導電性ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物並びに関連する方法及び物品
ポリ(アリーレンエーテル)と1種以上のポリアミド樹脂との相溶化ブレンド、導電性材料及びクレイ充填材を含んでなる導電性熱可塑性樹脂組成物が開示される。かかる組成物は、各種の他の成分(例えば、耐衝撃性改良剤)を含み得る。これらの組成物から成形されて塗装された物品(例えば、自動車部品)も、かかる物品の製造方法と共に記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は成形して塗装することで高品質表面が得られる導電性ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミドブレンド自体は、多種多様の製品を成形できる極めて魅力的な材料として確立されている。かかるブレンドは、各材料の最も望ましい性質、即ちポリ(アリーレンエーテル)に由来する傑出した耐熱性及び寸法安定性、並びにポリアミドに由来する優れた強度及び耐薬品性を示す。かかる組成物の例示的な開示は、米国特許第6469093号(Koevoetsら)、同第4873276号(Fujiiら)、同第4659760号(Van der Meer)、同第4732938号(Grantら)及び同第4315086号(Uenoら)中に見出される。
【0003】
ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミドブレンドの性質を向上させるため、基材樹脂用の相溶化剤、流れ調整剤、耐衝撃性改良剤及び充填材がしばしば添加される。かかるブレンドは、各種の自動車部品(例えば、車体パネル、トランク蓋、フード、及び給油口ドアやミラーハウジングのような多くの小形部品)の成形用として非常にポピュラーである。金属自動車部品をプラスチック部品で置き換えることは、軽量化や腐食問題の排除のような多くの利点を有している。しかし、多くの自動車用途では、プラスチック部品は色、テクスチャー及び総合外観の点で隣接する金属部品と全く同じに見えなければならない。
【0004】
自動車組立作業に際しては、プラスチック部品及び金属部品にペイントを塗布するために静電塗装作業がしばしば使用される。かかる塗装作業はプラスチックが十分に導電性であることを要求するので、プラスチック中に導電性添加剤を混入しなければならない。その上、ペイントは通常は(例えば、180℃を超える)高温でパネル上に焼き付けられるので、プラスチック部品は劣化やゆがみを生じることなしにかかる温度に耐えることができなければならない。
【0005】
多くの種類のポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミドブレンドは、塗装及び焼付け作業のために必要な耐熱性を有している。その上、かかるブレンドは静電塗装のために必要な導電性を与えるよう適切に処方されてきたが、所要の添加剤は高価であるとともに取扱いが難しいことがある。また、これらの存在が延性や表面外観のような他の性質に悪影響を及ぼすこともある。
【0006】
技術者達は、複数の所要性質をバランスさせるポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミドブレンドを処方することに非常に熟練してきた。しかし、各種の最終用途及び製造条件に関してはなお問題が生じることがある。例えば、成形部品が多くの場合に要求される低い熱膨張率(CTE)を確実に有するようにすることは非常に難しいことがある。金属部品間に近接して配置されることがある給油口ドア及び他の部品の場合には、部品の膨張及び「固着」を防止するために低いCTEが極めて重要であることが多い。自動車が使用中に繰り返して日光や高い屋外温度に暴露される場合には、このように精密な許容差を一貫して維持するのは非常に難しいことがある。
【0007】
その上、自動車の消費者及びディーラー(並びに製造者)は、自動車又はトラックの全体的な塗装外観を大いに重視している。成形塗装されたプラスチック部品は、多くの場合、「クラスA」の表面又はクラスA品質に近い外観を有していなければならない。米国特許第5965655号(Mordecaiら)に注記されている通り、「クラスA」には様々な定義がある。一般に、本明細書中で使用するクラスA表面は、テクスチャー(即ち、平滑性)及び色の点で隣接する金属薄板表面と実質的に同じ塗装プラスチック表面を述べていると解される。さらに、かかる表面は一般にスプレーマークやペイントポッピングのような各種の欠陥を含むべきでない。
【0008】
静電塗装用途のための市販ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物の一部は、充填材としてタルクを使用している。これらの製品は、通常は寸法安定性、剛性、耐熱性及び耐衝撃性の良好なバランスを示しているが、ある種の条件下では若干の欠点を示すことがある。例えば、かかる組成物を成形した場合、タルクの存在がスプレーマークを引き起こすことがある。スプレーマークは、多くの場合、成分物品上(通常は金型ゲート付近)にすじ又は淡色のマークとして現れる。その上、物品を塗装した場合、時にはペイントポッピングのような他の表面欠陥が生じる。これらの問題は、導電性添加剤と共にタルクが存在する場合に起こりやすいように思われる。理論が確実なわけではないが、タルクはポリマー母材中に存続せず、加工中又は加工後に成形物品の表面に移動するように思われる。
【0009】
望ましくない表面欠陥は、時には温度やサイクル時間のような成形条件の綿密な調整及び維持によって最小化又は排除することができる。しかし、加工窓は非常に狭いことがある。即ち、設定された成形条件からのわずかなずれが欠陥の発生を引き起こすことがある。このような狭い加工窓は工業的環境における大きな欠点であって、加工時間や能率の損失をもたらす。
【0010】
したがって、様々な最終用途のために改良された特性を有する導電性ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物に対するニーズが存在することは明らかである。例えば、成形され、次いで静電塗装された組成物は、上述した欠陥を実質的に含まない比較的高品質の表面外観を示す必要がある。さらに、組成物が実質的な量の充填材を含む場合でも望ましい表面外観が得られる必要がある。その上、成形された組成物に関する他の性質(例えば、寸法安定性、耐熱性及び耐衝撃性)が実質的に維持されることも必要である。
【特許文献1】米国特許第6469093号明細書
【特許文献2】米国特許第4873276号明細書
【特許文献3】米国特許第4659760号明細書
【特許文献4】米国特許第4732938号明細書
【特許文献5】米国特許第4315086号明細書
【特許文献6】米国特許第5965655号明細書
【特許文献7】米国特許第5086105号明細書
【特許文献8】米国特許第5091461号明細書
【特許文献9】米国特許第6221283号明細書
【特許文献10】米国特許第6808808号明細書
【特許文献11】米国特許第6423768号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0192822号明細書
【特許文献13】欧州特許第0597648号明細書
【特許文献14】欧州特許第0506386号明細書
【特許文献15】欧州特許第0685527号明細書
【特許文献16】特開平01−308856号公報
【特許文献17】特開2005−264027号公報
【非特許文献1】“Novel Morphologies of Poly(Phenylene Oxide)(PPO)/Polyamide 6(PA6) Blend Nanocomposites”,Yongjin Li et al,Polymer 45(2004)pp.7381−7388.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
導電性熱可塑性樹脂組成物が記載される。本組成物は、全組成物の重量を基準にして、
(a)約20〜約80重量%のポリ(アリーレンエーテル)、
(b)約80〜約20重量%のポリアミド、
(c)成分(a)及び(b)用の相溶化剤、
(d)樹脂組成物用の導電性付与剤、並びに
(e)約1〜約50重量%のクレイ
を含んでなる。
【0012】
クレイ材料は、通常は板状積層体の形態を有しており、多くの場合にか焼されている。その上、クレイは後述のように(例えば、アミノシランで)表面改質することもできる。本組成物は、耐衝撃性改良剤のような各種の他の成分を含み得る。さらに、若干の実施形態では、本組成物はタルクを実質的に含まない。これらの組成物から成形され、次いで塗装された物品(例えば、自動車部品)も、本発明の一部をなしている。
【0013】
別の実施形態は、塗装熱可塑性樹脂物品の製造方法であって、
(I)1種以上のポリフェニレンエーテル、1種以上のポリアミド、相溶化剤、導電性付与剤及びクレイ充填材を混合して均質ブレンドを形成する段階と、
(II)段階(I)で形成されたブレンドから物品を成形する段階と、
(III)段階(II)で形成された成形物品を静電塗装する段階と
を含んでなる方法に関する。
【0014】
塗装物品は、段階(I)で形成された導電性ブレンドがクレイ充填材の代わりにタルク充填材を含む場合に生じる表面に比べて欠陥が少ないことを特徴とする表面を有する。
【0015】
図面の簡単な説明
図1は、通常のポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物から成形された塗装試験片の顕微鏡写真である。
【0016】
図2は、本発明に係るポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物から成形された塗装試験片の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂(又は他のポリ(アリーレンエーテル))とポリアミド樹脂との相溶化ブレンドを含んでいる。(簡明にするため、本明細書中では「ポリフェニレンエーテル」又は「PPE」という用語を時々使用するが、この成分の完全な範囲は「ポリ(アリーレンエーテル)」で表されることを了解されたい。)これらのブレンドは当技術分野で公知であり、多くの参考文献中に記載されており、その一部は上述した通りである。その非限定的な例には、米国特許第4873276号(Fujiiら)、同第4659760号(Van der Meer)、同第4732938号(Grantら)、同第4997612号(Gianchandaiら)、同第4315086号(Uenoら)、同第6469093号(Koevoetsら)及び同第6221283号(Dharmarajanら)(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)がある。
【0018】
本発明で有用なポリフェニレンエーテル樹脂は、すべての公知ポリフェニレンエーテル樹脂を包含する。好ましい樹脂には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)並びに2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールのコポリマー樹脂がある。例えばペイント硬化オーブンに適応させるために高い耐熱性が所望される組成物では、オーブン温度より高いガラス転移温度(Tg)を有するPPEが望ましい。固有粘度は、通例は25℃のクロロホルム中で測定して約0.20〜約0.60dl/gである。同様な原理に基づけば、樹脂の他の変形例も有用であり得る。
