説明

導光板、導光板の製造方法及び、携帯機器のキーモジュール

【課題】携帯機器のキーモジュールにおいて、低廉なコストで、薄型化と照明の高輝度化、高輝度均一化を図れる技術を提供する。
【解決手段】操作者が押圧するキートップ6と、電気接点7が配置された基板2と、キートップ6が押圧された際に電気接点7と接触して信号を発生させるドーム4と、ドーム4を覆うドームシート5と、ドームシート5のキートップ6側に配置され、LEDモジュール3からの光に内部を伝播させ、キートップ6側の出射面から出射する導光板1と、を備える携帯機器のキーモジュールに関する。導光板1は、熱硬化性ウレタン樹脂からなる基材における基板2側の面にインクジェットによって白インクのドットパターンを印刷することで形成され、基材における、電気接点7及びドーム4と対向する部分には、樹脂またはゴムからなる突起部1aが塗布により形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種携帯電子機器の操作パネルの照明に用いられる導光板とその製造方法、及び各種携帯電子機器の操作パネルに搭載される照明機能を有したキーモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電子機器(以下、携帯機器)のキー部の照明には、例えばLEDが実装され点発光による光をキートップで拡散する構造のものがある。図9には、従来の携帯機器のキーモジュールの構成の第1の例について示す。この例では、基板22上のキートップ26の下側に、キートップ26で押圧することで、変形して接点が導通するとともに、所定のクリック感を作り出すためのドーム24が配置されている。このドーム24は、ドームシート25によって上から覆われることで、基板上により確実に固定されている。また、基板22上におけるドーム24の間の位置にはLEDモジュール23が配置されている。このLEDモジュール23の上部には、キートップ26への入射部26aが配置されており、LEDモジュール23が発光した際に出射された光が入射部26aに入射し、キートップ26で拡散されるようになっている。
【0003】
しかし、このような構成においては、光源がLEDモジュール23という点発光光源であり、輝度の均一性が低く見づらいという不都合があった。また、LEDモジュール23の個数が多くなると、コストが高くなることも問題となっていた。
【0004】
それに対し、図10に示す例のように、ドームシート35とキートップ36との間に導光板31を配置し、導光板31の側面からLEDモジュール33によって光を入射し、導光板31の表面から光を面光源としてキートップ36側に出射する構成も提案されている。これによれば、LEDモジュール33の個数の削減ができ、輝度の均一性が改善され、キートップ36の文字部が視認し易くなっている。
【0005】
しかしながら、従来の導光板31はアクリルやポリカーボネートを成形して作成されているため、薄型化が困難という問題があった。導光板31の厚みが厚ければドームシート35の凹凸に沿わなくなり、また、キー操作した際にクリック感が無くなるために、この例では、ドーム34付近を部分的にドーム34を逃げるための開口部31aを設け、キートップ36が直接にドームシート35にコンタクトする構造としている。このような構造では、開口部31aの端面において、図中水平方向に伝播する光の多くがキートップ36側に出射され、導光板31の終端まで光が届かないなど、輝度の均一性を維持することが困難な場合があった。
【0006】
また、図10の例では、組立て性が悪く余分なスペースが必要で、導光板31に対する穴開けなどの加工費がかかるなど、薄型化に対する障害及び、コストダウンに対する障害があった。ポリカーボネートをフィルム化して導光板31として使用して薄型化を図ることも検討されているが、フィルムの硬度のためにクリック感がなくなり、さらにフィルム厚を薄くしクリック感を改善すると、充分に光をフィルムに入射できないため輝度が下がり、輝度均一性が得られなくなるという不都合があった。
【0007】
また、携帯機器のキートップにおいては、上記のようにクリック感が重要であるため、例えば図10に示すキーモジュールでは、キートップ36に突起状のドームスイッチ打点部36aが設けられている。これは、指先でキートップ36を押圧した力をドーム34の上部にドームスイッチ打点部36aを介して集中させることにより、ドーム34の変形の
応力変化を大きくさせるものである。従来のドームスイッチ打点部36aは、シリコンゴムなどの成形により形成されることが多く、キートップ36の成形の設計、コストダウンに対する制約となっていた。
【特許文献1】特開2007−53063号公報
【特許文献2】特開2007−87749号公報
