説明

導電性材料前駆体および導電性材料

【課題】製造時には剛度が高く、完成時には剛度を低くすることで、また皺、折れなどの工程上のトラブルを発生させることなく、かつ導電性材料前駆体から少なくとも金属部と易接着層を有する導電性材料を剥離する際に均一にかつ容易に剥離できる導電性材料前駆体を提供することにある。また曲面上に微細な金属部を形成することが可能な導電性材料を提供することにある。
【解決手段】支持体上に、質量平均分子量が15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物を含有する活性エネルギー線密着力低下型樹脂層、易接着層、金属部を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブルプリント基板用回路材、携帯電話などの各種アンテナ材などの製造に用いるための導電性材料前駆体、特に曲面形状を持つ基材上に電気回路やアンテナ等を形成するために好ましく用いられる導電性材料前駆体、およびこれを用いて製造された導電性材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用アンテナや携帯電話のアンテナなど、曲面を有する成型品の上にアンテナなどの金属部を形成することが要求されている。しかしながら、曲面の上に微細な金属部を形成することは非常に困難である。
【0003】
可撓性を有する樹脂支持体の上に金属部からなるパターンを形成して可撓性を有する導電性材料を製造する方法としては、サブトラクト法や印刷法、写真法など様々な方法が提案されている。この可撓性を有する導電性材料を曲面に貼り合わせることで、曲面の上に金属部を形成することは可能である。曲面に導電性材料を貼り合わせる場合には導電性材料は柔らかいほど貼り合わせ時の浮きなどが発生しにくいので好ましい。一方で、導電性材料を製造する段階では剛度が高いほうが製造時に皺などが発生しにくくなる。従って、導電性材料前駆体を製造する段階では剛度は高く、貼り合わせる時点で剛度が低い導電性材料が得られる導電性材料前駆体が求められている。
【0004】
例えば特開2003−78324号公報(特許文献1)では剛度のある金属箔にキャリアフィルムを貼り合わせ、続いてハーフカット加工をし、パターニングされた金属部をキャリアフィルムごとはがすことでパターンを形成している。しかしながらこの方法では、例えばループアンテナなどの複雑なパターンでは剥離できない部分が発生してしまう。また、特許文献1の図3にあるような剥離法を用いる場合、剥離時に金属箔が切断してしまうおそれもあり、これを防ぐためには金属箔の厚みを厚くする必要があるが、曲面加工が困難になってしまうという問題も抱えている。
【0005】
曲面の加工ではないが、例えば特開2006−15662号公報(特許文献2)、特表2009−520251号公報(特許文献3)などで、支持体上に金属箔を貼り合わせ、この金属箔を公知の方法でエッチングすることにより、パターニングした後、被転写体に転写する方法も提案されている。しかしながら、転写法においてはパターニングの前に支持体と金属箔を貼り合わせるが、この時の貼り合わせする時の糊の強度が強過ぎると金属箔を剥離する際に、剥離できない部分ができたり、あるいは強度が弱過ぎると転写までの工程で金属箔が剥離してしまうなどの問題が発生するため、糊の接着強度の調整が困難であるという問題も存在する。また剥離するパターンの形状や大きさによって、剥離のし易さが異なるため、パターンの絵柄によってはうまく転写できない場合もあった。
【0006】
特開2004−82711号公報(特許文献4)、特開2008−260227号公報(特許文献5)などでは支持体と金属箔を貼り合わせるのに活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤を用いている。活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤を用いる場合、転写直前に活性エネルギー線を照射することで糊の粘着力がなくなるため、糊の強度の調整は容易である。しかしながら金属部をパターニングする際に粘着剤層が表面に来るため、粘着剤が工程を汚したり、あるいは粘着剤により転写体がロールに巻きついたりするなどして破壊されてしてしまう場合もあった。さらには転写する際には金属部を被着体に接着剤などを用いて剥離するのであるが、この際に硬化された活性エネルギー線粘着力消失型粘着剤も一緒に接着されるため、うまく剥離できない場合もあった。
【0007】
特開2006−111889号公報(特許文献6)では銀塩写真転写法を用いて作成した金属メッシュを酵素処理により剥離して用いる方法が提案されている。あるいは特開2002−275661号公報(特許文献7)でも金属メッシュ単体を製造する方法が提案されている。これらの方法では基材からパターンを剥離するために、パターンを作成するまでの問題は存在せず、また微細なパターンも容易に作成できる。しかしながら、メッシュのようにパターンがつながっているものでは良いが、アレーアンテナなど剥離した時点でばらばらになってしまうので、アレーアンテナなどの加工に対する問題の解決策とはならない。
【0008】
特開2010−126633号公報(特許文献8)などのようにインサート成型法において転写フィルムを用い、転写フィルムにハードコート層を設け、インサート成型後にハードコート層を光硬化させた後に転写フィルムから剥離する方法が知られている。しかしながら、ハードコート層に金属部を強固に密着させ、また剥離の際に金属部が剥がれたり、あるいは変形したりしなくなるような知見はこれまでなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−78324号公報
【特許文献2】特開2006−15662号公報
【特許文献3】特表2009−520251号公報
【特許文献4】特開2004−82711号公報
【特許文献5】特開2008−260227号公報
【特許文献6】特開2006−111889号公報
【特許文献7】特開2002−275661号公報
【特許文献8】特開2010−126633号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、製造時には剛度が高く、完成時には剛度を低くすることで、また皺、折れなどの工程上のトラブルを発生させることなく、かつ導電性材料前駆体から少なくとも金属部と易接着層を有する導電性材料を剥離する際に均一にかつ容易に剥離できる導電性材料前駆体を提供することにある。また曲面上に微細な金属部を形成することが可能な導電性材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は以下の発明により達成された。
(1)支持体上に、質量平均分子量が15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物を含有する活性エネルギー線密着力低下型樹脂層、易接着層、金属部を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体。
