説明

導管、医療デバイスおよび生物医学的表面改変に使用するポリマー

(a)1つ以上のペンダント基セグメント、および(b)1つ以上のポリオールセグメントを含むコポリマーであって、該セグメントはそれぞれ同じかまたは異なりうる1つ以上の別のセグメントに結合しており、
該1つ以上のペンダント基セグメントは同じかまたは異なり、以下から選択される:
(i)シロキサンセグメント;
(ii)ホスホリルコリンまたはその誘導体もしくは類似体を含むセグメント;
(iii)ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基を含むセグメント;
(iv)式(XII)の基を含むヘパリン様セグメント;

D-N=N-Ar-SO3- (XII)

ならびに
(v)式(I)の基を含むセグメント

[P]n'-[Lys]n-Lys-[Spacer]-Lys-[Al]x (I)

そして、該ペンダント基セグメントのそれぞれの少なくとも一部はコポリマーの側鎖上にある、コポリマー。
コポリマーは、血管移植片等の移植可能デバイスの作製において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの骨格に1つ以上のペンダント基が結合したコポリマー、典型的にポリウレタンコポリマー、およびそのようなコポリマーの製造方法に関する。特に、本発明は、シルセスキオキサン含有コポリマーを含むシロキサン含有コポリマー、典型的にシロキサン含有およびシルセスキオキサン含有ポリウレタンコポリマーに関する。これらのコポリマーは、移植可能デバイスとして、特に冠状動脈および血管用途を含む医療用途において有用である。
【背景技術】
【0002】
冠状動脈および末梢血管疾患の形態のアテローム硬化性疾病は、米国および欧州の両方において最も多い死因である。罹患血管の外科的治療の中心として自家静脈または動脈でのバイパス移植術が挙げられるが、多くの患者において十分な自家静脈が欠けている。従って、人工血管移植片が必要とされている。
【0003】
現在、人工血管移植片および他の手術用人工器官として使用できる材料がいくつか利用可能である。これらとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)およびダクロンが挙げられる。これら2つの材料は硬質であり、移植片として使用される場合、吻合部において適合性のミスマッチを生じる。PTFEまたはダクロン移植片の本来の開存率は、4〜5年で20〜30%である。血管移植片として使用できる別の材料はポリウレタン(PU)である。この材料は、より弾力性がありつまり模倣しようとする血管により近いという利点を持つ。従って、PU移植片は、体内にある元来の血管と挙動が同様であるという意味で適合性のある移植片である。特に、PU移植片は、それが取り込まれた部位が曲がる際に、PTFEまたはダクロン移植片よりもより曲がり易い。
【0004】
適合性は、心臓血管人工器官を動脈樹に適合させるのに必要な重要な特性であると多くの人に見なされている。従って、適合性材料の開発は、特に膝下動脈バイパス等の低流動性状況における小径移植片の臨床的性能を改善するための重要な一歩であると考えられている。現在使用されている移植片は適合性を得るために全体的な外部拡張に依存するため、長期の適合性を得ることは到達し難い目標であった。しかし、血管周囲内部成長は外部拡張を防ぐため、比較的短時間で適合性が失われる。
【0005】
しかし、PU利用型移植片は、異なるメカニズムを介して適合性を得る。体積の増加は、外部拡張を必要とせずに壁圧メカニズムにより対応される。より硬質な材料ではなく適合性のあるPUを使用することは、移植片の開存率を高めることが既に分かっている(Seifalianら, Tissue Engineering of Vascular Prosthetic Grafts, 1999 R.G.Landes)。
【0006】
しかし、これらのいずれかの材料を移植片として単独で使用することは問題がある。なぜなら、血液が移植片を流れる際に、吻合領域、特に末端吻合部において、また移植片の内腔表面に沿って血小板等の粒子が移植片の表面に付着し易いかまたは血液が凝固し得るからである。これにより、血管の内径の狭まり(狭窄)が生じ、これは血流が少ない直径の小さい(例えば、5mm以下の)移植片について特に問題である。影響を受ける主な領域は、移植片の下流端部が血管と交わる末端吻合部である。これは、主に、正常な血管の本来の内面である内皮細胞被覆の欠如によって生じる。内皮は、正常な血流を促す抗凝固および血小板活性物質を放出する可能性を持っている。
【0007】
この問題を解決するために、手術前および手術中の両方において移植片に内皮細胞を播種することが試みられてきた。概して、播種は、患者の脂肪組織または静脈から内皮細胞を抽出し、これらの細胞を移植片の内部を覆うために使用して、本来の内皮を模倣させることにより行われる。このようにして移植片に播種することにより、開存率が高まることが示されているが、播種された細胞は移植片の表面(特にPTFE)に十分に付着しない。実際、移植片内面に直接細胞を播種した場合、血流に曝された後では細胞の1〜14%しか付着したままでない。
【0008】
従って、内皮播種において決定的に重要なのは、播種された細胞が、血管を通る血液の流れにより生じる剪断応力に耐える能力である。特に血流の脈動特性は、細胞が移植片の表面に固く付着していない場合に流されやすくなる原因である。内皮播種がより難しい場合(特にPTFEを使用した場合)、剪断応力の影響は決定的であるが、これはどの移植材料を使用しても非常に重要である。
【0009】
内皮細胞をポリマー表面に付着させるのを助けるための多数の技術が開発されている。例えば、RGD(Arg-Gly-Asp)で強化されたフィブロネクチン接着剤が、内皮細胞の付着性を高めるために使用されている。内皮形成を助けるRGDおよびヘパリン、ならびに他の抗凝固剤等、ポリマー部分の表面に付着させるための様々な代替的な結合化学も試みられている。しかし、最近のin vitro研究から、これらの結合化学によりポリマーの機械的特性に変化が生じることが示された。in vivo研究でも、ポリマー表面上の抗凝固剤の存在により、ポリマーの化学的挙動が変化して動脈瘤障害が生じ得ることが示されている。
【0010】
手術的用途のためには、移植片の物理的および化学的特性変化の許容範囲は狭い。抗凝固剤および他の物質をポリマーの表面に結合させることで生じる変化は、in vivoにおいて移植片の障害を引き起こすのに十分であり得る。従って、このような結合ステップを必要とせずにポリマーの生体適合性が改善される新しいアプローチが必要とされている。
【0011】
PUに伴うさらなる問題は、長時間経過の際のin vivoでの劣化の可能性である。臨床的には、永久的移植片に使用されるポリウレタンは、関与する多様な劣化メカニズムにより、特に下肢バイパス用の血管移植片として使用される場合に非常にまちまちな記録を有する。このような下肢バイパス移植片において、劣化部位は常に非晶質または軟質セグメント、典型的にエステル、エーテルまたは炭酸塩であった。
【0012】
劣化は、ヘパリン結合を有する材料について特に問題である。ヘパリンは水分をひきつけ易く、これにより生体酵素がひきつけられる。これらの酵素は、ポリマーを劣化させ、その結果、ヘパリン結合ポリマーの寿命が許容できないほど短くなる。
【0013】
加水分解に対する加水分解性ポリマー構造の耐性は、シリコーン、スルホン、ハロカーボンおよび/または単離型カルボニル含有分子(ケトン)等の炭化水素をポリマー構造に取り入れることにより改善できる。最近の研究では、シロキサンブロックがポリウレタンに取り込まれた多数のポリウレタンが作製されている。しかし、これらの構造は、おそらくポリマー中の結晶領域の存在により機械的特性が乏しいことが分かっている。これらの種類のポリマーの引裂きに対する乏しい抵抗および変色傾向は特に問題として指摘されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
既知のシロキサンポリマーも、バイパス移植片に播種するのに使用する内皮細胞の成長をサポートする能力が低いことから指摘されるように生物学的特性が劣っている。従って、機械的特性を向上させ、同様に生物学的特性(血液に対する適合性および内皮細胞成長をサポートする能力を含む)も向上させることによりこれらの問題点に対処する代替的なポリマーが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、先行技術の問題に対処し、機械的および生物学的特性が向上した新しいポリマー、典型的にポリウレタンポリマー、例えばシロキサン含有ポリマーを開発した。従って、本発明は、(a)1つ以上のペンダント基セグメントおよび(b)1つ以上のポリオールセグメントを含むコポリマーであって、該セグメントはそれぞれ同じかまたは異なり得る1つ以上の別のセグメントに結合しており、該1つ以上のペンダント基セグメントは同じかまたは異なり、以下から選択され:
(i)シロキサンセグメント;
(ii)ホスホリルコリン、その誘導体またはその類似体を含むセグメント;
(iii)ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基を含むセグメント;
(iv)式(XII)の基を含むヘパリン様セグメント
【化11】

(式中、Dは脂肪族基または芳香族基であり、Ar-SO3-は1つ以上の結合したアリールおよび/またはヘテロアリール基を含み、アリールおよび/またはヘテロアリール基の少なくとも1つはSO3-置換基を有する);ならびに
(v)式(I)の基を含むセグメント
【化12】