【0019】
ポリアミド樹脂(しばしば「ナイロン」ともいう)は、通常はアミド基(−C(O)NH−)の存在で特徴づけられる。ナイロン−6及びナイロン−6,6ナイロンが一般に好ましいポリアミドであり、様々な商業的供給源から入手できる。しかし、ナイロン−4,6、ナイロン−4、ナイロン−12、ナイロン−6,12、ナイロン−6,10、ナイロン−6,9、ナイロン−6/6T、ナイロン−6,6/6T、ナイロン−9T及び非晶質ナイロンのような他のポリアミドも使用可能である。各種ポリアミドの混合物並びに各種ポリアミドコポリマーも有用である。ポリアミドはまた、多くは1種以上のポリアミドを1種以上のポリマー系又はコポリマー系エラストマー強化剤とブレンドすることで製造される、「強化ナイロン」(米国特許第4997612号を参照されたい)といわれるものの1種以上でもあり得る。
【0020】
本発明のブレンド用の最も好ましいポリアミドはポリアミド6,6である。ポリアミドは、米国特許第6469093号及びそこに引用された特許中に記載されているようないくつかの公知方法で得ることができる。PPEとポリアミドとの重量比はかなりの範囲(例えば、約80:20〜約20:80)にわたって変化し得るが、約25:75〜約45:55の範囲内の比が好ましい。
【0021】
PPE−ポリアミド組成物中には各種の相溶化剤が使用できる。その多くは当技術分野で公知である(例えば、上記に引用した米国特許第6469093号及び同第4997612号を参照されたい)。その非限定的な例には、液状ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン類、オルガノシラン化合物、多官能性化合物、ポリカルボン酸、及びこれらの相溶化剤の1種以上を含む組合せがある。官能化PPE(例えば、上述の相溶化剤の1種以上をPPE自体と反応させて生成したもの)も相溶化剤として使用できる。相溶化剤の若干の具体例は次の通りである。即ち、クエン酸、無水マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、無水トリメリト酸塩化物、及びこれらの各種誘導体がある。相溶化剤の特定の使用量は、選択される特定の相溶化剤及びそれを添加する特定のポリマー系に依存する。通常、相溶化剤は全組成物の重量を基準にして約0.05〜約4重量%のレベルで存在する。
【0022】
導電性付与剤(本明細書中では時に「導電性材料」という)は、熱可塑性樹脂組成物の物理的特性に顕著な悪影響を及ぼさないことを条件にして、各種の材料から選択できる。それは、多くの場合、カーボンブラック(「CCB」)(例えば、AKZO社(デベンター、オランダ)から入手できるKetjenblack EC600JD)又はカーボンフィブリル(「CF」)(例えば、Hyperion Catalysis International社(ケンブリッド、米国マサチューセッツ州)から入手できるBNフィブリル)のような炭素系材料である。
【0023】
時にはカーボンフィブリルが好ましい。この種の例示的な材料は、米国特許第6221283号及び国際公開第94/23433号(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。カーボンフィブリルは、通例、フィブリルの円筒軸の周囲に黒鉛外層が実質的に同心的に配置されてなる虫状チューブの形態を有している。カーボンフィブリルは、通常は約5以上、さらに好ましくは約100以上の長さ/直径比を有している。さらに一段と好ましいのは、長さ/直径比が約1000以上のものである。フィブリルの肉厚は、好ましくは約3.5〜75ナノメートルであるフィブリル外径の約0.1〜0.4倍である。
【0024】
通常、導電性材料の存在量は、約1×105Ω−cm未満、好ましくは約1×104Ω−cm未満の体積固有抵抗率を有する最終樹脂組成物を与える量である。表面抵抗は、通常は約1×105Ωを超え、好ましくは約1×106Ωを超える。若干の特に好ましい実施形態では、樹脂組成物は約4×104Ω−cm未満の体積固有抵抗率を有するとともに、約3.5×106Ωを超える表面抵抗を有する。体積固有抵抗率が約104Ω−cm未満である場合、樹脂組成物は静電塗装を可能にするのに十分な導電性を有する。逆に、表面抵抗が約105Ωを超える場合、組成物は成形部品上への腐食抑制剤の電着を成功裡に可能にするのに十分な導電性を有しないかもしれない。(樹脂組成物の電気的性質は各種の技術で測定できる。好適な一方法は、上述の米国特許第6469093号(Koevoetsら)に記載されている。)
導電性材料の最も適当なレベルは、添加剤の種類(例えば、その固有導電率)、PPEとポリアミド樹脂との比、及び使用する成形条件のようないくつかの因子に依存する。通常、導電性材料は全組成物の重量を基準にして約0.1〜約10重量%の範囲内のレベルで存在する。(常にではないが)通例、導電性材料がカーボンブラックからなる場合、それは約0.5〜約3重量%の量で存在する。その上、樹脂組成物が導電性カーボンフィブリルを含む場合、それは通常は全樹脂組成物の重量を基準にして約0.1〜約3重量%の量で存在する。
【0025】
樹脂組成物はさらに適量のクレイを含むが、これは様々な特性(例えば、堅固さ、強度及び成形性)を付与するための充填材又は増量材として使用される。本明細書中で使用する「クレイ」という用語は、一般にある種の形態の水和(含水)ケイ酸アルミニウムを包含するものであり、多くの参考文献中に記載されている。非限定的な例としては、下記の参考書が有益であり、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。即ち、“The Encyclopedia Americana”(International Edition),Glorier Inc.,Volume 7,1981,pp.36−37及び“Modern Plastics Encylopedia”,1990(Mid−October Issue,V.67,No.11),McGraw Hill,p.252である。水、アルミニウム及びケイ素の比率は、所定の種類のクレイに関して変化し得る。その上、クレイ材料は各種の他の元素(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び第一鉄又は第二鉄イオン)を少量含むことが多い。
【0026】
クレイの鉱物成分は、様々な群の材料(例えば、カオリン及びモンモリロナイト)を生み出す。これらの群に含まれる特定鉱物の非限定的な例には、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト、アナウキサイト、ハロイサイト、アロファン、ベントナイトなどがある。カオリン群中の若干の鉱物は、一般に、(Al2O3・2SiO2・2H2O)、(Al2O3・3SiO2・2H2O)及び(Al2O3・2SiO2・4H2O)の化学組成並びにこれらの組合せの1者を有している。(若干の鉱物は同一の化学式を有し得るが、結晶化の点で異なっている。)本発明の若干の好ましい実施形態では、クレイはカオリン系のもの(例えば、カオリナイトの形態を有するもの)であるが、他の成分が存在していてもよい。
【0027】
クレイは、多くの場合、様々な物理的形態(例えば、フレーク及び板状構造体)で入手され使用される。本発明のためには、クレイは板状積層体の形態をもった粒子(ただし、多少不規則な形状を有していてもよい)からなることが好ましい。粒子は、通常は約0.3〜約50ミクロン、さらに好ましくは約0.5〜約15ミクロンの範囲内の(最大寸法に関する)平均粒度を有している。特に好ましい実施形態では、平均粒度は約0.5〜約5ミクロンの範囲内にある。(カオリンは天然に微細な粒度を有していて、MPS(メジアン粒度)は通常約0.3〜約5ミクロンである。)
強化プラスチック分野の当業者には、クレイ材料がしばしばいくつかの技術で獲得され処理されることが理解されよう。例えば、カオリナイトのようなカオリン材料は様々な形態で製造できる(例えば、水洗し、か焼し、空気浮遊させることができる)。また、クレイを離層させて板状構造体を互いに分離することもできる。
【0028】
若干の好ましい実施形態では、本発明で使用するクレイはか焼される。か焼は通常の方法で実施でき、一般に低い325メッシュ残分を有する均一なクレイ粒子を生じる。米国特許第4528303号(Segaud)(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)は、1つのか焼方法の非限定的な例を提供する。Segaudの参考文献では、か焼処理は、周囲条件下で或いは窒素又は湿り空気雰囲気中でクレイを約800℃以上の温度に加熱することを含む。若干の場合には、加熱段階はクレイの脱ヒドロキシル化を引き起こし、低水分クレイを生じるといわれる。か焼温度は、例えば、どの程度の水分(クレイ構造中の遊離水分又は結合水分)を除去すべきかに応じてかなり変化し得る。
【0029】
若干の好ましい実施形態では、クレイはまた、材料に反応性官能基を付与するために表面改質される。反応性は、クレイをPPE−ポリアミド母材に化学結合させるので非常に有利である。このような結合は、加工中又は加工後にクレイが成形ポリマーの表面に移動するのを防止し、それによって表面外観を向上させると考えられる。
【0030】
クレイ表面をこのように改質するためには、様々な種類の添加剤が使用できる。その非限定的な例は、米国特許第6808808号及び米国再発行特許第30,450号(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に示されている。一例としては、クレイは公知技術によって官能化シラン化合物で処理できる。説明すれば、「官能化」シラン化合物(例えば、オルガノシラン化合物)は、シラノール基を生成する1以上の加水分解性アルコキシ基を含むものであり、縮合によってクレイの表面ヒドロキシル基と共有結合を形成し得る。かかる化合物はまた、通例、周囲の有機母材(即ち、PPE−ポリアミドポリマー)と結合を形成し得る官能性有機部分を含んでいる。加水分解基の例はエポキシ基又はメトキシ基である。
【0031】
官能化オルガノシランの非限定的な例は、ペンダントエポキシ又はアミノ反応基を有するもの(例えば、3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリエトキシシラン)である。しかし、他の好適なエポキシ又はアミノ官能性シランをクレイの前処理に使用することもできる。これらの化合物は商業的に入手できる。官能化剤の量は通常はクレイの乾燥重量を基準にして約0.1〜約5%の範囲内にあるが、この範囲もまた変化し得る。
【0032】
ポリマー組成物中に存在するクレイの量は、PPEとポリアミド樹脂との比、組成物中に存在する他の成分の種類や量、成形条件、成形物品に関する最終用途要件、及び配合能力のような各種の因子に依存する。通常、クレイは全組成物の重量を基準にして約1〜約50重量%の範囲内のレベルで存在する。好ましい実施形態では、そのレベルは約10〜約30重量%の範囲内にあり、若干の特に好ましい実施形態では、そのレベルは約15〜約25重量%の範囲内にある。当業者であれば、部分的には本明細書中に記載された教示に基づき、最終用途のために最も適切なクレイレベルを容易に決定できるであろう。
【0033】
