説明

導電性ボール配置用保持装置

【課題】導電性ボール(半田ボール)を確実に保持することができるようにする。
【解決手段】平板状をなす本体部10と、本体部10に形成された複数の導電性ボール吸引保持孔15とを有し、導電性ボール吸引保持孔15の少なくとも下側の部分は、導電性ボール(半田ボールB)の径よりも小さい径を有し、導電性ボール吸引保持孔15の上方から吸引され導電性ボール吸引保持孔15の内部が負圧となることによって、導電性ボール吸引保持孔15の下側において導電性ボール(半田ボールB)を保持するものであり、本体部10は、上側の金属層20と下側の合成樹脂層30とを有し、導電性ボール吸引保持孔15は、金属層20に形成された貫通孔25及び合成樹脂層30に形成された貫通孔35によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハ,パッケージ基板等のベースの所定の位置に導電性ボールを配置するための導電性ボール配置用保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ,パッケージ基板等のベースに設けられた複数(多数)の電極に対して各種の電子部品(その接続端子)が接続されるために、例えば、次のようなことが行われている。
ベースに設けられた複数の電極に対して半田ボール(半田によって形成された微小な球状のボール)が各々配置され、その半田ボール(導電性ボール)が配置されたベース全体が加熱されることによって、その各半田ボールが溶解し、それが冷却され固化することによって、その各半田ボールがベースの各電極に対して接着する。
こうして、その半田(半田ボール)が、各電極における接続端子となる。
そして、その各接続端子に対して、各種の電子部品(その接続端子)が接続される。
【0003】
上述のようにベースの各電極に対して接続端子を形成する際の一部の工程として、ベースの各電極に対して半田ボールを配置するために、例えば、特許文献1のような配列板(導電性ボール配置用保持装置)が使用されている。
その導電性ボール配置用保持装置は、平板状をなす本体部と、その本体部に形成された複数の貫通孔(導電性ボール吸引保持孔)を有している。各貫通孔は、半田ボールの径よりも小さい径を有し、ベース(基板)に設けられた各電極に対応して形成されている。
そして、真空源(低圧源)に接続されることに基づいて各貫通孔が上方から吸引されることによって、その各貫通孔が負圧となり、その各貫通孔の下側において半田ボールが保持される。
【0004】
このように各貫通孔の下側に半田ボールが保持された状態で、その導電性ボール配置用保持装置がベースに対してセットされる(上方から重ねられる)。そして、各貫通孔が上方から吸引されること(上述)が停止されて各貫通孔(その内部)は常圧となり、それまでの保持が解除される。
こうして、各電極に対して半田ボールが配置される。
【0005】
各電極には、予め、フラックス(接着性を有する)が付着されている。そして、その各電極に対して上述のように半田ボールが配置されることによって、そのフラックスによって各電極に対して半田ボールが仮に接着する。
次に、導電性ボール配置用保持装置(本体部)が取り除かれ、温風によってベースとともに半田ボールが加熱され、半田ボールが溶解する。
その後に、ベースとともに半田(半田ボール)が冷却されることによって、半田(半田ボール)が固化し、その半田(半田ボール)が、電極における接続端子となるのである。
【0006】
そして、従来においては、上述のような導電性ボール配置用保持装置の本体部は、金属によって形成されている。
【0007】
ところで、導電性ボール配置用保持装置において、上述のように負圧によって各貫通孔の下側に球状の半田ボールを適切に保持するためには、各貫通孔はできるだけ真円に近いものである必要がある。
その理由は次のとおりである。
貫通孔(少なくともそのうちの下側の部分)が真円又はそれに近くないと、その貫通孔の下側の周縁部と半田ボール(球状)との間に隙間が生じる。そして、貫通孔の下側の周縁部と半田ボールとの間に隙間があると、その隙間から空気が入り込み、貫通孔の内部が十分に負圧にならず、半田ボールが貫通孔の下側に確実には保持されないこととなり、ひいては、ベースの所定の位置に半田ボールを配置できないこととなるからである。
【0008】
しかしながら、本体部のすべてが金属である場合においては、次の欠点がある。
すなわち、金属の本体部に対してレーザで貫通孔を設ける場合は、短時間で貫通孔を設けることができる一方、その貫通孔が真円に近くなりにくい。