【特許文献3】特開2001−167655号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、携帯機器のキーモジュールにおいて、低廉なコストで、薄型化と照明の高輝度均一化を図れるとともに、良好なクリック感が得られる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電気接点が設けられた基板とキートップとの間のスペースに配置される導光板を、熱硬化性ウレタンシートのドームシート側の面にインクジェットで白インクのドットパターンを印刷することで形成し、さらにドットパターンが形成された面に、樹脂またはゴムを塗布することで突起を形成したことを最大の特徴とする。
【0010】
より詳しくは、携帯機器のキーモジュールにおいて操作者が押圧することで入力がなされるキートップ部と前記入力に基づいた信号を発生させるための電気接点が設けられた基板と、の間に配置され、側面に配置された光源によって入射された光に内部を伝播させ、前記キートップ部側の出射面から前記光を出射する導光板であって、
熱硬化性ウレタン樹脂シートからなる基材における前記基板側の面にインクジェットによって白インクのドットパターンを印刷することで形成され、
前記基材における、前記キートップ部と前記基板との間に配置された際に前記電気接点と対向する部分には、樹脂またはゴムを塗布することで形成された突起が設けられたことを特徴とする。
【0011】
これによれば、熱硬化性ウレタン樹脂の基材を用いることで導光板を薄く形成することができ、携帯機器の薄型化を促進できるとともに、高い輝度と、高い輝度均一性を得ることができる。また、導光板と突起とを一体に形成することができるので、キートップで導光板を介して電気接点を押圧する構成としても、充分なクリック感を得ることができるとともに、組立て性を向上させることができ、キーモジュールのコストダウンを図ることが可能となる。
【0012】
さらに、本発明によれば、LEDモジュールなどの光源に、熱硬化性ウレタン樹脂シートの側面から光を入射させることができるので、光源の数を減少させ、部品件数を低減することが可能となる。また、熱硬化性ウレタン樹脂シートの柔軟性によって、携帯機器の複雑な形状、限られたスペースに適応させて導光板を配置させることができ、携帯機器の設計自由度を大きくすることができる。なお、本発明における塗布とは、樹脂またはゴムを基材に塗ること、付着させること、転写させること、印刷することを含む概念であり、このことは全ての請求項に係る発明において同様である。
【0013】
また、本発明においては、前記突起のショアA硬度は前記基材のショアA硬度より高くするとよい。そうすれば、キートップで導光板を介して電気接点を押圧する構成としても、より確実に高いクリック感を得ることができる。また、導光板の厚みを厚くしたとしても充分なクリック感を確保することができる。
【0014】
また、本発明においては、前記突起は熱硬化性ウレタン樹脂からなることとしてもよい
。そうすれば、突起と導光板との材質を同一とすることで両者の結合力を高めることが可能となる。また、導光板と突起とを熱硬化(キュア)によって同時に硬化させることができるので、突起と導光板との密着性を高めることができ、耐久性や耐環境性などの信頼性を向上させることができ、製造工程を簡略化することが可能となる。
【0015】
また、本発明においては、前記突起はスクリーン印刷により形成されてもよい。そうすれば、簡便な方法で導光板上に突起を形成することができ、突起の場所及び、形状をより正確に制御することが可能となる。
【0016】
また、本発明においては、前記突起はディスペンサ印刷により形成されてもよい。その場合は、ディスペンサによる樹脂またはゴムの塗布量を多くすることで、少ない回数の印刷によって前記突起を形成することができ、製造工程を簡略化することが可能となる。
【0017】
また、本発明においては、前記携帯機器のキーモジュールは、
前記電気接点の前記キートップ部側に配置され前記キートップ部に押圧されて変形することで前記電気接点と接触して前記信号を発生させる可動側接点と、
前記可動側接点を前記基板上に固定すべく覆う可動側接点シートと、
をさらに備えるものであってもよい。すなわち、キートップで導光板と可動側接点シート、可動側接点を介して電気接点を押圧する構成に対して本発明を適用することで、より効果的に、相対的に高いクリック感を得ることができる。また、導光板の厚みを厚くしたとしてもより高いクリック感を確保することができる。
【0018】
また、本発明は、携帯機器のキーモジュールにおいて操作者が押圧することで入力がなされるキートップ部と前記入力に基づいた信号を発生させるための電気接点が設けられた基板と、の間に配置され、側面に配置された光源によって入射された光に内部を伝播させ、前記キートップ部側の出射面から前記光を出射する導光板の製造方法であって、
