説明

射出成形用金型および射出成形方法

【課題】ホットランナーボディからの熱伝導によりキャビティの温度が変動することを抑制した射出成形用金型を提供する。
【解決手段】ホットランナーボディ15の固定側型板1への支持部分近傍を所定温度で流れる温調水が、ホットランナーボディ15からの熱伝導によりキャビティ9の製品部分10の温度が変動するのを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、溶融樹脂をキャビティに充填して成形する射出成形用金型および射出成形方法に係り、特に、ホットランナーボディで加熱された溶融樹脂をキャビティに充填して成形する射出成形用金型および射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レンズなどの樹脂製の光学部品は、一般に、溶融樹脂を金型内のキャビティに充填して固化させることで成形されている。このような、金型を用いた成形では、キャビティに充填する溶融樹脂を加熱するためのホットランナーボディが多用されている。
ホットランナーボディを用いた成形は、図6に示すように、固定側型板41内のランナー42を通る溶融樹脂がホットランナーボディ43で加熱されて固定側型板41と可動側型板44との間に形成されたキャビティ45に充填され、その溶融樹脂をキャビティ45において固化することで行われている。しかしながら、ホットランナーボディ43は固定側型板41内に支持されており、ホットランナーボディ43で溶融樹脂を加熱する熱が固定側型板41を介してキャビティ45に伝わるため、溶融樹脂を固化する時にキャビティ45の温度が変動し、成形品の形状・精度が低下するおそれがあった。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1には、ホットランナーボディの外周にエアギャップを設けることで、ホットランナーボディからの熱が固定側型板に伝わるのを抑制することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−192754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ホットランナーボディを保持するためにホットランナーボディの一部は固定側型板に接触して支持されており、その支持部を介してホットランナーボディの熱がキャビティに伝わり、キャビティの温度が変動するおそれがある。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、ホットランナーボディからの熱伝導によりキャビティの温度が変動することを抑制した射出成形用金型および射出成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る射出成形用金型は、溶融樹脂が内部に形成されたランナーを通る固定側型板と、前記固定側型板に対して開閉自在に可動し、前記固定側型板との間に前記ランナーに連通し且つ外郭部分および製品部分からなるキャビティを形成する可動側型板と、前記ランナーの一部を形成するように前記固定側型板の内部に設置され、前記溶融樹脂を加熱するホットランナーボディと、前記ホットランナーボディの前記固定側型板への支持部近傍に設置され、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制する温調水を流すための水路と、前記水路に前記温調水を流すと共に前記温調水の温度を所定温度に制御する温調水制御装置とを有するものである。
【0008】
ここで、前記水路は、前記ホットランナーボディの外周を囲んで設置することができる。また、前記固定側型板の内部に配置されて前記ホットランナーボディの端部を支持するブッシュ部品をさらに有し、前記水路は、前記ブッシュ部品と前記固定側型板により形成することもできる。
また、前記ブッシュ部品は、前記ホットランナーボディの両端部にそれぞれ配置されることが好ましい。
また、前記ホットランナーボディの中間部と前記固定側型板との間にエアギャップをさらに有することが好ましい。
また、前記温調水制御装置は、前記温調水の温度を125℃近傍に制御することが好ましい。
【0009】
また、前記温調水は、前記キャビティの製品部分を形成している前記固定側型板と前記可動側型板との温度差が3℃以内になるように、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することができる。
