説明

導光フィルム及び該導光フィルムを用いた植物育成方法

【課題】植物を効率的に育成可能な導光フィルム及び該導光フィルムを用いた植物育成方法を提供すること。
【解決手段】本発明の導光フィルムは、光源からの入射光を入光させる光入射部と、前記入射光を吸収して植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換させる波長変換部と、前記波長変換された光を出射させる光出射部と、を有することとする。前記波長変換部が吸収する光のピーク波長をλ(nm)とし、波長変換された光のピーク波長をλ(nm)としたとき、λ<λの関係を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光合成による植物の育成に好適な導光フィルム及び該導光フィルムを用いた植物育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油などの化石燃料使用により放出された二酸化炭素が大気中に増加すると、地球の温暖化など地球環境が悪化し、自然環境破壊のみならず、干ばつ、大雨、洪水などが多発し、自然災害の発生や農作物にも多大な被害が発生し、人類社会にも大きな影響が生じることから、環境に対しての意識が高まりつつある。
【0003】
このため、大気中に放出される二酸化炭素を減少させる方法として、藻などの植物に太陽光を照射することにより、その光合成を利用して大気中の二酸化炭素を減少させる方法及び植物の光合成を促進させる装置が検討されている。
【0004】
ところで、上述した二酸化炭素を減少させる方法及び植物の光合成を促進させる装置においては、光源からの光を導光フィルムの入射部を通じて導光フィルムの内部へ入射させることが検討されている。この導光フィルムの内部に入射した光は、導光フィルムの出射面(上面)と反射面(下面)との間で反射を繰り返し、その反射光と、出射面の法線とのなす角度が臨界角より小さくなると、その反射光が出射面を透過して出射される。
【0005】
このような導光フィルムでは、一般的に、入射部と逆側に位置する反入射部が平坦性を有するので、光源から出射された光のうち、入射面に対し直交する方向に出射される平行光又は反入射面への入射角が臨界角より小さい光は、それぞれ反入射面側からそのまま外部へ出射されてしまい、光の損失が生じる。
【0006】
このため、二酸化炭素を減少させる方法及び植物の光合成を促進させる装置において、ある程度植物の光合成を進行させることができても、光合成に必要な光が十分に届かないという問題があった。
【0007】
このような問題を解決するために、例えば、光を閉じ込めて面部を導光させ、目的エリアに出射させるために、装置の端部から光を入射させる方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、装置の端部に対して垂直に入射しない光は、出射部の手前で漏れてしまい、出射部まで導光せず、光取出し効率が減少するという問題がある。
また、光を閉じ込めて面部を導光させ、目的エリアに出射させる方法が提案されている(特許文献2参照)
【0008】
また、例えば、光合成担体などの光を有効物に変換する部材において、有効物に変換する効率の高い波長に変換して光を活用する方法が提案されている(特許文献3参照)。
しかし、変換物質にいたる屈折率界面において、界面反射が生じ、目的の場所に光を導く光取出し効率が低くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実登2601449号公報
【特許文献2】特開2003−215348号公報
【特許文献3】特開平6−38635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、植物を効率的に育成可能な導光フィルム及び該導光フィルムを用いた植物育成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 光源からの入射光を入光させる光入射部と、前記入射光を吸収して植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換させる波長変換部と、前記波長変換された光を出射させる光出射部と、を有することを特徴とする導光フィルムである。
<2> 波長変換部が吸収する光のピーク波長をλ(nm)とし、波長変換された光のピーク波長をλ(nm)としたとき、λ<λの関係を有する前記<1>に記載の導光フィルムである。
<3> λが300nm〜700nmであり、λが400nm〜1,000nmである前記<2>に記載の導光フィルムである。
<4> 波長変換部が蛍光体を有する前記<1>から<3>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<5> 蛍光体が、ペリレン化合物を含む前記<4>に記載の導光フィルムである。
<6> 光入射部が光入射面を有し、該光入射面と反対側の面に波長変換部を有する前記<1>から<5>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<7> 光入射部と光出射部との間に波長変換された光を導光させる導光部を有する前記<1>から<6>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<8> 光入射部と導光部における、フィルムの厚み方向をなす面に対して反射層が形成される前記<7>に記載の導光フィルムである。
<9> 光入射部の屈折率が、1.05〜1.8である前記<1>から<8>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<10> 波長変換部の屈折率が、1.5以上である前記<1>から<9>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<11> 波長変換部と光入射部との屈折率差が、0.01〜2.0である前記<1>から<10>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<12> 光出射部が、少なくとも表面の一部に微細凹凸を有する前記<1>から<11>のいずれかに記載の導光フィルムである。