熱硬化性ウレタン樹脂シートからなる基材における前記基板側の面にインクジェットによって白インクのドットパターンを印刷するドットパターン形成工程と、
前記熱硬化性ウレタン樹脂シートにおける、前記キートップ部と前記基板との間に配置された際に前記電気接点と対向する部分に、樹脂またはゴムを塗布することで突起を形成する突起形成工程と、を有することを特徴とする導光板の製造方法であってもよい。
【0019】
その際、突起形成工程においては、樹脂またはゴムがスクリーン印刷されるようにしてもよい。また、樹脂またはゴムがディスペンサ印刷されるようにしてもよい。
【0020】
また、その際、前記突起形成工程の前に実行され、熱硬化性ウレタン樹脂シートからなる基材を形状維持可能な程度にまで熱硬化させる一次熱硬化工程をさらに有し、
前記突起形成工程においては、前記基材に前記熱硬化性ウレタン樹脂を塗布することで突起を形成するとともに、その後に前記一次熱硬化工程の後の基材と前記突起とがさらに熱硬化されるようにしてもよい。
【0021】
すなわち、一次熱硬化工程において導光板の基材である熱硬化性ウレタン樹脂シートを形状の維持が可能な程度まで硬化させておき(一次キュア)、その状態で、基材に熱硬化性ウレタン樹脂をさらに塗布することで突起を形成する。そして、その後、基材と突起とを再度一度に加熱して熱硬化する(二次キュア)。
【0022】
これによれば、突起と基材との密着性をより高めることが可能となり、耐久性や耐環境性などの信頼性をより向上させることができる。また、基材と突起とを一度に硬化することができるので、導光板の製造工程をより簡略化することが可能となる。
【0023】
また、前記突起形成工程における熱硬化の後の前記突起のショアA硬度は、該熱硬化の後の前記基材のショアA硬度より高くするとよい。そうすれば、キートップで導光板を介して電気接点を押圧する構成あるいは、キートップで導光板と可動側接点シート、可動側接点を介して電気接点を押圧する構成に用いられる導光板に対して本発明を適用する場合に、より効果的に、高いクリック感を得ることができる。また、導光板の厚みを厚くしたとしても充分なクリック感を確保することができる。
【0024】
また、本発明は、操作者が押圧することで入力がなされるキートップ部と、
前記入力に基づいた信号を発生させるための電気接点が配置された基板と、
前記電気接点の前記キートップ部側に配置され、前記キートップ部に押圧されて変形することで前記電気接点と接触して前記信号を発生させる可動側接点と、
前記可動側接点を前記基板上に固定すべく覆う可動側接点シートと、
前記可動側接点シートの前記キートップ部側に配置され、側面に配置された光源によって入射された光に内部を伝播させ、前記キートップ部側の出射面から前記光を出射する導光板と、
を備える携帯機器のキーモジュールであって、
前記導光板は、熱硬化性ウレタン樹脂シートからなる基材における前記基板側の面にインクジェットによって白インクのドットパターンを印刷することで形成されるとともに、該導光板における前記可動側接点と対向する部分には、樹脂またはゴムを塗布することで形成され前記基材より高いショアA硬度を有する突起が設けられたことを特徴とする携帯機器のキーモジュールであってもよい。
【0025】
これによれば、まず、熱硬化性ウレタン樹脂シートを用いることで導光板を薄く形成することができ、携帯機器の薄型化を促進できるとともに、ドーム逃げのための開口部を備える必要がなくなるので、高い輝度と、高い輝度均一性を得ることができる。また、柔軟性の高い導光板とすることができるので、キートップで導光板を介してドームを押圧する構成としても、良好なクリック感を得ることが可能となる。
【0026】
さらに、本発明によれば、LEDモジュールに、熱硬化性ウレタン樹脂シートの側面から光を入射させることができるので、LEDモジュールの数を減少させ、コストダウンを図ることが可能である。
【0027】
また、上述のように導光板の基材として熱硬化性ウレタン樹脂シートを用いるので、例え厚みを厚くしても他の素材と比較して良好なクリック感を得ることができる。また、携帯機器の実使用に充分な機械的耐久性、耐環境性を得ることが可能である。さらに、熱硬化性ウレタン樹脂シートの柔軟性によって、携帯機器の複雑な形状、限られたスペースに適応させて導光板を配置させることができ、携帯機器の設計自由度を大きくすることができる。
【0028】
さらに、本発明においては、導光板における可動側接点と対向する部分には、樹脂またはゴムを塗布することにより突起を形成したので、より良好なクリック感を得ることが可能となる。また、導光板と突起とを一体に形成することができ、コスト低減を図ることができるとともに、キーモジュール全体の構造の簡略化を促進することが可能となる。
【0029】
