説明

導電性材料の製造方法

【課題】導電性材料の製造方法において、透明性と導電性が共に高く、かつ生産性の良い導電性材料が得られるための製造方法を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を含有する導電性材料前駆体を用いて製造する導電性材料の製造方法において、該導電性材料前駆体を酵素含有処理液で処理することを特徴とする導電性材料の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路、アンテナ回路、電磁波シールド材、タッチパネル等の用途に用いることができる導電性材料、特に金属部と光透過部を有する透明導電性材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、情報化社会が急速に発達するに伴って、情報関連機器に関する技術が急速に進歩し普及してきた。この中で、ディスプレイ装置は、テレビジョン用、パーソナルコンピューター用、駅や空港などの案内表示用、その他各種情報提供用に用いられている。特に、近年プラズマディスプレイが注目されている。
【0003】
このような情報化社会の中にあって、これらのディスプレイ装置から放射される電磁波の影響が心配されている。例えば、周辺の電子機器への影響や人体への影響が考えられている。特に、人体の健康に及ぼす影響は無視することができないものになっており、人体に照射される電磁界の強度の低減が求められ、このような要求に対して様々の透明導電性材料が開発されている。例えば、特開平9−53030号、特開平11−126024号、特開2000−294980号、特開2000−357414号、特開2000−329934号、特開2001−38843号、特開2001−47549号、特開2001−51610号、特開2001−57110号、特開2001−60416号公報等に開示されている。
【0004】
これらの透明導電性材料の製造方法としては、銀、銅、ニッケル、インジウム等の導電性金属をスパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、真空蒸着法、湿式塗工法によって透明樹脂フィルム上に金属薄膜を形成させる方法が一般的に用いられているが、これら従来方法では工法が極めて複雑になるため、高コストで生産性が悪いという問題が発生していた。
【0005】
また、透明導電性材料に求められる別の性能として導電性と光透過率がある。導電性を高くするにはある程度の幅と厚みを持った金属薄膜微細パターンを作る必要があるが、同時に光を遮断する金属からなるパターンの線幅を太くすると透過率が低下するので、この両者を満足させるには十分な導電性を持った微細な金属パターン、特に必要最小限の幅で均一なパターンを製造する必要があるが、従来の方法ではこれは満足出来なかった。
【0006】
均一なパターンを作ると言う観点において、近年透明導電性材料前駆体としてハロゲン化銀乳剤層を含有する銀塩写真感光材料を使用する方法が提案されている。例えば国際公開特許WO01/51276号公報(特許文献1)では銀塩写真感光材料を像露光、現像処理した後、金属めっき処理を施すことで透明導電性材料を製造する方法の提案がなされている。しかしながら、銀塩写真感光材料を用いる場合、めっき時の触媒としては現像銀を用いるのだが、該現像銀である金属銀がバインダーの中に埋没しており、めっき液との接触がし難く、めっきの妨害物質となる上に、導電性を得るためには銀粒子と銀粒子の接触を妨害するバインダーを押しのけて金属が橋をかけるようにめっきされなければならず、導電性を得るまでめっきすることは大変困難であった。これに対し、特開2004−221564号公報(特許文献2)においてはめっきをし易くすべく、ハロゲン化銀乳剤層の銀/ゼラチンの比を変化させて銀の比率を高くし、めっきの邪魔となるバインダーを減らす事でめっきの効率を上げようとしている。しかしながらこのようなハロゲン化銀乳剤を作ろうとすると、極少量の保護バインダーしか使えず、比重の重い銀をこのように少ないバインダーで保持することは困難であったり、製造中にかかる圧力などでカブリが発生しやすいなど生産上問題を抱えていた。
【0007】
また、同じく銀塩感光材料を使う方法として銀塩拡散転写法を用いる方法も提案されており、例えば国際公開特許WO2004−007810号公報(特許文献3)などがある。この方法では現像後の銀は極微量のバインダーに、あるいは実質的にバインダーに覆われていないために、非常にめっきには有利な手法である。しかしながら、非常に薄い物理現像核層の上に厚く重いハロゲン化銀乳剤層が塗布されているため、同時多層塗布は困難であり、生産性が悪くなるという問題が存在した。