本発明の組成物はしばしば各種の耐衝撃性改良剤を含むが、その大部分は当技術分野で公知である。本発明の組成物の他の物理的性質に実質的な影響を及ぼすことなしに成形物品の耐衝撃性を向上させるものが使用される。特に有用な材料は、各種のエラストマー性ブロックコポリマー及びコアシェルコポリマーである。かかる材料は、上述した参考文献の一部及び米国特許第5965655号(Mordecaiら)(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)のような多くの参考文献中に記載されている。
【0034】
ブロックコポリマーの非限定的な例には、A−B−Aトリブロックコポリマー及びA−Bジブロックコポリマーがある。これらの材料は、通常、1種又は2種のアルケニル芳香族ブロック(通例はスチレンブロックである)及びゴムブロック(例えば、部分的に水素化され得るブタジエンブロック)から構成される熱可塑性ゴムである。これらのトリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーの混合物も時には有用である。ブロックコポリマーの具体例は、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレントリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレントリブロックコポリマー及びスチレン−ブタジエンジブロックコポリマーである。
【0035】
コアシェル耐衝撃性改良剤の非限定的な例は、「全アクリル系」材料である。これらは、例えば、ポリブチルアクリレートのようなポリアクリレートコアをメチルメタクリレートシェル(例えば、スチレン−メチルメタクリレート又はアクリロニトリル−メチルメタクリレートシェル)と共に有し得る。別の種類のコアシェル型耐衝撃性改良剤は、好ましくは架橋されたポリブタジエンコアを上述のもののようなアクリレートシェルと共に有するものである。
【0036】
本発明で任意に使用し得る耐衝撃性改良剤の量は、各種の因子(その大部分は前述した通りである)に依存する。通常、耐衝撃性改良剤は全組成物の重量を基準にして約0.5〜約25重量%で存在する。若干の好ましい実施形態では、そのレベルは約0.5〜約10重量%の範囲内にある。
【0037】
本発明の組成物はまた、有効量の各種添加剤を含み得る。その非限定的な例には、安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、難燃剤、滴下抑制剤、染料、顔料、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、及びこれらのいずれかの組合せがある。これらの添加剤は当技術分野で公知であり、その有効レベル及び混入方法も同様である。添加剤の有効量は広範囲に変化し得るが、通常は全組成物の重量を基準にして約40重量%までの量で存在する。これらの添加剤の好ましい量は、通常は組成物の全重量を基準にして約0.1〜約2重量%の範囲内にある。しかし、難燃剤は時には約20重量%までのレベルで存在し得る。(その上、成形物品の外観又は性質に悪影響を及ぼさない限り、本組成物は時にはクレイ材料に加えて1種以上の追加充填材及び/又は補強材を含み得る。)
若干の好ましい実施形態では、ポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドは実質的ニタルクを含まない。タルクはある種のポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドにおける常用充填材であるが、前述の通り、その存在はブレンドを導電性にして静電塗装した場合に表面欠陥を引き起こすことがある。本発明者らは、この種の組成物中にタルクではなくクレイを使用することが、物品の他の重要な物理的性質を実質的に維持しながら、成形塗装物品の表面外観を顕著に向上させ得ることを発見した。他の実施形態では、ポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドは雲母も実質的に含まない。
【0038】
一般に、本発明の組成物は、通常の手順に従って各種成形のメルトブレンディングを行って均質ブレンドを形成することで製造できる。かかる条件は、多くの場合、一軸又は二軸押出機或いは成分に剪断作用を加えることができる類似の混合装置での混合を含んでいる。すべての成分を最初から加工システムに添加することもできるし、或いは特定の添加剤を1種以上の主成分(好ましくは、PPE、任意のエラストマー及び/又はポリアミド)と予備配合することもできる。若干の例では、下流位置でポリアミド樹脂を配合するのに先立ち、まずPPE、エラストマー性コポリマー(存在する場合)及び他の成分の一部を予備配合することで、衝撃強さや伸びのような特定の性質を向上させることができる。しかし、相溶化組成物の粘度を許容レベルに維持するように注意を払う必要がある。組成物中の揮発性不純物を除去するため、押出機の1以上のベントポートを通してポリマー融液に真空を適用することがしばしば有利である。
【0039】
ポリマー加工に精通した当業者は、押出方法及び他のメルトブレンディング方法に関する詳細を熟知している。彼らは、特段の追加実験を行わなくても、ブレンディング時間及び温度並びに成分添加方法を調整することができよう。その上、当業者はそれに続く製造段階(例えば、冷却及びペレット化、並びに成形段階前の乾燥)にも精通している。次に、通常の手順(例えば、市販の射出成形機の使用)に従って、組成物の成形を適当な温度で実施することができる。本明細書中に引用した参考文献の多くは、押出方法及び成形方法に関する詳細を含んでいる。
【0040】
本発明の別の態様は、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。この方法は、前述の通り、1種以上のポリフェニレンエーテル、1種以上のポリアミド、相溶化剤、導電性付与剤及びクレイ充填材を混合する段階に基づいている。(この方法では、他の成分(例えば、エラストマー性ポリマー)を添加することもできる。)その上、上述のようにして組成物を成形し、次いで成形物品を静電塗装することで、これらの組成物から塗装熱可塑性樹脂物品を製造することもできる。この方法の重要な特性は、極めて望ましい表面外観と共に良好な物理的性質をもった(自動車部品のような)物品を製造できることである。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は単に例示的なものであり、いかなる形であっても特許請求の範囲に記載した本発明の技術的範囲を限定するものと解すべきでない。
【0042】
実施例では下記の材料を使用した。
【0043】
PPE:25℃のクロロホルム中で約0.4dl/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル樹脂。
【0044】
SEBS:Kraton Polymers社から入手したG−1651(商標)ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン。
【0045】
クエン酸。
【0046】
PELTP:安定剤:Clariant Benelux社から入手したペンタエリトリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(Sandostab(商標)4020)。
【0047】
酸化防止剤:Ciba Specialty Chemicals社から入手できるIrganox(商標)1098。
【0048】
酸化防止剤:Ciba Specialty Chemicals社から入手できるIrganox(商標)1076(ヒンダードフェノール)。
【0049】
KI:ヨウ化カリウム。
【0050】
CuI:ヨウ化銅(I)。
【0051】
PETS:Lonza Benelux社から入手したペンタエリトリトールテトラステアレート。
【0052】
ポリアミド:約50meqのアミン末端基数及び96%H2SO4中で約2.4の相対粘度を有するナイロン6,6(グレードUltramid(商標)105)。
【0053】
タルク:Fintalc(商標)M15:平均粒度4.8ミクロンの3MgO・4SiO2・H2O。
【0054】
Fintalc(商標)M03:平均粒度1.2ミクロンの3MgO・4SiO2・H2O。
【0055】
ウォラストナイト:Nyglos Minerals社から入手したNyglos(商標)4(改質表面)。
【0056】
クレイ:Engelhard Corporation(イセリン、米国ニュージャージー州)からTranslink(登録商標)445として入手できるか焼クレイ(ケイ酸アルミニウム)。このクレイはアミノシランで表面改質されており、1.4ミクロンのMPS(メジアン粒度)及び0.02の+325メッシュ残分を有していた。
【0057】
導電性付与剤:導電性カーボンブラック:AKZO Nobel社から入手したEC600JD。
【0058】
実験用として、12バレルの全長を有する28mmのWerner&Pfleiderer二軸押出機を使用した。押出機は、表1に示すように特定の成分を選択的にサイドフィーダー添加するため、複数の下流ポートを有していた。各試料について、スロート添加用の成分はブレンディングにより混合してから押出機に供給した。ポリアミド(ナイロン6,6)及び該当する充填材は、最初に混合してマスターバッチを形成した。これらのマスターバッチは、9バレルの全長を有する独立した28mm二軸押出機で製造した。相次ぐ押出機温度設定値は約60〜約300℃の範囲内にあり、ダイ温度は約290℃であって、約320℃の溶融温度が得られた。すべてのポリアミド(55%)はスロートを通して供給した。充填材は、一部(20%)はスロートを通して供給し、一部(25%)はサイドフィーダーを通して供給した。
【0059】
40%の該当するポリアミド−充填材マスターバッチを一次押出機内の最終配合物に添加し、計算された処方に従って22%のポリアミド及び18%の充填材を置換した。マスターバッチの添加は1つの下流ポート(表1中の「サイドフィーダー1」)を通して行ったのに対し、導電性材料は第二の下流ポート(サイドフィーダー2)を通して添加した。押出機のスクリュー速度は300rpmであった。相次ぐ押出機温度設定値は約60〜約300℃の範囲内にあり、ダイ温度は310℃であって、約340℃の溶融温度が得られた。
【0060】
導電性組成物用充填材としてのクレイの使用を、通常の充填材(即ち、タルク及びウォラストナイト)と比較した。総合的な組成を表1に示す。
【0061】
【表1】
各試料に関する押出物を冷水で急冷し、次いでペレット化した。次いで、組成物を乾燥し、150トンのEngel成形機を用いて試験片(175mm×175mm×2.5mm)を射出成形した。溶融温度は300℃の設定し、金型温度は約75〜80℃であった。約40〜45秒のサイクル時間が達成された。
【0062】
試験片(プラーク)を静電プライマー組成物で通常通りに塗装した。プライマーは、Ford Motor Companyから供給された黒色無煙炭の溶液型塗料系であった。通常のスプレーガンを用いて1層のプライマーを塗布した。プライマー系用の硬化条件は、130℃で20分であった。(硬化後の)被膜の厚さは、各例において約20ミクロンであった。次いで、光学顕微鏡を用いて被膜を検査した。
【0063】
表2は、被膜の外観検査の結果をまとめて示している。
【0064】
【表2】
試料1の被覆物品を図1に示すが、これは倍率約10×の顕微鏡写真である。表面全体にわたってペイントポッピングが多く見られる。その上、試料4,5及び6もペイントポッピングを示した。充填材としてウォラストナイトを含む試料2は、良好な表面外観を有していた。(しかし、後述の通り、ウォラストナイトの使用は他の欠点を有している。)
