説明

導電性コーティング組成物及び導電性コーティング膜の製造方法

【課題】 溶剤可溶性で加工性に優れ、高温条件下でも導電率の低下が少ない導電性コーティング組成物を提供する。
【解決手段】 チオフェン繰り返し単位のうちの少なくとも一部が、(a)炭素数2〜4のオキシアルキレン基からなる繰り返し単位を1〜9個有し、片末端が炭素数1〜15のアルコキシ基であるポリエーテル基、(b)アルコキシ基、(c)アルコキシアルキル基又は(d)前記ポリエーテル基(a)で置換されているか若しくは置換されていないアルキル基で、チオフェン環の3位及び/又は4位が置換されたチオフェン繰り返し単位(α)である置換ポリチオフェン(P)及びドーパント(D)を含有することを特徴とする導電性コーティング組成物(A)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性コーティング組成物に関する。更に詳しくは、導電性高分子とドーパントを含有する導電性コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリン、ポリチオフェン及びポリピロール等の導電性高分子は、優れた安定性及び導電率を有することから、その活用が期待されているが、これらの導電性高分子は溶剤に不溶でり、成形性に劣ることから、従来、その応用分野は限られてきた。
【0003】
コンデンサの分野においては、高周波領域におけるインピーダンスを低下することを目的として、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の酸化皮膜(誘電体被膜)をエッチングすることで多孔性皮膜とし、この表面にポリピロール、ポリチオフェン等の導電性高分子からなる層(導電性高分子層)を形成して陰極とした導電性高分子コンデンサが使用されている。
この導電性高分子層の形成法として、導電性高分子の前駆体モノマーを含む分散液を多孔性皮膜の表面に塗布した後、前駆体モノマーを重合させる方法が用いられている。重合させる方法としては、主に特許文献1で開示されているような化学重合が用いられている。
【0004】
しかし、特許文献1で開示されるような化学重合では、分散液濃度が低いために、必要な皮膜の膜厚を得るのに10回程度繰り返し重合を行う必要があり、更に重合時間が長い等の問題もあり、コンデンサの生産効率が非常に悪いという課題を抱えている。この課題を解決する方法として、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)をドーパントとして用い、導電性高分子のポリピロールを溶剤に溶解させる方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかしながら、特許文献2に記載の方法で作られる導電性高分子は、完全な溶液ではなく分散体であるため、微細な空孔が開いている皮膜には、十分含浸せず、その結果、コンデンサの容量を効率よく高めることができないという問題がある。
【0005】
また、近年、エレクトロニクス材料におけるフレキシブル化のニーズが高まっており、ポリアニリン、ポリチオフェン及びポリピロール等の導電性高分子の、導電機能材料、電荷輸送材料及び光機能材料への応用が盛んに研究されている。特に導電機能材料においては、固体電解コンデンサ用電解質や帯電防止剤として実用化されている。これらの導電性高分子の実用性を拡大するには、導電性及び加工性の更なる向上を図るとともに、得られる導電性皮膜の耐熱性及び耐湿性といった環境安定性の改善が急務となっている。特に、導電性皮膜は長時間の加熱によりドーパントの脱離やその他の原因で、導電性が低下することが知られている。
【0006】
従来、耐熱性が改善された導電性皮膜を得る方法として、ドーパント兼耐熱安定化剤として、有機スルホン酸化合物を導電性高分子と複合化する方法が提案されている。例えば、特許文献3では、芳香族スルホン酸化合物をポリチオフェンの前駆体モノマーに混合して重合し、導電性皮膜を形成する方法が開示されている。
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、得られた導電性高分子の適切な良溶剤がないため、加工性に問題を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭63−173313号公報
【特許文献2】特表平10−507225号公報
【特許文献3】特開平7−238149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、溶剤可溶性で加工性に優れ、高温条件下でも導電率の低下が少ない導電性コーティング組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の目的を達成すべく鋭意検討を行った結果、本発明に到達した。
即ち、本発明は、チオフェン繰り返し単位のうちの少なくとも一部が、
(a)炭素数2〜4のオキシアルキレン基繰り返し単位を1〜9個有し、片末端が炭素数1〜15のアルコキシ基であるポリエーテル基、
(b)アルコキシ基、
(c)アルコキシアルキル基又は