(式中:
−[A1]は不活性アミノ酸;
−xは0、1、2または3;
−[スペーサー]は脂肪酸、アミノ酸、ペプチドまたはPEG;
−[P]n'-[Lys]nはn個のリシン基から形成されn'個の基Pで終結する樹枝状構造;
−nは1〜15の整数;
−n'はゼロまたは16までの整数;および
−Pはそれぞれ同じかまたは異なり、ヘパリン、アミノ酸またはペプチドである)、
そして、該ペンダント基セグメントそれぞれの少なくとも一部はコポリマーの側鎖上にある、コポリマーを提供する。コポリマーは、典型的にポリウレタンであり、従って、セグメントはそれぞれ尿素またはウレタン結合を介して隣接セグメントと結合している。
【0016】
本発明のコポリマーは、コポリマー骨格にペンダント式(すなわち、側鎖上)に結合した1つ以上の官能基を含む。ポリマーに含まれる具体的なペンダント基は、得られるコポリマーの特性をコポリマーを使用する用途に合わせるように選択され得る。従って、例えば、強度および生物安定性を改善する必要がある場合にはペンダントシロキサン基を含むことができ;血液適合性を改善するためにはペンダントホスホリルコリン由来基を含むことができ;血栓形成を抑え、また可能であればポリマーに密着する血小板が血液中に出現するのを阻むためにはペンダントジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル含有基を含むことができ;ポリマーに水分を引き付けることなく血液適合性を改善するためにはペンダントヘパリン様基を含むことができる。
【0017】
さらに、本発明は、様々な異なるペプチドをポリマーのペンダントアームに結合させることができる技術を提供する。従って、本発明は、当業者が、ヘパリンおよびRGD等の適合化(compatalilising)ペプチド、またはVEGF(血管内皮成長因子)もしくはIGF(いくつかの由来源をもつインスリン様成長因子(例えば、IGF-1およびIGF-2))から誘導されるような成長因子ペプチドを導入することを可能にする。従って、これらの異なるペンダント基を1つ以上取り込むことにより、当業者は得られるコポリマーの特性を特別に設計することができる。
【0018】
ポリマーへの適合化ペプチドの取り込みは、移植片を患者に挿入する前にポリマーの表面が適合化ペプチドで予め覆われ得るという利点を有する。これにより、血液適合性が得られる点で直ちに結果が得られる。その一方、ポリマーの表面に播種し、in vivoで内皮被覆を徐々に蓄積させることに依存する既存の方法は、移植片の挿入直後の血液適合性が比較的乏しい。
【0019】
特定の実施形態では、ヘパリン様基、特にヘパリン様カゴ構造をポリマーに取り込む。これらの材料により、移植片材料にヘパリン自体により得られる生物適合性が取り入れられる。しかし、このようなポリマー、特にカゴ型様ヘパリン基を含むポリマーは、ヘパリンと同程度には水分を吸着しないため、材料の寿命が改善される。カゴ型様ヘパリン基を含むポリマーは、強度特性も向上する。
【0020】
さらなる実施形態では、ポリマー上の1つ以上のペンダント基は、-CF3または-CF2-基を含む。このようなペンダント基は、PTFEの特性を反映するため、高い強度を含む機械的特性に優れ、タンパク質吸着を抑える能力を有する。従って、このようなポリマーは、尿管等の過酷な環境に置かれる製品に有用である。
【0021】
本発明のコポリマーの官能基は、ペンダント式(すなわち、コポリマーの側鎖)に結合される。これは、活性基が通常コポリマーの表面にあり、それらの機能を有効に発揮できることを意味する。
【0022】
ペンダント基は、初期の重合プロセスの間にポリマー構造に取り入れられる。つまり、ペンダント基は、ポリマー骨格に共有結合し、典型的に通常の血流に曝された際にポリマーに付着し続ける。さらに、重合後の付着手段が必要ないため、ポリマーの機械的特性の変化がほぼ避けられる。
【0023】
初期の重合の間のポリマー構造へのペンダント基の取り込みはまた、ポリマー全体にわたる活性基の均一な分布も促す。さらに、活性基とコポリマーとの共有結合により活性基がポリマー表面から流される可能性が低くなるため、少量の活性基しか必要としない。これは、コポリマー表面に結合させる活性基が高価な材料(例えば、成長因子ペプチド)である場合に特に利点となる。
【0024】
従って、一実施形態では、適切なペンダント基を選択することで、本発明は、生物安定性が高く血液との適合性が優れた生物学的特性の優れたコポリマーを提供する。ポリマーは、抗血栓形成性を向上させ、ポリマー表面近くでの血小板凝集を妨げる。さらに、ポリマーは、基本的なポリマー構造と同様の機械的特性を有し得る。従って、ポリオールポリウレタンの場合、ポリマーは基本的なポリオールポリウレタンと同様の機械的特性を有し得るため、高い引張強度および引裂き抵抗を有し得る。本発明のコポリマーの機械的および生物的特性が向上することで、本発明のコポリマーは、血管移植片、透析用シャントおよび心臓弁等の移植可能デバイスの製造において有用になる。
【0025】
好適な実施形態では、本発明は、(a)1つ以上のペンダントシロキサンセグメントおよび(b)1つ以上のポリオールセグメントを含むコポリマーであって、該ペンダントシロキサンセグメントのそれぞれの少なくとも一部がコポリマーの側鎖上にある、コポリマーを提供する。典型的に、これらのセグメントはそれぞれ、1つ以上の別のセグメント(同じか異なり得る)に、尿素またはウレタン結合を介して結合している。
【0026】
本発明の本実施形態のコポリマーは、優れた生物学的特性を有する。これらは、生物学的に安定しており、優れた血液適合性を示す。コポリマーの側鎖上のシロキサン基の存在は、抗血栓形成を向上させる。シロキサンは、ポリマー表面近くでの血小板凝集を妨げるため、表面上の血液凝固を低減させる。さらに、内皮細胞が、ポリマー表面上に非常に効果的に成長することが示された。
【0027】
コポリマーの側鎖上のシロキサン基の存在は、基本ポリマー構造(好ましくはポリオールポリウレタン)の有益な機械的特性が維持されることを意味する。従って、本発明者らは、本発明の本実施形態のポリマーが高い引張強さおよび引裂き抵抗を有すると考える。
【0028】
シロキサン基を取り込む本発明のコポリマーはまた、透明性が高く、経時的な変色が非常に遅いため、視覚的特性が重要な分野においても有用である。例えば、コポリマーは、眼用の移植片およびコンタクトレンズとして、または透明スクリーンまたはカバー等の非生物学的用途において有用である。
【0029】
本発明のさらなる実施形態では、シロキサン基は、ペンダントアームを介してコポリマー骨格に結合したカゴ型シルセスキオキサンである。これらのコポリマーは、機械的特性において、特に疲労抵抗および亀裂抵抗において特に利点を有する。コポリマーは、コポリマー中の衝撃力または強制的な収縮力を、多数の個々のカゴ型シルセスキオキサンを巻き込んで多数のより小さい相互作用に分散する能力を有する。従って、コポリマー材料に亀裂が走り始めたら、材料が亀裂成長に必要なエネルギーを散らすまでより小さい亀裂に分かれる。疲労は、亀裂が伝わることにより起こるため、コポリマーの疲労抵抗も改善される。
【0030】
さらに、カゴ型シルセスキオキサンのナノ規模サイズおよび性質により、カゴ構造は亀裂または欠陥を含まない。従って、カゴ型シルセスキオキサンは、コポリマー鎖に脆弱性をもたらさない。一方、線状ポリシロキサンは、それ自体が亀裂、境界、転位または他の欠陥を含んで、コポリマー構造に先天的脆弱性をもたらし得る。
【0031】
環境による応力亀裂は、生分解のプロセスに関与することが言及されている。従って、亀裂の減少により、本発明のコポリマーの生物安定性が改善する。耐化学性の改善も亀裂抵抗の向上のさらなる利点である。
【0032】
シルセスキオキサン含有コポリマーは、重量に対する表面積が広い。コポリマーの表面にかかる応力は、広い表面積が利用可能であることから散らすことができる。この要因により、コポリマーの引張強さおよび引裂き抵抗がさらに増し得る。
【0033】
シルセスキオキサン含有コポリマーはまた、寸法安定性および剛性の改善も示す。コポリマーの側鎖上のカゴ型シルセスキオキサンの存在により、コポリマーの形状変化の可能性が低くなる。形状変化(例えば、コポリマー鎖の特定のセクションが表面にくるの)に必要なエネルギーが高くなる。これにより、「固着(anchoring)」効果が生じ、コポリマーの再配置能力が抑えられ、セグメント移動が制限される。
【0034】
この固着効果は、耐化学性および生物耐久性の両方、ならびに寸法安定性の助けになる。脂質の溶解性および浸透性は、セグメント移動により制御される。典型的に、ポリマーが移動すると、脂質などの分子によって埋められ得る空間ができる。そして、これらの分子は、一連の部位を埋めることでポリマー構造にさらに拡散していく。従って、ポリマーのセグメント移動を制限することは浸透性を妨げ、これによりコポリマーの寸法安定性が増す。
【0035】
本発明の本実施形態のコポリマーのさらに注目すべき特性は、カゴ型シルセスキオキサンの電子求引特性により、電子求引体(electron attractor)として作用できる能力である。従って、本発明のシルセスキオキサン含有コポリマーは、共役ポリマー鎖中の電子バンドギャップを微調整するのに使用するために、そして場合によっては伝導材料と使用するのに適している。
【0036】
カゴ型シルセスキオキサンは無機材料として分類され、従って、本発明の本実施形態のコポリマーは、無機ポリマーの例であり、典型的に無機ポリウレタンである。
【0037】
さらなる実施形態では、本発明は、ポリオール基の数と比較して少ない割合のシロキサン基を有するシロキサン含有コポリマーを提供する。例えば、シロキサン含有セグメント:ポリオールセグメントの比率は、典型的に1:10未満、好ましくは1:25である。過剰量のシロキサン基は、血液との適合性が高いポリマーを生じるが、コポリマー表面上で細胞が成長する能力が小さくなる。一方、少ない割合のシロキサン基を含むコポリマーは、表面上にシロキサンが有意に存在したままであり、優れた血液適合性がもたらされるが、シロキサン基の存在はコポリマー表面上での細胞成長にとって害とならない。
【0038】
本発明はまた、本発明のコポリマーを作製する方法であって、以下のものを任意の順番で重合することを含む方法を提供する、
(i)それぞれ一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸から選択される少なくとも1つの基に結合した、1つ以上のペンダント基セグメント;
(ii)ポリオール;
(iii)2つ以上のイソシアネート基を有する芳香族化合物;ならびに任意に
(iv)それぞれ一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つの置換基を有する、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチドおよびC1-C6脂肪族基から選択される1つ以上の鎖延長剤(chain extender)。
【0039】
本発明はまた、本発明のコポリマーの表面上に内皮細胞を播種することを含む、本発明のコポリマーを裏打ち(lining)する方法を提供する。また、この方法により得られるまたは得ることが可能な裏打ちされたポリマーも提供する。
【0040】
本発明はまた、本発明のコポリマーまたは裏打ちされたコポリマーを含む、典型的に身体部分と交換するために使用される成型品(特に移植可能デバイス)を提供する。移植可能デバイスは、ヒトまたは動物の身体に移植または外科的に結合させるのに適したデバイスである。移植可能デバイスは典型的に人工器官である。
【0041】
最後に、本発明は、身体部分を本発明の移植可能デバイスと交換することを含む、身体部分の交換を必要とするヒトまたは動物患者の治療方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本明細書で使用するアルキル基または部分は、典型的に、線状または分岐状のC1-C12(例えばC1-C8、C1-C6またはC1-C4)アルキル基または部分である。アルキル基および部分の例として、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、t-ブチル、エチレン、プロピレン、ブチレン、2-メチルペンチレン、n-ヘキシレンおよびn-オクチレンが挙げられる。
【0043】
本明細書で使用するアルケニル基または部分は、典型的に、線状または分岐状のC2-C8(例えばC2-C6またはC2-C4)アルケニル基または部分である。アルケニル基および部分の例として、エテニル、n-プロペニル、i-プロペニルおよびn-プロペニル、特にエテニル、n-プロペニル、エテニレンおよびプロペニレンが挙げられる。
【0044】
本明細書で使用するアルキニル基は、典型的に、線状または分岐状のC2-C6(例えばC2-C4)アルキニル基である。アルキニル基の例として、エチニル、プロピニルおよびn-ブチニル、特にエチニルおよびプロピニルが挙げられる。
【0045】
アルキル、アルケニルまたはアルキニル基または部分は、置換されていなくても、1つ以上(例えば、1、2または3つ)の置換基で置換されていてもよい。置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、水素およびC1-C4アルキル基から選択される)が挙げられる。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ならびにヒドロキシル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルチオおよびジメチルアミノ基が挙げられる。置換基自体は置換されていない。
【0046】
本明細書で使用するシクロアルキル基または部分は、典型的に、単環または融合された環系であり得るC3-C10シクロアルキル基または部分である。シクロアルキル基および部分の例としては、C3-C6シクロアルキル基および部分、特にシクロペンチル、シクロヘキシル、シクロペンチレンおよびシクロへキシレンが挙げられる。
【0047】
シクロアルキル基は、置換されていなくても、1つ以上(例えば、1、2,3または4つ)の置換基で置換されていてもよい。シクロアルキル基上の置換基の例として、ハロゲン原子、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ニトロ基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、水素およびC1-C4アルキル基から選択される)、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル、トリフルオロメチル、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、水素およびC1-C4アルキル基から選択される)が挙げられる。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ならびにヒドロキシル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ、ニトロおよびジメチルアミノ基、例えば、ハロゲン原子、ならびにヒドロキシル、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ、メチルチオ、ニトロおよびジメチルアミノ基が挙げられる。置換基自体は置換されていない。
【0048】
本明細書で使用するアリール基は、典型的に、単環または融合された環系であり得るC6-C10アリール基である。アリール基の例として、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0049】
アリール基は、置換されていなくても、1つ以上(例えば、1、2、または3つ)の置換基で置換されていてもよい。アリール基上の置換基の例として、ハロゲン原子、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、水素およびC1-C4アルキル基から選択される)が挙げられる。好ましい置換基としては、メチル、エチル、メトキシ、メチルチオおよびジメチルアミノ基が挙げられる。置換基自体は置換されていない。
【0050】
本明細書で使用するアルコキシ基は、典型的に、酸素原子に結合した上記定義したアルキル基である。アルキルチオ基は、典型的に、硫黄原子に結合した上記定義したアルキル基である。アルコキシおよびアルキルチオ基は、典型的に置換されない。
【0051】
本明細書で使用するヘテロアリール基は、典型的に、窒素、酸素および硫黄原子から選択される1〜5つのヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロアリール基である。ヘテロアリール基は、典型的に、1〜5つ、例えば1〜4つの窒素原子を含む。ヘテロアリール基の好ましい例として、ピリジン、ピラゾール、プリン、ピリミジンおよびそれらの誘導体、例えば、プリン、ピリミジン、およびそれらの誘導体が挙げられる。
【0052】
ヘテロアリール基は、置換されていなくても、または1つ以上(例えば、1、2または3つ)の置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基上の置換基の例としては、ハロゲン原子、カルボキシ、オキシ、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、水素およびC1-C4アルキル基から選択される)が挙げられる。好ましい置換基としては、メチル、エチル、アミノ、カルボキシおよびオキシ基が挙げられる。置換基自体は置換されていない。
【0053】
本明細書で使用するヘテロシクリル基は、典型的に別の環(例えば、フェニル環)と任意に結合した、窒素、酸素および硫黄原子から選択される1〜3つのヘテロ原子を含む5〜6員ヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基の例としては、フタラニル、テトラヒドロフラニル、ピロリル、ピペリジニル、モルホリニル、テトラヒドロピラニルおよびテトラヒドロチエニル、特にテトラヒドロフラニルが挙げられる。
【0054】
ヘテロシクリル基は、置換されていなくても、または1つ以上(例えば、1、2または3つ)の置換基で置換されていてもよい。ヘテロシクリル基上の置換基の例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシ、オキシ、任意にヒドロキシルで置換されたC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、フェニル、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、水素およびC1-C4アルキル基から選択される)が挙げられる。好ましい置換基としては、ヒドロキシル基が挙げられる。フェニル置換基は、ハロゲンまたは無置換のC1-C4アルキル、C1-C4アルコキシまたは-NR1R2基でさらに置換され得る。特に示さない限り残った置換基自体は置換されていない。
【0055】
本発明のコポリマーは、上記定義したセグメント(i)〜(v)から選択される1つ以上のペンダント基セグメントを含む。「ペンダント基セグメント」という用語は、セグメントの少なくとも一部がコポリマーの側鎖上にあることを意味する。本発明の一実施形態では、セグメント(i)〜(v)から選択される2つ以上の異なる種類のペンダント基セグメントがポリマーに含まれる。例えば、シロキサン(例えば、シルセスキオキサンまたは部分的カゴ型シルセスキオキサン)セグメント、および1つ以上のセグメント(ii)〜(v)が使用できる。
【0056】
ペンダント基セグメントは、ペンダント基セグメントの官能部分(functional part)をポリマー骨格に結合させるためにペンダントアームを任意に含む。この場合、セグメントの官能部分は、コポリマーの側鎖上にあり、ペンダントアームの少なくとも一部はコポリマーの骨格内にある。「コポリマーの骨格内」という用語は、ペンダントアームがコポリマー鎖の端部に結合した(ペンダント基が鎖終結基(chain terminating group)である)状態を含む。本発明で使用できる好ましいペンダントアームは、以下でさらに定義する。
【0057】
シロキサンセグメントは、線状シロキサン、カゴ型様シルセスキオキサンまたは部分的カゴ型シロキサンを含み得る。本発明のコポリマーに2つ以上のシロキサンセグメントが存在する場合、シロキサンセグメントはそれぞれ同じであっても異なってもよい。典型的に、コポリマーは、線状シロキサン、カゴ型様シルセスキオキサンおよび部分的カゴ型シロキサンから選択される1つのシロキサンセグメントを含む。
【0058】
線状シロキサンは、典型的に、以下の式の繰り返しユニットを含む
【化13】

(式中、Rはそれぞれ同じかまたは異なり、脂肪族または芳香族基を表す)。典型的に、Rはそれぞれ同じかまたは異なり、アルキル、アルケニル、アルキニル、シロキシ、シクロアルキルまたはアリール基、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはアリール基を表す。Rはそれぞれ、アルキル基またはフェニル基、特にアルキル基を表すことが好ましい。
【0059】
好ましいアルキル基は、線状または分岐状であり得るC1-C6(例えば、C1-C4)アルキル基である。適切なアルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチルおよびt-ブチル、特にメチルおよびエチル、好ましくはメチルである。
【0060】
好ましいアルケニル基は、線状または分岐状であり得るC2-C6(例えば、C2-C4)アルケニル基である。適切なアルケニル基の例は、エテニル、n-プロペニル、i-プロペニル、およびn-ブテニル、特にエテニルおよびn-プロペニルである。
【0061】
好ましいシロキシ基は、式-OSiR113のものである(式中、R11はそれぞれ同じであるか異なり、水素およびC1-C4(典型的にはC1-C2)アルキル基から選択される)。
【0062】
好ましいアルキニル基は、線状または分岐状であり得るC2-C6(例えば、C2-C4)アルキニル基である。適切なアルキニル基の例は、エチニル、プロピニルおよびn-ブチニル、特に、エチニルおよびプロピニルである。
【0063】
好ましいシクロアルキル基は、単環または融合された環系を含むC3-C10シクロアルキル基である。適切なシクロアルキル基の例は、C3-C6シクロアルキル基、特にシクロヘキシルおよびシクロペンチルである。
【0064】
好ましいアリール基は、単環または融合された環系を含むC6-C10アリール基である。適切なアリール基の例は、フェニルおよびナフチルがある。
【0065】
基Rは、置換されないか、または1つ以上(例えば、1、2または3つ)の置換基により置換され得る。適切な置換基の例としては、ハロゲン原子、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、C1-C4アルキル基から選択される)が挙げられる。好ましい置換基としては、メチル、エチル、メトキシ、メチルチオおよびジメチルアミノ基が挙げられる。Rは置換されていないことが好ましい。
【0066】
線状シロキサンの(ポリウレタン骨格に結合していない)末端は、典型的に、繰り返しユニット中の基Rと同じまたは異なる別の基Rに結合している。
【0067】
好ましい線状シロキサンは、最大5000、好ましくは最大2000、さらに好ましくは最大1000の分子量を有する。本発明者らは、ポリシロキサン含有セグメントの分子量を少なくすることで、ポリマー表面に付着する細胞の能力が改善されることを発見した。この改善は、血液との優れた適合性を保ったまま達成される。
【0068】
線状シロキサン(すなわち、線状シロキサンセグメントの官能部分)は、直接またはペンダントアームを介して、ポリマーの骨格に結合され得る。典型的に、線状シロキサンは、骨格に直接結合される。例えば、シロキサンは、ウレタンの窒素原子への結合または尿素結合によりポリウレタン骨格に結合し得る。しかし、任意の代替的な結合手段も使用できる。
【0069】
本発明の一実施形態では、シロキサン基は、ペンダントアームを介してポリマーに結合している。ペンダントアームが使用されている場合、シロキサン基はコポリマーの側鎖上にあり、ペンダントアームの少なくとも一部はコポリマーの骨格内にある。シロキサンがカゴ型シルセスキオキサンまたは部分的カゴ構造である場合、ペンダントアームが典型的に使われる。
【0070】
本発明の本実施形態では、ペンダントシロキサンセグメントは典型的に以下の構造を有する
【化14】

(式中、Sはシロキサン基およびYはペンダントアームである)。典型的に、Yは、ポリマー中の少なくとも2つの別のセグメントに(例えば、尿素又はウレタン結合を介して)結合した脂肪族基である。
【0071】
シロキサンS基は、上記構造を有する線状シロキサンであり得る。あるいはまた、基Sはカゴ型シルセスキオキサンまたは部分的カゴ構造であり得る。Sがカゴ型シルセスキオキサンである場合、典型的に以下の式の繰り返しユニットで構成される
【化15】