【特許文献1】国際公開特許WO01/51276号公報(1頁)
【特許文献2】特開2004−221564号公報(1〜5頁)
【特許文献3】国際公開特許WO2004/221565号公報(1頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、透明性と導電性が共に高く、かつ生産性の良い透明導電性材料が得られるための製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を含有する導電性材料前駆体を用いて製造する導電性材料の製造方法において、該導電性材料前駆体を酵素含有処理液で処理することを特徴とする導電性材料の製造方法を用いることによってに達成された。また酵素含有処理液で処理した後めっき処理することでさらに高いレベルで達成することができた。
【0010】
露光、現像により生成した現像銀である金属銀はハロゲン化銀乳剤層のバインダー中に担持されている。バインダーは絶縁体であり、いかにバインダー量が少なくともこれにより導電体である金属銀が孤立させられてしまうために、ハロゲン化銀乳剤層を単純に現像処理しても導電性を得ることは困難である。ところが、本発明者らの注意深い実験によれば、バインダーの量を減じるよりむしろ、ある条件下で酵素処理することで、めっきなしでもかなりの程度の導電性を確保でき、かつ大幅にめっきがし易くなることが判明し、本発明に至った。
【発明の効果】
【0011】
本発明の導電性材料製造方法により、透明性と導電性が共に高く、かつ生産性の良い導電性材料が得られるための製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明においては導電性材料としてハロゲン化銀乳剤層を有する導電性材料前駆体を用いる。これを露光、現像、定着処理してその表面にパターンを形成するが、酵素処理は露光前、露光と現像処理の間に、現像処理と定着処理の間に、定着処理の後のいずれでも行う事ができるが、露光前の処理は一旦導電性材料前駆体を乾燥させる工程が必要であり、工程数を増やす事は生産上好ましくない。また、酵素処理は複数回行う事もできる。さらに酵素処理の後に必要に応じて、活性化処理、めっき処理、酸化処理などを行うこともできる。また各処理工程の間には中和液による停止処理や水洗処理を行う事で各処理液の成分が次の処理液に持ちこまれないようすることが好ましい。
【0013】
本発明において用いる酵素はハロゲン化銀乳剤層を構成するバインダーに作用できる酵素を用いる。例えば、通常ハロゲン化銀乳剤にはゼラチンが水溶性バインダーとして用いられるが、この場合ゼラチンが蛋白質であることから蛋白分解酵素を用いる。またセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースをバインダーに用いる場合はセルロース分解酵素を用いる必要がある。その他使用するバインダーに応じて使用する分解酵素を使い分ける必要がある。
【0014】
本発明においてタンパク質分解酵素を用いる場合は、植物性または動物性酵素で公知のものが用いられる。例えば、ペプシン、レンニン、トリプシン、キモトリプシン、カテプシン、パパイン、フィシン、トロンビン、レニン、コラゲナーゼ、ブロメライン、細菌プロテアーゼ(例えば、長瀬産業(株)製のビオプラーゼ)等が挙げられる。この中でも特に、トリプシン、パパイン、フィシン、細菌プロテアーゼが好ましい。
【0015】
本発明において用いるその他の酵素としては各種公知の酵素が使え、例えばアミラーゼ、イソアミラーゼ、グルコアミラーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼなどがあり、ハロゲン化銀乳剤に使用するバインダーに応じて用いることが出きる。
【0016】
本発明において酵素処理液には上記酵素単独で用いても良いし、複数を混合して使用しても良い。処理液中の酵素の含有量は、0.5〜50g/リットル程度が適当である。酵素処理液のpHは使用する酵素に応じて異なり、例えば細菌プロテアーゼの中でもアルカリ性プロテアーゼを用いる場合その最適pHは8〜10であるのに対し、中性プロテアーゼを用いると6〜7となる。従って、酵素の最適pHに応じた緩衝剤を酵素処理液に含有させることが好ましい。また酵素処理液はその他にも界面活性剤、消泡剤、防カビ剤、キレート剤、酵素の活性を維持させるための蛋白質や糖類、増粘剤、凝集剤などを含有させることができる。本発明における酵素処理の温度も酵素に応じて異なるが、あまり温度が高い塗連続処理で酵素処理液の蒸発濃縮などの問題が発生するので30〜45℃が好ましい。処理時間は5秒〜180秒、好ましくは30〜60秒である。