また、前記キャビティの製品部分は、有効径が2mm以上20mm以下、厚みが0.5mm以上5mm以下、上面と下面の中心軸のズレ量が10μm以下のレンズを成形するように形成され、前記温調水は、その成形されたレンズの上面断面形状と前記固定側型板のレンズに接する面の断面形状とのズレ量が10μm以下、かつ、成形されたレンズの下面断面形状と前記可動側型板のレンズに接する面の断面形状とのズレ量が10μm以下となるように、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することもできる。
【0010】
また、本発明に係る射出成形方法は、固定側型板の内部のランナーに溶融樹脂を通し、ホットランナーボディで前記ランナーの一部を通る前記溶融樹脂を加熱し、前記ホットランナーボディを通る前記ランナーから前記固定側型板と可動側型板の間の外郭部分および製品部分からなるキャビティに前記溶融樹脂を充填し、前記キャビティに充填された前記溶融樹脂を固化すると共に所定温度で流れる温調水を前記ホットランナーボディの前記固定側型板への支持部分近傍に流し、前記温調水が前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制する方法である。
【0011】
ここで、前記温調水は、前記キャビティにおいて前記溶融樹脂を固化する際に、前記キャビティの製品部分を形成している前記固定側型板と前記可動側型板との温度差が3℃以内になるように、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することができる。
また、前記キャビティにおける前記溶融樹脂の固化により、前記キャビティの製品部分は有効径が2mm以上20mm以下、厚みが0.5mm以上5mm以下、上面と下面の中心軸のズレ量が10μm以下のレンズを成形し、前記温調水は、前記キャビティにおいて前記溶融樹脂を固化する際に、その成形されるレンズの上面断面形状と前記固定側型板のレンズに接する面の断面形状とのズレ量が10μm以下、かつ、成形されるレンズの下面断面形状と前記可動側型板のレンズに接する面の断面形状とのズレ量が10μm以下になるように、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ホットランナーボディからの熱伝導によりキャビティの温度が変動することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る射出成形用金型の構成を示す断面図である。
【図2】本実施形態で用いられた水路の構成を示す断面図である。
【図3】水路に調整水を流さない場合の成形中の温度変化を示す図である。
【図4】水路に調整水を流した場合の成形中の温度変化を示す図である。
【図5】測定部位AおよびBの温度差によるレンズ平面度の変化を示す図である。
【図6】従来例における射出成形用金型の構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適な実施形態に基づいて、この発明を詳細に説明する。
【0015】
図1に、本発明の一実施形態に係る射出成形用金型の構成を示す。射出成形用金型は、固定側型板1と、固定側型板1に対して開閉自在に可動する可動側型板2とを有する。固定側型板1は、固定側型板1の下面を形成する型部材3と、型部材3の上面に配置される型部材4と、型部材4の上面の縁に沿って配置される型部材5と、型部材5の上面に配置され固定側型板1の上面を形成する型部材6が順次積層されると共に互いに固定された構成を有している。また、可動側型板2は、型部材7および8が積層されると共に互いに固定された構成を有している。
【0016】
可動側型板2の型部材7は、固定側型板1の型部材3との間でキャビティ9を形成している。キャビティ9は、成形されるレンズ等の製品の形状を有する製品部分10と、製品部分10に連通する外郭部分11とから構成される。外郭部分11は、型部材3の下面と型部材7の上面に沿って伸びる凹部とから形成されている。また、外郭部分11と製品部分10との連結部には、型部材7の凹部の底面が一部突出して外郭部分11の空間を細くしたゲート14が形成されている。
一方、製品部分10の上面は、型部材3を上下方向に貫通する固定側製品駒12の下面によって形成され、製品部分10の下面は、型部材7を上下方向に貫通する可動側製品駒13によって形成されている。製品部分10の側面は、型部材3および7の内壁面によって形成されている。なお、固定側製品駒12は、型部材4により上面側から固定されると共に型部材3により下面側および側面側から固定されている。また、可動側製品駒13は、型部材8により下面側から固定されると共に型部材7により下面側および側面側から固定されている。
【0017】
