説明

導電性ペースト組成物およびプリント配線板

【課題】孔径が小さいスクリーン版にも適用することができ、導電性ペースト塗布作業1回当たりの盛量が大きいとともに、導電性が良好な硬化物層を形成でき、硬化後の熱収縮が極めて少ない導電性ペースト組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂A、硬化剤B、導電性粉体C及び溶剤Dからなる導電性ペースト組成物であって、前記エポキシ樹脂Aが三官能以上のエポキシ樹脂A及び二官能エポキシ樹脂Aからなり、エポキシ当量が200〜400、エポキシ樹脂軟化点が80℃未満のものであり、かつ前記導電性粉体Cが平均粒径d50が0.5〜5μmかつ平均粒径d90が3〜8μmであり、粒径が10μmを超過する粒子の占める割合が0.50重量%以下のものであることを特徴とする導電性ペースト組成物、及びこの導電性ペースト組成物を用いたプリント配線板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、特に基材との接着性、耐熱性や高度が要求される電子回路形成用に使用できる導電性ペースト組成物、および導電性ペースト組成物を用いたプリント配線板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、導電性ペースト組成物は、エレクトロニクス分野において、IC回路用、導電性接着剤、電磁波シールド等多くの用途に使用されている。特に最近では、少なくとも一方の面の所定位置に導電性ペーストで作った円錐状導電バンプが設けられた第一の基板と、少なくとも一方の面に配線パターンが設けられた第二の基板とを、前記導電バンプが設けられた面および前記配線パターンが設けられた面を内側にして対向させ、前記第一の基板と前記第二の基板との間に絶縁体層を配置して積層体を構成し、該積層体を積層プレスすることにより絶縁体層の厚さ方向に前記バンプを貫通させて導電配線部を形成するプリント配線板の製造方法が提案されている(特開平6−350258号公報)。
【0003】
基板との接着力、耐熱性や硬度等の要求に対応したものとして、エポキシ樹脂、硬化剤、導電粉および溶剤を含み、エポキシ樹脂が三官能のエポキシ樹脂40〜100重量%、二官能エポキシ樹脂0〜60重量%からなり、硬化剤が潜在性硬化剤である軟化点が80〜130℃である導電性ペースト組成物が提案されている(特開2000−261116号公報)。
【特許文献1】特開平6−350258号公報
【特許文献2】特開2000−261116号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エレクトロニクス回路などの配線パターンの高精細化に伴い、細かい配線を精密に形成させるためには、それに応じて孔径が小さいスクリーン版を用いる必要がある。このようなことから、孔径が小さいスクリーン版に対しても目づまりが発生しない導電性ペーストが望まれている。孔径が小さいスクリーン版を用いる場合、一般に導電性ペーストの印刷作業1回当たりの盛量を多くすることが困難であることから、所望厚さの導電性層を形成させるためには導電性ペースト組成物の重ね塗り回数が多くなる。また、硬化の際あるいは硬化後において体積収縮が大きい導電性ペーストである場合、高精度かつ所望厚さの導電性層を効率的に形成させることが難しい。
【0005】
よって、導電性ペースト印刷作業1回あたりの盛量を増大させるとともに、硬化物の熱収縮率を抑制することは、高精度かつ所望厚さの導電性層を効率的に形成させるうえで重要となるが、そのような導電性ペーストを得ることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、孔径が小さいスクリーン版にも適用することができ、導電性ペースト塗布作業1回当たりの盛量が大きいとともに、導電性が良好な硬化物層を形成でき、硬化後の熱収縮が極めて少ない導電性ペースト組成物を提供するものである。
【0007】
したがって、本発明による導電性ペースト組成物は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、導電性粉体(C)および溶剤(D)からなる導電性ペースト組成物であって、 前記エポキシ樹脂(A)が、三官能以上のエポキシ樹脂(A)および二官能エポキシ樹脂(A)からなり、エポキシ当量が200〜400、エポキシ樹脂軟化点が80℃未満のものであり、かつ前記導電性粉体(C)が、平均粒径d50が0.5〜5μ、平均粒径d90が3〜8μmであり、粒径が10μmを超過する粒子の占める割合が0.50重量%以下の球状形状のものであること、を特徴とするものである。