【0017】
本発明の酵素処理は導電性材料前駆体を酵素処理液に浸漬、あるい塗布するなどして処理する事ができる。あるいは酵素処理液をジェット方式で吹き付ける方法、または処理液を吹き付けながらスクラブローラで導電性材料前駆体を擦る方法などを用いる事も可能である。
【0018】
本発明において酵素処理が終った導電性材料前駆体を洗浄し、ハロゲン化銀乳剤層の膜強度を落とし過ぎない様にすることも本発明の好ましい形態である。導電性材料前駆体の洗浄は水洗のみでも良いし、さらには酵素の阻害物質、例えば重金属イオン、キレート剤、4級アミン類など、酵素を失活させる洗浄液を用いる事もできる。あるいは酵素が失活するだけの温度の水で洗浄する事も好ましい。
【0019】
本発明の導電性材料前駆体に用いられる透明支持体としては、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルムあるいはガラス板が挙げられる。さらに本発明においては支持体上にハロゲン化銀写真乳剤層との接着性を向上させるための下引き層や帯電防止層などを必要に応じて設けることもできる。
【0020】
本発明の導電性材料前駆体においては光センサーとしてハロゲン化銀乳剤層が支持体上に設けられる。ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においてもそのまま用いることもできる。
【0021】
本発明におけるハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。ハロゲン化銀乳剤粒子の形成には、順混合、逆混合、同時混合等の、当業界では周知の方法が用いられる。なかでも同時混合法の1種で、粒子形成される液相中のpAgを一定に保ついわゆるコントロールドダブルジェット法を用いることが、粒径のそろったハロゲン化銀乳剤粒子が得られる点において好ましい。本発明においては、好ましいハロゲン化銀乳剤粒子の平均粒径は0.25μm以下、特に好ましくは0.05〜0.2μmである。
【0022】
本発明におけるハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができる。
【0023】
本発明におけるハロゲン化銀乳剤の製造においては、必要に応じてハロゲン化銀粒子の形成あるいは物理熟成の過程において、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、あるいはロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩などVIII族金属元素の塩若しくはその錯塩を共存させても良い。また、種々の化学増感剤によって増感することができ、イオウ増感法、セレン増感法、貴金属増感法など当業界で一般的な方法を、単独、あるいは組み合わせて用いることができる。また本発明においてハロゲン化銀乳剤は必要に応じて色素増感することもできる。
【0024】
本発明において導電性材料前駆体のハロゲン化銀乳剤層はバインダーを含有する。酵素処理により導電性材料前駆体の導電性が増し、またそれがめっきし易くなる為には該バインダーが酵素の作用を受け、変成する必要がある。その為には、少なくともバインダー総量のうちの30重量%以上、好ましくは30〜90重量%、好ましくは更に好ましくは50〜80%であるは酵素処理で分解可能となるポリマーを用いる必要がある。通常酵素処理が可能なポリマーは天然ポリマーである。また、本発明においてハロゲン化銀乳剤層に含有するハロゲン化銀量とバインダー量の比率は、ハロゲン化銀(銀換算)とバインダーとの質量比(銀/ゼラチン)が1.2以上、より好ましくは1.5〜3.5である。
【0025】
本発明における好ましい天然ポリマーとしてはゼラチン、カゼイン、アルブミンなどの蛋白質。澱粉、デキストリン等の多糖類、セルロース及びその誘導体(例えばカルボキシルメチルセルロース、ヒドロキシルプロピルセルロース、メチルセルロースなど)、アルギン酸、カラギーナン、フコイダン、キトサン、ヒアルロン酸などを用いることができ、その中でも最も好ましい天然バインダーはゼラチンである。またコハク化ゼラチンなど公知の方法で修飾した天然ポリマーを用いる事もできる。