(d)前記ポリエーテル基(a)で置換されているか若しくは置換されていないアルキル基で、チオフェン環の3位及び/又は4位が置換されたチオフェン繰り返し単位(α)である置換ポリチオフェン(P)及びドーパント(D)を含有することを特徴とする導電性コーティング組成物(A);該導電性コーティング組成物(A)を用いてなる固体電解コンデンサ用電極;並びに該導電性コーティング組成物(A)を基質に塗布後、加熱処理する工程を含む導電性コーティング膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性コーティング組成物は、溶剤溶解性に優れることから、加工性が良好であり、導電性に優れ、高温条件下でも導電率の低下が少ないため、導電性が必要なコーティング材料として好適である。特に固体電解コンデンサ用陰極材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の導電性コーティング組成物(A)は、チオフェン繰り返し単位のうちの少なくとも一部が、(a)炭素数2〜4のオキシアルキレン基からなる繰り返し単位を1〜9個有し、片末端が炭素数1〜15のアルコキシ基であるポリエーテル基、(b)アルコキシ基、(c)アルコキシアルキル基又は(d)前記ポリエーテル基(a)で置換されているか若しくは置換されていないアルキル基で、チオフェン環の3位及び/又は4位が置換されたチオフェン繰り返し単位(α)(本明細書中、「チオフェン繰り返し単位(α)」ともいう。)である置換ポリチオフェン(P)及びドーパント(D)を含有する。なお、上記(a)、(b)、(c)及び(d)の記号を付けて列挙される各要素を、本明細書中、それぞれ、ポリエーテル基(a)、アルコキシ基(b)、アルコキシアルキル基(c)及びアルキル基(d)ともいう。
【0012】
上記ポリエーテル基(a)としては、炭素数2〜4のオキシアルキレン基からなる繰り返し単位を有し、その繰り返し単位数が1〜9であり、片末端が炭素数1〜15のアルコキシ基であるポリエーテル基が挙げられる。
炭素数2〜4のオキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基及びオキシブチレン等が挙げられる。
【0013】
末端の炭素数1〜15のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−、iso−、sec−又はtert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基及びペンタデシルオキシ基等が挙げられる。
【0014】
上記アルコキシ基(b)としては、前記ポリエーテル基(a)で例示したものと同様の炭素数1〜15のアルコキシ基が挙げれる。
【0015】
上記アルコキシアルキル基(c)としては、炭素数1〜15のアルコキシ基で置換された炭素数1〜4のアルキル基が挙げられ。
炭素数1〜15のアルコキシ基としては、前記ポリエーテル基(a)において例示したものと同様のが挙げられ、炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−又はiso−プロピル基及びn−、sec−、iso−又はtert−ブチル基等が挙げられる。
【0016】
チオフェン繰り返し単位(α)が有するアルキル基(d)としては、炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基、例えば、メチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、iso−、sec−又はtert−ブチル基、n−又はiso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−又はiso−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−又はiso−ヘプチル基、n−又はiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−又はiso−ノニル基、n−又はiso−デシル基、n−又はiso−ウンデシル基、n−又はiso−ドデシル基、n−又はiso−トリデシル基、n−又はiso−テトラデシル基及びn−又はiso−ペンタデシル基が挙げられる。
アルキル基(d)としては、前記ポリエーテル基(a)で置換されたアルキル基であってもよい。具体的には、前記ポリエーテル基(a)で置換された炭素数1〜15の直鎖又は分岐アルキル基が挙げられる。
【0017】
本発明における置換ポリチオフェン(P)が有するチオフェン繰り返し単位(α)として、導電性の観点から好ましいのは、下記一般式(1)で表される繰り返し単位(α1)、下記一般式(2)で表される繰り返し単位(α2)又は下記一般式(3)で表される繰り返し単位(α3)である。
【0018】
【化1】






【化2】






【化3】





【0019】
上記一般式(1)又は(2)におけるOR1及びOR4は、それぞれ独立に、オキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表し、導電性の観点から好ましいのはオキシエチレン基である。
【0020】
上記一般式(1)〜(3)におけるR2、R5及びR6は、それぞれ独立に、炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基(例えば、メチル基、n−又はiso−プロピル基、n−、iso−、sec−又はtert−ブチル基、n−又はiso−ペンチル基、シクロペンチル基、n−又はiso−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−又はiso−ヘプチル基、n−又はiso−オクチル基、2−エチルヘキシル基、n−又はiso−ノニル基、n−又はiso−デシル基、n−又はiso−ウンデシル基及びn−又はiso−ドデシル基)を表す。
【0021】
