説明

導波管スロットアンテナ

【課題】水平偏波を放射する導波管と垂直偏波を放射する導波管とを一体化しても、グレーティングローブの発生を抑制することができる導波管スロットアンテナを提供する。
【解決手段】導波管スロットアンテナは、水平偏波を放射する複数の第1スロット素子12a〜12hが管軸に対して傾斜する方向に延びて形成された第1導波管1と、垂直偏波を放射する複数の第2スロット素子22a〜22hが管軸に平行な方向に延びて形成された第2導波管2とをそれぞれ複数備えている。前記第1導波管1と前記第2導波管2とが、管軸に直交する方向に交互に積み重ねられており、前記第2導波管2は断面コ字状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導波管スロットアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
導波管を用いたスロットアンテナには、水平偏波を放射するスロットアンテナと、垂直偏波を放射するスロットアンテナとがある(例えば特許文献1参照)。この水平偏波を放射するスロットアンテナ及び垂直偏波を放射するスロットアンテナは、それぞれ単独で使用されることもあるが、得られる情報量を増やすために、両スロットアンテナを併用することがある。
【0003】
このようなスロットアンテナとして、図8に示すように、水平偏波を放射する複数の傾斜スロット素子101aを有するスロットアンテナ101と、垂直偏波を放射する複数の水平スロット素子102aを有するスロットアンテナ102とを、組み合わせて一体化したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−36711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のように水平偏波及び垂直偏波を放射するスロットアンテナ101,102を単純に組み合わせた場合、水平偏波及び垂直偏波のそれぞれの電波の放射中心が異なることや、広い設置スペースを確保しなければならないという問題がある。
【0006】
これらの問題を解決するために、図9に示すように、複数の傾斜スロット素子201aを有する断面縦長矩形状の第1導波管201と、複数の水平スロット素子202aを有する断面横長矩形状の第2導波管202とを交互に積み重ねて一体化することが提案されている。しかし、この場合は、単独偏波のスロットアンテナに比べると、積み重ね方向に隣り合う第1導波管201の素子間隔L1や第2導波管202の素子間隔L2が大きくなるため、不要な方向に電波が放射されるグレーティングローブが大きくなるという問題が生じる。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、水平偏波を放射する導波管と垂直偏波を放射する導波管とを一体化しても、グレーティングローブの発生を抑制することができる導波管スロットアンテナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明の導波管スロットアンテナは、水平偏波を放射する複数の第1スロット素子が管軸に対して傾斜する方向に延びて形成された第1導波管と、垂直偏波を放射する複数の第2スロット素子が管軸に平行な方向に延びて形成された第2導波管と、をそれぞれ複数備え、前記第1導波管と前記第2導波管とが、管軸に直交する方向に交互に積み重ねられており、前記第2導波管が、断面コ字状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、第1導波管と共に交互に積み重ねる第2導波管を断面コ字状に形成することにより、同一の管内波長をもつ断面縦長矩形状の導波管に比べ、第2導波管を小さくすることができるため、その積み重ね方向の素子間隔が大きくなるのを抑制することができる。したがって、水平偏波を放射する第1導波管と垂直偏波を放射する第2導波管とを一体化しても、グレーティングローブの発生を抑制することができる。
【0010】
(2)また、前記導波管スロットアンテナは、前記第2導波管を挟んで隣り合う2つの前記第1導波管の素子間隔、及び前記第1導波管を挟んで隣り合う2つの前記第2導波管の素子間隔が、それぞれ0.8λ(λは使用周波数の自由空間波長)以下の長さに設定されていることが好ましい。