【0026】
前述の通り本発明において用いるハロゲン化銀乳剤層に含有するバインダーは酵素処理で溶解し得るバインダーを用いるが、本発明においてはハロゲン化銀乳剤層にその酵素が作用しないバインダーも含有する事が好ましい。そのようなバインダーとしては使用する酵素が作用しない天然ポリマー(例えばハロゲン化銀乳剤層中にゼラチンを使用し、酵素処理液中に蛋白質分解酵素を使用する場合にはセルロース誘導体などを用いる)や、合成ポリマー、ラテックスバインダーなどを用いる。
【0027】
本発明において用いる水溶性の合成ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルメチルエーテル、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアミン、ポリリジン、ポリアクリル酸等が挙げられる。また、これらのグラフト重合ポリマーなども用いる事ができる。
【0028】
本発明において用いる非水溶性の合成ポリマーとしての高分子ラテックスとしては単独重合体や共重合体など各種公知のラテックスを用いることができる。単独重合体としては酢酸ビニル、塩化ビニル、スチレン、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレンなどがあり、共重合体としてはエチレン・ブタジエン、スチレン・ブタジエン、スチレン・p−メトオキシスチレン、スチレン・酢酸ビニル、酢酸ビニル・塩化ビニル、酢酸ビニル・マレイン酸ジエチル、メチルメタクリレート・アクリロニトリル、メチルメタクリレート・ブタジエン、メチルメタクリレート・スチレン、メチルメタクリレート・酢酸ビニル、メチルメタクリレート・塩化ビニリデン、メチルアクリレート・アクリロニトリル、メチルアクリレート・ブタジエン、メチルアクリレート・スチレン、メチルアクリレート・酢酸ビニル、アクリル酸・ブチルアクリレート、メチルアクリレート・塩化ビニル、ブチルアクリレート・スチレン等がある。本発明で用いる高分子ラテックスの平均粒径は0.01〜1.0μmであることが好ましく、更に好ましくは0.05〜0.8μmである。
【0029】
ハロゲン化銀乳剤層には、さらに種々の目的のために、公知の写真用添加剤を用いることができる。これらは、Research Disclosure Item 17643(1978年12月)および18716(1979年11月)308119(1989年12月)に記載、あるいは引用された文献に記載されている。
【0030】
本発明における導電性材料前駆体には必要に応じて支持体のハロゲン化銀乳剤層と反対面に裏塗層やハロゲン化銀乳剤層の上にオーバー層などを設けることができる。
【0031】
上記導電性材料前駆体を用い、透明導電性材料を作製するための方法は、例えば網目状パタンの銀薄膜の形成が挙げられる。この場合、ハロゲン化銀乳剤層は網目状パタンに露光されるが、露光方法として、網目状パタンの透過原稿とハロゲン化銀乳剤層を密着して露光する方法、あるいは各種レーザー光を用いて走査露光する方法等がある。上記したレーザー光で露光する方法においては、例えば400〜430nmに発振波長を有する青色半導体レーザー(バイオレットレーザーダイオードとも云う)を用いることができる。
【0032】
導電性材料前駆体にはハロゲン化銀乳剤層の感光波長域に吸収極大を有する非増感性染料又は顔料を、画質向上のためのハレーション、あるいはイラジエーション防止剤として用いることは好ましい。ハレーション防止剤としてはハロゲン化銀乳剤層と支持体の間の下引き層やあるいは裏塗り層に含有させることができる。イラジエーション防止剤としては、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのがよい。添加量は、目的の効果が得られるのであれば広範囲に変化しうるが、たとえばハレーション防止剤として裏塗り層に含有させる場合、1平方メートル当たり、約20mg〜約1gの範囲が望ましく、好ましくは、極大吸収波長における光学濃度として、0.5以上である。
【0033】
本発明では、導電性材料前駆体を露光した後には現像処理を行う。本発明において現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、例えば三菱製紙社製のGekkol、MRA−CD1001、富士フィルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、LD745、LD835、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72、RA2000などの現像液、また、D−85などのリス現像液を用いることができる。