(2)前記導電性材料前駆体に活性エネルギー線を照射し、該導電性材料前駆体の支持体と、少なくとも易接着層および金属部を含んでなる導電性材料を剥離することにより製造された導電性材料。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、皺、折れなどの工程上のトラブルを発生させることなく、かつ導電性材料前駆体から少なくとも金属部と易接着層を有する導電性材料を剥離する際に均一にかつ容易に剥離できる導電性材料前駆体を提供することができる。また曲面上に微細な金属部を形成することが可能な導電性材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<導電性材料前駆体>
本発明の導電性材料前駆体は支持体上に、質量平均分子量が15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物を含有する活性エネルギー線密着力低下型樹脂層、易接着層、金属部を少なくともこの順に有する。本発明の導電性材料前駆体に用いる支持体は活性エネルギー線を透過するような素材であれば特に制限はないが、特に全光線透過率が50%以上である樹脂支持体が好ましく、さらに全光線透過率が80%以上であることが好ましい。かかる支持体としては例えばポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル樹脂、ジアセテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、ポリフッ化ビニリデン、セロハン、セルロイド等の樹脂フィルムが挙げられる。これら支持体の中でも剛度があり、ハンドリングし易く、また良好な剥離性が得られるポリエステル樹脂が好ましい。また、導電性材料を剥離し易いように、離型層を支持体と活性エネルギー線密着力低下型樹脂層との間に設けることも可能である。本発明において離型層としては、パラフィン、カルナバ、ポリエチレン等のワックス類、アクリル系、メラミン系、エポキシ系、脂肪族エステル系、オレフィン系、シリコン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂類が単独・または複合で使用され、界面活性剤等を含有しても良い。また支持体の反対面に帯電防止層等の公知の機能層を設けることも可能である。
【0014】
本発明で用いる導電性材料前駆体の活性エネルギー線密着力低下型樹脂層は、質量平均分子量が15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物を含有する。かかる活性エネルギー線硬化性高分子化合物は(1)水酸基、カルボキシル基、アミノ基、メルカプト基、アミド基などの活性水素を有する分子量15000以上の高分子化合物、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールやポリビニルホルマールなどの各種ポリビニルアセタール樹脂、ポリアリルアミン、あるいはアクリル酸、アクリル酸アルキル等のアクリル酸エステル類、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリル酸、メタクリル酸アルキル等のメタクリル酸エステル類、メタクリルアミドおよびメタクリロニトリル等のいずれかのモノマーの単独重合体またはこれらのモノマー2種以上の重合により得られる共重合体などのアクリルポリマーに、エポキシ基含有重合性不飽和化合物、例えばアリルグリシジルエーテルなどや、イソシアネート基含有重合性不飽和化合物、例えばメタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどの活性水素と反応しうる基と不飽和二重結合を有する化合物を作用させ、付加反応させる方法により得られた高分子化合物や、(2)国際公開第2005/87831号パンフレットに記載されているようなエポキシ基含有アクリル重合体に不飽和カルボン酸を付加反応させる方法などの公知の方法により合成して得られた高分子化合物が挙げられる。これら活性エネルギー線硬化性高分子化合物の中でも、アクリル重合体に不飽和化合物を付加反応させた高分子が良好な剥離性を得られる点で好ましい。これらの手法で合成した質量平均分子量15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物は単独でもまた複数種類混合して用いても良い。
【0015】
質量平均分子量が15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物としては市販品を使用することも可能である。市販品としては、日立化成工業(株)のヒタロイド7975(平均分子量50000)が好ましく用いることができる。
【0016】
本発明の活性エネルギー線密着力低下型樹脂層は光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤としては、一般に知られているものが使用できる。具体的には、ベンゾイン、ベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド等が挙げられるがこの限りではない。これら光重合開始剤は単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、光重合開始剤は質量平均分子量15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物に対し0.1〜20質量%含有されることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。
【0017】
光重合開始剤に加えて、必要に応じて少なくとも1種類以上の光増感剤を添加し、硬化時間や硬化状態を制御することができる。光増感剤はアミン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、ベンゾイン化合物、カルボニル化合物、イオウ化合物、ナフタレン系化合物、縮合芳香族炭化水素、金属塩およびそれらの混合物から選択することができる。具体例としては、トリエチルアミン、ジエチルアミノエチルメタクリレート、N−メチルジエタノールアミン等のアミン化合物、アシルフォスフィンオキサイド、トリブチルホスフィンなどのリン化合物、5−ニトロアセナフテンなどのニトリル化合物、4−ジメチルアミノエチルベンゾエート、4−ジメチルアミノイソアミルベンゾエート、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインオクチルエーテル等のベンゾイン化合物、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、4′−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、メチルアントラキノン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンゾイルギ酸メチル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ)−プロペン−1、2,2 −ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等のカルボニル化合物、ジフェニルジスルフィド、ジチオカルバメート等のイオウ化合物、α−クロルメチルナフタレン等のナフタレン系化合物、アントラセン等の縮合芳香族炭化水素、塩化鉄等の金属塩を挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いても良い。その含有量は質量平均分子量15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物に対し0.1〜5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%である。
