説明

導体の接続方法および接続構造

【課題】スリーブへの導体の接続を行った後にスリーブ内に樹脂を充填することができ、したがってスリーブ内への樹脂の充填を簡単な操作で行って、ケーブル芯線または電線の接続箇所の止水性能を高めることができる導体の接続方法を提供する。
【解決手段】壁部50に穴52が設けられた筒状のスリーブ54を用いて一対のケーブル芯線60同士を接続するに当たり、両ケーブル芯線の端部から突出させた導体62をスリーブの両開口部64からそれぞれスリーブ内に挿入し、次いでスリーブを変形させてスリーブの壁部を両導体に圧着させた後、上記穴52からスリーブ内に樹脂を充填して、少なくとも穴52およびスリーブ内の両導体間に存在する内部空間部を上記樹脂により液密に閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブル、リード線ケーブル、信号用ケーブル、制御用ケーブル、通信用ケーブル等のケーブル芯線または電線の導体の接続方法および接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケーブル芯線を接続するために、円筒状の突き合わせ用スリーブが使用されている(非特許文献1)。また、ケーブル芯線を接続するためのスリーブとして、導体端部に圧着する圧着部を少なくとも2つ以上を備えて、該圧着部を圧着した導体間を接続して電気的導通を延長することのできる圧着端子であって、前記圧着部間の内部を液密に閉塞させているものが知られている(特許文献1)。
【0003】
【非特許文献1】http://www.jst-mfg.com/product/pdf/A-E2.pdf
【特許文献1】特開2001−357903号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した円筒状の突き合わせ用スリーブや特許文献1のスリーブを用いてケーブル芯線を接続する場合、接続部における止水性能を高める目的などのために、スリーブ内に樹脂を充填することが考えられる。
【0005】
しかし、上記円筒状の突き合わせ用スリーブや特許文献1のスリーブを用いてケーブル芯線を接続し、かつスリーブ内に樹脂を充填する場合、始めにスリーブ内に樹脂を充填し、その後スリーブへの導体の接続を行う必要があり、作業が繁雑になるものであった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、スリーブへの導体の接続を行った後にスリーブ内に樹脂を充填することができ、したがってスリーブ内への樹脂の充填を簡単な操作で行って、ケーブル芯線または電線の接続箇所の止水性能を高めることができる導体の接続方法および接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記目的を達成するため、下記(A)、(B)に示す導体の接続方法および下記(C)、(D)に示す導体の接続構造を提供する。
(A)壁部に穴が設けられた筒状のスリーブを用いて一対のケーブル芯線または電線の導体同士を接続するに当たり、両ケーブル芯線または電線の端部から突出させた導体を前記スリーブの両開口部からそれぞれスリーブ内に挿入し、次いで前記スリーブを変形させてスリーブの壁部を両導体に圧着させた後、前記穴からスリーブ内に樹脂を充填して、少なくとも前記穴およびスリーブ内の両導体間に存在する内部空間部を前記樹脂により液密に閉塞することを特徴とする導体の接続方法。
(B)筒状本体の内部に内部空間部を液密に閉塞する閉塞部が設けられることにより前記筒状本体に前記閉塞部を底部とする一対の導体挿入部が形成され、かつ前記両導体挿入部の壁部にそれぞれ穴が設けられたスリーブを用いて一対のケーブル芯線または電線の導体同士を接続するに当たり、両ケーブル芯線または電線の端部から突出させた導体を前記両導体挿入部の開口部からそれぞれ導体挿入部内に挿入し、次いで前記導体挿入部を変形させて各導体挿入部の壁部を導体に圧着させた後、前記穴から両導体挿入部内に樹脂を充填して、少なくとも前記穴を前記樹脂により液密に閉塞することを特徴とする導体の接続方法。
(C) 壁部に穴が設けられた筒状のスリーブを用いた導体の接続構造であって、一対のケーブル芯線または電線の端部から突出させた導体が前記スリーブの両開口部からそれぞれスリーブ内に挿入され、かつ、前記スリーブが変形してスリーブの壁部が両導体に圧着されているとともに、前記穴からスリーブ内に樹脂が充填され、少なくとも前記穴およびスリーブ内の両導体間に存在する内部空間部が前記樹脂により液密に閉塞されていることを特徴とする導体の接続構造。