後述のnが1以上の場合、R2として導電性の観点から好ましいのは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基、更に好ましいのは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基である。
nが0の場合、R2として導電性の観点から好ましいのは、炭素数3〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、更に好ましいのは、炭素数6〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0022】
後述のmが1以上の場合、R5として導電性の観点から好ましいのは、炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基、更に好ましいのは、炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキル基である。
mが0の場合、R5として導電性の観点から好ましいのは、炭素数3〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、更に好ましいのは、炭素数6〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0023】
6として溶剤溶解性及び導電性の観点から好ましいのは、炭素数3〜12の直鎖又は分岐のアルキル基、更に好ましいのは、炭素数6〜12の直鎖又は分岐のアルキル基である。
【0024】
上記一般式(2)におけるR3は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基(例えば、メチレン基、1,2−又は1,3−プロピレン基及び1,2−、1,3−、2,3−又は1,4−ブチレン基)を表し、溶剤溶解性及び導電性の観点から好ましいのは、炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキレン基、更に好ましいのは、炭素数1又は2のアルキレン基である。
【0025】
上記一般式(1)又は(2)におけるn及びmは、それぞれ独立に、0〜5の整数である。nは、溶剤溶解性及び導電性の観点から、1〜5であることが好ましく、更に好ましくは、2〜5である。mは、溶剤溶解性及び導電性の観点から、0〜4であることが好ましく、更に好ましくは、mは0〜3である。
【0026】
本発明における置換ポリチオフェン(P)は上記チオフェン繰り返し単位(α)のみからなっていてもよいし、置換されていないチオフェン繰り返し単位を含んでいてもよい。
【0027】
置換ポリチオフェン(P)における上記チオフェン繰り返し単位(α)の含有量は、溶剤溶解性の観点から、置換ポリチオフェン(P)の重量に基づいて、好ましくは50〜100重量%、更に好ましくは60〜100重量%、特に好ましくは70〜100重量%である。
【0028】
本発明における置換ポリチオフェン(P)は、それぞれの繰り返し単位に相当するモノマーのアニオン重合や酸化重合等、公知の方法で合成することができる。
【0029】
上記チオフェン繰り返し単位(α)に相当するモノマーとしては、チオフェン環の3位及び/又は4位がポリエーテル基(a)、アルコキシ基(b)、アルコキシアルキル基(c)又はアルキル基(d)で置換され、2位と5位がハロゲン原子で置換されたチオフェン等が挙げられる。
置換されていないチオフェン繰り返し単位に相当するモノマーとしては、チオフェンが挙げられる。
【0030】
導電性コーティング組成物(A)中の置換ポリチオフェン(P)の含有量は、コーティング性の観点から導電性コーティング組成物(A)の重量に基づいて、0.1〜20重量%が好ましく、更に好ましくは1.0〜6.0重量%である。置換ポリチオフェン(P)の含有量が多すぎる場合、凝集物が生じ、塗布性が悪化するため好ましくない。また、置換ポリチオフェン(P)の含有量が少なすぎる場合、均一なコーティング膜の形成が困難になるため好ましくない。
【0031】
本発明の導電性コーティング組成物(A)が含有するドーパント(D)としては、例えば、無機酸(硫酸及び硝酸等)、ハロゲンイオン類(ヨウ素、臭素及び塩素等)、ハロゲン化物イオン類(テトラフロロホウ素及び過塩素酸等)、キノン化合物[クロラニル酸、p−クロラニル、p−ベンゾキノン、p−キノンジオキシム、ジクロロジシアノキノン(DDQ)、p−ナフトキノン、アントラキノン、クロロアントラキノン及びp−トルキノン等)、アルキル置換有機スルホン酸イオン類(メタンスルホン酸及びドデシルスルホン酸等)、環状スルホン酸イオン類(カンファースルホン酸イオン等)、アルキル置換又は無置換のベンゼンモノ又はジスルホン酸イオン類(ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸及びベンゼンジスルホン酸等)、スルホン酸基を1〜4個有するナフタレンスルホン酸のアルキル置換イオン類又は無置換イオン類(2−ナフタレンスルホン酸及び1,7−ナフタレンジスルホン酸等)、アントラセンスルホン酸イオン、アントラキノンスルホン酸イオン、アルキル置換又は無置換のビフェニルスルホン酸イオン類(アルキルビフェニルスルホン酸及びビフェニルジスルホン酸等)及び置換又は無置換の芳香族高分子スルホン酸イオン類(ポリスチレンスルホン酸及びナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合体等)が挙げられる。