外郭部分11の上側には、型部材3内から型部材4を貫通し、型部材5の内側まで達するように上方に伸びたホットランナー(HR)ボディ15が設置されている。ホットランナーボディ15は上面から下面まで延びる貫通孔17が形成された筒状の形状を有し、その下面には供給口16が形成されている。ホットランナーボディ15内には、貫通孔17に沿って上下方向に伸びるヒーター18が設置されている。また、ホットランナーボディ15は、上端において側面方向に突出した上端凸部19と下端において下方に突出した下端凸部20とを有する。
【0018】
ホットランナーボディ15の下端部の側面と型部材3の内壁面との間には、環状のブッシュ部品21が設置されている。ブッシュ部品21は、ホットランナーボディ15の下端部の外周を囲むと共に下端凸部20を下面側および側面側から支持している。また、ブッシュ部品21の下面は、型部材3の下面を一部形成すると共にキャビティ9の外郭部分11を一部形成している。ブッシュ部品21の下面側の孔は、ホットランナーボディ15の貫通孔17と外郭部分11とが連通するように、ホットランナーボディ15の供給口16と位置合わせされている。一方、ブッシュ部品21の型部材3と対向する面(外周面)には、環状の凹部が形成されている。ブッシュ部品21の凹部と型部材3の内壁面は、所定の温度を有する温調水を流すための水路22を形成する。なお、ブッシュ部品21は、ブッシュ部品21と型部材4との間に設置されたブッシュ部品押さえ23を介して型部材4により上面側から固定されると共に型部材3により下面側および側面側から固定されている。このようにして、ホットランナーボディ15の下端凸部20を固定側型板1に支持するブッシュ部品21の支持部近傍に水路22を形成することができる。
【0019】
ホットランナーボディ15の上端部の側面と型部材4の内壁面との間にも、環状のブッシュ部品24が設置されている。ブッシュ部品24は、ホットランナーボディ15の上端部の外周を囲むと共にホットランナーボディ15の上端凸部19を下面側および側面側から支持している。また、ブッシュ部品24の型部材4と対向する面(外周面)には、環状の凹部が形成されている。ブッシュ部品24の凹部と型部材4の内壁面は、所定の温度を有する温調水を流すための水路25を形成する。なお、ブッシュ部品24は、型部材4により下面側および側面側から固定されている。このようにして、ホットランナーボディ15の上端凸部19を固定側型板1に支持するブッシュ部品24の支持部近傍に水路25を形成することができる。
【0020】
なお、ブッシュ部品21の凹部の上側部分および下側部分と型部材3との間、およびブッシュ部品24の凹部の上側部分および下側部分と型部材4との間には、それぞれ水路22および25から温調水が漏れないようにパッキンまたはO−リング等からなる漏洩防止手段26を介在させている。また、ホットランナーボディ15の中間部とブッシュ部品21,24、型部材4との間には、エアギャップ27が形成されている。また、ブッシュ部品21および24としては、例えばステンレスからなるものが利用できる。
【0021】
型部材5の内側で型部材4の上面には、ホットランナーボディ15の上端凸部19を上面側から支持するホットランナーボディ押さえ28が設置されている。
型部材5の内側で型部材6の下面側には、ホットランナーボディ15の上面と接するマニホールド29が設置されている。マニホールド29は、マニホールド押さえ30を介して型部材6に固定されることで、型部材6の下面との間に一定の空間を有して設置されている。マニホールド29は上面の一部に凸部を有し、マニホールド29の凸部が型部材6の上面から下面に貫通して形成されたノズル挿入口31の内側に挿入されると共にその外周がノズル挿入口31の内壁面と接するように設置されている。マニホールド29内には、マニホールド29の凸部の上面に形成された射出口32からマニホールド29のホットランナーボディ15と接する下面に通じるように貫通孔が形成されている。
【0022】
マニホールド29およびホットランナーボディ15に形成された貫通孔により、マニホールド29の射出口32からホットランナーボディ15の供給口16まで連通するランナー33が形成される。すなわち、ランナー33は、ホットランナーボディ15の下側に位置するキャビティ9の外郭部分11と連通している。これにより、射出成形機のノズルNからマニホールド29の射出口32に射出された溶融樹脂が、ホットランナーボディ15の供給口16を通りキャビティ9に供給されるように構成されている。
なお、溶融樹脂としては、シクロオレフィンポリマー系樹脂等の熱可塑性樹脂が利用できる。
【0023】
なお、図1においては、キャビティ9の外郭部分11の一方の端部にのみ製品部分10が形成されているが、外郭部分11の他方の端部にも同様の製品部分を構成することができる。