(D)筒状本体の内部に内部空間部を液密に閉塞する閉塞部が設けられることにより前記筒状本体に前記閉塞部を底部とする一対の導体挿入部が形成され、かつ前記両導体挿入部の壁部にそれぞれ穴が設けられたスリーブを用いた導体の接続構造であって、一対のケーブル芯線または電線の端部から突出させた導体が前記スリーブの両導体挿入部の開口部からそれぞれ導体挿入部内に挿入され、かつ、前記導体挿入部が変形して各導体挿入部の壁部が導体に圧着されているとともに、前記穴から両導体挿入部内に樹脂が充填され、少なくとも前記穴が前記樹脂により液密に閉塞されていることを特徴とする導体の接続構造。
【0008】
本発明では、壁部に穴が設けられたスリーブを用いてケーブル芯線または電線の導体同士を接続した後、上記穴からスリーブ内に樹脂を充填して、この樹脂によって止水に必要な箇所を液密に閉塞する。したがって、本発明によれば、スリーブへの導体の接続を行った後にスリーブ内に樹脂を充填することができ、したがってスリーブ内への樹脂の充填を簡単な操作で行って、ケーブル芯線または電線の接続箇所の止水性能を高めることができる。
【0009】
本発明において、スリーブ内に充填する樹脂としては、例えば、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂等の硬化性の樹脂を用いることができる。また、上記樹脂は1液硬化性であってもよく、2液硬化性であってもよい。ただし、本発明では、樹脂として、硬化性の樹脂ではなく、非硬化性のジェル状の樹脂を用いることもできる。
【0010】
本発明において、スリーブの穴からスリーブ内に樹脂を充填する方法に限定はなく、例えば下記(1)〜(3)に示す方法を採ることができる。
(1)注射器を用いてスリーブの穴からスリーブ内に樹脂を充填する方法。
(2)単心または多心の電力ケーブルの単数または複数のケーブル芯線または電線の導体同士を接続した接続部を被包して金型または合成樹脂製のケースを配置した後、樹脂を上記金型またはケース内に注入することにより、ケーブル同士を接続するととともに、スリーブの穴からスリーブ内に樹脂を充填する方法(特開平5−103408号公報参照)。この方法には、古河電気工業株式会社製のレジン注入形のケーブル接続キットであるセルパック(商品名)を使用することができる。
(3)一対の単心もしくは多心のケーブルの端部から突出させた単数もしくは複数のケーブル芯線または電線の導体同士をスリーブを用いて接続した後、一方のケーブルまたは電線の外周面端部から他方のケーブルまたは電線の外周面端部にかけて平板状フィルムまたはシートを直接的または間接的に巻き付けて固定することにより、両ケーブルまたは電線の端部間に上記平板状フィルムまたはシートからなる筒状体を形成し、次いで上記筒状体の内部に樹脂を注入することにより、ケーブルまたは電線を接続するととともに、スリーブの穴からスリーブ内に樹脂を充填する方法。
【0011】
上記(3)の方法では、両ケーブルまたは電線の端部間に平板状フィルムまたはシートからなる筒状体を形成した後、筒状体の内部に樹脂を注入するので、簡単な部材、用具で簡単かつ確実にケーブルまたは電線の接続を行うことができる。また、筒状体の内部に樹脂が充填され、ケーブル芯線または電線の接続箇所が樹脂で完全に覆われるので、ケーブルまたは電線の接続部の絶縁および防水を確実に行うことができる。さらに、平板状フィルムまたはシートからなる筒状体は肉厚が薄いため、ケーブルまたは電線の接続部を小さくすることができる。
【0012】
上記(3)の方法では、両ケーブルまたは電線の外周面端部にそれぞれ大径部を形成した後、一方のケーブルまたは電線の大径部の外周面から他方のケーブルまたは電線の大径部の外周面にかけて平板状フィルムまたはシートを巻き付けて固定することができる。これにより、筒状体の内部に充填する樹脂の量を多くして、ケーブルまたは電線の接続部の強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、スリーブへの導体の接続を行った後にスリーブ内に樹脂を充填することができ、したがってスリーブ内への樹脂の充填を簡単な操作で行って、ケーブル芯線または電線の接続箇所の止水性能を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明するが、本発明は下記例に限定されるものではない。