本発明に従ってクレイを使用する試料3の被覆物品を図2に示すが、これも倍率約10×の顕微鏡写真である。表面は高品質であって、ペイントポッピングや他の欠陥を含まない。その上、試料3の組成物は、衝撃強さ、剛性及び耐熱性のような物理的性質の点で、表1に示した他の組成物と同等である。例えば、CTE低下及びこわさのわずかな減少が見られた一方、衝撃強さのわずかな増加が見られた。
【0065】
(ウォラストナイト入りの)試料2のような組成物は、寸法安定性の点で欠点を示す。ウォラストナイトは、通常、(例えば、約1:10の)比較的大きいL/D比をもった針状繊維の形態を有している。この性質は、寸法安定性及びゆがみに対してマイナスの効果を及ぼすと考えられる。
【0066】
それとは著しく対照的に、(クレイを含む)試料3から成形された物品はゆがみの形跡を全く示さなかった。さらに、試料3に関するCTE値は、流れ方向及び直交方向のいずれについても、充填材としてタルクを使用する試料と同等であった。前述の通り、部品の寿命期間にわたって精密な許容差を要求する部品用として組成物が使用される場合、寸法安定性及びゆがみの欠如は重要な属性である。静電塗装部品に関する高品質の表面外観を考え合わせると、特許請求の範囲に記載された本発明の組成物は当技術分野における大きな進歩を示している。
【0067】
当業者には、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱せずに他の修正例及び変更例が想起できるであろう。上述した特許、論文及び参考書のすべての開示内容は、援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】通常のポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物から成形された塗装試験片の顕微鏡写真である。
【図2】本発明に係るポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物から成形された塗装試験片の顕微鏡写真である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的には熱可塑性樹脂組成物に関する。さらに詳しくは、本発明は成形して塗装することで高品質表面が得られる導電性ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミドブレンド自体は、多種多様の製品を成形できる極めて魅力的な材料として確立されている。かかるブレンドは、各材料の最も望ましい性質、即ちポリ(アリーレンエーテル)に由来する傑出した耐熱性及び寸法安定性、並びにポリアミドに由来する優れた強度及び耐薬品性を示す。かかる組成物の例示的な開示は、米国特許第6469093号(Koevoetsら)、同第4873276号(Fujiiら)、同第4659760号(Van der Meer)、同第4732938号(Grantら)及び同第4315086号(Uenoら)中に見出される。
【0003】
ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミドブレンドの性質を向上させるため、基材樹脂用の相溶化剤、流れ調整剤、耐衝撃性改良剤及び充填材がしばしば添加される。かかるブレンドは、各種の自動車部品(例えば、車体パネル、トランク蓋、フード、及び給油口ドアやミラーハウジングのような多くの小形部品)の成形用として非常にポピュラーである。金属自動車部品をプラスチック部品で置き換えることは、軽量化や腐食問題の排除のような多くの利点を有している。しかし、多くの自動車用途では、プラスチック部品は色、テクスチャー及び総合外観の点で隣接する金属部品と全く同じに見えなければならない。
【0004】
自動車組立作業に際しては、プラスチック部品及び金属部品にペイントを塗布するために静電塗装作業がしばしば使用される。かかる塗装作業はプラスチックが十分に導電性であることを要求するので、プラスチック中に導電性添加剤を混入しなければならない。その上、ペイントは通常は(例えば、180℃を超える)高温でパネル上に焼き付けられるので、プラスチック部品は劣化やゆがみを生じることなしにかかる温度に耐えることができなければならない。
【0005】
多くの種類のポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミドブレンドは、塗装及び焼付け作業のために必要な耐熱性を有している。その上、かかるブレンドは静電塗装のために必要な導電性を与えるよう適切に処方されてきたが、所要の添加剤は高価であるとともに取扱いが難しいことがある。また、これらの存在が延性や表面外観のような他の性質に悪影響を及ぼすこともある。
【0006】
技術者達は、複数の所要性質をバランスさせるポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミドブレンドを処方することに非常に熟練してきた。しかし、各種の最終用途及び製造条件に関してはなお問題が生じることがある。例えば、成形部品が多くの場合に要求される低い熱膨張率(CTE)を確実に有するようにすることは非常に難しいことがある。金属部品間に近接して配置されることがある給油口ドア及び他の部品の場合には、部品の膨張及び「固着」を防止するために低いCTEが極めて重要であることが多い。自動車が使用中に繰り返して日光や高い屋外温度に暴露される場合には、このように精密な許容差を一貫して維持するのは非常に難しいことがある。
【0007】
その上、自動車の消費者及びディーラー(並びに製造者)は、自動車又はトラックの全体的な塗装外観を大いに重視している。成形塗装されたプラスチック部品は、多くの場合、「クラスA」の表面又はクラスA品質に近い外観を有していなければならない。米国特許第5965655号(Mordecaiら)に注記されている通り、「クラスA」には様々な定義がある。一般に、本明細書中で使用するクラスA表面は、テクスチャー(即ち、平滑性)及び色の点で隣接する金属薄板表面と実質的に同じ塗装プラスチック表面を述べていると解される。さらに、かかる表面は一般にスプレーマークやペイントポッピングのような各種の欠陥を含むべきでない。
【0008】
静電塗装用途のための市販ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物の一部は、充填材としてタルクを使用している。これらの製品は、通常は寸法安定性、剛性、耐熱性及び耐衝撃性の良好なバランスを示しているが、ある種の条件下では若干の欠点を示すことがある。例えば、かかる組成物を成形した場合、タルクの存在がスプレーマークを引き起こすことがある。スプレーマークは、多くの場合、成分物品上(通常は金型ゲート付近)にすじ又は淡色のマークとして現れる。その上、物品を塗装した場合、時にはペイントポッピングのような他の表面欠陥が生じる。これらの問題は、導電性添加剤と共にタルクが存在する場合に起こりやすいように思われる。理論が確実なわけではないが、タルクはポリマー母材中に存続せず、加工中又は加工後に成形物品の表面に移動するように思われる。
【0009】
望ましくない表面欠陥は、時には温度やサイクル時間のような成形条件の綿密な調整及び維持によって最小化又は排除することができる。しかし、加工窓は非常に狭いことがある。即ち、設定された成形条件からのわずかなずれが欠陥の発生を引き起こすことがある。このような狭い加工窓は工業的環境における大きな欠点であって、加工時間や能率の損失をもたらす。
【0010】
したがって、様々な最終用途のために改良された特性を有する導電性ポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物に対するニーズが存在することは明らかである。例えば、成形され、次いで静電塗装された組成物は、上述した欠陥を実質的に含まない比較的高品質の表面外観を示す必要がある。さらに、組成物が実質的な量の充填材を含む場合でも望ましい表面外観が得られる必要がある。その上、成形された組成物に関する他の性質(例えば、寸法安定性、耐熱性及び耐衝撃性)が実質的に維持されることも必要である。
【特許文献1】米国特許第6469093号明細書
【特許文献2】米国特許第4873276号明細書
【特許文献3】米国特許第4659760号明細書
【特許文献4】米国特許第4732938号明細書
【特許文献5】米国特許第4315086号明細書
【特許文献6】米国特許第5965655号明細書
【特許文献7】米国特許第5086105号明細書
【特許文献8】米国特許第5091461号明細書
【特許文献9】米国特許第6221283号明細書
【特許文献10】米国特許第6808808号明細書
【特許文献11】米国特許第6423768号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2004/0192822号明細書
【特許文献13】欧州特許第0597648号明細書
【特許文献14】欧州特許第0506386号明細書
【特許文献15】欧州特許第0685527号明細書
【特許文献16】特開平01−308856号公報
【特許文献17】特開2005−264027号公報
【非特許文献1】“Novel Morphologies of Poly(Phenylene Oxide)(PPO)/Polyamide 6(PA6) Blend Nanocomposites”,Yongjin Li et al,Polymer 45(2004)pp.7381−7388.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
導電性熱可塑性樹脂組成物が記載される。本組成物は、全組成物の重量を基準にして、
(a)約20〜約80重量%のポリ(アリーレンエーテル)、
(b)約80〜約20重量%のポリアミド、
(c)成分(a)及び(b)用の相溶化剤、
(d)樹脂組成物用の導電性付与剤、並びに
(e)約1〜約50重量%のクレイ
を含んでなる。
【0012】
クレイ材料は、通常は板状積層体の形態を有しており、多くの場合にか焼されている。その上、クレイは後述のように(例えば、アミノシランで)表面改質することもできる。本組成物は、耐衝撃性改良剤のような各種の他の成分を含み得る。さらに、若干の実施形態では、本組成物はタルクを実質的に含まない。これらの組成物から成形され、次いで塗装された物品(例えば、自動車部品)も、本発明の一部をなしている。
【0013】
別の実施形態は、塗装熱可塑性樹脂物品の製造方法であって、
(I)1種以上のポリフェニレンエーテル、1種以上のポリアミド、相溶化剤、導電性付与剤及びクレイ充填材を混合して均質ブレンドを形成する段階と、
(II)段階(I)で形成されたブレンドから物品を成形する段階と、
(III)段階(II)で形成された成形物品を静電塗装する段階と
を含んでなる方法に関する。
【0014】
塗装物品は、段階(I)で形成された導電性ブレンドがクレイ充填材の代わりにタルク充填材を含む場合に生じる表面に比べて欠陥が少ないことを特徴とする表面を有する。
【0015】
図面の簡単な説明
図1は、通常のポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物から成形された塗装試験片の顕微鏡写真である。
【0016】