<13> 前記<1>から<12>のいずれかに記載の導光フィルムを用いて植物を育成する植物育成方法であって、前記導光フィルムにおける光入射部から入射された光の波長を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換させ、前記導光フィルムにおける光出射部から植物の育成場に出射させるように、前記光出射部を配することを特徴とする植物育成方法である。
<14> 植物が、微細藻類を含む藻類である前記<13>に記載の植物育成方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、植物を効率的に育成可能な導光フィルム及び該導光フィルムを用いた植物育成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る導光フィルムの平面図である。
【図2】図2は、第1の実施形態における導光フィルムの断面図である。
【図3】図3は、第2の実施形態の導光フィルムの断面図である。
【図4】図4は、光出射部の表面に形成された微細凹凸の拡大図である。
【図5】図5は、第3の実施形態に係る導光フィルムの断面図である。
【図6】図6は、光入射部と波長変換部との界面に形成された微細凹凸の拡大図である。
【図7】図7は、第4の実施形態に係る導光フィルムの平面図である。
【図8】図8は、第4の実施形態における導光フィルムの断面図である。
【図9】図9は、本発明の植物育成方法の一例を示す模式図である。
【図10】図10は、実施例及び比較例における植物育成を評価するための装置を示す図である。
【図11】図11は、光入射部における波長と、波長変換された光出射部から出射される光の波長との関係、及び光入射部から入射される光の光量と、光出射部から出射される光の光量との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(導光フィルム)
本発明の導光フィルムは、少なくとも光入射部と、波長変換部と、光出射部とを有し、必要に応じて、導光部を有する。
【0015】
前記導光フィルムの形状としては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができ、例えば、長方形状、正方形状、円状等が挙げられるが、低コストで加工が容易であることから長方形状が好ましい。
また、前記導光フィルムとしては、特に制限はなく、前記光入射部と、前記導光部と、前記光出射部とが、それぞれ別部材により形成されていてもよいが、低コストで製造可能な観点から、一連の部材から形成されることが好ましい。本明細書では、前記一連の部材をフィルム本体と称することがある。該フィルム本体としては、折り曲げ可能であることが好ましい。
【0016】
前記導光フィルムにおけるフィルム本体の形成材料としては、透明であり、ある程度の強度を有するものであれば、特に制限はなく、例えば、樹脂、ガラス等が挙げられる。これらの中でも、柔軟性があり、軽量であることから、樹脂が好ましい。
【0017】
前記樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができ、例えば、ポリスチレン、スチレン・メチルメタクリレート共重合体、(メタ)アクリル樹脂、ポリメチルペンテン、アリルグリコールカーボネート樹脂、スピラン樹脂、アモルファスポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアリレート、ポリサルホン、ポリアリルサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ジアリルフタレート、フッ素樹脂、ポリエステルカーボネート、ノルボルネン系樹脂(ARTON)、脂環式アクリル樹脂(オプトレッツ)、シリコーン樹脂、アクリルゴム、シリコーンゴムなどの透明材料が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、透明性、屈折率等の光学特性、加工性などの面から、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル含有樹脂、PET、スチレン−(メタ)アクリル共重合体(MSポリマー)などが好ましい。
【0018】
前記導光フィルムのヘイズとしては、10%以下であることが好ましく、2%以下であることがより好ましく、0.5%以下であることが特に好ましい。前記ヘイズが10%を超えると、入射光を制御して採光する集光効率や導光効率が著しく低下することがある。
ここで、前記「ヘイズ」とは、曇り度合いの値を指し、例えば、JIS 7105に準拠したヘイズメータ(型番:HZ−1、スガ試験機(株)製)等の測定装置により評価される値である。
【0019】
<光入射部>
前記光入射部は、光源からの入射光を入光させることとしてなる。
前記光源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、太陽(自然光)、並びにLED及びハロゲンランプ等の人工光源が挙げられる。
【0020】
前記光入射部としては、特に制限はないが、フィルムの面上にフィルムの長さ方向で画成される光入射面を有することが好ましい。
前記光入射面から前記入射光を受光することで、大面積での受光が可能となる。
【0021】
光入射部の長さとしては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、1mm〜5,000mmが好ましく、5mm〜1,000mmがより好ましく、20mm〜500mmが特に好ましい。