(式中、R'はそれぞれ同じであるか異なり、脂肪族または芳香族基を表し、R'基の1つは基Yに結合した結合(bond attached to group Y)と置換される。典型的に、R'はそれぞれ同じであるか異なり、アルキル、アルケニル、アルキニル、シロキシ、シクロアルキルまたはアリール基、例えば、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはアリール基を表す。R'はそれぞれ同じであることが好ましい。
【0072】
好ましいアルキル基は、線状または分岐状であるC1-C6(例えば、C1-C4)アルキル基である。適切なアルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびt-ブチル、特にsec-ブチルである。
【0073】
好ましいアルケニル、アルキニル、シロキシ、シクロアルキルおよびアリール基は、Rについて上記定義した通りである。R'は、アルキル、シロキシ、シクロアルキルまたはアリール、例えば、アルキル、シクロアルキルまたはアリールであることが好ましい。R'は、C1-C4アルキル、-OSiR113(式中、R11はそれぞれ同じであるか異なり、水素もしくはメチルである)、シクロヘキシル、シクロペンチルまたはフェニルであることが最も好ましく、例えば、R'はC1-C4アルキル、シクロヘキシル、シクロペンチルまたはフェニルであり得る。
【0074】
基R'は、置換されないか、1つ以上(例えば、1、2、または3つ)の置換基で置換され得る。適切な置換基の例は、Rに適したものとして上述したものである。R'は置換されていないことが好ましい。
【0075】
カゴ型シルセスキオキサンの構造は特に限定されておらず、任意の利用可能なカゴ構造が使用できる。好ましいカゴ構造は、8のシリコン原子および12の酸素原子を含んで式-(Si8O12R'7)を有するもの、または12のシリコン原子および18の酸素原子を有し式-(Si12O18R'11)を有するものである(式中、R'は上記定義した通り)。12のシリコン原子を有するカゴ型シルセスキオキサンの例を図2に示す。カゴ型シルセスキオキサンの別の例を図1に示す。
【0076】
代替的な例は、以下の化合物に存在するシルセスキオキサン基である:すなわち、1,3,5,7,9,11,13-ヘプタシクロペンチル-15-グリシジルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]-オクタシロキサン;3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-オール;(グリシドキシプロピルジメチルシリルオキシ)-ヘプタシクロペンチルペンタシクロオクタシロキサン;1,3,5,7,9,11,13,15-オクタキス(ジメチルシリルオキシ)ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]-オクタシロキサン;3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピルメタクリレート;1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン;1-ビニル-3,5,7,11,13,15-イソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]-オクタシロキサン;および1-[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン。
【0077】
カゴ型シルセスキオキサンを変化させることにより、特にカゴ型シルセスキオキサンにR'基を適応させることにより、最終的なコポリマーの特性を適応させることができる。例えば、シクロヘキシルまたはシクロペンチル基等の大きい基を位置R'で使用すると、高い剛性および寸法安定性を持つコポリマーが得られる。このようなコポリマーは、心臓弁等、寸法安定性が重要な人工器官に使用されるのに適しているかもしれない。あるいはまた、C1-C4アルキル基等の小さいR'基の使用は、より柔軟性のあるコポリマーを提供し得、これは、例えば、血管移植片を作製するのに有用である。
【0078】
カゴ型シルセスキオキサンを、シリコン原子の1つを介してペンダントアームに結合させる。次にペンダントアームをポリマー(典型的に、ポリウレタン)骨格に結合させる。ペンダントアームの典型的な構造は、以下に記載する。
【0079】
シロキサン基Sが部分的カゴ型シルセスキオキサンである場合、部分的カゴ構造は、典型的に、カゴ構造を形成する原子および結合の1つ以上が欠けて部分的カゴ構造を形成している上述したカゴ型シルセスキオキサンである。このような構造の例を図3に示す。しかし、代替的な部分的カゴ構造も使用でき、1,3,5,7,9,11,14-ヘプタシクロヘキシルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン-3,7,14-トリオール;1,3,5,7,9,11,14-ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン-エンド-3,7,14-トリオール;3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)-アデノシン、および3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)シチジンに存在する部分的カゴ構造が挙げられる。上述したように、部分的カゴ構造は、ペンダントアームYに結合する。ペンダントアームYの典型的な構造は、以下に記載する。
【0080】
好ましいペンダントシロキサンセグメントは、最大5000、好ましくは最大2000、より好ましくは最大1000の分子量を有する。本発明者らは、ペンダントシロキサンセグメントの分子量を減らすことにより、ポリマー表面に付着する細胞の能力が改善されることを発見した。この改善は、血液との優れた適合性を保持しながら達成される。
【0081】
ペンダントシルセスキオキサンまたは部分的カゴ型シルセスキオキサンセグメントを含む本発明のコポリマーは、特に、強く、引裂き抵抗を有する。従って、コポリマーは、高い粘性、例えば、10,000cp以上、好ましくは100,000cp以上を有する。
【0082】
本発明のコポリマーは、ホスホリルコリン、またはその誘導体もしくは類似体を含む1つ以上のセグメントを含み得る。ホスホリルコリン、またはその誘導体もしくは類似体は、ペンダントアームを介してポリマー骨格に結合する。ペンダントアームは、メチレン基またはそれより長いペンダントアーム(例えば、以下に定義しているもの)であり得る。
【0083】
ホスホリルコリンまたはその誘導体を含むセグメントは、典型的に以下の式(V)を有する
【化16】

(式中、sは0、1、2、3または4、典型的に0または1である)。ホスホリルコリンのO-基は、基Bと任意に結合して環を形成する。
【0084】
基Bは、典型的に、コポリマー中の2つ(または任意に1もしくは3つ)の別のセグメントに(例えば、尿素またはウレタン基を介して)結合している。基Bは、例えば、以下に定義するペンダントアームである。一実施形態では、基Bは以下の式の基である
【化17】

(式中、pは0〜8、好ましくは1〜8の整数である)。Bは、エチレニルまたはプロピレニル基、例えばエチレニル基であることが好ましい。
【0085】
代替的な実施形態では、基Bは、窒素、酸素および硫黄原子から選択される1〜5のヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロシクリルまたはヘテロアリール基を含む。Bは典型的にヘテロアリール基を含む。ヘテロアリール基は、典型的に、1〜5、例えば1〜4の窒素原子を含む。ヘテロアリール基の好ましい例として、プリンおよびピリミジン、ならびにそれらの誘導体(プリン誘導体アデニン(6-アミノプリン)、グアニン(2-アミノ-6-オキシプリン)、ヒポキサンチン(6-オキシプリン)およびキサンチン(2,6-ジオキシプリン)、ならびにピリミジン誘導体ウラシル(2,4-ジオキシピリミジン)、チミン(2,4-ジオキシ-5-メチルピリミジン)、シトシン(2-オキシ-4-アミノピリミジン)およびオロチン酸(2,4-ジオキシ-6-カルボキシピリミジン)を含む)が挙げられる。ヘテロシクリル基の一例はファラニル(phalanyl)誘導体である。
【0086】
本実施形態では、基Bは、以下に示す式(VI)または(VIA)の基であることが好ましい。式(VI)では、(B1)qはホスホリルコリン基に結合し、(B3)mはコポリマー中の2つ(または任意に1もしくは3つ)の別のセグメントに(例えば、尿素またはウレタン基を介して)結合している。式(VIA)では、この結合の順番が逆になり、 (B3)mはホスホリルコリン基に結合し、(B1)qはコポリマー中の2つ(または任意に1もしくは3つ)の別のセグメントに結合している。
【0087】
【化18】

B1はそれぞれ同じであるか異なり、C6-C10アリール、C1-C8アルキレン、C2-C8アルケニレン、C3-C6シクロアルキル基、または窒素、酸素および硫黄から選択される1、2または3つのヘテロ原子を含む5もしくは6員ヘテロシクリル基であり;B2は、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜5つのヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロシクリルまたはヘテロアリール基、典型的に上記段落にて定義したヘテロシクリルまたはヘテロアリール基であり;B3は、以下に定義するペンダントアームであり;qは0、1、2または3であり;ならびにmは0または1である。式(VI)においてmが0の場合、ヘテロアリール基B2は、コポリマー中の2つ(または任意に1もしくは3つ)の別のセグメントに直接結合する。式(VIA)においてmが0の場合、B2はホスホリルコリン基に直接結合している。
【0088】
B1は好ましくはフェニル、C1-C4アルキレン基、C5-C6シクロアルキル基、または窒素、酸素および硫黄から選択される1、2または3つのヘテロ原子を含む5もしくは6員ヘテロシクリル基である。基B1はそれぞれ独立して、置換されていないか、または1、2、3もしくは4つの置換基で置換されている。置換基は、典型的にハロゲン原子、特に塩素および臭素原子、ヒドロキシ基、任意にヒドロキシル基で置換されるC1-C4アルキル基、C1-C4アルコキシ基、フェニル基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は独立してHおよびC1-C4アルキル基から選択される)から選択される。フェニル置換基は、それら自体、例えば、C1-4アルキル、C1-4アルコキシ、ヒドロキシル、ハロゲンまたは-NR1R2で置換され得るが、別のフェニル基では置換されない。好ましい置換基は、塩素、臭素、ヒドロキシル、C1-C2アルキル、ヒドロキシメチル、およびC1-C2アルコキシである。
【0089】
B2は、上記定義したヘテロアリール基であることが好ましい。qは1または2であることが好ましい。mは0であることが好ましい。
【0090】
式(VI)または(VIA)の好ましい基Bの例は、DNAおよびRNAに見とめられる塩基(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミンおよびウラシル)を含むプリンおよびピリミジンから誘導されたものである。特に好ましいのは、シチジニル、アデノシニルおよびグアノシニル基、ならびにデオキシシチジニル、デオキシアデノシニルおよびデオキシグアノシニル基である。これらの基はそれぞれ、任意に、ペンダントアームB3に結合している。ペンダントアームが使われていない場合、基は、例えばシチジンまたはアデノシン基のそれぞれプリンまたはピリミジン環上に存在する-N=C(NH2)-基を介して、直接ポリマーに結合していてもよい。
【0091】
基Bがプリンもしくはピリミジン基またはそれの誘導体を含む場合、ホスホリルコリン基は、セグメントのホスホリルコリン部分に由来する血液適合特性だけでなく、セグメントのプリンまたはピリミジン部分に由来する抗血栓特性そして可能であれば抗菌特性をコポリマーに与え得る。抗菌特性が与えられる場合、作製されるコポリマーは、尿管において使用される製品に特に有用となる無菌表面を有し得る。
【0092】
ホスホリルコリンの類似体を含むセグメントは、典型的に、1つ以上の結合したリン酸基、例えば一リン酸または三リン酸基を含む。従って、ホスホリルコリンの類似体を含む好ましいセグメントは、式(VII)を有する
【化19】

(式中、sおよびBは、ホスホリルコリンまたはその誘導体について上記定義した通りであり、rは1、2、3、4または5、好ましくは1または3、ならびにリン酸基上の1つ以上の-OH基は塩の形態であり得る(すなわち、基-O-M+(M+は陽イオン、例えば、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムイオン))。リン酸基の1つ以上のOH基は、基Bに結合して環を形成してもよい。
【0093】
ホスホリルコリンまたはその誘導体もしくは類似体を含むセグメントは、以下の化合物から誘導され得る:
2'-デオキシアデノシン-5'-一リン酸、
2'-デオキシシチジン-5'-一リン酸、
2'-デオキシグアノシン-5'-一リン酸塩、
シチジン-5'-三リン酸塩、
アデノシン2',3'-環状一リン酸塩、
(-)-アデノシン3',5'-環状一リン酸塩、
アデノシン-5'-三リン酸塩、
チモールフタレイン一リン酸。
【0094】
本発明のポリマーに単独でまたは他のペンダント基セグメントと組み合わせて採用できる代替的なペンダント基セグメントは、プリンもしくはピリミジン基またはそれらの誘導体を含むセグメントである。このようなセグメントの例は、プリン誘導体アデニン(6-アミノプリン)、グアニン(2-アミノ-6-オキシプリン)、ヒポキサンチン(6-オキシプリン)およびキサンチン(2,6-ジオキシプリン)、ならびにピリミジン誘導体ウラシル(2,4-ジオキシピリミジン)、チミン(2,4-ジオキシ-5-メチルピリミジン)、シトシン(2-オキシ-4-アミノピリミジン)およびオロチン酸(2,4-ジオキシ-6-カルボキシピリミジン)を含むものである。特に好ましいのは、シチジニル、アデノシニルおよびグアノシニル基、ならびにデオキシシチジニル、デオキシアデノシニルおよびデオキシグアノシニル基である。このようなセグメントの具体的な例は、(-)-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル(disiloxanediyl))アデノシンから誘導されるものである。
【0095】
これらのセグメントを含むポリマーは、特に優れた抗血栓および抗菌特性を有する。従って、コポリマーは無菌表面を有し、つまり、尿管において使用される製品に有用である。
【0096】
本発明のコポリマーは、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基、好ましくはトリフルオロメチル基を含む1つ以上のセグメントを含み得る。これらのセグメントの構造は、1つ以上のジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基が存在する限り、特に限定されない。一実施形態では、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基は、シロキサンセグメントの上、ホスホリルコリンまたはその誘導体もしくは類似体を含むセグメントの上、あるいは式(XII)または式(I)のセグメントの上に存在し得る。トリフルオロメチル基およびシロキサン基を含むセグメントの例は、図4に示す化合物から誘導されるものである。
【0097】
代替的な実施形態では、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基は、別々のセグメント上にある。このセグメントは、典型的に、1つ以上のジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基を含むが、最終的なポリマーに官能性を付与する別の基は全く含まない。例えば、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチルを含むセグメントは、1つ以上のジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基、および任意に1つ以上の追加の置換基で置換されている線状または分岐状のC2-C12(例えば、C4-C8)アルキレン基であり得る。追加の置換基は、典型的に、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、C1-C4アルコキシ基、および式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は独立して水素およびC1-C4アルキル基から選択される)から選択される。好ましい置換基は、フッ素、塩素、臭素およびヒドロキシル、特にフッ素である。アルキレン基は、コポリマー骨格の2つ(または任意に1もしくは3つ)の別のセグメントに(例えば、尿素またはウレタン基を介して)結合する。好ましいジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル含有基は、高度にフッ素化されたアルキレン基である。
【0098】
典型的に、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル含有セグメントは式(VIII)の基である
【化20】

(式中、AlkはC1-C4(例えば、C1-C2)アルキレン基、または基-(CH2)m-O-(CH2)n-(式中、mおよびnはそれぞれ独立して0、1または2)、pは0〜12、およびfluorは-CF3または基-CFXHY(CF3)z(式中、xおよびzはそれぞれ0、1または2;yは0または1;ならびにx+y+z=3)である)。AlkはCH2またはCH2-O-CH2であることが好ましい。pは2〜9であることが好ましい。Fluorは-CF3、-C(CF3)2Fまたは-CHF2であることが好ましく、-CF3または-C(CF3)2Fであることが最も好ましい。
【0099】
ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基を含むセグメントは、以下の化合物から誘導され得る:
[2,2,3,3,4,4,5,5,6,7,7,7-ドデカフルオロ-6-(トリフルオロメチル)ヘプチル]オキシラン、
(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,11,11,11-ヘネイコサフルオロウンデシル)オキシラン、
(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ヘプタデカフルオロノニル)オキシラン、
(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,9-ヘキサデカフルオロ-8-(トリフルオロメチル)ノニル]オキシラン、
[2,2,3,3,4,5,5,5-オクタフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ペンチル]オキシラン、
グリシジル2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7-ドデカフルオロヘプチルエーテル、
グリシジル2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9-ヘキサデカフルオロノニルエーテル。
【0100】
本発明のコポリマーは、式(XII)の基を含む1つ以上のヘパリン様セグメントを含み得る
【化21】

