説明

導電性組成物および帯電防止材

【課題】本発明は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、表面抵抗の電圧依存性が小さい材料を得ることができる導電性組成物を提供する。
【解決手段】導電性ポリマーと、少なくとも一部が前記導電性ポリマーのドーパントになっているα−オレフィンスルホン酸と、ポリオレフィンとを含有する導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性組成物および帯電防止材に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリアニリン等の導電性ポリマーを用いた導電性組成物は、金属材料と比較して、軽量、加工性に優れる等の利点を有しており、帯電防止材、電磁波シールド材料、磁気記録媒体、フィルムコンデンサ、電池等の多くの分野での実用化が検討されている。
このような導電性組成物としては、例えば、特許文献1に、ポリオレフィン、ポリアニリン、ドデシルベンゼンスルホン酸および酸化亜鉛を含有する導電性組成物が記載されている。
【0003】
また、樹脂組成物に導電性を付与することを目的として、樹脂やエラストマーにカーボンブラックや界面活性剤を添加する方法が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−258409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ポリアニリン等の導電性ポリマーは、一般的に他の樹脂に対する相溶性が低く、バインダ樹脂に均一に分散させることが困難であるため、細かく表面抵抗を測定するとバラツキが大きくなってしまう。また分散不良が原因で表面抵抗の電圧依存性が大きくなり、耐久性を低下させる等の問題がある。また、特許文献1に記載された導電性組成物は、ポリアニリンをポリオレフィンに分散させるために多量のドデシルベンゼンスルホン酸を添加する必要があり、その結果、物性の低下が生じるという問題がある。
【0006】
導電性材料として一般的であるカーボンブラックを添加した場合では、カーボンブラックとポリオレフィンは相溶性が悪く、カーボンブラックが十分に分散されないために、表面抵抗の電圧依存性が大きくなる傾向がある。
一方、界面活性剤を添加した場合、界面活性剤は導電性を付与する効果が比較的小さいため、所望の導電性を得ることができない場合があり、導電性の制御という点で十分ではない。また、長期間放置されたときに界面活性剤が材料表面にブリードする問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、表面抵抗の電圧依存性が小さい材料を得ることができる導電性組成物を提供することを目的とする。
また、本発明は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、表面抵抗の電圧依存性が小さい帯電防止材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討した結果、バインダ樹脂としてポリオレフィン、導電性ポリマーのドーパントとしてα−オレフィンスルホン酸を用いることにより、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散され、表面抵抗の電圧依存性が小さい材料を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
即ち、本発明は、下記(1)〜(4)を提供する。
(1)導電性ポリマーと、少なくとも一部が前記導電性ポリマーのドーパントになっているα−オレフィンスルホン酸と、ポリオレフィンとを含有する導電性組成物。
(2)前記導電性ポリマーが、ポリアニリン類である上記(1)に記載の導電性組成物。
(3)硬化後の表面抵抗が、1×104〜9×1012Ω/□である上記(1)または(2)に記載の導電性組成物。
(4)基材と、前記基材に上記(1)〜(3)のいずれかに記載の導電性組成物を積層して得られる帯電防止層とを有する帯電防止材。
【発明の効果】
【0010】
本発明の導電性組成物は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に微細かつ均一に分散されており、表面抵抗の電圧依存性が小さい材料を得ることができる。更に、光透過率が高く、ブリードの問題がない材料を得ることができる。
本発明の帯電防止材は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に微細かつ均一に分散されており、表面抵抗の電圧依存性が小さい。更に、光透過率が高く、ブリードの問題がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の導電性組成物(以下、本発明の組成物ともいう。)は、導電性ポリマーと、少なくとも一部が上記導電性ポリマーのドーパントになっているα−オレフィンスルホン酸と、ポリオレフィンとを含有する導電性組成物である。
なお、「上記導電性ポリマーのドーパントになっている」とは、α−オレフィンスルホン酸が上記導電性ポリマーにドープ接合されている状態を意味する。
【0012】