この場合、第1導波管及び第2導波管の各素子間隔を適切な長さにすることができるため、グレーティングローブが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0011】
(3)また、前記第1導波管は、管軸方向の中央部に第1給電点を有し、前記第1給電点を挟んで管軸方向に隣り合う2つの前記第1スロット素子が、当該第1給電点からそれぞれ同一長さ離れた位置で同じ方向に傾斜していることが好ましい。
この場合、第1給電点を挟んで管軸方向に隣り合う2つの第1スロット素子には、それぞれ同じ方向に電界が生じるため、各第1スロット素子からそれぞれ放射される電波の重ね合わせにより、主ビーム方向への放射強度を高めることができる。
【0012】
(4)また、前記導波管スロットアンテナは、前記第2導波管を挟んで隣り合う2つの第1導波管が、前記第1給電点においてそれぞれ同位相で給電されており、前記2つの第1導波管のうち、一方の第1導波管の前記隣り合う2つの第1スロット素子と、他方の第1導波管の前記隣り合う2つの第1スロット素子とが、同じ方向に傾斜していることが好ましい。
この場合、同位相で給電される2つの第1導波管のそれぞれにおける前記隣り合う第1スロット素子には、すべて同じ方向に電界が生じるため、各第1導波管の前記第1スロット素子からそれぞれ放射される電波の重ね合わせにより、主ビーム方向への放射強度を高めることができる。
【0013】
(5)また、前記導波管スロットアンテナは、前記第2導波管を挟んで隣り合う2つの第1導波管が、前記第1給電点において相互に逆位相で給電されており、前記2つの第1導波管のうち、一方の第1導波管の前記隣り合う2つの第1スロット素子と、他方の第1導波管の前記隣り合う2つの第1スロット素子とが、相互に逆方向に傾斜していることが好ましい。
この場合、相互に逆位相で給電される2つの第1導波管のそれぞれにおける前記隣り合う第1スロット素子には、すべて同じ方向に電界が生じるため、各第1導波管の前記第1スロット素子からそれぞれ放射される電波の重ね合わせにより、主ビーム方向への放射強度を高めることができる。
【0014】
(6)また、前記第1導波管は、管軸方向の一端部に第1給電スロット素子を有し、前記第2導波管は、管軸方向の他端部に第2給電スロット素子を有し、前記第1導波管及び第2導波管を交互に積み重ねた1列の導波管列が、その積み重ね方向に延びる線を挟んで相互に線対称となるように2列配置されていることが好ましい。
この場合、管軸方向両端部からそれぞれ給電される第1導波管及び第2導波管を交互に積み重ねた1列の導波管列を2列配置するとともに、この2列の導波管列を線対称に配置することで、周波数の違い(管内波長の違い)による電界放射のピーク方向のずれが生じることなく、使用周波数におけるすべての周波数で電界放射のピーク方向を一定にすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、水平偏波を放射する第1導波管と垂直偏波を放射する第2導波管とを一体化しても、グレーティングローブが発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る導波管スロットアンテナの斜視図である。
【図2】図1の導波管スロットアンテナの正面図である。
【図3】図1の導波管スロットアンテナの側面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る導波管スロットアンテナの正面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る導波管スロットアンテナの正面図である。
【図6】図5の左側の導波管列の右側面図である。
【図7】図5の左側の導波管列の左側面図である。
【図8】従来の導波管スロットアンテナの斜視図である。
【図9】従来の導波管スロットアンテナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔第1の実施形態〕
