説明

導電性材料の作製方法。

【課題】導電性が高く、無電解銅めっきによる導体回路の線幅の太りが少ない配線パターンを形成することが出来る導電性材料の作製方法を提供する。
【解決手段】支持体上の少なくとも一方の面に銀画像を形成させた後、該銀画像に無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm以上である第一めっき浴にてめっき処理を施し、その後無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm未満である第二めっき浴にてめっき処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性回路、電磁波シールドフィルム、タッチパネル等の用途に用いることができる導電性材料の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体上に銀画像から成る導電性パターンを有する材料の製造方法としては、基本的には印刷方式、フォトリソグラフィー方式、銀塩方式及びその他の方式とに大別される。
【0003】
フォトリソグラフィー方式には、均一な導電金属層を有する基板上にフォトレジストを塗布し、露光、現像後、レジストが剥離された導電性金属層をエッチング除去し導電性パターンを得るサブトラクティブ方式をとるものが例えば特開平5−16281号公報に、また無電解めっき触媒を含有するレジストを支持体上に塗布し、露光、現像し未露光部のレジストを除去後、無電解めっきすることにより導電性パターンを得るアデティブ方式をとるものが例えば特開平11−170421号公報に記載される。しかしながらフォトリソグラフィー方式では、高精細の導電パターン形成が可能とされているが、一般的に製造工程が複雑である為、工程に用いる材料のロスが多いという課題を抱えている。
【0004】
印刷方式としては、銀を含有する導電性金属インキや導電性ペーストを所望のパターンにスクリーン印刷する方法が例えば特開昭55−91199号公報(特許文献1)、特開2006−313891号公報(特許文献2)、特開2000−113147号公報(特許文献3)等に記載される。また銀塩写真方式としては銀塩拡散転写方式を用いたものが例えば国際公開第04/007810号パンフレット(特許文献4)に、直接現像銀(化学現像処理による)を用いたものが例えば特開2004−221564号公報(特許文献5)に、硬化現像方式を用いたものが例えば特開2007−59270号公報(特許文献6)に記載される。さらに他の方式としては、透明支持体上に銀めっき等を施すことによって銀粒子層からなる導電性画像形成層を形成させ、その画像形成層に高密度エネルギー光を照射することにより照射部の画像形成層と支持体との結合力を低下せしめ、導電性パターンを得る方法が、例えば特開平10−151858号公報(特許文献7)に記載される。
【0005】
上記印刷方式、銀塩写真方式、およびその他の方式は、フォトリソグラフィー方式に比べて製造工程が複雑でなく、工程に用いる材料のロスが少ないという観点から好ましい。
【0006】
近年、携帯電話やデジタルカメラのような小型装置に用いられる配線基板やプラズマディスプレイに用いられるような電磁波シールドフィルムのように、高精細な配線パターンが要求され、且つ、高い導電性が求められる。このような用途に対しては、前述の特許文献3〜5に記載されるように、得られた銀画像に金属めっき(無電解めっきおよび/または電解めっき)することで更に導電性を高める事は有用である。またプリント基板のように配線が孤立している画像の場合、電解めっきができないため、めっき方法としては無電解めっきが有用である。
【0007】
しかしながら上記したような装置のさらなる小型化において、隣接する配線の間隔が数十μm以下という極めて高精細な配線パターンを有する配線基板を作製する場合、前記銀塩写真方式および印刷方式によって得られた銀画像に対して無電解めっき処理を施した際に、導体回路の線幅が太ることによって隣接する配線同士がつながってしまう場合があった。電磁波シールドフィルムの用途では、隣接する配線同士がつながってしまうと、透明性が損なわれてしまい、ディスプレイに用いた際に、画面が暗くなってしまう。また、プリント基板やアドレス電極のような用途では、隣接する配線とつながってしまうと、誤動作を引き起こしたり、ショートしてしまうため、商品価値を損なってしまう。
【0008】
一方、無電解銅めっき浴において、溶存酸素濃度は銅めっきの析出性に大きな影響を与えることが知られている。溶存酸素濃度の高い場合、無電解銅めっき浴は不活性となり、めっき速度も遅く、銅めっきの付き回りが悪くなる。また、溶存酸素濃度の低い場合は活性な浴となり、めっき速度も速くなるが隣接する配線同士が繋がってしまう場合があり、さらに浴として不安定な状態であり最終的に分解反応を起してしまうこともある。このため無電解銅めっき処理において、めっき浴の溶存酸素濃度の調節と攪拌を行うために、めっき浴中に空気を吹き出すことによって酸素を供給するエアバブリングを行うことが知られている。例えば特開平6−33254号公報(特許文献8)では窒素ガスを混合することによって酸素濃度を調整したガスをバブリングすることで溶存酸素濃度をめっき反応に適した濃度に調整することが記載され、特開平5−98455号公報(特許文献9)では特定の装置を用いてエアバブリングを行うことで溶存酸素濃度をめっき反応に適した濃度に調整することが記載される。
【0009】
しかしながら、上記溶存酸素濃度をめっき反応に適した濃度に調整されためっき浴を用いて銅めっきした場合においても、隣接する配線の間隔が数十μm以下という極めて高精細な配線パターンを有する配線基板を作製する際には、導体回路の線幅が太ることによって隣接する配線同士がつながってしまう場合があった。また導体回路の線幅の太りを改善しようとした際には、高い導電性が得られないという問題があった。
【0010】
2段階に分けた無電解銅めっき浴によるめっき方法としては例えば特開平10−190216号公報(特許文献10)が知られている。この方法はアルカリ剥離タイプの触媒レジストを使用してプリント基板上の選択部位に触媒付与を行った後、第一無電解めっき浴において触媒レジストの剥離と触媒付与部への薄付け無電解銅めっきを行い、第二無電解めっき浴において厚付けの無電解銅めっきを行うことで、プリント基板表面への不要な触媒およびめっきの付着を予防することを目的とするものである。
【特許文献1】特開昭55−91199号公報
【特許文献2】特開2006−313891号公報
【特許文献3】特開2000−113147号公報
【特許文献4】国際公開第04/007810号パンフレット
【特許文献5】特開2004−221564号公報
【特許文献6】特開2007−59270号公報
【特許文献7】特開平10−151858号公報
【特許文献8】特開平6−33254号公報
【特許文献9】特開平5−98455号公報
【特許文献10】特開平10−190216号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って本発明の目的は、導体回路の線幅の太りを改善し且つ高い導電性を得るという相反する課題を同時に満足させることにあり、導電性が高く、無電解銅めっきによる導体回路の線幅の太りが少ない配線パターンを形成することが出来る導電性材料の作製方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記目的は、支持体上の少なくとも一方の面に銀画像を形成させた後、該銀画像に無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm以上である第一めっき浴にてめっき処理を施し、その後無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm未満である第二めっき浴にてめっき処理を施すことを特徴とする導電性材料の作製方法によって解決することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、導電性が高く、無電解銅めっきによる導体回路の線幅の太りが少ない配線パターンを形成することができる導電性材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明は支持体上に形成された銀画像に対して、無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm以上である第一めっき浴にてめっき処理を施し、その後無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm未満である第二めっき浴にてめっき処理を施すことで、線幅太りが少ない導体パターンを形成することができる。上述のようにめっき浴の溶存酸素濃度の高い場合、具体的には無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm以上である場合には無電解銅めっき浴は不活性となり、めっき速度も遅く、銅めっきの付き回りが悪くなる。しかしそのような第一めっき浴において銀画像端部は、溶存酸素濃度の影響を銀画像側面部と銀画像表面部の2方向から受けることで銀画像端部への銅析出量は銀画像中心部と比較して少なく、このため銅の析出は主に銀画像中心部に集中し、銀画像端部への銅析出がほとんど起こらないものと考えられる。
【0015】
