説明

射出成形用金型

【課題】射出ノズル7に開閉弁を有さない射出装置を用い、カウンタープレッシャーの圧力に制約を受けることなくカウンタプレッシャー成形を行うことができるようにする。
【解決手段】スプルー6の出口を閉鎖してカウンタープレッシャーの漏れを防止すると共に、射出ノズル7の射出圧力によって前記スプルー6の出口を開放するシール駒17を備えたスプルー開閉装置10を射出成形用金型に設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にカウンタープレッシャー成形法に適した射出成形用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カウンタプレッシャー成形において、射出ノズル先端のノズル孔を開閉するニードルなどの開閉弁を有さない簡単な構造の射出装置を用い、樹脂の逆流やスクリューの後退を発生させることなく成形できるようにするため、カウンタープレッシャーとして加えるガス圧と、このガス圧の解除タイミングとを調整することが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−269778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の方法では、カウンタープレッシャーが3〜6kg/cm2の圧力に限られ、その利用範囲が限られてしまう問題がある。
【0005】
一方、開閉弁を有する射出装置を用いれば、カウンタープレッシャーのガス圧を高めても樹脂の逆流を確実に防止することができる。
【0006】
しかしながら、開閉弁は、射出ノズル外から開閉操作するための開閉作動装置に接続されており、複雑な機構を伴うことから、この開閉弁付の射出装置は、開閉弁を有さないオープンタイプ射出装置に比して高価である。また、開閉弁は、開閉動作によって摩耗し、しばしば交換が必要となるが、開閉作動装置に接続されて射出ノズル内に設置されていることから、交換に手間と時間がかかる問題がある。この交換中は成形作業を中断しなければならず、生産効率を低下させる原因となる。更に、開閉弁は単価が高く、交換に際しての経済的負担も大きい問題もある。
【0007】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、射出ノズルに開閉弁を有さない射出装置を用い、カウンタープレッシャーの圧力に制約を受けることなくカウンタプレッシャー成形を行うことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の目的を達成すべく、スプルー出口に向かって進退可能で、前記スプルー出口の周囲に弾性的に押し付けられて当該スプルーの出口を閉鎖し、金型キャビティ内に加えるカウンタープレッシャーのスプルーへの漏れを防止すると共に、前記射出ノズルの射出圧力によって、前記弾性的な押し付け力に抗して後退して前記スプルー出口を開放するシール駒を備えたスプルー開閉装置が設けられていることを特徴とする射出成形用金型を提供するものである。
【0009】
上記本発明に係る射出成形用金型は、スプルー出口が金型キャビティに開口しており、シール駒が金型キャビティを介してスプルー出口に向かって進退可能に設けられていること、
スプルー出口がランナーに開口しており開口しており、シール駒がランナーを介してスプルー出口に向かって進退可能に設けられていること
をその好ましい態様として含むものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、カウンタープレッシャー用のガス圧がスプルーへ漏れることがシール駒によって防止されるので、高いガス圧とし、しかもオープンタイプの射出装置を用いても、射出装置において、樹脂やスクリューが押し戻されるのを防止することができる。従って、カウンタープレッシャーのガス圧に制約を受けることなくカウンタープレッシャー成形を行うことができる。
【0011】
また、オープンタイプの射出装置でよいので、設備的負担が小さくてすむばかりか、開閉弁の交換に伴う手間、時間、経費的負担の軽減や、生産効率の低下防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る射出成形用金型の第一の実施の形態を示す断面模式図である。
【図2】図1に示されるスプル開閉装置の閉鎖状態を示す要部拡大断面模式図である。
【図3】図1に示されるスプル開閉装置の開放状態を示す要部拡大断面模式図である。
