説明

導電性塗膜の製造方法及び導電性塗膜

【課題】 銅ペースト又は銀ペーストを用いて絶縁基板上に設けた導電性が良好な導電性塗膜を提供する。
【解決手段】 ポリエステルフィルム又はポリイミドフィルム等の絶縁基板上に、銅粉末又は銀粉末から選ばれる金属粉末と有機バインダーとを主成分とする金属粉ペーストを用いて塗膜を形成し、乾燥させて金属粉末含有塗膜を得た後、さらに、金属粉末含有塗膜に水中プラズマ処理を施すことにより導電性の優れた導電性塗膜が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅ペースト又は銀ペーストの印刷物への水中プラズマ処理による導電性塗膜の製造方法及びこの製造方法による導電性塗膜に関するものである。
【背景技術】
【0002】
導電回路は近年、急速に高密度化が進んでいる。従来、導電回路の形成に用いられてきた、絶縁基板に張り合わせた銅箔をエッチングしてパターニングするサブトラクティブ法は、工程が長く複雑で、多量の廃棄物を生じる。そこで、サブトラクティブ法に代わって、導電回路の形成に導電粒子を含む導電性ペーストを用いる印刷法や塗布法が注目されている。例えば、回路印刷で汎用的に用いられるスクリーン印刷では、使用する導電粒子としては粒径が数μm以上のフレーク状金属粉等が用いられ、回路の厚みを10μm以上にして導電性を確保している。そして、より高密度な回路の形成を可能にするため、より微細な金属微粒子の開発がなされている。
【0003】
導電粒子として用いられる金属は導電性や経時安定性から銀が汎用的に用いられている。また、銀は高価であるだけでなく、資源量が少ないことや、高温高湿度下での回路間に発生するイオンマイグレーションの問題があるため、銀に代わって導電粒子に用いられる金属としては銅が挙げられる。しかし、銅粉末は表面に酸化層を形成し易く、酸化層のため、導電性が悪くなるという欠点がある。また、酸化層の悪影響は粒子が小さくなるほど、顕著になる。そこで、銅粉末の酸化層を還元するために、水素等の還元性雰囲気下での300℃を超える温度での還元処理や、より高温での焼結処理が必要となる。このとき、導電性はバルク銅に近くなるが、使用できる絶縁基板がセラミックスやガラス等の耐熱性の高い材料に限定される。
【0004】
高分子化合物を有機バインダーとする導電ペーストはポリマータイプ導電ペーストとして知られている。ポリマータイプ導電ペーストは有機バインダーによって、導電粒子の固着と基材との接着性を確保できるが、有機バインダーが導電粒子間の接触を阻害するため、導電性を悪化させる。有機バインダーに対して導電粒子の割合を増やしていくと、一般的に基材との接着性は低下し、導電性は向上するが、さらに導電粒子の割合を増やすと、導電性は最大値に達した後、塗膜中の空隙が増えることにより低下する。
【0005】
高分子化合物を有機バインダーとする導電ペーストは、粒子間の接触により導電性が得られるが、銀を用いたポリマータイプ導電ペーストでも導電性はバルク銀の1/10〜1/1000程度に低下する。銅を用いたポリマータイプ導電ペーストでは銀ペーストより更に導電性が悪化することが一般的である。
【0006】
従来技術においても、ポリマータイプ導電ペーストから得られた塗膜の導電性を向上させるための提案がなされている。例えば特許文献1では金属又は金属酸化物粒子分散液をパターン状に印刷した印刷層を水素ガスプラズマによって焼成することにより、導電性基板の導電性が向上することが開示されている。また、特許文献2には金属粉ペーストを用いて形成した塗膜を過熱水蒸気処理することが開示されている。
【0007】
しかしながら、銅粉末又は銀粉末を含有する導電ペーストから得られた塗膜の導電性はさらなる向上が望まれており、まだ不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−219076号公報