(式中、Dは脂肪族または芳香族基であり、Ar-SO3-は1つ以上の結合したアリールおよび/またはヘテロアリール基を含み、このアリールおよび/またはヘテロアリール基の少なくとも1つはSO3-置換基を有する)。
【0101】
ヘパリン様セグメントは、典型的に、ヘパリン自体の血液適合特性と実質的に同じ血液適合特性を示す。好ましいヘパリン様セグメントは、カゴ構造の形態である。ヘパリン様セグメントは、例えば、酸性染料(例えば、酸性黄(Acid Yellow)または酸性赤(Acid Red))から誘導され、典型的に、-N=N-基、および少なくとも1つのSO3-基で置換されたアリールまたはヘテロアリール基を含む。
【0102】
式(XII)の基は、典型的に、ポリマー骨格に直接結合している。従って、セグメントは典型的に1つ以上(典型的に2つ)の別のセグメントに、典型的に尿素またはウレタン基を介して結合した式(XII)の基である。あるいはまた、所望であれば、ペンダントアームを使用して式(XII)の基を骨格に結合してもよい。式(XII)の基は、典型的に、基DおよびArの一方または両方を介してポリマーまたはペンダントアームに結合している。
【0103】
式(XII)の基Arは、典型的に、1、2または3つ(好ましくは1または2つ)の結合したアリールおよび/またはヘテロアリール基を含み、これらはそれぞれ互いと同じであっても異なっていてもよい。アリールおよび/またはヘテロアリール基は、典型的に、互いと直接結合している。好ましいアリール基はフェニルおよびナフチル、特にフェニルである。好ましいヘテロアリール基は、ピリジル、ピラゾリルおよびピリミジニル等のN含有基であり、特にピラゾリルである。
【0104】
基Arは、少なくとも1つのSO3-基で置換される。SO3-基は、塩または酸、特に塩の形態をとる。好ましい塩は、アルカリまたはアルカリ土類金属、特にアルカリ金属を有する塩、例えばナトリウムである。基Arは、さらに1つ以上(例えば、1、2または3つ)の別の置換基によりさらに置換され得る。置換基の例として、ハロゲン原子、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ニトロ基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、C1-C4アルキル基から選択される)が挙げられる。好ましい置換基として、メチル、エチル、メトキシ、メチルチオ、ニトロおよびジメチルアミノ基が挙げられる。置換基はそれら自体は置換されない。
【0105】
基D-は、典型的に、基D1-D2-D3-(式中、D3はN=N基に結合している)である。本実施形態では、D1は、典型的に、アリール基またはヘテロアリール基、好ましくはアリール基、例えばフェニルである。D2は、-NR'CO-、-CONR'-、-NR'CONR'-、-OCO-、-COO-、-OCOO-、-NR'SO2-、-SO2NR'-、-NR'SO2NR'-、-OSO2-、-SO2O-または-OSO2O-、好ましくは-NR'CO-、-CONR'、-OCO-、-COO-、-NR'SO2-または-SO2NR'-、より好ましくは-NR'CO-、-CONR'、-NR'SO2-または-SO2NR'-から選択される官能基である(ここで、R'はそれぞれ同じかまたは異なり、水素またはC1-4アルキル基(例えば、C1-4アルキル基)である)。D3は、脂肪族または芳香族基、例えば、アリールもしくはヘテロアリール基、またはアルキレンもしくはアルケニレン基である。アリールおよびヘテロアリール基の例として、フェニル、ナフチルおよびピリジル、特にフェニルが挙げられる。アルキレンおよびアルケニレン基の例としては、C1-6アルキレンおよびC2-6アルケニレン基が挙げられる。
【0106】
D1およびD3は、置換されないか、または1、2もしくは3つの置換基で置換され得る。置換基の例として、ハロゲン原子、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ニトロ基および式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、C1-C4アルキル基から選択される)が挙げられる。好ましい置換基として、メチル、エチルおよびメトキシ基が挙げられる。置換基自体は置換されない。
【0107】
式(XII)の最も好ましい基は、Arが、フェニルおよびピラゾリルから選択される1または2つの結合したアリールまたはヘテロアリール基を含む化合物であり、Arは1または2つの-SO3-基、ならびに任意にメチル、エチル、メトキシ、メチルチオ、ニトロおよびジメチルアミノ基から選択される1、2または3つの別の置換基で置換される;Dは基D1-D2-D3-(式中、D1は、置換されないか、メチル、エチルおよびメトキシ基から選択される1、2または3つの置換基で置換されるアリールまたはヘテロアリール基)であり、D2は-NR'CO-、CONR'、-OCO-、-COO-、-NR'SO2-または-SO2NR'-(式中、R'はそれぞれ同じであるか異なり、水素またはC1-4アルキル基(例えば、C1-4アルキル基))であり、ならびにD3は、フェニル、置換されないかもしくはメチル、エチルおよびメトキシ基から選択される1、2もしくは3つの置換基で置換されるC1-4アルキレンまたはC2-4アルケニレンである。
【0108】
本実施形態では、D1は、置換されないか、またはメチル、エチルおよびメトキシ基から選択される1、2もしくは3つの置換基で置換されるフェニルであり、D2は-NR'CO-、CONR'、-NR'SO2-または-SO2NR'-(式中、R'はそれぞれ同じであるか異なり、水素またはC1-4アルキル基(例えば、C1-4アルキル基))であり、D3は、フェニル、置換されないか、またはメチル、エチルおよびメトキシ基から選択される1、2もしくは3つの置換基で置換されるC1-4アルキレンまたはC2-4アルケニレンであることが好ましい。式(XII)の特に好ましい基は、酸性染料(例えば、酸性黄化合物、特に酸性黄29、酸性黄76および酸性黄99)の誘導体である。
【0109】
本発明のコポリマーは、上述した式(I)の基を含む1つ以上のセグメントを含み得る。式(I)の基は、典型的に、ポリマー骨格に直接結合する。従って、セグメントは、典型的に、コポリマー中の1つ以上(典型的に2つ)の別のセグメントに(例えば、尿素またはウレタン基を介して)結合した式(I)の基である。例えば、式(I)の基は、ポリマー骨格中の尿素またはウレタン基に、スペーサーに結合した2つのリシン基のNH2基を介して結合し得る。
【0110】
所望であれば、ペンダントアームを使用して、式(I)の基を骨格に結合させてもよい。この場合、ペンダントアームは、典型的に、スペースに結合したリシン基の1つの-NH2基、特に式(I)に示すスペーサーの右側にあるリシン基に結合する。代替的な結合位置、例えば、スペーサーに存在する任意のアミノ酸等の他のアミノ酸の-NH2基(または-OH基)も想定される。本実施形態では、ペンダントアームは、典型的に、置換されないかまたはペンダントアームについて以下に記載するように置換された短い脂肪族鎖(例えば、C2-C4アルキレン基)である。好ましいペンダントアームは置換されていない(例えば、エチレン)。
【0111】
式(I)において、[Al]は不活性アミノ酸を表す。不活性アミノ酸は、重合可能な基(すなわち、-NH2またはOH基)を含まないものである。典型的に、不活性アミノ酸は、どの官能基も含まない。[Al]はグリシンであることが好ましい。xは1であることが好ましい。式(I)の位置[Al]にあるグリシン等の不活性アミノ酸または不活性アミノ酸の短い連鎖の存在により、構造に柔軟性が与られる。これはまた、合成中のラセミ化を最小限にするのを助ける。
【0112】
基[P]n'[Lys]nは、n個のリシン基およびn'個の基Pで形成される樹枝状構造である。1つまたは複数のリシンはそれぞれ、そのカルボキシ末端を介して別のリシン基に結合している。樹枝状構造が1つのリシン基しか含まない場合、このリシン基はそのカルボキシ末端を介して、スペーサーに隣接するリシン基に結合する。
【0113】
1つまたは複数のリシン基はそれぞれまた、典型的に、リシン構造中の各-NH2基を介して2つの別の基に結合する。2つの別の基は、別のリシン基および基Pから選択される。このようにして、縦列したリシン分子の樹枝状構造が典型的に構築される。樹枝状構造には少なくとも3つのリシンが存在することが好ましい(n=3)。7つのリシンが存在することが最も好ましい(n=7)。所望であれば、8つ以上、例えば最大15(n=15)のリシンが存在し得る。
【0114】
本発明の一実施形態では、基Pは存在しない(n'=0)。この実施形態では、樹枝状構造の末端基はリシン基である。この実施形態は、リシン基がポリマーに抗凝固効果を与えるという利点を有する。あるいはまた、1つ以上の基Pが存在する。典型的に、樹枝状構造の末端リシンはそれぞれ、2つのP基に結合している(n'=n+1)。
【0115】
基Pは、同じかまたは異なり、ヘパリン、アミノ酸およびペプチドから選択される。Pはそれぞれ同じであることが好ましい。基Pがペプチドの場合、典型的に、最大30、例えば最大25、20または16のアミノ酸を含む。基Pとして使用するのに適切なペプチドの例は、血液適合性抗凝固ペプチドである。当該分野で公知の任意の血液適合性抗凝固ペプチドが使用できるが、具体的な例としてRGD(Arg-Gly-Asp)、GRGDG(Gly-Arg-Gly-Asp-Gly)およびヘパリンが挙げられる。KRAD-7ペプチド(7KRADユニット、すなわち(Lys-Arg-Ala-Asp)7を含む)も使用できる。
【0116】
基Pとして使用できる他のペプチドとしては、成長ペプチドおよび走化性ペプチド、例えば、鎖延長剤に関連して以下に記載するものがある。成長ペプチドの具体的な例は、VEGF(血管内皮成長因子)、またはIGF-1およびIGF-2を含むIGF(インスリン様成長因子)に由来するものである。このようなペプチドは、任意に、例えば-NH2末端がメチル基等で保護された保護形態で存在し得る。
【0117】
基Pとして存在する任意のアミノ酸またはペプチドは、任意に、通常の(かつ自然に生じる)L型ではなく、そのD型で存在し得る。この実施形態で、Pがペプチドである場合、ペプチドの各アミノ酸はD型を有する。従って、例えば、PがRGDである場合、各アミノ酸R、GおよびDは、D型で存在する。この実施形態は、D型アミノ酸またはペプチドが、L型アミノ酸またはペプチドよりも一般的に劣化に対してより耐性であり、基PがD型である式(I)のセグメントを含むコポリマーはL型が使われている対応するコポリマーよりも開存率が高い可能性があるという利点を有する。この実施形態では、任意のペプチド中のアミノ酸の順序は、逆にはならない。従って、ペプチドがRGDの場合、D型ペプチドが使われようとL型ペプチドが使われようと、リシンデンドリマーに結合しているのはいずれにせよRアミノ酸である。
【0118】
式(I)のセグメントのスペーサーは脂肪酸、不活性ペプチドまたはPEGである。スペーサーの構造は特に限定されない。不活性ペプチドは、2つ以上の一連の不活性アミノ酸である(ここで、不活性アミノ酸は[Al]に関連して上記定義した通りである)。好ましい不活性アミノ酸はグリシンである。好ましいスペーサーは脂肪酸およびPEGである。適切な脂肪酸の例としては、C4〜C18脂肪酸(例えば、ブタン酸およびヘキサン酸)が挙げられる。
【0119】
スペーサーの長さを変えると、セグメントとポリマー骨格との結合点が変わるため、構造の安定性が変化する。スペーサーの長さを長くすることで、高い安定性が得られる。
【0120】
各ペンダント基セグメントの官能部分は、ペンダントアームを介してポリマー骨格に結合できる。従って、ペンダントアームは、ペンダント基セグメントの官能部分をポリウレタンポリマーの骨格に結合させる基である。典型的に、ペンダント基は、最終的なポリマーに官能性を与えない。
【0121】
ペンダントアームは、典型的に、脂肪族基である。例えば、ペンダントアームは、線状または分岐状の炭化水素基であり得、環状部分を含み得る。不飽和であっても飽和であってもよい。炭化水素鎖中の1つ以上の隣接しない飽和炭素原子は、シリコン、酸素、硫黄または窒素原子、好ましくはシリコンまたは窒素原子で置き換えられてもよい。典型的に、ペンダントアームは3または4〜24の炭素原子、例えば4〜18または4〜10の炭素原子を含む。ペンダントアームは、飽和脂肪族基であることが好ましい。ペンダントアームは、線状または分岐状で、環状部分を含み得、3または4〜24の炭素原子を含み、任意にSi、N、OおよびS、好ましくはSiおよびNから選択される1、2または3つのヘテロ原子を炭化水素鎖中に有する飽和脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
【0122】
ペンダントアームは、典型的に、エーテル基を含まない。なぜなら、これらはポリマーの酸化をin vivoでもたらし得るからである。従って、ペンダント基セグメントは、典型的に、エーテル基を含まない。
【0123】
ペンダントアームは、置換されないか、典型的に1〜6、好ましくは1〜4の置換基で置換され得る。置換基は、炭化水素鎖の線状、分岐状もしくは環状部分の上、または鎖に存在する窒素もしくはシリコン原子上に存在し得る。典型的に、置換基は、ハロゲン原子、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基、ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、C1-4アルキル基から選択される)から選択される。好ましい置換基としては、メチル、エチル、メトキシ、メチルチオおよびジメチルアミノ基が挙げられる。ハロゲン置換基、特にフッ素も好ましい置換基である。フッ素置換基は、ポリマーの強度を改善するとともに、抗炎症特性を与える。
【0124】
ペンダントアームは、置換基としてまたはペンダントアームの主鎖の一部としてペプチドまたはポリペプチドを取り込み得る。適切なペプチドの例は、血液適合性抗凝固ペプチドである。当該分野で公知の任意の血液適合性抗凝固ペプチドが使用できるが、具合的な例としてRGD(Arg-Gly-Asp)、リシンおよびリシンのマルチペプチド(例えば、最大10、例えば3つのリシンユニットを含むポリペプチド)が挙げられる。KRAD-7ペプチド(7つのKRADユニット、すなわち(Lys-Arg-Ala-Asp)7を含む)も使用できる。ペンダントアームに取り込むことのできる他のペプチドは、成長ペプチドおよび走化性ペプチドであり、例えば鎖延長剤に関連して以下に記載するものである。
【0125】
ペンダントアームの長さは、最終的なコポリマーの特性を制御するために変えることができる。例えば、より短いペンダントアームを使用すれば、ペンダント基の官能部分がコポリマー鎖に物理的により近くなる。ペンダント基セグメントの官能部分が、カゴ型シルセスキオキサンまたは部分的カゴ構造等の大きい基である場合、コポリマーはより硬くなる。
【0126】
ペンダントアームは、コポリマー鎖中の1もしくは2つ(または任意に3つ)の隣接するセグメントに(例えば、尿素またはウレタン基を介して)結合している。ペンダントアームは、炭化水素の線状、分岐上または環状部分を含むペンダントアームの任意の部分を介して、隣接するセグメントに結合し得る。窒素原子は、炭化水素鎖の炭素原子の1つを置き換える場合、この窒素原子は尿素またはウレタン結合基の一部を形成し得る。
【0127】
ペンダントアームは、隣接するセグメントに(例えば、尿素/ウレタン基を介して)一次的または二次的に結合し得る。一次結合は、(例えば、尿素またはウレタン基を介して)隣接するセグメントが、ペンダントアーム中の一次炭素原子に結合したものであり、二次結合はペンダントアーム中の二次炭素原子に結合したものである。シルセスキオキサンまたは他のペンダント基セグメントが、2つの隣接するセグメントに(両方とも、一次結合を介して)結合すれば、より硬いコポリマーが形成できる。
【0128】
本発明のコポリマーは、1種類のペンダント基セグメントを含み得るか、または2つ以上の異なる種類のペンダント基セグメントを含み得る。例えば、ポリマーは、2つ以上の異なるシルセスキオキサンセグメントを含み得る。この実施形態は、ポリマーが改善された抗血小板特性を示すため、特に利点がある。あるいはまた、コポリマーは、例えば、シルセスキオキサンセグメント、ならびにホスホリルコリンセグメント、および/またはジフルオロメチルもしくはトリフルオロメチル含有セグメント、および/またはヘパリン様セグメント、および/または式(I)の基を含むセグメントを含み得る。ペンダント基の代替的な組合せも可能である。
【0129】
本発明のコポリマーは、1つ以上のポリオールセグメントを含む。好ましいポリオールセグメントはポリカーボネート、ポリエーテル、ポリエステルまたはポリブタジエンポリオールである。ポリカーボネートセグメントは、in vivoでの劣化の程度が低く高い生体適合性を有するため医療的用途に好ましい。ポリエーテルは特に非医療的用途のために有用である。適切なポリオールセグメントは、移植可能デバイスまたは他のデバイスとして使用するポリウレタンの作製のために当該分野において公知のものである。
【0130】
ポリオールセグメントはそれぞれ、典型的に、1000〜3000ダルトン、好ましくは1500〜2500ダルトンの分子量を有する。コポリマーを移植可能デバイスとして使用する場合には2000ダルトンの領域の分子量が好ましいが、コポリマーが異なる最終用途を有する場合には別の分子量も想定され得る。
【0131】
2つ以上のポリオールセグメントが本発明のコポリマーに存在する場合、このようなセグメントはそれぞれ同じまたは異なる。典型的に、各ポリオールセグメントは、1種類のポリマーしか含まない。従って、ポリマーは、典型的に、例えば、ポリカーボネートセグメントだけ、またはポリエーテルセグメントだけしか含まない。本発明のコポリマーに存在する各ポリオールセグメントの長さは、典型的に互いと異なる。
【0132】
典型的に、本発明のコポリマーは、ペンダント基セグメントよりも多くポリオールセグメントを含む。従って、ペンダント基セグメント:ポリオールセグメントの比率は1:1未満である。好ましいコポリマーは、ペンダント基セグメント:ポリオールセグメントの比率が1:10以下、より好ましくは1:25以下、特に1:50以下の比率である。
【0133】
さらに、本発明のコポリマーは、ペンダントシロキサンセグメントより多くのポリオールセグメントを含み得る。従って、ペンダントシロキサンセグメント:ポリオールセグメントの比率は1:1未満である。好ましいコポリマーは、ペンダントシロキサンセグメント:ポリオールセグメントの比率が1:10以下、より好ましくは1:25以下、特に1:50以下の比率である。
【0134】
本発明のポリマーは、例えば、ポリウレタン、PTFE、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレンおよびナイロンを含む。作製できるポリマーの種類は特に限定されないが、典型的に移植可能デバイスの製造に適したポリマーである。少なくとも1つの理由として堅牢性および機械的強度が優れているためポリウレタンが好ましい。
【0135】
ポリマーがポリウレタンである場合、本発明のコポリマーの各セグメントは、尿素またはウレタン結合により1つ以上の隣接するセグメントに結合しており、これは典型的に以下の式を有する
【化22】