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の第1の実施形態に係る導波管スロットアンテナの斜視図であり、図2は導波管スロットアンテナの正面図である。図1において、この導波管スロットアンテナは、例えば航空機の翼部分に取り付けられるものであり、複数(本実施形態では4つ)の第1導波管1と複数(本実施形態では4つ)の第2導波管2とを管軸に直交する方向(図1の上下方向)に交互に積み重ねて一体化したものである。この第1導波管1及び第2導波管2は、設計周波数を中心とする所定の周波数帯域(本実施形態では9.3〜9.8GHz)において複数の周波数を使用するものである。
【0018】
第1導波管1は、断面矩形状に形成されており、水平偏波を放射する複数の第1スロット素子(傾斜スロット素子)12a〜12hを有している。各第1スロット素子12a〜12hは、第1導波管1の狭壁面11aに、管軸に対して傾斜する方向に延びて形成されている。
【0019】
第2導波管2は、断面コ字状に形成されたリッジ導波管からなり、垂直偏波を放射する複数の第2スロット素子(水平スロット素子)22a〜22hを有している。各第2スロット素子22a〜22hは、第2導波管2の広壁面21aに、管軸に平行な方向に延びて形成されている。
【0020】
図1において、第2導波管2を挟んで隣り合う2つの第1導波管1の素子間隔L1、及び第1導波管1を挟んで隣り合う2つの第2導波管2の素子間隔L2は、それぞれ0.8λ以下の長さに設定されている。ここで、λは使用周波数の自由空間波長である。
【0021】
具体的には、第1導波管1の積み重ね方向に対向する広壁面間の幅D1は5mmであって、標準の導波管の当該幅(10mm)よりも短く設定されている。また、第2導波管2の積み重ね方向に対向する狭壁面間の幅D2は15mm、第1導波管1及び第2導波管2の板厚tは1mm、自由空間波長λは約31mmにそれぞれ設定されている。これにより、前記素子間隔L1及びL2は22mm(≒0.7λ)に設定されている。
【0022】
図2において、第1導波管1は、管軸方向の中央部に、電力が供給される第1給電点13を有している。この第1給電点13を挟んで管軸方向に隣り合う2つの第1スロット素子12d,12eは、第1給電点13からそれぞれ同一長さ離れた位置で同じ方向に傾斜している。具体的には、各第1スロット素子12d,12eは、第1給電点13からそれぞれλ/4離れた位置を中心として、第1導波管1の管軸X1に対して所定角度θ(本実施形態では50度)だけ傾斜している。ここで、λは使用周波数の管内波長である。
【0023】
前記第1スロット素子12dよりも管軸方向一方側(図2の左側)の第1スロット素子12a〜12cは、管軸方向に所定長さ(λ/2)毎に、交互に逆方向に傾斜角度θだけ傾斜するように配置されている。前記第1スロット素子12eよりも管軸方向他方側(図2の右側)の第1スロット素子12f〜12hは、管軸方向一方側と同様に、管軸方向に所定長さ(λ/2)毎に、交互に逆方向に傾斜角度θだけ傾斜するように配置されている。
【0024】
第2導波管2を挟んで隣り合う2つの第1導波管1は、各第1給電点13において相互に逆位相で給電されている。そして、これら2つの第1導波管1のうち、一方の第1導波管1の第1スロット素子12d,12eと、他方の第1導波管1の第1スロット素子12d,12eとは、それぞれ相互に逆方向に傾斜している。これに伴って、前記一方の第1導波管1の第1スロット素子12a〜12c,12f〜12hと、前記他方の第1導波管1の第1スロット素子12a〜12c,12f〜12hとは、それぞれ相互に逆方向に傾斜している。
【0025】
第2導波管2は、管軸方向の中央部に、電力が供給される第2給電点23を有している。この第2給電点23を挟んで管軸方向に隣り合う2つの第2スロット素子22d,22eは、第2給電点23からそれぞれ同一長さ離れた位置において、第2導波管2の管軸X2に対して相互に逆方向にオフセットした状態で配置されている。具体的には、各第2スロット素子22d,22eは、第2給電点23からそれぞれλ/4離れた位置を中心として配置され、かつ第2給電点23を中心として相互に点対称に配置されている。
【0026】
前記第2スロット素子22dよりも管軸方向一方側(図2の左側)の第2スロット素子22a〜22cは、管軸方向に所定長さ(λ/2)毎に、交互に逆方向にオフセットした状態で配置されている。前記第2スロット素子22eよりも管軸方向他方側(図2の右側)の第2スロット素子22f〜22hは、管軸方向一方側と同様に、管軸方向に所定長さ(λ/2)毎に、交互に逆方向にオフセットした状態で配置されている。