【図4】本発明に係る射出成形用金型の第二の実施の形態を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、以下に説明する図面において、同じ符号は同じ構成要素を示す。
【0014】
〔第一の実施の形態〕
まず、図1〜図3に基づいて本発明に係る射出成形用金型の第一の実施の形態について説明する。
【0015】
図1に示すように、本例の金型は、固定側型板1と、固定側型板1の前面に向き合った可動側型板2と、固定側型板1の背面と向き合ったランナー型板3の三枚構成の金型となっている。ランナー型板3の背面側には更に固定側ベース板4が設けられており、この固定側ベース板4及びランナー板3の中央部を貫通してスプルーブッシュ5が取り付けられている。スプルーブッシュ5を軸方向に貫通する樹脂通路であるスプルー6の金型外端側開口部をスプルー6の入口、金型内端側開口部をスプルー6の出口とする。なお、7は先端がスプルー6の入口側に圧接される射出装置の射出ノズルであり、図面上、可動側ベース板及びエジェクタ機構などは省略してある。
【0016】
固定側型板1とランナー型板3との間にはランナー8が形成されている。また、固定側型板1と可動側型板2との間には、それぞれ所要の成形品に対応する形状の複数の金型キャビティ9,9…が形成されている。スプルー6の出口はランナー8に開口している。ランナー7は、スプルー6の出口との接続部である中央部から各金型キャビティ9,9…へと分岐し、それぞれスプルー6と各金型キャビティ9,9…を接続している。
【0017】
固定側型板1には、スプルー6の出口と対向する位置に、スプルー開閉装置10が取り付けられている。このスプルー開閉装置10は、台座部11とシール駒12とを備えており、シール駒12がスプルー6の出口と対向している。このシール駒12は、前後に一定のストロークの範囲でスライド可能に台座部11に保持されたスライドピン13の先端に取り付けられており、ランナー8の一部として形成された空間を介してスプルー6の出口に向かって進退可能となっている。
【0018】
シール駒12と台座部11との間には、シール駒12をスプルー6の出口側へ弾性的に押圧する弾性付勢部材14が設けられており、これによってシール駒12はスプルー6の出口の周囲に弾性的に押し付けられて当該スプルー6の出口を閉鎖している(図1及び図2参照)。図示される弾性付勢部材14はコイルスプリングで、シール駒12と台座部11の対向部分にそれぞれ設けられた収納凹部15,16に各端部が収納された状態で両者間に挟み込まれている。また、弾性付勢部材14は、金型キャビティ9,9…内に加えるカウンタープレッシャーのスプルー6への漏れを防止でき、しかも溶融樹脂の射出圧力でシール駒12を後退させてスプルー6の出口を開放可能な圧力でシール駒12を押圧するものとなっている。
【0019】
シール駒12のスプルー6側の中央部には、円錐状に突出した弁体部17が設けられており、この弁体部17がスプルー6に嵌り合ってスプルー6の出口を閉鎖するものとなっている。スプルーブッシュ5のスプルー6の出口側内縁部は、弁体部17周面の傾斜に応じた傾斜を有する弁座部18(図3参照)となっており、弁体部17と弁座部18が密着されるものとなっている。
【0020】
シール駒12は、スプルーブッシュ5の構成材料より若干硬質の材料で構成しておくことが好ましい。スプルーブッシュ5は安価かつ容易に交換可能な部材であると共に、定期的に交換される部材である。シール駒12をこのスプルーブッシュ5の構成材料より若干硬質の材料で構成しておくことで、通常の頻度でのスプルーブッシュ5の交換だけで、シール駒12の交換頻度を少なくすることができる。
【0021】
次に、上記射出成形用金型を用いてカウンタープレッシャー法による射出成形を行う場合の作動状態について説明する。
【0022】
溶融樹脂を射出する前の状態は図1及び図2に示される状態である。つまり金型は閉鎖されていると共に、シール駒12はスプルー6の出口を閉鎖しており、射出装置の射出ノズル7は、スプルー6の入口に圧接されている。射出装置は、射出ノズル7に開閉弁が設けられていないオープンタイプのものである。
【0023】
上記の状態で金型キャビティ9,9…に、ガス供給系(図示されていない)からカウンタープレッシャー用のガスを圧入する。この時、スプルー6の出口がシール駒12で閉鎖されているので、カウンタープレッシャー用のガスがスプルー6へ漏れ、開放されている射出ノズル7のノズル孔から射出ノズル7内に侵入して樹脂やスクリューが押し戻されてしまうのを防止することができる。