これらの内、導電性の観点から好ましいのは、無機酸及びキノン化合物、更に好ましいのは、クロラニル酸及び硫酸、特に好ましいのは硫酸である
ドーパント(D)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0032】
導電性高分子である置換ポリチオフェン(P)は、ドーパント(D)に対して電子を供与して、ドーパント(D)とともに電荷移動錯体を形成する。
この電荷移動錯体が電子のキャリヤとして導電性を発現するため、ドーパント(D)の濃度は高い方がよいが、過剰だと導電性が低下する。従って、ドーパント(D)の使用量は、置換ポリチオフェン(P)に対して5〜300重量%が好ましく、更に好ましくは10〜150重量%である。
【0033】
本発明における置換ポリチオフェン(P)の立体規則性(RR)は、通常50%以上、導電性の観点から好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上である。
【0034】
本発明における立体規則性(Regioregularity:RR)の定義を以下に説明する。
置換ポリチオフェン(P)の結合の種類は下記の一般式に示すように、HT−HT結合(B1)、TT−HT結合(B2)、HT−HH結合(B3)、TT−HH結合(B4)の4種類ある。尚ここで、HTはヘッドtoテール、TTはテールtoテール、HHはヘッドtoヘッドの略称である。
【0035】
【化4】

【0036】
上記4つの結合形式の化学式中のRは、ポリエーテル基(a)、アルコキシ基(b)、アルコキシアルキル基(c)又はアルキル基(d)を表す。
【0037】
本発明における立体規則性(RR)は、置換ポリチオフェン(P)中のHT−HT結合(ヘッドtoテール−ヘッドtoテール結合)の割合(%)で定義され、下記数式(1)により算出される。
立体規則性(RR)=B1×100/(B1+B2+B3+B4) (1)
ただし、B1:HT−HT結合の個数、B2:TT−HT結合の個数、B3:HT−HH結合の個数、B4:TT−HH結合の個数を表す。
【0038】
具体的には、これらの結合が有するプロトンは、核磁気共鳴法(1H−NMR)でそれぞれ特有のケミカルシフト(δ)を示すので、4種類の結合に該当するケミカルシフトの積分値から算出することができる。
一般式(3)で表される繰り返し単位(α3)を有するポリチオフェン誘導体の場合、具体的には、B1:δ=6.98、B2:δ=7.00、B3:δ=7.02、B4:δ=7.05を示す。よってB1、B2、B3、B4特有のケミカルシフトにおける積分値S1、S2、S3、S4を計算し、その積分値の和に対するB1特有のケミカルシフトにおける積分値S1の割合(%)から立体規則性(RR)を下記数式(2)を用いて算出する。
立体規則性(RR)=S1×100/(S1+S2+S3+S4) (2)
【0039】
本発明の導電性コーティング組成物(A)は、更に有機溶剤を含有する。
有機溶剤としては、沈殿物のない均一溶液を得るために、置換ポリチオフェン(P)に対する良溶剤と、ドーパント(D)に対する良溶剤であるアルコール系溶剤とを混合して用いることが好ましい。
【0040】
置換ポリチオフェン(P)の良溶剤としては、炭素数1〜10の塩素系、アミド系、エーテル系、芳香族炭化水素系、アルコール系、ケトン系又は硫黄系溶剤等が挙げられ、好ましいものは、クロロホルム、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)、1,3−ジオキソラン、トルエン、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物等が挙げられ、硫酸耐性の観点からTHF、1,3−ジオキソラン、メタノール及びジメチルスルホキシドである。
【0041】
混合使用するアルコール系溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール及びエチレングリコール等が挙げられる。これらのうち、溶解安定性の観点から好ましいのは、メタノール、エタノール及び2−プロパノールである。
【0042】
本発明の導電性コーティング組成物(A)を用いて導電性コーティング膜を製造する際には、これらの溶剤を除去する必要がある。沸点の低い溶剤の場合は、常温での自然乾燥、循風乾燥による加熱乾燥で溶剤を除去するが、沸点の高い溶剤の場合は、減圧乾燥機による加熱乾燥が好ましい。
【0043】
本発明の導電性コーティング組成物(A)は、溶剤溶解性と導電性に優れるため、特に固体電解コンデンサ用電極として好適である。
【0044】
上述の通り、高周波領域におけるインピーダンスを低下するよう要求される固体電解コンデンサでは、アルミニウム等の酸化皮膜をエッチングすることで多孔性皮膜とし、この表面に導電性高分子層を形成して電極(陰極)としたコンデンサが使用されているが、導電性高分子の前駆体モノマーを含む分散液を塗布する方法やドデシルベンゼンスルホン酸をドーパントとして用いて導電性高分子のポリピロールを溶剤に溶解させたものを塗布する方法等の従来の方法では、コンデンサの生産効率が非常に悪く、また、コンデンサの容量を効率よく高めることができないという問題がある。
【0045】
これに対し、本発明の導電性コーティング組成物(A)は、有機溶剤に完全に溶解しており、かつ、導電性も高いため、簡便な工程で導電性高分子を多孔体皮膜に含浸させ、効率的にコンデンサ容量を高めることができる。
【0046】
本発明の導電性コーティング組成物(A)を基質に塗布後、加熱処理を行うことにより、耐熱性に優れ、高温条件下でも導電率の低下が少ない導電性コーティング膜を得ることができる。