また、固定側型板1と可動側型板2は複数のキャビティを形成することができ、例えば図1においてランナー33は右方向に分岐してキャビティ9と連通すると共に左方向または紙面に垂直な方向などに分岐して各キャビティと連通することができる。
【0024】
図2に水路22の構成を示す。環状のブッシュ部品21が、ランナー33を通る溶融樹脂をヒーターにより加熱するホットランナーボディ15の下端部を囲むように固定側型板1に設置されている。また、ブッシュ部品21と固定側型板1により、ホットランナーボディ15の外周を囲むと共にホットランナーボディ15の下端部を支持するブッシュ部品21の支持部近傍に水路22が形成されている。水路22には、温調水制御装置34により、所定温度に制御された温調水が循環される。これにより、ホットランナーボディ15の熱がブッシュ部品21の支持部を介して固定側型板1に伝わり、キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することができる。
また、同様に、ブッシュ部品24と固定側型板1によりホットランナーボディ15の上端部を支持するブッシュ部品24の支持部近傍に形成される水路25にも、温調水制御装置34により所定温度に制御された温調水が循環されている。これにより、ホットランナーボディ15の熱がブッシュ部品24の支持部を介して固定側型板1に伝わり、キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することができる。
【0025】
次に、図1に示した射出成形用金型の動作を説明する。
【0026】
まず、固定側型板1に対して可動側型板2を閉じ、固定側型板1と可動側型板2との間に外郭部分11および製品部分10からなるキャビティ9を形成する。固定側型板1内に設置されたホットランナーボディ15のヒーター18を駆動する。また、図2に示すように、温調水制御装置34からホットランナーボディ15の外周を囲んで設置された水路22および25に、例えば125℃近傍に制御された温調水を循環させる。
【0027】
次に、固定側型板1の型部材6に形成されたノズル挿入口31に射出成形機のノズルNが挿入され、射出成形機のノズルNからマニホールド29の射出口32に溶融樹脂が射出される。射出された溶融樹脂は、ランナー33を通りホットランナーボディ15の供給口16からキャビティ9に充填される。続いて、キャビティ9に充填された溶融樹脂は、固化される。この時、ランナー33内の溶融樹脂が固化しないように、ホットランナーボディ15内ではヒーター18によりランナー33内の溶融樹脂が加熱されている。このヒーター18による熱は、ホットランナーボディ15からホットランナーボディ15を両端部で支持するブッシュ部品21および24に伝達されている。しかしながら、ホットランナーボディ15の下端凸部20および上端凸部19を支持するブッシュ部品21および24の支持部近傍に設置された水路22および25を流れる温調水により、ブッシュ部品21および24の温度が125℃近傍に保たれている。
これにより、ホットランナーボディ15において溶融樹脂を加熱する熱が固定側型板1に伝わり、キャビティ9の製品部分10の温度を変動させるのを抑制することができる。
【0028】
キャビティ9の溶融樹脂が固化して成形品が成形されると、可動側型板2が開かれ、成形品が取り出される。
【0029】
本実施形態によれば、ホットランナーボディの固定側型板への支持部近傍に所定温度の温調水が流れる水路を設置することで、ホットランナーボディからの熱伝導によりキャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することができる。
【0030】
ここで、水路22および25に温調水を流さない場合と流した場合において、実際に温度変動の測定を行った実例について説明する。この例は、キャビティ9に充填された溶融樹脂を固化する時に、図1に示すA〜Eの各測定部位における温度変動の測定を行ったもので、温調水を流さない場合の測定結果を図3に、温調水を流した場合の測定結果を図4に示す。なお、測定部位A(固定側製品部分)およびB(可動側製品部分)はキャビティ9の製品部分10の近傍に位置し、測定部位C(HRボディ上端支持部)およびD(HRボディ下端支持部)はホットランナーボディ15の固定側型板1への支持部近傍に位置し、測定部位E(HRボディ下側)はホットランナーボディ15の供給口16の近傍に位置している。また、温調水の温度は125℃、ホットランナーボディ15の温調設定温度は275℃に設定した。また、溶融樹脂はシクロオレフィンポリマー系樹脂を使用し、キャビティ9の製品部分10の形状はφ7mm平板とした。