【0008】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましくは、前記エポキシ樹脂(A)が、三官能以上のエポキシ樹脂(A)10〜95重量%および二官能エポキシ樹脂(A)5〜90重量%からなるもの、を包含する。
【0009】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましくは、前記導電性粉体(C)がタップ密度4.0〜6.0g/cmのもの、を包含する。
【0010】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましくは、前記導電性粉体(C)の含有量が80〜95重量%であるもの、を包含する。
【0011】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましくは、前記硬化剤(D)がイミダゾール系硬化剤であるもの、を包含する。
【0012】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましくは、粘度(25℃、10rpm)が130〜500Pa・Sであり、チクソ指数(10/20rpm)が0.4〜0.8であるもの、を包含する。
【0013】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、好ましくは、硬化後の熱収縮率が1%以下であるもの、を包含する。
【0014】
そして、本発明によるプリント配線板は、前記の導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とするもの、である。
【発明の効果】
【0015】
本発明による導電性ペースト組成物は、良好な導電性硬化物を形成可能なものであって、例えばスクリーン印刷法、メタルマスク印刷法などの公知の印刷法によって基板上に印刷可能なものである。従って、本発明による導電性ペースト組成物は、従来同様に広範な分野において利用可能なものである。
【0016】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、印刷適性が極めて良好なものであって、孔径が比較的大きいスクリーン版はもとより、孔径が小さいスクリーン版であっても目詰まりすることなく、極めて正確に導電性パターンを形成することができる。よって、本発明による導電性ペースト組成物によれば、細かい配線パターンを極めて正確かつ精密に形成することができる。
【0017】
また、本発明による導電性ペースト組成物は、導電性粉体の含有量が比較的多い場合であっても良好な印刷適性を有している。このように、十分な印刷適性を保持しながら導電性粉体の含有量を多くすることができるので、電気的特性が良好な導電性硬化物層を形成することができる。
【0018】
さらに、本発明による導電性ペースト組成物は、印刷作業1回当たりの導電性ペースト組成物の盛量が多い、即ち1回の印刷作業によって形成できる印刷層の厚さが大きいので、所望の厚さの導電性層を得るために繰返し行われる印刷の回数を低減ができる。
【0019】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、硬化物の熱収縮率が小さい。これにより、所望厚さの導電性層を得るために繰返し行われるスクリーン印刷の回数を低減することができ、正確かつ精密に所望の形状ないし高さの導電性硬化物を効率的に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<導電性ペースト組成物>
本発明による導電性ペースト組成物は、エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、導電性粉体(C)および溶剤(D)からなる導電性ペースト組成物であって、前記エポキシ樹脂(A)が、三官能以上のエポキシ樹脂(A)および二官能エポキシ樹脂(A)からなり、エポキシ当量が200〜400、エポキシ樹脂軟化点が80℃未満のものであり、かつ前記導電性粉体(C)が、平均粒径d50が0.5〜5μmかつ平均粒径d90が3〜8μmであり、粒径が10μmを超過する粒子の占める割合が0.50重量%以下の球状形状のものであること、を特徴とする。ここで、「エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉体および溶剤からなる」とは、上記の必須成分(即ち、エポキシ樹脂、硬化剤、導電性粉体および溶剤)以外の他の成分が共存する導電性ペースト組成物を排除しない。すなわち、本発明による導電性ペースト組成物は、上記必須成分のみからなる導電性ペースト組成物、および、上記必須成分とこれらの必須成分以外の他の成分を含んでなる導電性ペースト組成物の両者を包含する。また、上記おいて「導電性」とは、体積抵抗値が少なくとも1×10−3Ω・cm以下であることを意味する。
