説明

導電性組成物及びその製造方法

ポリマー樹脂と、単層カーボンナノチューブとを含む導電性組成物であって、約10e12Ω・cm以下の体積抵抗率、及び約5キロジュール/平方メートル以上のノッチ付アイゾット衝撃強さを有する組成物。別の実施形態において、導電性組成物の製造方法は、ポリマー樹脂及び単層カーボンナノチューブをブレンドするステップを含み、この組成物は、約10eΩ・cm以下の体積抵抗率、及び約5キロジュール/平方メートル以上のノッチ付アイゾット衝撃強さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、導電性組成物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー樹脂で作製された物品は、一般に、静電散逸又は電磁遮蔽が重要な要件となる、包装用フィルムやチップキャリア、コンピュータ、プリンタ、及び複写機の部品などの、マテリアルハンドリング及び電子デバイスに利用される。静電散逸(以下、ESD)は、異なる電位を持つ物体同士が直接接触することによって、又は誘導静電場によって、それら物体間で静電荷が移動することと定義される。電磁遮蔽(以下、EM遮蔽)効果は、シールドに入射してその内部を通過する電磁場の割合の比(デシベル単位)と定義される。電子デバイスがより小さく且つ高速になるにつれ、その静電荷に対する感度が増大し、したがって一般に、改善された静電散逸特性が得られるよう変性させたポリマー樹脂を利用することが望ましい。同様に、改善された電磁遮蔽をもたらすことができるように、また同時に、ポリマー樹脂の有利な機械的性質の一部が保持されるように、ポリマー樹脂を変性させることが望ましい。
【特許文献1】米国特許第4565684号明細書
【特許文献2】米国特許第5024818号明細書
【特許文献3】米国特許第4572813号明細書
【特許文献4】米国特許第4663230号明細書
【特許文献5】米国特許第5165909号明細書
【特許文献6】米国特許第4816289号明細書
【特許文献7】米国特許第4876078号明細書
【特許文献8】米国特許第5589152号明細書
【特許文献9】米国特許第5591382号明細書
【非特許文献1】Cotton and Wilkinson、Advanced Organic Chemistry、p.76
【非特許文献2】「Plastic Additives Handbook、第5版」Hans Zweifel編、Carl Hanser Verlag Publishers、Munich、2001
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2ミクロンよりも大きい直径を有する、ピッチから得られたグラファイト繊維やポリアクリロニトリルなどの導電性充填材は、電気的性質を改善するために、またESD及びEM遮蔽を実現するために、ポリマー樹脂にしばしば組み込まれる。しかし、これらグラファイト繊維のサイズは大きいので、そのような繊維を組み込むことによって、一般に、耐衝撃性などの機械的性質に低下が生ずる。したがって当技術分野では、適切なESD及びEM遮蔽をもたらしつつ、その機械的性質を保持することのできる、導電性ポリマー組成物が依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
導電性組成物は、ポリマー樹脂と、単層カーボンナノチューブとを含み、この組成物は、約10e12Ω・cm以下の体積抵抗率、約5kJ/m以上のノッチ付アイゾット衝撃強さを有する。
【0005】
一実施形態で、導電性組成物は、ポリマー樹脂と、多層カーボンナノチューブとを含み、この多層カーボンナノチューブは、3.5ナノメートル未満の直径を有し、またこの組成物は、約10e12Ω・cm以下の体積抵抗率、約5kJ/m以上のノッチ付アイゾット衝撃強さを有する。
【0006】
別の実施形態で、導電性組成物を製造する方法は、ポリマー樹脂と単層カーボンナノチューブとをブレンドするステップを含み、この組成物は、約10eΩ・cm以下の体積抵抗率、約5kJ/m以上のノッチ付アイゾット衝撃強さを有する。
【0007】
別の実施形態で、物品は、ポリマー樹脂と単層カーボンナノチューブとを含む導電性組成物から製造する。
【0008】
さらに別の実施形態で、物品は、ポリマー樹脂と単層カーボンナノチューブとをブレンドするステップを含む方法によって製造する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書には、ポリマー樹脂と単層カーボンナノチューブとを含む組成物であって、約10e12Ω・cm以下のバルク体積抵抗率を有すると共に、約5kJ/m以上の耐衝撃性及びクラスAの表面仕上げを示す組成物が開示されている。また本明細書には、ポリマー樹脂と単層カーボンナノチューブとを含む組成物であって、約10eΩ・cm以下のバルク体積抵抗率を有すると共に、約5kJ/m以上の耐衝撃性及びクラスAの表面仕上げを示す組成物も開示されている。一実施形態で、組成物は、約1012Ω/□(Ω/sq)以上の表面抵抗率を有すると共に、約10e12Ω・cm以下のバルク体積抵抗率を有し、それと共に、約5kJ/m以上の耐衝撃性及びクラスAの表面仕上げを示す。一実施形態で、組成物は、約10Ω/□(Ω/sq)以上の表面抵抗率を有すると共に、約10eΩ・cm以下のバルク体積抵抗率を有し、それと共に、約5kJ/m以上の耐衝撃性及びクラスAの表面仕上げを示す。一実施形態で、組成物は、約10eΩ・cm以下のバルク体積抵抗率を有すると共に、約10kJ/m以上の耐衝撃性及びクラスAの表面仕上げを示す。別の実施形態で、組成物は、約10eΩ・cm以下のバルク体積抵抗率を有すると共に、約15kJ/m以上の耐衝撃性及びクラスAの表面仕上げを示す。そのような組成物は、静電散逸から保護する必要のあるコンピュータ、電子製品、半導体部品、回路板などに利用できることが有利である。またそのような組成物は、自動車の車体パネルにおいて、望むなら静電塗装することのできる自動車の内部部品及び外部部品のどちらにも、使用できることが有利である。
【0010】
また本明細書には、ポリマー樹脂と多層カーボンナノチューブとを含む導電性組成物も開示されており、この多層カーボンナノチューブは、3.5ナノメートル(nm)未満の直径を有し、またこの組成物は、約10e12Ω・cm以下のバルク体積抵抗率を有すると共に、約5kJ/m以上の耐衝撃性及びクラスAの表面仕上げを示す。多層カーボンナノチューブは、2層、3層、4層、又は5層の壁面を有することが好ましい。
【0011】
導電性組成物に使用されるポリマー樹脂は、広く様々な熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂のブレンド、又は熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とのブレンドから選択することができる。ポリマー樹脂は、ポリマー、コポリマー、ターポリマー、又は前述のポリマー樹脂の1種以上を含む組合せのブレンドでもよい。熱可塑性樹脂の特定の、しかし非限定的な例には、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、及び前述のポリマー樹脂の1種以上を含む組合せが含まれる。
【0012】
熱可塑性樹脂のブレンドの、特定の非限定的な例には、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン/ナイロン、ポリカーボネート/アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリアミド、ポリカーボネート/ポリエステル、ポリフェニレンエーテル/ポリオレフィン、及び前述の熱可塑性樹脂のブレンドの1種以上を含む組合せが含まれる。
【0013】
ポリマー樹脂は、一般に、約5〜約99.999重量%の量で使用される。この範囲内では、一般に、ポリマー樹脂又は樹脂ブレンドを、組成物の全重量の約10重量%以上の量で、好ましくは約30重量%以上の量で、より好ましくは約50重量%以上の量で使用することが望ましい。ポリマー樹脂又は樹脂ブレンドはさらに、一般に組成物の全重量の約99.99重量%以下の量で、好ましくは約99.5重量%以下の量で、より好ましくは約99.3重量%以下の量で使用される。
【0014】
組成物に使用される単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、グラファイトのレーザ蒸着、又はカーボンアーク合成によって生成することができる。これらのSWNTは、一般に、外径が約0.7〜約2.4ナノメートル(nm)の単層を有する。約5以上のアスペクト比、好ましくは約100以上のアスペクト比、より好ましくは約1000以上のアスペクト比を有するSWNTが、一般に組成物に利用される。SWNTは、一般に、各々のチューブの両端に半球状キャップを有する閉じた構造をなしているが、単一の開放端を有し又は両方とも開放端であるSWNTを使用してもよい。SWNTは、一般に、中空の中心部分、即ちそこに無定形炭素を充填することのできる中心部分を含む。
【0015】
一実施形態で、SWNTは、ロープ状の凝集体の形で存在することができる。これらの凝集体は、一般に「ロープ」と呼ばれ、個々のカーボンナノチューブ同士のファンデルワールス力の結果として形成される。ロープ内の個々のナノチューブは、互いに対して滑らかに動き、自由エネルギーを最小限に抑えるために、それ自体がロープ内で位置を変えることができる。一般に、10〜10ナノチューブを有するロープを組成物に使用することができる。この範囲内では、一般に、約100ナノチューブ以上、好ましくは約500ナノチューブ以上を有するロープを有することが望ましい。また、約10ナノチューブ以下、好ましくは約5000ナノチューブ以下を有するロープも望ましい。一般に、組成物中に、アスペクト比が約5以上であり、好ましくは約10以上であり、好ましくは約100以上であり、より好ましくは約1000以上であり、最も好ましくは約2000以上であるロープを有することが望ましい。一般に、SWNTは、2000W/m・K以上の固有熱伝導率と、10ジーメンス/センチメートル(S/cm)の固有導電率を有することが好ましい。また一般に、SWNTは、80ギガパスカル(GPa)以上の引張り強さ、及び約0.5テラパスカル(TPa)の剛性を有することが望ましい。
【0016】
別の実施形態で、SWNTは、金属ナノチューブと半導体ナノチューブの混合物を含むことができる。金属ナノチューブは、金属と同様の電気特性を示すものであり、一方、半導体ナノチューブは、電気的に半導体である。一般に、グラフェンシートを巻き上げる手法では、様々な螺旋構造のナノチューブが生成される。これらの構造、並びに格子ベクトルを、図1に示す。図1からわかるように、整数格子ベクトルm及びnを合計し、得られたベクトルの末端及び先端を、最終的なナノチューブ構造において互いの頂点に配置する。ジグザグナノチューブは、(n,0)格子ベクトル値を有し、一方、アームチェアナノチューブは(n,n)格子ベクトル値を有する。ジグザグ形及びアームチェア形のナノチューブは、2つの可能なアキラル配座を構成し、他の全ての(m,n)格子ベクトル値は、キラルナノチューブをもたらす。組成物に利用されるSWNTの量を最小限に抑えるため、一般に、組成物中で使用されるSWNTの総量のかなりの割合を、金属ナノチューブで構成することが望ましい。一般に、組成物に使用されるSWNTは、金属ナノチューブを、SWNTの全重量の約1重量%以上、好ましくは約20重量%以上、より好ましくは約30重量%以上、さらにより好ましくは約50重量%以上、最も好ましくは約99.9重量%以上含むことが望ましい。ある特定の状況で、一般に組成物中に使用されるSWNTは、半導体ナノチューブを、SWNTの全重量の約1重量%以上、好ましくは約20重量%以上、より好ましくは約30重量%以上、さらにより好ましくは約50重量%以上、最も好ましくは約99.9重量%以上含むことが望ましいと考えられる。
【0017】
一実施形態で、組成物中に使用されるSWNTは、いかなる不純物も含有しなくてよい。さらに別の実施形態で、組成物中に使用されるSWNTは、不純物を含むことができる。不純物は、一般に、SWNTの合成で使用された触媒の結果として、並びにこの合成のその他の非SWNT炭素質副産物から得られる。触媒不純物は、一般に、コバルトや鉄、イットリウム、カドミウム、銅、ニッケルなどの金属、酸化鉄や酸化アルミニウム、二酸化ケイ素などの金属酸化物、又は前述の不純物の1種以上を含む組合せである。反応の炭素質副産物は、一般に、煤、無定形炭素、コークス、多層ナノチューブ、無定形ナノチューブ、無定形ナノ繊維など、又は前述の炭素質副産物の1種以上を含む組合せである。
【0018】
一般に、組成物中で使用されるSWNTは、約1〜約80重量%の量の不純物を含むことができる。この範囲内で、SWNTは、SWNTの全重量の約5重量%以上、好ましくは約7重量%以上、より好ましくは約8重量%以上の不純物分を有することができる。この範囲内では、不純物含量が、SWNTの全重量の約50重量%以下、好ましくは約45重量%以下、より好ましくは約40重量%以下であることも望ましい。
【0019】
組成物中に使用されるSWNTは、ポリマー樹脂との適合性を改善し、且つポリマー樹脂との混合を促進させるため、官能基で誘導体化してもよい。SWNTは、その側面、半球状エンドキャップ、又は側面と半球状エンドキャップとの両方を官能化することができる。下記の式(I)を有する官能化SWNTを、組成物中に使用することができる。
【0020】
【化1】