【特許文献2】国際公開2010/095672号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、銅粉末又は銀粉末を含有するペーストを用いて絶縁基板上に導電性良好な塗膜を得ることができる製造方法を提供することである。本発明の好ましい実施態様においては、金属粉末と多量の樹脂バインダーや分散剤を含有する金属粉ペーストから形成された塗膜についても導電性に優れる導電性塗膜を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記の課題を解決するために鋭意検討を進めた結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、
(1) 絶縁基板上に、銅粉末又は銀粉末から選ばれる金属粉末と有機バインダーとを主成分とする金属粉ペーストを用いて塗膜を形成し、乾燥させて金属粉末含有塗膜を得た後、金属粉末含有塗膜に水中プラズマ処理を施すことを特徴とする導電性塗膜の製造方法。
(2) (1)に記載の製造方法によって製造される導電性塗膜。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性塗膜の製造方法は、銅粉末又は銀粉末から選ばれる金属粉末と有機バインダーを主成分とする金属粉ペーストよりなる塗膜を絶縁基板上に形成後、さらに水中プラズマ処理を施す工程を含む。水中プラズマ処理を施すことにより、金属粒子間に存在する有機バインダー成分を効率的に除去するだけでなく、金属粒子表面の酸化物を還元できる。その結果、基材との接着性及び導電性の優れた塗膜が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明で用いる金属粉ペーストは、銅粉末又は銀粉末から選ばれる金属粉末と有機バインダーを主成分として溶剤中に分散させたものである。
【0013】
銅粉末は、銅を主成分とする金属粒子、又は銅の割合が80重量%以上の銅合金であり、該銅粉末の表面が銀で被覆された金属粉であってもよい。該銅粉末への銀の被覆は完全に被覆しても、一部の銅を露出させて被覆したものでもよい。また、銅粉末はその粒子表面に導電性を損なわない程度の酸化被膜を有していてもよい。銅粉末の形状は、略球状、樹枝状、フレーク状等のいずれでも使用できる。銅粉末又は銅合金粉末としては、湿式銅粉、電解銅粉、アトマイズ銅粉、気相還元銅粉等を用いることができる。
【0014】
銀粉末は銀を主成分とする金属粒子が好ましい。銀粉末の形状としては、球状、フレーク状(リン片状)、樹枝状(デンドライト状)などがある。
【0015】
本発明で用いる金属粉末は平均粒径が0.01〜20μmであることが好ましい。金属粉末の平均粒径が20μmより大きいと、絶縁性基板に微細な配線パターンを形成することが困難になる。また、平均粒径が0.01μmより小さい場合には加熱処理時の微粒子間融着による歪の発生により、絶縁基板との接着性が低下する。金属粉末の平均粒径が0.02μm〜15μmの範囲がより好ましく、更により好ましくは0.04〜4μm、更により好ましくは0.05〜2μmである。平均粒径の測定は、透過電子顕微鏡、電界放射型透過電子顕微鏡、電界放射型走査電子顕微鏡のいずれかにより粒子100個の粒子径を測定して平均値をもとめる方法による。本発明で用いる金属粉末は平均粒径が0.01〜20μmであれば、異なる粒径のものを混合して使用してもかまわない。
【0016】
本発明で用いる金属粉ペーストに使用される溶剤は、有機バインダーを溶解するものから選ばれる。有機化合物であっても水であってもよい。溶媒は、金属粉ペースト中で金属粉末を分散させる役割に加えて、分散体の粘度を調整する役割がある。有機溶媒の例として、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、芳香族炭化水素、アミド等が挙げられる。
【0017】
本発明で用いる金属粉ペーストに使用される有機バインダーとしては、ポリエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドあるいはアクリル等の樹脂が挙げられる。樹脂中にエステル結合、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、イミド結合等を有するものが、金属粉末の安定性から、好ましい。
【0018】