【0021】
本発明による導電性ペースト組成物は、粘度(25℃、10rpm)が130〜500Pa・s、特に150〜450Pa・s、であるものが好ましい。なお、この粘度(25℃、10rpm)は、ブルックフィールド社製ブルックフィールド粘度計(型式:DV‐II+型)で10rpm、25℃で測定したときのものである。
【0022】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、チクソ指数(10/20rpm)が0.40〜0.80、特に0.45〜0.75、であるものが好ましい。なお、このチクソ指数(10/20rpm)は、ブルックフィールド社製ブルックフィールド粘度計(型式:DV‐II+型)で、25℃の温度条件下、10rpmおよび20rpmで測定した導電性ペーストの粘度より、チクソ指数計算式log(5rpm時の粘度値/10rpm時の粘度値)/log 〔20(rpm)/5(rpm)〕で算出したときのものである。チクソ指数は静置すると見掛け粘度が上がり、激しく混合すると見掛け粘度が低下して塗工しやすくなる性質をあらわす一指標である。
【0023】
(1)エポキシ樹脂(A)
本発明におけるエポキシ樹脂(A)は、エポキシ当量が200〜400であり、そしてエポキシ樹脂軟化点が80℃未満のものである。エポキシ当量が220〜380のものが好ましく、250〜360のものが特に好ましい。エポキシ当量が200未満であるものは硬化速度は速すぎる点で好ましくなく、一方、エポキシ当量が400超過では低収縮率という効果を得ることが困難になる。
【0024】
また、本発明のエポキシ樹脂(A)は、エポキシ樹脂軟化点が75℃未満のものが好ましい。エポキシ樹脂軟化点が80℃以上では高粘度となり導電性粉体の充填量を多く出来ない点で好ましくない。エポキシ樹脂軟化点の下限値は20℃である。ここで、軟化点は、メイテック社製環球式自動軟化点試験器ASP−MG型によって1℃/minの条件にて測定されたときのものである。
【0025】
このような本発明のエポキシ樹脂(A)は、好ましくは、三官能以上のエポキシ樹脂(A)と二官能エポキシ樹脂(A)とを、エポキシ当量ならびにエポキシ樹脂軟化点が上記範囲内になるように混合することによって得ることができる。そのような好ましいエポキシ樹脂(A)としては、三官能以上のエポキシ樹脂(A)10〜95重量%、特に好ましくは30〜85重量%、および二官能エポキシ樹脂(A)5〜90重量%、特に好ましくは15〜75重量%、からなるものを挙げることができる。ここでは、エポキシ樹脂(A)の総計を100重量%とする。
【0026】
三官能以上のエポキシ樹脂(A)としては、エポキシ当量が好ましくは150〜250、特に好ましくは170〜220のものであり、樹脂軟化点が好ましくは90℃未満、特に好ましくは80℃未満のものを挙げることができる。三官能以上のエポキシ樹脂(A)の好ましい具体例としては、例えばフェノールノボラック型、ビスフェノールAノボラック型、オルソクレゾールノボラック型等の多官能タイプエポキシ樹脂を挙げることができる。これらの三官能以上のエポキシ樹脂は、二種以上併用することができる。特に好ましいエポキシ樹脂(A)としては、例えばフェノールノボラック型の三官能のエポキシ樹脂およびビスフェノールAノボラック型の三官能のエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0027】
二官能エポキシ樹脂(A)としては、エポキシ当量が好ましくは350〜750、特に好ましくは450〜700のものであり、樹脂軟化点が好ましくは90℃未満、特に好ましくは80℃未満のものを挙げることができる。
【0028】
二官能のエポキシ樹脂(A)の好ましい具体例としては、例えばビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビフェニル型、ナフタレン型、フルオレン型等のエポキシ樹脂を挙げることができる。これらの二官能エポキシ樹脂は、二種以上併用することができる。特に好ましい二官能のエポキシ樹脂(A)としては、例えばビスフェノールA型の二官能のエポキシ樹脂およびビスフェノールF型の二官能のエポキシ樹脂を挙げることができる。
【0029】
(2)硬化剤(B)
