説明

導電性ペースト組成物およびプリント配線板

【課題】 一回の塗布作業で十分な厚さの塗布膜あるいは十分な高さのバンプを形成させることが可能な導電性ペースト組成物の提供。
【解決手段】 エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種のバインダー樹脂(成分(A))、粒径2.976〜10.10μmの粒子が40〜80%を占める導電性粉末(成分(B))、平均粒径が1〜11nmであるマイクロシリカ(成分(C))及び溶剤(成分(D))からなることを特徴とする、導電性ペースト組成物、およびこの導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とするプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な導電性ペースト組成物およびプリント配線板に関するものである。好ましくは、本発明は、多層プリント配線板の層間接続に用いられる電極バンプの形成に特に適した導電性ペースト組成物およびそれを用いたプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性ペースト組成物は、エレクトロニクス分野において、IC回路用、導電性接着剤、電磁波シールド等の多くの用途に使用されている。代表的な導電性ペースト組成物としては、バインダー樹脂、導電性粒子および溶剤を基本構成とするものを挙げることができる。
【0003】
このような導電性ペースト組成物をエレクトロニクス回路あるいは積層基板に塗布する際には、スクリーン印刷法や、デスペンサーを用いる手法等などが用いられている。例えば、特開2003−258025号公報等には、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、導電粉末、溶剤およびアルコールを含有してなる導電性ペーストを使って、特定範囲の温度で、アルコール濃度を制御して導電性ペーストを印刷することを特徴とするバンプの形成方法が提案されている。
【0004】
この特開2003−258025号公報の[0005]段落に記載されている通り、目標のバンプ高さを達成するためには、複数回印刷作業を実施し、導電性ペーストを重ね塗ることが行われている。
【特許文献1】特開2003−258025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、十分な厚さの導電性ペースト塗膜あるいは十分な高さのバンプを得る際には、複数回印刷作業を実施して導電性ペースト組成物を重ね塗りすることが行われている。
【0006】
しかし、印刷回ごとの位置的ずれおよび塗膜厚のバラツキ等の問題から、このように導電性ペーストを重ね塗る方法には、その塗布回数が増えるにつれて印刷精度が著しく低下するという問題があった。
【0007】
そして、生産性、経済性の観点からも、導電性ペースト組成物の塗布回数はできるだけ少ない方が良いことは言うまでもない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、主として特定の粒径分布を有する導電性粉末および特定粒径のマイクロシリカを用いることによって、1回の塗布操作で得られる導電性ペースト転移量(即ち、塗膜厚さ)を増大させることによって、印刷精度および生産性の向上を図るものである。
【0009】
したがって、本発明による導電性ペースト組成物は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種のバインダー樹脂(成分(A))、粒径2.976〜10.10μmの粒子が40〜80%を占める導電性粉末(成分(B))、平均粒径が1〜11nmであるマイクロシリカ(成分(C))、および溶剤(成分(D))からなること、を特徴とするものである。
【0010】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましい態様として、粘度が100〜700Pa・sのものである導電性ペースト組成物を包含する。
【0011】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましい態様として、スクリーン印刷法により厚さ80μm以上の塗膜を1回の印刷によって形成可能な導電性ペースト組成物を包含する。
【0012】
そして、本発明によるプリント配線板は、前記の導電性ペースト組成物を用いたこと、を特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の導電性ペースト組成物によれば、一回の塗布作業で十分な厚さの塗布膜を形成させることが可能である。また、従来より少ない塗布回数でも十分な高さのバンプを形成させることができる。
【0014】
よって、本発明によれば、導電性ペースト組成物の塗布回数を低減できるので、経済的かつ効率的に導電性層およびバンプを形成することができる。
そして、導電性ペースト組成物の塗膜を精度よく形成できるので、高品質のプリント配線板を容易にかつ経済的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
<導電性ペースト組成物>
本発明による導電性ペースト組成物は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種のバインダー樹脂(成分(A))、粒径2.976〜10.10μmの粒子が40〜80%を占める導電性粉末(成分(B))、平均粒径が1〜11nmであるマイクロシリカ(成分(C))、および溶剤(成分(D))からなること、を特徴とするものである。ここで、「導電性」とは、体積抵抗値が少なくとも1×10−3Ω・cm以下であることを意味する。また、「からなる」とは、上記必須成分(即ち、成分(A)〜(D))以外の他の成分(任意成分)が包含されていてもよいことを意味する。そのような成分(A)〜(D)以外の他の成分の具体例としては、例えば硬化剤、チクソトロピー付与剤、消泡剤、分散剤、防錆剤および還元剤等を挙げることができる。
【0016】
本発明による導電性ペースト組成物は、粘度が100〜700Pa・s、特に270〜500Pa・s、であるものが好ましい。なお、この粘度は、マルコム社製スパイラル粘度計で10rpm/min、25℃で測定したときのものである。