(式中、nは整数であり、Lは0.1n未満の数であり、mは0.5n未満の数であり、Rの各々は、同じであり、且つSOH、COOH、NH、OH、R’CHOH、CHO、CN、COCl、COSH、SH、COOR’SR’、SiR’、Si−(OR’)−R’(3−y)、R”、AlR”、ハロゲン化物、エチレン系不飽和官能基、エポキシド官能基などから選択され、yは、3以下の整数であり、R’は、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、又はアラアルキル、シクロアリール、ポリ(アルキルエーテル)などであり、R”は、フルオロアルキル、フルオリアリール、フルオロシクロアルキル、フルオロアラルキル、シクロアリールであり、Xはハロゲン化物であり、Zはカルボキシレート、トリフルオロアセテートなどである。)
これらの組成物は、Rの各々が同じであるという点で、均一である。
【0021】
不均一に置換されたSWNTも、この組成物中に使用することができる。これらには、上述の式(I)の組成物であって、n、L、m、R、及びSWNTそのものが上記定義した通りであるものが含まれ、但しRの各々が酸素を含有しないこと、又はRが酸素含有基である場合にはCOOHが存在しないことを条件とする。
【0022】
本発明には、下記の式(II)を有する官能化ナノチューブも含まれる。
【0023】
【化2】

(式中、n、L、m、R’、及びRは、上記内容と同じ意味を持つ。)
炭素原子Cは、SWNTの表面炭素である。均一に置換されたSWNTと不均一に置換されたSWNTのどちらも、表面炭素Cは反応する。SWNTの表面層にあるほとんどの炭素原子は、底面炭素である。底面炭素は、化学的侵襲に対して比較的不活性である。例えば、グラファイト面がSWNTの周りに完全に延びない欠陥部位には、グラファイト面のエッジ炭素原子に類似した炭素原子がある。エッジ炭素には反応性があり、炭素の原子価を満たすよういくつかのヘテロ原子又は基を含有しなければならない。
【0024】
上述の置換SWNTは、さらに官能化できることが有利である。そのような組成物には、下記の式(III)の組成物が含まれる。
【0025】
【化3】