本発明で用いる金属粉ペーストは通常、金属粉末、溶剤、有機バインダーから成る。各成分の割合は金属粉末を100重量部に対し、溶剤10〜400重量部、有機バインダー3〜30重量部の範囲が好ましい。金属粉ペースト中のバインダー樹脂量が金属粉末を100重量部に対し3重量部未満の場合、絶縁基板との接着性の低下が顕著になり、好ましくない。
【0019】
本発明で用いる金属粉ペーストには、必要に応じ、硬化剤を配合しても良い。本発明に使用できる硬化剤としてはフェノール樹脂、アミノ樹脂、イソシアネート化合物、エポキシ樹脂等が挙げられる。硬化剤の使用量はバインダー樹脂の1〜50重量%の範囲が好ましい。
【0020】
本発明で用いる金属粉ペーストは、スルフォン酸塩基やカルボン酸塩基等の金属への吸着能力のある官能基を含有するポリマーを有機バインダーとして含んでもよい。さらに分散剤を配合してもかまわない。分散剤としてはステアリン酸、オレイン酸、ミリスチン酸等の高級脂肪酸、脂肪酸アミド、脂肪酸金属塩、燐酸エステル、スルフォン酸エステル等が挙げられる。分散剤の使用量は有機バインダーの0.1〜10重量%の範囲が好ましい。
【0021】
次に、金属粉ペーストの製造方法について述べる。
【0022】
金属粉ペーストを得る方法としては、粉末を液体に分散する一般的な方法を用いることができる。例えば、金属粉末とバインダー樹脂溶液、必要により追加の溶媒からなる混合物を混合した後、超音波法、ミキサー法、3本ロール法、ボールミル法等で分散を施せばよい。これらの分散手段のうち、複数を組み合わせて分散を行うことも可能である。これらの分散処理は室温で行ってもよく、分散体の粘度を下げるために、加熱して行ってもよい。
【0023】
本発明で用いる絶縁基板は有機材料および無機材料のいずれのものであっても良いが、水中プラズマ処理が可能なものでなければならない。絶縁基板に用いられる材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などの可撓性プラスチック基材を用いることができる。また、セラミックスやガラスあるいは紙等も用いることができる。本発明においては、物理的特性、耐熱性、取り扱いやすさおよび価格の点から、上記絶縁基材はポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルムであることが好ましい。
【0024】
本発明で用いる金属粉ペーストを用いて、絶縁基板上に導電性塗膜を形成する方法を説明する。なお、導電性塗膜は絶縁基板上に全面に設けられたものでも、導電回路等のパターン物でもかまわない。また、導電性塗膜は絶縁基板の片面に設けても、両面に設けてもかまわない。
【0025】
液状の金属粉ペーストを用いて、絶縁基板上に金属粉末含有塗膜を形成するには、金属粉ペーストを絶縁基板に塗布あるいは印刷する場合に用いられる一般的な方法を用いることができる。例えばスクリーン印刷法、ディップコーティング法、スプレー塗布法、スピンコーティング法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェット法、凸版印刷法、凹版印刷法等が挙げられる。印刷あるいは塗布により形成された塗膜から加熱あるいは減圧等により溶剤を蒸発させることにより、金属粉末含有塗膜を形成することができる。一般的に、金属粉末が銅粉末の場合、この段階での金属粉末含有塗膜は1Ω・cm以上の比抵抗で、導電回路として必要な導電性は得られていない。
【0026】
絶縁基板がポリイミド系樹脂の場合には、ポリイミド前駆体溶液の一次乾燥品やポリイミド溶液やポリアミドイミド溶液の一次乾燥品に金属粉ペーストを塗布・乾燥してもよい。ポリイミド系前駆体溶液やポリイミド系溶液の一次乾燥品に10〜30重量%の溶剤を残留させた状態のままで、引き続いてその上に、金属粉ペーストを塗布・乾燥することにより、ポリイミド系樹脂層と金属粉末含有塗膜との接着が強固になる。ポリイミド系前駆体溶液やポリイミド系溶液の溶剤は一般的にアミド系溶剤が使われる。アミド系溶剤は乾燥性が悪いため乾燥温度を150℃以上に上げることが必要になる。その際、金属粉末が銅粉末の場合には、酸化が起こるため、窒素等の不活性ガスあるいは過熱水蒸気のような無酸素状態での加熱が望ましい。