一方上述のようにめっき浴の溶存酸素濃度の低い場合、具体的には無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm未満である場合には、活性な浴となり、めっき速度も速くなる。そのような活性な浴で支持体上の銀画像に対して無電解銅めっきを施した場合、隣接する配線の間隔が数十μm以下という極めて高精細な配線パターンを有する配線基板を作製する際には、導体回路の線幅が太るという問題があった。しかしながら第一めっき浴における処理によって得られた画像部に対して更に第二めっき浴による無電解銅めっき処理を行うことで、銅の析出がほとんど起こらなかった銀画像端部の境界線付近では、線幅が太ることなく銅を析出させることが可能となり、また銀画像中心部ではより多くの銅を析出することが可能となるものと考えられる。従って溶存酸素濃度を高く調整した第一めっき浴にてめっき処理を施した後、溶存酸素濃度を低く調整した第二めっき浴におけるめっき処理を施すことで、導電性が高く線幅太りが少ない導体パターンを形成することが可能となるものと考えられる。
【0016】
めっき処理には、電解法と無電解法があるが、本発明で実施するめっき処理としては、無電解めっき法が用いられる。無電解めっき技術に関しては「無電解めっき」電気鍍金研究会編、日刊工業新聞社(1994年)に記載されている。無電解めっきは、ニッケルや銅などの金属イオンが還元剤によって還元析出し、この析出反応が連続的に進行しめっき膜が形成される、いわゆる自己触媒型化学還元めっきである。今日工業的に多く使用されているのはニッケル−リンや銅を利用した無電解めっきであるが、本発明は無電解銅めっきを利用する。
【0017】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅など銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボランなど還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソーエリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパン−2−オール、グリコールエーテルジアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのpH調整剤などが含有される。さらにその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル、o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物などを含有させることも出来る。
【0018】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミンなど銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いなどということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸などが挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作成に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105などに詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することが出来る。
【0019】
本発明において、めっき浴中の溶存酸素濃度を第一めっき浴では4ppm以上、第二めっき浴では4ppm未満に維持するための手段としては、めっき処理槽において、もしくはめっき液の温度調節を行うことを目的として設置されることが多い管理槽などにおいて、めっき液中にエアバブリングを行う方法が挙げられる。エアバブリングに用いるエアとしては空気、或いは前述の特許文献7に記載される窒素ガスを混合することによって酸素濃度を調整したガスであってもよい。
【0020】
本発明に用いる無電解銅めっき処理槽の構造について説明する。上記第一めっき浴と同第二めっき浴に用いる処理槽の構造は、めっき浴中の溶存酸素濃度を維持する設備を備えていれば同じでよく、また一般に用いられている公知の無電解銅めっき処理槽と同等のものでよい。ただし、めっき浴の攪拌をエアバブリングのみで行うめっき処理槽の場合では、第二めっき浴における攪拌の強さが不足しやすいため、エアバブリング以外の方法によってもめっき浴を攪拌するための設備を備えていることが好ましい。さらに第一めっき浴においても、エアバブリング以外の方法によってもめっき浴を攪拌するための設備を備えていれば、さらに好ましい。
【0021】
めっき浴へのエアバブリングは、発生させる気泡の大きさや使用する無電解めっき液の組成によっても相違するが、通常、100L当り毎分25Lより多い量で供給することにより、4ppm以上の溶存酸素濃度を維持することが出来る。また、100L当り毎分25L程度以下の量で供給することにより、4ppm未満の溶存酸素濃度を維持することが出来る。また、エアバブリングは連続的ではなく間欠的であってもよい。
【0022】
なお、本発明における溶存酸素濃度は、溶存酸素濃度計(DOメーター エイブル社製)を用いて測定されることが出来る。溶存酸素濃度の過不足はエアバブリングを強くするなどの方法で供給酸素量を変化させればよい。
【0023】
また、本発明は、銀画像パターンを無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm以上である第一めっき浴による処理と溶存酸素濃度が4ppm未満である第二めっき浴によるめっき処理の後、第三、第四あるいはそれ以上の数のめっき浴によるめっき処理を行ってもよい。ここで言うところの第三、第四めっき浴とは、第一、第二めっき浴に使用するめっき処理槽と同様の処理槽を使用し、めっき液中の溶存酸素濃度を4ppm以上、もしくは4ppm未満に調整しためっき浴であってもよいし、また無電解銅めっきに限らず、電解めっきであってもよい。更には第一、第二めっき浴によるめっき処理の間に水洗工程、および乾燥工程を設けても良い。
【0024】
本発明における第一めっき浴のめっき液中溶存酸素濃度の上限値は5.7ppmであり、これ以上の溶存酸素濃度では銀画像中心部においても、銅析出が起こらない箇所が発生するなど、均一な析出物が得られなくなる場合がある。一方、第二めっき浴のめっき液中溶存酸素濃度の下限値は2.0ppmであり、これ以下の溶存酸素濃度ではこぶ状の銅が析出するなど正常な析出物が得られない場合があり、まためっき浴が不安定となり分解反応が起こってしまう場合がある。
【0025】
本発明において支持体上の少なくとも一方の面に銀画像を形成する方法としては、銀塩写真方式および印刷方式によって銀画像を形成する方法が挙げられる。印刷方式としては、銀を含有する導電性金属インキや導電性ペーストを所望のパターンに印刷する方法があり、印刷方法としてはスクリーン印刷やインクジェット記録方式を利用した印刷方法が挙げられる。支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、ガラス板などが挙げられる。さらに本発明においては支持体上に下引き層や帯電防止層などを必要に応じて設けても良い。
【0026】
銀を含有する導電性金属インキや導電性ペーストは、高い導電性、価格、生産性、扱いやすさ等の点から、銀を主体に含有することが好ましい。ここで主体とは銀を含有する導電性金属インキや導電性ペースト中に含まれる全金属超微粒子の50質量%以上が銀であることを意味し、より好ましくは70質量%以上である。銀以外に含まれる好ましい金属としては、金、銅、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、オスミウム、ニッケル、ビスマスを挙げることが出来、特に銀特有のマイグレーション抑制のためには、金、銅、白金、パラジウムが好ましい。銀を含有する導電性金属インキや導電性ペーストに銀以外の金属を含有せしめる方法としては、例えば特開2000−090737号公報に開示されているが如く銀超微粒子中にパラジウムを含有せしめる方法、特開2001−35255号公報に開示されているが如く別々に作製された銀超微粒子とパラジウム超微粒子を混合する方法でも良い。また銀を含有する導電性金属インキとしてはCimaNanoTech社の銀ナノ粒子インクの如く、銅を含む導電性金属インキを例示することも出来る。また該導電性金属インキや導電性ペーストに含有される銀粒子としては、200nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、更に50nm以下であることが特に好ましい。
【0027】
スクリーン印刷やインクジェット記録方式によって支持体の少なくとも一方の面に形成された銀画像は、その後、例えば高温、長時間の熱処理によって導電性を高めても良いし、あるいは前述の特許文献2に記載されるような酸による処理によって導電性を高めても良い。
【0028】
本発明は前述の通り、隣接する配線の間隔が数十μm以下という極めて高精細な配線パターンを有する配線基板を作製した際に認められる導体回路の線幅の太りを改善するものである。従ってより高精細な細線パターンを得ようとした場合に本発明はより有効である。具体的には配線パターンの線幅が50μm以下、より好ましくは30μm以下の細線パターンにおいて、極めて有効である。しかしながら上記スクリーン印刷やインクジェット記録方式による印刷方法により高精細な細線パターンを得ようとした場合、その細線パターンの線幅の下限は現状、おおよそ50μm前後である。これに対し後述する銀塩写真方式によれば露光方式にもよるが一般に10μm前後の細線パターンが得られる。従って銀塩写真方式によって得られる銀画像に対して、本発明はより有効である。
【0029】
銀塩写真方式によって支持体上の少なくとも一方の面に銀画像を形成する方法としては、下記(a)、(b)または(c)に示す方法がある。
(a)支持体上に少なくとも物理現像核層及びハロゲン化銀乳剤層を有する感光材料を露光し、銀塩拡散転写法に従う現像処理を施した後、不要となったハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去する方法。