硬化剤(B)としては、エポキシ樹脂との配合状態において室温にて安定して貯蔵でき、熱、光あるいは圧力などによって硬化反応を生じさせる潜在性硬化剤を用いることが好ましい。そのような硬化剤としては、ジシアンジアミド、イミダゾール化合物、三フッ化ホウ素‐アミン錯体、有機酸ヒドラジット等を挙げることができる。本発明において特に好ましい硬化剤の具体例としては、ジシアンジアミド、2‐フェニル‐4,5‐ジヒドロキシメチルイミダゾール、2‐フェニル‐4‐メチル‐5‐ヒドロキシメチルイミダゾールを挙げることができる。これらの硬化剤は、二種以上併用することができる。
【0030】
(3)導電性粉体(C)
本発明で使用される導電性粉体(C)は、平均粒径d50が0.5〜5μm、平均粒径d90が3〜8μmであり、粒径が10μmを超過する粒子の占める割合が0.50重量%以下の球状形状のものである。平均粒径d50が、0.8〜4.5μmのものが好ましく、1.0〜4.0μmのものが特に好ましい。また、平均粒径d90が、3.0〜7.0μmのものが好ましく、3.5〜6.5μmのものが特に好ましい。また、粒径が10μmを超過する粒子の占める割合が0.30重量%以下であるものが好ましい。ここで、平均粒径d50、平均粒径d90および粒径は、レーザー回折・散乱法によるものである。具体的にはレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(HONIBA社製 LA−910)を使用して、導電性粉体を酢酸エチル中に分散させて測定することができる。また、球状形状とは、球または球に近い形状で実質的に角部を有しないことを意味する。本発明では、真球が特にに好ましい。
【0031】
平均粒径d50、平均粒径d90、粒径10μmを超過する粒子の占める割合および形状のいずれかが上記要件を満たさない場合、スクリーン印刷時にスクリーン版の目詰まりが発生しやすくなることから本発明の目的を達成することができない。
【0032】
そして、本発明で使用される導電性粉体(C)は、タップ密度が4.0〜6.0g/cm、特に4.0〜5.0g/cm、であるものが好ましい。タップ密度が上記範囲内であることによって、高充填による低抵抗値を得るという効果が顕著になる。ここで、タップ密度とは、ISO3953−1977(E)「金属粉末−タップ密度の測定法」の規定によるものである。
【0033】
本発明で使用される上記の導電性粉体(C)としては、各種の導電性微粉体、例えば銀粉、金粉、銅粉、ニッケル粉、白金粉、パラジウム粉、はんだ粉、前記金属の合金粉体等の金属粉体等を使用することができる。これらの導電性粉体は二種以上併用することもできる。また、金属以外の導電性粉体、例えばカーボン粉体、を使用することもできる。導電性粉体は、表面処理されたものであってもよい。
【0034】
(4)溶剤(D)
本発明で使用される溶剤(D)としては、例えば前記のエポキシ樹脂ならびに導電性粉体とともにペースト組成物を形成可能な各種の有機溶剤を用いることができる。そのような有機溶剤の好ましい具体例としては、ブチルカルビトールアセテート、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールn‐ブチルエーテル、ベンジルグリコール、メチルポリグリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、イソプロパノール、ブタノール、テルピネオール、チキサノール、ブチルセロソルブアセテート、イソホロン、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、γ‐ブチロラクトンの単独またはこれらの混合溶剤を挙げることができる。
【0035】
(5)上記以外の成分(任意成分)
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて各種の成分を含むことができる。
【0036】
そのような必要に応じて含むことが可能な成分の具体例としては、次のような顔料や、チクソトロピー付与剤、消泡剤、分散剤、防錆剤、還元剤、および、前記エポキシ樹脂と混和可能な他の樹脂成分(例えば、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂)等を挙げることができる。
【0037】
本発明による導電性ペースト組成物は、必要に応じて各種の有機または無機の顔料を含有することができ、そのような顔料によって導電性ペースト組成物の塗膜補強、機能付加、作業性改良、着色および増量等を図ることが可能になる。
【0038】