本発明の組成物に用いられる導電性ポリマーは、特に限定されないが、具体的には、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)およびこれらの誘導体等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの導電性ポリマーの中でも、ポリアニリン類が、汎用性、経済性という点から好ましい。
【0013】
上記ポリアニリン類は、ポリアニリン、ポリアニリン誘導体およびこれらの混合物であり、具体的には、下記式(1)で表される化合物の重合体が好適に挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
上記式(1)中、nは0〜5の整数を表す。
1は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アルキルスルフィニル基、アルキルチオアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アルコキシアルキル基、アルキルスルホニル基、カルボキシ基、ハロゲン基、シアノ基、ハロアルキル基、ニトロアルキル基またはシアノアルキル基であり、水素原子、アルキル基であるのが好ましい。複数のR1は、同一であっても異なっていてもよい。
【0016】
上記式(1)で表される化合物としては、具体的には、例えば、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、o−エチルアニリン、m−エチルアニリン、o−エトキシアニリン、m−ブチルアニリン、m−ヘキシルアニリン、m−オクチルアニリン、2,3−ジメチルアニリン、2,5−ジメチルアニリン、2,5−ジメトキシアニリン、o−シアノアニリン、2,5−ジクロロアニリン、2−ブロモアニリン、5−クロロ−2−メトキシアニリン、3−フェノキシアニリン等が挙げられる。
上記ポリアニリン類は、これらのモノマーの1種を用いた重合体であってもよく、2種以上を用いた共重合体であってもよい。また、上記ポリアニリン類には、上記モノマーの他に、更に他のモノマーを本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
【0017】
上記ポリアニリン類としては、具体的には、例えば、ポリアニリン、ポリ(メチルアニリン)、ポリ(ジメチルアニリン)、ポリ(エチルアニリン)、ポリ(アニリンスルホン酸)が好適に挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記導電性ポリマーの重量平均分子量は、1,000〜1,000,000であるのが好ましく、10,000〜500,000であるのがより好ましく、100,000〜300,000であるのが更に好ましい。分子量がこの範囲であると、表面抵抗値が低くなり、マトリクスのポリオレフィンとの混合性が良くなる。
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、UV検出器で測定、算出した。標準試料としてはポリスチレンを使用した。
【0019】
上記導電性ポリマーの製造方法は特に限定されず、公知の製造方法を用いることができる。ポリアニリン類を製造する場合、一般的には、非常に低温(−10℃以下)の状態で長時間(48時間程度)に渡って重合を行うことが良いとされている。また、0℃〜常温の比較的高い温度においてもアニオン系の界面活性剤を含んだ系中で重合するとアニリンが高分子化し、2万〜100万の分子量を有するポリアニリンが合成できる。さらには、低温・長時間の重合とアニオン系界面活性剤の併用で合成を行う方法を使用してもよい。
【0020】
また、上記導電性ポリマーは、ドーパントの存在下で上記モノマーの重合を行うのが、得られる導電性ポリマーの導電性を向上しうる点から好ましい態様の1つである。
また、ドープされていない導電性ポリマーにドーパントを添加してドープする方法も好ましい態様の1つである。
【0021】
本発明においては、上記ドーパントとしてα−オレフィンスルホン酸が用いられる。
α−オレフィンスルホン酸は、通常、塩の形で市販されている。高級α−オレフィンに硫酸または無水硫酸を作用させた後に中和して得られるもので、種々の構造が混在している。一般的には、下記式(2)で表される化合物と下記式(3)で表される化合物との混合物である。上記α―オレフィンスルホン酸としては、α−オレフィンスルホン酸塩(例えば、ナトリウム塩、アンモニウム塩)の形で市販されているものも用いることができる。
下記式(2)で表される化合物と下記式(3)で表される化合物とのモル比は、特に限定されないが、60/40〜70/30であるのが入手が容易である点から好ましい。
これらの混合物は通常C14〜C16のオレフィンとC16〜C18のオレフィンに大別される。本発明においてはC16〜C18のオレフィンの方が混合するポリオレフィンとの相溶性が良く、好ましい。
【0022】
【化2】

【0023】
上記式(2)中、j+kは11〜15の整数であり、上記式(3)中、m+nは12〜16の整数である。
【0024】
