説明

導電性ペースト、導電性ペーストの製造方法、および、多層配線基板

【課題】鉛を含有していないので環境負荷を低減する点から好ましく、また、多層配線基板に積層後においてビアホールに欠陥の発生がなく、ビアホールの接続信頼性が高く、ビアホールの抵抗値を非常に小さくすることができる、バインダー樹脂を含有しないビアホール充填用導電性ペーストを提供する。
【解決手段】110℃以上240℃以下の融点を有する鉛非含有はんだ粒子と、粒度分布の累積粒度曲線における積算量が90%である粒子径D90が0.1μm以上5μm以下の金属微粒子と、分散媒とを含む導電性ペーストとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビアホールに充填してビアを形成するための導電性ペーストに関し、特に、複数の配線基板同士を積層してなる多層配線基板のビアホールに充填するのに用いる導電性ペーストに関する。
【背景技術】
【0002】
高度情報化社会の進展により、電子機器の情報処理の高速化(動作周波数の高速化)、情報通信の周波数広帯域化(ブロードバンド)が進み、電子機器に搭載される基板としては、高密度な多層配線基板が求められている。また、その配線基板材料は、比誘電率、誘電正接が低いことが求められている。
【0003】
この高密度な多層配線基板としては、90年代より、ガラスエポキシ基板からなるコア層の上下に感光性エポキシ樹脂からなるビルドアップ層を逐次積み上げたビルドアップ多層基板が提案されている。このビルドアップ多層基板は、従来の多層基板に比較して微細配線が容易なため、今日では、多くの電子機器に採用されている。
【0004】
しかしながら、ビルドアップ多層配線基板においては、基板の絶縁信頼性を確保する必要上、コア基板の貫通スルーホール径や配線間隔が、コア層の上下に積層されるビルドアップ層のビア径や配線間隔に比較して大きい点、また、各層間の接続をするビア配線が銅めっきで形成されているため、製造プロセス上、ビアの上にビアを形成することができない点、といった問題があった。よって、ビルドアップ多層配線基板においては、近年要求されている、更なる高密度化に対応するには限界が見えはじめていた。
【0005】
これらの問題を解決するものとして、最近では、配線設計の自由度が高く、かつ、伝送特性に優れたコアレス全層IVH(Interstitial Via Hole)基板が注目されている。このコアレス全層IVH基板における各層間の接続をするビア配線は導電性ペースト組成物で形成されている。よって、ビアの上にビアを形成するビアオンビア構造、および、パッドオンビア構造を形成することが可能であり、近年の更なる高密度化の要求に十分対応するものである。
【0006】
ビアホール充填用の導電性ペースト組成物は、一般的には、導電粒子、樹脂および溶剤から構成される。ビアホール充填用の導電性ペースト組成物は、これらの各成分をプラネタリーミキサーで粗練し、3本ロールで混練し、さらにプラネタリーミキサーで脱泡して、製造される。
【0007】
ビアホール充填用の導電性ペースト組成物としては、大別して、金属圧接ペーストと金属拡散ペーストがある。金属圧接ペーストは、溶剤揮発、樹脂の硬化収縮、積層圧力により金属粒子が接触して導通を図るものである。金属圧接ペーストにおける金属粒子としては、銀粉、銅粉、銀コート銅粉等が用いられる。
【0008】
金属拡散ペーストは、積層温度よりも低温で融解し、導体パターンである銅箔に金属拡散する金属粒子を含有し、溶剤揮発、積層圧力により、この金属粒子が拡散アロイ化して導通を図るものである。このため、金属拡散ペーストにおいては、高接続信頼性が期待できる。
【0009】
金属拡散ペーストにおいて用いられる金属粒子としては、共晶はんだ(Sn/Pb:mp183℃)、鉛非含有はんだ粉(例えば、Sn/Ag/Cu:mp220℃)、Snめっき(Sn:mp232℃)Cuコア、SnめっきAgコア等を挙げることができる。このうち、共晶はんだはPbを含有しており環境負荷が大きいため使えず、SnめっきCuコア、SnめっきAgコアはコストが高く好まれない。従って、金属拡散ペーストにおいて用いられる金属粒子としては、鉛非含有はんだ粉(無鉛はんだ粒子)が用いられることが多い。
【0010】
特許文献1には、絶縁基板、導体配線層、バイアホール導体を具備する配線基板が記載されている。このバイアホール導体を形成する導電性ペーストとして、特許文献1の実施例においては、銀被覆銅粉末、Pb−Sn合金、エポキシ樹脂、溶剤を含有する導電性ペーストが記載されている。この発明においては、配線基板作製時における加熱により、溶融した錫成分が銅成分と反応し、CuSn等の金属間化合物が生成される。そして、金属間化合物が銅粉末間、あるいは、銅粉末と導体配線層間とを強固に接合し、耐熱性、導電性を良好にすることができる、と記載されている。
【0011】
特許文献2には、鉛非含有はんだ粒子である第1の合金粒子、Au、Ag、Cuからなる群から選ばれる少なくとも1種以上である第2の金属粒子と、バインダー樹脂を含むビアホール充填用導電性ペースト組成物が記載されている。
【特許文献1】特許第3187373号公報
【特許文献2】特開2007−96120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1に記載の導電性ペーストは、はんだとして鉛を含有したものを使用している。このような鉛含有はんだは、鉛含有はんだを使用した配線基板等を廃棄した際に、この基板から鉛が溶出して、地下水が汚染されるおそれがあり、環境負荷が大きいため問題があった。また、電子部品のPbフリー化の方向に逆行するものであった。
【0013】
また、特許文献2に記載のペーストは、鉛非含有はんだを用いると共に、樹脂を含有するペーストである。しかし、より高性能な配線基板を作製するという観点から、ビア中の導電性ペースト組成物は高度に金属拡散接合し、ビアの抵抗値が非常に低いことが要求されている現状からすると、特許文献2に記載のペーストは、バインダー樹脂を含むため、ビアの抵抗値を下げる、放熱性を向上させるといった点においては、依然改良の余地が残っているものであった。
【0014】
そこで、本発明は、鉛を含有していないので環境負荷を低減する点から好ましく、また、多層配線基板に積層後においてビアホールに欠陥の発生がなく、ビアホールの接続信頼性が高く、ビアホールの抵抗値を非常に小さくすることができる、バインダー樹脂を含有しないビアホール充填用導電性ペーストを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の鉛非含有はんだ粒子、特定の範囲の粒子径を有する金属微粒子、および、分散媒を含む導電性ペーストにおいて、上記課題を解決できることを見出し、以下の発明を完成させた。
第1の本発明は、110℃以上240℃以下の融点を有する鉛非含有はんだ粒子と、粒度分布の累積粒度曲線における積算量が90%である粒子径D90が0.1μm以上5μm以下の金属微粒子と、分散媒とを含む導電性ペーストである。
【0016】
第1の本発明において、導電性ペーストは、さらに、有機金属化合物を含むことが好ましい。有機金属化合物は、加熱処理過程で分解して活性な金属原子を生成し、これが金属微粒子相互の低温短時間焼結を促進させる。
【0017】
第1の本発明において、有機金属化合物は、脂肪酸金属塩であることが好ましい。さらに、脂肪酸金属塩は、3級脂肪酸金属塩および/または脂肪酸金属塩とアミン化合物とを反応させて得られる有機金属化合物(アミン配位脂肪酸金属塩)であることが好ましく、特に、脂肪酸金属銀、あるいは、3級脂肪酸金属銀および/または脂肪酸金属銀とアミン化合物とを反応させて得られる有機金属化合物であることが好ましい。これら好ましい形態の有機金属化合物を用いることで、より低温で分解して活性な金属原子を生成することができる。
【0018】