本発明では特に体質顔料、例えばマイクロシリカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、アルミナ等を単独またはこれらに混合物を用いることができる。
【0039】
(6)配合割合
本発明による導電性ペースト組成物における各成分の配合比率は、下記の通りである。
【0040】
エポキシ樹脂(A)の配合量は、導電性ペースト組成物中に、好ましくは1〜30重量%、特に好ましくは3〜20重量%、である。配合量が1重量%未満では接着力が不足し、一方、30重量%超過では導電性が低下する。
【0041】
硬化剤(B)の配合量は、エポキシ樹脂(A)100重量部に対し、好ましくは1〜60重量部、特に好ましくは5〜50重量部、である。配合量が1重量部未満では十分な架橋密度が得られず、また60重量部超過では硬化後の剥離が難しくなる。
【0042】
導電性粉体(C)の配合量は、導電性ペースト組成物中に80〜95重量%、好ましくは85〜90重量%、である。配合量が95重量%超過では導電性ペーストの流動性が悪くなる。配合量が80重量%未満では必要な導電性が得られにくくなる。
【0043】
溶剤(D)の配合量は、目標とする粘度等に応じて適宜調整することが可能である。好ましくは導電性ペースト組成物中に5〜15重量%程度を配合することができる。
【0044】
(7)導電性ペースト組成物の利用
本発明による導電性ペースト組成物は、良好な導電性を有するものであり、例えばスクリーン印刷法、メタルマスク印刷法などの公知の印刷法によって基板上に印刷可能なものである。従って、本発明による導電性ペースト組成物は、従来同様に広範な分野において利用可能なものである。
【0045】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、印刷適性が極めて良好なものである。このことから、孔径が小さいスクリーン版、例えばスクリーン版径80μmのスクリーン版であっても目詰まりすることなく、極めて正確にスクリーン印刷パターンを形成することができる。よって、本発明による導電性ペースト組成物によれば、所望のパターンあるいは所望の形状ないし高さの導電性ペースト組成物の硬化物を効率的に形成することができる。
【0046】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、導電性粉体の含有量が比較的多い場合であっても良好な印刷適性を有している。このことから、十分な印刷適性を保持しながら導電性粉体の含有量を多くすることができるので、電気的特性が良好な導電性層を形成することができる。
【0047】
さらに、本発明による導電性ペースト組成物は、スクリーン印刷作業1回当たりの導電性ペースト組成物の盛量が多い、即ち1回のスクリーン印刷作業によって形成できるスクリーン印刷層の厚さが大きいので、所望の厚さの導電性層を得るために繰返し行われるスクリーン印刷の回数を低減することができる。
【0048】
そして、本発明による導電性ペースト組成物は、硬化物の熱収縮率が小さい。これにより、所望厚さの導電性層を得るために繰返し行われるスクリーン印刷の回数を低減することができ、そして、正確かつ精密に所望のパターンあるいは所望の形状ないし高さの導電性ペースト組成物の硬化物を効率的に形成することができる。
【0049】
このような本発明による導電性ペースト組成物は、プリント配線板の層間接続用のバンプ形成用導電性ペースト組成物として特に有用なものである。
【実施例】
【0050】
<実施例1、2および比較例1、2>
下記の各成分を表1に示される割合で配合し、3本ロールで充分に混錬して、導電性ペースト組成物(実施例1、2および比較例1、2)を調製した。
各導電性ペースト組成物を、ガラス板上にスクリーン版(開口径80μm)を用い、1回印刷操作に付し、その後、180℃のオーブン内で30分間の硬化条件に付して導電性バンプを形成した。
【0051】
結果は、表1に示される通りである。
【0052】
成 分
・エポキシ樹脂(A)のイ(エポキシ当量300、軟化点70℃)
これは、三官能エポキシ樹脂(エポキシ当量210、軟化点65℃)70.5重量%と二官能エポキシ樹脂(エポキシ当量475、軟化点64℃)29.5重量%とからなる。
・エポキシ樹脂(A)のロ(エポキシ当量350、軟化点70℃)
これは、三官能エポキシ樹脂(エポキシ当量210、軟化点65℃)50.0重量%と二官能エポキシ樹脂(エポキシ当量475、軟化点64℃)50.0重量%とからなる。
・エポキシ樹脂(A)のハ(エポキシ当量500、軟化点97℃)
これは、三官能エポキシ樹脂(エポキシ当量208、軟化点90℃)80.0重量%と、二官能エポキシ樹脂(エポキシ当量1750、軟化点127℃)20.0重量%とからなる。
