説明

導電性膜形成用感光材料、導電性膜、透光性電磁波シールド膜、及びそれらの製造方法

【課題】 高い電磁波シールド性と高い透明性とを同時に有する導電性膜を製造することができ、かつ、圧力性が改善された導電性膜形成用感光材料を提供すること。
【解決手段】 支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記乳剤層に酸化防止剤を含有することを特徴とする導電性膜形成用感光材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CRT(陰極線管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)、液晶、EL(エレクトロルミネッセンス)、FED(フィールドエミッションディスプレイ)などのディスプレイ前面、電子レンジ、電子機器、プリント配線板などから発生する電磁波を遮蔽し、かつ、透光性を有する電磁波シールド膜等の導電性膜を形成するための銀塩感光材料及び導電性膜の製造方法に関する。
また、これらの画像表示素子に加えて撮像素子などにも用いられる透光性導電膜及びその製造法にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各種の電気設備や電子応用設備の利用の増加に伴い、電磁波障害(Electro-Magnetic Interference:EMI)が急増している。EMIは、電子、電気機器の誤動作、障害の原因になるほか、これらの装置のオペレーターにも健康障害を与えることが指摘されている。このため、電子電気機器では、電磁波放出の強さを規格又は規制内に抑えることが要求されている。
【0003】
上記EMIの対策には電磁波をシールドする必要があるが、それには金属の電磁波を貫通させない性質を利用すればよいことは自明である。例えば、筐体を金属体又は高導電体にする方法や、回路基板と回路基板との間に金属板を挿入する方法、ケーブルを金属箔で覆う方法などが採用されている。しかし、CRT、PDPなどではオペレーターが画面に表示される文字等を認識する必要があるため、ディスプレイにおける透明性が要求される。このため、前記の方法では、いずれもディスプレイ前面が不透明になることが多く、電磁波のシールド法としては不適切なものであった。
【0004】
特に、PDPは、CRT等と比較すると多量の電磁波を発生するため、より強い電磁波シールド能が求められている。電磁波シールド能は、簡便には表面抵抗値で表すことができ、CRT用の透光性電磁波シールド材料では、表面抵抗値は凡そ300Ω/sq以下であることが要求されるのに対し、PDP用の透光性電磁波シールド材料では、2.5Ω/sq以下が要求され、PDPを用いた民生用プラズマテレビにおいては、1.5Ω/sq以下とする必要性が高く、より望ましくは0.1Ω/sq以下という極めて高い導電性が要求されている。
また、透明性に関する要求レベルは、CRT用として凡そ70%以上、PDP用として80%以上が要求されており、更により高い透明性が望まれている。
【0005】
上記の問題を解決するために、以下に示されるように、開口部を有する金属メッシュを利用して電磁波シールド性と透明性とを両立させる種々の材料・方法がこれまで提案されている。
【0006】
(1)導電性繊維
例えば、特許文献1には、導電性繊維からなる電磁波シールド材が開示されている。しかし、このシールド材はメッシュ線幅が太くディスプレイ画面をシールドすると、画面が暗くなり、ディスプレイに表示された文字が見えにくいという欠点があった。
【0007】
(2)無電解メッキ加工メッシュ
無電解メッキ触媒を印刷法で格子状パターンとして印刷し、次いで無電解メッキを行う方法が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3など)。しかし、印刷される触媒の線幅は60μm程度と太く、比較的小さな線幅、緻密なパターンが要求されるディスプレイの用途としては不適切であった。
さらに、無電解メッキ触媒を含有するフォトレジストを塗布して露光と現像を行うことにより無電解メッキ触媒のパターンを形成した後、無電解メッキする方法が提案されている(例えば、特許文献4)。しかし、導電膜の可視光透過率は72%であり、透明性が不十分であった。更には、露光後に大部分を除去する無電解メッキ触媒として極めて高価なパラジウムを用いる必要があるため、製造コストの面でも問題があった。
【0008】
(3)フォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工メッシュ
フォトリソグラフィー法を利用したエッチング加工により、透明基体上に金属薄膜のメッシュを形成する方法が提案されている(例えば、特許文献5、特許文献6、特許文献7、特許文献8など)。この方法では、微細加工が可能であるため、高開口率(高透過率)のメッシュを作成することができ、強力な電磁波放出も遮蔽できるという利点を有する。しかし、その製造工程は煩雑かつ複雑で、生産コストが高価になるという間題点があった。また、エッチング工法によるところから、格子模様の交点部が直線部分の線幅より太い問題があることが知られている。また、モアレの問題も指摘され、改善が要望されていた。
【0009】
(4)銀塩を用いた導電性金属銀パターンの形成方法
銀塩を利用した感光材料は、従来主に、画像や映像を記録・伝達するための材料として利用されてきた。例えばカラーネガフィルム、黒白ネガフィルム、映画用フィルム、カラーリバーサルフィルム等の写真フィルム、カラーペーパー、黒白印画紙などの写真用印画紙等であり、更にまた、金属銀を露光パターン通りに形成できることを利用したエマルジョンマスク(フォトマスク)等が汎用されている。これらはすべて銀塩を露光・現像して得られる画像自体に価値があり、画像そのものを利用している。
【0010】
しかしながら、銀塩から得られる現像銀は金属銀であることから、製法次第では金属銀の導電性を利用することが可能と考えられる。この様な提案は古くから近年まで散見され、導電性銀薄膜の具体的形成法を開示した例として、1960年代に物理現像核に銀を沈着させる銀塩拡散転写法によって金属銀薄膜パターンを形成する方法が、特許文献9に開示されている。また同様の銀塩拡散転写法を利用して得た光透過性のない均一な銀薄膜がマイクロ波減衰機能を有することが特許文献10に開示されている。またこの原理をそのまま用い、インスタント黒白スライドフィルムを用いて簡便に露光・現像を行って導電性パターンを形成する方法が、非特許文献1及び特許文献11に記載されている。また、銀塩拡散転写法の原理によって、プラズマディスプレイ用の表示電極に利用可能な導電性の銀膜を形成する方法が特許文献12に記載されている。
【0011】
しかし、このような方法で得た導電性金属銀膜は、画像表示や画像形成素子用としては透光性が不十分であり、またCRTやPDPなどのディスプレイの画像表示面から放射される電磁波を、画像表示を妨害せずに、シールドする方策については全く知られていなかった。