【0015】
(第1実施形態)
図1は前記本発明(A)に係る導体の接続方法の一実施形態を示すフロー図である。本例では、下記のようにしてケーブル芯線が接続される。
(1)図1(a)に示すように、壁部50に穴(導体確認用穴)52が設けられた筒状の金属製スリーブ54を用意した。このスリーブ54は、内面の軸方向中央部に導体止め56が膨出形成されており、穴52は導体の先端が見える位置に形成されている。また、スリーブ54の外周面には、穴52を閉塞しない状態で2つの絶縁チューブ58が被覆されている。
(2)図1(a)に示すように、一対のケーブル芯線60の端部から突出させた導体(撚り線導体)62をスリーブ54の両開口部64からそれぞれスリーブ54内に挿入する。
(3)図1(b)に示すように、かしめ工具を用いてスリーブ54の両側を変形させ、スリーブ54の壁部50を両導体62に圧着させる。
(4)穴52からスリーブ54内に樹脂66を充填して硬化させ、図1(c)に示すように、少なくとも穴52およびスリーブ54内の両導体62間に存在する内部空間部を樹脂66により液密に閉塞する。ただし、本例では、スリーブ54の穴52および上記内部空間部以外の箇所も樹脂66により液密に閉塞されている。
【0016】
以上の工程により、壁部50に穴52が設けられた筒状のスリーブ54を用いたケーブル芯線60の接続構造であって、一対のケーブル芯線60の端部から突出させた導体62がスリーブ54の両開口部からそれぞれスリーブ54内に挿入され、かつ、スリーブ54が変形してスリーブ54の壁部50が両導体62に圧着されているとともに、穴52からスリーブ54内に樹脂66が充填され、少なくとも穴52およびスリーブ54内の両導体62間に存在する内部空間部が樹脂66により液密に閉塞されている前記本発明(C)の導体の接続構造が形成される。
【0017】
(第2実施形態)
図2は前記本発明(B)に係る導体の接続方法の一実施形態を示すフロー図である。本例では、下記のようにしてケーブル芯線が接続される。
(1)図2(a)に示すように、筒状本体70の内部に内部空間部71を液密に閉塞する閉塞部72が一体に設けられることにより筒状本体70に上記閉塞部72を底部とする一対の導体挿入部74が形成され、かつ両導体挿入部74の壁部76にそれぞれ穴(導体確認用穴)78が設けられた金属製スリーブ80を用意した。穴78は導体の先端が見える位置に形成されている。また、スリーブ80の外周面には、穴78を閉塞しない状態で2つの絶縁チューブ82が被覆されている。
(2)図2(a)に示すように、一対のケーブル芯線84の端部から突出させた導体(撚り線導体)86を両導体挿入部74の開口部88からそれぞれ導体挿入部74内に挿入する。
(3)図2(b)に示すように、かしめ工具を用いて導体挿入部74を変形させ、導体挿入部74の壁部76を両導体86に圧着させる。
(4)穴78からスリーブ80内に樹脂90を充填して硬化させ、図2(c)に示すように、少なくとも穴78を樹脂90により液密に閉塞する。ただし、本例では、スリーブ80の穴78以外の箇所も樹脂90により液密に閉塞されている。
【0018】
以上の工程により、筒状本体70の内部に内部空間部71を液密に閉塞する閉塞部72が設けられることにより筒状本体70に上記閉塞部71を底部とする一対の導体挿入部74が形成され、かつ上記両導体挿入部74の壁部76にそれぞれ穴78が設けられたスリーブ80を用いた導体の接続構造であって、一対のケーブル芯線84の端部から突出させた導体86が上記スリーブ80の両導体挿入部74の開口部88からそれぞれ導体挿入部74内に挿入され、かつ、導体挿入部74が変形して各導体挿入部74の壁部76が導体86に圧着されているとともに、上記穴78から両導体挿入部74内に樹脂90が充填され、少なくとも穴78が上記樹脂により液密に閉塞されている前記本発明(D)の導体の接続構造が形成される。
【0019】
上述した第1実施形態および第2実施形態において、スリーブの穴からスリーブ内に樹脂を充填する方法としては、例えば前述した(1)〜(3)に示す方法を採ることができる。この場合、一対の多心のケーブルの端部から突出させた複数のケーブル芯線の導体同士をスリーブを用いて接続した後、(2)または(3)の方法によりケーブルを接続するととともに、スリーブの穴からスリーブ内に樹脂を充填した場合には、複数のスリーブ内に同時に効率よく樹脂を充填することができる。また、(2)または(3)の方法によれば、ケーブルの接続およびスリーブ内への樹脂の充填を同時に効率よく行うことができる。