また、母型の表面のうち各貫通孔が形成される部位にレジストが配置された状態で、その母型に対して電気めっきを行うことによって、貫通孔を有する本体部(導電性ボール配置用保持装置)を形成していく方法(電鋳法といわれる)もある。しかしながら、この方法では、真円に近い貫通孔を形成することができる一方、製造するのに長時間を要する。
【0009】
また、貫通孔(少なくともそのうちの下側の部分)が真円に近くなく本来的に貫通孔の下側の周縁部と半田ボールとの間に隙間が生じる場合であっても、本体部(少なくともそのうちの下側の部分)が弾性変形しやすい材質の場合は、貫通孔の下側に位置する半田ボールが貫通孔の負圧によって上方に向かおうとする押圧力によって本体部(貫通孔の下側の周縁部)が弾性変形し、貫通孔の下側の周縁部と半田ボールとの隙間が解消されて、貫通孔の下側に半田ボールが確実に保持されることになる。
しかしながら、金属は弾性変形しにくいため、貫通孔と半田ボールとの隙間は解消されず、半田ボールは確実には保持されない。
【0010】
また、本体部のすべて(又はそのうちの下側の部分)が金属である場合においては、各貫通孔の下側に半田ボールが保持されようとする段階等において、金属の本体部(貫通孔の下側の周縁部)によって半田ボールが損傷する場合もある。一般的に金属は硬い(半田ボールと比較して)とともに、一般的に貫通孔の周縁部は直角にとがっているからである。
なお、貫通孔の下側の周縁部に丸みをつける(角落としをする)と、半田ボールの損傷は軽減するにしても、やはり半田ボールが損傷する場合はある。また、金属の本体部の貫通孔の下側の周縁部に丸みをつけるのは煩雑である。
そして、半田ボールが損傷すると、貫通孔(少なくともそのうちの下側の部分)が真円又はそれに近いものであっても、貫通孔の下側の周縁部と半田ボールとの間に隙間が生じ、半田ボールを確実には保持することができないことにもなり得る。
【0011】
また、半導体等を用いた電子装置については、近年ますます小型化及び高密度化が図られており、ベースに設けられた電極間の距離がより短くされようとしている。
このため、前述のようにベースに対して導電性ボール配置用保持装置がセットされる際に、その導電性ボール配置用保持装置が本来の位置から多少でもずれた場合には、予め電極に付着されているフラックス(接着性を有する)が、本体部の下面に付着してしまうおそれがある。その場合は、導電性ボール配置用保持装置が所定の位置にセットできないこととなる等の種々の弊害が生ずる。
このため、本体部の下面にフラックスが付着した場合には、それを有機溶剤で除去する必要がある。
しかしながら、本体部の材質によっては、有機溶剤によって本体部が損傷する場合もあり得る。その場合は、その導電性ボール配置用保持装置は、長期間にわたって使用することはできないこととなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2005−044978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、導電性ボールを確実に保持することができる導電性ボール配置用保持装置を提供することを第1の課題とする。また、本発明は、長期間にわたって使用することが可能である導電性ボール配置用保持装置を提供することを第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、導電性ボールを保持しベースの所定の位置に当該導電性ボールを配置するための導電性ボール配置用保持装置であって、平板状をなす本体部と、前記本体部に形成された複数の導電性ボール吸引保持孔とを有し、前記導電性ボール吸引保持孔は、前記導電性ボールの径よりも小さい径を有し、当該導電性ボール吸引保持孔の上方から吸引され当該導電性ボール吸引保持孔の内部が負圧となることによって、当該導電性ボール吸引保持孔の下側において前記導電性ボールを保持するものであり、前記本体部のうちの少なくとも下側の部分が合成樹脂層である、導電性ボール配置用保持装置である。
【0015】
「前記本体部のうちの少なくとも下側の部分が合成樹脂層である」の一例として、「前記本体部は、上側の金属層と下側の合成樹脂層とを有するものである」がある。また、他の一例として、「前記本体部は、すべてが合成樹脂層である」がある。
【0016】
この発明の導電性ボール配置用保持装置によれば、次の作用効果が得られる。
すなわち、この導電性ボール配置用保持装置においては、本体部のうちの少なくとも下側の部分が合成樹脂層である。