【0018】
本発明で用いる導電性材料前駆体の活性エネルギー線密着力低下型樹脂層は分子量15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物以外にも、不飽和二重結合を有さない高分子化合物を併せて用い、活性エネルギー線密着力低下型樹脂層の強度、柔軟性を高め、剥離工程にて導電性材料の破れや折れが発生しないようにすることが好ましい。不飽和二重結合を有さない高分子化合物としては例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラールやポリビニルホルマールなどの各種ポリビニルアセタール樹脂、前述のアクリルポリマー、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロオロエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルピロリドン、ポリウレタンなどが挙げられる。またこれらの不飽和二重結合を有さない高分子化合物を複数種類用いることも可能である。本発明では密着力の調整のしやすいポリビニルアセタール樹脂を用いることが好ましく、さらに好ましくはTg60℃以上、より好ましくはTg80℃以上のポリビニルアセタール樹脂を用いる。
【0019】
本発明で用いる導電性材料前駆体の活性エネルギー線密着力低下型樹脂層には樹脂成分として少なくとも0.2g/m以上含有することが好ましく、より好ましくは0.5〜20g/m、さらに好ましくは2〜15g/mを含有する。さらに樹脂成分中における分子量15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物は5〜100質量%含有することが好ましく、より好ましくは60〜98質量%である。
【0020】
本発明で用いる導電性材料前駆体の活性エネルギー線密着力低下型樹脂層には樹脂成分以外に架橋剤を含有することも可能である。特に分子量15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物以外の高分子化合物を含有する場合には、架橋剤により架橋されていることが好ましい。架橋剤としてはアルデヒド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、カルボジイミド化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物、活性ハロゲン化合物、少なくとも二個のビニルスルホニル基を有する化合物等、公知の架橋剤を用いることができる。架橋剤の添加量は活性エネルギー線密着力低下型樹脂層の全樹脂成分量に対して0.1〜10質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。またアクリルモノマーやアクリルオリゴマーなどの分子量15000以下の不飽和二重結合を有する化合物も含有させることもできるが、その量は全樹脂の5質量%以下とすることがブロッキング等を発生させずに済むため好ましい。
【0021】
本発明で用いる導電性材料前駆体の活性エネルギー線密着力低下型樹脂層には樹脂成分、光重合開始剤、架橋剤以外にも帯電防止剤、界面活性剤、マット剤、フィラー、滑剤、紫外線吸収剤などを含有させることができる。
【0022】
<易接着層>
本発明で用いる導電性材料前駆体は活性エネルギー線密着力低下型樹脂層の上に易接着層を有する。易接着層はその上に設ける金属部の製造方法によって好ましい形態は変わるが、易接着層を設ける際に、活性エネルギー線密着力低下型樹脂層を溶解させないように水系の塗液で塗布することが好ましい。
【0023】
後述するが、本発明において導電性材料前駆体の金属部を設ける方法として、最も好ましい方法は銀塩拡散転写法を用いる方法である。この方法で用いる好ましい易接着層について、先ず説明する。なお、この易接着層は銀塩拡散転写法以外にもスクリーン印刷法を用いて銀ペーストなどの導電性インキを印刷する方法、無電解めっき等で銅などの金属からなる導電性層を形成する方法、あるいは易接着層の上に蒸着やスパッタなどで導電性層を形成し、その上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法などの方法でも好ましく用いることができる。
【0024】
易接着層としては、各種高分子ラテックスを含有することが好ましい。中でも耐候性の観点からポリエステルラテックス、アクリルラテックス、およびウレタンラテックスの水分散物を含有することが好ましく、さらに各種材料との接着性の観点からウレタンラテックス、特に耐候性の高い無黄変型ウレタンポリカーボネートラテックスが好ましい。これら高分子ラテックスの平均粒子径は0.01〜0.3μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.1μmである。また、これら高分子ラテックスは複数種類のラテックスを混合して用いることも可能であるが、ポリエステルラテックスやアクリルラテックスやウレタンラテックスは易接着層中の樹脂成分の30質量%以上含有することが好ましく、より好ましくは50質量%以上である。
【0025】
また易接着層はさらに水溶性高分子化合物を含有し、架橋剤で架橋された易接着層であることが好ましい。かかる水溶性高分子化合物としては、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸とスチレンの共重合体等が挙げられ、またゼラチン、アルブミン、カゼイン、ポリリジン等の蛋白質、カラギーナン、ヒアルロン酸などムコ多糖類、「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)2.6.4章記載のアミノ化セルロース、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリジアリルアミン、アリルアミンとジアリルアミンの共重合体、ジアリルアミンと無水マレイン酸との共重合体、ジアリルアミンと二酸化硫黄との共重合体などが挙げられる。これら水溶性高分子化合物の中でも蛋白質を用いることが好ましい。水溶性高分子化合物は易接着層中の樹脂成分の60質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2〜40質量%である。また易接着層に用いる樹脂成分量は100mg/m以上であることが剥離する際に故障が発生しないことから好ましく、上限は2500mg/mであることが好ましい。より好ましくは200〜2000mg/m、さらに好ましくは300〜1000mg/mである。
【0026】