【0047】
基質への導電性コーティング組成物(A)のコーティング方法としては、スピンコート法、ドロップキャスト法、ディップコート法及び基質を導電性コーティング組成物(A)に含浸する方法等が挙げられる。また、基質としては、プラスチック、ガラス、金属、ゴム、セラミックス及び紙等が挙げられる。
【0048】
導電性の観点から、基質表面に形成される導電性コーティング膜の厚さは0.05〜100μmであることが好ましく、更に好ましくは、0.1〜50μmである。被膜が0.05μmより薄いと十分な導電性が得られない場合がある。また、100μmを超えると形成時にひび割れや剥離が生じやすくなる等の問題が生じることがある。
【0049】
耐熱性に優れた導電性コーティング膜を得るためには、加熱処理温度は100〜190℃であることが好ましく、更に好ましくは110〜170℃である。100℃より低い温度の場合、十分な強度及び導電性が得られない場合がある。また、190℃より高い温度の場合、導電性が悪化する可能性がある。
【0050】
加熱時間は、加熱温度、コーティング膜の作製に用いる導電性コーティング組成物(A)中の置換ポリチオフェン(P)の濃度及び作製するコーティング膜の膜厚に応じて適宜選択されるが、通常は0.5〜8時間であり、好ましくは1〜4時間である。加熱時間が短すぎると、上記のコーティング膜の性能が十分ではない場合がある。
【0051】
本発明における導電性コーティング膜は、高温条件下での導電性の低下が小さいことを特徴とするが、具体的には、耐熱性評価の試験で、125℃で240時間加熱した後の導電率の保持率が10〜100%であることが好ましく、更に好ましくは30〜100%である。
【0052】
尚、本発明において「導電率の保持率(%)」とは、耐熱性試験前の導電率(σ0)に対する試験後の導電率(σ1)の比率(%)で定義され、次式で表される。
導電率の保持率(%)=σ1×100/σ0
但し、σ0は耐熱性試験(125℃、240時間)前に室温(典型的には25℃である。以下同様。)で測定されたコーティング膜の導電率、σ1は耐熱性試験後に室温まで放冷して測定されたコーティング膜の導電率を表す。
【0053】
本発明の製造方法により得られる導電性コーティング膜は、導電性及び耐熱性に優れており、固体電解コンデンサ用電解質、帯電防止剤、防食剤、導電性塗料、導電性透明電極材料及びめっきプライマー等として好適である。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。以下、部は重量部を示す。
【0055】
<製造例1>:ポリ[3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェン](P−1)の合成
(1)3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェンの合成:
N,N−ジメチルホルムアミド50部に水素化ナトリウム(パラフィンに濃度60重量%で分散させたもの)6.0部を分散させ、そこにトリエチレングリコールモノメチルエーテル36.9部を滴下した。反応溶液は発泡し、白濁した。発泡が収まったところで、反応溶液に3−ブロモチオフェン24.5部と臭化銅(I)2.0部を順に加えた。反応溶液を110℃まで加熱し、2時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、1Mの塩化アンモニウム水溶液50部を加え、酢酸エチル50部を使って分液ロートに移した後、水層を分離した。更に有機層を蒸留水30部で2回洗浄した後、酢酸エチルを留去し、3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェン34.0部を得た。
【0056】
(2)2,5−ジブロモ−3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェンの合成:
上記の3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェン7.4部とN−ブロモスクシンイミド10.7部をTHF40部に溶解させ、室温で2時間反応させた。酢酸エチル50部を使ってグラスフィルターで沈殿物を除去し、THFと酢酸エチルを留去した。得られた混合物をシリカゲルカラムで精製することにより、2,5−ジブロモ−3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェン10.5部を得た。
【0057】
(3)ポリ[3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェン]の合成:
上記の2,5−ジブロモ−3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェン8.1部をTHF150部に溶かした後、1M/LのメチルマグネシウムブロマイドTHF溶液21部を加え、75℃で30分反応させた。その反応溶液に[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]−ジクロロニッケル(II)0.1部を加え、75℃のまま、更に5時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、メタノール20部を加えた。溶剤を留去した後、反応混合物をソックスレー抽出器に移し、メタノール150部とヘキサン150部で順に洗浄した。最後に残留物をクロロホルム150部で抽出し、溶剤を留去してポリ[3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェン]3.1部を得た。前述の1H−NMRを用いた方法で算出した立体規則性は96.3%であった。