なお、上記の手段は、可能な限り互いに組み合わせて使用することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明にあっては、携帯機器のキーモジュールにおいて、低廉なコストで、薄型化と照明の高輝度化、高輝度均一化を図ることができるとともに、良好なクリック感を得ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る導光板の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0032】
図1には、本実施例におけるキーモジュールの構成について示す。本実施例におけるキーモジュールでは、基板2にはキー操作による信号を発生させるための電気接点7が設けられている。そして、キートップ部としてのキートップ6において操作者がキーを押した際には、キーの移動と連動して押圧部6aが下降するようになっている。この押圧部6aの下側には、押圧されることで変形して電気接点7と導通するとともに、クリック感を作り出すための可動側接点としてのドーム4が配置されている。
【0033】
また、基板2及びドーム4を覆うように、ドーム4を基板2上に固定する可動側接点シートとしてのドームシート5が設けられている。さらに、ドームシート5とキートップ6との間に導光板1が配置されている。本実施例においては、導光板1の側面から光源としてのLEDモジュール3によって光を入射し、導光板1の表面(キートップ6側の面)から光を面光源として出射する。本実施例においては、導光板1における、ドーム4と接触する位置はキートップ6側から見て凸状に変形しており、図10に示したような開口部は設けられていない。
【0034】
ここで、導光板1は、薄い熱硬化性ウレタン樹脂シートを基材とし、基材の裏面(ドーム4側の面)に白インクでドットパターンを、インクジェットによって印刷することで形成されている。また、導光板1における、電気接点7及びドーム4と対向する位置には、熱硬化性ウレタン樹脂からなる突起としての突起部1aが形成されている。
【0035】
キートップ部としてのキートップ6において操作者がキーを押した際には、キーの移動と連動して押圧部6aが下降して導光板1を押圧する。そうすると、突起部1aがドームシート5及びドーム4を押圧する。そのことによりドームシート5及びドーム4が変形して電気接点7と接触するようになっている。本実施例においては突起部1aがドームシート5及びドーム4の先端部を集中的に押圧する構造となっているので、キートップ6において操作者がキーを押した際には良好なクリック感を得ることが可能である。
【0036】
次に、図2には、本実施の形態における導光板1のドットパターン形成過程についての概略図を示す。図2においては、導光板の基材10として、熱硬化性ウレタン樹脂シートが選定される。また、敢えて基材10が、充分に大きな膨潤性を示す白インクの組成(本実施例では、主剤:光重合組成物70〜90wt%、顔料:二酸化チタン10〜20wt%、その他:重合開始剤5wt%以下)を選定して、図1(a)に示す如くインクジェットヘッド16から白インク12の液滴を噴射するインクジェット法によって白インクのドット印刷を行う。
【0037】
そうすると、図2(b)に示すように、基板10上に付着した白インクのドット13と基板10との境界部分において、白インクが基板10内に侵入、分散する。そして、その状態で図2(c)に示すように、UV硬化装置18によってUV光を照射することで白インク13を硬化する。これにより白インクのドット13自体が硬化するとともに、基板10内に侵入、分散している白インクも硬化して、強固な結合部13aを形成する。このことにより、白インクによるドット13と基材10との密着性及び結合強度を増大させることが可能である。なお、上述のドットパターン形成過程が実際に行われる工程は、本実施例においてドットパターン形成工程に相当する。
【0038】
次に、図3を用いて、図2で示した方法で製造した導光板の作用について簡単に説明する。図3に示すように、導光板の基材10には、側面からLEDモジュール3によって光
が入射される。基材10に入射された光は基材10内部を伝播するとともに、一部は基材10の裏面に出射しようとする。裏面に出射しようとした光は、白インクのドット13内の顔料で散乱され、あるいは白インクのドット13と外部との境界面で反射されることにより基材10の表面側から出射される。これにより、LEDモジュール3から入射された光を、白インクのドット13の集合としてのドットパターンによって、基材10の表面側から均一に出射させることができる。
【0039】
このように、本実施例においては、インクジェット法を用いているので、白インク2の液滴の量を詳細に調整することができ、基材1上における白インクのドット3の径及び厚みを詳細に制御することが可能である。
【0040】