架橋剤としては、例えばクロム明ばんのような無機化合物、ホルムアルデヒド、グリオキザール、マレアルデヒド、グルタルアルデヒドのようなアルデヒド類、尿素やエチレン尿素等のN−メチロール化合物、ムコクロル酸、2,3−ジヒドロキシ−1,4−ジオキサンのようなアルデヒド等価体、2,4−ジクロロ−6−ヒドロキシ−s−トリアジン塩や、2,4−ジヒドロキシ−6−クロロ−トリアジン塩のような活性ハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、ジビニルケトンやN,N,N−トリアクリロイルヘキサヒドロトリアジン、活性な三員環であるエチレンイミノ基を二個以上有する化合物、エポキシ基を分子中に二個以上有する化合物類、例えば、ソルビトールポリグリシジルエーテルやポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルなど、あるいはこれら以外に「高分子の化学反応」(大河原 信著 1972、化学同人社)の2・6・7章、5・2章、9・3章など記載の架橋剤等の公知の高分子架橋剤を含有させることもできる。中でもエポキシ基を分子中に二個以上有する水溶性架橋剤、あるいはビニルスルホン系架橋剤が好ましい。ビニルスルホン系架橋剤とは分子中に少なくとも二個のビニルスルホニル基を有する化合物のことをいい、下記一般式Iもしくは下記一般式IIで示される化合物のことをいう。
【0027】
【化1】

【0028】
式中L、Lはそれぞれ存在してもしなくても良い2価の連結基を示す。存在する場合、好ましくは、炭素数1〜5の置換されていても良いアルキレン基、アリーレン基、カルバモイル基、スルファモイル基、酸素、硫黄、イミノ基等を示し、これらは組み合わさっていても良い。Rは水素原子、炭素数1〜5の置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いベンゼン、ナフタレン等のアリール基を示し、中でも水素原子が好ましい。
【0029】
【化2】

【0030】
式中、Lは少なくとも一個の水酸基を有するm価の基であり、mは2〜4である。一般式IIにおいて、Lとしては、2〜4価の炭素数1〜10の非環状炭化水素基、窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子を含有する5または6員の複素環基、5または6員の環状炭化水素基、または炭素数7〜10のシクロアルキレン基が挙げられる。非環状炭化水素基としては、好ましくは1〜8の炭素数を有するアルキレン基である。Lで表されるそれぞれの基は、置換基を有していても良く、または、ヘテロ原子(例えば窒素原子、酸素原子および/または硫黄原子)、カルボニル基またはカルバミド基を介し相互に結合しても良い。Lは、例えば、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜4を有する1種以上のアルキコキシ基、また塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子、アセトキシ基等で置換されていても良い。
【0031】
上記一般式Iの化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0032】
【化3】

【0033】
上記一般式IIの化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
【0034】
【化4】

【0035】
易接着層における架橋剤の添加量は易接着層中の全樹脂成分量に対して1〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは3〜15質量%である。
【0036】
さらに易接着層にはシリカなどのマット剤、滑剤、顔料、染料、界面活性剤、紫外線吸収剤等を含有させることができる。
【0037】
本発明において導電性材料前駆体の金属部を設ける方法として、最も好ましい方法として銀塩拡散転写法を用いる場合、易接着層中に物理現像核を含有させることが好ましい。物理現像核は易接着層塗液に含有させることにより、易接着中に均一に分布させても良いし、易接着層塗設後に再度塗布することによりその表面に分布させても良い。
【0038】
本発明において用いる物理現像核としては、重金属あるいはその硫化物からなる微粒子(粒子サイズは1〜数十nm程度)が用いられる。例えば、金、銀等の金属コロイド、パラジウム、亜鉛等の水溶性塩と硫化物を混合した金属流化物等が挙げられる。易接着層における物理現像核の含有量は、固形分で0.1〜10mg/m程度が適当である。
【0039】
<多孔質易接着層>
本発明において導電性材料前駆体の金属部を設ける方法として、銀ナノインクなどの導電性インクをインクジェット法で印刷する方法も用いることができる。この方法での好ましい易接着層は微粒子と樹脂バインダーからなる多孔質易接着層であることが好ましい。また、微粒子と樹脂バインダーからなる多孔質易接着層とその上に樹脂を主成分とする定着易接着層の二層からなる易接着層を有することも可能である。
【0040】
本発明における多孔質易接着層とは、微粒子と微粒子に対し80質量%以下の樹脂バインダーを含有する層である。用いられる微粒子としては、公知の微粒子を広く用いることができる。例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、サチンホワイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、アルミナ水和物、リトポン、ゼオライト、加水ハロイサイト、水酸化マグネシウム等の無機微粒子、アクリルあるいはメタクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、スチレン/ブタジエン系樹脂、スチレン/イソプレン系樹脂、メチルメタクリレート/ブチルメタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、シリコーン系樹脂、尿素樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂等の少なくとも1種以上の樹脂からなる真球状あるいは不定型の無孔質あるいは多孔質の有機微粒子等を挙げることができる。無論、上記した無機微粒子の1種以上と有機微粒子の1種以上を混合して用いることもできる。上記の中でも、吸収性の観点からは無機微粒子を用いることが好ましく、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物がより好ましく、非晶質合成シリカ、アルミナ、アルミナ水和物が特に好ましく、さらにはアルミナ水和物を用いることが特に好ましい。これら無機微粒子の平均一次粒子径は50nm以下が好ましく、さらに好ましくは3〜40nmであり、無機微粒子の平均二次粒子径は500nm以下であることが好ましく、より好ましくは20〜300nmである。アルミナとしては、酸化アルミニウムのγ型結晶であるγ−アルミナが好ましく、中でもδグループ結晶が好ましい。なお、ここで本発明でいう平均一次粒子径とは、微粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の一次粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子径として平均粒子径を求めたものである。また平均二次粒子径とは、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、堀場製作所製、LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。これら微粒子の含有量は0.5〜20g/mであることが好ましく、より好ましくは2〜15g/mである。