【0027】
第1導波管1を挟んで隣り合う2つの第2導波管2は、各第2給電点23において相互に同位相で給電されている。そして、これら2つの第2導波管2のうち、一方の第2導波管2の第2スロット素子22d,22eと、他方の第2導波管2の第2スロット素子22d,22eとは、それぞれ同じ方向にオフセットした状態で配置されている。これに伴って、前記一方の第2導波管2の第2スロット素子22a〜22c,22f〜22hと、前記他方の第2導波管2の第2スロット素子22a〜22c,22f〜22hとは、それぞれ同じ方向にオフセットした状態で配置されている。
【0028】
図3は、導波管スロットアンテナの側面図である。図3において、導波管スロットアンテナは、各第1導波管1に電力を供給するための第1給電路3と、各第2導波管2に電力を供給するための第2給電路4とをさらに備えている。
第1給電路3は、例えば導波管によって形成されており、導波管スロットアンテナの裏側において管軸方向中央部に配置されている(図1参照)。この第1給電路3は、給電主路31と、この給電主路31から分岐された2つの第1分岐路32と、この各第1分岐路32からそれぞれ分岐された4つの第2分岐路33とによって構成されている。
【0029】
給電主路31は、第1導波管1の積み重ね方向の略中央部に配置されており、その一端は図示しない給電部に接続され、他端は前記積み重ね方向と直交する方向(図3の左右方向)に延びている。給電主路31の他端には、前記積み重ね方向に延びる各第1分岐路32の一端がそれぞれ接続されている。各第1分岐路32には、それぞれ2つの第2分岐路33の一端が接続されている。各第2分岐路33は、給電主路31の管軸に平行な方向に延びており、その他端は第1導波管1の狭壁面11bに接続されている。これにより、前記給電部から給電主路31、第1分岐路32及び第2分岐路33を経て、第1導波管1の管軸方向中央部に電力が給電される。
【0030】
第2給電路4は、例えば同軸ケーブルによって形成されており、導波管スロットアンテナの裏側において管軸方向中央部に配置されている。この第2給電路4は、給電主路41と、この給電主路41から分岐された2つの第1分岐路42と、この各第1分岐路42からそれぞれ分岐された4つの第2分岐路43とによって構成されている。
【0031】
給電主路41は、第2導波管2の積み重ね方向の略中央部に配置されており、その一端は図示しない給電部に接続され、他端は前記積み重ね方向と直交する方向(図3の左右方向)に延びている。給電主路41の他端には、分岐接続部44を介して2つの第1分岐路42の一端が接続されている。各第1分岐路42は、前記積み重ね方向と直交する方向(図3の左右方向)に延びた後、第2導波管2側に向けて直角に屈曲している。
【0032】
第1分岐路42の他端には、分岐接続部45を介してそれぞれ2つの第2分岐路43の一端が接続されている。各第2分岐路43は、前記積み重ね方向に少し延びた後、給電主路41の管軸に平行な方向に延びており、その他端は第2導波管2の凹底面21bに接続されている。これにより、前記給電部から給電主路41、第1分岐路42及び第2分岐路43を経て、第2導波管2の管軸方向中央部に電力が給電される。
【0033】
以上、本発明の実施形態に係る導波管スロットアンテナによれば、第1導波管1と共に交互に積み重ねる第2導波管2を断面コ字状のリッジ導波管で形成することにより、同一の管内波長をもつ断面縦長矩形状の導波管に比べ、第2導波管を小さくすることができるため、その積み重ね方向の素子間隔L1,L2が大きくなるのを抑制することができる。したがって、水平偏波を放射する第1導波管1と垂直偏波を放射する第2導波管2とを一体化しても、グレーティングローブが発生するのを抑制することができる。
【0034】
また、第2導波管2を挟んで隣り合う2つの第1導波管1の素子間隔L1、及び第1導波管1を挟んで隣り合う2つの第2導波管2の素子間隔L2が0.8λ以下の長さに設定することにより、前記各素子間隔L1,L2を適切な長さにすることができるため、グレーティングローブが発生するのを効果的に抑制することができる。
【0035】