図2は、本発明に係るポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物から成形された塗装試験片の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル樹脂(又は他のポリ(アリーレンエーテル))とポリアミド樹脂との相溶化ブレンドを含んでいる。(簡明にするため、本明細書中では「ポリフェニレンエーテル」又は「PPE」という用語を時々使用するが、この成分の完全な範囲は「ポリ(アリーレンエーテル)」で表されることを了解されたい。)これらのブレンドは当技術分野で公知であり、多くの参考文献中に記載されており、その一部は上述した通りである。その非限定的な例には、米国特許第4873276号(Fujiiら)、同第4659760号(Van der Meer)、同第4732938号(Grantら)、同第4997612号(Gianchandaiら)、同第4315086号(Uenoら)、同第6469093号(Koevoetsら)及び同第6221283号(Dharmarajanら)(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)がある。
【0018】
本発明で有用なポリフェニレンエーテル樹脂は、すべての公知ポリフェニレンエーテル樹脂を包含する。好ましい樹脂には、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)並びに2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールのコポリマー樹脂がある。例えばペイント硬化オーブンに適応させるために高い耐熱性が所望される組成物では、オーブン温度より高いガラス転移温度(Tg)を有するPPEが望ましい。固有粘度は、通例は25℃のクロロホルム中で測定して約0.20〜約0.60dl/gである。同様な原理に基づけば、樹脂の他の変形例も有用であり得る。
【0019】
ポリアミド樹脂(しばしば「ナイロン」ともいう)は、通常はアミド基(−C(O)NH−)の存在で特徴づけられる。ナイロン−6及びナイロン−6,6ナイロンが一般に好ましいポリアミドであり、様々な商業的供給源から入手できる。しかし、ナイロン−4,6、ナイロン−4、ナイロン−12、ナイロン−6,12、ナイロン−6,10、ナイロン−6,9、ナイロン−6/6T、ナイロン−6,6/6T、ナイロン−9T及び非晶質ナイロンのような他のポリアミドも使用可能である。各種ポリアミドの混合物並びに各種ポリアミドコポリマーも有用である。ポリアミドはまた、多くは1種以上のポリアミドを1種以上のポリマー系又はコポリマー系エラストマー強化剤とブレンドすることで製造される、「強化ナイロン」(米国特許第4997612号を参照されたい)といわれるものの1種以上でもあり得る。
【0020】
本発明のブレンド用の最も好ましいポリアミドはポリアミド6,6である。ポリアミドは、米国特許第6469093号及びそこに引用された特許中に記載されているようないくつかの公知方法で得ることができる。PPEとポリアミドとの重量比はかなりの範囲(例えば、約80:20〜約20:80)にわたって変化し得るが、約25:75〜約45:55の範囲内の比が好ましい。
【0021】
PPE−ポリアミド組成物中には各種の相溶化剤が使用できる。その多くは当技術分野で公知である(例えば、上記に引用した米国特許第6469093号及び同第4997612号を参照されたい)。その非限定的な例には、液状ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン類、オルガノシラン化合物、多官能性化合物、ポリカルボン酸、及びこれらの相溶化剤の1種以上を含む組合せがある。官能化PPE(例えば、上述の相溶化剤の1種以上をPPE自体と反応させて生成したもの)も相溶化剤として使用できる。相溶化剤の若干の具体例は次の通りである。即ち、クエン酸、無水マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、無水トリメリト酸塩化物、及びこれらの各種誘導体がある。相溶化剤の特定の使用量は、選択される特定の相溶化剤及びそれを添加する特定のポリマー系に依存する。通常、相溶化剤は全組成物の重量を基準にして約0.05〜約4重量%のレベルで存在する。
【0022】
導電性付与剤(本明細書中では時に「導電性材料」という)は、熱可塑性樹脂組成物の物理的特性に顕著な悪影響を及ぼさないことを条件にして、各種の材料から選択できる。それは、多くの場合、カーボンブラック(「CCB」)(例えば、AKZO社(デベンター、オランダ)から入手できるKetjenblack EC600JD)又はカーボンフィブリル(「CF」)(例えば、Hyperion Catalysis International社(ケンブリッド、米国マサチューセッツ州)から入手できるBNフィブリル)のような炭素系材料である。
【0023】
時にはカーボンフィブリルが好ましい。この種の例示的な材料は、米国特許第6221283号及び国際公開第94/23433号(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されている。カーボンフィブリルは、通例、フィブリルの円筒軸の周囲に黒鉛外層が実質的に同心的に配置されてなる虫状チューブの形態を有している。カーボンフィブリルは、通常は約5以上、さらに好ましくは約100以上の長さ/直径比を有している。さらに一段と好ましいのは、長さ/直径比が約1000以上のものである。フィブリルの肉厚は、好ましくは約3.5〜75ナノメートルであるフィブリル外径の約0.1〜0.4倍である。
【0024】
通常、導電性材料の存在量は、約1×105Ω−cm未満、好ましくは約1×104Ω−cm未満の体積固有抵抗率を有する最終樹脂組成物を与える量である。表面抵抗は、通常は約1×105Ωを超え、好ましくは約1×106Ωを超える。若干の特に好ましい実施形態では、樹脂組成物は約4×104Ω−cm未満の体積固有抵抗率を有するとともに、約3.5×106Ωを超える表面抵抗を有する。体積固有抵抗率が約104Ω−cm未満である場合、樹脂組成物は静電塗装を可能にするのに十分な導電性を有する。逆に、表面抵抗が約105Ωを超える場合、組成物は成形部品上への腐食抑制剤の電着を成功裡に可能にするのに十分な導電性を有しないかもしれない。(樹脂組成物の電気的性質は各種の技術で測定できる。好適な一方法は、上述の米国特許第6469093号(Koevoetsら)に記載されている。)
導電性材料の最も適当なレベルは、添加剤の種類(例えば、その固有導電率)、PPEとポリアミド樹脂との比、及び使用する成形条件のようないくつかの因子に依存する。通常、導電性材料は全組成物の重量を基準にして約0.1〜約10重量%の範囲内のレベルで存在する。(常にではないが)通例、導電性材料がカーボンブラックからなる場合、それは約0.5〜約3重量%の量で存在する。その上、樹脂組成物が導電性カーボンフィブリルを含む場合、それは通常は全樹脂組成物の重量を基準にして約0.1〜約3重量%の量で存在する。
【0025】
樹脂組成物はさらに適量のクレイを含むが、これは様々な特性(例えば、堅固さ、強度及び成形性)を付与するための充填材又は増量材として使用される。本明細書中で使用する「クレイ」という用語は、一般にある種の形態の水和(含水)ケイ酸アルミニウムを包含するものであり、多くの参考文献中に記載されている。非限定的な例としては、下記の参考書が有益であり、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。即ち、“The Encyclopedia Americana”(International Edition),Glorier Inc.,Volume 7,1981,pp.36−37及び“Modern Plastics Encylopedia”,1990(Mid−October Issue,V.67,No.11),McGraw Hill,p.252である。水、アルミニウム及びケイ素の比率は、所定の種類のクレイに関して変化し得る。その上、クレイ材料は各種の他の元素(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム及び第一鉄又は第二鉄イオン)を少量含むことが多い。
【0026】
クレイの鉱物成分は、様々な群の材料(例えば、カオリン及びモンモリロナイト)を生み出す。これらの群に含まれる特定鉱物の非限定的な例には、カオリナイト、ジッカイト、ナクライト、アナウキサイト、ハロイサイト、アロファン、ベントナイトなどがある。カオリン群中の若干の鉱物は、一般に、(Al2O3・2SiO2・2H2O)、(Al2O3・3SiO2・2H2O)及び(Al2O3・2SiO2・4H2O)の化学組成並びにこれらの組合せの1者を有している。(若干の鉱物は同一の化学式を有し得るが、結晶化の点で異なっている。)本発明の若干の好ましい実施形態では、クレイはカオリン系のもの(例えば、カオリナイトの形態を有するもの)であるが、他の成分が存在していてもよい。
【0027】
クレイは、多くの場合、様々な物理的形態(例えば、フレーク及び板状構造体)で入手され使用される。本発明のためには、クレイは板状積層体の形態をもった粒子(ただし、多少不規則な形状を有していてもよい)からなることが好ましい。粒子は、通常は約0.3〜約50ミクロン、さらに好ましくは約0.5〜約15ミクロンの範囲内の(最大寸法に関する)平均粒度を有している。特に好ましい実施形態では、平均粒度は約0.5〜約5ミクロンの範囲内にある。(カオリンは天然に微細な粒度を有していて、MPS(メジアン粒度)は通常約0.3〜約5ミクロンである。)
強化プラスチック分野の当業者には、クレイ材料がしばしばいくつかの技術で獲得され処理されることが理解されよう。例えば、カオリナイトのようなカオリン材料は様々な形態で製造できる(例えば、水洗し、か焼し、空気浮遊させることができる)。また、クレイを離層させて板状構造体を互いに分離することもできる。
【0028】
若干の好ましい実施形態では、本発明で使用するクレイはか焼される。か焼は通常の方法で実施でき、一般に低い325メッシュ残分を有する均一なクレイ粒子を生じる。米国特許第4528303号(Segaud)(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)は、1つのか焼方法の非限定的な例を提供する。Segaudの参考文献では、か焼処理は、周囲条件下で或いは窒素又は湿り空気雰囲気中でクレイを約800℃以上の温度に加熱することを含む。若干の場合には、加熱段階はクレイの脱ヒドロキシル化を引き起こし、低水分クレイを生じるといわれる。か焼温度は、例えば、どの程度の水分(クレイ構造中の遊離水分又は結合水分)を除去すべきかに応じてかなり変化し得る。
【0029】
若干の好ましい実施形態では、クレイはまた、材料に反応性官能基を付与するために表面改質される。反応性は、クレイをPPE−ポリアミド母材に化学結合させるので非常に有利である。このような結合は、加工中又は加工後にクレイが成形ポリマーの表面に移動するのを防止し、それによって表面外観を向上させると考えられる。
【0030】
クレイ表面をこのように改質するためには、様々な種類の添加剤が使用できる。その非限定的な例は、米国特許第6808808号及び米国再発行特許第30,450号(これらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に示されている。一例としては、クレイは公知技術によって官能化シラン化合物で処理できる。説明すれば、「官能化」シラン化合物(例えば、オルガノシラン化合物)は、シラノール基を生成する1以上の加水分解性アルコキシ基を含むものであり、縮合によってクレイの表面ヒドロキシル基と共有結合を形成し得る。かかる化合物はまた、通例、周囲の有機母材(即ち、PPE−ポリアミドポリマー)と結合を形成し得る官能性有機部分を含んでいる。加水分解基の例はエポキシ基又はメトキシ基である。