また、インクジェット法は画像形成の自由度が高く、変更も容易であるので、ドットパターンを高い自由度で形成することが可能である。また、パターン形成、変更に必要な時間も短時間で済むので、工期も大幅に短縮することができる。
【0041】
さらに、本実施例においては白インクとして白色UV硬化インクが用いられているので、インクジェット法で基材10上にドットを形成した直後にUV照射によって白インクのドット13を硬化することができる。これにより、ドットの平面形状、厚み、断面形状が変化してしまうことを抑制できる。また、乾燥時間を短縮でき、生産性を向上させることができる。
【0042】
また、本実施例では、基材10の素材として熱硬化性ウレタン樹脂シートを用いているので、凹凸のある部材表面や曲面に基材10を無理なく貼り付けることができ、例えば携帯電話の内部に導光板を配置する場合のように、複雑な形状、限られたスペースに組み込む必要があるときにも、無理なく対応が可能である。
【0043】
次に、導光板1に突起部1aを形成する工程について説明する。図4は、スクリーン印刷によって突起部1aを形成する場合の工程を示す図である。この場合には、まず図4(a)において、基板10のドットパターンが形成される側の面上に、メッシュ101に乳剤パターン102を形成した版100を配置する。そして、図4(b)のように、熱硬化性ウレタン樹脂20をメッシュ101を通過させた上で基材10の上に塗布する。そして、図4(c)に示すように、版100を基材10から除去する。このことで、熱硬化性ウレタン樹脂20の突起部1aのパターンが基材10上に形成される。突起部1aの高さが不足の場合には、図4(c)に示すように、図4(a)〜(c)の工程を繰り返すことで、突起部1aを形成する。
【0044】
図5には、ディスペンサ印刷によって突起部1aを形成する場合の工程について示す。この場合には、図5(a)に示すように、ディスペンサのノズル27から、熱硬化性ウレタン樹脂30を基材10上に吐出する。
【0045】
そして、図5(b)に示すように、基材10上に、ドーム状の熱硬化性ウレタン樹脂30のドームが形成される。ノズル27からの吐出量を制御することで、高さが充分に確保できる場合は、1回の塗布で突起部1aの形成が可能である。高さが不充分の場合には、これを繰り返し行ってもよい。
【0046】
図4または図5に示した方法で突起部1aを形成した後には、基材10と突起部1aとを、同時に加熱して硬化させる。これにより、導光板1及び突起部1aが完成する。
【0047】
図6には、ドットパターン側の面から見た導光板1の斜視図を示す。熱硬化性ウレタンシートの表面に白色インクで反射ドットのパターンが形成されるとともに、同面にドーム
状の突起部1aが形成されている。本実施例では、突起部1aの径は約2mm、高さは約1mmとしている。なお、本実施例の導光板1においては、ドームシート5の上に配置する際にドーム受け部5aに相当する位置に、ドーム受け部5aが侵入し易いように凹部を設けてもよい。また、特に凹部を設けずに、基材10の柔軟性を利用して、導光板1をドームシート5の形状に倣わせるようにしてもよい。上述した、図4または図5に示した方法で突起部1aを形成し、さらに熱硬化(二次キュア)する工程は本実施例において突起形成工程に相当する。
【0048】
また、本実施例においては、導光板の基材10として、熱硬化性ウレタン樹脂シートが選定されたが、この基材10は、一次熱硬化工程において熱硬化性ウレタン樹脂シートが形状を維持することが可能な程度まで仮硬化(一次キュア)させたものであってもよい。そうすれば、突起部1aと基材10との結合力をより高めた上で、さらなる熱硬化(二次キュア)によって両者を完全に硬化することが可能である。また、一次熱硬化工程において熱硬化性ウレタン樹脂シートを完全に硬化した上で基材10とし、これに突起部1aを形成することも可能である。
【0049】
また、本実施例においては、ドットパターン形成工程が、突起形成工程より先に行われることとしたので、ドットパターンによる反射特性が突起部1aの形成によって影響を受けることを抑制できる。しかしながら、ドットパターンにより要求される反射特性によっては、この2つの工程の順番は逆であっても構わない。
【0050】
図7には、基板2と導光板1との間の構成について示す。導光板1のドットパターンが形成された側の面には、前述のように突起部1aが形成されている。導光板1は粘着シート50によって、ドームシート5に全面あるいは周囲のみにおいて貼り合わされている。粘着剤50は、ドームシート5においてドーム4が格納される部分を避けるように形成されている。ドームシート5にはドーム受け部5aが形成されており、ドームシート5はドーム受け部5aにドーム4が侵入された状態で基板2の上に配置される。その際、基板2における電気接点7を覆う位置に、ドーム4とドーム受け部5aとが配置される。
【0051】
<測定例1>