第1の本発明において、分散媒に対する有機金属化合物の質量比は、0.25以上10.0以下であることが好ましい。この範囲に調整することで、導電性ペーストの印刷特定、均一分散性を良好にし、短時間焼成可能なものとすることができる。
【0019】
第1の本発明において、有機金属化合物に対する金属微粒子の質量比は、0.5以上5以下であることが好ましい。この範囲に調整することで、短時間焼成可能なものとすることができる。得られた焼結体の導電性を良好にでき、また、焼結体の質が脆くなるのを防ぐことができる。
【0020】
第1の本発明において、鉛非含有はんだ粒子は、Sn、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Sb、Sn−Bi、Sn−In、Sn−Zn、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−In、Sn−Ag−In−Bi、Sn−Zn−Bi、Sn−Ag−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、および、Sn−Ag−Cu−Sb、からなる群から選ばれる一種以上の鉛非含有はんだ粒子であることが好ましい。これらの鉛非含有はんだ粒子は、錫を金属拡散させるという効果において信頼をおけるものである。
【0021】
第1の本発明において、金属微粒子は、常圧下での沸点が200℃以下で電離定数Kaが1.0×10−5以上の有機酸で処理された金属微粒子であることが好ましい。このような所定の有機酸で処理された金属微粒子を用いることにより、有機酸で処理された金属微粒子の表面において、低温加熱下でエネルギー状態の高い活性な金属原子が増加することにより低温短時間焼結が可能となる。
【0022】
第1の本発明において、有機酸は、炭素数1〜3の有機酸であることが好ましい。このような有機酸を用いることで、溶融塩の分解後における有機物の残存を防ぎ、高活性金属原子による焼結を妨げない。
【0023】
第1の本発明において、金属微粒子は、銀および/または銅微粒子であることが好ましく、さらに、銀微粒子であることがより好ましい。これにより、加熱処理後に得られた焼結体の抵抗を低くすることができる。
【0024】
第1の本発明において、分散媒は、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エステル系溶剤、および飽和炭化水素系溶剤からなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。これらの分散媒は、導電性ペーストに用いられる金属微粒子等の材料と反応せずに、導電性ペーストの分散安定性、化学的安定性を保持することができる。
【0025】
第2の本発明は、分散工程を含むことを特徴とする、第1の本発明の導電性ペーストの製造方法である。第1の本発明の導電性ペーストは、所定の材料を分散装置にて分散させるだけで、簡易に製造することができる。
【0026】
第2の本発明は、分散工程として、分散媒に金属微粒子を加えて分散させた後、有機金属化合物を加えて再度分散させる工程を含むことが好ましい。有機金属化合物が存在する状態で、金属微粒子を分散媒中に分散させると、有機金属化合物が系内の粘度を増加させ、金属微粒子の分散性を低下させる。この結果として、焼結体に不均一箇所が生じ、それにより欠陥が生じる虞がある。上記の有機金属化合物を加えて再度分散さえる工程を含むことにより、このような問題を防止することができる。
【0027】
第3の本発明は、第1の本発明の導電性ペーストをビアホールに充填してなる導通部を有する多層配線基板である。本発明の多層配線基板は、第1の本発明の導電性ペーストを用いて形成されているので、ビアホールの抵抗値が非常に小さく、吸湿耐熱性、接続信頼性、および、導体接着強度に優れたものである。
【発明の効果】
【0028】
本発明の導電性ペーストは鉛を含有していないため、環境負荷を低減する点から好ましい。また、鉛非含有はんだ成分が、金属微粒子、導体パターンを形成する金属との間において高度に金属拡散接合し、また金属ナノ粒子よりも大きな粒子径の金属微粒子も相互に焼結する。これにより本発明の導電性ペーストを用いた多層配線基板を、そのビアホールの抵抗値を非常に小さいものとすることができると共に、吸湿耐熱性、接続信頼性、および導体接着強度に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。
【0030】
[導電性ペースト]
本発明の導電性ペーストは、鉛非含有はんだ粒子、金属微粒子、分散媒を含むものである。さらに、有機金属化合物を含んでいてもよい。
【0031】
<鉛非含有はんだ粒子>
本発明において使用する鉛非含有はんだ粒子は、110℃以上240℃以下の融点を有する鉛非含有はんだ粒子である。このような鉛非含有はんだ粒子としては、例えば、Sn、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Sb、Sn−Bi、Sn−In、Sn−Zn、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−In、Sn−Ag−In−Bi、Sn−Zn−Bi、Sn−Ag−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、および、Sn−Ag−Cu−Sb、を挙げることができる。さらに、これらの鉛非含有はんだ粒子の組成と融点を以下に記述する。
【0032】
Sn(232℃)、SnAg3.5(221℃)、SnCu0.7(227℃)、SnSb5(232−240℃)、SnBi58(138℃)、SnIn52(118℃)、SnZn9(199℃)、SnAg4Cu0.5(217−224℃)、SnAg3.9Cu0.6(217−223℃)、SnAg3Cu0.5(217−220℃)、SnAg3.5Cu0.9(217℃)、SnAg3.8Cu0.7(217−218℃)、SnAg2.8In20(175−187℃)、SnZn8Bi3(191―198℃)、SnAg3.4Bi4.8(201−215℃)、SnAg2Bi7.5(191−216℃)、SnAg1Bi57(137−139℃)、SnAg2.5Cu0.5Bi1(214−221℃)、SnAg2Cu0.75Bi3(207−218℃)、SnAg2.5Cu0.8Sb0.5(217−225℃)、SnAg0.2Cu2Sb0.8(219−235℃)、SnAg3.5In4Bi0.5(210−215℃)、SnAg3.5In8Bi0.5(197−208℃)。なお、上記の各元素の後の数字は、該元素の組成(質量%)を表している。また、Snの組成は他の成分以外であり、例えば、「SnAg3.5」では、Sn96.5質量%、Ag3.5質量%である。
【0033】
これらの鉛非含有はんだ粒子は、錫を金属拡散させるという効果において信頼をおけるものである。また、これらの鉛非含有はんだ粒子の二種以上の混合物を使用することもできる。
鉛非含有はんだ粒子の平均粒径は、20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。このような粒径とすることによって、導電性ペーストをビアホールに充填しやすくなり、また、金属拡散が生じやすくなる。
【0034】
<金属微粒子>
本発明に係る金属微粒子の粒子径とは、粒度分布における累積粒度曲線においてその積算量が90%を占めるときのD90における粒子径のことである。
【0035】
本発明で用いる金属微粒子は、粒度分布の累積粒度曲線における積算量が90%である粒子径D90が0.1μm以上であり、好ましくは0.2μm以上、更に好ましくは0.3μm以上である。金属微粒子の粒子径D90が小さすぎると、表面活性が高すぎて、強い分散剤で被覆する必要があり、分散剤の被覆により安定化するが故に、低温焼成時に被覆分散剤が脱離し難く低温短時間焼結の妨げになる虞がある。また、金属微粒子の粒子径D90の上限は5μm以下であり、好ましくは2μm以下、更に好ましくは1μm以下である。金属微粒子の粒子径D90が大きすぎると、導電性ペーストにおいて金属微粒子が沈殿してしまい均一な導電性ペーストに成り難く、分散安定性が悪くなるといった問題点がある。