【0031】
官能化オルガノシランの非限定的な例は、ペンダントエポキシ又はアミノ反応基を有するもの(例えば、3−グリシジルオキシプロピル−トリメトキシシラン及び3−アミノプロピルトリエトキシシラン)である。しかし、他の好適なエポキシ又はアミノ官能性シランをクレイの前処理に使用することもできる。これらの化合物は商業的に入手できる。官能化剤の量は通常はクレイの乾燥重量を基準にして約0.1〜約5%の範囲内にあるが、この範囲もまた変化し得る。
【0032】
ポリマー組成物中に存在するクレイの量は、PPEとポリアミド樹脂との比、組成物中に存在する他の成分の種類や量、成形条件、成形物品に関する最終用途要件、及び配合能力のような各種の因子に依存する。通常、クレイは全組成物の重量を基準にして約1〜約50重量%の範囲内のレベルで存在する。好ましい実施形態では、そのレベルは約10〜約30重量%の範囲内にあり、若干の特に好ましい実施形態では、そのレベルは約15〜約25重量%の範囲内にある。当業者であれば、部分的には本明細書中に記載された教示に基づき、最終用途のために最も適切なクレイレベルを容易に決定できるであろう。
【0033】
本発明の組成物はしばしば各種の耐衝撃性改良剤を含むが、その大部分は当技術分野で公知である。本発明の組成物の他の物理的性質に実質的な影響を及ぼすことなしに成形物品の耐衝撃性を向上させるものが使用される。特に有用な材料は、各種のエラストマー性ブロックコポリマー及びコアシェルコポリマーである。かかる材料は、上述した参考文献の一部及び米国特許第5965655号(Mordecaiら)(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)のような多くの参考文献中に記載されている。
【0034】
ブロックコポリマーの非限定的な例には、A−B−Aトリブロックコポリマー及びA−Bジブロックコポリマーがある。これらの材料は、通常、1種又は2種のアルケニル芳香族ブロック(通例はスチレンブロックである)及びゴムブロック(例えば、部分的に水素化され得るブタジエンブロック)から構成される熱可塑性ゴムである。これらのトリブロックコポリマー及びジブロックコポリマーの混合物も時には有用である。ブロックコポリマーの具体例は、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレントリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレントリブロックコポリマー及びスチレン−ブタジエンジブロックコポリマーである。
【0035】
コアシェル耐衝撃性改良剤の非限定的な例は、「全アクリル系」材料である。これらは、例えば、ポリブチルアクリレートのようなポリアクリレートコアをメチルメタクリレートシェル(例えば、スチレン−メチルメタクリレート又はアクリロニトリル−メチルメタクリレートシェル)と共に有し得る。別の種類のコアシェル型耐衝撃性改良剤は、好ましくは架橋されたポリブタジエンコアを上述のもののようなアクリレートシェルと共に有するものである。
【0036】
本発明で任意に使用し得る耐衝撃性改良剤の量は、各種の因子(その大部分は前述した通りである)に依存する。通常、耐衝撃性改良剤は全組成物の重量を基準にして約0.5〜約25重量%で存在する。若干の好ましい実施形態では、そのレベルは約0.5〜約10重量%の範囲内にある。
【0037】
本発明の組成物はまた、有効量の各種添加剤を含み得る。その非限定的な例には、安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、難燃剤、滴下抑制剤、染料、顔料、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、及びこれらのいずれかの組合せがある。これらの添加剤は当技術分野で公知であり、その有効レベル及び混入方法も同様である。添加剤の有効量は広範囲に変化し得るが、通常は全組成物の重量を基準にして約40重量%までの量で存在する。これらの添加剤の好ましい量は、通常は組成物の全重量を基準にして約0.1〜約2重量%の範囲内にある。しかし、難燃剤は時には約20重量%までのレベルで存在し得る。(その上、成形物品の外観又は性質に悪影響を及ぼさない限り、本組成物は時にはクレイ材料に加えて1種以上の追加充填材及び/又は補強材を含み得る。)
若干の好ましい実施形態では、ポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドは実質的ニタルクを含まない。タルクはある種のポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドにおける常用充填材であるが、前述の通り、その存在はブレンドを導電性にして静電塗装した場合に表面欠陥を引き起こすことがある。本発明者らは、この種の組成物中にタルクではなくクレイを使用することが、物品の他の重要な物理的性質を実質的に維持しながら、成形塗装物品の表面外観を顕著に向上させ得ることを発見した。他の実施形態では、ポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドは雲母も実質的に含まない。
【0038】
一般に、本発明の組成物は、通常の手順に従って各種成形のメルトブレンディングを行って均質ブレンドを形成することで製造できる。かかる条件は、多くの場合、一軸又は二軸押出機或いは成分に剪断作用を加えることができる類似の混合装置での混合を含んでいる。すべての成分を最初から加工システムに添加することもできるし、或いは特定の添加剤を1種以上の主成分(好ましくは、PPE、任意のエラストマー及び/又はポリアミド)と予備配合することもできる。若干の例では、下流位置でポリアミド樹脂を配合するのに先立ち、まずPPE、エラストマー性コポリマー(存在する場合)及び他の成分の一部を予備配合することで、衝撃強さや伸びのような特定の性質を向上させることができる。しかし、相溶化組成物の粘度を許容レベルに維持するように注意を払う必要がある。組成物中の揮発性不純物を除去するため、押出機の1以上のベントポートを通してポリマー融液に真空を適用することがしばしば有利である。
【0039】
ポリマー加工に精通した当業者は、押出方法及び他のメルトブレンディング方法に関する詳細を熟知している。彼らは、特段の追加実験を行わなくても、ブレンディング時間及び温度並びに成分添加方法を調整することができよう。その上、当業者はそれに続く製造段階(例えば、冷却及びペレット化、並びに成形段階前の乾燥)にも精通している。次に、通常の手順(例えば、市販の射出成形機の使用)に従って、組成物の成形を適当な温度で実施することができる。本明細書中に引用した参考文献の多くは、押出方法及び成形方法に関する詳細を含んでいる。
【0040】
本発明の別の態様は、導電性熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関する。この方法は、前述の通り、1種以上のポリフェニレンエーテル、1種以上のポリアミド、相溶化剤、導電性付与剤及びクレイ充填材を混合する段階に基づいている。(この方法では、他の成分(例えば、エラストマー性ポリマー)を添加することもできる。)その上、上述のようにして組成物を成形し、次いで成形物品を静電塗装することで、これらの組成物から塗装熱可塑性樹脂物品を製造することもできる。この方法の重要な特性は、極めて望ましい表面外観と共に良好な物理的性質をもった(自動車部品のような)物品を製造できることである。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は単に例示的なものであり、いかなる形であっても特許請求の範囲に記載した本発明の技術的範囲を限定するものと解すべきでない。
【0042】
実施例では下記の材料を使用した。
【0043】
PPE:25℃のクロロホルム中で約0.4dl/gの固有粘度を有するポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル樹脂。
【0044】
SEBS:Kraton Polymers社から入手したG−1651(商標)ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブチレン)−ポリスチレン。
【0045】
クエン酸。
【0046】
PELTP:安定剤:Clariant Benelux社から入手したペンタエリトリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)(Sandostab(商標)4020)。
【0047】
酸化防止剤:Ciba Specialty Chemicals社から入手できるIrganox(商標)1098。
【0048】
酸化防止剤:Ciba Specialty Chemicals社から入手できるIrganox(商標)1076(ヒンダードフェノール)。
【0049】
KI:ヨウ化カリウム。
【0050】
CuI:ヨウ化銅(I)。
【0051】
PETS:Lonza Benelux社から入手したペンタエリトリトールテトラステアレート。
【0052】
ポリアミド:約50meqのアミン末端基数及び96%H2SO4中で約2.4の相対粘度を有するナイロン6,6(グレードUltramid(商標)105)。
【0053】
タルク:Fintalc(商標)M15:平均粒度4.8ミクロンの3MgO・4SiO2・H2O。
【0054】
Fintalc(商標)M03:平均粒度1.2ミクロンの3MgO・4SiO2・H2O。
【0055】
ウォラストナイト:Nyglos Minerals社から入手したNyglos(商標)4(改質表面)。
【0056】
クレイ:Engelhard Corporation(イセリン、米国ニュージャージー州)からTranslink(登録商標)445として入手できるか焼クレイ(ケイ酸アルミニウム)。このクレイはアミノシランで表面改質されており、1.4ミクロンのMPS(メジアン粒度)及び0.02の+325メッシュ残分を有していた。
【0057】
導電性付与剤:導電性カーボンブラック:AKZO Nobel社から入手したEC600JD。
【0058】
実験用として、12バレルの全長を有する28mmのWerner&Pfleiderer二軸押出機を使用した。押出機は、表1に示すように特定の成分を選択的にサイドフィーダー添加するため、複数の下流ポートを有していた。各試料について、スロート添加用の成分はブレンディングにより混合してから押出機に供給した。ポリアミド(ナイロン6,6)及び該当する充填材は、最初に混合してマスターバッチを形成した。これらのマスターバッチは、9バレルの全長を有する独立した28mm二軸押出機で製造した。相次ぐ押出機温度設定値は約60〜約300℃の範囲内にあり、ダイ温度は約290℃であって、約320℃の溶融温度が得られた。すべてのポリアミド(55%)はスロートを通して供給した。充填材は、一部(20%)はスロートを通して供給し、一部(25%)はサイドフィーダーを通して供給した。
【0059】