図3に示した水路22および25に温調水を流さない場合と比較し、図4に示した水路22および25に温調水を流した場合では、各測定部位A〜Eの温度変動が抑制されていることがわかる。また、測定部位AおよびBにおける最少の温度差(型開き前の温度差)も、図3では3℃より大きいのに対し、図4では3℃以内と小さくなっている。
【0031】
また、水路22および25に流れる温調水の温度を変化させることで測定部位AおよびBにおける型開き前の温度差を変化させ、成形品(レンズ)を成形後、レンズの平面度をレーザ干渉計により測定した結果を図5に示す。なお、溶融樹脂はシクロオレフィンポリマー系樹脂を使用し、キャビティ9の製品部分10の形状はφ7mm平板とした。その結果、測定部位AおよびBにおける温度差が、3℃以内ではレンズの平面性が保たれているのに対し、4℃以上ではレンズの平面性が失われている。このことから、φ7mm平板レンズの成形においてレンズの平面性を保つためには、測定部位AおよびBの温度変動を小さくすると共に測定部位AおよびBの型開き前の温度差を3℃以内とするのが重要であることがわかる。
【0032】
また、水路22および25に125℃の温調水を流して成形時の測定部位AおよびBの温度変動を小さくすると共に測定部位AおよびBの型開き前の温度差を3℃以内に保ち、キャビティ9の製品部分10の形状をφ2mm以上20mm以下、厚み0.5mm以上5mm以下、上面と下面の中心軸(芯)のズレ量(偏芯量)を10μm以下となるように成形品(レンズ)を成形した。なお、溶融樹脂はシクロオレフィンポリマー系樹脂を使用した。その結果、レンズ上面・下面の断面形状の設計断面形状からのズレPV(Peak to Valley)が1μm以下、レンズ厚みの設計値からのズレが10μm以下の精度で成形品が得られた。
【0033】
なお、本実施形態において、水路22および25は、ブッシュ部品21および24と固定側型板1とにより形成されているが、キャビティ9の製品部分10の温度が変動しないようにホットランナーボディ15の固定側型板1への支持部近傍に形成されていればよく、例えば固定側型板1に直接形成してもよい。
また、本実施形態において、水路22および25は、ホットランナーボディ15の外周を囲んで形成されているが、キャビティ9の製品部分10の温度が変動しないようにホットランナーボディ15の固定側型板1への支持部近傍に形成されていればよく、例えばU字型に形成してもよい。
また、キャビティ9の製品部分10の温度が変動しなければ、ホットランナーボディ15の一方の端部のみに水路22または25を設けるようにしてもよい。
また、キャビティ9の製品部分10の温度が変動しなければ、ホットランナーボディ15の中間部と固定側型板1との間にエアギャップ27を介在させなくてもよい。
【0034】
また、ホットランナーボディ15は供給口16からキャビティ9に溶融樹脂を供給できればよく、例えばオープンゲートタイプまたはバルブゲートタイプを使用することができる。
また、固定側型板1および可動側型板2のキャビティ9の近傍には、キャビティ9に充填された溶融樹脂を固化するための冷却装置を有してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 固定側型板、2 可動側型板、3,4,5,6,7,8 型部材、9 キャビティ、10 製品部分、11 外郭部分、12 固定側製品駒、13 可動側製品駒、14 ゲート、15 ホットランナーボディ、16 供給口、17 貫通孔、18 ヒーター、19 上端凸部、20 下端凸部、21,24 ブッシュ部品、22,25 水路、23 ブッシュ部品押さえ、26 漏洩防止手段、27 エアギャップ、28 ホットランナーボディ押さえ、29 マニホールド、30 マニホールド押さえ、31 ノズル挿入口、32 射出口、33 ランナー、34 温調水制御装置、N ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融樹脂が内部に形成されたランナーを通る固定側型板と、
前記固定側型板に対して開閉自在に可動し、前記固定側型板との間に前記ランナーに連通し且つ外郭部分および製品部分からなるキャビティを形成する可動側型板と、
前記ランナーの一部を形成するように前記固定側型板の内部に設置され、前記溶融樹脂を加熱するホットランナーボディと、
前記ホットランナーボディの前記固定側型板への支持部近傍に設置され、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制する温調水を流すための水路と、