【0036】
また、本発明に係る金属微粒子の金属の種類は特に限定されないが、導電性ペーストの加熱処理後の低抵抗化を考慮すると、銅、銀、パラジウム、白金等の貴金属が好ましく、特に銀、銅が好ましく、とりわけ銀が好ましい。金属微粒子はこれらの金属の2種以上の合金よりなるものであっても良く、2種以上の金属微粒子の混合物であっても良い。また、金属微粒子の表面を他の金属で被覆したコアシェル型微粒子であっても良い。具体的には、銀微粒子と銅微粒子との混合物や、銀/銅合金の微粒子や、また、銀微粒子表面を銅で被覆したコアシェル型微粒子を挙げることができる。
また、金属微粒子は金属化合物微粒子であっても良い。金属化合物微粒子としては、酸化銀、酸化銅、酸化パラジウム、酸化白金等の酸化金属微粒子が好ましく、中でも、酸化銀、酸化銅微粒子が好ましい。
【0037】
(有機酸処理金属微粒子)
本発明に係る金属微粒子は、所定の有機酸で処理された金属微粒子(以下、有機酸処理金属微粒子という場合がある。)であることが好ましい。このような所定の有機酸で処理された金属微粒子を用いることにより、有機酸で処理された金属微粒子の表面において、低温加熱下でエネルギー状態の高い活性な金属原子が増加することにより低温短時間焼結が可能となる。より詳細には、低温加熱下において、金属微粒子表面において、正帯電原子と有機酸アニオンから溶融塩が形成され、この溶融塩が還元的に熱分解して高活性金属原子が形成され、これにより低温短時間焼結が可能となる。
【0038】
本発明の有機酸処理金属微粒子は、金属微粒子を、常圧下での沸点が200℃以下で、電離定数Kaが1.0×10−5以上の有機酸で処理してなるものである。具体的には、金属微粒子に該有機酸を担持してなるもの、または担持後に有機溶剤で洗浄したものである。
【0039】
有機酸の電離定数Kaが1.0×10−5より小さいと、加熱処理過程において前述した高活性金属原子を形成するための溶融塩を形成し難くなる。また、有機酸の常圧下での沸点が200℃よりも高いものであると、溶融塩の分解後に有機物が残存してしまい、前述した高活性金属原子による焼結の障害となってしまう問題が生じる。
【0040】
有機酸の常圧下での沸点は、好ましくは150℃以下、より好ましくは120℃以下である。有機酸の電離定数Kaは、好ましくは5.0×10−5以上、より好ましくは7.0×10−5以上である。また、炭素数が過度に多い有機酸であると溶融塩の分解後に有機物が残存し易くなり、前述した高活性金属原子による焼結の障害となってしまうことから、炭素数が1〜3の有機酸が好ましい。
【0041】
以下に、本発明に好適な有機酸の分子式、融点、常圧下での沸点、および、電離定数Kaを示すが、本発明で用い得る有機酸は、以下のものに限定されない。これらの有機酸のうち、ギ酸、トリフルオロ酢酸が好ましく、ギ酸がより好ましい。なお、有機酸は1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0042】
【表1】

【0043】
上記した有機酸で金属微粒子を処理して、有機酸処理金属微粒子を得る方法は、特に限定されないが、有機酸と金属微粒子を撹拌、混合し、余剰の有機酸を金属微粒子から分離した後、金属微粒子を乾燥するかあるいは有機溶媒で洗浄する方法が好ましい。この処理方法において、乾燥または有機溶媒による洗浄前に、撹拌、混合、分離を繰り返しても良い。また、この処理方法において、有機酸が溶解する溶剤と有機酸とを混合した溶液を用いても良い。この場合、該溶液の濃度を調節することにより金属微粒子への有機酸の担持量を調節することができる。
【0044】
この有機酸による処理方法において、撹拌、混合、分離の手段は特に限定されない。上記乾燥手段としては、自然乾燥、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下での自然乾燥、室温真空乾燥等が好ましい。また、乾燥手段において、機械的な粉砕手段を併用しても良い。乾燥手段において乾燥時間、真空度などを調節することにより金属微粒子への有機酸の担持量を調節することができる。
【0045】
また、有機酸の担持後、有機溶媒で洗浄する場合において、用いる有機溶媒としては、アセトン、シクロヘキサノン、インホロン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等のエーテル系溶剤、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶剤、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤等、或いはこれらの有機溶媒の2種以上の混合溶剤を用いることができる。
【0046】
このような有機溶媒による洗浄方法としては、有機酸を担持させた金属微粒子と有機溶媒とを、混合、撹拌した後、固液分離し、その後乾燥する方法が挙げられる。洗浄に用いる有機溶媒量は任意である。また、有機酸担持後の金属微粒子を有機溶媒で洗浄する場合は、前述の如く、有機酸と金属微粒子とを撹拌、混合、分離した後、乾燥を行った後に有機溶媒で洗浄しても良く、乾燥を行わずに有機溶媒で洗浄しても良いが、乾燥を行わずに有機溶媒で洗浄することが効率的である。
【0047】
この有機溶媒による洗浄方法において、撹拌、混合、分離の手段は特に限定されないが、乾燥手段においては、自然乾燥、室温真空乾燥などが好ましい。また、前記乾燥手段において、機械的な粉砕手段を併用しても良い。有機酸担持後の金属微粒子をこのような有機溶媒で洗浄する際の有機溶媒の種類、使用量や洗浄方法、洗浄時間等を適宜調整することにより、金属微粒子への有機酸の担持量を調節することができる。
【0048】
本発明における有機酸処理の別の方法としては、有機酸の蒸気に金属微粒子を曝す方法が挙げられる。この方法では、有機酸の分圧、暴露時間を調節することにより金属微粒子への有機酸の担持量を調節することができる。この場合においても、この担持処理後に、上述のように有機溶剤による洗浄を行っても良い。
【0049】
上述した方法によって有機酸処理された金属微粒子が得られるが、この処理の程度によって、金属微粒子表面における有機酸の担持量が異なってくる。金属微粒子への有機酸の担持量に関しては、前述したように低温焼結が可能となる高活性金属原子の増加が得られる量であれば良く、特に限定されない。
【0050】
なお、前述したように、有機酸で処理された金属微粒子の表面においては、低温加熱下でエネルギー状態の高い活性な金属原子が増加することにより低温短時間焼結が可能となる。この場合、低温加熱下で高活性な金属原子が増加した金属微粒子相互はもとより、高活性な金属原子が増加した金属微粒子と高活性な金属原子の少ない金属微粒子との間においても、増加した高活性な金属原子の表面拡散により低温焼結が可能となる。
【0051】
従って、本発明の有機酸処理金属微粒子を使用する場合、本発明の有機酸処理金属微粒子と有機酸で処理されていない金属微粒子とを含む混合物を用いても良い。この場合、有機酸で処理されていない金属微粒子は、有機酸処理金属微粒子の金属微粒子と同一の金属からなる微粒子であっても良く、異なるものであっても良い。いずれの場合においても、本発明の有機酸処理金属微粒子による低温短時間焼結性を有効に発揮させるためには、全金属微粒子の質量を基準(100質量%)として、10質量%以上、好ましくは20質量%以上を有機酸処理金属微粒子とすることが好ましい。
【0052】
<有機金属化合物>
本発明の導電性ペーストは、有機金属化合物を含有していることが好ましい。有機金属化合物としては、加熱処理過程において分解して活性な金属原子を生成することが可能な脂肪酸金属塩が好ましく、特に低温焼成で分解して活性な金属原子を生成可能な3級脂肪酸金属塩および/または脂肪酸金属塩とアミン化合物とを反応させて得られる脂肪酸金属塩にアミン化合物が配位した構造を有するもの(以下「アミン配位脂肪酸金属塩」という場合がある。)が好ましい。より低温で分解して活性な金属原子が生成可能なことから、前記3級脂肪酸金属塩および/または脂肪酸金属塩にアミン化合物を反応させて得られるものの脂肪酸金属塩は、脂肪酸銀塩であることが好ましい。