前記長さが、1mm未満であると、入射する光が少なくなりすぎることがあり、5,000mmを超えると、フィルムによる光吸収の損失が大きくなりすぎることがある。
【0022】
前記光入射部における光の屈折率としては、特に制限はないが、1.05〜1.8が好ましく、1.1〜1.75がより好ましく、1.2〜1.7が特に好ましく、1.3〜1.65が最も好ましい。
前記屈折率が、1.05未満であると、臨界角が大きすぎ、フィルム内部を伝播する光の多くが漏れてしまうことがあり、1.8を超えると、界面反射が大きく、光のフィルム内部への入射光量が低下しすぎることがある。
【0023】
前記導光フィルムの端部を含む部材を前記光入射部とする場合には、該端部における面(前記導光フィルムの厚み方向をなす面)に対して、前記光入射部から入射された光を閉じ込める観点から、反射層を形成することが好ましい。
また、光入射部における側面(及び前記導光部を含む場合には前記導光部を含む側面)には、反射層を有するようにしてもよい。
前記反射層形成材料としては、高い反射率を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、銀、アルミニウム、金、銅、マグネシウムなどの金属、高屈折率のTiO、ZnS、シリコンなどの誘電体や半導体が挙げられる。
【0024】
<波長変換部>
前記波長変換部は、前記入射光を吸収して植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換させることとしてなる。
【0025】
前記波長変換部の形成位置としては、前記光入射部から入射される光の光路上に配される限り特に制限はないが、前記光入射部における光入射面と反対側の面に形成されることが好ましい。
【0026】
前記波長変換部における変換波長として、特に制限はないが、前記波長変換部が吸収する光のピーク波長をλ(nm)とし、前記波長変換された光のピーク波長をλとしたとき、λ<λの関係を有することが好ましい。
前記太陽等を光源とする入射光は、植物における光合成に必要な光の波長よりも短波長側にピーク波長を有し、この入射光に対して吸収効率が高く、波長変換される光がより長波長側にピーク波長を有すると、植物における光合成に必要な光の波長にピーク波長を有し、効率的な植物の育成をすることができる。
更に、前記λ(nm)としては、300nm〜700nmが好ましく、前記λ(nm)としては、400nm〜1,000nmが好ましい。
即ち、一般に植物に含まれ、光エネルギーを吸収する役割を持つクロロフィルαは、420nm及び660nmの近傍に光吸収のピーク波長を有し、光合成については660nm近傍にピーク波長を有する光が利用される。太陽等の光源からの光を直接吸収する場合、660nm近傍の波長以外で短波の波長領域における光は、光合成の効率が低い。本発明は、このような入射光を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換して、植物の育成に用いることを技術の重要な核としている。
【0027】
前記波長変換部における波長変更手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、入射光を吸収して植物の成長に利用可能な波長を有する光を発光する蛍光体が好ましい。
【0028】
前記蛍光体としては、必要とする波長を増強させることができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、DCM、DMETCI、DOCI、DODCI、DQOCI、DQTCI、HIDCI等の蛍光化合物、インドレニン、クマリン、クレジルバイオレット、シアニン、フルオレセイン、マラカイトグリーン、ナイルブルー、オキサジン、ペリレン化合物、フェノキサゾン、フェニルアラニン、フタロシアニン、ピナシアニン、ポルフィン、プロフラビン、ピリジン、ピロメテン、ローダミン、リボフラビン、スチルベン、スチリル化合物、スルホローダミン、ウラニンなどが挙げられる。中でも、ペリレン化合物が好ましく、該ペリレン化合物としては、蛍光発光するものであれば特に制限はなく、ペリレン、ペリレンレッド、ペリレンオレンジ等が挙げられる。
【0029】
前記蛍光体としては、例えば下記のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【化1】

【化2】

【化3】


【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【0030】
なお、前記波長変換手段として、前記蛍光体を用いる場合、前記光入射部中に前記蛍光体を含有させることで、前記波長変換手段と、前記光入射部とを一体として構成することもできる。
【0031】
前記波長変換部としては、特に制限はないが、更に高屈折率材料を含むことが好ましい。
前記波長変換部は、前記光入射部から入射される入射光の光路上に配され、前記入射光光を閉じ込め、光の利用効率を向上させるためには光の反射の臨界角を小さくする必要がある、即ち、前記波長変換部における屈折率としては、光入射部における屈折率よりも大きいことが好ましい。
このような観点から、前記波長変換部における光の屈折率としては、1.5以上が好ましく、1.55以上がより好ましく、1.6以上が特に好ましい。
また、前記高屈折率材料としては、前記光入射部(フィルム本体)における屈折率よりも高く、ある程度の強度を有するものが好ましく、例えば、TiOやZnS等の高屈折率微粒子が含有された樹脂、高屈折率樹脂等が挙げられる。
【0032】
また、前記波長変換部における屈折率Aと、前記光入射部(前記フィルム本体)における屈折率Bとの屈折率差(A−B)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01〜2であることが好ましく、0.05〜1.5であることがより好ましく、0.1〜1であることが特に好ましい。前記差が、0.01未満であると、光を閉じ込める効果が殆ど得られないことがあり、2を超えると、高屈折率層111への光入射が低くなりすぎることがある