次に、本実施例における測定例1について説明する。本測定例においては、実際の携帯電話のキートップ部に、本発明に係るキーモジュールを適用して、その際に得られる、携帯電話の特性として重要なクリック感の確認を行なった。その際、基材10としては厚み200μm、硬化後のショアA硬度が91の熱硬化性ウレタン樹脂シートを使用した。突起部1aの径はφ2mm、φ3mm、φ4mm、φ10mmの4種類について測定した。また、突起部1aを形成する熱硬化性ウレタン樹脂の硬化後のショアA硬度は97とし、基材10の硬度よりも高い硬度とした。比較のために、突起部1aなしの場合についても測定した。また、印刷用インクとしては、白色UV硬化インクA(主剤:光重合組成物70〜90wt%、顔料:二酸化チタン10〜20wt%、その他:重合開始剤5wt%以下)を用いた。なお、インクジェットヘッド6はピエゾ式のものを用い、360dpi、液滴量14plの条件で使用した。また、UV硬化装置はSubzero(Integration社製)を用いた。
【0052】
クリック感の評価はクリック率を求めてその値を比較することで行った。ここで、通常キートップ6を操作者が押圧した場合に、その荷重は図8に示すように変化する。図8に示す荷重の変化においてクリック率を以下の式で定義した。
クリック率=(F1−F2)/F1・・・・・(1)
なお、このクリック率は、一般に20%〜25%以上あれば良好とされている。
【0053】
本測定例の測定結果を表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
測定結果から分かるように、突起部1aがない場合が最もクリック率が低くなっていることから、導光板1上に突起部1aを形成することでクリック率が向上することが明確となった。また、突起部1aの径はφ2の時に最も良いクリック率が得られ、突起部1aの径が大きくなるにつれクリック率が低下することが分かった。少なくとも、突起部1aの径がφ4以下であれば良好なクリック率が得られることが分かった。
【0056】
なお、耐久性については、押し荷重400gf、100サイクル/minの打鍵試験100万回において導光板1の突起部1a及び基材10に亀裂などの異常は見られず、良好であった。
【0057】
なお、上記の実施例においては、突起部1aを形成するために熱硬化性ウレタン樹脂を基材に塗布する例について説明したが、突起部1aを形成するための材質は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂などの他の種類の樹脂や、シリコンゴムなどのゴムなどの他の材質であってもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施例に係る携帯機器のキーモジュールの構成を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係る導光板のドットパターン形成工程を説明するための図である。
【図3】本発明の実施例に係る導光板の作用を説明するための図である。
【図4】本発明の実施例に係る導光板の突起部の形成過程の例を示す図である。
【図5】本発明の実施例に係る導光板の突起部の形成過程の別の例を示す図である。
【図6】本発明の実施例に係る導光板をドットパターン側から見た斜視図である。
【図7】本発明の実施例に係る導光板と基板との間の構成を示す図である。
【図8】本発明に係るクリック率について説明するための図である。
【図9】従来の携帯機器のキーモジュールの構成の第1の例を示す図である。
【図10】従来の携帯機器のキーモジュールの構成の第2の例を示す図である。
【符号の説明】
【0059】
1、31・・・導光板
1a・・・突起
2、22、32・・・基板
3、23、33・・・LEDモジュール
4、24、34・・・ドーム
5、25、35・・・ドームシート
6、26、36・・・キートップ
6a、36a・・・押圧部
7・・・電気接点
10・・・基材
12・・・白インク(液滴)
13・・・白インクのドット
13a・・・結合部
16・・・インクジェットヘッド
18・・・UV硬化装置
20、30・・・熱硬化性ウレタン樹脂
26a・・・入射部
27・・・ディスペンサノズル
31a・・・開口部
50・・・粘着剤
100・・・版
101・・・メッシュ
102・・・乳剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯機器のキーモジュールにおいて操作者が押圧することで入力がなされるキートップ部と前記入力に基づいた信号を発生させるための電気接点が設けられた基板と、の間に配置され、側面に配置された光源によって入射された光に内部を伝播させ、前記キートップ部側の出射面から前記光を出射する導光板であって、