上記α−オレフィンスルホン酸の含有量は、上記導電性ポリマーの構成単位と、α−オレフィンスルホン酸とのモル比(導電性ポリマーの構成単位/α−オレフィンスルホン酸)が、1/0.2〜1/10となる量であるのが好ましく、1/0.4〜1/1となる量であるのがより好ましい。α−オレフィンスルホン酸の含有量がこの範囲であると、導電性ポリマーをポリオレフィンに均一に分散することができ、また、表面抵抗の電圧依存性を小さくでき、物性にも優れる材料を得ることができる。
【0025】
一般に、導電性ポリマーであるポリアニリンの構成単位と、ポリアニリンに結合しているドーパントとのモル比は、1/0.5であるときが最も導電性が発揮されると言われている。このモル比が1/0.5未満の場合には、不足のドーパントとして、π系共役高分子化合物をドープすることができる。一般的なドーパントを使用してもよい。
ドーパントとしては、例えば、ヨウ素、臭素、塩素、ヨウ素等のハロゲン化合物;硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸、ホウフッ化水素酸等のプロトン酸;これらプロトン酸の各種塩;三塩化アルミニウム、三塩化鉄、塩化モリブデン、塩化アンチモン、五フッ化ヒ素、五フッ化アンチモン等のルイス酸;酢酸、トリフルオロ酢酸、ポリエチレンカルボン酸、ギ酸、安息香酸等の有機カルボン酸;これら有機カルボン酸の各種塩;フェノール、ニトロフェノール、シアノフェノール等のフェノール類;これらフェノール類の各種塩;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ポリエチレンスルホン酸、p−ドデシルベンゼンスルホン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アントラキノンスルホン酸、アルキルスルホン酸、ドデシルスルホン酸、樟脳スルホン酸、ジオクチルスルホコハク酸、銅フタロシアニンテトラスルホン酸、ポルフィリンテトラスルホン酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸縮合物等の有機スルホン酸;これら有機スルホン酸の各種塩;ポリアクリル酸等の高分子酸;プロピルリン酸エステル、ブチルリン酸エステル、ヘキシルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドドデシルエーテルリン酸エステル、ポリエチレンオキシドアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル;これらリン酸エステルの各種塩;ラウリル硫酸エステル、セチル硫酸エステル、ステアリル硫酸エステル、ラウリルエーテル硫酸エステル等の硫酸エステル;これら硫酸エステルの各種塩等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
本発明の組成物に用いられるポリオレフィンは、特に限定されないが、具体的には、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体(EPDM)、ポリブテン、ポリイソプレン、ポリスチレン、ポリα−オレフィン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、EPDMが汎用性の点から好ましい。
【0027】
ポリオレフィンと、ドープ後の導電性ポリマー(導電性ポリマーおよびドーパント)との質量比は、95/5〜50/50であるのが好ましく、90/10〜70/30であるのがより好ましい。ポリオレフィンの含有量がこの範囲であると、帯電防止領域の導電性が発揮できる。
【0028】
本発明の組成物は、必要に応じて、本発明の目的を損なわない範囲で、溶剤、充填剤、反応遅延剤、老化防止剤、酸化防止剤、顔料(染料)、可塑剤、揺変性付与剤、紫外線吸収剤、難燃剤、界面活性剤、分散剤、脱水剤、接着付与剤等の各種添加剤等を含有することができる。
【0029】
上記溶剤としては、特に限定されないが、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、トルエン、キシレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;カーボンブラック;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物が挙げられる。
【0031】
老化防止剤としては、具体的には、例えば、ヒンダードフェノール系等の化合物が挙げられる。
酸化防止剤としては、具体的には、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)等が挙げられる。
【0032】
顔料としては、具体的には、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。
【0033】
可塑剤としては、具体的には、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP);アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチル;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル;アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0034】