(式中、炭素はSWNTの表面炭素であり、n、L、及びmは上述の通りであり、Aは、OY、NHY、−CR’−OY、N’Y、C’Y、
【0026】
【化4】

から選択され、但しYは、タンパク質、ペプチド、酵素、抗体、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、抗原、又は酵素基質の適切な官能基、酵素阻害剤、又は酵素基質の遷移状態アナログであり、或いは、R’OH、R’NH、R’SH、R’CHO、R’CN、R’X、R’SiR’、RSi−(OR’)−R’(3−y)、R’ Si−(O−SiR’)−OR’、R’−R”、R’−N−CO、(CO)−Y、−(CO)−H、−(CO)−R’、−(CO)−R’、及びR’から選択され、但しwは、1より大きく200未満の整数である。)
構造(II)の官能性SWNTは、下記の式(IV)を有する組成物が生成されるように官能化されてもよい。
【0027】
【化5】

(式中、n、L、m、R’、及びAは、上述の通りである。)
炭素原子Cは、SWNTの表面炭素である。
【0028】
本発明の組成物には、ある特定の環状化合物が吸着されるSWNTも含まれる。これらには、下記の式(V)の物質の組成物が含まれる。
【0029】
【化6】

(式中、nは整数であり、Lは0.1n未満の数であり、mは0.5n未満であり、aは、0又は10未満の数であり、Xは、多核芳香族、ポリヘテロ核芳香族、又はメタロポリヘテロ核芳香族部分であり、Rは上述の通りである。)
好ましい環状化合物は、Cotton and Wilkinson、Advanced Organic Chemistry、p.76に記載されている平面大環状分子である。吸着に、より好ましい環状化合物は、ポルフィリン及びフタロシアニンである。
【0030】
吸着された環状化合物は、官能化することができる。そのような組成物には、下記の式(VI)の化合物が含まれる。
【0031】
【化7】