そして、合成樹脂層には、真円又は真円に近い貫通孔(導電性ボール吸引保持孔の少なくとも下側の部分に該当する)を容易に形成することができる。
このため、合成樹脂層の貫通孔の下側の周縁部(導電性ボール吸引保持孔の下側の周縁部)と導電性ボールとの間に隙間が生じにくく、導電性ボール吸引保持孔の内部は十分に負圧となり、導電性ボールが貫通孔の下側に確実に保持されることとなる。
【0017】
また、合成樹脂層の貫通孔が真円に近くなく本来的には導電性ボール吸引保持孔の下側の周縁部(合成樹脂層の貫通孔の下側の周縁部)と導電性ボールとの間に隙間が生じる場合であっても、合成樹脂層は弾性変形しやすいため、その導電性ボールが導電性ボール吸引保持孔の負圧によって上方に向かおうとする押圧力によって、合成樹脂層(貫通孔の下側の周縁部)が弾性変形する。
こうして、導電性ボール吸引保持孔の下側の周縁部(合成樹脂層の貫通孔の下側の周縁部)と導電性ボールとの隙間が解消又は軽減されて、導電性ボール吸引保持孔の下側に導電性ボールが確実に保持されることになる。
【0018】
また、導電性ボールは合成樹脂層の貫通孔の下側の周縁部に当接して保持されるところ、合成樹脂は金属よりも硬くはないため、導電性ボールが貫通孔の下側の周縁部によって損傷することもない。このため、導電性ボールが損傷することよって導電性ボール吸引保持孔の下側の周縁部(合成樹脂層の貫通孔の下側の周縁部)と導電性ボールとの間に隙間が生じる、ということがなく、導電性ボールが確実に保持される。
【0019】
このようにして、この導電性ボール配置用保持装置では、各導電性ボール吸引保持孔(合成樹脂層の貫通孔)によって、導電性ボールを確実に保持することが可能となる。そして、ひいては、ベースの所定の位置に導電性ボールを配置できることとなる。
【0020】
請求項2に係る発明は、導電性ボールを保持しベースの所定の位置に当該導電性ボールを配置するための導電性ボール配置用保持装置であって、平板状をなす本体部と、前記本体部に形成された複数の導電性ボール吸引保持孔とを有し、前記導電性ボール吸引保持孔のうちの少なくとも下側の部分は、前記導電性ボールの径よりも小さい径を有し、当該導電性ボール吸引保持孔の上方から吸引され当該導電性ボール吸引保持孔の内部が負圧となることによって、当該導電性ボール吸引保持孔の下側において前記導電性ボールを保持するものであり、前記本体部は、当該本体部の下面を形成する合成樹脂層と、その合成樹脂層の上側に位置する金属層とを有するものである、導電性ボール配置用保持装置である。
【0021】
この発明には、合成樹脂層が1層のみで、その合成樹脂層に形成された合成樹脂層貫通孔の径が導電性ボールの径よりも小さい、という態様の他、合成樹脂層が複数層あり、そのうちの最も下側の合成樹脂層に形成された合成樹脂層貫通孔(のみ)が導電性ボールの径よりも小さい、という態様もある。
また、金属層についても、金属層が1層のみの態様の他、金属層が複数層ある態様もある。
また、最も下側の層として合成樹脂層があり、その上に金属層があり、さらにその上に別の合成樹脂層がある、という態様もあり得る。
【0022】
この発明の導電性ボール配置用保持装置では、請求項1に係る発明の導電性ボール配置用保持装置と同様の作用効果が得られる。
それとともに、この発明の導電性ボール配置用保持装置では、本体部が金属層を有しているため、金属層を有していないものと比較して、強度が高いものとなる。
【0023】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の導電性ボール配置用保持装置であって、前記合成樹脂層が、酢酸ビニルの重合体を主成分とする合成樹脂によって形成されている、導電性ボール配置用保持装置である。
【0024】
この発明の導電性ボール配置用保持装置では、請求項1又は請求項2に係る発明の導電性ボール配置用保持装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、下側の合成樹脂層にフラックスが付着した場合には、それを有機溶剤で除去する必要があるのであるが、その合成樹脂層が酢酸ビニルの重合体を主成分とする合成樹脂によって形成されているため、有機溶剤に対する耐性が高い。このため、下側の合成樹脂層が有機溶剤によって損傷しない、又は、損傷しにくい。
このため、この発明の導電性ボール配置用保持装置は、長期間にわたって使用することが可能である。
【0025】
請求項4に係る発明は、請求項1又は請求項2に係る発明の導電性ボール配置用保持装置であって、前記合成樹脂層が、酢酸ビニル及びビニルアルコールの共重合体を主成分とする合成樹脂によって形成されている、導電性ボール配置用保持装置である。