【0034】
本発明において現像処理の後、停止処理を行ことが好ましい。停止処理は水洗のみでも不可能では無いが、好ましくは酸性の停止液を用いる。好ましい停止液としては「写真の化学」(笹井著、写真工業出版社(株))p305記載の停止液が挙げられる。
【0035】
本発明において現像、停止処理の後、定着処理を行う。定着とは未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる。本発明における定着液としては公知の銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。好ましい定着液としては前述の「写真の化学」(笹井著、写真工業出版社(株))p321記載の定着液などが挙げられる。また、チオ硫酸塩を含有しない、例えば脱銀剤としてアルカノールアミン類を用いた定着液で定着処理する事も好ましい。また、定着液に硬膜剤、例えばアルミニウム塩などを含有する硬膜定着液を用いる事もできる。さらに酸化剤、例えばEDTA第2鉄塩の入った漂白定着剤を用いても良い。
【0036】
本発明では、前記露光及び現像処理により形成された現像銀部に更に高い導電性を付与する目的で、酵素処理の後にめっき処理を行うことことも好ましい。本発明において、めっき処理は、無電解めっき(化学還元めっきや置換めっき)、電解めっき、又は無電解めっきと電解めっきの両方を用いることができる。
【0037】
本発明における無電解めっきは、公知の無電解めっき技術、例えば無電解ニッケルめっき,無電解コバルトめっき、無電解金めっき、銀めっきなどを用いることができるが、低コストにて十分な導電性と透明性を得るためには無電解銅めっきを行うことが好ましい。
【0038】
本発明における無電解銅めっき液には硫酸銅や塩化銅など銅の供給源、ホルマリンやグリオキシル酸、テトラヒドロホウ酸カリウム、ジメチルアミンボランなど還元剤、EDTAやジエチレントリアミン5酢酸、ロシェル塩、グリセロール、メソーエリトリトール、アドニール、D−マンニトール、D−ソルビトール、ズルシトール、イミノ2酢酸、t−1,2−シクロヘキサンジアミン4酢酸、1,3−ジアミノプロパンー2−オール,グリコールエーテルジアミン、トリイソプロパノールアミン、トリエタノールアミン等の銅の錯化剤、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのpH調整剤などが含有される。さらにその他に浴の安定化やめっき皮膜の平滑性を向上させるための添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジル,o−フェナントロリン、ネオクプロイン、チオ尿素、シアン化物などを含有させることも出来る。めっき液は安定性を増すためエアレーションを行う事が好ましい。
【0039】
無電解銅めっきでは前述の通り種々の錯化剤を用いることができるが、錯化剤の種類により酸化銅が共析し、導電性に大きく影響したり、あるいはトリエタノールアミンなど銅イオンとの錯安定定数の低い錯化剤は銅が沈析しやすいため、安定しためっき液やめっき補充液が作り難いなどということが知られている。従って工業的に通常用いられる錯化剤は限られており、本発明においても同様の理由でめっき液の組成として特に錯化剤の選択は重要である。特に好ましい錯化剤としては銅錯体の安定定数の大きいEDTAやジエチレントリアミン5酢酸などが挙げられ、このような好ましい錯化剤を用いためっき液としては例えばプリント基板の作製に使用される高温タイプの無電解銅めっきがある。高温タイプの無電解銅めっきの手法については「無電解めっき 基礎と応用」(電気鍍金研究会編)p105などに詳しく記載されている。高温タイプのめっきでは通常60〜70℃で処理し、処理時間は無電解めっき後に電解めっきを施すかどうかで変わってくるが、通常1〜30分、好ましくは3〜20分無電解めっき処理を行うことで本発明の目的を達することが出来る。
【0040】
本発明において銅以外の無電解めっき処理を行う場合は例えばめっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p406〜432記載の方法などを用いる事ができる。