【0033】
前記波長変換部の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記高屈折率材料及び前記蛍光体を溶剤に溶解させた塗工液を、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等で前記光入射面と反対側の面に塗布した後、乾燥させることが挙げられる。
【0034】
前記蛍光体の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、前記高屈折率材料100mgに対して0.001mg〜20mgであることが好ましく、0.01mg〜10mgであることがより好ましく、0.1mg〜5mgであることが特に好ましい。
前記含有量が0.001mg未満であると、光入射部から入射した光を効果的に蛍光変換することができないことがあり、20mgを超えると、形状を保つことが困難となることがある。
【0035】
前記光入射部と前記波長変換部との界面には、微細凹凸を形成してもよい。このような微細凹凸を有すると、前記界面における界面反射が起こることによる光の利用効率の減少を抑制することができる。
【0036】
前記微細凹凸の形成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、切削法、ナノインプリント法、レーザ微細加工、エッチング法が挙げられる。
【0037】
前記微細凹凸のピッチ間隔Pの主要発光波長に対する下限としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、その下限は、光量向上の観点から、光源の主要発光波長をλとして0.01λ以上が好ましく、0.05λ以上がより好ましく、0.1λ以上が更により好ましく、0.2λ以上が特に好ましい。
また、上限としては、光量向上の観点から、10λ以下が好ましく、5λ以下がより好ましく、2λ以下がより更に好ましく、1λ以下が特に好ましい。
【0038】
前記微細凹凸の隣接する凸部間の最短距離P(ピッチ間隔)の下限としては、0.1μm以上であることが好ましく、0.15μm以上であることがより好ましく、0.2μm以上であることが特に好ましい。前記下限が0.1μm未満であると、加工が困難で均一性が得られないことがある。
また、上限としては、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。前記上限が、100μmを超えると、光を閉じ込める効果が下がってしまうことがある。
【0039】
前記微細凹凸の凸部の高さHの下限としては、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.15μm以上であることが特に好ましい。前記下限は、0.05μm未満であると、界面反射低減効果が得られないことがある。
前記微細凹凸構造の凸部の高さHの上限としては、100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。前記下限は、100μmを超えると、光を閉じ込める効果が低減してしまうことがある。
【0040】
<光出射部>
前記光出射部は、前記波長変換された光を出射させることとしてなる。
【0041】
前記光出射部の長さとしては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、1mm〜5,000mmが好ましく、5mm〜1,000mmがより好ましく、20mm〜500mmが特に好ましい。
前記長さが、1mm未満であると、出射する光が少なくなりすぎることがあり、5,000mmを超えると、フィルムによる光吸収の損失が大きくなりすぎることがある。
【0042】
前記光出射部としては、特に制限はないが、少なくとも表面の一部に微細凹凸を有することが好ましい。
このような微細凹凸を有すると、光の出射効率が向上するとともに、光の出射方向が制御され、光の指向性が向上する。このため、より遠くに光を届けることができる。
【0043】
前記微細凹凸の形成方法としては、特に制限はなく、例えば、サンドブラスト法、切削法、ナノインプリント法、レーザ微細加工、エッチング法が挙げられる。
【0044】
前記サンドブラスト法による場合、微細凹凸としての表面粗さRaとしては、特に制限はないが、0.001μm〜1,000μmとすることが好ましく、0.01μm〜100μmとすることがより好ましく、0.1μm〜10μmとすることが特に好ましい。
前記表面粗さRaが0.001μm未満であると、光を様々な方向に出射させることができないことがあったり、重なると密着してはがれ難く、取り扱いが難しいことがあり、1,000μmを超えると、導光効果が低くなりすぎることがある。
【0045】
前記ナノインプリント法による場合、前記微細凹凸の形状としては、断面形状が前記光入射部が存する側の表面に起伏する凹凸形状を有するものであれば、特に制限はなく、円錐形状、角錐形状、のこぎり状、蛇腹状、方形状などの凹凸形状とすることができる。前記微細凹凸の形状を適宜変化させることで、例えば、特定の方向の輝度を向上させ、光の出射方向を制御することができる。
【0046】
前記微細凹凸の隣接する凸部間の最短距離P(ピッチ間隔)としては、前記波長変換された光の波長によって適宜変更することができるが、光の発光波長をλ、前記光出射部(前記フィルム本体)の屈折率をnとしたとき、0.5×(λ/2n)〜1.5×(λ/2n)の範囲内とすることが好ましく、0.6×(λ/2n)〜1.4×(λ/2n)の範囲内とすることがより好ましく、0.7×(λ/2n)〜1.3×(λ/2n)の範囲内とすることが特に好ましい。前記ピッチ間隔Pが0.5×(λ/2n)未満であると
細かすぎて光の相互作用が低く効果が小さくなることがあり、1.5×(λ/2n)を超えると、光の変化する角度が小さく効果が小さくなることがある。
【0047】