熱硬化性ウレタン樹脂シートからなる基材における前記基板側の面にインクジェットによって白インクのドットパターンを印刷することで形成され、
前記基材における、前記キートップ部と前記基板との間に配置された際に前記電気接点と対向する部分には、樹脂またはゴムを塗布することで形成された突起が設けられたことを特徴とする導光板。
【請求項2】
前記突起のショアA硬度は前記基材のショアA硬度より高いことを特徴とする請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
前記突起は熱硬化性ウレタン樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の導光板。
【請求項4】
前記突起はスクリーン印刷により形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の導光板。
【請求項5】
前記突起はディスペンサ印刷により形成されたことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の導光板。
【請求項6】
前記携帯機器のキーモジュールは、
前記電気接点の前記キートップ部側に配置され前記キートップ部に押圧されて変形することで前記電気接点と接触して前記信号を発生させる可動側接点と、
前記可動側接点を前記基板上に固定すべく覆う可動側接点シートと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の導光板。
【請求項7】
携帯機器のキーモジュールにおいて操作者が押圧することで入力がなされるキートップ部と前記入力に基づいた信号を発生させるための電気接点が設けられた基板と、の間に配置され、側面に配置された光源によって入射された光に内部を伝播させ、前記キートップ部側の出射面から前記光を出射する導光板の製造方法であって、
熱硬化性ウレタン樹脂シートからなる基材における前記基板側の面にインクジェットによって白インクのドットパターンを印刷するドットパターン形成工程と、
前記熱硬化性ウレタン樹脂シートにおける、前記キートップ部と前記基板との間に配置された際に前記電気接点と対向する部分に、樹脂またはゴムを塗布することで突起を形成する突起形成工程と、を有することを特徴とする導光板の製造方法。
【請求項8】
前記突起形成工程においては、樹脂またはゴムがスクリーン印刷されることで前記突起が形成されることを特徴とする請求項7に記載の導光板の製造方法。
【請求項9】
前記突起形成工程においては、樹脂またはゴムがディスペンサ印刷されることで前記突起が形成されることを特徴とする請求項7に記載の導光板の製造方法。
【請求項10】
前記突起形成工程の前に実行され、熱硬化性ウレタン樹脂シートからなる基材を形状維持可能な程度にまで熱硬化させる一次熱硬化工程をさらに有し、
前記突起形成工程においては、前記基材に前記熱硬化性ウレタン樹脂を塗布することで突起を形成するとともに、その後に前記一次熱硬化工程の後の基材と前記突起とがさらに熱硬化されることを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の導光板の製造方法

【請求項11】
前記突起形成工程における熱硬化の後の前記突起のショアA硬度は、該熱硬化の後の前記基材のショアA硬度より高いことを特徴とする請求項10に記載の導光板の製造方法。
【請求項12】
操作者が押圧することで入力がなされるキートップ部と、
前記入力に基づいた信号を発生させるための電気接点が配置された基板と、
前記電気接点の前記キートップ部側に配置され、前記キートップ部に押圧されて変形することで前記電気接点と接触して前記信号を発生させる可動側接点と、
前記可動側接点を前記基板上に固定すべく覆う可動側接点シートと、
前記可動側接点シートの前記キートップ部側に配置され、側面に配置された光源によって入射された光に内部を伝播させ、前記キートップ部側の出射面から前記光を出射する導光板と、
を備える携帯機器のキーモジュールであって、
前記導光板は、熱硬化性ウレタン樹脂シートからなる基材における前記基板側の面にインクジェットによって白インクのドットパターンを印刷することで形成されるとともに、該導光板における前記可動側接点と対向する部分には、樹脂またはゴムを塗布することで形成され前記基材より高いショアA硬度を有する突起が設けられたことを特徴とする携帯機器のキーモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−123459(P2010−123459A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297190(P2008−297190)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【Fターム(参考)】