また、第1導波管1において、第1給電点13を挟んで管軸方向に隣り合う2つの第1スロット素子12d,12eが、当該第1給電点13からそれぞれ同一長さ離れた位置で同じ方向に傾斜しているため、前記隣り合う2つの第1スロット素子12d,12eには、それぞれ同じ方向に電界が生じる。これにより、各第1スロット素子12d,12eからそれぞれ放射される電波の重ね合わせにより、主ビーム方向への放射強度を高めることができる。
【0036】
また、第2導波管2を挟んで隣り合うとともに、相互に逆位相で給電される2つの第1導波管1のうち、一方の第1導波管1の前記隣り合う第1スロット素子12d,12eと、他方の第1導波管1の前記隣り合う第1スロット素子12d,12eとが、相互に逆方向に傾斜しているため、前記各第1導波管1のそれぞれにおける前記隣り合う第1スロット素子12d,12eには、すべて同じ方向に電界が生じる。これにより、各第1導波管1の前記第1スロット素子12d,12eからそれぞれ放射される電波の重ね合わせにより、主ビーム方向への放射強度を高めることができる。
【0037】
また、第1導波管1を挟んで隣り合うとともに、相互に同位相で給電される2つの第2導波管2のうち、一方の第2導波管2の前記隣り合う第2スロット素子22d,22eと、他方の第2導波管2の前記隣り合う第2スロット素子22d,22eとが、同じ方向にオフセットした状態で配置されているため、前記各第2導波管2のそれぞれにおける前記隣り合う第2スロット素子22d,22eには、すべて同じ方向に電界が生じる。これにより、各第2導波管2の前記第2スロット素子22d,22eからそれぞれ放射される電波の重ね合わせにより、主ビーム方向への放射強度を高めることができる。
【0038】
また、第1導波管1及び第2導波管2は、設計周波数を中心とする所定の周波数帯域において複数の周波数を使用することができる。
【0039】
〔第2の実施形態〕
図4は本発明の第2の実施形態に係る導波管スロットアンテナの正面図である。本実施形態と第1の実施形態とが主に相違する点は、隣り合う2つの第1導波管における各第1スロット素子の配置が異なる点、及び隣り合う2つの第2導波管における各第2スロット素子の配置が異なる点である。
【0040】
本実施形態において、第2導波管2を挟んで隣り合う2つの第1導波管1は、各第1給電点13において相互に同位相で給電されている。そして、これら2つの第1導波管1のうち、一方の第1導波管1の第1スロット素子12d,12eと、他方の第1導波管1の第1スロット素子12d,12eとは、それぞれ同じ方向に傾斜している。これに伴って、前記一方の第1導波管1の第1スロット素子12a〜12c,12f〜12hと、前記他方の第1導波管1の第1スロット素子12a〜12c,12f〜12hとは、それぞれ同じ方向に傾斜している。
【0041】
第1導波管1を挟んで隣り合う2つの第2導波管2は、各第2給電点23において相互に逆位相で給電されている。そして、これら2つの第2導波管2のうち、一方の第2導波管2の第2スロット素子22d,22eと、他方の第2導波管2の第2スロット素子22d,22eとは、それぞれ相互に逆方向にオフセットした状態で配置されている。これに伴って、前記一方の第2導波管2の第2スロット素子22a〜22c,22f〜22hと、前記他方の第2導波管2の第2スロット素子22a〜22c,22f〜22hとは、それぞれ相互に逆方向にオフセットした状態で配置されている。
【0042】
以上、本実施形態に係る導波管スロットアンテナにおいては、相互に同位相で給電される2つの第1導波管1のうち、一方の第1導波管1の前記隣り合う第1スロット素子12d,12eと、他方の第1導波管1の前記隣り合う第1スロット素子12d,12eとが、同じ方向に傾斜しているため、前記各第1導波管1のそれぞれにおける前記隣り合う第1スロット素子12d,12eには、すべて同じ方向に電界が生じる。これにより、各第1導波管1の前記第1スロット素子12d,12eからそれぞれ放射される電波の重ね合わせにより、主ビーム方向への放射強度を高めることができる。
【0043】