【0053】
また、本発明において使用し得る脂肪酸金属塩を構成する脂肪酸としては、脂肪酸金属塩の分解後に有機物が残存し難いことから、炭素数5〜30、特に7〜20、とりわけ8〜15のものが好ましく、具体的には次のようなものが挙げられる。
【0054】
(1級脂肪酸)
ヘキサン酸
オクタン酸
デカン酸
ドデカン(ラウリン)酸
テトラデカン(ミリスチン)酸
ヘキサデカン(パルミチン)酸
オクタデカン(ステアリン)酸
【0055】
(2級脂肪酸)
2−エチル酪酸
2−メチルヘキサン酸
2−エチルヘキサン酸
2−プロピルペンタン酸
【0056】
(3級脂肪酸)
ピバリン酸
ネオヘプタン酸
ネオノナン酸
ネオデカン酸
【0057】
これらのうち、本発明においては、前述の如く、特に3級脂肪酸金属塩、とりわけ、3級脂肪酸銀塩が好ましく、従って、3級脂肪酸銀塩としては、ピバリン酸銀塩、ネオヘプタン酸銀塩、ネオノナン酸銀塩、ネオデカン酸銀塩などが挙げられる。この中で、低温で分解し有機物の残存の影響が少ないことから特にネオデカン酸銀塩を用いることが好ましい。
【0058】
また、脂肪酸金属塩に反応させるアミン化合物は、脂肪酸金属塩と反応しうるものであれば良く、特に限定はされないが、前記脂肪酸金属塩の場合と同様に、アミン配位脂肪酸金属塩の分解後に有機物が残存し難いことから炭素数が3〜20の1、2、3級アミンが好ましく、さらに好ましくは炭素数が5〜10の1、2、3級アミンである。さらにまた、形成されるアミン配位脂肪酸金属塩の安定性の面から、炭素数が5〜10の1級または2級アミンがより好ましい。具体的にはアミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、イソペンチルアミン、2−メチルブチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、N−メチルブチルアミンなどが挙げられる。
【0059】
本発明に係るアミン配位脂肪酸金属塩は、前記脂肪酸金属塩と上記アミン化合物とをモル比(脂肪酸金属塩:アミン化合物)で、好ましくは1:2〜1:20、より好ましくは1:2〜1:10で仕込み、不活性ガス雰囲気下で加熱して反応させることにより得ることができる。不活性ガス雰囲気下の加熱反応において、反応終了前に未反応のアミン化合物が気化してしまう場合は、アミン化合物の仕込み量を脂肪酸金属塩とアミン化合物のモル比1:2よりも多くなるようにし、反応終了後に未反応のアミン化合物を減圧留去する。加熱温度、加熱時間は生成した有機金属化合物が分解しない範囲に抑えるようにしつつ、前記脂肪酸金属塩およびアミン化合物の種類によって適宜調節すれば良い。また、前述したようにアミン化合物の仕込み量を脂肪酸金属塩とアミン化合物のモル比1:2よりも多くし、反応終了後に未反応のアミン化合物を減圧留去してアミン配位脂肪酸金属塩を得る場合の減圧留去においても、生成したアミン配位脂肪酸金属塩が分解しないように真空度、加熱温度および加熱時間を適宜調節すれば良い。
また、反応に用いるアミン化合物は、反応前に水酸化カリウムなどの脱水剤と共に加熱還流を行って脱水操作を行っても良い。
【0060】
脂肪酸金属塩とアミン化合物との反応時の加熱温度は、好ましくは30℃以上130℃以下、より好ましくは40℃以上100℃以下で、加熱時間は、好ましくは5分以上4時間以下、より好ましくは15分以上3時間以下である。
【0061】
上記のように反応して得られるアミン配位脂肪酸金属塩としては、特に、脂肪酸金属塩にアミン化合物が2配位したものが好ましく、また、このようなアミン化合物が2配位したアミン配位脂肪酸金属塩を主成分とするものが好ましい。ここで、主成分とは、有機金属化合物全体を基準(100質量%)として、該アミン化合物が2配位したアミン配位脂肪酸金属塩を80質量%以上、好ましくは90質量%以上含有していることをいう。
【0062】
これらの有機金属化合物が加熱処理過程で分解して生成する活性な金属原子は、前述した本発明の有機酸処理金属微粒子表面で加熱処理過程において前記有機酸から生成する活性な金属原子と同様である。よって、有機金属化合物は、本発明の金属微粒子相互の低温短時間焼結を促進させる点において、本発明の導電性ペーストの構成要素として有効である。また、これらの有機金属化合物が加熱処理過程で分解して生成する活性な金属原子は、本発明の有機酸処理金属微粒子が低温で形成する焼結体層の隙間空間を埋めることが可能である。これにより、より緻密な焼結体層が形成される。よって、有機金属化合物は、良好な電気伝導度を達成することができる点においても、本発明の導電性ペーストの構成要素として有効である。
【0063】
本発明の導電性ペーストにおいて、これらの有機金属化合物は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。なお、本発明の導電性ペーストには、上述の有機金属化合物と共に、一般的な分散剤を併用しても良く、この場合、前記有機金属化合物と併用可能な分散剤として、次のようなものを用いることができる。
BYK−Chemie社製分散剤BYKシリーズ、ソルビタンモノラウレートに代表されるソルビタン誘導体(SPANシリーズ、Tweenシリーズ)、アニオン系界面活性剤(スルホン酸系、カルボン酸系)、カチオン系界面活性剤(4級アンモニウム塩系)、アルキルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリピリジン、ポリスチレンスルホン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、あるいはこれらの共重合体。これらの併用可能な分散剤についても1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0064】
本発明の導電性ペーストにおける、金属微粒子と上記有機金属化合物の含有比率(金属微粒子/有機金属化合物)は、質量比で、好ましくは0.5以上5以下、より好ましくは1以上3以下である。この範囲よりも有機金属化合物の含有比率が多くなると、加熱分解に要する時間がかかるため、短時間焼成を妨げることになる。あるいは、焼成後の焼結膜等の焼結体内に残存する有機成分が多くなり、導電性を妨げることになる。一方、この範囲よりも金属微粒子の含有比率が多くなると、焼結膜等の焼結体の膜質が脆くなり、かつ基材との密着性を低下させてしまう。
【0065】
また、有機金属化合物と共に、前記併用可能な分散剤を混合使用する場合、焼成後の焼結膜等の焼結体内に残存する有機成分量を少なくし、導電性を極端に妨げないようにするために、前記併用可能な分散剤と前記有機金属化合物の含有比率は、質量比で、併用可能な分散剤/有機金属化合物=0.001以上0.5以下の範囲とすることが好ましい。
【0066】
<分散媒>
本発明に係る導電性ペーストに用いられる分散媒は、鉛非含有はんだ粒子、金属微粒子(または有機酸処理金属微粒子)および必要に応じて用いられる有機金属化合物や前記併用可能な分散剤と反応せずに、導電性ペーストの分散安定性、化学的安定性が保たれるものであれば特に制限されない。分散媒としては、例えば、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジオクチルアミン、N−メチルブチルアミン、トリエチルアミン、トリオクチルアミン等のアミン系溶剤、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカンなどの飽和炭化水素系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤、THF、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の酢酸エステル系溶剤などが例示される。中でも、チクソトロピー性等の導電性ペーストにおける良好な印刷物性を付与するためには、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エステル系溶剤、飽和炭化水素系溶剤が好ましく、これらのうち、特に、導電性ペーストの化学的安定性のためには、グリコールエーテル系溶媒、酢酸エステル系溶剤が好ましい。