【0041】
多孔質易接着層を構成する微粒子とともに用いられる樹脂バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、シリル変性ポリビニルアルコールなどの各種変性ポリビニルアルコール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体が挙げられ、さらにカゼイン、ゼラチン、大豆蛋白などの蛋白質、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス、あるいはこれらの各種重合体のカルボキシル基などの官能基含有単量体による官能基変性重合体ラテックス、メラミン樹脂、尿素樹脂などの熱硬化合成樹脂系などの水性接着剤、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニルコポリマー、ポリビニルブチラール、アルキッド樹脂などの合成樹脂系接着剤等を挙げることができ、これらを単独あるいは混合して用いることができる。この他、公知の天然、あるいは合成樹脂バインダーを単独であるいは混合して用いることは特に限定されない。
【0042】
微粒子に対する樹脂バインダーの含有量は、微粒子に対して80質量%以下、さらには3〜80質量%の範囲が好ましく、より好ましくは5〜60質量%の範囲であり、特に好ましくは10〜40質量%の範囲である。樹脂バインダーの塗布量は剥離し易いように100mg/m以上であることが好ましく、より好ましくは200〜2000mg/m、さらに好ましくは500〜1500mg/mである。
【0043】
本発明における、多孔質易接着層は、上記樹脂バインダーとともに必要に応じ硬膜剤を用いることもできる。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル)尿素、2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5−トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、ホウ砂、ホウ酸、ホウ酸塩類の如き無機架橋剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。硬膜剤の使用量は特に限定されないが、樹脂バインダーに対して、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは1〜30質量%である。
【0044】
<定着易接着層>
定着易接着層は、その65質量%以上が樹脂であり、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上である。樹脂には、各種水溶性高分子化合物、各種有機溶剤可溶性樹脂、各種高分子ラテックス等、塗布により被膜を形成することが可能な樹脂を広く用いることができる。樹脂を主成分とする層は緻密な被膜として多孔質層上に形成されていても良く、微細な孔を無数に有していても良い。
【0045】
定着易接着層に用いる水溶性高分子化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、プロピルセルロース等の水溶性セルロース類、膠、酸処理ゼラチン、アルカリ処理ゼラチン、フタル化ゼラチン等のゼラチン類、ポリビニルアルコール、シラノール変成ポリビニルアルコール、ジアセトンアクリルアミド変成ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール類、カラギーナン、アラビアガム等の多糖類等を広く用いることができる。使用する水溶性高分子化合物は1種類であっても良いし、2種以上混合して用いても良い。水溶性高分子化合物の分子量は15000以上であることが好ましく、より好ましくは50000以上である。水溶性高分子化合物を用いる場合には、金属超微粒子を含むインクあるいはペーストに水が含まれていることが好ましい。
【0046】
定着易接着層に用いる高分子ラテックスとしてはアクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、エチレン−酢酸ビニル−アクリル等の多元樹脂、SBR、NBR、MBR、カルボキシル化SBR、カルボキシル化NBR、カルボキシル化MBR、ビニルピリジン樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ウレタン樹脂、メタクリル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、エポキシ樹脂等、従来公知の樹脂が分散されたエマルジョンの中から広く選ぶことができる。
【0047】
定着易接着層に用いる有機溶剤可溶性樹脂としては、前述したエマルジョンが含有する樹脂を広く用いることができる。また、ポリエステル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ナイロン樹脂等を用いることもできる。有機溶剤としては、エタノール、酢酸エチル、メチルエチルケトン、トルエン等、使用する樹脂を溶解可能な溶剤を広く用いることができる。使用する有機溶剤可溶性樹脂は1種類であっても良いし、2種以上混合して用いても良い。有機溶剤可溶性樹脂の分子量は15000以上であることが好ましい。
【0048】
このように定着易接着層には様々な種類の樹脂を使用することができるが、水溶性高分子化合物あるいは高分子ラテックスが使用の簡便さから好ましく、密着性の観点から水溶性高分子化合物としてはポリビニルアルコール類、ゼラチン類、多糖類がより好ましく、高分子ラテックスとしては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、酢酸ビニル−アクリル樹脂、エチレン−塩化ビニル樹脂のようにモノマー単位としてアクリル基やビニル基を有する樹脂、ウレタン結合を有するウレタン樹脂がより好ましい。
【0049】
これら水溶性高分子化合物、高分子ラテックス、有機溶剤可溶性樹脂は、水、有機溶剤、必要に応じレベリング剤、界面活性剤等を添加し、樹脂を主成分とする層の形成用塗液として調整される。
【0050】
定着易接着層の固形分塗布量としては、0.01〜5g/mが好ましく、0.05〜1g/mがより好ましい。0.01g/m未満では金属部の密着性が不十分となる場合があり、5g/mを超えると、多孔質易接着層の機能を妨げる場合がある。
【0051】
本発明において導電性材料前駆体の金属部を設ける方法として、銅箔などの金属箔を貼り、さらにその上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法を用いる場合、公知のエポキシ接着剤、ウレタン接着剤、紫外線硬化型接着剤、EVAやアクリルなどのホットメルト接着剤を易接着層として用いることができる。