(式中、m、n、L、a、X、及びAは、上記定義した通りであり、炭素はSWNT上にある。)
特定の理論に拘泥するものではないが、変性した表面特性によって、SWNTがポリマー樹脂に対してより適合性あるものになるので、或いは変性した官能基(特にヒドロキシル基又はアミン基)が、末端基としてポリマー樹脂に直接結合するので、この官能化SWNTは、より良好にポリマー樹脂に分散する。このように、ポリカーボネートやポリアミド、ポリエステル、ポリエーテルイミドなどのポリマー樹脂は、SWNTに直接結合し、改善された接着性によって、このSWNTの分散をより容易にする。
【0032】
官能基は、一般に、SWNTの表面を酸化するのに十分な時間、SWNTを強力な酸化剤に接触させ、さらに、SWNTを、酸化した表面に官能基を付加するのに適した反応物と接触させることによって、SWNTの外面に導入することができる。好ましい酸化剤は、アルカリ金属塩素酸塩を強酸に溶かした溶液からなる。好ましいアルカリ金属塩素酸塩は、塩素酸ナトリウム、又は塩素酸カリウムである。使用される好ましい強酸は、硫酸である。酸化に十分な時間は、約0.5時間〜約24時間である。
【0033】
一般に、SWNTは、組成物の全重量の約0.001〜約50重量%の量で、一般に使用される。この範囲内では、一般に、組成物の全重量の約0.025重量%以上、好ましくは約0.05重量%以上、より好ましくは約0.1重量%以上の量でSWNTを使用することが望ましい。SWNTは、組成物の全重量の約30重量%以下、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下の量であることも望ましい。
【0034】
気相成長させた炭素繊維、カーボンブラック、導電性金属充填材、固体非金属、導電性充填材などの、その他の導電性充填材、又は前述の1種以上を含む組合せを、適宜、この組成物中に使用することができる。気相成長させた炭素繊維、或いは小さいグラファイト又は部分的にグラファイトの炭素繊維であって、気相成長炭素繊維(VGCF)とも呼ばれ、且つ約3.5〜約2000ナノメートル(nm)の直径及び約5以上のアスペクト比を有する炭素繊維を使用してもよい。VGCFを使用する場合、約3.5〜約500nmの直径が好ましく、約3.5〜約100nmの直径がより好ましく、約3.5〜約50nmの直径が最も好ましい。約100以上、より好ましくは約1000以上の平均アスペクト比を有することも好ましい。代表的なVGCFは、例えばTibbetts他の米国特許第4565684号及び第5024818号、Arakawaの米国特許第4572813号、Tennentの米国特許第4663230号及び第5165909号、Komatsu他の米国特許第4816289号、Arakawa他の米国特許第4876078号、Tennent他の米国特許第5589152号、及びNahass他の米国特許第5591382号に記載されている。
【0035】
VGCFは、一般に、望む場合には、組成物の全重量の約0.0001〜約50重量%の量で使用される。この範囲内で、一般にVGCFは、組成物の全重量の約0.25重量%以上、好ましくは約0.5重量%以上、より好ましくは約1重量%以上の量で使用される。さらにVGCFは、一般に、組成物の全重量の約30重量%以下、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下の量で使用される。
【0036】
カーボンブラックを適宜使用してもよく、好ましいカーボンブラックは、平均粒径が約200nm未満、好ましくは約100nm未満、より好ましくは約50nm未満のものである。好ましい導電性カーボンブラックは、1グラム当たり約200平方メートル(m/g)を超える表面積、好ましくは約400m/gを超える表面積、さらにより好ましくは約1000m/gを超える表面積を有してもよい。好ましい導電性カーボンブラックは、100グラム当たり約40立方センチメートル(cm/100g)を超える細孔容積(フタル酸ジブチル吸収)、好ましくは約100cm/100gを超える細孔容積、より好ましくは約150cm/100gを超える細孔容積を有してよい。例示的なカーボンブラックには、CONDUCTEX(登録商標)という商標でColumbian Chemicalsから市販されているカーボンブラック、S.C.F.(Super Conductive Furnace)及びE.C.F.(Electric Conductive Furnace)という商標でChevron Chemicalから入手可能なアセチレンブラック、VULCAN XC72及びBLACK PEARLSという商標でCabot Corp.から入手可能なカーボンブラック、及びKETJEN BLACK EC 300及びEC 600という商標でAkzo Co.Ltdから市販されているカーボンブラックが含まれる。好ましい導電性カーボンブラックは、組成物の全重量に対して約2重量%〜約25重量%の量で使用することができる。
【0037】
固体導電性金属充填材は、導電性組成物中で適宜使用することができる。これらは、ポリマー樹脂中に組み込んで使用した状態では融解しない、導電性の金属又は合金であってよく、そこから完成品が製作されるものである。アルミニウム、銅、マグネシウム、クロム、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタンなどの金属と、前述の金属のいずれか1種を含む混合物を、導電性充填材としてポリマー樹脂に組み込むことができる。物理的な混合物及び真の合金、例えばステンレス鋼やブロンズなどは、導電性充填材粒子として働くことができる。さらに、これらの金属のホウ化物や炭化物(例えば二ホウ化チタン)など、2〜3の金属間化合物も、導電性充填材粒子として働くことができる。ポリマー樹脂を導電性にするため、酸化スズやインジウムスズ酸化物などの固体非金属導電性充填材粒子を、適宜添加してもよい。固体金属及び非金属導電性充填材は、粉末、延伸ワイヤ、ストランド、繊維、チューブ、ナノチューブ、薄片、積層体、小板、楕円体、円板、及びその他の市販されている、当技術分野で一般に知られている幾何形態の形で存在してよい。
【0038】
非導電性の非金属充填材、即ちその表面のかなりの部分が、固体導電性金属の凝集層で被覆されている充填材も、導電性組成物中に適宜使用することができる。非導電性の非金属充填材を、一般に基材と呼び、固体導電性金属の層で被覆された基材を、「金属被覆充填材」と呼ぶことができる。アルミニウムや銅、マグネシウム、クロム、スズ、ニッケル、銀、鉄、チタン、及び前述の金属のいずれか1種を含む混合物の、典型的な導電性金属を使用して、基材を被覆することができる。基材の例は、当技術分野で周知であり、「Plastic Additives Handbook、第5版」HansZweifel編、Carl Hanser Verlag Publishers、Munich、2001に記載されているいるものが含まれる。そのような基材の非限定的な例には、溶融シリカや結晶質シリカなどのシリカ粉末、窒化ホウ素粉末、ケイ酸ホウ素粉末、アルミナ、酸化マグネシウム(又はマグネシア)、表面処理済みウォラストナイトを含めたウォラストナイト、硫酸カルシウム(その無水物、二水和物、又は三水和物など)、チョーク、石灰石、大理石、合成及び沈殿させた炭酸カルシウムも含めた炭酸カルシウムであって、一般に粉砕微粒子の形をとるもの、繊維、モジュール、針の形、及び層状構造タルクを含めたタルク、中空でありまた中実なガラス球、硬質、軟質、焼成カオリンを含めたカオリン、ポリマーマトリックス樹脂との適合性を促進させる、当技術分野で知られている様々な被覆を含むカオリン、雲母、長石、シリケート球体、煙塵、セノスフィア、フィライト、アルミノ珪酸塩(アルモスフィア)、天然珪砂、石英、珪岩、パーライト、トリポリ、珪藻土、合成シリカ、及び前述のいずれか1種を含む混合物が含まれる。上記基材の全ては、導電性組成物に使用される金属材料の層で被覆することができる。
【0039】
固体金属及び非金属導電性充填材粒子の、正確なサイズ、形状、及び組成とは無関係に、望む場合には組成物の全重量に対して約0.0001〜約50重量%の配合量で、これらの粒子をポリマー樹脂に分散させることができる。この範囲内では、一般に、固体金属及び非金属導電性充填材粒子を、組成物の全重量の約1重量%以上、好ましくは約1.5重量%以上、より好ましくは約2重量%以上の量で有することが望ましい。前記固体金属及び非金属導電性充填材粒子の配合量は、組成物の全重量の40重量%以下、好ましくは約30重量%以下、より好ましくは約25重量%以下でよい。
【0040】
ポリマー樹脂は、一般に、SWNT及びその他適宜所望の導電性充填材、例えばVGCFやカーボンブラック、固体金属及び非金属導電性充填材粒子などと一緒に、溶融ブレンド、溶液ブレンドなど、又は前述のブレンド方法の1種以上を含む組合せであるがこれらに限定することのない、いくつかの異なる方法で処理することができる。組成物の溶融ブレンドでは、剪断力、延伸力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、或いは前述の力又はエネルギー形態の1種以上を含む組合せを使用し、前述の力を、単軸スクリュー、多軸スクリュー、噛合型同方向回転又は異方向回転スクリュー、非噛合型同方向回転又は異方向回転スクリュー、往復回転スクリュー、ピンを備えたスクリュー、ピン、ロール、ラム、螺旋ロータを備えたバレル、又は前述の1種以上を含む組合せで加える処理装置で実施される。
【0041】
前述の力を用いる溶融ブレンドは、単軸又は多軸スクリュー押出機、Buss混練機、Henschel、ヘリコーン、Ross混合機、Banbury、ロールミル、射出成形機や真空形成機、ブロー成形機などの成形機、又は前述の機械の1種以上を含む組合せなどであるがこれらに限定することのない機械で、実施することができる。一般に、組成物の溶融又は溶液ブレンド中に、約0.01〜約10キロワット・時/組成物キログラム(kw時/kg)の比エネルギーを与えることが望ましい。この範囲内では、約0.05kw時/kg以上、好ましくは約0.08kw時/kg以上、より好ましくは約0.09kw時/kg以上の比エネルギーが、組成物のブレンドには一般に望ましい。組成物のブレンドには、比エネルギーの量は、約9kw時/kg以下、好ましくは約8kw時/kg以下、より好ましくは約7kw時/kg以下であることも望ましい。
【0042】
一実施形態では、粉末形態、ペレット形態、シート形態などのポリマー樹脂を、押出機又はBuss混練機などの溶融ブレンド装置に供給する前に、望むならHenschel又はロールミルで、最初にSWNT及びその他適宜充填材とドライブレンドすることができる。一般に、溶融ブレンド装置内の剪断力によって、ポリマー樹脂でのSWNTの分散を引き起こすことが一般に望ましいが、溶融ブレンドプロセス中、SWNTのアスペクト比を保持することも望ましい。そのようにするには、マスターバッチの形で、溶融ブレンド装置にSWNTを導入することが望ましいと考えられる。そのようなプロセスでは、マスターバッチを、ポリマー樹脂の下流の溶融ブレンド装置に導入することができる。
【0043】
溶融ブレンドでは、ブレンドプロセス中、樹脂が半結晶性ポリマー樹脂である場合には、そのポリマー樹脂の少なくとも一部がほぼ溶融温度以上の温度に達し、樹脂が非晶質樹脂である場合には、そのポリマー樹脂の少なくとも一部が流動点(例えばガラス転移温度)に達する。ドライブレンドでは、ブレンドプロセス中、樹脂が半結晶性ポリマー樹脂である場合には、そのポリマー樹脂の塊全体が、ほぼ溶融温度以下にあり、樹脂が非晶質樹脂である場合には、そのポリマー樹脂の塊全体が流動点以下にあり、さらにポリマー樹脂は、ブレンドプロセス中にいかなる液状流体も含まない。本明細書で定義する溶液ブレンドでは、ブレンドプロセス中に、ポリマー樹脂を、例えば溶媒や非溶媒などの液状流体に懸濁させる。
【0044】
マスターバッチを使用する場合、SWNTを、約1〜約50重量%の量でマスターバッチ中に存在させることができる。この範囲内では、マスターバッチの全重量の約1.5重量%以上、好ましくは約2重量%以上、より好ましくは約2.5重量%以上の量で、SWNTを使用することが一般に望ましい。SWNTは、マスターバッチの全重量の約30重量%以下、好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約5重量%以下の量であることも望ましい。マスターバッチの使用に関する一実施形態において、SWNTを含有するマスターバッチは、ストランドの形に押し出され又は犬用の骨の形に成形されたときに、測定可能なバルク又は表面抵抗率を持たないと考えられるが、マスターバッチを組み込んで結果的に得られる組成物は、組成物中のSWNTの重量比がマスターバッチにおける場合よりも低いときであっても、測定可能なバルク又は表面抵抗率を有する。マスターバッチの使用に関する別の実施形態では、SWNTを含有するマスターバッチが、マスターバッチを組み込んだ導電性組成物の場合よりも高くて測定可能なバルク又は表面抵抗率を有すると考えられる。これらの特徴を示し且つマスターバッチに使用することのできる、半結晶性ポリマー樹脂の例は、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステルなど、又は前述の半結晶性ポリマー樹脂の1種以上を含む組合せである。
【0045】
ポリマーブレンド中のマスターバッチの使用に関する別の実施形態では、組成物の連続相を形成するポリマー樹脂と同じポリマー樹脂を含んだマスターバッチを有することが、時々望ましい。この特徴によれば、連続相だけが、必要な体積及び表面抵抗率を組成物に提供するSWNTを含むので、実質的に少ない割合のSWNTを使用することが可能になる。ポリマーブレンド中のマスターバッチの使用に関するさらに別の実施形態では、組成物中に使用されるその他のポリマーとは異なる化学的性質を持ったポリマー樹脂を含む、マスターバッチを有することが望ましいと考えられる。この場合、マスターバッチのポリマー樹脂は、ブレンドの連続相を形成することになる。
【0046】
ポリマー樹脂及びSWNTを含む組成物は、必要に応じて、多数のブレンド及び形成ステップにかけることができる。例えば、最初に組成物を押出てペレットに形成することができる。次いでこのペレットを、成形機に供給し、コンピュータ用ハウジングや、静電塗装することができる自動車用パネルなど、その他の望ましい形状に形成することができる。或いは、単一の溶融ブレンダから生成される組成物を、シート又はストランドに形成し、アニールや単軸延伸又は二軸延伸などの押出し後プロセスにかけることができる。
【0047】
一実施形態で、溶融ブレンド後の組成物は、SWNT網状構造の形をしたSWNTを含有することが好ましい。SWNT網状構造は、三次元網状構造であることが好ましく、組成物中の電流の通過を容易にする。電子トンネルは、網状構造内に存在するSWNT間にも生ずる可能性がある。電子トンネルは、網状構造内のSWNTとその他の導電性粒子(例えばカーボンブラック、MWNTなど)との間にも生ずる可能性がある。SWNT網状構造は、個々のSWNT又はSWNTのロープが物理的接触をなすノードを含む。
【0048】
SWNT網状構造は、フラクタル構造を有すると特徴付けることができる。フラクタルは、異なるレベルの倍率で自己相似性を示し、即ちフラクタルは、膨張性対称を示す。フラクタルは、質量フラクタル又は表面フラクタルでよい。SWNT網状構造は、質量フラクタルと同様の特徴を示すことが望ましい。質量フラクタルにおいて、網状構造の質量Mは、下記の等式(1)に示すように、特性寸法(回転半径Rなど)を分数乗xしたものに対応する。
【0049】
【化8】