【0067】
また、アミン系溶剤の場合、導電性ペースト製造前に水酸化カリウムなどの脱水剤と共に加熱還流を行って脱水操作を行っても良い。また、溶剤の沸点および蒸発速度、導電性ペーストのレオロジー特性、基材への濡れ性が良好となるものが好ましく、そのためには、イソホロン、エチルセロソルブ、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ジプロピルアミン、N−メチルブチルアミンが好ましい。これらの分散媒は、1種を単独で用いても良く、2種以上を混合して用いても良い。
【0068】
本発明の導電性ペーストにおける分散媒の含有割合は、次のような固形分濃度の導電性ペーストを調製することができるような含有割合であることが好ましい。即ち、本発明の導電性ペーストの固形分濃度は、該導電性ペーストの分散安定性を得るため、および導電性ペーストを用いて均一な膜厚および均一な膜質を有する塗布膜を得るために、前記金属微粒子、必要に応じて用いられる前記有機金属化合物、および、前記併用可能な分散剤の総量を固形分とした場合の固形分濃度として、50質量%以上95質量%以下が好ましく、60質量%以上90質量%以下がより好ましい。従って、このような固形分濃度となるように、分散媒使用量が調節される。
【0069】
後の導電性ペーストの製造方法において説明するが、金属微粒子、分散媒、および、必要に応じて用いられる有機金属化合物等を、まず混合して、金属微粒子組成物が形成され、その後、この金属微粒子組成物に鉛非含有はんだ粒子が混合されて、導電ペースト組成物を形成することが、金属微粒子の分散性の点から好ましい。このような観点から、上記の分散媒使用量の範囲における固形分として、鉛非含有はんだ粒子を除いたものが挙げられている。
【0070】
また、本発明の導電性ペーストにおいて、分散媒に対する前記有機金属化合物の含有比率(有機金属化合物/分散媒)は、質量比で、好ましくは0.25以上10.0以下、より好ましくは0.35以上8.0以下である。この範囲よりも分散媒の含有比率が多くなると焼成時の分散媒の揮発に要する時間が長くなるため、短時間焼成を妨げることになり、また導電性ペーストの良好な印刷特性の一つであるチクソトロピー性を損なってしまう。一方、この範囲よりも有機金属化合物の含有比率が多くなると有機金属化合物の加熱分解に要する時間が長くなるため、短時間焼成を妨げることになり、また、金属微粒子および有機金属化合物の分散性が悪くなり、導電性ペーストの均一分散性が損なわれる。
【0071】
また、本発明の導電性ペーストにおいて、鉛非含有はんだ粒子と金属微粒子組成物(金属微粒子+分散媒+好ましくは有機金属化合物)の配合比(鉛非含有はんだ粒子/金属微粒子組成物)は、質量比で、80/20〜20/80であることが好ましく、70/30〜30/70であることがより好ましく、60/40〜40/60であることが特に好ましい。上記範囲外であると、印刷適性が悪くなったり、導体パターンの金属との拡散接合が不良になる場合がある。
【0072】
[導電性ペーストの製造方法]
本発明の導電性ペーストの製造方法としては、前記鉛非含有はんだ粒子、金属微粒子、分散媒、必要に応じて用いられる前記有機金属化合物、前記併用可能な分散剤を混合、分散させて、均一な導電性ペースト状に加工する方法であれば良く、特に制限されない。具体的には、ボールミル、ジェットミル、アイガーミル、ペイントシェーカー、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ロールミル、ニーダー、混練機等を用いる方法が挙げられる。
【0073】
また、金属微粒子の分散性を高める点から、まず、金属微粒子、分散媒、必要に応じて用いられる前記有機金属化合物等を混合、分散させて、金属微粒子組成物を形成してから、この金属微粒子組成物と鉛非含有はんだ粒子とを混合させる方法が、本発明においては、好ましい。
【0074】
特に、有機金属化合物を含む本発明の形態の導電性ペーストの製造方法としては、前記金属微粒子を分散媒に加えて分散させた後に、有機金属化合物を加えて再度分散させる分散工程を含む製造方法であることが好ましい。即ち、有機金属化合物共存下で本発明の金属微粒子を分散媒中に分散させると、有機金属化合物が系内の粘度を増加させるために、本発明の金属微粒子の分散性を低下させ、この結果、形成される焼結膜に金属微粒子の凝集塊に由来する突起が見られるなど、膜欠陥が生じるといった問題点がある。従って、金属微粒子を予め分散媒中に分散させた後、有機金属化合物を加えてさらに分散させる方法が好ましい。
【0075】
[多層配線基板]
次に、本発明の導電性ペーストを用いてなる多層配線基板について説明する。多層配線基板に使用する絶縁材料については、特に限定されず、後述するポリアリールケトン樹脂と非晶性ポリエーテルイミド樹脂との混合組成物や、液晶ポリマー、熱可塑性ポリイミド樹脂等の熱可塑性樹脂組成物や、ガラスクロスやアラミド繊維に含浸させたエポキシ樹脂、BTレジン、熱硬化ポリイミド樹脂からなる熱硬化性樹脂組成物や、アルミナや低温焼成セラミック(LTCC)からなるセラミックが使用可能である。
【0076】
上記の中でも、金属拡散接合を促進するためには、導電性ペースト中の鉛非含有はんだ粒子と熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁材料との関係が重要であり、鉛非含有はんだ粒子の融点において、貯蔵弾性率が10MPa以上7GPa未満である熱可塑性樹脂組成物を用いることが好ましい。なお、熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率は、粘弾性評価装置を用い、測定周波数1Hzで昇温速度3℃/分で測定した値である。
【0077】
熱可塑性樹脂組成物が10MPa以上7GPa未満の貯蔵弾性率を有するものとすることは、鉛非含有はんだ粒子の融点において、熱可塑性樹脂組成物にある程度の柔軟性を持たせると共に、溶融せずにある程度の弾性率を保持させていることを意味している。
【0078】
図1に、本発明の導電ペーストを用いた多層配線基板の製造方法の概略を示す。上記のように、鉛非含有はんだ粒子の融点において、熱可塑性樹脂組成物が溶融せずに、ある程度の弾性率を保持することによって、配線基板100を熱融着により積層する際に、導電性ペーストをビアホール30の側面である熱可塑性樹脂組成物により締め付けることができ、導電性ペーストに圧力をかけることができる。これにより、鉛非含有はんだ粒子中の錫成分が金属微粒子および/または導体パターン20を形成する金属中に拡散し、金属拡散接合を形成させることができると考えられる。
【0079】
上記観点から、ポリアリールケトン樹脂と非晶性ポリエーテルイミド樹脂の混合組成物を用いることが好ましい。絶縁材料を構成する熱可塑性樹脂組成物として、ポリエーテルエーテルケトンおよび非晶性ポリエーテルイミドの混合組成物を使用した場合は、図2に示すように、130℃以上240℃以下という鉛非含有はんだ粒子の融点における、熱可塑性樹脂組成物の貯蔵弾性率は、10MPa以上7GPa未満となっている。
【0080】
<熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10>
熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10を形成する熱可塑性樹脂組成物としては、260℃以上の結晶融解ピーク温度(Tm)を有する、ポリアリールケトン樹脂および非晶性ポリエーテルイミド樹脂の混合組成物を用いることが好ましい。なお、ポリアリールケトン樹脂および非晶性ポリエーテルイミド樹脂は相溶系であり、これらの混合組成物は一つの結晶融解ピーク温度を有する。つまり、上記においては、ポリアリールケトン樹脂および非晶性ポリエーテルイミド樹脂の混合組成物が示す一つの結晶融解温度が260℃以上であることを意味している。
【0081】
このポリアリールケトン樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合およびケトン結合を含む熱可塑性樹脂であり、その代表例としては、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトンケトン等があり、中でも、ポリエーテルエーテルケトンが好ましい。なお、ポリエーテルエーテルケトンは、「PEEK151G」、「PEEK381G」、「PEEK450G」(いずれもVICTREX社の商品名)等として市販されている。
【0082】
また、非晶性ポリエーテルイミド樹脂は、その構造単位に芳香核結合、エーテル結合およびイミド結合を含む非晶性熱可塑性樹脂であり、特に制限されるものではない。なお、ポリエーテルイミドは、「Ultem CRS5001」、「Ultem 1000」(いずれもゼネラルエレクトリック社の商品名)等として市販されている。
【0083】
ポリアリールケトン樹脂および非晶性ポリエーテルイミド樹脂の混合割合としては、積層する他の配線基板100a、300との密着性を考慮した場合、ポリアリールケトン樹脂を30質量%以上かつ70質量%以下含有し、残部を非晶性ポリエーテルイミド樹脂および不可避不純物とした混合組成物を用いることが好ましい。ここで、ポリアリールケトン樹脂の含有率を30質量%以上かつ70質量%以下と限定した理由は、ポリアリールケトン樹脂の含有率が高すぎると、熱可塑性樹脂組成物の結晶性が高いために多層化する際の積層性が低下するからであり、また、ポリアリールケトン樹脂の含有率が低すぎると、熱可塑性樹脂組成物全体としての結晶性自体が低くなり、結晶融解ピーク温度が260℃以上であってもリフロー耐熱性が低下するからである。
【0084】
この熱可塑性樹脂組成物は無機充填材を含有していてもよい。無機充填材としては、特に制限はなく、公知のいかなるものも使用できる。例えば、タルク、マイカ、雲母、ガラスフレーク、窒化ホウ素(BN)、板状炭カル、板状水酸化アルミニウム、板状シリカ、板状チタン酸カリウム等が挙げられる。これらは1種類を単独で添加してもよく、2種類以上を組み合わせて添加してもよい。特に、平均粒径が15μm以下、アスペクト比(粒径/厚み)が30以上の鱗片状の無機充填材が、平面方向と厚み方向の線膨張係数比を低く抑えることができ、熱衝撃サイクル試験時の基板内のクラック発生を抑制することができるので、好ましい。
【0085】
この無機充填材の添加量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して20質量部以上かつ50質量部以下が好ましい。無機充填材の添加量が多すぎると、無機充填材の分散不良の問題が発生し、線膨張係数がばらつき易くなったり、強度低下を招き易くなったりするからである。また、無機充填材の添加量が少なすぎると、線膨張係数を低下させて寸法安定性を向上させる効果が小さく、リフロー工程において他の配線基板300や導電パターン20との線膨張係数差に起因する内部応力が発生し、基板にそりやねじれが発生するからである。
【0086】
また、熱可塑性樹脂組成物は、その性質を損なわない程度に、他の樹脂や無機充填材以外の各種添加剤、例えば、安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、核剤、着色剤、滑剤、難燃剤等を適宜含有していてもよい。これら無機充填材を含めた各種添加剤を添加する方法としては、公知の方法、例えば下記に挙げる方法(a)、(b)を用いることができる。
【0087】
(a)各種添加剤を、ポリアリールケトン樹脂および/または非晶性ポリエーテルイミド樹脂の基材(ベース樹脂)に高濃度(代表的な含有量としては10〜60質量%程度)に混合したマスターバッチを別途作製しておき、これを使用する樹脂に濃度を調整して混合し、ニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法。(b)使用する樹脂に直接各種添加剤をニーダーや押出機等を用いて機械的にブレンドする方法。これらの方法の中では、(a)の方法が分散性や作業性の点から好ましい。さらに、熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10の表面には積層性を向上させる目的でコロナ処理等を適宜施しても構わない。
【0088】
<熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10を備えた配線基板100aの製造方法>
図1(a)〜(e)に、単層の配線基板100aを製造する工程を示した。まず、図1(a)に示すように、熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10を用意する。絶縁基材10は、フィルム、薄板状またはシート状が好ましく、成形方法としては、公知の方法、例えばTダイを用いる押出キャスト法、あるいはカレンダー法等を採用することができ、特に限定されるものではないが、シートの製膜性や安定生産性等の点から、Tダイを用いる押出キャスト法が好ましい。Tダイを用いる押出キャスト法での成形温度は、用いる樹脂の流動特性や製膜性等によって適宜調整されるが、概ね、260℃以上の結晶融解ピーク温度を有する、ポリアリールケトン樹脂および非晶性ポリエーテルイミド樹脂の混合組成物の場合、360〜400℃である。また、押出キャスト製膜時に急冷製膜することにより非晶性フィルム化することが必要である。これにより、170〜230℃付近に弾性率が低下する領域を発現するので、この温度領域での熱成形、熱融着が可能となる。詳細には、170℃付近で弾性率が低下し始め、200℃付近において熱成形、熱融着が可能となる。また、図2に示したグラフは、昇温速度を3℃/分として弾性率を測定したものであるが、昇温速度を10℃/分とすると、非晶から結晶への転移が遅れて、230℃付近において弾性率がもっとも低くなる。
【0089】
次いで、図1(b)に示すように、熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10の表面に金属箔が貼り付けられる。上記したように熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10は非晶性の状態であるため、熱可塑性樹脂の結晶化が大きく進行しないガラス転移温度の少し上の温度での比較的短時間での熱圧着により、絶縁基材の結晶化を進行させずに金属箔を貼り付けることができる。また、絶縁基材10を製膜する際に金属箔を同時にラミネートして図1(b)の段階にしても良い。金属箔としては、例えば、銅箔を挙げることができる。
【0090】
次いで、図1(c)に示すように、絶縁基材10の所定位置に、レーザー若しくは機械ドリル等を用いてビアホール30を形成する。次いで、金属箔の表面にレジストを回路パターン状に塗布して、エッチング、レジスト除去する等の通常の方法により、図1(d)に示すように、導体パターン20が形成される。なお、ビアホール30を形成してから、銅箔を貼り付けて、導体パターン20を形成してもよいし、導体パターン20を形成してから、ビアホール30を形成してもよく、各手順の順序は特に限定されない。次いで、ビアホール30に、真空印刷によって、導電性ペーストを充填してビア40を形成し、図1(e)に示すような単層の配線基板100aが作製される。