前記水路に前記温調水を流すと共に前記温調水の温度を所定温度に制御する温調水制御装置と
を有することを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記水路は、前記ホットランナーボディの外周を囲んで設置されることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
前記固定側型板の内部に配置されて前記ホットランナーボディの端部を支持するブッシュ部品をさらに有し、
前記水路は、前記ブッシュ部品と前記固定側型板により形成されることを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記ブッシュ部品は、前記ホットランナーボディの両端部にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項3に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記ホットランナーボディの中間部と前記固定側型板との間にエアギャップをさらに有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
前記温調水制御装置は、前記温調水の温度を125℃近傍に制御することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の射出成形用金型。
【請求項7】
前記温調水は、前記キャビティの製品部分を形成している前記固定側型板と前記可動側型板との温度差が3℃以内になるように、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の射出成形用金型。
【請求項8】
前記キャビティの製品部分は、有効径が2mm以上20mm以下、厚みが0.5mm以上5mm以下、上面と下面の中心軸のズレ量が10μm以下のレンズを成形するように形成され、
前記温調水は、その成形されたレンズの上面断面形状と前記固定側型板のレンズに接する面の断面形状とのズレ量が10μm以下、かつ、成形されたレンズの下面断面形状と前記可動側型板のレンズに接する面の断面形状とのズレ量が10μm以下となるように、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の射出成形用金型。
【請求項9】
固定側型板の内部のランナーに溶融樹脂を通し、
ホットランナーボディで前記ランナーの一部を通る前記溶融樹脂を加熱し、
前記ホットランナーボディを通る前記ランナーから前記固定側型板と可動側型板の間の外郭部分および製品部分からなるキャビティに前記溶融樹脂を充填し、
前記キャビティに充填された前記溶融樹脂を固化すると共に所定温度で流れる温調水を前記ホットランナーボディの前記固定側型板への支持部分近傍に流し、
前記温調水が前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することを特徴とする射出成形方法。
【請求項10】
前記温調水は、前記キャビティにおいて前記溶融樹脂を固化する際に、前記キャビティの製品部分を形成している前記固定側型板と前記可動側型板との温度差が3℃以内になるように、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することを特徴とする請求項9に記載の射出成形方法。
【請求項11】
前記キャビティにおける前記溶融樹脂の固化により、前記キャビティの製品部分は有効径が2mm以上20mm以下、厚みが0.5mm以上5mm以下、上面と下面の中心軸のズレ量が10μm以下のレンズを成形し、
前記温調水は、前記キャビティにおいて前記溶融樹脂を固化する際に、その成形されるレンズの上面断面形状と前記固定側型板のレンズに接する面の断面形状とのズレ量が10μm以下、かつ、成形されるレンズの下面断面形状と前記可動側型板のレンズに接する面の断面形状とのズレ量が10μm以下になるように、前記ホットランナーボディからの熱伝導により前記キャビティの製品部分の温度が変動するのを抑制することを特徴とする請求項9または10に記載の射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−161814(P2011−161814A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−27790(P2010−27790)
【出願日】平成22年2月10日(2010.2.10)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】