(式中、Xはそれぞれ同じかまたは異なり、窒素または酸素原子であり、Aはそれぞれ同じかまたは異なり、芳香族または脂肪族部分である)。Nはそれぞれ、記載している-A-および-COX-基に加えて1つの別の基に結合している。この別の基とは、典型的に水素原子である。
【0136】
基Aは、典型的に、ジイソシアネート化合物から誘導される。従って、好ましい基Aは、上記式中の基-NC(O)-X-がそれぞれイソシアネート基で置換された場合に利用し易いジイソシアネート化合物を形成するものである。
【0137】
典型的に、Aが脂肪族部分である場合、Aは置換されていない線状または分岐状C1-C12(好ましくはC3-C8)アルキレン部分、C3-C8シクロアルキレン部分、または式-(C3-C8シクロアルキル)-(C1-C2アルキレン)-(C3-C8シクロアルキル)-の基である。好ましいC3-C8シクロアルキレン部分としては、シクロへキシレンおよびシクロペンチレンが挙げられる。式-(C3-C8シクロアルキル)-(C1-C2アルキレン)-(C3-C8シクロアルキル)-の好ましい基としては、メチレン-ビスシクロペンチレンおよびメチレン-ビスシクロへキシレンが挙げられる。適切な脂肪族基Aの例としては、ブチレン、2-メチルペンチレン、ヘキシレン、オクチレン、およびメチレン-ビスシクロへキシレン部分、特にメチレン-ビスシクロヘキシレンが挙げられる。
【0138】
典型的に、Aが芳香族部分である場合、Aはフェニレン、ナフチレンまたはメチレン-ビスフェニレン基である(これらは、それぞれ置換されていないか、またはハロゲン原子、C1-C4アルキル、C1-C4アルコキシおよびC1-C4アルキルチオ基ならびに式-NR1R2の基(式中、R1およびR2は同じかまたは異なり、水素原子およびC1-C4アルキル基から選択される)から選択される1、2または3つの置換基で置換される)。好ましい置換基としては、メチル、エチル、メトキシ、メチルチオ、アミノおよびジメチルアミノ基、特にメチルが挙げられる。Aは、芳香族環または置換基のいずれかを介して基-N-C(O)-X-に結合し得る。
【0139】
Aが芳香族部分である場合、Aはフェニレン、メチルフェニレン、ジメチルフェニレン、ナフチレン、メチレン-ビスフェニレン、1,3-ビス-(1-メチルエチル)ベンゼンまたはジメトキシベンジジニル部分、特にメチルフェニレン、1,3-ビス-(1-メチルエチル)ベンゼンまたはジメトキシベンジジニル部分であることが好ましい。
【0140】
Aは芳香族部分であることが好ましい。なぜなら、得られるコポリマーが、対応する位置において脂肪族部分を含むコポリマーよりも、酸化に対してつまり生分解に対して典型的により耐性だからである。特に好ましい基Aは、メチレン-ビスフェニレンである。
【0141】
本発明のコポリマーは、典型的に、1つ以上の鎖延長剤セグメントを含み、この鎖延長剤はそれぞれ1つ以上の(同じまたは異なる)別のセグメントにウレタンまたは尿素結合を介して上述したように結合している。従って、鎖延長剤セグメントは、問題の鎖延長剤セグメントが1または2つのいずれかの別のセグメントに結合しているかに応じて、コポリマー構造内またはコポリマー鎖の端部のいずれかに存在し得る。
【0142】
鎖延長剤セグメントは、ポリウレタン基の作製に使用される任意の一般的に公知の鎖延長剤であり得る。従って、例えば、鎖延長剤は、エチレン基等の単純なアルキレン基であり得る。しかし、アミノ酸、ペプチドおよびポリペプチド等のより複雑な鎖延長剤も使用できる。本発明に使用するのに好ましい鎖延長剤は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチドおよびC1-C6脂肪族部分である。
【0143】
アミノ酸、ペプチドおよびポリペプチド、特にポリペプチドを鎖延長剤セグメントとして使用することにより、コポリマー鎖に官能性が導入できるようになる。例えば、ポリペプチドは、抗血栓形成を増強させるポリペプチドであるRGD(Arg-Gly-Asp)であり得る。このようなポリペプチドをコポリマー鎖に導入することで、本質的に高い生体適合性を有する最終的なポリウレタンが得られる。従って、これは、ポリマーの形成後にRGD等の基をポリマーに結合させる必要性を無くす。従って、コポリマーの機械的特性を変えることなく抗血栓形成ポリマーが作製できる。
【0144】
このようにして本発明のコポリマーに導入できるポリペプチドとしては、抗凝固ペプチド、成長ペプチドまたは走化性ペプチド、特にヘパリンおよび/またはRDG(Arg-Gly-Asp)が挙げられる。使用できる抗凝固ペプチドの例としては、当該分野で公知の任意の血液適合性抗凝固ペプチドが挙げられる。適切な抗凝固ペプチドの例としては、RGD、リシンおよびリシンのマルチペプチド(例えば、最大10、例えば3つのリシンユニットを含むポリペプチド)が挙げられる。KRAD-7ペプチド(7つのKRADユニットを含む)も使用できる。
【0145】
本発明のコポリマー中での上記したような抗凝固ペプチドの存在は、このようなポリマーから形成された人工器官が患者に挿入された場合に抗凝固効果が即効性を有するという利点を有する。これは、播種用細胞でのポリマーの裏打ちとは対照的である。なぜなら、播種の間にポリマー表面に接着する比較的少ない数の内皮細胞から完全な内皮層が形成するにはいくらかの時間がかかるからである。
【0146】
鎖延長剤セグメントとして使用するのに適した成長ペプチドの例としては、内皮層の成長を促す当該分野で公知の任意のペプチドが挙げられる。典型的な成長ペプチドは、Arg-Gly-Asp、例えばMohri, Hらに記載のフィブロネクチン断片1372-1382および1377-1388(Peptides.1995, 16:263頁)、例えばWoods, A.らに記載のフィブロネクチン接着促進ペプチド(Mol. Biol. Cell, 1993;4:605頁)、例えばHaverstick, DM.らに記載のGly-Arg-Gly-Asp(Blood;1985;66:946頁)である。
【0147】
適切な走化性ペプチドの例は、それらが結合している表面(血管移植片の場合には移植片の内腔)に内皮細胞を引き付けるものである。N-ホルミルペプチドは、細胞の移動を化学誘引ソースに方向付ける化学誘引物質を分泌するため、これらの目的に適している。フィブロネクチン断片および関連ペプチドも使用できる。これらのタンパク質は、移植片内腔および他の細胞への内皮細胞の接着を促す。これらはまた、血栓形成を安定化させる助けにもなる。走化性タンパク質に関するさらなる詳細は、Freer R.J.ら 1979; Peptides, structure and biological function; Proceedings of the sixth American peptide symposium; Gross, EおよびMeienhofer, M.編:749、ならびにProcter, R.A; Rev. Infect. Dis. 1987;9:317頁に記載されている。
【0148】
NO放出剤も、例えば、架橋セグメントとして、ペンダントアームの一部として、または式(I)の基を含むセグメント中の基Pとしてポリマーに取り入れられ得る(Zhang Hら, Biomaterials 2002 Mar; 23(6):1485-94、参照により本明細書に援用する)。NO放出剤の例としては、非線状光学物質であるディスパースレッド(disperse red)、ディスパースイエロー(disperse yellow)およびディスパースオレンジ(disperse orange)の群(group)が挙げられる。具体的な例は、ディスパースレッド1および19、ディスパースイエロー3および7、ならびにディスパースオレンジ13である。
【0149】
本発明のコポリマーは、1つ以上の異なる種類の鎖延長剤セグメントを含み得る。例えば、コポリマーは、上述したようなC1-C6脂肪族部分、好ましくはエチレンである1つ以上の鎖延長剤、およびアミノ酸、ペプチドまたはポリペプチド、好ましくはポリペプチドである1つ以上の鎖延長剤セグメントを含み得る。
【0150】
本発明の好ましいコポリマーは、100%伸び時の引張応力の値が少なくとも7、好ましくは少なくとも8 N/mm2(10 mm/分の置換速度でのShimadzu機器上でのASTM D1708により測定)である。300%伸び時では、引張応力は少なくとも15、好ましくは少なくとも16、より好ましくは少なくとも17 N/mm2(同じく、10 mm/分の置換速度でのShimadzu機器上でのASTM D1708により測定)である。コポリマーは、少なくとも90、好ましくは少なくとも93 kN/m(染料「C」試料形状を用いて、500 mm/分の速度でShimadzu機器上で行ったASTM D624により測定)の引裂き強度を有することが好ましい。
【0151】
本発明のコポリマーは、典型的に、以下から誘導されるユニットを含む
(a)以下から選択される1つ以上のペンダント基コンポーネント
(i)シロキサンコンポーネント;
(ii)ホスホリルコリンまたはその誘導体もしくは類似体を含むコンポーネント;
(iii)ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基を含むコンポーネント;
(iv)式(XII)の基を含むヘパリン様コンポーネント
【化23】

(式中、Dは脂肪族または芳香族基であり、Ar-SO3-は1つ以上の結合したアリールおよび/またはヘテロアリール基を含み、少なくとも1つのアリールおよび/またはヘテロアリール基はSO3-置換基を有する);ならびに
(v)式(I)の基を含むコンポーネント
【化24】

(式中:
−[A1]は不活性アミノ酸;
−xは0、1、2または3;
−[スペーサー]は脂肪酸、アミノ酸、ペプチドまたはPEG;
−[P]n'-[Lys]nは、n個のリシン基から形成され、n'個の基Pで終結する樹枝状構造;
−nは、1〜15
−n'は0、または最大16までの整数;および
−pはそれぞれ同じかまたは異なり、ヘパリン、アミノ酸またはペプチドである);
(b)ポリオール;
(c)2つ以上のイソシアネート基を有する芳香族化合物;ならびに任意に
(d)アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、およびC1-C6脂肪族基から選択される1つ以上の鎖延長剤(それぞれ一次および二次アミン、ヒドロキシルならびにカルボン酸基から選択される少なくとも1つの置換基を有する)。
【0152】
好適な実施形態では、本発明のコポリマーは、以下から誘導されたユニットを含む
(a)シロキサンコンポーネント;
(b)ポリオール;
(c)2つのイソシアネート基を有する芳香族化合物;ならびに任意に
(d)アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、およびC1-C6脂肪族基から選択される1つ以上の鎖延長剤(それぞれ一次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つの置換基を有する)。
【0153】
ペンダント基(またはシロキサン)コンポーネントは、一次もしくは二次アミン、ヒドロキシルまたはカルボン酸基を、ペンダント基(またはシロキサン)セグメントがコポリマー骨格中の尿素またはウレタン基に結合する位置に有する上記定義したペンダント基(またはシロキサン)セグメントである。
【0154】
本発明のコポリマーは、標準的な重合技術により作製され得る。ペンダント基セグメントは、重合可能基に結合した1つ以上のペンダント基セグメントを重合混合物に含むことにより取り入れることができる。本発明のコポリマーの作製は、ポリウレタンポリマーの作製に関連して以下により詳細に記載する。当業者は、異なる種類のポリマーを作製するために、このプロセスにおいて必要な変更を行うことができるであろう。
【0155】
ポリウレタンコポリマーに直接結合した線状シロキサンを含む本発明のコポリマーは、予め調製したポリオールポリウレタンと、NaH等の強塩基とを反応させることにより作製できる。これにより、以下のスキームIに示すように、ポリウレタン基の窒素原子上に陰イオンが形成される:
スキームI
【化25】

作製された陰イオンは、典型的な求核剤として作用し、シロキサンと反応させてシロキサンのシリコン原子を窒素原子に結合させることができる。例えば、ヘキサメチルシクロトリシロキサン等の環状シロキサンと、陰イオンとを、スキームIIに示すように開環反応で反応させることができる。
【0156】
スキームII
【化26】

(式中、PUはポリオールポリウレタンである)。
【0157】
鎖終結剤も、典型的に反応混合物(例えば、(CH3)3Cl)に添加される。
【0158】
反応は、線状シロキサン試薬でも行うことができる。このような線状シロキサン試薬は、典型的に、以下の式のものである
【化27】