揺変性付与剤としては、具体的には、例えば、アエロジル(日本アエロジル(株)製)、ディスパロン(楠本化成(株)製)等が挙げられる。
接着付与剤としては、具体的には、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂等が挙げられる。
【0035】
難燃剤としては、具体的には、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテル等が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、以下のように行うことができる。
まず、反応容器に、アニリンモノマー、上記α−オレフィンスルホン酸(α−オレフィンスルホン酸塩でもよい。)、水および塩酸を加え、約0℃に冷却した後、適当な化学酸化重合触媒を加え、数時間保持して、α−オレフィンスルホン酸をドーパントにしたポリアニリンを合成する。これにメタノールを加え、ろ過した残渣を適当な混合ミキサー中で、上記ポリオレフィンと十分に混合して、本発明の組成物を得ることができる。
【0037】
本発明の組成物の硬化後の表面抵抗は、特に限定されないが、1×104〜9×1012Ω/□であるのが好ましく、106〜1011Ω/□であるのがより好ましい。
上記表面抵抗は、抵抗測定器(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタIPとHRプローブ)を用いて測定した表面抵抗を意味する。
【0038】
上述した本発明の組成物は、ポリオレフィンに対する相溶性に優れるα−オレフィンスルホン酸を導電性ポリマーのドーパントとして用いているため、導電性ポリマーとバインダ樹脂とを均一に分散することができる。そのため、表面抵抗の電圧依存性が小さい材料を得ることができる。
更に、本発明の組成物は、必ずしもカーボンブラックを含有しなくても導電性にできるので光透過率が高い材料を得ることができる。また、界面活性剤が材料表面にブリードする問題もない。
【0039】
また、本発明の組成物は、表面抵抗を1×104〜9×1012Ω/□の範囲にすることができる。そのため、用途に応じた表面抵抗に制御することができるので、広範な用途に用いることが可能であり、特に半導電性材料として有用である。
【0040】
本発明の組成物の用途としては、例えば、導電ロール、導電ベルト、ブレード等のOA機器部材、帯電防止材が好適に挙げられる。
【0041】
次に、本発明の帯電防止材について説明する。
本発明の帯電防止材は、基材と、この基材に本発明の導電性組成物を積層して得られる帯電防止層とを有する帯電防止材である。
【0042】
上記基材は、特に限定されないが、透明なフィルムが好ましい。具体的には、例えば、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムが好適に挙げられる。
【0043】
本発明の導電性組成物を積層する方法は、特に限定されず、例えば、基材との2層押出方法、射出成形によるサンドイッチ方法、2枚のフィルムの熱融着等が挙げられる。また、本発明の導電性組成物を溶媒に溶解し、グラビア印刷、スクリーン印刷、ハケ塗り法、スプレーコーティング法、ワイヤバー法、ブレード法、ロールコーティング法、ディッピング法等で塗布した後、乾燥して、積層させてもよい。
【0044】
上記帯電防止層の厚さは、特に限定されないが、0.01μm〜2mmであるのが好ましく、1μm〜5μmであるのが価格、製造スピードの点からより好ましい。
【0045】
本発明の帯電防止材は、導電性ポリマーがバインダ樹脂に均一に分散されており、表面抵抗の電圧依存性が小さい。更に、光透過率が高く、ブリードの問題がない。
本発明の帯電防止材は、例えば、電子部品、電子材料等の包装材;医療機関、クリーンルーム等の埃の存在が問題とされる場所等で使用される化粧材またはカーテン等の内装材等として好適に使用される。
【実施例】
【0046】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
<導電性ポリマーの合成>
(合成例1)
アニリン2.0質量部、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム(リポランPJ−400、ライオンアクゾ社製)7.0質量部および蒸留水100質量部を混合した。次に、この混合液に6N塩酸3.6質量部を加えた。
この混合液を0℃に冷却した後、酸化剤として過硫酸アンモニウム5.4gを加えて、10時間酸化重合させた。
その後、メタノールを加えてポリアニリンを析出させ、ろ過して得られた固体を多量の蒸留水により洗浄して、余剰のα−オレフィンスルホン酸ナトリウム(ナトリウムイオン含む)や過硫酸アンモニウムの残分を除去して、60℃で真空乾燥し、合成例1のポリアニリンを得た。
ろ過終了時にポリアニリンの一部をとり、アンモニア水で脱ドープした後、NMPに溶解させ、GPCにより重量平均分子量を測定したところ、得られたポリアニリンの重量平均分子量は52,000であった。
【0048】
(合成例2)
ドーパントとしてα−オレフィンスルホン酸に換えてドデシルベンゼンスルホン酸(B121、テイカ社製)を用いた以外は、合成例1と同様の方法でポリアニリンを合成した。