前記微細凹凸の凸部の高さHの下限としては、0.05μm以上であることが好ましく、0.1μm以上であることがより好ましく、0.15μm以上であることが特に好ましい。前記下限が0.05μm未満であると、相互作用が小さくなりすぎ、効果が低くなることがある。
また、上限としては、10μm以下であることが好ましく、4μm以下であることがより好ましく、1μm以下であることが特に好ましい。前記上限が10μmを超えると、強度が低く形状が保たれないことがある。
【0048】
前記光入射部及び前記光出射部における微細凹凸の形成方法としての前記ナノインプリント法としては、予め所望の凹凸形状を備えるスタンパ(金型)で転写することで微細凹凸構造を形成させることができる。具体的には、スタンパ原版(シリコン基板)上にフォトレジスト材料からなるフォトレジスト層をスピンコート法などで塗布し、光学系レンズでレーザ光をフォトレジスト層に集光して照射することで複数の微細孔を形成させ、反応性イオンエッチング(RIE)などのエッチング処理を行い、原版上に形成された複数の微細孔の深さを調整した後、フォトレジスト層を除去することで所望の凹凸形状を有するスタンパを作製する。
光を入光させる光入射部の面の反対側の面にナノインプリント材料からなるナノインプリント層を形成させ、このナノインプリント層を前記スタンパで押圧し、必要に応じて加熱又は光照射することで前記微細凹凸構造を形成させる。
【0049】
前記フォトレジスト材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、通常の光反応を利用するフォトレジスト材料、熱反応を利用するフォトレジスト材料など挙げられるが、高精細で、凹凸周囲に細かな構造ができ、より光相互作用に高い効果を発現できる点で熱反応を利用できるフォトレジスト材料が好ましい。
前記熱反応を利用できるフォトレジスト材料としては、例えば、メチン色素(シアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素、オキソノール色素、メロシアニン色素など)、大環状色素(フタロシアニン色素、ナフタロシアニン色素、ポルフィリン色素など)、アゾ色素(アゾ金属キレート色素を含む)、アリリデン色素、錯体色素、クマリン色素、アゾール誘導体、トリアジン誘導体、1−アミノブタジエン誘導体、経皮酸誘導体、キノフタロン系色素などが挙げられる。
【0050】
前記ナノインプリント材料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱可塑性樹脂及び光硬化性樹脂の少なくともいずれかを含有するインプリントレジスト組成物などが挙げられる。
前記インプリントレジスト組成物としては、例えば、ノボラック系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、有機ガラス樹脂、無機ガラス樹脂などが挙げられる。
【0051】
前記フォトレジスト層の厚みとしては、前記スタンパの表面上に形成される凸部の高さに対して5%以上、200%未満であることが好ましい。
前記厚みが、5%未満であると、レジスト量が不足し、所望の微細凹凸構造を形成することができないことがある。
【0052】
前記フォトレジスト層の厚みとしては、例えば、該フォトレジスト層を形成した前記光入射部から該フォトレジスト層を一部剥離し、剥離後の段差(高さ)をAFM装置(OLS、オリンパス株式会社製)にて測定することができる。
【0053】
前記インプリントレジスト組成物の粘度としては、25℃で、1mPa・s〜200mPa・sが好ましく、1mPa・s〜100mPa・sがより好ましい。
前記インプリントレジスト組成物の粘度としては、例えば、超音波式粘度計などを用いて測定することができる。
【0054】
前記波長変換部としては、前記微細凹凸構造を形成させた後、微細凹凸構造上に高屈折率材料及び蛍光体を溶媒に溶解させ、スプレー法、スピンコート法、ディップ法、ロールコート法、ブレードコート法、ドクターロール法、ドクターブレード法、スクリーン印刷法等で塗布することで波長変換部を形成することができる。
【0055】
<導光部>
前記導光部は、前記光入射部と前記光出射部との間に配され、前記波長変換部で波長変換された光を前記光出射部に導波させるとともに、前記導光フィルムの長さを適宜変更するものとしてなる。
【0056】
前記導光部の長さとしては、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、10mm〜10,000mmであることが好ましく、100mm〜5,000mmであることがより好ましく、500mm〜2,000mmであることが特に好ましい。前記長さが10mm未満であると、導光する長さに比して、導光できる光量が少なく効率が低くなることがあり、10,000mmを超えると、導光中の光のロスにより光量が低下することがある。
【0057】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係る導光フィルムの平面図であり、図2は、第1の実施形態における導光フィルムの断面図である。
第1の実施形態に係る導光フィルム1は、同一のフィルムに、光源から入射される光を面全体で入光させる光入射部2と、光入射部2と反対側の面に配され、光入射部2から入射された光の波長を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換する波長変換部6と、波長変換部6で波長変換された光を外部に出射する光出射部3と、光入射部2と光出射部3との間に、波長変換部6で波長変換された光を光出射部3に導波させる導光部5と、導光フィルム1の光入射部2側の端部に、導光フィルム1内の光を閉じ込め、効率的に光出射部3からの光出射を可能とする反射層4とを有する。反射層4は、更に光入射部2及び導光部5におけるフィルム側面に配されていてもよい。また、ここでは、波長変換部6における波長変換手段として、蛍光体を用いている。