(式中、Rは上記定義した通りであり、tはシロキサンポリマー中のシロキサンユニットの数に対応した整数である)。tは、典型的に2以上、例えば2〜50、または2〜30である。線状シロキサン試薬の例は、(CH3)3Si-O-Si(CH3)3である。
【0159】
環状および線状シロキサン試薬は、典型的に、市販されているかまたは周知の技術を用いて作製できる。
【0160】
本発明のコポリマーを作製するための代替的なプロセスは、任意の順番で以下を重合させることを含むプロセスである、
(i)一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つの基にそれぞれが結合した1つ以上のペンダント基セグメント;
(ii)ポリオール;
(iii)2つ以上のイソシアネート基を有する芳香族化合物;ならびに任意に
(iv)一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つの置換基をそれぞれ有するアミノ酸、ペプチド、ポリペプチドおよびC1-C6脂肪族基から選択される1つ以上の鎖延長剤。
【0161】
コンポーネント(i)および(iv)はそれぞれ、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つの重合可能基を含む。好ましい重合可能基は、一次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基、特に一次アミンおよびヒドロキシル基である。
【0162】
ペンダント基セグメントがコポリマー鎖の端部に存在することを意図する場合、コンポーネント(i)は、典型的に、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される1つの基しか持たない。ペンダント基セグメントが、コポリマー鎖の端部以外に存在することが意図される場合、コンポーネント(i)は、典型的に、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも2つの基を有する。
【0163】
同様に、鎖延長剤セグメントが、コポリマー鎖の端部にあることが意図される場合、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される1つの置換基しか鎖延長剤コンポーネント(iv)上に存在しない。さもなければ、これらのセグメントがコポリマー鎖の端部以外にあることが意図される場合、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも2つの置換基が存在する。
【0164】
コポリマー鎖に架橋を導入することが望ましい場合、コンポーネント(i)は、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも3つの基を有し得る。同様に、ポリオールおよび/または鎖延長剤コンポーネント(ii)および(iv)は、3つ以上の重合可能基(ヒドロキシル、一次または二次アミンまたはカルボン酸基)を担持し得る。3つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネートコンポーネント(iii)を用いることでも架橋は導入され得る。
【0165】
1つまたは複数のコンポーネント(i)において、一次もしくは二次アミン、ヒドロキシルまたはカルボン酸基は、ペンダント基セグメント上の、最終的なコポリマーにおいてペンダント基セグメントが尿素またはウレタン結合に結合する位置に存在する。
【0166】
作製するコポリマーが、1つ以上のシロキサンセグメントを含む場合、上記コンポーネント(i)は、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つの基を有するシロキサンセグメントを含む。好ましいシロキサンコンポーネント(i)は、式S-Y'Lx(例えば、S-Y'L2)(式中、Sは上記定義した通り、Y'は少なくとも1つの置換基L(Lはそれぞれ同じかまたは異なり、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される)を有する脂肪族基であり、xは少なくとも1(例えば、1、2または3)である)。
【0167】
シロキサンセグメントが、コポリマー鎖の端部に存在することが意図される場合、コンポーネント(i)の基Y'は1つの置換基Lを有する(x=1)。シロキサンセグメントが、コポリマー鎖の端部以外に存在することが意図される場合、コンポーネント(i)の基Y'は、少なくとも2つの置換基Lを有する(x≧2)。架橋をコポリマー鎖に導入することが望ましい場合、シルセスキオキサンコンポーネント(i)の基Y'は、3つ以上の置換基L(x≧3)を担持し得る。
【0168】
シロキサンコンポーネント(i)の基Sは上記定義されている。従って、基Sは線状シロキサンまたはカゴ型シルセスキオキサンまたは部分的カゴ構造であり得る。さらに、基Y'は、典型的に、2つの置換基Lに結合した上記定義された基Yである。
【0169】
作製するコポリマーがホスホリルコリンまたはその誘導体もしくは類似体を含む1つ以上のセグメントを含む場合、上記コンポーネント(i)は、ホスホリルコリンまたはその誘導体もしくは類似体を含み、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つまたは3つ)の基を有するセグメントを含む。
【0170】
作製するコポリマーがジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基を含む1つ以上のセグメントを含む場合、上記コンポーネント(i)は、ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基を含み、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つまたは少なくとも3つ)の基を有するセグメントを含む。
【0171】
作製するコポリマーが、式(XII)のヘパリン様基を含む1つ以上のセグメントを含む場合、上記コンポーネント(i)は、式(XII)の基を含み、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つまたは少なくとも3つ)の基を有するセグメントを含む。
【0172】
作製するコポリマーが式(I)の基を含む1つ以上のセグメントを含む場合、上記コンポーネント(i)は、式(I)の基を含み、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つ(例えば、少なくとも2つまたは少なくとも3つ)の基を有するセグメントを含む。一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される基は、典型的に、スペーサーの両側にあるリシン基上に存在する遊離-NH2基である。
【0173】
重合の間、アミノ酸またはペプチド基Pは任意に保護されている。例えば、保護基は、アミノ酸またはペプチドの遊離NH2末端に適応され得る。任意の適した保護戦略が使用できる
【0174】
ポリオールコンポーネント(ii)は、典型的に、上述したポリオールセグメントであり、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する。あるいはまた、ポリオールコンポーネント(ii)は、1つ以上の別のセグメント(それぞれ同じかまたは異なり得る)に結合したポリオール鎖を含む。典型的に、これらのセグメントはそれぞれ、尿素またはウレタン基を介して結合している。
【0175】
鎖延長剤コンポーネント(iv)は、典型的に、鎖延長剤セグメントの一端または両端がヒドロキシル、一次アミンまたはカルボン酸基に結合した、上述した鎖延長剤セグメントである。あるいはまた、鎖延長剤コンポーネント(iv)は、1つ以上の別のセグメント(それぞれ同じであるか異なる)に結合した鎖延長剤セグメントを含む。典型的に、これらのセグメントはそれぞれ尿素またはウレタン基を介して結合している。
【0176】
コンポーネント(i)、(ii)および(iv)の上記定義は、2つの隣接するヒドロキシル基を有する化合物を包含する。このような隣接するヒドロキシル基は、代わりにエポキシド基を形成し得ることに留意されたい。従って、エポキシド基を置換基として有するこのようなコンポーネントも本発明の範囲内にある。反応前に、エポキシド基を開環して対応するジオールを得るべきである。
【0177】
イソシアネートコンポーネント(iii)は、典型的に、上述したように2つ以上のイソシアネート基に結合した部分Aである。典型的に、イソシアネートコンポーネント(iii)は、2つのイソシアネート基を有する(すなわち、ジイソシアネートである)。コンポーネント(iii)として使用するのに適切なジイソシアネート化合物は、ポリウレタンの製造において一般的に使用されるものを含む市販されているジイソシアネートである。
【0178】
本発明のコポリマーは、ポリオールコンポーネント(ii)とコンポーネント(i)との溶融混合物を形成し、その後、イソシアネートコンポーネント(iii)を添加することにより合成され得る。この種の方法は、典型的にコンポーネント(i)がシロキサンの場合に使われる。重合は、典型的に50〜150℃にて約1〜3時間行われる。
【0179】
あるいはまた、コンポーネント(i)、(ii)および(iii)を有機溶媒(例えば、ジメチルアセトアミド(DMAC)またはTHF等の非プロトン性溶媒)に溶解または懸濁させる溶液重合を行ってもよい。コンポーネント(i)が、ホスホリルコリンまたはその誘導体を含むセグメントを含む場合、溶媒はDMSOであり得る。
【0180】
鎖延長剤コンポーネントを使用する場合、これは典型的に上記ステップが完了してから添加する。例えば、シロキサンとのポリオールのプレポリマーを、ジメチルアセトアミド(DMAC)等の適切な非プロトン性溶媒に溶解し、鎖延長剤コンポーネントの溶液(典型的に、同じく同じ溶媒に溶解されているもの)を得られた溶液に添加してもよい。次いで、鎖延長剤を、残っているイソシアネートコンポーネントと反応させることによりコポリマー鎖に取り入れる。典型的に、ブタノール等のアルコールを添加して、反応を終了する。
【0181】
所望であれば、コンポーネントの添加の順番は代替的に採用できる。例えば、コンポーネント(ii)および(iii)を最初に混合して、ポリオールおよびコンポーネント(i)(例えば、シロキサン)のプレポリマーを形成し、任意に鎖延長剤コンポーネントをその後添加してもよい。2つ以上のコンポーネント(i)を使用する場合、コンポーネントは実質的に同時にまたは別々に重合混合物に添加され得る。例えば、シロキサンコンポーネントは、ポリオールおよびイソシアネートと重合され、式(I)のコンポーネントを後の段階、例えば、鎖延長剤コンポーネントと同時に添加する。
【0182】
コンポーネント(i)がホスホリルコリンまたはその誘導体を含むセグメントを含む場合、ホスホリルコリン含有コンポーネントが、典型的に、ポリオールおよびイソシアネートの初期プレポリマー(そして任意に別のコンポーネント(i))が形成された後に添加される。この添加の順番は、ホスホリルコリン誘導体が式(V)(式中Bはアルキレン基等の脂肪族基)のものである場合に特に好ましい。これは、このようなコンポーネントが扱いにくい場合もあるからである。ヘテロアリール基を含む基B(特に、上記式(VI)の基B)を使用する利点の1つは、ホスホリルコリンを含むコンポーネントが扱い易くなることである。
【0183】
多数のシロキサンコンポーネント(i)が市販されている。標準的な合成技術を使用して(例えば、市販されているシロキサンコンポーネントを改作して)代替的なシロキサンコンポーネントを作製してもよい。
【0184】
本発明のコポリマーを作製するために出発材料として使用できるシルセスキオキサンコンポーネントの例として、以下のものが挙げられる。
1,3,5,7,9,11-オクタイソブチルテトラシクロ[7.3.3.15,11]オクタシロキサン-エンド-3,7,ジオール、
1,3,5,7,9,11,13,15-オクタキス(ジメチルシリルオキシ)ペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、
3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピルメタクリレート、
1,3,5,7,9,11,13-ヘプタシクロペンチル-15-グリシジルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]-オクタシロキサン、
3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]-オクタシロキサン-1-オール、
(グリシドキシプロピルジメチルシリルオキシ)へプタシクロペンチルペンタシクロオクタシロキサン、
1-[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]-3,5,7,9,11,13,15-イソブチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン(エポキシシクロヘキシルイソブチル-POSS)、
エポキシシクロヘキシルエチル-POSS、
1-(2-トランス-シクロヘキサンジオール)エチル-3,5,7,9,11,13,15-イソブチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン(トランス-シクロヘキサンジオールイソブチル-POSS)1-(4-ビニルフェニル)-3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、
1-ビニル-3,5,7,11,13,15-イソブチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]-オクタシロキサン、
1-(2,3-プロパンジオール)プロポキシ-3,5,7,9,11,13,15-イソブチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、
1-[3-(2-アミノエチル)アミノ]プロピル-3,5,7,9,11,13,15-イソブチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、
ドデカフェニル-POSS。
【0185】
さらなる例は、図1および2にも示している。これらのコンポーネントの一部は、シルセスキオキサンコンポーネント上に適切な重合可能基を得るために予め官能化しなければならない。例えば、エポキシド環を含む化合物を典型的に開環して、重合反応の一部をなし得るジオールを得る。このような前官能基化反応は、当業者に周知である。
【0186】
前官能基化無しに、または簡単なエポキシド開環の後に使用できる化合物の例として以下のものが挙げられる
1,3,5,7,9,11-オクタイソブチルテトラシクロ[7.3.3.15,11]オクタシロキサン-エンド-3,7,ジオール、
3-(3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン-1-イル)プロピルメタクリレート、
1,3,5,7,9,11,13-ヘプタシクロペンチル-15-グリシジルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]-オクタシロキサン、
3,5,7,9,11,13,15-ヘプタシクロペンチルペンタシクロ[9.5.1.13,9.15,15.17,13]-オクタシロキサン-1-オール、
(グリシドキシプロピルジメチルシリルオキシ)へプタシクロペンチルペンタシクロオクタシロキサン、
1-[2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル]-3,5,7,9,11,13,15-イソブチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン(エポキシシクロヘキシルイソブチル-POSS)、
エポキシシクロヘキシルエチル-POSS、
1-(2-トランス-シクロヘキサンジオール)エチル-3,5,7,9,11,13,15-イソブチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15.15.17,13]オクタシロキサン(トランス-シクロヘキサンジオールイソブチル-POSS)
1-(2,3-プロパンジオール)プロポキシ-3,5,7,9,11,13,15-イソブチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン、
1-[3-(2-アミノエチル)アミノ]プロピル-3,5,7,9,11,13,15-イソブチルペンタシクロ-[9.5.1.13,9.15,15.17,13]オクタシロキサン。
【0187】
本発明のコポリマーを作製するための出発材料として使用できる部分的カゴ型シルセスキオキサンコンポーネントの例としては、以下のものが挙げられる
1,3,5,7,9,11,14-ヘプタシクロペンチルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン-エンド-3,7,14-トリオール、
1,3,5,7,9,11,14-ヘプタシクロヘキシルトリシクロ[7.3.3.15,11]ヘプタシロキサン-3,7,14-トリオール、
(-)-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)アデノシン
(+)-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)シチジン。
【0188】
さらなる例は図3および4に示している。
【0189】
ホスホリルコリンならびにその誘導体および類似体を含む様々なコンポーネントも市販されているか、または標準的な合成技術を採用して作製できる。式(V)のホスホリルコリン誘導体(式中、Bはアルキレン基等の脂肪族基)は、以下のスキーム(III)に従って作製できる。
【0190】
スキームIII
【化28】