【0020】
また、第1実施形態および第2実施形態のように、スリーブの外周面に穴を閉塞しない状態で絶縁チューブを被覆した場合、(2)または(3)の方法によりケーブルを接続するととともに、スリーブの穴からスリーブ内に樹脂を充填したときに、ケーブル芯線が曲がるなどして金型内または筒状体内に充填した樹脂の表面部にスリーブが位置していても、樹脂の表面には絶縁チューブが顕れるだけなので、良好な絶縁性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る導体の接続方法の一実施形態を示すフロー図である。
【図2】本発明に係る導体の接続方法の一実施形態を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0022】
50 壁部
52 穴
54 スリーブ
58 絶縁チューブ
60 ケーブル芯線
62 導体
64 開口部
66 樹脂
70 筒状本体
71 内部空間部
72 閉塞部
74 導体挿入部
76 壁部
78 穴
80 スリーブ
82 絶縁チューブ
84 ケーブル
86 導体
88 開口部
90 樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁部に穴が設けられた筒状のスリーブを用いて一対のケーブル芯線または電線の導体同士を接続するに当たり、両ケーブル芯線または電線の端部から突出させた導体を前記スリーブの両開口部からそれぞれスリーブ内に挿入し、次いで前記スリーブを変形させてスリーブの壁部を両導体に圧着させた後、前記穴からスリーブ内に樹脂を充填して、少なくとも前記穴およびスリーブ内の両導体間に存在する内部空間部を前記樹脂により液密に閉塞することを特徴とする導体の接続方法。
【請求項2】
筒状本体の内部に内部空間部を液密に閉塞する閉塞部が設けられることにより前記筒状本体に前記閉塞部を底部とする一対の導体挿入部が形成され、かつ前記両導体挿入部の壁部にそれぞれ穴が設けられたスリーブを用いて一対のケーブル芯線または電線の導体同士を接続するに当たり、両ケーブル芯線または電線の端部から突出させた導体を前記両導体挿入部の開口部からそれぞれ導体挿入部内に挿入し、次いで前記導体挿入部を変形させて各導体挿入部の壁部を導体に圧着させた後、前記穴から両導体挿入部内に樹脂を充填して、少なくとも前記穴を前記樹脂により液密に閉塞することを特徴とする導体の接続方法。
【請求項3】
前記スリーブの外周面に、前記穴を閉塞しない状態で絶縁チューブが被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載の導体の接続方法。
【請求項4】
壁部に穴が設けられた筒状のスリーブを用いた導体の接続構造であって、一対のケーブル芯線または電線の端部から突出させた導体が前記スリーブの両開口部からそれぞれスリーブ内に挿入され、かつ、前記スリーブが変形してスリーブの壁部が両導体に圧着されているとともに、前記穴からスリーブ内に樹脂が充填され、少なくとも前記穴およびスリーブ内の両導体間に存在する内部空間部が前記樹脂により液密に閉塞されていることを特徴とする導体の接続構造。
【請求項5】
筒状本体の内部に内部空間部を液密に閉塞する閉塞部が設けられることにより前記筒状本体に前記閉塞部を底部とする一対の導体挿入部が形成され、かつ前記両導体挿入部の壁部にそれぞれ穴が設けられたスリーブを用いた導体の接続構造であって、一対のケーブル芯線または電線の端部から突出させた導体が前記スリーブの両導体挿入部の開口部からそれぞれ導体挿入部内に挿入され、かつ、前記導体挿入部が変形して各導体挿入部の壁部が導体に圧着されているとともに、前記穴から両導体挿入部内に樹脂が充填され、少なくとも前記穴が前記樹脂により液密に閉塞されていることを特徴とする導体の接続構造。
【請求項6】
前記スリーブの外周面に、前記穴を閉塞しない状態で絶縁チューブが被覆されていることを特徴とする請求項4または5に記載の導体の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−104875(P2009−104875A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−275062(P2007−275062)
【出願日】平成19年10月23日(2007.10.23)
【出願人】(591086843)古河電工産業電線株式会社 (40)
【Fターム(参考)】