【0091】
<熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10の温度に対する弾性率の挙動>
ここで、熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10の温度に対する弾性率の挙動について説明する。熱可塑性樹脂組成物として、260℃以上の結晶融解ピーク温度(Tm)を有する、ポリアリールケトン樹脂および非晶性ポリエーテルイミド樹脂の混合組成物であって、特に、ポリアリールケトン樹脂としてポリエーテルエーテルケトンを使用した場合における絶縁基材10の、温度に対する弾性率の挙動を図2に示した。
【0092】
「積層前」と表示されているのが、多層配線基板200として積層する前における、絶縁基材10の温度に対する弾性率の挙動を示したグラフである。また、「積層後」と表示されているのが、所定の条件において加熱・加圧することによって多層配線基板200とした後における、絶縁基材10の温度に対する弾性率の挙動を示したグラフである。積層前の状態では、上記したように、絶縁基材10は急冷製膜することにより非晶性フィルム化されている。よって、200℃付近という比較的低温領域において弾性率が十分に低下する。これにより、積層前の絶縁基材10は、比較的低温において熱成形、熱融着することができる。
【0093】
非晶性フィルム化されている絶縁基材10は、多層配線基材200を製造する際における所定の条件下での加熱・加圧成形によって、結晶性フィルムへと変化する。これに伴って絶縁基材10の弾性率は大きく変化して、図2における積層後のグラフで示されるような挙動を示すようになる。これにより金属拡散接合を促進するという効果を発揮して、多層配線基板200を、そのビアホールの抵抗値を非常に小さくすることができると共に、吸湿耐熱性、接続信頼性、および導体接着力に優れたものとすることができると考えられている。
【0094】
<多層配線基板200の製造方法>
図1(e)〜(g)に、多層配線基板200aの製造工程を示した。図1(f)に示すように、作製した単層の配線基板100aを複数枚重ね合わせる。図示した形態においては、単層配線基板100aを三つ重ね合わせている。また、最下層の基板をその方向を変えて重ね合わせて、多層基板の外側に導体パターン20が形成されるようにしている。具体的には、図3に示すように、ヒーター内蔵の積層治具50内に下側より弾性および離型性を有するクッションフィルム51、配線基材100aを三つ、その上に、クッションフィルム51を重ねて、その後、押圧治具52を、図中に示した矢印の方向に押し下げることで、三つの配線基材100aを熱圧着し、これらを積層一体化して多層配線基板200aとする。各層の積層条件としては、金属拡散接合を効果的に起こらしめる観点から、温度:150℃以上260℃未満、圧力:3MPa以上8MPa未満、プレス時間:10分以上40分未満とすることが好ましい。なお積層温度は、鉛非含有はんだ粒子の融点以上とすることが好ましい。
【0095】
図1(h)〜(l)は、熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10を備えた配線基板100b、および、熱可塑性樹脂組成物以外からなる配線基板300を交互に重ね合わせて、多層配線基板200bを製造する工程を示した図である。まず、図1(h)に示すように、熱可塑性樹脂組成物からなる絶縁基材10を用意する。成形方法については、図1(a)の場合と同様である。次いで、図1(i)に示すように、絶縁基材10の所定位置に、レーザー若しくは機械ドリル等を用いてビアホール30が形成される。そして、真空印刷によって、形成されたビアホール30に導電性ペーストが充填され、図1(j)に示すようなビア40が形成された単層の配線基板100bが製造される。
【0096】
次いで、図1(k)に示したように、製造した単層の配線基板100bと、この配線基板100bとは異なる熱可塑性樹脂組成物以外からなる配線基板300とを交互に重ね合わせる。図示した形態においては、配線基板100bを真ん中にして、その両側に、熱可塑性樹脂以外からなる配線基板300が配置されている。
【0097】
そして、所定の条件において、各層が熱融着され、図1(l)に示すような多層配線基板200bが作製される。積層方法、積層条件は、上記の図1(g)において示した方法、条件と同様である。
【0098】
なお、図1(a)〜(g)に示した製造方法においては、単層配線基板100aの片面に導体パターン20を形成しており、また、図1(h)〜(l)に示した製造方法においては、単層配線基板100bに導体パターン20を形成せずに、熱可塑性樹脂組成物以外からなる配線基板300の両面に導体パターン20を形成しているが、製造する多層配線基板200a、200bにおいて所望の位置に導体パターン20が形成されるのであれば、単層配線基板100a、100b、300における導体パターンを形成する箇所は特に限定されず、適宜変更することができる。
【実施例】
【0099】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制約されるものではない。
【0100】
(実施例1)
銀微粒子(三井金属社製、粒子径D90=0.5μm)とギ酸(純度98〜100%)を重量比1:1.2の割合で混合、攪拌した後、遠心分離によりギ酸を除去した。その後、ギ酸と同体積のアセトンを加え混合、撹拌した後、遠心分離によりアセトンを除去し、窒素雰囲気下で乾燥させることによりギ酸処理銀微粒子を作製した。
【0101】
このギ酸処理銀微粒子19gに分散媒であるエチルセロソルブ10.5gを加え30分間超音波ホモジナイザーにより分散を行った。その後、3級脂肪酸銀塩であるネオデカン酸銀塩(和光純薬社製)を12.6g加えてタッチミキサーを10分間かけた。さらにその後に、10分間超音波ホモジナイザーをかけた。ここで、調製された銀微粒子組成物におけるエチルセロソルブに対するギ酸処理銀微粒子とネオデカン酸銀塩の固形分濃度は75.0重量%、固形分の重量比はギ酸処理銀微粒子:ネオデカン酸銀塩=1.5:1である。また、この銀微粒子組成物におけるネオデカン酸銀塩とエチルセロソルブの重量比(ネオデカン酸銀塩/エチルセロソルブ)は1.2である。
【0102】
鉛非含有はんだ粒子として、融点を217−220℃に有するSnAg3Cu0.5(平均粒径5.6μm)を準備した。
そして、上記銀微粒子組成物と鉛非含有はんだ粒子を質量比60/40(銀微粒子組成物/鉛非含有はんだ粒子)で配合したものをプラネタリーミキサーで粗練り後、3本ロールで混練し、さらにプラネタリーミキサーで脱泡し、ブルックフィールド粘度計DV−III スピンドルCP52(角度3.0°、φ2.4cm)で測定した25℃での粘度が33Pa・s(1rpm)の導電性ペーストを得た。
【0103】
次に熱可塑性樹脂からなる絶縁基材として、ポリエーテルエーテルケトン樹脂(製品名PEEK450G)とポリエーテルイミド樹脂(製品名PEI Ultem1000)を質量比40/60(ポリエーテルエーテルケトン/ポリエーテルイミド)で配合した樹脂混合物100質量部に、平均粒径3.5μm、平均アスペクト比50のマイカを無機充填材として39質量部加え溶融混練し、この混練品をさらにTダイを用いた押出しキャスト法にて急冷製膜し、厚さ100μmのフィルムを得た。
【0104】
このフィルムの、SnAg3Cu0.5の融点217−220℃における弾性率は、粘弾性測定装置で、1Hz、昇温速度3℃/分条件下で37MPaであった。また押出時に銅箔(厚さ12μm)をラミネートすることにより、フィルムの他に片面銅張板を作製した。
【0105】
次に、この片面銅張板の所定位置に、レーザーを用いて孔径100μmのビアホールを形成した。次いで、銅箔の表面にレジストを回路パターン状に塗布して、エッチング、レジスト除去する等の通常の方法により、図1(d)に示すように、有底ビアホールを有する導体評価パターンが形成された回路加工基板を作製した。次いで、このビアホールに、真空印刷手法を用い、上記で調整した導電性ペースト組成物を充填して、充填後125℃45分で溶剤を揮発させビアを形成し、図1(e)に示すような単層の配線基板100aを作製した。