【0026】
「酢酸ビニル及びビニルアルコールの共重合体を主成分とする合成樹脂」のうち特に好適な例として、酢酸ビニル樹脂成分とビニルアルコール樹脂成分との質量比が20:15〜25:10のものがある。
【0027】
この発明の導電性ボール配置用保持装置では、請求項1又は請求項2に係る発明の導電性ボール配置用保持装置の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、下側の合成樹脂層にフラックスが付着した場合には、それを有機溶剤で除去する必要があるのであるが、その合成樹脂層が酢酸ビニル及びビニルアルコールの共重合体を主成分とする合成樹脂によって形成されているため、有機溶剤に対する耐性が高い。このため、下側の合成樹脂層が有機溶剤によって損傷しない、又は、損傷しにくい。
このため、この発明の導電性ボール配置用保持装置は、長期間にわたって使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施例の導電性ボール配置用保持装置及びその使用方法を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例の導電性ボール配置用保持装置の本体部を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施例の導電性ボール配置用保持装置の本体部を示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施例の導電性ボール配置用保持装置の使用方法を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、本発明の一実施例について図面に基づいて説明する。
図1に示すように、この導電性ボール配置用保持装置は、半導体ウェハ,パッケージ基板等のベース集合体100に対して使用される。ベース集合体100は、最終的には複数のベース102に分割される。ベース集合体100(そのうち分割されて各ベース102となる部分)には、複数(多数)の電極105が設けられている。
【0030】
この導電性ボール配置用保持装置は、スクリーン50に対して、本体部10が固定されて形成されている。この導電性ボール配置用保持装置は全体として平板状をしている。
また、この導電性ボール配置用保持装置には、真空源(低圧源)を伴う吸引装置(いずれも図示省略)が伴っている。
【0031】
スクリーン50は、合成樹脂又は金属からなる一平面状の網目状をしている。スクリーン50は、四角形の枠52に対して取り付けられている。
スクリーン50は、その2次元の両方向に引っ張られた状態で枠52に対して取り付けられている。こうして、スクリーン50には、その2次元の両方向に所定の張力が存在している。
スクリーン50には、開口部(本体部対応開口部54)が形成されている。
【0032】
図2及び図3に係る発明は、本体部10は、平板状をしている。
図1に示すように、本体部10は、スクリーン50に対して固定されている。本体部10は、その周縁部において、接着剤によってスクリーン50に対して接着されている。
スクリーン50の本体部対応開口部54は、本体部10(その周縁部を除く)に対応して形成されている。
【0033】
図1に示すように、本体部10には、複数の導電性ボール吸引保持孔集合体12が形成されている。この実施形態では、4つの導電性ボール吸引保持孔集合体12が形成されている。
各導電性ボール吸引保持孔集合体12には、複数(多数)の導電性ボール吸引保持孔15が形成されている。各導電性ボール吸引保持孔15は、ベース集合体100(図1)における各ベース102に該当する部分の各電極105に対応している。
【0034】
図2及び図3に示すように、本体部10は、金属層20及び合成樹脂層30から形成されている。金属層20は上側に位置し、合成樹脂層30は下側に位置している。すなわち、合成樹脂層30の下面が、本体部10の下面を構成する。
【0035】
金属層20は、薄板状又は薄膜状をしている。
金属層20は、ステンレス鋼,ニッケル,ニッケル合金等の金属によって形成されている。
金属層20については、図示のように1つの層から形成される態様に限らず、複数の層から形成される態様もあり得る。
なお、金属層20によって、本体部10の強度が高くされている。
【0036】
合成樹脂層30も、薄板状又は薄膜状をしている。
合成樹脂層30は、酢酸ビニル及びビニルアルコールの共重合体を主成分とする合成樹脂によって形成されている。なお、他の実施形態として、酢酸ビニルの重合体を主成分とする合成樹脂からなる場合もある。
