金型に設けられて前記中空部を形成するためのガスを注入するガス注入ピンとを備え、
前記ガス注入ピンは、前記第1の板面と、前記リブの厚み方向の両端の面とから略等距離の位置を通る仮想線上にガス注入口が配置されていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記第1の金型は、前記第1の板面を成形する第1の板面成形面が形成され、
前記第2の金型は、前記リブの根元を成形する根元成形面が形成され、
前記根元成形面は、自身と対向する前記第1の板面成形面の部材より定積比熱が大きい部材で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記第2の金型は、前記リブの根元を成形する根元成形面が形成され、
前記根元成形面は、シボ加工が施されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記第1の金型は、前記第1の板面を成形する第1の板面成形面が形成され、
前記第2の金型は、前記リブの根元を成形する根元成形面と、前記第2の板面を成形する第2の板面成形面とが形成され、
前記第2の板面成形面のうち前記根元成形面の近傍の部分は、自身と対向する前記第1の板面成形面側に盛り上がっていることを特徴とする請求項1から請求項3までの何れかに記載の射出成形用金型。
【請求項5】
請求項1から請求項4までの何れかに記載の射出成形用金型を用い、
前記第1の金型および前記第2の金型の間に流動化させた樹脂を充填する工程と、前記ガス注入ピンによって前記樹脂中にガスを注入して前記中空部を形成する工程とを備えたことを特徴とする射出成形品の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−69808(P2010−69808A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241799(P2008−241799)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【特許番号】特許第4279896号(P4279896)
【特許公報発行日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(508283934)株式会社テクノモールド (1)
【Fターム(参考)】