【0024】
カウンタープレッシャーを加えた後、直ちに射出装置のスクリューを前進させて、溶融樹脂を射出する。溶融樹脂は、射出ノズル7からスプルー6に供給され、更に弾性付勢部材14による弾性的な押し付け力に抗して射出圧力でシール駒12を後退させてスプルー6の出口を開放し、ランナー8を介して金型キャビティ9,9…に充填される。溶融樹脂としては、発泡性の合成樹脂樹脂が用いられ、カウンタープレッシャーにより発泡が押さえられた状態で金型キャビティ9,9…に導入され、カウンタープレッシャー用のガスが放出されることで発泡する。そして、冷却完了後金型を開放して成形品を取り出す。
【0025】
冷却はシール駒12が後退した状態のまま行われることになるので、冷却完了後は、従来の一般的な手法と全く同様にして、スプルー6及びランナー8部分と共に成形品を取り出すことができる。また、この取り出しにより、シール駒12は弾性付勢部材14に押されて前進位置へと復帰し、金型閉鎖時には再びスプルー6を閉鎖する。
【0026】
射出装置における次の射出に備えての計量は、前の回の射出後の冷却中に行われる。計量と冷却が完了した後、背圧を解除した状態で成形品取り出しのために金型が開放され、再び金型が閉鎖された後にカウンタープレッシャーの付与と次の回の射出が行われ、以後これを繰り返すことになる。
【0027】
〔第二の実施形態〕
次に、図4に基づいて本発明に係る射出成形用金型の第二の実施の形態について説明する。
【0028】
図4に示すように、本例の金型は、固定側型板1と、固定側型板1の前面に向き合った可動側型板2の二枚構成の金型で、固定側ベース板4と固定側型板1の中央部を貫通して設けられたプルーブッシュ5のスプルー6の出口が直接金型キャビティ9に開口したダイレクトゲートの金型となっている。また、本例におけるスプルー開閉装置10は、第一の実施の形態で説明したものと同様であるが、そのシール駒12は、金型キャビティ9を介してスプルー6の出口に向かって進退可能となっている。なお、図4においても、図1と同様に、可動側ベース板及びエジェクタ機構などは省略してある。
【0029】
本例における作動も前記第一の実施の形態と同様で、同様の利益を得ることができる。
【0030】
以上説明したように、本発明に係る射出成形用金型では、金型側に射出ノズルの開閉弁に相当するスプル開閉装置10を備えている。したがって、開閉弁を備えていない安価な射出装置が使用可能であり、射出成形工程の停止の一要因を回避することができ、かつ射出成形における製造コストの低減を図ることができるものである。
【符号の説明】
【0031】
1 固定側型板
2 可動側型板
3 固定側ベース板
4 ランナー型板
5 スプルーブッシュ
6 スプルー
7 射出ノズル
8 ランナー
9 金型キャビティ
10 スプル開閉装置
11 台座部
12 シール駒
13 スライドピン
14 弾性付勢手段
15 収納凹部
16 収納凹部
17 弁体部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプルーの出口に向かって進退可能で、前記スプルーの出口の周囲に弾性的に押し付けられて当該スプルーの出口を閉鎖し、金型キャビティ内に加えるカウンタープレッシャーのスプルーへの漏れを防止すると共に、前記射出ノズルの射出圧力によって、前記弾性的な押し付け力に抗して後退して前記スプルーの出口を開放するシール駒を備えたスプルー開閉装置が設けられていることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
スプルーの出口が金型キャビティに開口しており、シール駒が金型キャビティを介してスプルーの出口に向かって進退可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
スプルーの出口がランナーに開口しており、シール駒がランナーを介してスプルーの出口に向かって進退可能に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−235534(P2011−235534A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108924(P2010−108924)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(591235522)旭化成テクノプラス株式会社 (5)
【Fターム(参考)】