(b)支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施した後、定着処理する方法。
(c)支持体上に少なくともハロゲン化銀乳剤層を有する感光材料を露光し、硬化現像法に従う現像処理を施した後、不要となった未硬化部のハロゲン化銀乳剤層を少なくとも水洗除去する方法。
【0030】
上記(a)の方法は例えば特公昭42−23745号公報に記載されるような銀塩拡散転写法に従う方法であり、銀塩拡散転写法の原理は、米国特許第2,352,014号明細書等に記載されている。即ち、露光部のハロゲン化銀は現像されるが、未露光部のハロゲン化銀は可溶性銀錯塩形成剤で溶解することで可溶性銀錯塩として受像層へと転写され、そこで物理現像核上に金属銀として析出させることでポジ型の銀像形成を形成するというものである。
【0031】
上記(b)の方法は例えば特開2004−221564号公報に記載される方法であり、露光された部分のハロゲン化銀は現像処理を施されることで銀画像に還元され(ネガタイプ)、未露光部のハロゲン化銀は定着処理することで溶解除去される方法である。また上記(c)の方法は、例えば特開2007−59270号公報に記載される硬化現像法である。硬化現像法とはJ.Photo.Sci.誌11号 p 1、A.G.Tull著(1963)或いは「The Theory of the photographic Process(4th edition,p326−327)」、T.H.James著等に記載されているように、支持体上に作製した実質的に硬膜剤を含まない未硬膜のハロゲン化銀乳剤層を、ポリヒドロキシベンゼン系等の現像主薬を含む現像液で処理することによって、現像主薬が露光されたハロゲン化銀を還元した際に、現像主薬自身から生成された酸化化合物により、ゼラチンを始めとする水溶性ポリマーを架橋し画像状に硬膜させる方法であり、支持体上にレリーフ画像を形成させる方法である。
【0032】
本発明における銀塩写真方式としては、銀画像の形成方法が上記(a)〜(c)のいずれの方法であっても良いが、上記(b)および(c)の方法によって形成された銀画像はバインダーであるゼラチンの中に埋没しているためにめっき液との接触がし難く、めっき処理に時間がかかる場合がある。そのため銀画像が、極微量のバインダー、あるいは実質的にバインダーに覆われていない、上記(a)の方法によって形成された銀画像にめっき処理することが好ましい。
【0033】
以下に上記(a)〜(c)の方法により支持体上の少なくとも一方の面に銀画像を形成する方法を詳細に説明する。(a)方法を用いた銀画像の形成方法をタイプ1、(b)方法を用いた銀画像の形成方法をタイプ2、(c)方法を用いた銀画像の形成方法をタイプ3と略して、順に説明する。
【0034】
<タイプ1>
タイプ1の感光材料は支持体上に少なくとも物理現像核層、ハロゲン化銀乳剤層を支持体に近い方からこの順で有する感光材料を露光し、次に未露光部である画像部のハロゲン化銀粒子を可溶性銀錯塩形成剤で溶解して可溶性銀錯塩として溶解させ、物理現像核上まで拡散してきた可溶性銀錯塩をハイドロキノン等の還元剤(現像主薬)で還元して金属銀を析出させて画像を形成する。その後水洗除去して、ハロゲン化銀乳剤層などを洗い流し、基板上に像様に銀画像のついたパターンを形成する。
【0035】
またタイプ1の感光材料はさらには、非感光性層を支持体から最も遠い最外層及びまたは物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との間の中間層として有していても良い。これらの非感光性層は、親水性ポリマーを主たるバインダーとする層である。ここでいう親水性ポリマーとは、現像液で容易に膨潤し、下層のハロゲン化銀乳剤層、物理現像核層まで現像液を容易に浸透させるものであれば任意のものが選択できる。
【0036】
具体的には、ゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリビニルアルコール等を用いることができる。特に好ましい親水性バインダーは、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。本発明の効果を十分に得るためには、この非感光性層のバインダー量としては、ハロゲン化銀乳剤層の総バインダー量に対して20〜100質量%の範囲が好ましく、特に30〜80質量%が好ましい。
【0037】
これら非感光性層には、必要に応じてResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような公知の写真用添加剤を含有させることができる。また、処理後のハロゲン化銀乳剤層の剥離を妨げない限りにおいて、架橋剤により硬膜させることも可能である。
【0038】
タイプ1の感光材料が有する物理現像核層の物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等のコロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属硫化物等が挙げられるが、銀コロイド及び硫化パラジウム核が好ましい。これらの物理現像核の微粒子層は、真空蒸着法、カソードスパッタリング法、コーティング法によってプラスチック樹脂フィルム上に設けることができる。生産効率の面からコーティング法が好ましく用いられる。物理現像核層における物理現像核の含有量は、固形分で1平方メートル当たり0.1〜10mg程度が適当である。
【0039】
物理現像核層には、親水性バインダーを含有してもよい。親水性バインダー量は物理現像核に対して10〜500質量%程度が好ましい。親水性バインダーとしては、ゼラチン、アラビアゴム、セルロース、アルブミン、カゼイン、アルギン酸ナトリウム、各種デンプン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、アクリルアミドとビニルイミダゾールの共重合体等を用いることができる。好ましい親水性バインダーは、ゼラチン、アルブミン、カゼイン等のタンパク質である。
【0040】
物理現像核層には、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルマリン、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等の種々タンパク質の架橋剤(硬膜剤)の一種もしくは二種以上を含有することは好ましい。これらの架橋剤の中でも、好ましくは、グリオキザール、グルタルアルデヒド、3−メチルグルタルアルデヒド、サクシンアルデヒド、アジポアルデヒド等のジアルデヒド類であり、より好ましい架橋剤は、グルタルアルデヒドである。架橋剤は、下記ベース層及び物理現像核層に含まれる合計のタンパク質に対して0.1〜30質量%を物理現像核層に含有させるのが好ましく、特に1〜20質量%が好ましい。
【0041】
タイプ1の感光材料においては、物理現像核層と透明支持体の間にタンパク質からなるベース層(タンパク質含有ベース層;以降、単にベース層と云う)を有することは好ましい。透明支持体とベース層の間には、更に塩化ビニリデンやポリウレタン等の易接着層を有することは好ましい。ベース層に用いられるタンパク質としては、ゼラチン、アルブミン、カゼインあるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。ベース層におけるタンパク質の含有量は1平方メートル当たり10〜300mgが好ましい。
【0042】
物理現像核層やベース層の塗布には、例えばディップコーティング、スライドコーティング、カーテンコーティング、バーコーティング、エアーナイフコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スプレーコーティングなどの塗布方式で塗布することができる。
【0043】
タイプ1の感光材料においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、そのまま用いることもできる。
【0044】
ハロゲン化銀乳剤層に用いられるハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)で記載されていような公知の手法を用いることができる。なかでも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化物組成には好ましい範囲が存在し、塩化物を80モル%以上含有するのが好ましく、特に90モル%以上が塩化物であることが特に好ましい。
【0045】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩若しくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる
【0046】
また、ハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とゼラチン量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とゼラチンとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
【0047】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0048】
タイプ1の感光材料を用い支持体上の少なくとも一方の面に任意のパターンを有する銀画像を形成させるための方法としては、例えば網目状パターンの銀薄膜の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は網目状パターンに露光されるが、露光方法として、網目状パターンの原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることができる。
【0049】