質量フラクタルで、xの値は0〜3である。約2以下の値は、一般に、開放又は分枝状の網状構造を表し、3に近い値は、高密度の網状構造を表す。一般に、SWNT網状構造は、約2.5以下、好ましくは約2以下、好ましくは約1.75以下、より好ましくは約1.6以下のx値を有することが望ましい。
【0050】
上述のように、網状構造は、電子トンネルが引き起こされるように、SWNTが互いに物理的に接触し又は十分近接しているノードを有することが望ましい。導電性網状構造では、一般に、1平方マイクロメートル当たりにできる限り多くのノードを有することが望ましい。一般に、導電性組成物は、約5ノード/平方マイクロメートル以上、好ましくは約20ノード/平方マイクロメートル以上、より好ましくは約50ノード/平方マイクロメートル以上、最も好ましくは約100ノード/平方マイクロメートル以上の量を有することが望ましい。理解されるように、ノードの数、したがって組成物の導電率は、熱アニールによって増大させることができる。
【0051】
一実施形態で、ノードの数は、射出成形条件を変化させることによって増大させてもよい。一実施形態で、網状構造は、射出成形速度を高めることによって改善することができる(即ち、ノードは、導電率の結果的な改善により増大させることができる)。別の実施形態で、網状構造は、金型の中での溶融物の滞留時間を延ばすことによって、改善することができる。さらに別の実施形態で、網状構造は、金型の温度を上げることによって改善することができる。
【0052】
後処理の使用を含む一実施形態では、溶融ブレンドされた組成物を、約2〜約1000000の延伸比を利用した単軸方向での超延伸にさらにかける。超延伸比が高いと、一般に、非晶質領域にSWNTを含有することのできるシシケバブ半結晶性構造の形成が、促進される。別の実施形態では、組成物に対してさらに、単軸方向又は二軸方向に応力を加え、それによって、厚さ約0.01マイクロメートル〜約5000マイクロメートルのフィルムを生成する。フィルムが半結晶性ポリマー樹脂を含む場合、一般に延伸フィルムは、約θ=0度〜約θ=80度の方位角方向に配向した結晶を有することが望ましい。溶融ブレンド後の後処理に関するさらに別の実施形態では、約2分〜約2時間の間ブレンドした後、組成物を、融点よりも約1℃〜約100℃低い温度に過冷する。過冷した組成物は、一般に、SWNTを含む、スフェルライトなどの肉眼的な半結晶性構造を有することができる。
【0053】
後処理に関する別の実施形態で、導電性組成物は、熱アニールによって改善された電気を伝える能力を有することができる。理論に拘泥するものではないが、有機ポリマーのガラス転移温度よりも高い温度で組成物をアニールすることによって、導電性組成物中でSWNTの少量の再配列が生じ、それによって網状構造が改善され、したがって組成物が電気を伝える能力が増大すると考えられる。
【0054】
半結晶性ポリマーでは、SWNTが、核剤として振る舞うことができる。組成物の強度を改善するため、クリスタリットをSWNT上に凝集させることが望ましいと考えられる。一般に、クリスタリットの1重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上をSWNT上に凝集させることが望ましい。一般に、組成物の融解エンタルピーは、示差走査熱量計で約2℃/分以上の速度で測定した場合、約0.2ジュール/モル・ケルビン(J/mol−1・K−1)以上、好ましくは約3、より好ましくは約5J/mol−1・K−1以上であることが望ましい。
【0055】
組成物の製造には、溶液ブレンドを使用してもよい。溶液ブレンドは、SWNTとポリマー樹脂との均質化を促進させるため、剪断、圧縮、超音波振動などの、追加のエネルギーを使用することもできる。一実施形態では、流体中に懸濁させたポリマー樹脂を、SWNTと共に、超音波処理器に導入することができる。混合物は、SWNTをポリマー樹脂粒子上に分散させるのに有効な時間だけ、超音波処理によってブレンドした溶液でよい。次いでポリマー樹脂を、SWNTと共に乾燥し、押出、望む場合には成形することができる。一般に、流体は、超音波処理のプロセス中にポリマー樹脂を膨潤させることが望ましい。ポリマー樹脂の膨潤によって、一般に、溶液ブレンドプロセス中にSWNTをポリマー樹脂に染み込ませる能力が向上し、その結果、分散が改善される。
【0056】
溶液ブレンドに関する別の実施形態では、SWNTを、ポリマー樹脂前駆体と一緒に超音波処理する。ポリマー樹脂前駆体は、一般に、ポリマー樹脂へと反応することのできる、モノマー、ダイマー、トリマーなどである。溶媒などの流体は、SWNT及びポリマー樹脂前駆体と共に、超音波処理器に適宜導入することができる。超音波処理の時間は、一般に、ポリマー樹脂前駆体によってSWNTの封入化を促進させるのに有効な量である。次いで封入化後、ポリマー樹脂前駆体を重合して、SWNTが分散するポリマー樹脂を形成する。ポリマー樹脂にSWNTを分散させるこの方法は、SWNTのアスペクト比の保存を促進させ、したがって組成物は、より低い配合量のSWNTで導電率をもたらすことが可能になる。
【0057】
この封入化及び分散の方法を容易にするのに使用することのできる、モノマーの適切な例は、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンなどであるがこれらに限定することのない熱可塑性樹脂の合成に、使用されるものである。一般に、ポリマー樹脂、ポリマー樹脂前駆体、流体、及び/又はSWNTの混合物を、約1分〜約24時間にわたり超音波処理することが望ましい。この範囲内では、混合物を、約5分以上、好ましくは約10分以上、より好ましくは約15分以上にわたり超音波処理することが望ましい。またこの範囲内では、約15時間以下、好ましくは約10時間以下、より好ましくは約5時間以下であることも望ましい。
【0058】
上述の組成物は、広く様々な商業的用途に使用することができる。これらの組成物は、静電散逸から保護する必要のある、コンピュータ、電子物品、半導体部品、回路板などの電子部品の包装用フィルムとして、有利に利用することができる。またこれらの組成物は、コンピュータの外側に位置する人及びその他の電子物品に対して電磁遮蔽をもたらすように、またそれだけではなく内部のコンピュータ部品を、他の外部の電磁妨害から保護するように、コンピュータ及びその他の電子物品の内部で使用することもできる。またこれらの組成物は、必要なら静電塗装することができる自動車の内部及び外部部品に関して車体パネルでも有利に使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下の実施例は、例示的なものであってこれらに限定するものではなく、本明細書で述べる導電性組成物の様々な実施形態のいくつかの、組成物及び製造方法を示すものである。
【0060】
実施例1
この実施例では、Carbon Nanotechnologies Incorporated(CNI)又はNanoledge SAから市販されているSWNTと、Hyperion Catalysts Incorporatedから市販されている多層ナノチューブ(MWNT)との比較を行った。
【0061】
CNIから得られたSWNTは、SWNTの緻密な形態であるバッキーパールの形をしていた。CNIから得られたバッキーパールは、それぞれ10重量%又は29重量%の不純物を含有する。Nanoladgeから得られたSWNTは、30重量%又は50重量%の不純物を含有していた。SWNTの凝集を解き、且つ緻密化を解くために、まずSWNTを室温で約30分間、クロロホルム中で超音波処理した。次いでポリカーボネート樹脂を、超音波処理器内でSWNT−クロロホルム混合物に添加し、次いで超音波処理をさらに30分間継続した。次いで混合物を一晩乾燥し、得られたペーストを、DACA小型二軸スクリュー押出機で押出て、ストランドを形成した。DACA小型二軸スクリュー押出機は、その最大混合体積が5立方センチメートルであり、スクリュー速度は、約10rpmから約360rpmまで、1rpmずつデジタル式に制御可能なものである。
【0062】
MWNTは、Hyperion製の15重量%MWNTを有するポリカーボネートマスターバッチで得られた。次いでマスターバッチを、DACA小型二軸スクリュー押出機内に残されたポリマー樹脂と直接配合し、それによってストランドを形成した。これらのストランドでの導電率を、上記にて詳述したものと同じ手法で測定した。図2に示す結果は、SWNTを含有する組成物で得られた結果が、MWNTを含有する組成物に関して得られた結果よりも優れていることを、明らかに示している。一般にSWNTは、ポリマー樹脂中で0.1重量%程度に低い重量%で、測定可能な導電率をもたらすことがわかり、この場合の重量%は、全組成物に対して測定したものである。一方、MWNTは、3重量%未満の重量%で、測定可能な導電率を全くもたらさない。この図から、一般に、より低い量の不純物を含有するSWNTが、より低い抵抗率を有することもわかる。処理単位当たり10%の不純物を有するSWNTは、約1.2eΩ・cmの体積抵抗率を示す。したがって、より純粋な処理単位のSWNTが、より良好な導電率をもたらす。
【0063】
実施例2
この実施例は、種々のポリマー樹脂にSWNTを組み込んだ効果を実証するために、実施した。10重量%の不純物を含有するCNIから得られたSWNTを、超音波処理にかけて、SWNTの分散を促進させた。次いでSWNTを含有する溶液を、結晶質樹脂又は非晶質樹脂とブレンドし(粉末粒子の形態で)、乾燥にかけた。乾燥により、SWNTが、結晶質又は非晶質樹脂の表面に堆積した。次いでSWNTが堆積した結晶質又は非晶質樹脂を、実施例1で詳述した手法で押出た。以下の結晶質樹脂、即ちポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン6,6(N66)、ナイロン6(N6)、及び鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とのブレンドに関して得られた結果を図3に示し、以下の非晶質樹脂、即ちポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、高衝撃ポリスチレン(HIPS)、及びポリエーテルイミド(Ultem)とのブレンドに関して得られた結果を図4に示す。
【0064】
実施例3
この実施例では、まずMWNT及びSWNT(29重量%の不純物を含有)を溶融ブレンドすることによって、ナイロン6,6を含む10重量%のマスターバッチを形成し、その後、このマスターバッチを、16ミリメートル(mm)Prism二軸スクリュー押出機でポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドと溶融ブレンドすることにより、導電性組成物を得た。マスターバッチは、温度250℃、スクリュー速度300rpm、及び10 lb/時の速度で生成した。次いで16mm押出機から生成されたマスターバッチのストランドを、ペレット化した。SWNTを含有するマスターバッチのストランドは、非常に粗い表面を有するが、MWNTを含有するマスターバッチのペレットは、非常に滑らかな表面を有することがわかった。理論に拘泥するものではないが、これは、マスターバッチに配合したときに、SWNTがMWNTとは基本的に異なる手法で振る舞い、その表面積が大きいためにポリマー樹脂内に均一に分散することがより難しいことを示すと考えられる。
【0065】
ポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドに使用されるポリアミドは、ナイロン6,6であった。ポリフェニレンエーテルポリアミドブレンドは、最初に、290℃の30mm Werner&Pfleiderer二軸スクリュー押出機で配合した。スクリュー速度を350rpmに維持し、ブレンドを50 lb/時で生成した。
【0066】
表1に示す、ポリフェニレンエーテル及びその他の成分を、16mm Prism二軸スクリュー押出機ののど部に供給して、カーボンナノチューブを有するポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドを生成した。カーボンナノチューブを有するポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドは、温度250℃、スクリュー速度300rpm、及び10 lb/時の速度で生成した。
【0067】
次いで16mm Prism二軸スクリュー押出機からの押出し物を、ペレット化し、Boy 15 Tonプレス(射出成形機)での成形にかけて、ASTMアイゾットバーのみ形成した。Boy 15 Tonプレスのシリンダ内の温度を298℃に維持し、一方、金型内の温度は76℃に維持した。アイゾットバーを使用して、ASTM D256に従い衝撃強さを測定し、それと共に試料の体積固有抵抗率(SVR)も測定した。試料のSVRは、液体窒素中で、アイゾットバーの端部を低温破壊することによって測定した。バーを乾燥した後、端部を導電性の銀の塗料で塗装し、Flukeマルチメータを使用して抵抗率を測定した。5つの試料について測定し、その平均値を表2に報告する。これらの結果から、SWNTを0.4〜0.8重量%含有する試料については、体積固有抵抗率がないことがわかる。1.2重量%のナノチューブを含有する試料の場合、SWNTを含有する試料は、16ミリメートルの二軸スクリュー押出機内で分散しにくいにも関わらず、その導電率が、MWNTを含有する試料よりも完全に一桁向上することを示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