また、第1導波管1を挟んで隣り合うとともに、相互に逆位相で給電される2つの第2導波管2のうち、一方の第2導波管2の前記隣り合う第2スロット素子22d,22eと、他方の第2導波管2の前記隣り合う第2スロット素子22d,22eとが、相互に逆方向にオフセットした状態で配置されているため、前記各第2導波管2のそれぞれにおける前記隣り合う第2スロット素子22d,22eには、すべて同じ方向に電界が生じる。これにより、各第2導波管2の前記第2スロット素子22d,22eからそれぞれ放射される電波の重ね合わせにより、主ビーム方向への放射強度を高めることができる。
【0044】
〔第3の実施形態〕
図5は本発明の第3の実施形態に係る導波管スロットアンテナの正面図である。図5において、本実施形態の導波管スロットアンテナは、第1導波管1及び第2導波管2を交互に積み重ねた1列の導波管列5が、その積み重ね方向に延びる仮想線Cを挟んで相互に線対称となるように2列配置されている。
【0045】
第1導波管1の狭壁面11aには、第1スロット素子12a〜12hが、管軸方向に所定長さ(λ/2)毎に、交互に逆方向に傾斜するように配置されている。そして、第2導波管2を挟んで隣り合う2つの第1導波管1のうち、一方の第1導波管1の第1スロット素子12a〜12hと、他方の第1導波管1の第1スロット素子12a〜12hとは、それぞれ同じ方向に傾斜している。
【0046】
第2導波管2の広壁面21aには、第2スロット素子22a〜22hが、管軸方向に所定長さ(λ/2)毎に、交互に逆方向にオフセットした状態で配置されている。そして、第1導波管1を挟んで隣り合う2つの第2導波管2のうち、一方の第2導波管2の第2スロット素子22a〜22hと、他方の第2導波管2の第2スロット素子22a〜22hとは、それぞれ同じ方向にオフセットした状態で配置されている。
【0047】
各導波管列5は、第1導波管1に電力を供給するための第1給電路7と、各第2導波管2に電力を供給するための第2給電路8とを備えている。
第1給電路7及び第2給電路8は、例えば導波管によって形成されており、導波管列5の裏側の管軸方向の一端部に第1給電路7が、管軸方向の他端部に第2給電路8がそれぞれ配置されている。
【0048】
図6は図5の左側の導波管列5の右側面図である。図6において、第1給電路7は、第1導波管1の積み重ね方向に延びており、その一端は図示しない給電部に接続されている。第1給電路7は、その長手方向の4箇所において各第1導波管1の狭壁面11bに接続されている。これにより、前記給電部から第1給電路7を経て、第1導波管1の管軸方向端部に電力が給電される。
【0049】
図7は図5の左側の導波管列5の左側面図である。図7において、第2給電路8は、給電主路81と、この給電主路81から分岐された4つの分岐路82とによって構成されている。給電主路81は、第2導波管2の積み重ね方向に延びており、その一端は図示しない給電部に接続されている。給電主路81には、各分岐路82の一端が接続されている。各分岐路82の他端は、給電主路81に対して垂直な方向に延びて、第2導波管2の凹底面21bに接続されている。これにより、前記給電部から給電主路81及び分岐路82を経て、第2導波管2の管軸方向端部に電力が給電される。
【0050】
図5において、第1導波管1は、管軸方向の一端部に第1給電スロット素子14を有している。この第1給電スロット14は、第1導波管1の狭壁面11bにおいて第1給電路7との接続箇所に形成されている。第2導波管2を挟んで隣り合う2つの第1導波管1の各第1給電スロット素子14には、相互に逆位相で給電されるようになっている。このため、前記2つの第1導波管1の各第1給電スロット素子14は、第1導波管1の管軸方向の他端側に向けて同位相で給電するように、管軸X1に対して相互に逆方向に傾斜している。
【0051】
各第2導波管2は、管軸方向の他端部に第2給電スロット素子24を有している。この第2給電スロット24は、第2導波管2の凹底面21bにおいて第2給電路8の分岐路82との接続箇所に形成されている。第1導波管1を挟んで隣り合う2つの第2導波管2の各第2給電スロット素子24には、相互に逆位相で給電されるようになっている。このため、前記2つの第2導波管2の各第2給電スロット素子24は、第2導波管2の管軸方向の一端側に向けて同位相で給電するように、管軸X2に対して相互に逆方向に傾斜している。
【0052】