【0041】
本発明においては無電解めっき以外にも電解めっきを施すこともできる。特に本発明では酵素処理により十分な導電性が得られるので無電解めっきを行わずとも、最初から電解めっきを行う事も十分可能である。電解めっきとしては銅めっきやニッケルめっき、亜鉛めっき、カドミウムめっき、錫めっき、合金めっきなど種々のめっき法が知られている、無電解めっき同様低コストで透明性、導電性を確保するためには銅めっきを用いる事が好ましい。銅めっき法としては公知の硫酸銅めっき、ホウフッ化銅めっき、シアン化銅めっき、ピロリン酸銅めっきなどいずれの方法でも用いる事ができるが、廃液の簡便さから硫酸銅めっき、特にハイスロ−硫酸銅めっきを用いることが好ましい。これら電解めっき法の詳細は例えば「めっき技術ガイドブック」(東京鍍金材料協同組合技術委員会編、1987年)p75〜112などに記載されている。
【0042】
本発明では、めっき処理の前に金属銀部を無電解めっきを促進させる目的でパラジウムを含有する溶液で活性化処理することもできる。パラジウムとしては2価のパラジウム塩あるいはその錯体塩の形でも良いし,また金属パラジウムであっても良い。しかし、液の安定性、処理の安定性から好ましくはパラジウム塩あるいはその錯塩を用いることが良い。
【0043】
本発明においてはめっき処理後、酸化処理を行う事も可能である。酸化処理としては、種々の酸化剤を用いた公知の方法を用いる事ができる。酸化処理液には酸化剤としてEDTA鉄塩、DTPA鉄塩、1,3−PDTA鉄塩、β−ADA鉄塩、BAIDA鉄塩などの各種アミノポリカルボン酸鉄塩、重クロム酸塩、過硫酸塩、過マンガン酸塩、赤血塩などを用いることができるが、環境負荷が少なく、安全なアミノポリカルボン酸鉄を用いる事が好ましい。酸化剤の使用量は0.01〜1モル/L、好ましくは0.1〜0.3モル/Lである。その他に促進剤として臭化物、ヨウ化物、グアニジン類、キノン類、ヴァイツラジカル、アミノエタンチオール類、チアゾール類、ジスルフィド塁、へテロ環メルカプト類など公知のものを用いる事もできる。
【0044】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、無論この記述により本発明が制限されるものではない。
【実施例1】
【0045】
本発明に使用される前駆体を作製するために、透明支持体として、厚み100μmの塩化ビニリデンを含有する下引き層を有するポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。この支持体上に下記組成の裏塗り層を塗布した。
【0046】
<裏塗り層組成/1m2あたり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
界面活性剤(S−1) 400mg
【0047】
続いて、支持体の裏塗層と反対側にハロゲン化銀乳剤層を塗布した。ハロゲン化銀乳剤は写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀40モル%と臭化銀60モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸を用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀3gあたり1.0gのゼラチンを含む。
【0048】
<ハロゲン化銀乳剤層組成/1m2あたり>
ゼラチン 1.5g
カルボキシルメチルセルロース 0.2g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
グリオキサール(40%水溶液) 50mg
【0049】
このようにして得た導電性材料前駆体を、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パタンの透過原稿を密着させて露光した。
【0050】
続いて、Gekkol現像液(三菱製紙(株)社製)に20℃で90秒間浸漬した後、続いて2%酢酸溶液に20℃で30秒浸漬させ停止処理した。さらにダイヤフィックス定着液(三菱製紙(株)社製)に20℃で180秒定着処理し、水洗した。
【0051】
さらに下記酵素処理液に40℃30秒浸漬し、その後70℃の温水で10秒水洗して酵素処理を行った。また、比較として酵素処理をおこなっていない導電性材料前駆体も作製した。
【0052】
<酵素処理液処方A>
トリエタノールアミン 20g
重亜硫酸カリウム 6g