実施例4
この実施例では、MWNTから作製されたマスターバッチとSWNTから作製されたマスターバッチとが、例えば30mm Werner&Pfleiderer二軸スクリュー押出機などの高剪断条件下で作製された場合の、性能の相違の決定を行った。この実施例では、まず、MWNT又はSWNTを3重量%含むマスターバッチを、二軸スクリュー押出機で押出た。SWNTを含有するマスターバッチは非導電性であるが、MWNTを含有するマスターバッチは、約19.1kΩ・cmの体積固有抵抗率を示した。次いで3重量%のマスターバッチを、30mm Werner&Pfleiderer二軸スクリュー押出機で、追加のナイロン6,6と混合することによって希薄にし、それによって中間導電性組成物を形成した。中間体組成物を、表4に示す。表5に示したポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドを、30mm二軸スクリュー押出機で、個別の実験操作で押出た。最終的なポリフェニレンポリアミド組成物は、表4からの各々の組成物を、表5からのものと共に押し出すことによって得た。例えば表4からの試料7を、表5からの試料7とブレンドし、それによって、表6に示される試料7の結果をもたらす組成物を得た。
【0071】
マスターバッチの調製のため、30mm Werner&Pfleiderer二軸スクリュー押出機で利用される条件は、バレル温度が250℃、スクリュー速度が350rpm、出力が50 lb/時であった。ポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンド、並びにナノチューブを含有するポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドの調製に使用される押出機の条件は、バレル温度が290℃、スクリュー速度が350rpm、出力が50 lb/時であった。ナノチューブを含有するポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドの電気特性を、表6に示す。表6から、MWNTを含有する試料はいかなる導電率も示さないが、SWNTを有する試料は導電率を示すことがわかる。
【0072】
【表4】