・エポキシ樹脂(A)のニ(エポキシ当量208、軟化点127℃)
これは、三官能エポキシ樹脂(エポキシ当量208、軟化点90℃)100.0重量%からなる。
・硬化剤(B):2‐フェニル‐4,5‐ジヒドロキシメチルイミダゾール
・導電性粉体(C)のイ:銀粉、球形物、d50=2.4μm、d90=4μm、10μm超過粒子0%、タップ密度4.5g/cm
・導電性粉体(C)のロ:銀粉、球形物+鱗片物、d50=2.4μm、d90=6μm、10μm超過粒子3%、タップ密度3g/cm
・溶剤(D):ブチルカルビトールアセテート
・他の成分(シリカ:マイクロシリカ、平均粒径12μm、親水性シリカ)
【表1】

【0053】
評価方法
(1)粘 度:ブルックフィールド社製、ブルックフィールド粘度計DV−II+型により、10rpm/25℃にて測定。
【0054】
(2)抵抗値:ガラス基板上に各導電性ペースト組成物を塗布し、180℃/30minの硬化処理に付した後、硬化物の体積抵抗値を測定した。5×10−4Ω・cm以下を○と判定した。
【0055】
(3)吐出不良個数:スクリーン印刷にて作成したバンプをレーザー顕微鏡にて上面からバンプ形状を観察し、4000個のバンプのうち円形状でないものの数を吐出不良個数とした。
【0056】
(4)バンプ高さ:スクリーン印刷にて作成したバンプをレーザー顕微鏡にて高さを測定した。
【0057】
(5)バンプ形状:スクリーン印刷にて作成したバンプをレーザー顕微鏡にてバンプの側面形状を観察した。バンプが尖ってなく円錐状であるものを「良」と判定し、バンプ先端が細い物や曲がっているものを「不良」と判定した。
【0058】
(6)収縮率:ガラス板上に各導電性ペースト組成物を厚さ2mmに塗布し、180℃/30minの硬化処理に付し、硬化物(硬化物1)の厚さを測定した。この硬化物(硬化物1)を更に260℃に加熱し、次いで20℃になるまで放置し、硬化物(硬化物2)を得た。前記の硬化物1を基準に、これに対する硬化物2の収縮率を算出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂(A)、硬化剤(B)、導電性粉体(C)および溶剤(D)からなる導電性ペースト組成物であって、
前記エポキシ樹脂(A)が、三官能以上のエポキシ樹脂(A)および二官能エポキシ樹脂(A)からなり、エポキシ当量が200〜400、エポキシ樹脂軟化点が80℃未満のものであり、かつ
前記導電性粉体(C)が、平均粒径d50が0.5〜5μm、平均粒径d90が3〜8μmであり、粒径が10μmを超過する粒子の占める割合が0.50重量%以下の球状形状のものであることを特徴とする、導電性ペースト組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)が、三官能以上のエポキシ樹脂(A)10〜95重量%および二官能エポキシ樹脂(A)5〜90重量%からなる、請求項1に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項3】
前記導電性粉体(C)がタップ密度4.0〜6.0g/cmのものである、請求項1または2に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項4】
前記導電性粉体(C)の含有量が80〜95重量%である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の硬化性導電性ペースト組成物。
【請求項5】
前記硬化剤(D)がイミダゾール系硬化剤である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項6】
粘度(25℃、10rpm)が130〜500Pa・Sであり、チクソ指数(10/20rpm)が0.4〜0.8である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項7】
硬化物の熱収縮率が1%以下である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の導電性ペースト組成物を用いたことを特徴とする、プリント配線板。

【公開番号】特開2009−205899(P2009−205899A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46000(P2008−46000)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000183923)ザ・インクテック株式会社 (268)
【Fターム(参考)】