【0052】
本発明において導電性材料前駆体に金属部を形成させる方法としては、銀塩感光材料を用いる方法、同方法を用いさらに得られた銀画像に無電解めっきや電解めっきを施す方法、スクリーン印刷法を用いて銀ペーストなどの導電性インキを印刷する方法、銀インクなどの導電性インクをインクジェット法で印刷する方法、無電解めっき等で銅などの金属からなる導電性層を形成する方法、あるいは易接着層の上に蒸着やスパッタなどで導電性層を形成し、その上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法、銅箔などの金属箔を貼り、さらにその上にレジスト膜を形成し、露光、現像、エッチング、レジスト層除去することで得る方法など、公知の方法を用いることができる。中でも製造される金属部の厚みが薄くでき、さらに極微細な金属部も容易に形成できる銀塩拡散転写法を用いることが好ましい。かかる銀塩拡散転写法を用いる金属部の作製方法としては例えば特開2003−77350号公報で提案されている方法などを用いることができる。
【0053】
<活性エネルギー線照射工程>
本発明において導電性材料は、導電性材料前駆体に活性エネルギー線を照射し、活性エネルギー線密着力低下型樹脂層を架橋させ、支持体と活性エネルギー線密着力低下型樹脂層との密着力を低下させ、支持体から、少なくとも易接着層および金属部を含んでなる導電性材料を剥離することにより製造される。活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線(UV)および電子線(EB)を用いることができるが、安全性の観点から可視光もしくは紫外線を用いることが好ましい。可視光線または紫外線が用いられる時は、光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン水銀灯、キセノンランプ、ガリウムランプ、メタルハライドランプ、石英ハロゲンランプ、タングステンランプ、紫外線蛍光灯、炭素アーク灯、無電極マイクロウエーブ方式紫外線ランプ等が好ましく用いられる。活性エネルギー線の照射は金属部が邪魔にならないよう導電性材料前駆体の支持体側から照射することが好ましい。好ましい照射光量は光重合開始剤、増感剤等によって異なるが、50〜5000mJ/cmである。また、活性エネルギー線照射後の剥離工程での剥離が容易になるよう、導電性材料前駆体の表面温度が100℃以上にならないよう、好ましくは60℃以上にならないように露光することが好ましい。
【0054】
前述の通り本発明における活性エネルギー線照射工程により、導電性材料前駆体から金属部と易接着層を含む導電性材料を剥離する際の密着力が変化する。本発明においては180°剥離法で活性エネルギー線照射後の密着力が0.3N/25mm以下とすることが好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.1N/25mmである。また、活性エネルギー線照射前では密着力が0.5N/25mm以上が好ましく、さらに好ましくは1N/25mm以上である。
【0055】
<剥離工程>
本発明は活性エネルギー線を照射した導電性材料前駆体から易接着層および金属部を含んでなる導電性材料を剥離する。これにより、本発明の目的の一つである、製造時には剛度が高く、完成時には剛度が剥離した支持体の分だけ低くなる導電性材料を作製することができる。
【0056】
本発明の導電性材料は前述の通り、支持体から剥離され、剛度がその分だけ低下する。このため、剥離する際にカールしたりする場合もあり、ハンドリングしにくくなる場合もある。これを防ぐため、剥離の前に導電性材料前駆体の金属部側にプロテクトフィルムを貼り合わせ、プロテクトフィルムごと導電性材料を剥離することも好ましい態様である。プロテクトフィルムとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどからなる剛度の低い支持体の上にエチレン−酢酸ビニルコポリマー層やアクリル粘着剤層が設けられた市販のものを用いることができるが、導電性材料前駆体に貼合した際の密着力が、導電性材料前駆体から金属部と易接着層を含む導電性材料を剥離する際の密着力よりも強くなければならない。一方で、密着力が強過ぎると、導電性材料からプロテクトフィルムを剥離することが困難になる。よって、好ましいプロテクトフィルムの密着力は活性エネルギー線密着力低下型樹脂層により変化するが、好ましくは0.001〜0.5N/25mmの密着力となるものを選択することが好ましい。これら好ましいプロテクトフィルムの市販品の例としては東洋紡績製のパイレンDC042、スミロン製E2035、E203、EC625、積水化学工業製622AX、622Fなどが挙げられる。プロテクトフィルムの厚みは30〜50μmのものが好ましい。プロテクトフィルムを導電性材料前駆体に貼合するには常温ラミネートや加温ラミネートなど公知のラミネート法を用いることができる。特に金属部と易接着層などの樹脂部分における熱膨張の影響が出ないように60℃以下、好ましくは常温にてラミネートする。
【0057】
上記プロテクトフィルムを貼合している場合、導電性材料を支持体から剥離するのはプロテクトフィルムを剥離するのみで容易にできる。剥離は枚葉ですることも可能であり、またロールトウロール方式で剥離したプロテクトフィルム並びに導電性材料を巻き取りながら剥離しても良い。剥離したプロテクトフィルム並びに導電性材料からプロテクトフィルムを再剥離するのは、例えば導電性材料を被着体に接着剤などを使用して、接着した後に剥離するなどしても良いし、あるいは導電性材料から直接剥離することも可能である。
【実施例】
【0058】
本発明の実施例を以下に示す。なお、記載中百分率は特に断りのない限り、質量基準である。
【0059】
(実施例1)
「導電性材料前駆体1の作製」
支持体として帝人デュポン製片面易接着処理テトロンHLY(厚み100μmPET。全光線透過率91%)の未処理面に下記処方の活性エネルギー線密着力低下型樹脂層塗液1を作製、塗布し、70℃で5分乾燥した。
【0060】
<活性エネルギー線密着力低下型樹脂層塗液1/1mあたり>
ヒタロイド7975(日立化成工業製アクリルアクリレート樹脂溶液。平均分子量50000。固形分量として) 7.9g
イルガキュア819(チバガイギー製光重合開始剤) 0.29g
エスレックKS1(積水化学工業製ポリビニルアセタール。平均分子量27000。Tg=107℃) 0.8g
デナコールEX512(ナガセケムテックス製エポキシ架橋剤) 0.1g
【0061】
続いて、硫化パラジウムゾル液を下記のようにして作製した。
【0062】
<硫化パラジウムゾルの調製>
A液 塩化パラジウム 5g
塩酸 40mL
蒸留水 1000mL
B液 硫化ソーダ 8.6g
蒸留水 1000mL
A液とB液を撹拌しながら混合し、30分後にイオン交換樹脂の充填されたカラムに通し硫化パラジウムゾルを得た。
【0063】
続いて、下記処方に従い、易接着層塗液1を作製し、活性エネルギー線密着力低下型樹脂層の上に塗布し、50℃で10分乾燥させた。乾燥後には50℃24時間加温処理した。
【0064】
<易接着層塗液1処方/1mあたり>