【0073】
【表5】

【0074】
【表6】

これらの結果は、SWNTを含有するマスターバッチが、MWNTを含有するものとは異なる振舞いをすることを、明らかに示している。これらの結果から、SWNTを含有するマスターバッチは導電性ではないが、SWNTを含有するポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドは導電性であることがわかる。これは、MWNTを含有するポリフェニレンエーテル−ポリアミドブレンドとは対照的であり、即ちこのブレンドは非導電性であるが、これらのブレンドが作製されるマスターバッチは確かに導電性である。理論に拘泥するものではないが、より高い粘度のポリフェニレン−エーテルポリアミドブレンドをマスターバッチと配合したときに、押出機内に生ずる追加の剪断により、単層ナノチューブのもつれが解かれるのを促進し、それによって導電率が改善されると推測される。しかしMWNTでは、この追加の剪断によって、アスペクト比の低下が促進され、そのため試料の導電率が低下すると考えられる。MWNTの直径が大きいと、押出機内の剪断力にかけたときに、そのサイズの低下が促進される可能性があると推測される。
【0075】
実施例5
この実施例は、SWNTを熱可塑性樹脂とブレンドしたときに得ることができる、導電率のレベルに対する剪断の影響、並びに不純物の影響について実証する。この実施例では、数平均分子量が約17000グラム/モルであり重量平均分子量Mwが約41000であるポリカーボネート樹脂を、DACA小型二軸スクリュー押出機で1重量%のSWNTとブレンドした。SWNTは、3重量%又は10重量%の不純物を含有していた。押出機のスクリュー速度は、75、150、又は300rpmに調節した。押出機の温度は285℃であった。押出試料の導電率を、1、3、5、7、及び10分の混合間隔で測定した。約1〜約2分の混合間隔は、押出機内での溶融物の滞留時間と同様であり、したがって、これらの時間間隔で、試料は得られず且つ測定されない。次いで押出ストランドを、電気体積固有抵抗率の測定のために使用し、これをΩ・cmの単位で表す。3重量%及び10重量%の不純物をそれぞれ含有するブレンドに関し、そのSVR測定を、表7及び8に示す。
【0076】
【表7】

【0077】
【表8】

表7及び8からわかるように、重量パーセンテージの小さい不純物を有する試料は、一般に、導電率を示すためにそれほど混合を利用しない。結果は、所与の組成物中の不純物レベルが高くなるほど、商業的に実現可能な手法で電気性能を達成することがより難しくなることも示している。混合量が増えるにつれ、一般に最初に導電率のレベルが増大し、その後に低下することもわかるが、これは、混合が増大することにより、導電性SWNTが互いに分離することを示している。換言すれば、理論に拘泥するものではないが、最も低い抵抗率を得るために、所与の組成物に与える必要のある最適なエネルギーレベルがあると仮定される。
【0078】
実施例6
この実験は、混合が、樹脂の分子量に及ぼす影響と、得られたブレンドのSVRに及ぼす影響を決定するために実施した。この実施例では、ポリカーボネート樹脂を、DACA小型二軸スクリュー押出機で約1分〜約10分間、1重量%のSWNTとブレンドした。組成物、並びに製造方法は、実施例5で使用したものと同様であった。用いた試験方法は、上記にて詳述したものと同様であった。ポリカーボネートの数(M)及び重量平均(M)分子量を、GPCによって測定し、以下の表9及び10に示す。
【0079】
【表9】

【0080】
【表10】

上記表9及び10から、3重量%の不純物を含むSWNTを有する組成物は、一般に、混合の量が非常に短い場合にかなりの導電率を示すことがわかる。これらの表から、ブレンドプロセス中の分子量の低下量が同等である場合、より少ない不純物を含有する試料が、より高い量の導電率を持つ試料よりも、より大きい導電率をもたらすこともわかる。したがって、所与の組成物に関して適切なレベルの不純物を選択することにより、ポリマー樹脂の物理的性質の低下を最小限に抑えながら、所望のレベルの導電率をもたらすことが可能になる。
【0081】
上述の実施例からわかるように、SWNTを含む組成物は、MWNTを含む組成物よりも優れた性質を示す。SWNTを含む組成物は、一般に、5キロジュール/平方メートル(kJ/m)より大きいノッチ付アイゾット衝撃、好ましくは約10kJ/m以上、より好ましくは約12kJ/m以上のノッチ付アイゾット衝撃を有し、それと共に、クラスAの仕上げを有する。これらの組成物は、一般に、約0.1W/m・K以上、好ましくは約0.15W/m・K以上、より好ましくは0.2W/m・Kの熱伝導率を有する。
【0082】
これらの組成物は、一般に、約10eΩ・cm以下、好ましくは約10eΩ・cm以下、より好ましくは約10eΩ・cm以下、最も好ましくは約10eΩ・cm以下の体積抵抗率を有し、それと共に、表面抵抗率は、約10eΩ・cm以上、好ましくは約10eΩ・cm以上、より好ましくは約10e10Ω・cm以上である。これらの組成物は、一般に、電気輸送機構内に電気を通すが、これは本来弾道的なものであり、即ち抵抗率は、導電性要素の長さに比例して変化しない。そのような組成物は、車体パネル、包装用静電散逸性フィルム、電子部品及び航空電子部品用電磁遮蔽パネルなどに、有利に利用することができる。これらの組成物は、チップトレイ、熱伝導性パネル、生物医学的用途、高強度繊維、燃料電池に使用される水素貯蔵装置などに使用してもよい。
【0083】
実施例7
この実験は、導電性組成物中に形成された導電性網状構造を、熱アニールによって改善することができ、それによって、さらにより良好な導電性複合体が生成されることを実証するために行った。この実施例では、HF1110、ポリカーボネート樹脂を、10重量%不純物を含有するSWNTと溶融ブレンドした。組成物を表11に示す。表11は、ストランドに押出た後、射出成形した後、及び炉内で220℃でアニールした後の試料に関する電気抵抗率を、Ω・cmの単位で表している。これらの試料を、30mmの二軸スクリュー押出機で押出、一方、射出成形した試料は、85トンのvan Dorn成形機で製造した。アニールした試料を、220℃で120分にわたり処理した。
【0084】
【表11】