タイプ1の銀画像形成方法においては、網目状パターンのような任意の形状パターンの原稿と上記前駆体を密着して露光、あるいは、任意の形状パターンのデジタル画像を各種レーザー光の出力機で上記前駆体に走査露光した後、銀塩拡散転写現像液で処理することにより物理現像が起こり、未露光部のハロゲン化銀が溶解されて銀錯塩となり、物理現像核上で還元されて金属銀が析出して形状パターンの銀薄膜を得ることができる。一方、露光された部分はハロゲン化銀乳剤層中で化学現像されて黒化銀となる。現像後、不要になったハロゲン化銀乳剤層及び中間層、保護層は水洗除去されて、形状パターンの銀薄膜が表面に露出する。
【0050】
現像処理後のハロゲン化銀乳剤層等の物理現像核層の上に設けられた層の除去方法は、水洗除去あるいは剥離紙等に転写剥離する方法がある。水洗除去は、スクラビングローラ等を用いて温水シャワーを噴射しながら除去する方法や温水をノズル等でジェット噴射しながら水の勢いで除去する方法がある。また、剥離紙等で転写剥離する方法は、ハロゲン化銀乳剤層上の余分なアルカリ液(銀錯塩拡散転写用現像液)を予めローラ等で絞り取っておき、ハロゲン化銀乳剤層等と剥離紙を密着させてハロゲン化銀乳剤層等をプラスチック樹脂フィルムから剥離紙に転写させて剥離する方法である。剥離紙としては吸水性のある紙や不織布、あるいは紙の上にシリカのような微粒子顔料とポリビニルアルコールのようなバインダーとで吸水性の空隙層を設けたものが用いられる。
【0051】
次に、銀塩拡散転写現像の現像液について説明する。現像液は、可溶性銀錯塩形成剤及び還元剤を含有するアルカリ液である。可溶性銀錯塩形成剤は、ハロゲン化銀を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物であり、還元剤はこの可溶性銀錯塩を還元して物理現像核上に金属銀を析出させるための化合物である。
【0052】
現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0053】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った透明導電性材料の表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0054】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、N−エチル−2,2′−イミノジエタノール、2−メチルアミノエタノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0055】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0056】
現像液に用いられる還元剤は、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロルハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0057】
可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、現像液1リットル当たり、0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は現像液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0058】
現像液のpHは10以上が好ましく、更に11〜14が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、リン酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0059】
本発明は、前記写真製法(a)〜(c)のいずれかで得られた銀画像パターンのめっき処理に先立って、下記で示すような公知の脱脂処理を施してもよい。
【0060】
脱脂処理とは、基材上に付着した油分等を洗浄除去するための処理であり、公知の処理条件を使用することができる。一般にはアルカリ脱脂剤や界面活性剤、有機溶媒等を使用し、10〜60℃で1〜10分間浸漬処理する。
【0061】
<タイプ2>
直接現像処理を行う方法である。例えばネガ乳剤を用いる場合、像様に光センサーのハロゲン化銀粒子を露光することで潜像を形成し、潜像を触媒として現像液中のハイドロキノンなどの還元剤でハロゲン化銀を還元、金属銀を形成する。その後定着処理により未感光部のハロゲン化銀を除去し、基板上に像様のバインダーに保持された銀粒子からなるパターンを形成する。
【0062】
タイプ2の感光材料は光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が支持体上に設けられるが、ハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせてもよい。ハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の方法が用いられる。なかでもコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。
【0063】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(六角平板状、三角形平板状、四角形平板状など)、八面体状、十四面体状など様々な形状であることができる。
【0064】
ハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩若しくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる
【0065】
ハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。バインダーとして非水溶性ポリマー及び水溶性高分子のいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性高分子を用いることが好ましい。好ましい水溶性高分子としては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。
【0066】
ハロゲン化銀乳剤層には上記水溶性高分子の他に非水溶性ポリマーとしての高分子ラテックスを用いる事もできる。高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体等がある。ハロゲン化銀乳剤層に用いられる高分子ラテックスの平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0067】
高分子ラテックスはその使用量が多過ぎると塗布性に悪影響を及ぼすため、水溶性高分子との質量比(高分子ラテックス/水溶性高分子)が1.0以下で用いることが好ましい。また、ハロゲン化銀乳剤層に含有する高分子ラテックスと水溶性高分子の総量、すなわち総バインダー量については、バインダー量が少ないと塗布性に悪影響を及ぼし、また安定したハロゲン化銀粒子も得られなくなる、一方、多過ぎると多量にめっきをしないと導電性が得られなくなり、生産性を落としてしまうなど、品質に大きな影響を与える。好ましいハロゲン化銀(銀換算)と総バインダーとの質量比(銀/総バインダー)は1.2以上、より好ましくは1.5〜3.5である。
【0068】
タイプ2の感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層は硬膜剤により、硬膜されることが好ましい。硬膜剤としては例えばクロムミョウバンのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンの様なアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基やエポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、高分子硬膜剤としてのジアルデヒド澱粉等やその他にもResearch Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)、308119(1989年12月)に記載されているような物質を用いることができる。また硬膜剤は一種もしくは二種以上混合させて用いることもできる。硬膜剤は、ハロゲン化銀乳剤層に含有されるバインダーに対して0.1〜10質量%を含有させるのが好ましく、特に0.5〜8質量%が好ましい。
【0069】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、タイプ1の感光材料と同様の公知の写真用添加剤を用いることができる。
【0070】
タイプ2の感光材料には必要に応じて支持体のハロゲン化銀乳剤層と反対面に裏塗層やハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層などを設けることができる。またハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を、タイプ1で説明したものと同様の目的、方法で含有することができる。
【0071】
タイプ2の方法により支持体上の少なくとも一方の面に任意のパターンを有する銀画像を形成させるための方法としては、タイプ1と同様の方法で露光することができる。
【0072】
タイプ2の感光材料を露光した後には、少なくとも現像処理、定着処理、水洗処理を行う。
【0073】