【0106】
次に、作製した単層の配線基板100aを、最下層の単層基板のみをその方向を変えて3枚重ね合わせて、ビア中のSnAg3Cu0.5の融点217−220℃以上の240℃で5MPa30分の条件で、これらを一括積層して0.3mmの3層の多層配線基板200aを得た。
【0107】
(実施例2)
実施例1において銀微粒子組成物と鉛非含有はんだ粒子を質量比40/60(銀微粒子組成物/鉛非含有はんだ粒子)として導電性ペーストを得た以外は同様にして多層配線基板を得た。評価結果を表2に記す。
【0108】
(実施例3)
実施例1において鉛非含有はんだ粒子として、融点を138℃に有するSnBi58(平均粒径5.3μm)として導電性ペーストを得た以外は、実施例1と同様にして多層配線基板を得た。評価結果を表2に記す。
【0109】
(比較例1)
実施例1において鉛非含有はんだ粒子を含有せずに導電性ペーストを得た以外は、実施例1と同様にして多層配線基板を得た。評価結果を表2に記す。
【0110】
<評価方法>
上記で作製した多層配線基板に対して、以下の評価を行った。それぞれの評価結果を表
2に示す。
(接続信頼性)
上記の多層配線基板に対して、125℃で4時間乾燥する。そして、30℃、湿度85%の恒温恒湿槽に96時間おいて、その後ピーク温度250℃のリフロー炉で加熱処理を2度繰り返した後、以下の接続信頼性試験を行った。
【0111】
・熱衝撃試験
−25℃において9分、125℃において9分というサイクルを1000回繰り返した。
得られた多層配線基板を以下の基準により評価した。なお、抵抗変化率は、「|試験前抵
抗値−試験後抵抗値|/試験前抵抗値」×100(%)で表される値である。
○:抵抗変化率が、20%未満である。
×:抵抗変化率が、20%以上である。
【0112】
(導体接着強度)
多層配線基板上に表出した導体パターン部に針金を半田付けし、この針金を上に引き上
げ、導体パターン部を剥がした時の強度を測定した。
○:強度が1N/mm以上であった。
×:強度が1N/mm未満であった。
【0113】
【表2】

【0114】
本発明の導電性ペースト組成物を用いた多層基板は、全ての評価において良好な結果を示した(実施例1〜3)。これに対し比較例1においては、鉛非含有はんだ粒子を含有していないため、導電性ペースト組成物が導体パターンと金属拡散接合をせず、熱衝撃試験、導体接着強度において劣った結果を示した。
【0115】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ、好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う導電性ペースト、導電性ペーストの製造方法、および、多層配線基板もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】本発明の導電性ペースト組成物を用いた多層配線基板200の製造方法の概要を示した図である。
【図2】絶縁基材10を構成する特定の熱可塑性樹脂組成物の弾性率が、温度により変化する様子を示した図である。
【図3】配線基板100を熱圧着することにより多層配線基板200を製造するための積層治具50の概念図である。
【符号の説明】
【0117】
10 熱可塑性樹脂からなる絶縁基材
20 導体パターン
30 ビアホール
40 ビア
100a、100b 単層配線基板
200a、200b 多層配線基板
50 積層治具
51 クッションフィルム
52 押圧治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
110℃以上240℃以下の融点を有する鉛非含有はんだ粒子と、粒度分布の累積粒度曲線における積算量が90%である粒子径D90が0.1μm以上5μm以下の金属微粒子と、分散媒とを含む導電性ペースト。
【請求項2】
さらに、有機金属化合物を含む請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記有機金属化合物が脂肪酸金属塩である請求項2に記載の導電性ペースト。
【請求項4】
前記脂肪酸金属塩が、3級脂肪酸金属塩および/または脂肪酸金属塩とアミン化合物とを反応させて得られる有機金属化合物である、請求項3に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記脂肪酸金属塩が、脂肪酸銀塩である請求項3または4に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記分散媒に対する前記有機金属化合物の質量比が、0.25以上10.0以下である請求項2〜5のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記有機金属化合物に対する前記金属微粒子の質量比が、0.5以上5以下である請求項2〜6のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項8】
前記鉛非含有はんだ粒子が、Sn、Sn−Ag、Sn−Cu、Sn−Sb、Sn−Bi、Sn−In、Sn−Zn、Sn−Ag−Cu、Sn−Ag−In、Sn−Ag−In−Bi、Sn−Zn−Bi、Sn−Ag−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、および、Sn−Ag−Cu−Sb、からなる群から選ばれる一種以上の鉛非含有はんだ粒子である、請求項1〜7のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項9】
前記金属微粒子が、常圧下での沸点が200℃以下で電離定数Kaが1.0×10−5以上の有機酸で処理された金属微粒子である、請求項1〜8のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項10】
前記有機酸が、炭素数1〜3の有機酸である、請求項9に記載の導電性ペースト。
【請求項11】
前記金属微粒子が、銀および/または銅微粒子である、請求項1〜10のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項12】
前記金属微粒子が、銀微粒子である、請求項1〜10のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項13】
前記分散媒が、芳香族系溶剤、エーテル系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、酢酸エステル系溶剤、および飽和炭化水素系溶剤からなる群より選ばれる1種以上である、請求項1〜12のいずれかに記載の導電性ペースト。
【請求項14】
分散工程を含むことを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項15】
前記分散工程として、分散媒に金属微粒子を加えて分散させた後、有機金属化合物を加えて再度分散させる工程を含むことを特徴とする、請求項14に記載の導電性ペーストの製造方法。
【請求項16】
請求項1〜13のいずれかに記載の導電性ペーストをビアホールに充填してなる導通部を有する多層配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−27300(P2010−27300A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−185231(P2008−185231)
【出願日】平成20年7月16日(2008.7.16)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】