ハイドランWLS210(DIC製ポリカーボネート系ウレタンラテックス。平均粒径0.05μm。固形分として) 300mg
ゼラチン 50mg
ノニオンOT221(日油製ノニオン界面活性剤) 1mg
EX313(ナガセケムテックス製エポキシ硬化剤) 9mg
ハイミクロンL271(中京油脂製滑剤) 4mg
前記硫化パラジウムゾル(硫化パラジウムとして) 0.4mg
【0065】
得られた易接着層の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック製)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
【0066】
続いて、支持体に近いほうから順に下記組成の中間層1、ハロゲン化銀乳剤層1、および最外層1をこの順に上記易接着層の上に塗布した。また支持体の反対面に裏塗り層1を塗布した。ハロゲン化銀乳剤は、写真用ハロゲン化銀乳剤の一般的なダブルジェット混合法で製造した。このハロゲン化銀乳剤は、塩化銀95モル%と臭化銀5モル%で、平均粒径が0.15μmになるように調製した。このようにして得られたハロゲン化銀乳剤を定法に従いチオ硫酸ナトリウムと塩化金酸とを用い金イオウ増感を施した。こうして得られたハロゲン化銀乳剤は銀1gあたり0.5gのゼラチンを含む。
【0067】
<中間層1組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
界面活性剤(S−1) 5mg
【0068】
<ハロゲン化銀乳剤層1組成/1mあたり>
ゼラチン 0.5g
ハロゲン化銀乳剤 3.0g銀相当
1−フェニル−5−メルカプトテトラゾール 3mg
界面活性剤(S−1) 20mg
【0069】
<最外層1組成/1mあたり>
ゼラチン 1g
不定形シリカマット剤(平均粒径3.5μm) 10mg
界面活性剤(S−1) 10mg
【0070】
<裏塗り層1組成/1mあたり>
ゼラチン 2g
不定形シリカマット剤(平均粒径5μm) 20mg
染料1 200mg
界面活性剤(S−1) 400mg
【0071】
【化5】

【0072】
続いて、水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介し、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パターン部分と絵柄のない部分を有するポジ透過原稿を密着させて、2mJ/cmの露光量で露光した。
【0073】
その後、下記組成の拡散転写現像液中に15℃で90秒間浸漬した後、続いてハロゲン化銀乳剤層1、中間層1、最外層1および裏塗り層を40℃の温水で水洗除去し、乾燥処理し導電性材料前駆体1を得た。これにより易接着層上に細線幅が20μm、格子間隔250μmの金属部を形成した。金属部の厚みをオプテリクスC120共焦点顕微鏡(レーザーテック製)を用いて測定したところ、0.1μmであった。
【0074】
<拡散転写現像液組成>
水酸化カリウム 25g
ハイドロキノン 18g
1−フェニル−3−ピラゾリドン 2g
亜硫酸カリウム 80g
N−メチルエタノールアミン 15g
臭化カリウム 1.2g
全量を水で1000mL
85質量%リン酸水溶液にてpH=12.2に調整した。
【0075】
得られた導電性材料前駆体1について、活性エネルギー線照射前剥離試験としてクラーク剛度の測定と密着力の測定を実施した。クラーク剛度はJIS−P8143に従い測定した。密着力の測定は導電性材料前駆体1の非金属部にニチバン製車両用マスキングテープNo241を貼合し、25mm幅に切り取り、イマダ IPT200−5Nを用いて180°剥離法で密着力を測定した。また、剥離がどこで発生しているかを目測した。結果を表1に示す。
【0076】
得られた導電性材料前駆体1の支持体面から高圧水銀灯80W/cm(2灯)で照射量200mJ/cmの活性エネルギー線を照射した。続いて、易接着層と金属部を設けた面側にスミロン製EC625プロテクトフィルムを貼合した。
【0077】
活性エネルギー線照射後の導電性材料前駆体1について、密着力の測定を下記の通り実施した。結果を表1に示す。
【0078】
導電性材料前駆体1の非金属部のみ25mm幅で切り取り、活性エネルギー線照射前試験と同様にして180°剥離法でその密着力を測定した。また、剥離の際にどの部位で剥離が発生しているか観察した。
【0079】
前述の活性エネルギー線を照射し、支持体と反対側の金属部面並びに易接着層面にスミロン製EC625プロテクトフィルムを貼合した導電性材料前駆体からプロテクトフィルムと一緒に金属部と易接着層を含む導電性材料を剥離し、導電性材料1を得た。導電性材料1からプロテクトフィルムを剥離し、その厚みをシックネスゲージで測定したところ、金属部の厚みは7.2μm、非金属部の厚みは7.1μmであった。
【0080】
上記のようにして得た導電性材料1のクラーク剛度をJIS−P8143に従い測定した。また、下記の方法による球面接着試験を実施した。結果を表1に示す。
【0081】
<球面接着試験>
導電性材料1を外形300mmのアクリル製球にヘンケルジャパン製ロックタイトU−30FL(ウレタン接着剤)接着剤を用いて貼合し、接着後30分EC625プロテクトフィルムを剥離した。皺、破れなどなく、良好な面が得られたものを○とし、皺や破れの入ったものを×として評価した。
【0082】
(実施例2)
「導電性材料2の作製」
エスレックKS10(積水化学工業製ポリビニルアセタール樹脂。質量平均分子量17000。水酸基25モル%含有)15gをジオキソラン/メチルエチルケトン1:1溶媒85gに溶解し、40℃で撹拌しながらカレンズAOI(昭和電工製2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート)を10g滴下し、40℃で1時間撹拌した。得られた樹脂溶液にエチルセロソルブを加え、固形分濃度10%の変性ポリビニルアセタール樹脂溶液を得た。
【0083】
上記作製した変性ポリビニルアセタール樹脂溶液をヒタロイド7975の代わりに(1mあたりの塗布固形分量を同じにして)用いる以外は導電性材料1と同様にして、導電性材料2を作製し、導電性材料1と同様に評価した。結果を表1に示す。やや活性エネルギー線照射後の密着力が高いことから、剥離性がわずかに低下したが、実施例1と同様の結果が得られた。
【0084】
(比較例1)
「比較導電性材料1」
ヒタロイド7975の代わりにUA340P(新中村化学工業製ウレタンアクリレートオリゴマー。質量平均分子量13000。)を用いる以外(1mあたりの塗布固形分量を同じにして)、実施例1と同様にして比較導電性材料1を作製し、評価しようとした。しかしながら活性エネルギー線を照射し、プロテクトフィルムを貼合して剥離しようとしが、剥離できなかった。また、ニチバン製車両用マスキングテープNo241を紫外線照射後の導電性材料前駆体に貼合し、剥離したが、金属部を含む導電性材料は支持体から剥離できなかった。
【0085】
(比較例2)
「比較導電性材料2」