そして、いずれにしても、この合成樹脂層30は、その材質によって、有機溶剤に対する耐性を有している。すなわち、有機溶剤が付着しても損傷しない(又は損傷しにくい)材質のものである。
合成樹脂層30についても、図示のように1つの層から形成される態様に限らず、複数の層から形成される態様もあり得る。
【0037】
各導電性ボール吸引保持孔15は、金属層20及び合成樹脂層30にわたって形成されている。
すなわち、金属層20に複数の貫通孔25が形成され、合成樹脂層30にも複数の貫通孔35が形成されている。貫通孔25及び貫通孔35は、いずれも導電性ボール吸引保持孔15の一部に該当し、各貫通孔25及び貫通孔35によって各導電性ボール吸引保持孔15が形成されている。
【0038】
合成樹脂層30の各貫通孔35は円形状をしており、各貫通孔35の位置は、ベース集合体100(図1)における各ベース102に該当する部分の各電極105の位置に対応している。
金属層20の各貫通孔25は円形状をしており、各貫通孔25の位置は、合成樹脂層30の各貫通孔35の位置に対応している。
こうして、図1に基づいて前述したように、各導電性ボール吸引保持孔15の位置は、ベース集合体100(図1)における各ベース102に該当する部分の各電極105の位置に対応しているのである。
【0039】
図3に示すように、合成樹脂層30の各貫通孔35は、半田ボールBの直径よりも若干小さい直径を有している。具体的には、例えば、半田ボールBの直径の60〜80%程度の直径を有している。
合成樹脂層30の各貫通孔35は、金属層20の各貫通孔25よりも精密に形成されている。すなわち、より真円に近いものとされているとともに、ベース102(図1)の各電極105の位置により正確に対応している。半田ボールBは、合成樹脂層30の各貫通孔35(その下側の部分)において保持されるからである。
また、合成樹脂層30において各貫通孔35を真円又はそれに近いものに製造することは、金属層20において各貫通孔25を真円又はそれに近いものに製造するよりも容易である。すなわち、レーザで金属層20に貫通孔25を形成する場合よりも、真円に近い貫通孔35を形成することができる。また、電鋳法によって貫通孔25を有する金属層20を製造する場合よりも、短時間で貫通孔35を有する合成樹脂層30を製造することができる。
【0040】
金属層20の各貫通孔25は、合成樹脂層30の各貫通孔35よりも精密に形成される必要はない。金属層20の各貫通孔25は、直接的には半田ボールBと関わらないため、合成樹脂層30の各貫通孔35よりも精密である必要性は低いのである。
すなわち、金属層20の各貫通孔25は、合成樹脂層30の各貫通孔35よりも真円又はそれに近いことを目指して形成される必要はない。
また、金属層20の各貫通孔25は、合成樹脂層30の各貫通孔35の直径よりも大きい直径を有するように形成されている。金属層20の各貫通孔25は、必ずしも合成樹脂層30の各貫通孔35より大きい必要はない。しかしながら、レーザによる孔開けの場合には大きい孔を形成する方が容易であるため、そのようにされている。また、金属層20の各貫通孔25が合成樹脂層30の各貫通孔35の直径よりも小さい直径を有している場合には、製造の際の誤差によって金属層20の各貫通孔25が合成樹脂層30の各貫通孔35に対応しなくなる、という事態も多少ながら想定されるのであり、そのような事態を防ぐためである。
【0041】
次に、この導電性ボール配置用保持装置の使用方法について、図4に基づいて説明する。
まず、図4(a)に示すように、この導電性ボール配置用保持装置(本体部10)が、予め準備された多数の半田ボールBの上に導かれる。その際、本体部10の下面(合成樹脂層30の下面)は、多数の半田ボールBに接触又は近接している。
【0042】
その状態で、吸引装置(図示省略)がオン状態とされ、各導電性ボール吸引保持孔15が上方から吸引され、各導電性ボール吸引保持孔15が負圧となり、図4(b)に示すように、各導電性ボール吸引保持孔15の下側において半田ボールBが保持される。詳細に説明すると、次のとおりである。
【0043】
図4(a)に示すように、各導電性ボール吸引保持孔15が上方から吸引されることによって、各導電性ボール吸引保持孔15の内部において下方から上方へ空気が流れ、各導電性ボール吸引保持孔15(その内部)が若干負圧とされる。それとともに、本体部10(導電性ボール配置用保持装置)が、水平方向(本体部10の面方向)に往復微動される。