このスキームは、コリン酢酸ジクロロホスフェート(choline acetate dichlorophosphate)(X)を形成することによるホスホリルコリンの官能基化を示す。ここで、化合物(X)とジオールとを反応させてホスホリルコリン誘導体(XI)を形成するが、遊離ヒドロキシル、アミンまたはカルボン酸基を含むポリマーまたは他の化合物との反応も想定されている。
【0191】
ホスホリルコリン、ならびにその誘導体および類似体を含むコンポーネントの市販されている例としては以下のものが挙げられる
2'-デオキシアデノシン-5'-一リン酸、
2'-デオキシシチジン-5'-一リン酸、
2'-デオキシグアノシン-5'-一リン酸塩、
シチジン5'-三リン酸塩
アデノシン2',3'-環状一リン酸塩、
(-)-アデノシン3',5'-環状一リン酸塩、
アデノシン5'-三リン酸塩、
チモールフタレイン一リン酸。
【0192】
ジフルオロメチルまたはトリフルオロメチル基を含むコンポーネントは、市販されているか、または標準的な合成技術により作製できる。例えば、離脱基の置換により、トリフルオロメチル官能基を化合物に添加してもよい。
【0193】
式(XII)のヘパリン様基を含むコンポーネントは、市販されているか、または標準的な合成技術により作製され得る。ヘパリン様基を含むコンポーネントの市販されている例としては、酸性黄化合物および他の同様の染料が挙げられる。
【0194】
式(I)のコンポーネントは、標準的固相方法により、例えばリンクアシッド(Rink Acid)樹脂上で作製できる(固相ペプチド合成H. Rink (1978) Tetrahedron Lett., 28, 3787)。式(I)のコンポーネントの樹枝状構造は、抗体作製に照らして既に記載されている(J.P. Tam, Proc. Natl. Sci. USA, 1988, 85, 5409)。
【0195】
所望であれば、本発明のポリマーは、生体適合性を高めるために細胞で裏打ちされ得る。本発明で使用できる細胞としては、内皮細胞および微小血管細胞、好ましくは内皮細胞が挙げられる。適切な細胞の例としては、動物内皮細胞等の動物細胞、あるいはヒト静脈(典型的に伏在静脈もしくは臍静脈)またはヒト脂肪組織から回収した細胞が挙げられる。細胞は、Jaffeらに記載されるような標準的な技術を使用して回収する(J. Clin. Invest. 1973;52;2745-56)。このような細胞を血管移植片の内面に播種することで、完全な内皮の成長が促されることが知られている。これは、移植片の表面に付着している粒子に対する自然な防御を提供し、開存率を高める。典型的に、使用する細胞は、拒絶を回避するために患者自身の組織から誘導される。
【0196】
ポリマーを細胞で裏打ちするプロセスは、当該分野で公知の任意の技術により行うことができる。細胞は、典型的に、Zillaらに記載されているような任意の標準的な培養技術により培養する(J. Vasc. Surg. 1990;12:180-9頁)。細胞を、典型的に組織培養培地である培地に懸濁する。組織培養培地中の細胞の濃度は、好ましくは1〜50×105細胞/cm2、好ましくは2〜24×105細胞/cm2、より好ましくは2〜16×105細胞/cm2である。
【0197】
次に、細胞が懸濁した培地を、本発明のコポリマーと接触させる。典型的に、培地は、コポリマーを含むチャンバに挿入されて0.1〜10時間、好ましくは0.5〜6時間インキュベートされるか、または培地を0.05〜10時間、好ましくは0.5〜6時間ポンプでコポリマー上に送る。裏打ちを行う際のコポリマーが管状の形状である場合、インキュベーションまたはポンプで送る間にコポリマーを回転させて、ポリマーのより均一な裏打ちを得てもよい。インキュベーションまたはポンプ手順は1回以上繰り返して、細胞の播種効率性を改善してもよい。プロセスは、約37℃にて行うことが好ましい。
【0198】
細胞とコポリマーとの付着を向上させるために、例えばインキュベーションまたはポンププロセスの前または間に、コポリマーに静電気を生じさせるか、または0.5テスラ・ヘルムホルツコイルを使用してもよい。
【0199】
本発明のコポリマーは様々な異なる用途を有する。コポリマーは、移植可能なデバイスとして主に想定されている。しかし、コポリマーを代替的な用途に使用してもよく、例えば、透明性に優れ、変色が少ないため、コポリマーをスクリーン、コンタクトレンズまたは眼用の移植片として使用してもよい。
【0200】
本発明のポリマーの非医療的用途の例としては、ポリエーテル基質ポリウレタンを塗料として使用することが挙げられる。アミノ酸またはペプチドPが例えば抗軟体動物ペプチドである式(I)のセグメントは、塗料に添加されるコポリマーに含まれていてもよい。このような塗料は軟体動物に対する耐性を与えるため、船舶の船体を保護するのに有用である。これは、船体を洗浄する頻度を少なくし、船舶があまり引きずられることなく動くことができるという利点を有する。
【0201】
コポリマーは、典型的に、押出しまたは成形等の標準的なポリマー加工技術を用いて成形品に加工する。移植可能なデバイスが必要な場合、これらは、例えば、Edwards, A.ら(J. Biomat. App. 1995;10:171-187頁)に記載の技術を用いて作製できる。細胞でのコポリマーの裏打ちは、典型的に、ポリマーが所望の形状に加工された後に行われる。
【0202】
典型的に、本発明のコポリマーは、人工器官、すなわち移植可能デバイス(血管移植片を含む)、心臓弁、ステント(泌尿器ステント)、神経損傷を修復するための手術において使用する導管、および整形外科用関節代用品を形成するために使用される。好ましい移植可能なデバイスは、血管移植片である。
【0203】
本発明のコポリマーはまた、人工器官以外の外科用デバイスでの用途も想定され得る。例としては、カテーテル、バイパス手術の間に血液を通すプラスチック管類、およびX線診断技術で使用するIn等の標識物質を注入するために使用する管が挙げられる。
【0204】
本発明のコポリマーは、移植可能デバイスの形態の際には、身体部分の取替えを必要としているヒトまたは動物被検体の治療のために使用することができ、この方法は、該身体部分を、本発明の移植可能なデバイスと置き換えることを含む。この方法は、補綴手術の分野において公知の標準的な技術を使用して実行され得る。例えば、移植可能なデバイスが血管移植片である場合、移植片は本来ある血管に、端部と端部、端部と側部、または側部と側部で吻合され得る。吻合は、典型的に縫合を用いて行われる。クリップの使用またはレーザ技術等の代替的な方法も可能である。これら後者の技術の利点は、吻合において移植片の適合特性をいくらか保ち続けるのを助けることである。
【実施例】
【0205】
以下の実施例を参照しながら、本発明をさらに例示する。
【0206】
実施例1
ポリカルボネートポリオール(2000 MW)(36 g)およびシルセスキオキサン1(図1および以下の記載を参照)(1 g)の混合物を、攪拌器、温度計、止め具および出口弁を備えた丸底フラスコに入れた。混合物を、真空下(1 mm Hg)で90℃〜110℃にて攪拌しながら加熱することにより脱水させた。本手順のこのステップにより、シルセスキオキサンがポリオールに確実に混ざる。
【0207】
二時間後、温度を70℃まで落とした。この系に乾燥窒素を流した。蓋を取り、4,4'-メチレンビスジフェニルジイソシアネート(MDI)を一気に添加した。フラスコの蓋を戻し、系に乾燥窒素を流した。2時間緩やかに加熱しながら温度を75℃〜85℃にて維持した。ジメチルアセトアミド(DMAC)を系に添加し、DMACに反応混合物が完全に溶解したら、フラスコを室温まで冷やした。
【0208】
次いで、このように形成したプレポリマーを、ジエチルアミンを反応調節剤として使用してエチレンジアミンで鎖延長させた。アミンを滴下漏斗からゆっくりとDMACに添加した。約30,000cpsの粘度に達したら、それ以上の反応を止めるためにブタノール含有DMACを添加した。
【0209】
実施例1a
2,4-メチレンビスジフェニルジイソシアネート(MDI)を使用して実施例1を繰り返した。
【0210】
実施例2〜6および2a〜6a
図1に示すシルセスキオキサン2〜6を使用して、実施例1および1aを繰り返した。
【0211】
実施例7
線状シロキサンを、ポリウレタンポリカーボネートポリマーの側鎖として導入した。無水試薬で調製したポリカーボネートポリウレタン含有THF(100g, 10%)の新たに調製した溶液を、攪拌器、乾燥チューブおよび窒素浄化を備えた3口反応フラスコに入れる。反応混合物を、氷水浴中で0〜5℃まで冷やし、水素化ナトリウム(0.5 g)をポリマー溶液に添加する。ポリマー溶液を、1時間攪拌して、ポリウレタン基上で陰イオンを形成させる。
【0212】
ヘキサメチルシクロトリシロキサン(4.6 g)およびヘキサメチルジシロキサン(0.05 g)の溶液を無水THF(50 g)中で調製する。次いで、この混合物を反応混合物に添加し、反応を2時間続けさせて、所望の製品を形成する。無水条件は、反応の間中維持され、混合物は乾燥窒素で覆われるべきである。
【0213】
実施例8:コポリマーの安定性
2つのコポリマーをDMAC中での安定性について調査した。サンプル1は標準的なポリカーボネートポリ尿素/ウレタンである対照材料であった。サンプル2は上記実施例4に従って作製したコポリマーであった。両方のサンプルをDMACに添加した。サンプル1は、膨張し、材料の端部がぼやけ、最終的にサンプルが溶解したのが見とめられた。サンプル2は、元の構造を保ち、膨張も少なく、溶解するまでの時間がより長かった。
【0214】
実施例9
(a)実施例4のコポリマー、ならびに(b)2000 MWポリオール、4,4'-MDI、エチレンジアミンおよびジエチルアミンから形成したポリ(炭酸塩-尿素)ウレタンの引張応力および引裂き強度を測定した。
【0215】
2つのポリマーの引張特性は、ASTM D1708に従って評価した。テストは、Shimadzu B444テスト機器上で、10 mm/分の置換速度で行った。引張応力を100%伸び時および300%伸び時で記録した。
【0216】
引裂き強度は、染料「C」試料形状を使用して、ASTM D624に従って測定した。テストは、Shimadzu B444テスト機器上で、500 mm/分の速度で行った。
【0217】
両方のテストの試料は、打抜型を使うのではなく、テンプレートおよび外科用メスを用いてポリマーシートから切り抜いた。各ポリマーにつき最少5つのサンプルを各テスト方法によりテストした。各テストについて、サンプルは、2枚の異なるポリマーシートから取った。全てのテストは室温(21℃)にて行った。
【0218】
テスト結果のまとめを表1に示す。使用する値は、最低でも5つの結果の平均であり、結果の標準偏差と共に示す。
【0219】
【表1】

【0220】
実施例9a
溶液状態である1Hおよび13C NMRスペクトルを、Bruker AMX500 MHz分光計を使用して実施例4のポリマーについて記録した。ポリマーをDMSOに溶解して、測定するサンプルを得た。1Hおよび13C NMRスペクトルを、図5aおよび5bにそれぞれ示す。
【0221】
これらのスペクトルから、シルセスキオキサンがポリマーに取り入れられていることが確認される。シルセスキオキサンコンポーネント出発材料中の一次および二次ヒドロキシル基のピークはスペクトルに現れず、シルセスキオキサンコンポーネントの反応が生じたことが確認できる。
【0222】
1H NMRスペクトルにおいて、最初のピークセットは、MDIから誘導される芳香族基に対応し、7.368〜7.024 ppmにある。次のピークセットは4.174〜3.924 ppmにあり脂肪族プロトンに対応する。炭酸塩およびシルセスキオキサンからのプロトンは、4〜4.2 ppmに現れる。
【0223】
3.766〜3.521 ppmにあるピークは、MDIから誘導されるセグメントのメチレン基およびウレタンNHに対応する。3.402〜3.370 ppmにあるピークは、エチレンジアミン鎖延長剤およびペンダントアーム上のプロトンに対応する。0.515〜0.481および0.086〜0.044にあるピークは、カゴ型シルセスキオキサンの側鎖のCH3およびCH2基に対応する。
【0224】
13C NMRスペクトルにおいて、155.408〜153.606 ppmにあるピークは、尿素、ウレタンおよびエステル基のカルボニルピークにこの順で対応する。次のピークセットは、芳香族炭素で138.367〜117.884 ppmにあり、MDI中の炭素に対応する。137〜139 ppmにある複数のピークは、ウレタン基との共役、すなわち異性(isomerism)によるものである。70.078〜63.907 ppmにあるピーク群は脂肪族炭素に対応する。
【0225】
39.963〜38.961 ppmにあるピーク群は、エチレンジアミン鎖延長剤のCH2、ならびにペンダントアームおよびカゴ型シルセスキオキサンのCH2基に対応する。28.918〜18.5 ppmにあるピーク群は、カゴ型シルセスキオキサンのポリカーボネートポリオールおよび側鎖に対応する。
【0226】
実施例10:コポリマーの生体適合性
実施例4の平らなシートを、標準的な外科技術を使用して4匹のヒツジの背中に挿入した。ポリマーを、月々の診察および超音波スキャンによって3ヶ月にわたりモニタリングした。炎症も免疫反応も見とめられなかった。
【0227】
実施例11〜13
実施例11〜13のぞれぞれにおいて、シルセスキオキサン1を酸性黄29、34または99にそれぞれ置き換えて実施例1を繰り返した。
【0228】
実施例14
72gの乾燥ポリカーボネートポリオール(2000 mwt)および1,2プロパンジオールイソブチル-シルセスキオキサン(図1のシルセスキオキサン4(POSSカゴ構造)(Sigma-Aldrich製))を、機械的攪拌器および窒素注入口を備えた500 ml反応フラスコに入れた。混合物を130℃に加熱して、POSSカゴ構造をポリオールに溶解し、次いで60℃まで冷却した。18.8gの薄片MDIをポリオール配合物に添加し、窒素下、70℃〜80℃にて90分間反応させて、プレポリマーを形成した。156gの乾燥ジメチルアセトアミドをプレポリマーにゆっくりと添加して溶液を形成した;溶液を40℃まで冷やした。80gの乾燥ジメチルアセトアミドに入った2gのエチレンジアミンおよび0.05gのジエチルアミンの混合物を滴下添加することによりプレポリマーの鎖延長を行った。鎖延長の終了後、4g 1-ブタノールおよび80gジメチルアセトアミドの混合物をポリマー溶液にゆっくりと添加した。
【0229】
実施例15
36gの乾燥ポリカーボネートポリオール(2000 mwt)を、機械的攪拌器および窒素注入口を備えた250 ml反応フラスコに入れた。9.4gの薄片MDIをポリオールに添加し、70℃〜80℃にて90分間反応させて、プレポリマーを形成した。プレポリマーを50℃まで冷やした後に、20gの乾燥テトラヒドロフランをゆっくりと添加して、溶液を形成した。10gの乾燥テトラヒドロフランに入った1gのアミノエチルアミノプロピルイソブチル-シルセスキオキサン(図1のシルセスキオキサン2(Sigma-Aldrich製))の溶液を、プレポリマーに滴下して、50℃〜60℃にて40分間反応させた。78gの乾燥ジメチルアセトアミドをゆっくりと添加して、溶液を形成し、その温度を40℃に調節した。40gの乾燥ジメチルアセトアミドに入った1gのエチレンジアミンおよび0.025gのジエチルアミンの混合物を滴下して鎖延長を行った。鎖延長の終了後、2g 1-ブタノールおよび40gジメチルアセトアミドの混合物をポリマー溶液にゆっくりと添加した。
【0230】
実施例16
36gの乾燥ポリカーボネートポリオール(2000 mwt)を、機械的攪拌器および窒素注入口を備えた250 ml反応フラスコに入れた。9.4gの薄片MDIをポリオールに添加し、70℃〜80℃にて90分間反応させて、プレポリマーを形成した。プレポリマーを50℃に冷やした後、20gの乾燥テトラヒドロフランをゆっくりと添加して溶液を形成した。10gの乾燥テトラヒドロフランに入った1gのジオール-シルセスキオキサン(図1のシルセスキオキサン3(Sigma-Aldrich製))の溶液を、プレポリマーに滴下し、50℃〜60℃にて60分間反応させた。78gの乾燥ジメチルアセトアミドをゆっくりと添加して、溶液を形成し、その温度を40℃に調節した。40gの乾燥ジメチルアセトアミドに入った1gのエチレンジアミンおよび0.025gのジエチルアミンの混合物を滴下して鎖延長を行った。鎖延長の終了後、2g 1-ブタノールおよび40gジメチルアセトアミドの混合物をポリマー溶液にゆっくりと添加した。
【0231】
実施例17
72gの乾燥ポリカーボネートポリオール(2000 mwt)および2gのトランス-シクロヘキサンジオールイソブチル-シルセスキオキサン(図1のシルセスキオキサン1(POSSカゴ構造)(Sigma-Aldrich製))を、機械的攪拌器および窒素注入口を備えた500 ml反応フラスコに入れた。混合物を125℃まで加熱して、POSSカゴ構造をポリオールに溶解して、60℃まで冷やした。18.8gの薄片MDIをポリオール配合物に添加し、窒素下、70℃〜80℃にて90分間反応させてプレポリマーを形成した。156gの乾燥ジメチルアセトアミドをプレポリマーにゆっくりと添加して溶液を形成した;溶液を40℃まで冷やした。80gの乾燥ジメチルアセトアミドに入った2gのエチレンジアミンおよび0.05gのジエチルアミンの混合物を滴下して鎖延長を行った。プレポリマーの鎖延長の終了後、4g 1-ブタノールおよび80gジメチルアセトアミドの混合物をポリマー溶液にゆっくりと添加した。
【0232】
実施例18
36gの乾燥ポリカーボネートポリオール(2000 mwt)および1gの1,2プロパンジオールイソブチル-シルセスキオキサン(図1のシルセスキオキサン4(POSSカゴ構造)(Sigma-Aldrich製))を、機械的攪拌器および窒素注入口を備えた250 ml反応フラスコに入れた。混合物を130℃まで加熱して、POSSカゴ構造をポリオールに溶解して、60℃まで冷やした。8.3gの2,4MDIおよび1.1gの4,4MDIを添加し、窒素下、70℃〜80℃にて90分間反応させてプレポリマーを形成した。78gの乾燥ジメチルアセトアミドをプレポリマーにゆっくりと添加して溶液を形成した;溶液を40℃まで冷やした。40gの乾燥ジメチルアセトアミドに入った1gのエチレンジアミンおよび0.025gのジエチルアミンの混合物を滴下してプレポリマーの鎖延長を行った。鎖延長の終了後、2g 1-ブタノールおよび40gジメチルアセトアミドの混合物をポリマー溶液にゆっくりと添加した。
【0233】
実施例19
36gの乾燥ポリカーボネートポリオール(2000 mwt)、1gのトランス-シクロヘキサンジオールイソブチル-シルセスキオキサン(図1のシルセスキオキサン1(POSSカゴ構造)(Sigma-Aldrich製))および0.1gの(-)-3',5'-O-(1,1,3,3-テトライソプロピル-1,3-ジシロキサンジイル)アデノシン(Sigma-Aldrich製)を、機械的攪拌器および窒素注入口を備えた250 ml反応フラスコに入れた。混合物を140℃まで加熱して、POSSカゴ構造およびアデノシンをポリオールに溶解して、60℃まで冷やした。9.5gの薄片MDIをポリオール配合物に添加し、窒素下、70℃〜80℃にて90分間反応させてプレポリマーを形成した。78gの乾燥ジメチルアセトアミドをプレポリマーにゆっくりと添加して溶液を形成した;溶液を40℃まで冷やした。40gの乾燥ジメチルアセトアミドに入った1gのエチレンジアミンおよび0.025gのジエチルアミンの混合物を滴下してプレポリマーの鎖延長を行った。鎖延長の終了後、2g 1-ブタノールおよび40gジメチルアセトアミドの混合物をポリマー溶液にゆっくりと添加した。
【0234】
実施例20
図6に示すスキームは、式(I)の八量体ペプチドの例、その保護、および模式的に本発明のコポリマーへの取り込みを示す。
【0235】
ペプチドは以下のように合成および保護される:
【0236】
実施例20a:対称無水物を使用した第1のアミノ酸グリシンの付着
5-残基八量体ペプチドAc-Gly-Arg-Gly-Lys4-Lys2-Lys-Lys-ヘキサン(Hexanoic)-Lys-Gly-COOHの合成を、0.15 mmolのヒドロキシル基が存在するリンク-酸-樹脂(Rink-acid-resin)に対する段階的固相方法により手作業で行った。リンク樹脂を、DMF(ジメチルホルムアミド;10 ml/gm;5×1分)で洗浄した。DCM(ジクロロメタン;5 ml)に入ったFmoc-Gly(1 mmol)の溶液を室温にて攪拌し、乾燥DCMに入ったDIPCDI(ジイソプロピルカルボジイミド(樹脂充填量に対して5当量))をアミノ酸溶液に添加することにより活性化させた。混合物を0℃にて15分間攪拌した。この混合物に5 mlのDMFを添加した。混合物を上記樹脂に添加した。DCM(樹脂充填量に対して0.1当量)に溶解させたDMAP(ジアミノピリジン)を、樹脂/アミノ酸混合物に添加した。混合物を酸素を含まない窒素ガスと共に1時間攪拌した。
【0237】
実施例20b:保護アミノ酸の順次添加
リンク-グリシン樹脂を、焼結ガラス容器に入れ、予め量った(pre-weighted)保護されたFmocアミノ酸またはFmocアミノヘキサン酸から活性化剤HBTUの存在下でin situで形成した活性エステルでアシル化させた。塩基開始(base-initiated)カルボキシル活性化を、1当量のHBTU[2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩)、2当量のDIPEAを含むDMFに入った1当量のHOBT溶液を添加することで行った。DMFに入ったアミノ酸:HBTU:MMP(1:1:2)当量の5倍過剰量(樹脂充填量に基づく)のアシル化種は、その後の全ての結合で使用した。活性化アミノ酸の添加のサイクルは、20%ピペリジン含有DMF(2×5分間)での固体支持体の10×1分間の洗浄によりNα-Fmoc基を開裂、10×1分間のDMF洗浄、5当量のFmoc-アミノ酸HBTUエステルでの30分間のアシル化反応、および合計サイクル時間が約60分間の10×1分間のDMF洗浄から構成された。
【0238】
実施例20c:八量体Ac-Gly-Arg-Asp-Gly-Lys4-Lys2-Lys-Lys-Ahx-Lys-Gly-リンク-酸-樹脂のアセンブリ
5-残基八量体ペプチドの合成を、予め充填した(preloaded)Fmoc-Lys-Ahx-Lys-Gly-樹脂に対する段階的固相方法により手作業で行った。樹脂を、20%ピペリジン含有DMFでの通常の脱保護サイクルに供して、一価リシン上のFmocを除去した。リシンテンプレートの第一、第二および第三レベルの合成は、DMFに入ったNα,Nε-Fmoc-リシン(Fmoc)の5倍過剰モル(樹脂充填量に基づく)の活性化された活性エステルを用いて行った。樹脂は、20%ピペリジン含有DMFで(2×5分間)最終的に脱保護して、8つの官能アミノ基を曝した。樹脂をDMF(10×1分間)で洗浄した。0.2 MMP含有DMFに入った5倍過剰量(新たな充填量に基づく)のアシル化種を、上述したようにその後の全ての結合に添加して、八価リシン上にGRGD配列を完成させた。完成したペプチドを、無水酢酸含有DMFでアセチル化して、アミノ末端を保護した。八量体の保護されたペプチドを、低濃度トリフルオロ酢酸(TFA)含有DCMで固相から放出して、カルボキシル末端にあるリシンの2つのNεを同時に脱保護した。生成物の純度についてHPLCで検査し、主要ポリ(炭酸ウレタン)の重合に使用した。
【0239】
実施例20d:ポリマーの作製
36gの乾燥ポリカーボネートポリオール(2000 mwt)および1gのトランス-シクロヘキサンジオールイソブチル-シルセスキオキサン(図1のシルセスキオキサン4(POSSカゴ構造)(Sigma-Aldrich製))を、機械的攪拌器および窒素注入口を備えた250 ml反応フラスコに入れた。混合物を125℃まで加熱して、POSSカゴ構造をポリオールに溶解した後、60℃まで冷やした。9.56gの薄片MDIをポリオール配合物に添加し、窒素下、70℃〜80℃にて90分間反応させ、プレポリマーを形成した。20gの乾燥ジメチルアセトアミドをプレポリマーにゆっくりと添加して溶液を形成した;溶液を55℃まで冷やした。10g乾燥ジメチルアセトアミドに溶解させた上述したように作製した103 mgmの八量体を添加し、50℃〜60℃にて45分間反応させた。さらに48gの乾燥ジメチルアセトアミドをゆっくりと添加し、温度を40℃に調節した。40gの乾燥ジメチルアセトアミドに入った1gのエチレンジアミンおよび0.025gのジエチルアミンの混合物を滴下してプレポリマーの鎖延長を行った。鎖延長の終了後、2g 1-ブタノールおよび40gジメチルアセトアミドの混合物をポリマー溶液にゆっくりと添加した。
【図面の簡単な説明】
【0240】
【図1a】本発明のコポリマーの製造に使用できるシルセスキオキサン1の構造を示す。
【図1b】本発明のコポリマーの製造に使用できるシルセスキオキサン2の構造を示す。
【図1c】本発明のコポリマーの製造に使用できるシルセスキオキサン3の構造を示す。
【図1d】本発明のコポリマーの製造に使用できるシルセスキオキサン4の構造を示す。
【図1e】本発明のコポリマーの製造に使用できるシルセスキオキサン5の構造を示す。
【図1f】本発明のコポリマーの製造に使用できるシルセスキオキサン6の構造を示す。
【図2】12のシリコン原子を有するシルセスキオキサンの例を示す。
【図3】部分的カゴ型シルセスキオキサンの例を示す。
【図4a】部分的カゴ型シルセスキオキサンおよびトリフルオロメチル基を含む化合物の例を示す。
【図4b】部分的カゴ型シルセスキオキサンおよびトリフルオロメチル基を含む化合物の他の例を示す。
【図5a】本発明のコポリマーの1Hおよび13C NMRスペクトルをそれぞれ示す。
【図5b】本発明のコポリマーの1Hおよび13C NMRスペクトルをそれぞれ示す。
【図6a】本発明で使用するペンダント基セグメントの例を示し、ポリマーへの取り込みを模式的に示す。
【図6b】本発明で使用するペンダント基セグメントの例を示し、ポリマーへの取り込みを模式的に示す。
【図6c】本発明で使用するペンダント基セグメントの例を示し、ポリマーへの取り込みを模式的に示す。
【図6d】本発明で使用するペンダント基セグメントの例を示し、ポリマーへの取り込みを模式的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)1つ以上のペンダント基セグメントおよび(b)1つ以上のポリオールセグメントを含むコポリマーであって、該セグメントはそれぞれ同じかまたは異なりうる1つ以上の別のセグメントに結合しており、
該1つ以上のペンダント基セグメントは同じかまたは異なり、以下から選択される:
(i)シロキサンセグメント;
(ii)ホスホリルコリンまたはその誘導体もしくは類似体を含むセグメント;
(iii)ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基を含むセグメント;
(iv)式(XII)の基を含むヘパリン様セグメント
【化1】