アミノトリメチレンホスホン酸 20g
ビオプラーゼAL−15(細菌プロティナーゼ:蛋白質分解酵素、長瀬産業(株)製) 1g
水を加えて全量を1000mlに調整する。pHは7.4に調整した。
【0053】
<酵素処理液処方B>
乳酸 20g
水酸化ナトリウム 2g
アミノトリメチレンホスホン酸 20g
デナプシン(細菌プロティナーゼ:蛋白質分解酵素、長瀬産業(株)製) 1g
水を加えて全量を1000mlに調整する。pHは3.0に調整した。
【0054】
上記のようにして得られた網目パターン状銀薄膜が形成された透明導電性材料の表面抵抗率は、(株)ダイアインスツルメンツ製、ロレスタ−GP/ESPプローブを用いて、JIS K 7194に従い測定した。
【0055】
更に上記透明導電性材料をA4サイズに裁断し、0.001モル/LのPdCl2水溶液に20℃10秒浸漬した後、下記めっき液を用いて無電解めっきを行った。銅めっき処理は70℃で10分間とし、なお、めっき液はエアレーションをした。
【0056】
<銅めっき液>
硫酸銅5水和物 10g
EDTA・2Na 40g
ホルマリン(37%) 3ml
水酸化ナトリウム 9g
ビピリジル 0.01g
ポリエチレングリコール 0.01g
全量を水で1000ml
pH=12.2に調整する。
【0057】
こうして得られた導電性材料の導電性も測定し、めっき前後の導電性値を表1にまとめた。
【0058】
【表1】

【0059】
表1から明らかなように酵素処理した導電性材料の低効率は低く、またさらにめっき処理することでさらにその差は広がり、酵素処理したものの低効率は更に低くなる事が判る。
【実施例2】
【0060】
実施例1のハロゲン化銀乳剤層の下記のものを使用する以外は実施例1と同様に行い、表2のような結果を得た。
【0061】
<ハロゲン化銀乳剤層組成/1m2あたり>
ゼラチン 1.0g
カルボキシルメチルセルロース 0.1g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
グリオキサール(40%水溶液) 50mg
【0062】
【表2】

【0063】
表2からハロゲン化銀乳剤層の銀/ゼラチン比率を高くするよりも、酵素処理する方が効果が大きいことが判る。
【実施例3】
【0064】
実施例1のハロゲン化銀乳剤層の代わりに下記組成にてハロゲン化銀乳剤を塗布し、酵素処理液Cにて酵素処理する以外は実施例1と同様に行った結果、表3のような結果を得た。
【0065】
<ハロゲン化銀乳剤層組成/1m2あたり>
ゼラチン 1.0g
カルボキシルメチルセルロース 2.0g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3.0mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0066】
<酵素処理液処方C>
乳酸 20g
水酸化ナトリウム 10g
アミノトリメチレンホスホン酸 20g
セルラーゼA「アマノ」3(セルロース分解酵素 天野エンザイム(株)製) 1g
水を加えて全量を1000mlに調整する。pHは4.5に調整した。
【0067】
【表3】

【0068】
表3から明らかなように、酵素処理を行う事で表面抵抗率を下げることができることが判る。
【実施例4】
【0069】
実施例1の酵素処理を定着処理の後ではなく、停止処理の後(定着処理の前)に行い、かつ酵素処理の条件を40℃10秒とする以外は実施例1と同様に行った。その結果、実施例1と同様の結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を含有する導電性材料前駆体を用いて製造する導電性材料の製造方法において、該導電性材料前駆体を酵素含有処理液で処理することを特徴とする導電性材料の製造方法。
【請求項2】
支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を含有する導電性材料前駆体を用いて製造する導電性材料の製造方法において、該導電性材料前駆体を酵素含有処理液で処理し、その後めっき処理することを特徴とする導電性材料の製造方法。

【公開番号】特開2007−12404(P2007−12404A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191018(P2005−191018)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】