このように各導電性ボール吸引保持孔15が若干負圧である状態で本体部10が往復微動されることによって、図4(b)に示すように、各導電性ボール吸引保持孔15の下側に半田ボールBが位置し、各導電性ボール吸引保持孔15の下側が半田ボールBによって塞がれた状態となる。
その状態で引き続き各導電性ボール吸引保持孔15が上方から吸引されることによって、各導電性ボール吸引保持孔15(その内部)が十分な負圧となって、各導電性ボール吸引保持孔15の下側に半田ボールBが保持されるのである。
【0044】
次に、このように各導電性ボール吸引保持孔15の下側に半田ボールBが保持された状態で、図4(c)に示すように、その導電性ボール配置用保持装置(本体部10)がベース102(ベース集合体100)に対してセットされる(上方から重ねられる)。すなわち、各電極105に対して各半田ボールBが対応するように本体部10がセットされる。
それによって、各電極105に対して半田ボールBが仮に接着する。すなわち、各電極105には予めフラックス(接着性を有する)が付着されており、そのフラックスによって各電極105に対して半田ボールBが仮に接着するのである。
【0045】
次に、図4(d)に示すように、吸引装置(図示省略)がオフ状態とされ、各導電性ボール吸引保持孔15が上方から吸引されることが停止される。これによって、各導電性ボール吸引保持孔15(その内部)は常圧となり、半田ボールBの保持が解除される。こうして、各電極105に対して半田ボールBが配置される。
【0046】
次に、図4(e)に示すように、図導電性ボール配置用保持装置(本体部10)が、ベース102(ベース集合体100)から離隔される。
その際、各半田ボールBは、自重及びフラックスの接着力に基づいて移動せず、各電極105に対して仮に接着した状態が維持される。
【0047】
次に、図示はしないが、温風によってベース102とともに半田ボールBが加熱され、半田ボールBが溶解する。
その後に、ベース102とともに半田(半田ボールB)が冷却されることによって、半田(半田ボールB)が固化する。
こうして、前述したように、その半田(半田ボールB)が、電極105における接続端子となるのである。
【0048】
次に、この導電性ボール配置用保持装置の作用効果について説明する。
前述したように、この導電性ボール配置用保持装置においては、本体部10のうちの下側が合成樹脂層30である。
このため、合成樹脂層30の各導電性ボール吸引保持孔15は、容易に、真円又は真円に近く形成することができる。
そして、まず、このことによって、合成樹脂層30の貫通孔35の下側の周縁部(導電性ボール吸引保持孔15の下側の周縁部)と半田ボールBとの間に隙間が生じにくく、導電性ボール吸引保持孔15の内部は十分に負圧となり、半田ボールBが導電性ボール吸引保持孔15の下側(合成樹脂層30の貫通孔35の下側)に確実に保持されることとなる。
【0049】
また、仮に合成樹脂層30の貫通孔35が真円に近くなく本来的には導電性ボール吸引保持孔15の下側の周縁部(合成樹脂層30の貫通孔35の下側の周縁部)と半田ボールBとの間に隙間が生じる場合であっても、合成樹脂層30は弾性変形しやすいため、その半田ボールBが導電性ボール吸引保持孔15の負圧によって上方に向かおうとする押圧力によって、合成樹脂層30(貫通孔35の下側の周縁部)が弾性変形する。
こうして、導電性ボール吸引保持孔15の下側の周縁部(合成樹脂層30の貫通孔35の下側の周縁部)と半田ボールBとの隙間が解消又は軽減されて、導電性ボール吸引保持孔15の下側に半田ボールBが確実に保持されることになる。
【0050】
また、前述したように、この導電性ボール配置用保持装置では本体部10のうちの下側が合成樹脂層30であり、図4(a)に基づいて前述したように、半田ボールBが保持されようとする段階等において、半田ボールBは合成樹脂層30の貫通孔35の下側の周縁部等に衝撃を伴って当接する場合がある。
その際、合成樹脂は金属よりも硬くはないため、半田ボールBが合成樹脂層30の貫通孔35の下側の周縁部(基本的に直角の角度を有している)によって損傷することもない。
仮に半田ボールBが損傷する(球状でなくなる)と、合成樹脂層30の貫通孔35が真円又はそれに近いものであっても、導電性ボール吸引保持孔15の下側の周縁部(合成樹脂層30の貫通孔35の下側の周縁部)と半田ボールBとの間に隙間が生じ、半田ボールBを確実には保持することができないことにもなり得る。
しかしながら、この導電性ボール配置用保持装置では本体部10のうちの下側が合成樹脂層30であり、半田ボールBが損傷することもないため、半田ボールBが確実に保持される。