以上、本実施形態に係る導波管スロットアンテナにおいては、管軸方向両端部からそれぞれ給電される第1導波管1及び第2導波管2を交互に積み重ねた1列の導波管列5を2列配置するとともに、この2列の導波管列を線対称に配置することで、周波数の違い(管内波長の違い)による電界放射のピーク方向のずれが生じることなく、使用周波数におけるすべての周波数で電界放射のピーク方向を一定にすることができる。
【0053】
[その他の変形例]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0054】
例えば、上記各実施形態における第1導波管1及び第2導波管2の積み重ね個数や、第1スロット素子12a〜12h及び第2スロット素子22a〜22hの個数は、任意に変更可能である。
また、上記第1及び第2の実施形態において、積み重ね方向に隣り合う第1導波管1の第1給電点13同士及び第2導波管2の第2給電点23同士は、いずれも同位相又は逆位相で給電するようにしてもよい。
【0055】
さらに、第1の実施形態において、第1給電路3及び第2給電路4は、いずれも導波管又は同軸ケーブルにより形成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 第1導波管
2 第2導波管
5 導波管列
12a〜12h 第1スロット素子
13 第1給電点
14 第1給電スロット素子
22a〜22h 第2スロット素子
23 第2給電点
24 第2給電スロット素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平偏波を放射する複数の第1スロット素子が管軸に対して傾斜する方向に延びて形成された第1導波管と、
垂直偏波を放射する複数の第2スロット素子が管軸に平行な方向に延びて形成された第2導波管と、をそれぞれ複数備え、
前記第1導波管と前記第2導波管とが、管軸に直交する方向に交互に積み重ねられており、
前記第2導波管が、断面コ字状に形成されていることを特徴とする導波管スロットアンテナ。
【請求項2】
前記第2導波管を挟んで隣り合う2つの前記第1導波管の素子間隔、及び前記第1導波管を挟んで隣り合う2つの前記第2導波管の素子間隔が、それぞれ0.8λ(λは使用周波数の自由空間波長)以下の長さに設定されている請求項1に記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項3】
前記第1導波管は、管軸方向の中央部に第1給電点を有し、
前記第1給電点を挟んで管軸方向に隣り合う2つの前記第1スロット素子が、当該第1給電点からそれぞれ同一長さ離れた位置で同じ方向に傾斜している請求項1又は2に記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項4】
前記第2導波管を挟んで隣り合う2つの第1導波管が、前記第1給電点においてそれぞれ同位相で給電されており、
前記2つの第1導波管のうち、一方の第1導波管の前記隣り合う2つの第1スロット素子と、他方の第1導波管の前記隣り合う2つの第1スロット素子とが、同じ方向に傾斜している請求項3に記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項5】
前記第2導波管を挟んで隣り合う2つの第1導波管が、前記第1給電点において相互に逆位相で給電されており、
前記2つの第1導波管のうち、一方の第1導波管の前記隣り合う2つの第1スロット素子と、他方の第1導波管の前記隣り合う2つの第1スロット素子とが、相互に逆方向に傾斜している請求項3に記載の導波管スロットアンテナ。
【請求項6】
前記第1導波管は、管軸方向の一端部に第1給電スロット素子を有し、
前記第2導波管は、管軸方向の他端部に第2給電スロット素子を有し、
前記第1導波管及び第2導波管を交互に積み重ねた1列の導波管列が、その積み重ね方向に延びる線を挟んで相互に線対称となるように2列配置されている請求項1又は2に記載の導波管スロットアンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−204975(P2012−204975A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−66066(P2011−66066)
【出願日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】