40%の該当するポリアミド−充填材マスターバッチを一次押出機内の最終配合物に添加し、計算された処方に従って22%のポリアミド及び18%の充填材を置換した。マスターバッチの添加は1つの下流ポート(表1中の「サイドフィーダー1」)を通して行ったのに対し、導電性材料は第二の下流ポート(サイドフィーダー2)を通して添加した。押出機のスクリュー速度は300rpmであった。相次ぐ押出機温度設定値は約60〜約300℃の範囲内にあり、ダイ温度は310℃であって、約340℃の溶融温度が得られた。
【0060】
導電性組成物用充填材としてのクレイの使用を、通常の充填材(即ち、タルク及びウォラストナイト)と比較した。総合的な組成を表1に示す。
【0061】
【表1】
各試料に関する押出物を冷水で急冷し、次いでペレット化した。次いで、組成物を乾燥し、150トンのEngel成形機を用いて試験片(175mm×175mm×2.5mm)を射出成形した。溶融温度は300℃の設定し、金型温度は約75〜80℃であった。約40〜45秒のサイクル時間が達成された。
【0062】
試験片(プラーク)を静電プライマー組成物で通常通りに塗装した。プライマーは、Ford Motor Companyから供給された黒色無煙炭の溶液型塗料系であった。通常のスプレーガンを用いて1層のプライマーを塗布した。プライマー系用の硬化条件は、130℃で20分であった。(硬化後の)被膜の厚さは、各例において約20ミクロンであった。次いで、光学顕微鏡を用いて被膜を検査した。
【0063】
表2は、被膜の外観検査の結果をまとめて示している。
【0064】
【表2】
試料1の被覆物品を図1に示すが、これは倍率約10×の顕微鏡写真である。表面全体にわたってペイントポッピングが多く見られる。その上、試料4,5及び6もペイントポッピングを示した。充填材としてウォラストナイトを含む試料2は、良好な表面外観を有していた。(しかし、後述の通り、ウォラストナイトの使用は他の欠点を有している。)
本発明に従ってクレイを使用する試料3の被覆物品を図2に示すが、これも倍率約10×の顕微鏡写真である。表面は高品質であって、ペイントポッピングや他の欠陥を含まない。その上、試料3の組成物は、衝撃強さ、剛性及び耐熱性のような物理的性質の点で、表1に示した他の組成物と同等である。例えば、CTE低下及びこわさのわずかな減少が見られた一方、衝撃強さのわずかな増加が見られた。
【0065】
(ウォラストナイト入りの)試料2のような組成物は、寸法安定性の点で欠点を示す。ウォラストナイトは、通常、(例えば、約1:10の)比較的大きいL/D比をもった針状繊維の形態を有している。この性質は、寸法安定性及びゆがみに対してマイナスの効果を及ぼすと考えられる。
【0066】
それとは著しく対照的に、(クレイを含む)試料3から成形された物品はゆがみの形跡を全く示さなかった。さらに、試料3に関するCTE値は、流れ方向及び直交方向のいずれについても、充填材としてタルクを使用する試料と同等であった。前述の通り、部品の寿命期間にわたって精密な許容差を要求する部品用として組成物が使用される場合、寸法安定性及びゆがみの欠如は重要な属性である。静電塗装部品に関する高品質の表面外観を考え合わせると、特許請求の範囲に記載された本発明の組成物は当技術分野における大きな進歩を示している。
【0067】
当業者には、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱せずに他の修正例及び変更例が想起できるであろう。上述した特許、論文及び参考書のすべての開示内容は、援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】通常のポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物から成形された塗装試験片の顕微鏡写真である。
【図2】本発明に係るポリ(アリーレンエーテル)−ポリアミド組成物から成形された塗装試験片の顕微鏡写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全組成物の重量を基準にして、
(a)約20〜約80重量%のポリ(アリーレンエーテル)、
(b)約80〜約20重量%のポリアミド、
(c)成分(a)及び(b)用の相溶化剤、
(d)樹脂組成物用の導電性付与剤、並びに
(e)約1〜約50重量%のクレイ
を含んでなる導電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリフェニレンエーテルが、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)又は2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールから導かれるコポリマーからなる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリアミドが、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4、ナイロン−4,6、ナイロン−12、ナイロン−6,10、ナイロン−6,9、ナイロン−6,12、ナイロン−6/6T、ナイロン−6,6/6T、ナイロン−9T、及びこれらのナイロンの1種以上を含む混合物又はコポリマーからなる群から選択される材料からなる、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
成分(c)の相溶化剤が、液状ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン類、オルガノシラン化合物、多官能性化合物、ポリカルボン酸、及びこれらの相溶化剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
相溶化剤が全組成物の重量を基準にして約0.05〜約4重量%のレベルで存在する、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
成分(d)の導電性付与剤が、導電性カーボンブラック及び導電性カーボンフィブリルからなる群から選択される1種以上の材料からなる、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
導電性付与剤が、組成物の成形後に約1×105Ω−cm未満の体積固有抵抗率を与えるのに十分なレベルで存在する、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
導電性付与剤が、組成物の成形後に約1×104Ω−cm未満の体積固有抵抗率を与えるのに十分なレベルで存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
導電性付与剤が全樹脂組成物の重量を基準にして約0.1〜約10重量%のレベルで存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
成分(e)のクレイが板状積層体からなる、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
クレイが約0.3〜約50ミクロンの範囲内の粒度を有する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
クレイが約0.5〜約15ミクロンの範囲内の粒度を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
クレイがか焼されている、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
クレイが、クレイ表面の少なくとも一部分に反応性官能基を与えるように表面改質されている、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
クレイがオルガノシラン化合物で表面改質されている、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
オルガノシラン化合物がペンダントエポキシ又はアミノ反応基を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
オルガノシラン化合物がさらに、ポリ(アリーレンエーテル)又はポリアミド或いはポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドとの化合で生じるポリマー母材と化学結合を形成し得る有機官能基を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
さらに、耐衝撃性改良剤、安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、難燃剤、滴下抑制剤、染料、顔料、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される1種以上の成分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
耐衝撃性改良剤がコアシェルコポリマー又はエラストマー性ブロックコポリマーである、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
タルクを実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
請求項1記載の組成物から成形される熱可塑性樹脂物品。
【請求項22】
自動車部品の形態を有する、請求項21記載の物品。
【請求項23】
請求項21記載の塗装物品。
【請求項24】
全組成物の重量を基準にして、
(i)2,6−ジメチルフェノールから導かれるか、又は2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの組合せから導かれるポリフェニレンエーテル約20〜約80重量%、
(ii)ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−4、ナイロン−12、ナイロン−6,10、ナイロン−6,9、ナイロン−6,12、ナイロン−6/6T、ナイロン−6,6/6T、ナイロン−9T、非晶質ナイロン及びこれらの組合せからなる群から選択されるポリアミド約80〜約20重量%、
(iii)成分(i)及び(ii)用の相溶化剤約0.05〜約4重量%、
(iv)組成物に対して約1×105Ω−cm未満の体積固有抵抗率を与えるのに十分な量で存在する、樹脂組成物用の導電性付与剤、
(v)クレイ約10〜約30重量%、並びに
(vi)コアシェルコポリマー又はエラストマー性ブロックコポリマー約0.5〜約10重量%
を含んでなる導電性ポリフェニレンエーテル−ポリアミド組成物。
【請求項25】
成分(i)と成分(ii)との比が約25:75〜約45:55の範囲内にあり、
相溶化剤がクエン酸、無水マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、無水トリメリト酸塩化物、及びこれらのいずれかの誘導体からなる群から選択され、
導電性付与剤がカーボンブラック及びカーボンフィブリルからなる群から選択され、
クレイがか焼されているとともに、官能化シラン化合物で表面改質されている、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
塗装熱可塑性樹脂物品の製造方法であって、
(I)1種以上のポリフェニレンエーテル、1種以上のポリアミド、相溶化剤、導電性付与剤及びクレイ充填材を混合して均質ブレンドを形成する段階と、
(II)段階(I)で形成されたブレンドから物品を成形する段階と、
(III)段階(II)で形成された成形物品を静電塗装する段階と