【0058】
光入射部2の光入射面から入光された入射光は、その光路上に位置する波長変換部6に導波される。波長変換部6に導波された入射光により、前記蛍光体が励起され、前記入射光が植物の成長に利用可能な波長(660nm近傍)の光に波長変換されて蛍光発光される。蛍光発光された光は、光入射部2、導波部3を介して光出射部3に導波される。この際、光入射部2及び導波部3を形成する材料が高屈折材料であると、外部(大気)との屈折率差による全反射により光を閉じ込め、光漏れを抑制することができる。光出射部3に導波された光は、光出射部3の外部に出射される。光出射部3の外部が水相であると、光出射部3の形成材料と外部との屈折率差に基づき、外部に光を出射させることができ、藻類の育成を行う場合、該光出射部3を藻類を有する水相に入水させて用いる。
このようにしてなる第1の実施形態に係る導光フィルム1によれば、光源からの入射光の波長を植物の成長に利用可能な光の波長に変換して植物の成長に必要な光のみを出射することで、成長阻害を生ずることなく植物の育成を促進することができ、更に、入射光に対して、高効率に植物の成長に必要な光を出射することができる。
【0059】
<第2の実施形態>
図3は、第2の実施形態の導光フィルムの断面図であり、図4は、光出射部の表面に形成された微細凹凸の拡大図である。
第2の実施形態に係る導光フィルム10は、同一のフィルムに、光源から入射される光を面全体で入光させる光入射部12と、光入射部12と反対側の面に配され、光入射部12から入射された光の波長を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換する波長変換部16と、波長変換部16で波長変換された光を外部に出射する光出射部13と、光入射部12と光出射部13との間に、波長変換部16で波長変換された光を光出射部13に導波させる導光部15と、導光フィルム10の光入射部12側の端部に、導光フィルム10内の光を閉じ込め、効率的に光出射部13からの光出射を可能とする反射層14とを有し、更に、光出射部13からの光出射を高効率で行い、また、より遠くへ光を届けるために、光の出射方向を制御し、光の指向性を向上させるため、光出射部13の少なくとも表面の一部に微細凹凸131が形成されている。
【0060】
ここで、微細凹凸131は、前記サンドブラスト法による表面処理により表面粗さRaを前述の所望の値とした形状として形成することができ、また、前記ナノインプリント法によりピッチ間隔(P)、凹凸の高さ(H)を前記所望の形状として形成することができる。
このようにしてなる第2の実施形態に係る導光フィルム10によれば、光出射部13からの光出射を高効率で行うことができ、また、より遠くへ光を届けるために、光の出射方向を制御し、光の指向性を向上させることができ、植物の育成用途に対して、より好適に用いることができる。
これ以外は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0061】
<第3の実施形態>
図5は、第3の実施形態に係る導光フィルムの断面図であり、図6は、光入射部と波長変換部との界面に形成された微細凹凸の拡大図である。
第3の実施形態に係る導光フィルム20は、同一のフィルムに、光源から入射される光を面全体で入光させる光入射部22と、光入射部22と反対側の面に配され、光入射部22から入射された光の波長を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換する波長変換部26と、波長変換部26で波長変換された光を外部に出射する光出射部23と、光入射部22と光出射部23との間に、波長変換部26で波長変換された光を光出射部23に導波させる導光部25と、導光フィルム20の光入射部22側の端部に、導光フィルム20内の光を閉じ込め、効率的に光出射部23からの光出射を可能とする反射層24とを有し、光出射部23の少なくとも表面の一部に微細凹凸231が形成され、更に、導光フィルム20内の光を閉じ込め、高効率で出射部23からの光の出射を可能とするために、光入射部22と波長変換部26との間の界面に微細凹凸221が形成されている。また、必要に応じて、波長変換部26に高屈折率材料が含有されている。
ここで、微細凹凸221は、前記ナノインプリント法によりピッチ間隔(P)、凹凸の高さ(H)を前記所望の形状として形成することができる。
このようにしてなる第3の実施形態に係る導光フィルム20によれば、導光フィルム20に入射された光の光路を調整して、導光フィルム20内の光を閉じ込め、高効率で出射部23からの光の出射を可能であり、植物の育成用途に対して、より好適に用いることができる。
これ以外は、第2の実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0062】
<第4の実施形態>
図7は、第4の実施形態に係る導光フィルムの平面図であり、図8は、第4の実施形態における導光フィルムの断面図である。
第4の実施形態に係る導光フィルム30は、同一のフィルムに、光源から入射される光を面全体で入光させる光入射部32と、光入射部32と反対側の面に配され、光入射部32から入射された光の波長を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換する波長変換部36と、波長変換部36で波長変換された光を外部に出射する光出射部33と、光入射部32と光出射部33との間に、波長変換部36で波長変換された光を光出射部33に導波させる導光部35とを有し、光出射部33と導光部35とが、フィルムの長さ方向における光入射部32の両側に配されている。また、この光入射部32と導光部35におけるフィルム側面に反射層34が配されている。
このような第4の実施形態に係る導光フィルム30によれば、植物の育成場の形態に応じて、光出射部33を植物の育成場に適宜配することが可能となる。