タイプ2の方法により銀画像を形成させるために用いる現像液は、基本組成として現像主薬、保恒剤、アルカリ剤、カブリ防止剤からなる。現像主薬としては具体的にヒドロキノン、アスコルビン酸、p−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、フェニドン等が挙げられる。これらの一部は感光材料に含有させてもよい。保恒剤としては、亜硫酸イオンなどがある。アルカリ剤は、現像主薬の還元性を発揮するために必要であり、現像液のpHを9以上、好ましくは10以上になるように添加される。また安定に塩基性を保つための、炭酸塩やリン酸塩のような緩衝剤も用いられる。さらに現像核を持たないハロゲン化銀粒子が還元されないように加えられるカブリ防止剤としては、臭化物イオン、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、1−フェニル−5−メルカプトテトラゾールなどが挙げられる。
【0074】
さらに現像液中に可溶性銀錯塩形成剤を含有させることもできる。可溶性銀錯塩形成剤としては、具体的にはチオ硫酸アンモニウムやチオ硫酸ナトリウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0075】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中で特にアルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0076】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また可溶性銀錯塩形成剤の使用量としては0.1〜40g/L、好ましくは1〜20g/Lである。現像処理温度は通常15℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは25〜40℃である。
【0077】
タイプ2の方法において、定着処理は未現像部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる。定着処理には公知の銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができ、「写真の化学」(笹井著、写真工業出版社)p321記載の定着液などが挙げられる。
【0078】
その中でも、チオ硫酸塩以外の脱銀剤が含まれる定着液が好ましい。その場合の脱銀剤としてはチオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、1,10−ジチア−18−クラウン−6、2,2′−チオジエタノールなどのチオエーテル類、オキサドリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0079】
これらの脱銀剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンとしては、拡散転写現像液で述べた可溶性銀錯塩形成剤と同義である。また、チオシアン酸塩については脱銀能力は高いのだが、人体に対する安全性の観点から使用する事は好ましくない。
【0080】
これらの脱銀剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。また脱銀剤の使用量としては脱銀剤の合計で定着液1リットル当たり、0.01〜5モルが好ましく、より好ましくは0.1〜3モルの範囲である。
【0081】
定着液としては脱銀剤の他にも保恒剤として亜硫酸塩、重亜硫酸塩、pH緩衝剤として酢酸、硼酸アミン、リン酸塩などを含むことができる。また、硬膜剤として水溶性アルミニウム(例えば硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、カリミョウバン等)、アルミニウムの沈殿防止剤として二塩基酸(例えば、酒石酸、酒石酸カリウム、酒石酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸リチウム、クエン酸カリウム等)も含有させることができる。定着液の好ましいpHは脱銀剤の種類により異なり、特にアミンを使用する場合は8以上,好ましくは9以上である。定着処理温度は通常10℃から45℃の間で選ばれるが、より好ましくは18〜30℃である。
【0082】
<タイプ3>
硬化現像処理法を用いる方法である。この方法においては光センサーのハロゲン化銀粒子を像様に露光して潜像を形成し、これを触媒としてハロゲン化銀を還元する時に、ハイドロキノン等のその酸化体がゼラチンの硬化作用を持つ還元剤を用い、金属銀を形成すると同時に金属銀周囲のゼラチンを硬化させ、画像を形成させた後、水洗除去して非硬化部を洗い流す。タイプ2と同様銀粒子はバインダーに保持されているが、非画像部には基材のみが残ることとなる。
【0083】
タイプ3の感光材料においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が支持体上に設けられる。タイプ3の感光材料が有するハロゲン化銀としてはタイプ2の感光材料に用いるのと同様のハロゲン化銀を用いることが出来る。
【0084】
タイプ3の感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。本発明においては非水溶性ポリマー及び水溶性高分子のいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性高分子を用いることが好ましい。本発明における好ましいバインダーとしては、例えば、ゼラチン、カゼインなどのタンパク質類、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、アルギン酸、ヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これら水溶性ポリマーの中でもゼラチンなどのタンパク質が好ましい。
【0085】
タイプ3の感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層には上記水溶性高分子の他に非水溶性ポリマーとしての高分子ラテックスを用いる事もできる。高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・p−メトキシスチレン共重合体、スチレン・酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル・塩化ビニル共重合体、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル共重合体、メチルメタクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート・スチレン共重合体、メチルメタクリレート・酢酸ビニル共重合体、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン共重合体、メチルアクリレート・アクリロニトリル共重合体、メチルアクリレート・ブタジエン共重合体、メチルアクリレート・スチレン共重合体、メチルアクリレート・酢酸ビニル共重合体、アクリル酸・ブチルアクリレート共重合体、メチルアクリレート・塩化ビニル共重合体、ブチルアクリレート・スチレン共重合体等がある。本発明で用いる高分子ラテックスの平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0086】
タイプ3の感光材料が有するハロゲン化銀乳剤層が含有する水溶性ポリマーと高分子ラテックスの総量、すなわち総バインダー量については、バインダー量が少ないと塗布性に悪影響を及ぼし、また安定したハロゲン化銀粒子も得られなくなる、一方、多過ぎると導電性が得られ難くなり、生産性を落としてしまうなど、品質に大きな影響を与える。好ましいハロゲン化銀(銀換算)と総バインダーとの質量比(銀/総バインダー)は0.5以上、より好ましくは1.5〜3.5である。また、好ましい総バインダー量は0.05〜3g/m2、更に好ましくは0.1〜1g/m2である。
【0087】
タイプ3の感光材料にはタイプ2の感光材料同様、種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。
【0088】
タイプ3の感光材料には必要に応じて支持体のハロゲン化銀乳剤層と反対面に裏塗層やハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層、ハロゲン化銀乳剤層の下に下引き層などを設けることができる。またタイプ1、タイプ2の感光材料と同様ハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を含有することができる。
【0089】
タイプ3の感光材料のオーバー層、下引き層についてはハロゲン化銀乳剤層と同様のバインダーを用いることができる。それぞれの層の使用目的に応じて好ましいバインダー量は異なるが、特に硬化現像処理を利用して画像状にそれらの層を硬化させ、必要な部分のみ残したい場合、例えばオーバー層に無電解めっきの触媒核を含有させる場合などでは、ハロゲン化銀乳剤層中で起きる硬化反応を利用するので、できるだけ薄いほうが好ましく、好ましい使用量は0.1g/m2以下、更に好ましくは0.05〜0.001g/m2である。さらにオーバー層、下引き層には公知の界面活性剤、現像抑制剤、イラジエーション防止色素、顔料、マット剤、滑剤などを含有することができる。
【0090】