活性エネルギー線密着力低下型樹脂層を塗布しない以外は実施例1と同様にして比較導電性材料前駆体2を作製し、評価した。なお球面接着試験については活性エネルギー線照射工程とプロテクトフィルムの貼合工程、導電性材料の剥離工程は無しに外形300mmのアクリル製球にヘンケルジャパン製ロックタイトU−30FL(ウレタン接着剤)接着剤を用い、導電性材料の支持体面とアクリル製球とを貼り合わせる形で貼合した。結果を表1に示す。
【0086】
(比較例3)
「比較導電性材料3」
実施例1の易接着層を設ける代わりに下記処方の物理現像核塗液を活性エネルギー線密着力低下型樹脂層に塗布する以外は実施例1と同様にして、比較導電性材料3を作成し、評価しようとした。しかしながら剥離工程において、うまく導電性材料が剥離できず、途中で導電性材料が破れてしまった。評価できた項目については結果を表1に示す。
【0087】
<物理現像核塗液1処方/1mあたり>
ノニオンOT221(日油製ノニオン界面活性剤) 1mg
実施例1で使用した硫化パラジウムゾル(硫化パラジウムとして) 0.4mg
【0088】
(実施例3)
「導電性材料3」
水に硝酸(2.5部)とアルミナ水和物(平均一次粒子径15nm)を添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機を用いて、固形分濃度30質量%の無機微粒子分散液を得た。無機微粒子分散液中に分散しているアルミナ水和物の平均二次粒子径は160nmであった。この無機微粒子分散液を用い、下記組成の多孔質層易接着層塗液2を作製した。
【0089】
<多孔質易接着層塗液2>
無機微粒子分散液 (アルミナ水和物固形分として) 100g
ポリビニルアルコール 12g
(ケン化度88%、平均重合度3500、分子量約150,000)
ホウ酸 0.5g
ノニオン性界面活性剤 0.3g
(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)
固形分濃度が16質量%になるように水で調整した。
【0090】
導電性材料1と同様にして、支持体上に活性エネルギー線密着力低下型樹脂層を塗布し、その上に多孔質易接着層塗液2をアルミナ水和物の固形分として7.5g/mとなるようにスライドビード方式を用いて塗布を行い、乾燥機により乾燥した。支持体上に形成された多孔質層の厚みは約10μmであり、水銀ポロシメーターを用いて測定された空隙容量は5.75ml/mであった。
【0091】
2Lのステンレスビーカーに平均分子量が約30000の焙焼デキストリン(日澱化学製、デキストリンNo.1−A)を54.4gと純水860gを加え、約30分間撹拌した。その後、硝酸銀131.8gを加え、さらに約30分間撹拌し、完全に溶解した。この液に水酸化カリウム60.9gを純水83.9gに溶解した液を添加し、撹拌回転数400rpmの状態で60分間還元反応を実施した。還元反応が終了した銀超微粒子分散液を続いて、酢酸にてpH=5.6に調整した後、ビオザイムF10SD(天野エンザイム製)を200mg添加し45℃で1時間撹拌し、残留しているデキストリンを低分子化し、7質量%の銀超微粒子分散液を得た。次に、得られた銀超微粒子分散液の精製工程として、遠心分離を実施することで、銀超微粒子と上澄み液を綺麗に分離させ、上澄み液を廃棄した。残った銀超微粒子を再分散させ、繰り返し遠心分離を実施し、上澄み液を廃棄した。その後、純水を加えて再分散し、銀濃度が47.2質量%の銀超微粒子分散液1を110g得た。
【0092】
銀超微粒子分散液1を3g取り、活性剤(泰光油脂化学工業製タイポールNLES−227)を0.01g、ポリマーラテックスとして第一工業製薬製スーパーフレックス150HS(ポリウレタンラテックス、平均粒径0.11μm、固形分38質量%)を0.64g、塩化ナトリウム濃度が2質量%の水溶液を1.42g添加し、純水で濃度調整を行い、銀濃度が20質量%、ポリマーラテックス固形分濃度が3.43質量%、水溶性ハロゲン化物質量モル濃度が0.090mol/kgの銀超微粒子含有組成物を得た。
【0093】
前記した多孔質易接着層塗布済み支持体の上に、厚み15μmのドライフィルムレジスト(旭化成製SUNFORTシリーズSPG)をラミネートし、さらに水銀灯を光源とする密着プリンターで400nm以下の光をカットする樹脂フィルターを介さず、細線幅20μmで格子間隔250μmの網目パターンのネガ透過原稿を密着させて、露光量100mJ/cmの露光量で露光し、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液中で揺動させながら40秒間現像した。
【0094】
銀超微粒子含有組成物を、パターニングされたドライフィルムレジストの上からワイヤーバーを用いて、銀の厚みが乾燥後0.2μmとなるよう塗布し、120℃10分乾燥した。その後、40℃の3質量%水酸化ナトリウム水溶液をスプレーで吹き付けることにより、ドライフィルムレジストを剥離、除去し水洗、乾燥させ導電性材料前駆体3を作製した。
【0095】
得られた導電性材料前駆体3について実施例1同様にして導電性材料3を得、これらを実施例1同様にして評価した。結果を表1に示す。また実施例1と同様にしてシックネスゲージで導電性材料3の厚みを測定したところ、金属部で17.2μm、非金属部で17.1μmであった。
【0096】
(実施例4)
「導電性材料4」
実施例1の易接着層処方として、下記易接着層塗液2処方に従って易接着層塗液を作製し、塗布する以外、実施例1と同様にしたところ、実施例1と同様の結果を得た。
【0097】
<易接着層塗液2処方/1mあたり>
ハイドランWLS210(DIC製ポリカーボネート系ウレタンラテックス。平均粒径0.05μm。固形分として) 300mg
ゼラチン 50mg
ノニオンOT221(日油製ノニオン界面活性剤) 1mg
VS−3 10mg
ハイミクロンL271(中京油脂製滑剤) 4mg
実施例1で使用した硫化パラジウムゾル(硫化パラジウムとして) 0.4mg
【0098】
【表1】

【0099】
表1より、質量平均分子量が15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物を含有する活性エネルギー線密着力低下型樹脂層、易接着層、金属部を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体でのみ、剥離時に破れなど発生することなく剥離でき、また球面に対して貼合する際も皺などが入ることなく貼合できることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、質量平均分子量が15000以上の不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性高分子化合物を含有する活性エネルギー線密着力低下型樹脂層、易接着層、金属部を少なくともこの順に有する導電性材料前駆体。
【請求項2】
前記導電性材料前駆体に活性エネルギー線を照射し、該導電性材料前駆体の支持体と、少なくとも易接着層および金属部を含んでなる導電性材料を剥離することにより製造された導電性材料。

【公開番号】特開2012−74174(P2012−74174A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216658(P2010−216658)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】