【0058】
<製造例2>:ポリ[3−(1,4,7,10,13,16,19−ヘプタオキサエイコシル)チオフェン](P−2)の合成
製造例1の(1)において、トリエチレングリコールモノメチルエーテルをヘキサエチレングリコールモノメチルエーテル(東京化成社製)としたこと以外は製造例1と同様の実験操作を行い、立体規則性が95.1%であるポリ[3−(1,4,7,10,13,16,19−ヘプタオキサエイコシル)チオフェン]2.9部を得た。
尚、トリエチレングリコールモノメチルエーテルをヘキサエチレングリコールモノメチルエーテルに変更するに際して、反応成分のモル比及び非反応成分(溶剤等)の重量比が、製造例1における場合と同等となるように各原料の量を調整して実験操作を行った。以下の製造例3、4及び6についても同様に行った。
【0059】
<製造例3>:ポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)(P−3)の合成
製造例1の(1)において、トリエチレングリコールモノメチルエーテルを1−ヘプタノールとしたこと以外は製造例1と同様の実験操作を行い、立体規則性が95.4%であるポリ(3−ヘプチルオキシチオフェン)2.7部を得た。
【0060】
<製造例4>:ポリ(3−ドデシルチオフェン)(P−4)の合成
製造例1の(3)において、2,5−ジブロモ−3−(1,4,7,10−テトラオキサウンデシル)チオフェンを2,5−ジブロモ−3−ドデシルチオフェン(アルドリッチ社製)としたこと以外は製造例1と同様の実験操作を行い、立体規則性が96.4%であるポリ(3−ドデシルチオフェン)3.5部を得た。
【0061】
<製造例5>:ポリ{3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン}(P−5)の合成
(1)3−ブロモメチルチオフェンの合成:
3−メチルチオフェン[東京化成工業(株)製]5部(50.9mmol)、N−ブロモスクシンイミド9.97部(56.0mmol)、ジベンゾイルパーオキサイド[東京化成工業(株)製]0.12部(0.50mmol)をベンゼン30部に溶解させた後、100℃まで昇温し、4時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液30部を加え、分液ロートに移した後、水層を分離した。更に有機層を蒸留水30部で2回洗浄した後、ベンゼンを留去し、3−ブロモメチルチオフェン6.32部(35.7mmol)を得た。
【0062】
(2)3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェンの合成:
2−エトキシエタノール3.54部(39.3mmol)をTHF15部に溶解させ、そこに水素化ナトリウム(60%パラフィン分散)を加えた。上記の3−ブロモメチルチオフェン6.32部(35.7mmol)をTHF15部に溶かし、2時間かけて滴下した後、100℃まで昇温し、4時間反応させた。反応終了後、室温まで放冷し、蒸留水30部を加え、分液ロートに移した後、水層を分離した。更に有機層を蒸留水30部で2回洗浄した後、THFを留去し、得られた混合物をシリカゲルカラムで精製することにより、3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン5.68部(30.5mmol)を得た。
【0063】
(3)2,5−ジブロモ−3−(2,5−ジオキサペンチル)チオフェンの合成:
上記の3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン5.68部(30.5mmol)とN−ブロモスクシンイミド11.9部(67.1mmol)をTHFに溶解させ、室温で2時間反応させた。酢酸エチル50部を使ってグラスフィルターで沈殿物を除去し、THFと酢酸エチルを留去した。得られた混合物をシリカゲルカラムで精製することにより、2,5−ジブロモ−3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン8.11部(23.6mmol)を得た。
【0064】
(4)ポリ{3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン}(P−5)の合成:
上記の2,5−ジブロモ−3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン8.11部(23.6mmol)をTHF30部に溶かした後、メチルマグネシウムブロマイドTHF溶液25部を加え、75℃で30分反応させた。その反応溶液に[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]−ジクロロニッケル(II)0.127部を加え、75℃のまま、さらに、2時間反応させた。反応溶液を室温まで放冷した後、メタノール5部を加えた。反応混合物をソックスレー抽出機に移し、メタノール150部とヘキサン150部で順に洗浄した。最後に残留物をクロロホルム150部で抽出し、溶剤を留去して、立体規則性が94.6%であるポリ{3−(2,5−ジオキサヘプチル)チオフェン}2.85部を得た。
【0065】
<製造例6>:ポリ{3−(2,5−ジオキサヘキシル)チオフェン}(P−6)の合成