【0017】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、チクソ指数が0.2〜1.5、特に0.4〜1.1、であるものが好ましい。なお、このチクソ指数は、マルコム社製スパイラル粘度計で10rpm/min、5rpm/min、25℃で測定した導電性ペーストの粘度より、チクソ指数計算式log(5rpm時の粘度値/10rpm時の粘度値)/log〔10(rpm)/5(rpm)〕で算出したときのものである。チクソ指数は静置すると見掛け粘度が上がり、激しく混合すると見掛け粘度が低下して塗工しやすくなる性質をあらわす一指標である。
【0018】
(1) 成分(A)
本発明による導電性ペースト組成物の成分(A)は、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種のバインダー樹脂である。本発明でのバインダー樹脂は、導電性粉末(成分(B))およびマイクロシリカ(成分(C))の分散媒ないし粒子間結合物に相当するものであって、バインダー組成物として塗布された場合には、その後の乾燥状態において前記導電性粉末(成分(B))およびマイクロシリカ(成分(C))を三次元的に保持して、ペースト組成物により形成された塗膜領域に導電性を付与する機能を有するものである。従って、本発明による導電性ペースト組成物の成分(A)としては、そのような機能を発現する任意の樹脂を用いることができる。
【0019】
本発明では、従来のこの種の導電性ペースト組成物において用いられてきた樹脂を用いることができる。熱、光、触媒あるいは反応性物質の作用によって高分子化あるいは二次元的ないし三次元的架橋が生起ないし促進されて硬化する樹脂も、本発明の上記バインダー樹脂の対象になりえる。
【0020】
本発明では、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂のいずれか1種類を用いることができ、二種以上組み合わせて用いることもできる。また、前記の樹脂の1種類、または2種類以上を組み合わせたものに、さらに必要に応じフェノール樹脂を加えて用いることができる。具体的な樹脂の選択、ならびに樹脂の組合せおよびその配合比率等は、導電性ペースト組成物の具体的用途や、要求性能、例えば耐熱性、機械的強度、接着強度等や、作業性、経済性等を考慮して適宜決定することができる。
【0021】
本発明において成分(A)として使用する樹脂の好ましい組み合わせとしては、メラミン樹脂とフェノール樹脂、または、メラミン樹脂とエポキシ樹脂とフェノール樹脂、の組み合わせが挙げられる。
【0022】
そして、上記組み合わせの好ましい配合割合としては、メラミン樹脂とフェノール樹脂の組み合わせの場合は、(フェノール樹脂)/(メラミン樹脂) = 0/100 〜 75/25であり、より好ましくは25/75 〜 75/25が挙げられ、また、メラミン樹脂とエポキシ樹脂とフェノール樹脂の組み合わせの場合は、(フェノール樹脂)/(メラミン樹脂+エポキシ樹脂) = 0/100 〜 50/50であり、より好ましくは15/85 〜 50/50であるものを挙げることができる。
【0023】
(2) 成分(B)
本発明による導電性ペースト組成物の成分(B)は導電性粉末である。
この導電性粉末(成分(B))は、「粒径2.976〜10.10μmの粒子が40〜80%を占める」こと、即ち、「成分(B)として配合される導電性粒子の全数のうち、その40〜80%を、粒径2.976〜10.10μmの粒子が占めること」、が重要である。平均粒径が同程度のものであったとしても、粒径2.976〜10.10μmの粒子が占める割合が上記範囲外である場合には、本発明の効果を得ることはできない。特に80%超過の場合には、成分(B)を成分(A)中に分散させることが難しくなる。本発明では、粒径2.976〜10.10μmの粒子が、好ましくは45〜78%、特に好ましくは50〜76%、のものである。
【0024】
導電性粉末の種類は任意である。本発明では、各種の導電性微分末、例えば銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉、白金粉、パラジウム粉、半田粉、前記金属の合金粉末等の金属粉末等を使用することができる。また、金属以外の導電性微粉末、例えばカーボン粉末を使用することもできる。導電性粉末は、表面処理されたものであってもよい。導電性粉末の形状は、本発明の目的に反しない限り任意である。本発明では、例えば樹枝状、りん片状、球状の形態のものを用いることができる。
【0025】
なお、本発明の成分(B)において、粒子の「粒径」および「粒子の占める割合」は「レーザー回折・散乱法」によるものである。そのような「粒径」および「粒子の占める割合」の判定は、具体的には下記のようにして行うことができる。
【0026】
判定
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA社製、「LA−910」)を使用し、導電性粉末を酢酸エチル中に分散させたサンプルについて、セル内の撹拌を行いつつ、その粒度を測定する。測定データから粒径2.976から10.10μmまでの粒子の頻度%を求め、それらを合計して、導電性粒子の粒度%を算出する。これが40〜80%の範囲内にある導電性粉末を本発明の成分(B)と判定する。ここで、「頻度」とは、統計試料を分類し、いくつかの階級に分けたとき、各階級に属する試料の個数をあらわす。
【0027】
(3) 成分(C)
本発明による導電性ペースト組成物の成分(C)はマイクロシリカである。
このマイクロシリカは、平均粒径が1〜11nmであることが重要である。平均粒径が上記範囲外である場合には、本発明の効果を得ることはできない。ここでの平均粒径は、マイクロシリカを透過型電子顕微鏡(TEM)にて写真撮影し、一次粒子の径を少なくとの数万個測定し、その平均粒径を算出したときのものである。この平均粒径が1〜11nmの範囲内にあるマイクロシリカを本発明の成分(C)とする。なお、平均粒径が異なるマイクロシリカを複数混合した場合、混合物の平均粒径が1〜11nmの範囲内であれば良い。
【0028】
(4) 溶 剤