タイプ3の感光材料は硬化現像薬を含有することが特に好ましい。硬化現像薬としては、ポリヒドロキシベンゼン、例えばハイドロキノン、カテコール、クロロハイドロキノン、ピロガロール、ブロモハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、トルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,3−ジクロロハイドロキノン、2,3−ジメチルハイドロキノン、2,3−ジブロモハイドロキノン、2,5−ジヒドロキシ−1−アセトフェノン、2,5−ジメチルハイドロキノン、4−フェニルカテコール、4−t−ブチルカテコール、4−s−ブチルピロガロール、4,5−ジブロモカテコール、2,5−ジエチルハイドロキノン、2,5−ベンゾイルアミノハイドロキノン、などがある。また、アミノフェノール化合物、例えばN−メチル−p−アミノフェノール、p−アミノフェノール−2,4−ジアミノフェノール、p−ベンジルアミノフェノール、2−メチル−p−アミノフェノール、2−ヒドロキシメチル−p−アミノフェノールなど、また、その他にも例えば特開2001−215711号公報、特開2001−215732号公報、特開2001−312031号公報、特開2002−62664号公報記載の公知の硬化現像薬を用いることができるが、特にベンゼン核の少なくとも1,2位または1,4位にヒドロキシル基が置換したベンゼンが好ましい。また、これらの硬化現像薬を併用して用いることも可能である。さらに、3−ピラゾリドン類、例えば1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−p−トリル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、および1−p−クロロフェニル−3−ピラゾリドンなどの公知の写真現像液に用いる還元剤を上記硬化現像薬に併せて用いることも可能である。
【0091】
これら硬化現像薬は導電材料前駆体のどの層に含有されても良いが、ハロゲン化銀乳剤層もしくは下引き層に含有されることが好ましく、特にハロゲン化銀乳剤層に含有されていることが好ましい。含有する好ましい量はハロゲン化銀乳剤層の水溶性バインダーを耐水化できるだけの量であるため、使用する水溶性バインダーの量に応じて変化する。好ましい硬化現像薬の量は0.01〜0.5mモル/水溶性バインダー1g、更に好ましくは0.1〜0.4mモル/水溶性バインダー1gである。これら硬化現像薬は塗液に溶解させても各層に含有させても良いし、オイル分散液に溶解させて各層中に含有させることも可能である。
【0092】
タイプ3の感光材料は膨潤抑制剤を含有することが好ましい。本発明における膨潤抑制剤とは感光材料を硬化現像液で処理する際に水溶性バインダーが膨潤するのを防ぐことによって画像のぼけを防ぎ、また導電性を上げるために用いる。膨潤抑制剤として作用するかどうかはpH3.5の5%ゼラチン水溶液に膨潤抑制剤0.35モル/Lになるよう加えてゼラチンの沈澱が発生するかどうかで調べられ、この試験でゼラチンの沈澱が発生するような薬品は全て膨潤抑制剤として作用する。膨潤抑制剤の具体例としては、例えば硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カルシウム、硝酸マグネシウム、硝酸亜鉛、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、塩化マンガン、燐酸マグネシウムなどの無機塩類、あるいは例えばベンゼンスルホン酸、ジフェニルスルホン酸、5−スルホサリチル酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールジスルホン酸、α−ナフタレンスルホン酸、β−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンスルホン酸、1−ヒドロキシ−3,6−ナフタレンジスルホン酸、ジナフチルメタンスルホン酸などのスルホン酸類、例えばポリビニルベンゼンスルホン酸、無水マレイン酸とビニルスルホン酸の共重合物、ポリビニルアクリルアミドなどの高分子沈澱剤として用いられる化合物などが挙げられる。これら膨潤抑制剤は単独でも組合わせて用いても良いが、無機塩類、特に硫酸塩類を使用することが好ましい。これら膨潤抑制剤は感光材料のどの層に含有されていても良いが、特にハロゲン化銀乳剤層に含有されていることが好ましい。これら膨潤抑制剤の好ましい含有量は0.01〜10g/m2、更に好ましくは0.1〜2g/m2である。
【0093】
タイプ3の方法により支持体上の少なくとも一方の面に任意のパターンを有する銀画像を形成させるための方法としては、例えば網目状パターンの銀薄膜の形成が挙げられるが、これは前述のタイプ1、タイプ2で説明した方法で露光することができる。
【0094】
タイプ3の方法により支持体上に任意のパターンを有する銀画像を形成させるための現像処理方法としては、タイプ3の感光材料を露光した後に硬化現像を行う。硬化現像液にはアルカリ性物質、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、第3燐酸ナトリウム、あるいはアミン化合物、粘稠剤、例えばカルボキシメチルセルロース、現像助薬、例えば3−ピラゾリジノン類、カブリ防止剤、例えば臭化カリウム、現像変性剤、例えばポリオキシアルキレン化合物、ハロゲン化銀溶剤、例えばチオ硫酸塩、チオシアン酸塩、環状イミド、チオサリチル酸、メソイオン性化合物等の添加剤等を含ませることができる。現像液のpHは通常10〜14である。通常の銀塩写真現像液に用いる保恒剤、例えば亜硫酸ナトリウムなどは硬化現像による硬化反応を停める作用があるので、本発明における硬化現像液では保恒剤は少なくとも20g/L以下の使用量、好ましくは10g/L以下の使用量が好ましい。
【0095】
上記硬化現像液には感光材料に硬化現像薬を含有させない場合は硬化現像薬を含有する。硬化現像薬としては感光材料に含有させるのと同様の硬化現像薬を用いることができる。好ましい硬化現像薬の含有量は1〜50g/Lである。硬化現像薬を現像液中に含有させる場合、保恒性が悪く、直ぐに空気酸化してしまうので、使用の直前にアルカリ性水溶液に溶解することが好ましい。
【0096】
タイプ3の硬化現像液には膨潤抑制剤を含有することが好ましい。膨潤抑制剤としては感光材料に含有させるのと同様の膨潤抑制剤を用いることができる。好ましい膨潤抑制剤の含有量は50〜300g/L、好ましくは100〜250g/Lである。
【0097】
タイプ3の硬化現像処理を行う方法としては、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留された処理液中に、感光材料を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えば感光材料上に処理液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。特に硬化現像薬含有硬化現像液を用いる場合には塗布方式にし、硬化現像液を繰り返し用いないようにするほうが好ましい。
【0098】
タイプ3の硬化現像処理条件については、以下の通りである。現像温度は2〜30℃であり、10〜25℃がより好ましい。現像時間は5〜30秒であり、好ましくは5〜10秒である。
【0099】
タイプ3の方法により支持体上に任意のパターンを有する銀画像を形成させるための現像処理方法においては、硬化現像後、非画像部のハロゲン化銀乳剤層を除去し、支持体面を露出させる工程が含まれる。本工程はハロゲン化銀乳剤の除去を主目的としているので、本工程で用いられる処理液は水を主成分とする。処理液は緩衝成分を含有してもよい。また、除去したゼラチンの腐敗を防止する目的で、防腐剤を含有することができる。ハロゲン化銀乳剤を除去する方法としては、スポンジ等で擦り取る方法、ローラーを膜面に当ててスリップさせることによってはがしとる方法、ローラーを膜面に接触させてローラーに巻き付ける方法等がある。処理液流をハロゲン化銀乳剤面に当てる方法としては、シャワー方式、スリット方式等を単独、あるいは組み合わせて使用できる。また、シャワーやスリットを複数個設けて、除去の効率を高めることもできる。
【0100】
タイプ3の方法において非画像部ハロゲン化銀乳剤層を除去してレリーフ画像を作製した後に、当業者で周知の硬膜剤を含有した液で処理することでより強固なレリーフ画像を作製することが出来る。硬膜剤としては、クロムミョウバン、ホルムアルデヒド等のアルデヒド類、ジアセチル等のケトン類、ムコクロル酸類等、種々のものを用いることが出来る。
【0101】
タイプ3において硬化現像処理後にハロゲン化銀溶剤を含む物理現像液で感光材料を処理し、硬化現像で硬化されたレリーフ像中にある銀を増大させ、導電性を得ることもできる。物理現像工程はハロゲン化銀乳剤層の除去工程の前であっても、後であっても良いが、非画像部のハロゲン化銀も銀の供給源として使用できることから除去前に物理現像工程を行うことが好ましい。また、物理現像液に銀塩を加えるなど、さらなる銀イオンの供給を行い、物理現像工程でより銀を大きくすることもできる。
【0102】
物理現像液に用いられる還元剤は、写真現像の分野で公知の現像主薬を用いることができる。例えば、ハイドロキノン、カテコール、ピロガロール、メチルハイドロキノン、クロロハイドロキノン等のポリヒドロキシベンゼン類、アスコルビン酸及びその誘導体、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドン等の3−ピラゾリドン類、パラメチルアミノフェノール、パラアミノフェノール、パラヒドロキシフェニルグリシン、パラフェニレンジアミン等が挙げられる。これらの還元剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。
【0103】
物理現像液のpHは8以上が好ましく、更に9〜11が好ましい。所望のpHに調整するために、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ剤、燐酸、炭酸などの緩衝剤を単独、または組み合わせて含有させる。また、本発明の物理現像液には、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸カリウム等の保恒剤を含むことが好ましい。
【0104】
物理現像液には、臭化カリウム、臭化ナトリウムなどの臭化物を加えることが好ましい。適量の臭化物の存在下で現像を行うと、得られた金属銀の導電性が良化するからである。好ましい臭化物濃度は1×10-4モル/L以上1×10-2モル/L以下である。