2−エトキシエタノール3.54部の代わりに2−メトキシエタノール2.99部[東京化成工業(株)製]を使用したこと以外は製造例5と同様にして、立体規則性が95.8%であるポリ{3−(2,5−ジオキサヘキシル)チオフェン}2.40部を得た。
【0066】
<比較製造例1>:ポリアニリン水分散体の合成
硫酸0.49g(5.0mmol)と水25.9gを混和した水溶液に、アニリン0.93g(10mmol)を加え、更に、分子量が12万のポリスチレンスルホン酸アンモニウムの30重量%水溶液20.1g(30mmol)を加えた。水溶液のpHは4.0であった。0℃に冷却した後、過硫酸アンモニウム1.14g(5mmol)を水10gに溶解した水溶液を30分間で滴下し、更に、2時間撹拌した。反応中、濃アンモニア水を滴下し、pHを2〜5の範囲に保った。反応終了後、アセトニトリル300ml中に入れ、析出沈澱をイソプロピルアルコールで洗浄し、ろ別、乾燥し、水分散性ポリアニリン組成物5.8gを得た。得られた水分散性ポリアニリン組成物2gを水98gに溶解させてポリアニリン水分散体とした。
【0067】
<実施例1〜12>
製造例1〜6で得られた導電性高分子(P−1)〜(P−6)と、表1に示したドーパント及び有機溶剤とを、表1に示した重量比率で配合することにより、本発明の導電性コーティング組成物(A−1)〜(A−12)を得た。
【0068】
【表1】

【0069】
<比較例1>
比較製造例1で得られたポリアニリン水分散体(Q−1)を、そのまま比較用の導電性コーティング組成物(A’−1)とした。
【0070】
<比較例2>
ポリチオフェンの水分散体として知られている、「PEDOT/PSS」(H.C.スタルク社製のBaytron−P;3,4―エチレンジオキシチオフェンを高分子量ポリスチレンスルホン酸水溶液中で重合してなる導電性ポリマー)(Q−2)をそのまま比較用の導電性コーティング組成物(A’−2)とした。
【0071】
<評価例1〜12及び比較評価例1〜2>
実施例1〜12の導電性コーティング組成物(A−1)〜(A−12)及び比較用の導電性コーティング組成物(A’−1)〜(A’−2)を用いて、コンデンサ特性の評価を以下の方法で行った。結果を表2に示す。
【0072】
[コンデンサ特性の評価方法]
(1)陽極上の誘電体膜の作製
陽極金属としてのアルミニウムエッチド箔(サイズ:4×3.3mm)を、3重量%アジピン酸アンモニウム水溶液に浸漬し、定電流定電圧電源装置を用いて0.53mA/secの条件で、0Vから40Vまで上げた後、40Vの定電圧を40分間印加して化成処理し、該アルミニウムエッチド箔の表面に酸化皮膜からなる誘電体膜を形成した。これを脱イオン水の流水により10分洗浄してから105℃で5分乾燥を行ない、陽極金属と誘電体膜とからなる陽極を作製した。得られた陽極を前記アジピン酸アンモニウム水溶液中に浸漬し、120Hzで静電容量測定し、その値である4.2μFを理論静電容量とした。
【0073】
(2)誘電体膜上の導電性コーティング膜の作製
導電性コーティング組成物(A−1)〜(A−12)及び(A’−1)〜(A’−2)に陽極を浸漬し、引き上げた後、室温で30分減圧乾燥を行うことにより、電解質層を形成した。
(3)電解コンデンサの作製
上記で得られた電解質層の上に、カーボンペースト[日本黒鉛(株)製の「バニーハイトFU」]を塗布、乾燥後、更に、銀ペースト[日本黒鉛(株)製の「エブリオームME」]を塗布乾燥し、陰極を形成した。銀ペーストからリード線を引き出し、端子を接続した。
【0074】
(4)測定及び評価
得られた電解コンデンサの120Hzでの静電容量及び100kHzでの内部抵抗をLCRメーターで測定し、リークの有無を以下の基準で評価した。
<リークの評価基準>
LCRメーターで測定時に、リーク電流が低下せずに静電容量、内部抵抗が測定できなかったものを×とし、リーク電流が低下して静電容量、内部抵抗が測定できたものを○とした。
【0075】
【表2】

【0076】
表2に示す通り、本発明の導電性コーティング組成物を使用した固体電解コンデンサは、コンデンサとして必要な低い内部抵抗を維持したまま、理論静電容量(4.2μF)近くの値が得られている。これに対して比較例1の導電性コーティング組成物を使用したコンデンサでは内部抵抗が高く、かつ、理論静電容量の半分程度しか得られておらず、比較例2の導電性コーティング組成物を使用したコンデンサでは、リークが大きく、測定不能であった。
【0077】
<評価例13〜24及び比較評価例3>
実施例1〜12の導電性コーティング組成物(A−1)〜(A−12)及び比較用の導電性コーティング組成物(A’−1)を用いて、コーティング膜の導電性の測定及び耐熱性試験を、以下の方法で行った。結果を表3に示す。
【0078】
[コーティング膜の導電率の測定方法]
(1)コーティング膜の作製
スライドガラス(76mm×26mm、厚さ1.0mm)にバーコーター(No.6)を用いて、導電性コーティング組成物(A−1)〜(A−6)及び(A’−1)を塗布し、室温で30分間減圧乾燥した後、130℃の恒温乾燥機で2時間加熱処理を行なって、評価例13〜18用の導電性コーティング膜及び比較評価例3用の導電性コーティング膜を作製した。
また、導電性コーティング組成物(A−1)〜(A−6)を用いて、上記方法において加熱処理を行わない以外は同様にして、評価例19〜24用の導電性コーティング膜を作製した。
【0079】
(2)膜厚の測定
導電性コーティング膜の膜厚を、デジタル膜厚計DG−925[小野測器(株)製]を用いて測定した。
(3)導電率の算出