【0027】
金属粉末含有塗膜を形成後、金属粉末含有塗膜に水中プラズマ処理を施す。水中でプラズマを発生させるためには、絶縁破壊を起こさせるための電界集中が必要である。水中に電極を浸し、パルス状の幅の短い高電圧を印加することにより瞬間的に大きな電界強度が得られる。一般的に針対平板電極形状が用いられ、針の先端に電界が集中し水の絶縁破壊が生じる。水中プラズマでは放電路から各種ラジカルが検出され、化学反応が盛んに生じていることが知られている。液体にレーザーあるいは高周波やマイクロ波電力を投入し、液体中に発生した気泡の中にプラズマを発生させることも知られている。
【0028】
本発明で用いる水中プラズマはその発生方法や発生装置により限定されるものではないが、プラズマ中の電子のエネルギーのみが高く、イオンや分子のエネルギーが低い非平衡プラズマが望ましい。非平衡プラズマでは全体の温度を低く設定できるので、耐熱性の乏しい絶縁基板にも適用できる。
【0029】
水中プラズマで使用する水は超純水でもよく、塩化カリウム、塩化ナトリウム等の塩を加えて導電率を調整したものでもよい。
【0030】
水中プラズマ処理の水の温度は0℃から100℃、特に20℃から90℃が、得られる導電性塗膜の導電性から望ましい。
【0031】
水中プラズマによる処理時間は対象物の種類、プラズマの電離度、プラズマ流量、プラズマ温度等により異なるが5分以内であることが好ましく、3分以内であることがより好ましい。
【0032】
水中プラズマ処理を行った後は、常法に従って、乾燥又は水分を除去して導電性塗膜を得ることができる。
【実施例】
【0033】
本発明をさらに詳細に説明するために以下に実施例を挙げるが、本発明は実施例になんら限定されるものではない。なお、実施例に記載された測定値は以下の方法によって測定したものである。
【0034】
比抵抗:三菱化学社製低抵抗率計ロレスターGPとASPプローブを用いて測定した。電気抵抗値は比抵抗で記載した。
【0035】
用いた銅粉末
銅粉末1:水中にて、硫酸銅(II)水溶液を水酸化ナトリウムによりpH12.5に調整し無水ブドウ糖で亜酸化銅に還元後、さらに水和ヒドラジンにより銅粉末まで還元した。透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径0.07μmの球状の粒子である。
銅粉末2:酸化銅(II)をアラビアゴムを含有する水に懸濁させ、水和ヒドラジンにより銅粉末まで還元した。透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径1.5μmの扁平状の粒子である。
銅粉末3:三井金属鉱業社製 高圧アトマイズ法銅粉末「MA−CO8J」平均粒径8μmの粒状粒子。
【0036】
用いた銀粉末
銀粉末1:硝酸銀水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加え、酸化銀スラリーを得た後、ミリスチン酸ナトリウムを有機保護剤として加えた後、ホルマリンにより銀粉末まで還元した。透過型電子顕微鏡により観察したところ、平均粒径0.12μmの球状の粒子である。
銀粒子2:三井金属鉱業社製 湿式銀粉末「SPN10J」平均粒径2μmの球状粒子。
【0037】
プラズマ処理1:栗田製作所製「液中パルスプラズマ発生装置 MPP−HV01」に純水を1リットル/分で供給し、投入電力1000W、周波数20kHz、パルス幅1.2μsで水中プラズマを発生させた。水温は30℃に保った。この水中に金属粉末含有塗膜を所定時間浸漬した。
プラズマ処理2:反応容器として、下部から電極を挿入してある内径50mm、高さ80
mmの石英ガラス容器を用いた。電極は先端の半球を除き石英で絶縁被覆した4mmのタングステンワイアーを用いた。対極には反応容器上方から10mmのアルミニウム電極柱を挿入した。純水を0.1リットル/分で反応容器に注入した。タングステン電極から27MHzの高周波を照射した。電極先端より気泡が発生した後、引き続き、電極先端からプラズマが発生した。水温は所定の温度で維持した。この水中に金属粉末含有塗膜を所定時間浸漬した。