を含んでなり、塗装物品は段階(I)で形成されたブレンドがクレイ充填材の代わりにタルク充填材を含む場合に生じる表面に比べて欠陥が少ないことを特徴とする表面を有する、方法。
【請求項27】
段階(II)が射出成形で実施される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、1種以上のポリフェニレンエーテル、1種以上のポリアミド、相溶化剤、導電性付与剤及びか焼クレイ材料をブレンドして均質ブレンドを形成する段階を含んでなる方法。
【請求項1】
全組成物の重量を基準にして、
(a)約20〜約80重量%のポリ(アリーレンエーテル)、
(b)約80〜約20重量%のポリアミド、
(c)成分(a)及び(b)用の相溶化剤、
(d)樹脂組成物用の導電性付与剤、並びに
(e)約1〜約50重量%のクレイ
を含んでなる導電性熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
ポリフェニレンエーテルが、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)又は2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールから導かれるコポリマーからなる、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
ポリアミドが、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4、ナイロン−4,6、ナイロン−12、ナイロン−6,10、ナイロン−6,9、ナイロン−6,12、ナイロン−6/6T、ナイロン−6,6/6T、ナイロン−9T、及びこれらのナイロンの1種以上を含む混合物又はコポリマーからなる群から選択される材料からなる、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
成分(c)の相溶化剤が、液状ジエンポリマー、エポキシ化合物、酸化ポリオレフィンワックス、キノン類、オルガノシラン化合物、多官能性化合物、ポリカルボン酸、及びこれらの相溶化剤の1種以上を含む組合せからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
相溶化剤が全組成物の重量を基準にして約0.05〜約4重量%のレベルで存在する、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
成分(d)の導電性付与剤が、導電性カーボンブラック及び導電性カーボンフィブリルからなる群から選択される1種以上の材料からなる、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
導電性付与剤が、組成物の成形後に約1×105Ω−cm未満の体積固有抵抗率を与えるのに十分なレベルで存在する、請求項6記載の組成物。
【請求項8】
導電性付与剤が、組成物の成形後に約1×104Ω−cm未満の体積固有抵抗率を与えるのに十分なレベルで存在する、請求項7記載の組成物。
【請求項9】
導電性付与剤が全樹脂組成物の重量を基準にして約0.1〜約10重量%のレベルで存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
成分(e)のクレイが板状積層体からなる、請求項1記載の組成物。
【請求項11】
クレイが約0.3〜約50ミクロンの範囲内の粒度を有する、請求項10記載の組成物。
【請求項12】
クレイが約0.5〜約15ミクロンの範囲内の粒度を有する、請求項11記載の組成物。
【請求項13】
クレイがか焼されている、請求項1記載の組成物。
【請求項14】
クレイが、クレイ表面の少なくとも一部分に反応性官能基を与えるように表面改質されている、請求項13記載の組成物。
【請求項15】
クレイがオルガノシラン化合物で表面改質されている、請求項14記載の組成物。
【請求項16】
オルガノシラン化合物がペンダントエポキシ又はアミノ反応基を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項17】
オルガノシラン化合物がさらに、ポリ(アリーレンエーテル)又はポリアミド或いはポリ(アリーレンエーテル)とポリアミドとの化合で生じるポリマー母材と化学結合を形成し得る有機官能基を含む、請求項15記載の組成物。
【請求項18】
さらに、耐衝撃性改良剤、安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、難燃剤、滴下抑制剤、染料、顔料、着色剤、帯電防止剤、可塑剤、及びこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される1種以上の成分を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項19】
耐衝撃性改良剤がコアシェルコポリマー又はエラストマー性ブロックコポリマーである、請求項18記載の組成物。
【請求項20】
タルクを実質的に含まない、請求項1記載の組成物。
【請求項21】
請求項1記載の組成物から成形される熱可塑性樹脂物品。
【請求項22】
自動車部品の形態を有する、請求項21記載の物品。
【請求項23】
請求項21記載の塗装物品。
【請求項24】
全組成物の重量を基準にして、
(i)2,6−ジメチルフェノールから導かれるか、又は2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの組合せから導かれるポリフェニレンエーテル約20〜約80重量%、
(ii)ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−4,6、ナイロン−4、ナイロン−12、ナイロン−6,10、ナイロン−6,9、ナイロン−6,12、ナイロン−6/6T、ナイロン−6,6/6T、ナイロン−9T、非晶質ナイロン及びこれらの組合せからなる群から選択されるポリアミド約80〜約20重量%、
(iii)成分(i)及び(ii)用の相溶化剤約0.05〜約4重量%、
(iv)組成物に対して約1×105Ω−cm未満の体積固有抵抗率を与えるのに十分な量で存在する、樹脂組成物用の導電性付与剤、
(v)クレイ約10〜約30重量%、並びに
(vi)コアシェルコポリマー又はエラストマー性ブロックコポリマー約0.5〜約10重量%
を含んでなる導電性ポリフェニレンエーテル−ポリアミド組成物。
【請求項25】
成分(i)と成分(ii)との比が約25:75〜約45:55の範囲内にあり、
相溶化剤がクエン酸、無水マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、無水トリメリト酸塩化物、及びこれらのいずれかの誘導体からなる群から選択され、
導電性付与剤がカーボンブラック及びカーボンフィブリルからなる群から選択され、
クレイがか焼されているとともに、官能化シラン化合物で表面改質されている、請求項24記載の組成物。
【請求項26】
塗装熱可塑性樹脂物品の製造方法であって、
(I)1種以上のポリフェニレンエーテル、1種以上のポリアミド、相溶化剤、導電性付与剤及びクレイ充填材を混合して均質ブレンドを形成する段階と、
(II)段階(I)で形成されたブレンドから物品を成形する段階と、
(III)段階(II)で形成された成形物品を静電塗装する段階と
を含んでなり、塗装物品は段階(I)で形成されたブレンドがクレイ充填材の代わりにタルク充填材を含む場合に生じる表面に比べて欠陥が少ないことを特徴とする表面を有する、方法。
【請求項27】
段階(II)が射出成形で実施される、請求項26記載の方法。
【請求項28】
熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、1種以上のポリフェニレンエーテル、1種以上のポリアミド、相溶化剤、導電性付与剤及びか焼クレイ材料をブレンドして均質ブレンドを形成する段階を含んでなる方法。
【図1】
【図2】
【図2】
【公表番号】特表2008−522005(P2008−522005A)
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544358(P2007−544358)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040522
【国際公開番号】WO2006/062656
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫
【復代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
【復代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
【復代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
【復代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
【復代理人】
【識別番号】100075236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 忠彦
【復代理人】
【識別番号】100094008
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 一暁
【復代理人】
【識別番号】100147577
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏志
【復代理人】
【識別番号】100153187
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 由美子
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040522
【国際公開番号】WO2006/062656
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【復代理人】
【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫
【復代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
【復代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
【復代理人】
【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男
【復代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
【復代理人】
【識別番号】100075236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 忠彦
【復代理人】
【識別番号】100094008
【弁理士】
【氏名又は名称】沖本 一暁
【復代理人】
【識別番号】100147577
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏志
【復代理人】
【識別番号】100153187
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 由美子
【Fターム(参考)】
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