これ以外は、第1の実施形態と同様であるため説明を省略する。また、第4の実施形態における光入射部32、波長変換部36、及び光出射部33の各部における構成を第2の実施形態及び第3の実施形態におけるこれらの部材の構成に適宜変更して用いることができる。
【0063】
(植物育成方法)
本発明の植物育成方法は、本発明の前記導光フィルムを用いて植物を育成する方法であって、前記導光フィルムにおける前記光入射部から入射された光の波長を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換させ、前記導光フィルムにおける前記光出射部から植物の育成場に出射させるように、前記光出射部を配することとしてなる。
【0064】
前記植物の育成場としては、特に制限はなく、野菜などを栽培するビニールハウス、微細藻類を含む藻類を育成する水域などが挙げられるが、中でも、前記微細藻類を含む藻類を育成する水域に好適に用いられる。
即ち、前記微細藻類を含む藻類を育成する水域においては、水面が前記藻類で満たされると、前記水面付近の前記藻類に過剰に光源からの光が入射され、その成長が阻害される一方、水面下における前記藻類には、光源からの光が届かず、その成長が阻害される問題がある。
本発明は、このような問題に対して、前記藻類で満たされた水面に前記導光フィルムにおける前記光出射部を入水させ、この状態で、前記導光フィルムにおける前記光入射部から入射された光の波長を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換させて導波させ、前記光出射部から出射させることで、前記水面下における前記藻類の成長を著しく促進させることができる。
【0065】
前記微細藻類を含む藻類を育成する水域における前記植物育成方法を図を用いて説明する。
図9は、本発明の植物育成方法の一例を示す模式図である。ここでは、本発明の前記導光フィルムの第2の実施形態に係る導光フィルム10を用いた説明を行うが、本発明の植物育成方法に用いられる導光フィルムは、この例に限られない。
端部が固定された光入射部12、波長変換部16、及び導光部15を水面17上に配し、光源からの入射光を光入射部12、波長変換部16、導光部15を介して、植物の成長に利用可能な波長の光に変換して、光出射部13から出射させる。このとき、光出射部13は、植物の育成場である、微細藻類を含む藻類で満たされた水面下に入水させるように配される。また、光出射部13から出射される光が水面下の藻類全体に行き届くように、所定の間隔をもって、複数の導光フィルム10が配される。
このような植物育成方法によれば、水面付近の前記藻類に過剰に光源からの光が入射されて成長が阻害される問題を解消することができ、また水面下における前記藻類に光源からの光が届かず成長が阻害される問題を解消することができ、水面下における前記藻類の成長を著しく促進させることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
−光入射部及び光出射部−
長さ100mm、幅40mm及び厚みが0.2mmであり、屈折率が1.5のアクリルフィルム(ソフトアクリル 新光エージー社製)を用い、該フィルムの一の端部から長さ方向に30mmの領域を光入射部とし、他方の端部から50mmの領域を光出射部とした。
光出射部を除く領域において、厚み方向の各端面にアルミテープを貼着し、反射層を形成した。
【0068】
−波長変換部の形成−
光入射部の光入射面と反対側の面に、蛍光体として、ペリレンレッド(Lumogen F Red 305、BASF社製)2質量%と、高屈折率材料として屈折率が1.6のBPEFA(大阪ガス化学社製)20質量%を溶剤であるメチルエチルケトンに溶解させ、これを刷毛を用いて、約50μmの厚さに塗布、乾燥させて波長変換部を形成した。
【0069】
−光出射部の微細凹凸の形成−
光出射部における各面に対して、サンドブラストし、微細凹凸を形成した。
以上により、実施例1における導光フィルムを製造した。
【0070】
(実施例2)
実施例1において、厚み方向の各端面に反射層を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2における導光フィルムを製造した。
【0071】
(実施例3)
実施例1において、光出射部に微細凹凸を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして、実施例3における導光フィルムを製造した。
【0072】
(実施例4)
実施例1において、厚み方向の各端面に反射層を形成しないこと、及び光出射部に微細凹凸を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして、実施例4における導光フィルムを製造した。
【0073】
(実施例5)
実施例1において、蛍光体としてペリレンレッド(Lumogen F Red 305、BASF社製)に代えて、ペリレンオレンジ(Lumogen F Orange240:BASF社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例5における導光フィルムを製造した。
【0074】
(比較例1)
実施例1において、光入射面と反対側の面に波長変換部を形成しないこと、厚み方向の各端面に反射層を形成しないこと、及び光出射部に微細凹凸を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における導光フィルムを製造した。
【0075】
(比較例2)
実施例1において、光入射面と反対側の面に波長変換部を形成しないこと以外は、実施例1と同様にして、比較例1における導光フィルムを製造した。
【0076】
(植物の育成促進の評価方法)
実施例1〜5及び比較例1、2における導光フィルムを用いて、以下のように植物の育成促進の評価を行った。