(式中、Dは脂肪族または芳香族基であり、Ar-SO3-は1つ以上の結合したアリールおよび/またはヘテロアリール基を含み、該アリールおよび/またはヘテロアリール基の少なくとも1つはSO3-置換基を有する);ならびに
(v)式(I)の基を含むセグメント
【化2】

(式中:
-[A1]は不活性アミノ酸;
-xは、0、1、2または3;
-[スペーサー]は、脂肪酸、アミノ酸、ペプチドまたはPEG;
-[P]n'-[Lys]nは、n個のリシン基で形成され、n'個の基Pで終結する樹枝状構造;
-nは1〜15の整数;
-n'はゼロ、または最大16の整数;および
-Pはそれぞれ同じであるか異なり、アミノ酸または最大25個のアミノ酸を有するペプチドである)、
そして、該ペンダント基セグメントのそれぞれの少なくとも一部はコポリマーの側鎖上にある、コポリマー。
【請求項2】
前記セグメントが尿素またはウレタン結合を介して結合している、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項3】
1つ以上のペンダントシロキサンセグメントを含む、請求項1または2に記載のコポリマー。
【請求項4】
前記ペンダントシロキサンセグメントは、式(II)の繰り返しユニットを含む線状シロキサンを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のコポリマー
【化3】

(式中、Rはそれぞれ同じであるか異なり、脂肪族または芳香族基を表す)。
【請求項5】
Rはそれぞれ同じであるか異なり、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはアリール基を表す、請求項4に記載のコポリマー。
【請求項6】
前記ペンダントシロキサンセグメントが構造(III)を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のコポリマー
【化4】

(式中、Sは線状シロキサン基、カゴ型シルセスキオキサン(silsesquioxane cage)または部分的カゴ型シルセスキオキサンであり、Yは少なくとも2つの尿素またはウレタン結合に結合した脂肪族基である)。
【請求項7】
Sはカゴ型シルセスキオキサンである、請求項6に記載のコポリマー。
【請求項8】
前記カゴ型シルセスキオキサンSが、式(IV)の繰り返しユニットから構成される、請求項7に記載のコポリマー
【化5】

(式中、R'はそれぞれ同じであるか異なり、脂肪族または芳香族基を表し、1つのR'基が基Yへの結合に置き換えられている)。
【請求項9】
前記R'はそれぞれ同じかまたは異なり、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキルまたはアリール基を表す、請求項8に記載のコポリマー。
【請求項10】
1つ以上のペンダントシロキサンセグメントを含み、シロキサンセグメントとポリオールセグメントの比率が1:10未満である、請求項1〜9のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項11】
最大5000の分子量を有する1つ以上のペンダントシロキサンセグメントを含む、請求項1〜10に記載のコポリマー。
【請求項12】
2以上の異なるペンダントシロキサンセグメントを含み、それぞれがカゴ型シルセスキオキサンまたは部分的なカゴ構造を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項13】
ホスホリルコリンまたはその誘導体を含む前記セグメントは式(V)を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコポリマー
【化6】

(式中、sは0、1、2、3または4、およびBは以下の式の脂肪族基である)
【化7】

(式中、pは0〜8の整数、またはBは式(VI)もしくは(VIA)の基である)
【化8】

(式中、B1はそれぞれ同じであるか異なり、C6-C10アリール、C1-C8アルキレン、C2-C8アルケニレン、C3-C6シクロアルキル基、または窒素、酸素および硫黄から選択される1、2もしくは3つのヘテロ原子を含む5もしくは6員ヘテロシクリル基であり;B2は、窒素、酸素および硫黄から選択される1〜5つのヘテロ原子を含む5〜10員ヘテロシクリルまたはヘテロアリール基であり;B3は脂肪族基であり;qは0、1、2または3であり;mは0または1である)。
【請求項14】
ホスホリルコリンの類似体を含む前記セグメントが式(VII)を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載のコポリマー
【化9】

(式中、sおよびBは請求項13に定義される通りであり、rは1、2、3、4または5であり、1つ以上のリン酸基は独立してかつ任意に塩の形態で存在し得る)。
【請求項15】
ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基を含む前記セグメントが、1つ以上のジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基、および任意に1つ以上のフッ素原子で置換された線状または分岐状C2-12アルキレン基である、請求項1〜14のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項16】
ジフルオロメチル基またはトリフルオロメチル基を含む前記セグメントが、シロキサンセグメント、ホスホリルコリンまたはその誘導体もしくは類似体を含むセグメント、ヘパリン様セグメント、ジフルオロメチル基、またはトリフルオロメチル基で置換された式(I)のセグメントである、請求項1〜15のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項17】
式(XII)の基Arは、フェニルおよびピラゾリルから選択される1または2つの結合したアリールまたはヘテロアリール基を含み、Arは1または2つの-SO3-基ならびにメチル、エチル、メトキシ、メチルチオ、ニトロおよびジメチルアミノ基から選択される1、2または3つの別の置換基で置換され;ならびにDは基D1-D2-D3-である(式中、D1は置換されていないか、またはメチル、エチルおよびメトキシ基から選択される1、2もしくは3つの置換基で置換されたアリールまたはヘテロアリール基であり、D2は-NR'CO-、-CONR'、-OCO-、-COO-、-NR'SO2-または-SO2NR'-であり、D3はフェニル、または置換されていないか、もしくはメチル、エチルおよびメトキシ基から選択される1、2もしくは3つの置換基で置換されたC1-4アルキレンもしくはC2-4アルケニレン基である)、請求項1〜16のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項18】
前記式(XII)の基が酸性黄(Acid Yellow)化合物の誘導体である、請求項1〜17のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項19】
前記式(I)の基において、nは7である、請求項1〜18のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項20】
前記式(I)の基において、PはD型のアミノ酸またはペプチドである、請求項1〜19のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項21】
2つ以上の異なるペンダント基セグメントを含む、請求項1〜20のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項22】
1つ以上の鎖延長剤セグメントをさらに含み、該鎖延長剤セグメントのそれぞれが、同じかまたは異なり得る1つ以上の別のセグメントに結合した、請求項1〜21のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項23】
前記鎖延長剤セグメントが、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチドおよびC1-C6脂肪族部分から選択される、請求項22に記載のコポリマー。
【請求項24】
前記1つ以上の鎖延長剤セグメントが抗凝固剤である、請求項23に記載のコポリマー。
【請求項25】
前記1つ以上の鎖延長剤セグメントがRGD(Arg-Gly-Asp)である、請求項23または24に記載のコポリマー。
【請求項26】
各セグメントが、以下の式の基により、1つ以上の別のセグメントに結合した、請求項1〜25のいずれか一項に記載のコポリマー
【化10】

(式中、Xはそれぞれ同じかまたは異なり、窒素または酸素原子であり、Aはそれぞれ同じかまたは異なり、脂肪族または芳香族部分である)。
【請求項27】
コンポーネント(b)として、1つ以上のポリカーボネートセグメントを含む、請求項1〜26のいずれか一項に記載のコポリマー。
【請求項28】
請求項2〜27のいずれか一項に記載のコポリマーの製造方法であって、任意の順番で以下を重合することを含む
(i)請求項1〜19のいずれか一項で定義した1つ以上のペンダント基セグメントであり、それぞれのセグメントは、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つの基に結合している;
(ii)ポリオール;
(iii)2つ以上のイソシアネート基を有する芳香族化合物;ならびに任意に
(iv) アミノ酸、ペプチド、ポリペプチドおよびC1-C6脂肪族基から選択される1つ以上の鎖延長剤であって、それぞれは、一次または二次アミン、ヒドロキシルおよびカルボン酸基から選択される少なくとも1つの置換基を有する。
【請求項29】
請求項2〜27のいずれか一項に記載のコポリマーの製造方法であって、該コポリマーはペンダント基セグメントとして、コポリマーの骨格に直接結合した線状シロキサンを含み、
(i)ポリオールポリウレタンを強塩基と反応させること、および(ii)(i)の生成物をシロキサンと反応させることを含む、製造方法。
【請求項30】
請求項28または29に記載の方法により得られるかまたは得ることが可能なコポリマー。
【請求項31】
請求項1〜27および30のいずれか一項に記載のコポリマーの表面上に細胞を播種することを含む、裏打ちされたコポリマーを製造する方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法により得られるかまたは得ることが可能な裏打ちされたコポリマー。
【請求項33】
請求項1〜27および30のいずれか一項に記載のコポリマー、または請求項29に記載の裏打ちされたコポリマーを含む成形品。
【請求項34】
移植可能デバイスである、請求項33に記載の成形品。
【請求項35】
血管移植片である、請求項34に記載の移植可能デバイス。
【請求項36】
身体部分を請求項34または35に記載の移植可能デバイスと交換することを含む、身体部分の交換を必要としているヒトまたは動物患者の治療方法。
【請求項37】
身体部分を交換するための移植可能デバイスの製造における、請求項1〜27および30のいずれか一項に記載のコポリマーの使用。


【図1a】
image rotate

【図1b】
image rotate

【図1c】
image rotate

【図1d】
image rotate

【図1e】
image rotate

【図1f】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4a】
image rotate

【図4b】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6a】
image rotate

【図6b】
image rotate

【図6c】
image rotate

【図6d】
image rotate


【公表番号】特表2007−522280(P2007−522280A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−550275(P2006−550275)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【国際出願番号】PCT/GB2005/000189
【国際公開番号】WO2005/070988
【国際公開日】平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願人】(506247158)ユーシーエル バイオメディカ ピーエルシー (1)
【Fターム(参考)】