【0038】
実施例 1
下記の配合割合の組成物をサンドミルにいれ、800rpmで、2時間分散した。メディアは半径0.2mmのジルコニアビーズを用いた。得られた銅ペーストをアプリケーターにより、厚み25μmのポリイミド(PI)フィルム上に乾燥後の厚みが2μmになるように塗布し、120℃で5分熱風乾燥して銅粉末含有塗膜を得た。
分散液組成
共重合ポリエステルの溶液 2.5部
(トルエン/シクロヘキサノン=1/1(重量比)の40重量%溶液)
銅粉末1(平均粒径0.07μm) 9部
γ−ブチロラクトン(希釈溶剤) 3.5部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 5部
ブロックイソシアネート 0.2部
(共重合ポリエステル:東洋紡積社製「バイロン300」
ブロックイソシアネート:日本ポリウレタン社製「コロネート2546」)
得られた銅粉末含有塗膜の塗布面に、プラズマ処理1を実施した。得られた導電性塗膜の評価結果を表−1に示す。
【0039】
実施例 2〜3
プラズマ処理時間を表−1に記載したものに変更した以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を得た。得られた導電性塗膜の評価結果を表−1に示す。
【0040】
実施例 4〜5
銅粉末とバインダーの比だけを表−1に記載したものに変更した以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を得た。得られた導電性塗膜の評価結果を表−1に示す。
【0041】
実施例 6〜7
銅粉末を表−1に記載したものに変更した以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を得た。得られた導電性塗膜の評価結果を表−1に示す。
【0042】
実施例 8〜9
絶縁基板をポリイミドフィルムから二軸延伸ポリエステル(PET)フィルムに、及び銅粉末を表−1に記載した銀粉末に変更した以外は実施例1と同様にして導電性塗膜を得た。得られた導電性塗膜の評価結果を表−1に示す。
【0043】
比較例 1
下記の配合割合の組成物をサンドミルにいれ、800rpmで、2時間分散した。メディアは半径0.2mmのジルコニアビーズを用いた。得られた銅ペーストをアプリケーターにより、厚み25μmのポリイミドフィルム上に乾燥後の厚みが2μmになるように塗布し、120℃で5分熱風乾燥した。
分散液組成
共重合ポリエステルの溶液 2.5部
(トルエン/シクロヘキサノン=1/1(重量比)の40重量%溶液)
銅粉末1(平均粒径0.07μm) 9部
γ−ブチロラクトン(希釈溶剤) 3.5部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 5部
ブロックイソシアネート 0.2部
(共重合ポリエステル:東洋紡積社製「バイロン300」
ブロックイソシアネート:日本ポリウレタン社製「コロネート2546」)
得られた銅粉末含有塗膜の塗布面を沸騰水に10分間浸漬した。得られた銅粉末含有塗膜の比抵抗は10000μΩ・cm以上であった。
【0044】
比較例 2〜3
実施例8及び9のプラズマ処理前の銀粉末含有塗膜を沸騰水に10分間浸漬した。得られた導電性塗膜の評価結果を表−1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
実施例8は比較例2に対して比抵抗が格段に向上していることが確認された。また、実施例9は比較例3に対して比抵抗が格段に向上していることが確認された。
【0047】
実施例 10
下記の配合割合の組成物をサンドミルにいれ、800rpmで、2時間分散した。メディアは半径0.2mmのジルコニアビーズを用いた。得られた銅ペーストをアプリケーターにより、厚み25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上に乾燥後の厚みが2μmになるように塗布し、120℃で5分熱風乾燥した。
分散液組成
ポリウレタンの溶液 2.5部