導電性コーティング膜の表面抵抗を、Lоresta GP TCP−T250[三菱化学(株)製]を用いて4端子法により測定し、得られた表面抵抗値と膜厚から、導電率を下式により算出した。
導電率(S/cm)=1/{膜厚(cm)×表面抵抗(Ω/□)}
【0080】
[耐熱性の試験方法]
上記の「コーティング膜の導電率の測定」において表面抵抗を測定した導電性コーティング膜を、125℃の恒温乾燥機内で240時間連続して加熱した。加熱後、室温まで放冷し、加熱後の表面抵抗値を上記の方法で測定し、導電率を算出した。耐熱性試験前後の導電率から保持率を算出した。
【0081】
【表3】

【0082】
表3から、本発明の導電性コーティング組成物から作製したコーティング膜は、導電性が高く、かつ、耐熱性試験後の保持率も高いことがわかる。
また、本発明の導電性コーティング組成物から作製した導電性コーティング膜を加熱処理することにより、導電性コーティング膜の導電性及び耐熱性が向上することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の導電性コーティング組成物は、溶剤溶解性に優れ、かつ、導電性も高く、導電性コーティング組成物として広く有用である。特に、固体電解コンデンサ用電極としては、簡便な工程で導電性高分子を多孔体皮膜に含浸させ、効率的にコンデンサ容量を高めることができるため有用である。また、本発明の導電性コーティング組成物を用いて、高温条件下での導電性の低下が小さく、耐熱性に優れた、導電性コーティング膜を容易に作製することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオフェン繰り返し単位のうちの少なくとも一部が、
(a)炭素数2〜4のオキシアルキレン基繰り返し単位を1〜9個有し、片末端が炭素数1〜15のアルコキシ基であるポリエーテル基、
(b)アルコキシ基、
(c)アルコキシアルキル基又は
(d)前記ポリエーテル基(a)で置換されているか若しくは置換されていないアルキル基で、チオフェン環の3位及び/又は4位が置換されたチオフェン繰り返し単位(α)である置換ポリチオフェン(P)及びドーパント(D)を含有することを特徴とする導電性コーティング組成物(A)。
【請求項2】
前記チオフェン繰り返し単位(α)が、一般式(1)で表される繰り返し単位(α1)、一般式(2)で表される繰り返し単位(α2)又は一般式(3)で表される繰り返し単位(α3)である請求項1記載の導電性コーティング組成物。
【化1】






【化2】






【化3】






[式中、OR1及びOR4はそれぞれ独立にオキシエチレン基又はオキシプロピレン基を表し、R2、R5及びR6はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜4の直鎖又は分岐のアルキレン基を表し、n及びmはそれぞれ独立に0〜5の整数である。]
【請求項3】
前記繰り返し単位(α1)が、一般式(1)におけるOR1がオキシエチレン基であり、nが0の場合にはR2が炭素数3〜12の直鎖又は分岐のアルキル基であり、nが1以上の場合にはR2が炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基であるものであり、前記繰り返し単位(α2)が、一般式(2)におけるR3が炭素数1〜3のアルキレン基であって、OR4がオキシエチレン基であり、mが0の場合にはR5が炭素数3〜12の直鎖又は分岐のアルキル基であり、mが1以上の場合にはR5が炭素数1〜6の直鎖又は分岐のアルキル基であるものであり、前記繰り返し単位(α3)が、一般式(3)におけるR6が炭素数3〜12の直鎖又は分岐のアルキル基であるものである請求項2記載の導電性コーティング組成物。
【請求項4】
前記置換ポリチオフェン(P)における前記チオフェン繰り返し単位(α)の含有量が、置換ポリチオフェン(P)中、50〜100重量%である請求項1〜3のいずれか記載の導電性コーティング組成物。
【請求項5】
前記ドーパント(D)が、硫酸又はクロラニル酸である請求項1〜4のいずれか記載の導電性コーティング組成物。
【請求項6】
前記置換ポリチオフェン(P)中のヘッドtoテール−ヘッドtoテール結合の百分率で定義される立体規則性が、90%以上である請求項1〜5のいずれか記載の導電性コーティング組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか記載の導電性コーティング組成物を用いてなる固体電解コンデンサ用電極。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか記載の導電性コーティング組成物を基質に塗布後、加熱処理する工程を含む導電性コーティング膜の製造方法。
【請求項9】
加熱処理温度が100℃〜190℃であり、加熱処理して得られた導電性コーティング膜を125℃で240時間加熱した後の導電率の保持率が10〜100%である請求項8記載の製造方法:ただし、導電率の保持率(%)=σ1×100/σ0である。
(式中、σ0は125℃、240時間加熱前に室温で測定されたコーティング膜の導電率を、σ1は125℃、240時間加熱後に室温まで放冷して測定されたコーティング膜の導電率を表す。)

【公開番号】特開2010−248487(P2010−248487A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−59499(P2010−59499)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】