本発明で使用される溶剤としては、例えば前記のフェノール樹脂、メラミン樹脂ならびに導電性粉末とともにペースト組成物を形成可能な各種の有機溶剤を用いることができる。そのような有機溶剤の好ましい具体例としては、例えば酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ブチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、イソプロパノール、ブタノール、テルピネオール、チキサノール、ブチルセロソルブアセテート、イソホロン、ブチルカルビトールアセテートの単独またはこれらの混合溶剤を挙げることができる。
【0029】
(5) 上記以外の成分(任意成分)
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて各種の成分を含むことができる。そのような必要に応じて含むことが可能な成分の具体例としては、顔料、チクソトロピー付与剤、消泡剤、分散剤、防錆剤および還元剤等を挙げることができる。
【0030】
顔料
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて各種の有機または無機の顔料を含有することができ、そのような顔料によって導電性ペースト組成物の塗膜補強、機能付加、作業性改良、着色および増量等を図ることが可能になる。
【0031】
本発明では特に体質顔料、例えば炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等の単独またはこれらの混合物を用いることができる。
【0032】
(6) 配合割合
本発明による導電性ペースト組成物における各成分の好ましい成分の配合比率は、下記の通りである。
導電性粉末(成分(B))の配合量は、バインダー樹脂(成分(A))100質量部に対して100〜1800質量部、好ましくは400〜1000質量部、である。
マイクロシリカ(成分(C))の配合量は、バインダー樹脂(成分(A))100質量部に対して3〜35質量部、好ましくは10〜25質量部、である。
溶剤(成分(D))の配合量は、バインダー樹脂(成分(A))100質量部に対して10〜90質量部、好ましくは30〜70質量部、である。
【0033】
(7) 導電性ペースト組成物の利用
本発明による導電性ペースト組成物は、良好な導電性を有するものであり、例えばスクリーン印刷法、メタルマスク印刷法などの公知の印刷法によって基板上に印刷可能なものである。従って、本発明による導電性ペースト組成物は、従来同様に広範な分野において利用可能なものである。
【0034】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、1回の印刷作業当たりの塗膜厚さが厚いものであることから、十分な厚さの導電性層を効率的に形成可能なものである。
【0035】
従って、本発明による導電性ペースト組成物は、従来より少ない塗布回数で、例えばただ一回の塗布回数でも、十分な高さのバンプを形成させることができるので、生産性の向上を図ることができる。
【0036】
<プリント配線板>
本発明によるプリント配線板は、上記の導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とするものである。
このような本発明によるプリント配線板は、好ましい態様として、上記導電性ペースト組成物から形成されたバンプによって層間の電気的接続がなされたプリント配線板を包含する。
【実施例】
【0037】
<実施例1〜10および比較例1〜5>
下記のバインダー樹脂を使用し、マイクロシリカ、溶剤等を表1記載の質量割合で混合し、3本ロールで充分に混錬して、本発明による導電性ペースト組成物を製造した。この導電性ペースト組成物の粘度およびチキソ指数は表1に記載される通りである。
【0038】
・エポキシ樹脂 :ビスフェノールAエポキシ(エポキシ当量:100〜700)
・メラミン樹脂 :メチル化メラミン
・フェノール樹脂:ポリパラビニルフェノール(分子量:Mw4000〜6000)
この導電性ペーストを使用し、スクリーン(孔版)印刷を行った。具体的には、φ220μmの孔を空けたアルミニウム製のメタルマスク版を使用し、硬度80°のウレタン樹脂製のスキージを使用し、雰囲気条件を温度25℃、湿度55%に環境を制御しつつ、印刷を行って、バンプを形成させた。
形成されたバンプの高さおよび形状を評価した。結果は、表1に記載される通りである。なお、表1中の成分(B)部分にある「2.976〜10.10μm粒子の比率(%)」および「平均粒径」は、前記、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HORIBA「LA−910」にて算出された値である。
【表1】


【0039】
<評価>
上記の表1から明らかなように、特定の導電性粉末とマイクロシリカとを併用した実施例では、当該化合物を使用しない比較例に比べて、バンプ高さが劇的にアップしていることが分かる。また、バンプ形状も円錐状の形状であり、良好であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂およびポリエステル樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種のバインダー樹脂(成分(A))、
粒径2.976〜10.10μmの粒子が40〜80%を占める導電性粉末(成分(B))、 平均粒径が1〜11nmであるマイクロシリカ(成分(C))、および
溶剤(成分(D))からなることを特徴とする、導電性ペースト組成物。
【請求項2】
粘度が100〜700Pa・sのものである、請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
スクリーン印刷法により厚さ80μm以上の塗膜を1回の印刷によって形成可能な、請求項1または2に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とする、プリント配線板。

【公開番号】特開2006−286366(P2006−286366A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103926(P2005−103926)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】