【0051】
このようにして、この導電性ボール配置用保持装置では、各導電性ボール吸引保持孔15(合成樹脂層30の貫通孔35)によって、半田ボールBを確実に保持することが可能となる。そして、ひいては、ベース102の所定の位置に導電性ボールを配置できることとなる。
【0052】
また、合成樹脂層30が前述した材質によって形成されているために、次の効果も得られる。
ベース102(ベース集合体100)に対して導電性ボール配置用保持装置(本体部10)がセットされる際に、その導電性ボール配置用保持装置が本来の位置から多少でもずれた場合には、予め電極105に付着されているフラックス(接着性を有する)が、本体部10の下面(合成樹脂層30の下面)に付着してしまうおそれがあり、その場合は、それを有機溶剤で除去する必要がある。
ここで、この導電性ボール配置用保持装置においては、合成樹脂層30が酢酸ビニル及びビニルアルコールの共重合体を主成分とする合成樹脂(又は、酢酸ビニルの重合体を主成分とする合成樹脂)によって形成されており、有機溶剤に対する耐性を有している。
このため、この導電性ボール配置用保持装置は、長期間にわたって使用され得るのである。
【0053】
なお、上記のものはあくまで本発明の一実施例にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【0054】
例えば、本体部(10)には、1つの導電性ボール吸引保持孔集合体(12)が形成されているという態様もある。その場合は、その導電性ボール配置用保持装置は、後ほど分割されないベース(102)に対して使用される。
また、本体部(10)は、スクリーン(50)に対して固定されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 本体部
15 導電性ボール吸引保持孔
20 金属層
25 貫通孔
30 合成樹脂層
35 貫通孔
B 半田ボール(導電性ボール)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ボールを保持しベース102の所定の位置に当該導電性ボールを配置するための導電性ボール配置用保持装置であって、
平板状をなす本体部と、
前記本体部に形成された複数の導電性ボール吸引保持孔とを有し、
前記導電性ボール吸引保持孔は、前記導電性ボールの径よりも小さい径を有し、当該導電性ボール吸引保持孔の上方から吸引され当該導電性ボール吸引保持孔の内部が負圧となることによって、当該導電性ボール吸引保持孔の下側において前記導電性ボールを保持するものであり、
前記本体部のうちの少なくとも下側の部分が合成樹脂層である、
導電性ボール配置用保持装置。
【請求項2】
導電性ボールを保持しベースの所定の位置に当該導電性ボールを配置するための導電性ボール配置用保持装置であって、
平板状をなす本体部と、
前記本体部に形成された複数の導電性ボール吸引保持孔とを有し、
前記導電性ボール吸引保持孔のうちの少なくとも下側の部分は、前記導電性ボールの径よりも小さい径を有し、当該導電性ボール吸引保持孔の上方から吸引され当該導電性ボール吸引保持孔の内部が負圧となることによって、当該導電性ボール吸引保持孔の下側において前記導電性ボールを保持するものであり、
前記本体部は、当該本体部の下面を形成する合成樹脂層と、その合成樹脂層の上側に位置する金属層とを有するものである、
導電性ボール配置用保持装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の導電性ボール配置用保持装置であって、
前記合成樹脂層が、酢酸ビニルの重合体を主成分とする合成樹脂によって形成されている、
導電性ボール配置用保持装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の導電性ボール配置用保持装置であって、
前記合成樹脂層が、酢酸ビニル及びビニルアルコールの共重合体を主成分とする合成樹脂によって形成されている、
導電性ボール配置用保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−156340(P2012−156340A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14624(P2011−14624)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(504376681)アサヒテック株式会社 (7)
【Fターム(参考)】