合成例1と同様の方法でポリアニリンの重量平均分子量を測定したところ、得られたポリアニリンの重量平均分子量は180,000であった。
【0049】
<導電性組成物の調製>
(実施例1および比較例1〜2)
下記第1表に示す各成分を、第1表に示す組成(質量部)で、ニーダーを用いて混合し、第1表に示される各組成物を得た。
得られた組成物を160℃で30分間プレス成形して、厚さ0.2mmのシートを作製した。
得られた各シートについて、下記の方法により外観、導電性および表面抵抗の電圧依存性を評価した。
【0050】
(外観)
得られたシートを光学顕微鏡で下から光をあてて透過させ、400倍に拡大して観察し、均一になっているものを「○」、5μm以上20μm未満の凝集体があるものを「△」、20μm以上の凝集体が多く残っているものを「×」とした。
【0051】
(導電性)
得られたシートについて、抵抗測定器(ダイアインスツルメンツ社製、ハイレスタIPとHRプローブ)を用い、100Vおよび1000Vにおける表面抵抗を求めた。
【0052】
(表面抵抗の電圧依存性)
100Vにおける表面抵抗値(Ω/□)の常用対数と1000Vにおける表面抵抗値(Ω/□)の常用対数との差(log10(100Vにおける表面抵抗値)−log10(100Vにおける表面抵抗値))を求めた。この値が小さいほど表面抵抗の電圧依存性が小さく、OA機器部材等に用いた場合の耐久性に優れると言える。
【0053】
【表1】

【0054】
上記第1表中の各成分は下記のとおりである。
・EPDM:三井EPT4021、三井化学社製
・臭素化フェノール:タッキロール250−1、田岡化学社製
・亜鉛華:亜鉛華3号、軽井沢精練所社製
・ステアリン酸:ビーズステアリン酸、日本油脂社製
・導電性カーボンブラック:ケッチェンEC、ライオンアクゾ社製
【0055】
上記第1表に示す結果から明らかなように、ドーパントとしてドデシルベンゼンスルホン酸を用いた組成物(比較例1)は、表面抵抗の電圧依存性が高くなっていた。これは導電性ポリマーとEPDMの相溶性が悪く、均一に分散されていないためであると考えられる。また、ポリアニリンの換わりに導電性カーボンブラックを配合した組成物(比較例2)は、表面抵抗の電圧依存性が高くなっていた。
一方、実施例1は、表面抵抗差が比較例1〜2に比べて極めて小さく、表面抵抗の電圧依存性が小さかった。
【0056】
(実施例2および比較例3〜5)
下記第2表に示す各成分を、第2表に示す組成(質量部)で、2軸混練機を用いて混合し、第2表に示される各組成物を得た。
得られた組成物と低密度ポリエチレン(無配合品、スミカセンL211、住友化学社製)をTダイにより2層押出成形して、厚さ20μm(各層10μm)のフィルムを作製した。
得られた各フィルムについて、上述した方法により外観、導電性および表面抵抗の電圧依存性を評価した。また、下記の方法により透明度およびブリードの有無を評価した。
【0057】
(透明度)
ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM−150)により、全光透過率を求めた。
【0058】
(ブリードの有無)
60℃のオーブン中に上記フィルムを2ヶ月放置した後、フィルムの表面を目視で観察し、ブリードが無かったものを「○」、ブリードがあったものを「×」とした。
【0059】
【表2】

【0060】
上記第2表中の各成分は下記のとおりである。
・LDPE(低密度ポリエチレン):スミカセンL211、住友化学社製
・ポリエステルエラストマー:ハイトレル4047、東レ・デュポン社製
・導電性カーボンブラック:ケッチェンEC、ライオンアクゾ社製
・界面活性剤(合成アルコール系):サンノニックSS−30、三洋化成工業社製
【0061】
上記第2表に示す結果から明らかなように、バインダ樹脂としてポリエステルエラストマーを用いた組成物(比較例3)は、ポリアニリンがポリエステルエラストマーに均一に分散しておらず、表面抵抗の電圧依存性が高かった。また、導電性カーボンブラックを用いた組成物(比較例4)は、光透過率が悪く、表面抵抗の電圧依存性も高かった。また、界面活性剤を用いた組成物(比較例5)は、フィルムの表面に界面活性剤のブリードが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマーと、少なくとも一部が前記導電性ポリマーのドーパントになっているα−オレフィンスルホン酸と、ポリオレフィンとを含有する導電性組成物。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、ポリアニリン類である請求項1に記載の導電性組成物。
【請求項3】
硬化後の表面抵抗が、1×104〜9×1012Ω/□である請求項1または2に記載の導電性組成物。
【請求項4】
基材と、前記基材に請求項1〜3のいずれかに記載の導電性組成物を積層して得られる帯電防止層とを有する帯電防止材。

【公開番号】特開2008−214409(P2008−214409A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−50948(P2007−50948)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】