【0105】
物理現像液のカリウムイオン濃度は物理現像液中の全アルカリ金属イオンの70モル%以上が好ましい。カリウムイオン濃度を70モル%以上にすることである程度前駆体を物理現像処理した状態であっても、得られる金属銀の導電性が比較的良好であるからである。カリウムイオンはいかなる形態及び方法で供給されても良い。例えば、水酸化物塩、亜硫酸塩、炭酸塩、カルボン酸塩等として予め物理現像液に添加しておく方法が挙げられる。
【0106】
上記物理現像液は可溶性銀錯塩形成剤を含有する。可溶性銀錯塩形成剤は、非感光性銀塩を溶解し可溶性の銀錯塩を形成させる化合物である。物理現像液に用いられる可溶性銀錯塩形成剤としては、チオ硫酸ナトリウムやチオ硫酸アンモニウムのようなチオ硫酸塩、チオシアン酸ナトリウムやチオシアン酸アンモニウムのようなチオシアン酸塩、亜硫酸ナトリウムや亜硫酸水素カリウムのような亜硫酸塩、オキサゾリドン類、2−メルカプト安息香酸及びその誘導体、ウラシルのような環状イミド類、アルカノールアミン、ジアミン、特開平9−171257号公報に記載のメソイオン性化合物、米国特許第5,200,294号明細書に記載のようなチオエーテル類、5,5−ジアルキルヒダントイン類、アルキルスルホン類、他に、「The Theory of the photographic Process(4th edition,p474〜475)」、T.H.James著に記載されている化合物が挙げられる。
【0107】
これらの可溶性銀錯塩形成剤の中でも特に、アルカノールアミンが好ましい。アルカノールアミンを含有した処理液で現像を行った透明導電性材料の表面抵抗は比較的低い値が得られる。
【0108】
アルカノールアミンとしては、例えばN−(2−アミノエチル)エタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エタノールアミン、4−アミノブタノール、N,N−ジメチルエタノールアミン、3−アミノプロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等が挙げられる。
【0109】
これらの可溶性銀錯塩形成剤は単独で、または複数組み合わせて使用することができる。可溶性銀錯塩形成剤の含有量は、処理液1リットル当たり、0.001〜5モルが好ましく、より好ましくは0.005〜1モルの範囲である。還元剤の含有量は処理液1リットル当たり0.01〜1モルが好ましく、より好ましくは0.05〜1モルの範囲である。
【0110】
上記物理現像液はさらに銀イオンを含有することも可能である。銀イオンの好ましい含有量は0.01〜1モル/L、更に好ましくは0.02〜0.5モル/Lである。あるいは物理現像液に銀イオンを含有させる替わりに、感光材料に感度の低いハロゲン化銀乳剤を含有させてもよい。感度の低いハロゲン化銀乳剤とは感光材料中に光センサーとして使われているハロゲン化銀乳剤(以下高感度乳剤と略す)の70%以下の感度を有するハロゲン化銀乳剤のことを意味し、該低感度ハロゲン化銀乳剤(以下低感度乳剤と略す)は好ましくは銀で換算して0.5〜5g/m2、より好ましくは1〜3g/m2感光材料に含有される。高感度銀乳剤と低感度乳剤の比率は特に限定する必要はないが、好ましい範囲は銀で換算して高感度乳剤:低感度乳剤=1:10〜2:1、更に好ましくは1:5〜1:1である。
【0111】
上記物理現像液を用いた物理現像処理を行う方法としては、浸漬方式であっても塗布方式であってもよい。浸漬方式は、例えば、タンクに大量に貯留された処理液中に、感光材料を浸漬しながら搬送するものであり、塗布方式は、例えば感光材料上に処理液を1平方メートル当たり40〜120ml程度塗布するものである。
【0112】
導電性及び金属光沢を向上させるための好ましい物理現像処理条件については、以下の通りである。現像温度は2〜25℃であり、10〜20℃がより好ましい。現像時間は30〜180秒であり、好ましくは40〜120秒である。
【0113】
以下実施例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例により何ら制限されるものではない。
【実施例1】
【0114】
<導電性ペーストの作製>
デキストリン3.5gをイオン交換水31.5gに溶解した水溶液と、硝酸銀8.5gをイオン交換水41.5gに溶解した水溶液とを混ぜ合わせ、撹拌しながら2規定の水酸化ナトリウム水溶液38gを1分かけゆっくりと滴下した。1時間後、撹拌を停止し、12時間放置した。その後、デカンテーションを行い、得られた沈殿物25gにイオン交換水25gを加え、再分散を行った後、遠心分離を行い、固形沈殿物を得た。この固形沈殿物に7gのイオン交換水を添加し、固形分38質量%、比重1.4の導電性ペーストを得た。
【0115】
得られた導電性ペーストの一部に濃硝酸を加え、硝酸銀にした後、沃化カリウム水溶液を用いて滴定を行い、銀濃度を求めた。求められた銀濃度は32質量%であり、固形分38質量%との差分に相当する6質量%は銀以外の分散剤等の含有量に相当する。また電子顕微鏡にて観察した結果、銀粒子の粒径は約20nmであった。
【0116】
易接着処理がなされた厚み100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製)上にスクリーン印刷により、上記導電性ペーストを線厚み3.0μm、線幅50.0μm、ピッチ300μmとなるよう、ラインアンドスペース画像を印刷し、銀画像パターンを得た。
【0117】
この銀画像パターンを脱脂処理した後、続いて無電解銅めっきを行った。脱脂処理は、メルテックス社製、クリーナー160を50g/Lとなるように建浴し、60℃で1分間行った。無電解銅めっきは、メルテックス社製薄付無電解銅めっき、メルプレートCU−5100を標準希釈で建浴し、溶存酸素濃度を5.0ppmに調整した第一めっき浴にて50℃で5分間めっき処理を行った後、直ちに溶存酸素濃度を3.0ppmに調整した第二めっき浴にて50℃で10分間めっき処理を行い、導電性材料Aを作製した。尚、前記第一めっき浴では市販のエアポンプを使用することによって、めっき液100Lに対して50L/分、第2めっき液ではめっき液100Lに対して15L/分のエアバブリングをそれぞれ行うことによりめっき液中の溶存酸素濃度調節を行った。
【0118】
この導電性材料Aの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、50.0μmの銀画像細線に対して49.8μmの無電解銅が析出した。得られたラインアンドスペース画像の表面抵抗値を、低抵抗率計(三菱化学社製、ロレスタGP)を用いて測定したところ0.14Ω/□であった。また導電性材料Aの光透過性に関してスガ試験機社製、ダブルビーム方式ヘーズコンピューターでラインアンドスペース画像の部分の全光線透過率を測定した結果、45.3%であった。
【0119】
<比較例1>
上記実施例1の無電解銅めっきにおいて第一めっき浴の溶存酸素濃度を3.0ppmに調整すること以外、実施例1と同様にして比較の導電性材料Bを作製した。この導電性材料Bの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、50.0μmの銀画像細線に対して56.2μmの無電解銅が析出した。得られたラインアンドスペース画像の表面抵抗値を、低抵抗率計(三菱化学社製、ロレスタGP)を用いて測定したところ0.11Ω/□であった。また導電性材料Bの光透過性に関してスガ試験機社製、ダブルビーム方式ヘーズコンピューターでラインアンドスペース画像の部分の全光線透過率を測定した結果、40.8%であった。
【実施例2】
【0120】
銀塩拡散転写法に従う方法である銀塩写真方式(a)に用いる感光材料を以下のように作製した。厚み100μmの、塩化ビニリデンを含有する下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムにゼラチンが50mg/m2の接着層を塗布した後、下記の硫化パラジウムゾルを含む物理現像核層を、硫化パラジウムが固形分で0.4mg/m2になるように塗布し、乾燥した。
【0121】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40ml
蒸留水 1000ml
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000ml
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0122】
<物理現像核層塗液の調製>
前記硫化パラジウムゾル 50ml
1質量%のゼラチン溶液 20ml
界面活性剤(S−1) 0.2g
水を加えて全量を2000mlとする。
【0123】
【化1】

【0124】
続いて、上記物理現像核層を塗布した側と反対側に下記組成の裏塗り層を塗布した。
【0125】
<裏塗り層組成/1m2あたり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
界面活性剤(S−2) 5mg
【0126】
【化2】

【0127】
続いて、下記組成のハロゲン化銀乳剤層および、非感光性層塗液を調製した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。ハロゲン化銀乳剤層を上記物理現像核層の上に塗布した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.1μmになるように調製した。このハロゲン化銀乳剤に、チオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を加え、50℃で化学増感した。このハロゲン化銀乳剤の銀(硝酸銀)/ゼラチンの質量比は2.0である。
【0128】