即ち、図10に示すように遮光板60で遮光された暗室に水槽50を配し、この水槽50中に50万個/mLの濃度のクロレラを満たした。遮光板60の切り欠き部65に対して、導光フィルム100を光の漏れがないように光出射部75側から挿通させるとともに、導光フィルム100の長さ方向の略中央部付近に曲率半径20mmにて、導光フィルム100を折曲げ、光入射部70にランプ80からの光を入射可能としつつ、光出射部75が水槽50中に含浸されるように導光フィルム100を配した。
ここで、実施例1における導光フィルムに対して、光出射部をクロレラを満たしていない状態の水槽側に配して、予めLEDランプ(エコランプ95W、NIHON YUSAC社製)を用いて入射光及び出射光の光量、及び入射光及び出射光の波長の関係をUSB2000装置(オーシャンフォトニクス社製)で測定した結果を図7に示す。
この図11に示すように、光入射部は、波長が400nm〜600nmを中心とする光を受け、光出射部において、波長ピークが約650nmである光を出射している。また、導光フィルムは、光入射部で受けた光量のうち、半分以上の光量の光を光出射部から出射することができている。
ランプ80として、LEDランプより光量の大きな100Wハロゲンランプを用い、前記の通り、光入射部70にランプ80からの光を入射可能としつつ、光出射部75が水槽50中に含浸されるように配された導光フィルム100の光入射部70に対して、光を照射して、水槽50中のクロレラの培養を行った。
ランプ80による光の照射を24時間継続し、その後、光学顕微鏡を用いて個数を測定し、該個数を試験前の個数と比較して、増減率を算出し、下記評価基準に基づき評価した。結果を下記表1に示す。
なお、下記表1において、導光フィルム100を用いず、水槽50に対して、直接ランプ80による光の照射を24時間継続して行ったときの植物の育成促進の評価を参考例1として示す。
【0077】
<評価基準>
◎◎:クロレラの増加率が、20%以上
◎ :クロレラの増加率が、10%以上20%未満
○ :クロレラの増加率が、0%以上10%未満
× :クロレラの増加率が、0%未満
【0078】
【表1】

【0079】
表1から理解されるように、光入射面と反対側の面に波長変換部を配した実施例1〜5における導光フィルムは、該波長変換部を有しない比較例1、2における導光フィルムに対して、大幅に植物育成の促進を図ることができている。
【符号の説明】
【0080】
1、10、20、30、100 導光フィルム
2、12、22、32、70 光入射部
3、13、23、33、75 光出射部
4、14、24、34 反射層
5、15、25、35 導光部
6、16、26、36 波長変換部
131、231、331 微細凹凸(光出射部)
221 微細凹凸(光入射部)
17 水面
50 水槽
60 遮光板
65 切り欠き部
80 ランプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの入射光を入光させる光入射部と、
前記入射光を吸収して植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換させる波長変換部と、
前記波長変換された光を出射させる光出射部と、を有することを特徴とする導光フィルム。
【請求項2】
波長変換部が吸収する光のピーク波長をλ(nm)とし、波長変換された光のピーク波長をλ(nm)としたとき、λ<λの関係を有する請求項1に記載の導光フィルム。
【請求項3】
λが300nm〜700nmであり、λが400nm〜1,000nmである請求項2に記載の導光フィルム。
【請求項4】
波長変換部が蛍光体を有する請求項1から3のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項5】
蛍光体が、ペリレン化合物を含む請求項4に記載の導光フィルム。
【請求項6】
光入射部が光入射面を有し、該光入射面と反対側の面に波長変換部を有する請求項1から5のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項7】
光入射部と光出射部との間に波長変換された光を導光させる導光部を有する請求項1から6のいずれかに記載の導光フィルム
【請求項8】
光入射部と導光部における、フィルムの厚み方向をなす面に対して反射層が形成される請求項7に記載の導光フィルム。
【請求項9】
光入射部の屈折率が、1.05〜1.8である請求項1から8のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項10】
波長変換部の屈折率が、1.5以上である請求項1から9のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項11】
波長変換部と光入射部との屈折率差が、0.01〜2.0である請求項1から10のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項12】
光出射部が、少なくとも表面の一部に微細凹凸を有する請求項1から11のいずれかに記載の導光フィルム。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の導光フィルムを用いて植物を育成する植物育成方法であって、前記導光フィルムにおける光入射部から入射された光の波長を植物の成長に利用可能な波長を有する光に波長変換させ、前記導光フィルムにおける光出射部から植物の育成場に出射させるように、前記光出射部を配することを特徴とする植物育成方法。
【請求項14】
植物が、微細藻類を含む藻類である請求項13に記載の植物育成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2011−169990(P2011−169990A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31746(P2010−31746)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】