(トルエン/メチルエチルケトン=1/4(重量比)の40重量%溶液)
銅粉末1(平均粒径0.07μm) 9部
γ−ブチロラクトン(希釈溶剤) 3.5部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 5部
エポキシ樹脂 0.2部
硬化触媒(トリフェニルフォスフィン) 0.01部
(ポリウレタン:東洋紡積社製「UR3500」,
エポキシ樹脂:DIC社製
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「エピクロンN−665」)
得られた銅粉末含有塗膜の塗布面に、プラズマ処理2を実施した。得られた導電性塗膜の評価結果を表−2に示す。
【0048】
実施例 11〜12
プラズマ処理2の条件を表−2に記載したように変更した以外は実施例10と同様にして導電性塗膜を得た。得られた導電性塗膜の評価結果を表−2に示す。
【0049】
実施例 13〜14
銅粉末を表−2に記載したように変更した以外は実施例10と同様にして導電性塗膜を得た。得られた導電性塗膜の評価結果を表−2に示す。
【0050】
実施例15〜16
銅粉末を表−2に記載したように銀粉末に変更した以外は実施例10と同様にして導電性塗膜を得た。得られた導電性塗膜の評価結果を表−2に示す
【0051】
比較例 4
下記の配合割合の組成物をサンドミルにいれ、800rpmで、2時間分散した。メディアは半径0.2mmのジルコニアビーズを用いた。得られた銅ペーストをアプリケーターにより、厚み25μmの二軸延伸ポリエステルフィルム上に乾燥後の厚みが2μmになるように塗布し、120℃で5分熱風乾燥した。
分散液組成
ポリウレタンの溶液 2.5部
(トルエン/メチルエチルケトン=1/4(重量比)の40重量%溶液)
銅粉末1(平均粒径0.07μm) 9部
γ−ブチロラクトン(希釈溶剤) 3.5部
メチルエチルケトン(希釈溶剤) 5部
エポキシ樹脂 0.2部
硬化触媒(トリフェニルフォスフィン) 0.01部
(ポリウレタン:東洋紡積社製「UR3500」,
エポキシ樹脂:DIC社製
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「エピクロンN−665」)
得られた銅粉末含有塗膜の塗布面を沸騰水に10分間浸漬した。得られた銅粉末含有塗膜の比抵抗は10000μΩ・cm以上であった。
【0052】
比較例 5〜6
実施例15及び16におけるプラズマ処理前の銀粉末含有塗膜を沸騰水に10分間浸漬した。得られた導電性塗膜の評価結果を表−2に示す。
【0053】
【表2】

実施例10〜12は比較例4に対して比抵抗が格段に向上していることが確認された。実施例15は比較例5に対して比抵抗が格段に向上していることが確認された。また、実施例16は比較例6に対して比抵抗が格段に向上していることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明で得られる導電性塗膜は、銅粉末又は銀粉末を含有し、水蒸気を使用気体とするプラズマ処理を施すことにより、導電性が良好な薄膜を形成することが可能である。これらの導電性塗膜は、銅又は銀/樹脂積層体、電磁シールド金属薄膜等の金属薄膜形成材料、金属配線材料、導電材料等に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板上に、銅粉末又は銀粉末から選ばれる金属粉末と有機バインダーとを主成分とする金属粉ペーストを用いて塗膜を形成し、乾燥させて金属粉末含有塗膜を得た後、金属粉末含有塗膜に水中プラズマ処理を施すことを特徴とする導電性塗膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の製造方法によって製造される導電性塗膜。

【公開番号】特開2012−174375(P2012−174375A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32606(P2011−32606)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】