表11から、1重量%及び2重量%のSWNTを含有する組成物(試料番号1〜4)では、押出試料が、射出成形試料よりも導電性が高いことがわかる。換言すれば、処理の形態が、試料の導電率には重要な役割を演ずる。しかし、試料を220℃でアニールすると、表11の試料番号5〜8に見られるように、全ての試料の導電率が改善される(増加される)。さらに、アニールされた試料は、処理の形態に応じて導電率に著しい差をもたらさないことがわかる。換言すれば、アニールは、いかなる処理の痕跡も消し去るように見える。理論に拘泥するものではないが、ガラス転移温度を超えるアニールによって引き起こされた熱運動が、SWNTの小さな再配列を容易にし、それが導電率を改善すると考えられる。このような導電率の改善は、組成物中に確立された網状構造に関与する、SWNTの数の増大をもたらすことができる。
【0085】
実施例8
この実施例は、導電性組成物中の網状構造のノードの存在が、導電率を得易くすることを実証するために行った。ポリカーボネート(General Electricから得られる)及びSWNTを含む導電性組成物を、図5に見られるように溶融ブレンドし、又は溶液ブレンドした。図5は、透過型電子顕微鏡(TEM)下で見られる、導電性組成物から得られた試料をミクロトーム処理した切片の、顕微鏡写真を示す。ミクロトーム処理した切片を、溶媒で最適にエッチングし、ポリマーマトリックス中に分散したSWNTロープの画像形成を可能にした。図5では、黒斑で示される多数のノードを含有する試料が、一般に、より良好な導電率を示すことがわかる。例えば、顕微鏡写真(b)には黒斑が示されず、その結果、この試料は導電率を示さない。一方、顕微鏡写真(c)及び(d)は、約30個及び約50個の黒斑(ノード)を示し、これらの試料はそれぞれ、顕微鏡写真(a)及び(b)に示される試料によって表されるよりも高い導電率を示す。これらの結果から、ノードの数を増大させることによって、導電率の増大をもたらすことができることが、明らかにわかる。したがって、1平方マイクロメートル当たりのノード数を増やすことが望ましい。
【0086】
実施例9
この実施例は、成形条件を変えることによって、導電率を改善することができることを実証するために行った。この実施例では、ポリカーボネートをポリマー樹脂として使用し、一方、10%不純物を含有するSWNTは、導電性網状構造を形成するのに使用した。標準的な引張り試験片を、85 Ton van Dorn射出成形機で射出成形した。この試験片について、前述の実施例で述べたように試験をした。結果を図6に示す。図6は、体積固有抵抗率(SVR)が射出速度によってどのように変化するかを示している。この図から、背圧及び射出速度が増大するにつれ、電気抵抗率が低下することがわかる。これは、成形品の導電率を改善するために、網状構造を改善することができることを。明らかに示している。前に述べたように、成形温度及び金型内での滞留時間を増大させることにより、成形品の導電率も増大させることができる。
【0087】
本発明について、例示的な実施形態を参照しながら述べてきたが、当業者なら、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変化を加えることができ、また各要素の代わりに均等物を用いることができることが理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、本発明の教示に対して特定の状況又は材料を適合させるように多くの修正を加えることができる。したがって本発明は、本発明を実施するために企図された、最良の形態として開示された特定の実施形態に限定するものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲内に包含される全ての実施形態を含むことになる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】グラフェンシートを巻き上げて螺旋構造のナノチューブを生成する様々な方法を示す図である。螺旋構造は、ジグザグ形でもアームチェア形でもよい。
【図2】SWNT及びMWNTを含有するストランドの、導電性のグラフ表示である。
【図3】半結晶性ポリマーの押出ストランドの導電性のグラフ表示である。
【図4】非晶質ポリマーの押出ストランドの導電性のグラフ表示である。
【図5】導電性組成物から得られるミクロトーム処理試料の様々な断面の顕微鏡写真を示す図である。
【図6】体積固有抵抗率(SVR)が導電率によってどのように変化するかを示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー樹脂と、
単層カーボンナノチューブと
を含む導電性組成物であって、約10e12Ω・cm以下の体積抵抗率、及び約5キロジュール/平方メートル以上のノッチ付アイゾット衝撃強さを有する導電性組成物。
【請求項2】
前記組成物が、約2重量%以下の量でカーボンナノチューブを含み、前記組成物が、10eΩ・cm未満の体積抵抗率、5キロジュール/平方メートルを超えるノッチ付アイゾット衝撃強さ、及びクラスAの表面仕上げを有する、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記単層カーボンナノチューブが、約0.7〜約2.4ナノメートルの直径を有し、前記カーボンナノチューブが、10以上のカーボンナノチューブのロープの形で存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記カーボンナノチューブが、最高約80重量%までの不純物をさらに含み、前記不純物が、鉄、酸化鉄、イットリウム、カドミウム、ニッケル、コバルト、銅、煤塵、無定形炭素、多層カーボンナノチューブ、又は前記不純物の1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブが、金属、半導体、又は前記カーボンナノチューブの1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記ポリマー樹脂が、ポリアセタール、ポリアクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリアリーレート、ポリウレタン、ポリアリールスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンスルフィド、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、又は前記ポリマー樹脂の1種以上を含む組合せである、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
前記ポリマー樹脂が相分離形態を有し、前記単層カーボンナノチューブが相当な割合で、ブレンドの単一相中に存在する、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
前記単層カーボンナノチューブが、官能基で誘導体化される、請求項1記載の組成物。
【請求項9】
ポリマー樹脂と、
多層カーボンナノチューブと
を含む導電性組成物であって、該多層カーボンナノチューブが、3.5ナノメートル未満の直径を有し、2、3、4、及び5層の炭素層を有し、該組成物が、約10e12Ω・cm以下の体積抵抗率、約5キロジュール/平方メートル以上のノッチ付アイゾット衝撃強さ、及びクラスAの表面仕上げを有する導電性組成物。
【請求項10】
ポリマー樹脂及び単層カーボンナノチューブをブレンドして、約10eΩ・cm以下の体積抵抗率、及び約5キロジュール/平方メートル以上のノッチ付アイゾット衝撃強さを有する組成物を生成するステップを含む、組成物の製造方法。
【請求項11】
前記単層カーボンナノチューブを、3重量%以上のカーボンナノチューブを含む非導電性マスターバッチの形でポリマー樹脂に添加する、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記組成物のブレンドが、剪断力、延伸力、圧縮力、超音波エネルギー、電磁エネルギー、熱エネルギー、又は前記力及びエネルギーの1種以上を含む組合せの使用を含み、且つ単軸スクリュー、多軸スクリュー、噛合型同方向回転又は異方向回転スクリュー、非噛合型同方向回転又は異方向回転スクリュー、往復回転スクリュー、ピンを備えたスクリュー、ピン、スクリーンパック、ロール、ラム、螺旋ロータを備えたバレル、又は前記1種以上を含む組合せによって前述の力が加えられる処理装置で実施され、前記ブレンドに使用される比エネルギー量が約0.01kw時/kg〜約10kw時/kgである、請求項10記載の方法。
【請求項13】
請求項1記載の組成物から製造された物品。
【請求項14】
請求項9記載の組成物から製造された物品。
【請求項15】
請求項10記載の方法によって製造された物品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公表番号】特表2006−526058(P2006−526058A)
【公表日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−513143(P2006−513143)
【出願日】平成16年4月20日(2004.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2004/012109
【国際公開番号】WO2004/097852
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】