このようにして調製したハロゲン化銀乳剤を用い、下記ハロゲン化銀乳剤層塗液を調製した。また、同時に下記非感光性層塗液を調製し、物理現像核層の上に非感光性層塗液とハロゲン化銀乳剤層塗液をこの順に同時スライド塗布した。得られた感光材料は1m2あたりの銀量(硝酸銀)が3.0g、ゼラチン量が非感光性層1.0gを含む合計3.0gであった。
【0129】
<ハロゲン化銀乳剤層塗液>
ゼラチン 50g
ハロゲン化銀乳剤 300g硝酸銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 0.3g
界面活性剤(S−1) 3g
【0130】
<非感光性層塗液>
ゼラチン 100g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 1g
界面活性剤(S−1) 1g
界面活性剤(S−2) 10mg
【0131】
このようにして得た感光材料を、水銀灯を光源とする密着プリンターで、配線パターン(1×5cmの電極を、2つの電極間を10cmになるよう配置し、その間を細線幅6.3μm、細線間隔6.3μmの細線1536本で結合)を描画したポジ原稿を密着させて、エネルギー量0.6mJ/cm2で露光し、続いて、下記の現像液−1(写真製法(a)用現像液)中に25℃で40秒間浸漬した後、続いて温水にて水洗し、銀配線パターンを形成させた銀画像パターンを得た。
【0132】
<現像液−1>
水酸化ナトリウム 20g
ハイドロキノン 20g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸ナトリウム 30g
N−メチルエタノールアミン 10g
臭化カリウム 2g
全量を水で1000mlに調整する。pH13に調整。
【0133】
この銀画像パターンを脱脂処理した後、続いて無電解銅めっきを行った。脱脂処理は、メルテックス社製、クリーナー160を50g/Lとなるように建浴し、60℃で1分間行った。無電解銅めっきは、メルテックス社製薄付無電解銅めっき、メルプレートCU−5100を標準希釈で建浴し、溶存酸素濃度を5.0ppmに調整した第一めっき浴にて50℃で5分間めっき処理を行った後、直ちに溶存酸素濃度を3.0ppmに調整した第二めっき浴にて50℃で10分間めっき処理を行い、導電性材料Cを作製した。尚、前記第一めっき浴では市販のエアポンプを使用することによって、めっき液100Lに対して50L/分、第2めっき液ではめっき液1Lに対して15L/分のエアバブリングをそれぞれ行うことによりめっき液中の溶存酸素濃度調節を行った。
【0134】
この導電性材料Cの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、6.3μmの銀画像細線に対して6.2μmの無電解銅が析出し、隣接する配線はつながっていないことを確認した。また、2つの電極間の電気抵抗値をFLUKE 70(JOHN FLUKE MFG CO.INC.社製マルチメーターの商品名)を用いて測定したところ、5.2Ωであった。
【0135】
<比較例2>
上記実施例2の無電解銅めっきにおいて第一めっき浴の溶存酸素濃度を3.0ppmに調整すること以外、実施例2と同様にして比較の導電性材料Dを作製した。このめっき後の導電性材料Dの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、6.3μmの銀画像細線に対して11.8μmの無電解銅が析出し、隣接する配線が所々つながっている様子が観察された。また、2つの電極間の抵抗値を測定したところ、1.3Ωであった。これは、隣接する線同士が所々つながってしまったために電気抵抗が下がったためである。
【0136】
<比較例3>
上記実施例2の無電解銅めっきにおいて第二めっき浴の溶存酸素濃度を5.0ppmに調整すること以外、実施例2と同様にして比較の導電性材料Eを作製した。このめっき後の導電性材料Eの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、6.3μmの銀画像細線に対して5.5μmの無電解銅が析出し、隣接する配線はつながっていないことを確認した。また、2つの電極間の抵抗値を測定したところ、8.1Ωであった。これは、析出した無電解銅が導電性材料Cと比較して少なかったためであると考えられる。
【実施例3】
【0137】
上記実施例2の無電解銅めっきにおいて第一めっき浴の溶存酸素濃度を5.5ppmに調整すること以外、実施例2と同様にして比較の導電性材料Fを作製した。このめっき後の導電性材料Fの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、6.3μmの銀画像細線に対して6.0μmの無電解銅が析出し、隣接する配線はつながっていないことを確認した。また、2つの電極間の抵抗値を測定したところ、5.8Ωであった。これは、析出した無電解銅が導電性材料Cと比較してやや少なかったためであると考えられる。
【実施例4】
【0138】
上記実施例2の無電解銅めっきにおいて第二めっき浴の溶存酸素濃度を2.1ppmに調整すること以外、実施例2と同様にして比較の導電性材料Gを作製した。このめっき後の導電性材料Gの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、6.3μmの銀画像細線に対して6.9μmの無電解銅が析出し、隣接する配線はつながっていないことを確認した。また、2つの電極間の抵抗値を測定したところ、4.6Ωであった。これは、析出した無電解銅によって線幅がやや太ったためであると考えられる。
【実施例5】
【0139】
上記実施例2の感光材料において、物理現像核層を設けないこと、及びハロゲン化銀乳剤層のハロゲン化銀乳剤の銀(硝酸銀)/ゼラチンの質量比を3.0とすること、硬膜剤として1,3−ジビニルスルホニル−2−プロパノールをゼラチンに対して2質量%加えること以外、実施例2と同様にして、前述の(b)に用いる感光材料を作製した。その後、実施例2と同じ水銀灯を光源とする密着プリンターで、実施例2で用いた配線パターンのネガ原稿を密着させて、エネルギー量0.6mJ/cm2で露光し、続いて、三菱製紙社製ゲッコール現像液中に20℃で90秒間浸漬した後、続いて3%酢酸水溶液を現像停止液として用い、20℃で30秒間浸漬した。さらに下記の定着液−1に20℃で3分間浸漬した後、流水で5分間水洗し、前述の(b)により、銀配線パターンを形成させた銀画像パターンを得た。その後、実施例2と同様にして、溶存酸素濃度を5.0ppmに調整した第一めっき浴にて50℃で5分間めっき処理を行った後、直ちに溶存酸素濃度を3.0ppmに調整した第二めっき浴にて50℃で10分間めっき処理を行い、本発明の導電性材料Hを作製した。
【0140】
<定着液−1>
N−アミノエチルエタノールアミン 200g
チオ硫酸ナトリウム・5水和物 5g
無水亜硫酸ナトリウム 15g
全量を水で1000mlに調整する。pH10.5に調整。
【0141】
このめっき後の導電性材料Hの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、6.3μmの銀画像細線に対して6.1μmの無電解銅が析出し、隣接する配線はつながっていないことを確認した。また2つの電極間の電気抵抗値を測定したところ、6.5Ωであった。
【0142】
<比較例4>
上記実施例5の無電解銅めっきにおいて第一めっき浴の溶存酸素濃度を3.0ppmに調整すること以外、実施例5と同様にして比較の導電性材料Iを作製した。このめっき後の導電性材料Iの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、6.3μmの銀画像細線に対して11.5μmの無電解銅が析出し、隣接する配線が所々つながっている様子が観察された。また、2つの電極間の抵抗値を測定したところ、1.4Ωであった。これは、隣接する線同士が所々つながってしまったために電気抵抗が下がったためである。
【0143】
<比較例5>
上記実施例5の無電解銅めっきにおいて第二めっき浴の溶存酸素濃度を5.0ppmに調整すること以外、実施例5と同様にして比較の導電性材料Jを作製した。このめっき後の導電性材料Jの細線パターンを、光学顕微鏡を用いて、倍率2100倍で観察したところ、6.3μmの銀画像細線に対して5.4μmの無電解銅が析出し、隣接する配線はつながっていないことを確認した。また、2つの電極間の抵抗値を測定したところ、8.3Ωであった。これは、析出した無電解銅が導電性材料Hと比較して少なかったためであると考えられる。
【0144】
これらの結果から判るように、支持体上の少なくとも一方の面に銀画像を形成させた後、該銀画像に無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm以上である第一めっき浴にてめっき処理を施し、その後無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm未満である第二めっき浴にてめっき処理を施すことにより、無電解銅めっきによる配線幅の太りが改善され、かつ、優れた導電性を有する導電性材料が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上の少なくとも一方の面に銀画像を形成させた後、該銀画像に無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm以上である第一めっき浴にてめっき処理を施し、その後無電解銅めっき液中の溶存酸素濃度が4ppm未満である第二めっき浴にてめっき処理を施すことを特徴とする導電性材料の作製方法。

【公開番号】特開2009−146587(P2009−146587A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319610(P2007−319610)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】