上記文献に記載された方法では、導電性金属パターンが形成される層に特別に調製された物理現像核が露光部・未露光部の区別なく均一に設けられる。このため、金属銀膜が生成しない露光部に、不透明な物理現像核が残存し、光線透過性が損なわれるという欠点があった。特に、金属パターン材料をCRTやPDP等ディスプレイの透光性電磁波シールド材料として利用する場合には、上記の欠点は重大である。
また、高い導電性を得ることも困難で、高い導電性を得るために厚い銀膜を得ようとすると、透明性が損なわれる問題があった。したがって、上記銀塩拡散転写法をそのまま用いても、電子ディスプレイ機器の画像表示面からの電磁波をシールドするのに好適な、光透過性と導電性の優れた透光性電磁波シールド材料は得ることができなかった。
また、銀塩拡散転写法を用いないで、通常の市販のネガフィルムを利用し、現像、物理現像、メッキ工程を通じて導電性を付与した場合、導電性と透明性の点において、CRTやPDPの透光性電磁波シールド材料として利用するには不十分なものであった。
【0012】
このようなことから、電子ディスプレイ機器の発する電磁波をシールドする方策として銀塩感光材料を用いて透光性電磁波シールド材料の製造する方法が特許文献13に開示されている。
【0013】
【特許文献1】特開平5−327274号公報
【特許文献2】特開平11−170420号公報
【特許文献3】特開平5−283889号公報
【特許文献4】特開平11−170421号公報
【特許文献5】特開2003−46293号公報
【特許文献6】特開2003−23290号公報
【特許文献7】特開平5−16281号公報
【特許文献8】特開平10−338848号公報
【特許文献9】特公昭42−23746号公報
【特許文献10】特公昭43−12862号公報
【特許文献11】国際公開WO 01/51276号公報
【特許文献12】特開2000−149773号公報
【特許文献13】特開2004−221564号公報
【非特許文献1】アナリティカル・ケミストリー(Analytical Chemistry)、2000年発刊、第72巻、645項
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記のような透光性電磁波シールド材料を製造するための銀塩感光材料において、上記のように物理現像および/またはメッキ処理が速やかに行われるためには、乳剤層上に保護層を設けないことが極めて有利である。しかしながら、保護層が設けられていない銀塩感光材料は、外圧による影響を受けやすく、カブリが起きやすいという問題がある。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、高い電磁波シールド性と高い透明性とを同時に有する導電性膜を製造することができ、かつ、外圧による影響が低減された(圧力性が改善された)導電性膜形成用感光材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の目的は、以下の発明により達成される。
1. 支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記乳剤層に酸化防止剤を含有することを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
2. 支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記乳剤層に酸化剤を含有することを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
3. 支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記銀塩乳剤が実質的に未化学増感乳剤であることを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
4. 支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記銀塩乳剤が沃化銀含有率1.5mol%以下であるハロゲン化銀乳剤であることを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
5. 支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記銀塩乳剤の塗設量が銀量換算で4g/m以下であることを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
6. 前記乳剤層におけるAg/バインダーの重量比率が1.5以上であることを特徴とする上記5に記載の導電性膜形成用感光材料。
7. 前記乳剤層の下層にバインダー層を有することを特徴とする上記5又は6に記載の導電性膜形成用感光材料。
8. 支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記乳剤層にマット剤、すべり剤、コロイダルシリカ、帯電防止剤の少なくともいずれか1種を含有することを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
9. 上記1から8のいずれかの組み合わせからなることを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
10. 上記1から9のいずれかに記載の導電性膜形成用感光材料を、露光後現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことを特徴とする導電性膜の製造方法。
11. 導電性膜が電磁波シールド性を有することを特徴とする上記10に記載の導電性膜の製造方法。
12. 前記導電性膜形成用感光材料を部分的に露光することによって導電性金属部を部分的に形成することにより、露光パターンに応じた導電性金属パターンを形成することを特徴とする上記10又は11に記載の導電性膜の製造方法。
13. 前記露光部のみに導電性金属部を形成することを特徴とする上記12に記載の導電性膜の製造方法。
14. 前記導電性金属部以外の部分が光透過性であることを特徴とする上記13に記載の導電性膜の製造方法。
15. 上記14に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする透光性電磁波シールド膜。
16. 上記15に記載の透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜。
17. 接着剤層を有する上記15又は16に記載の透光性電磁波シールド膜。
18. 剥離可能な保護フィルムを有する上記15〜17のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
19. 導電性パターン表面の表面積で20%以上が黒色であることを特徴とする上記15〜18のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
20. 赤外線遮蔽性、ハードコート性、反射防止性、妨眩性、静電気防止性、防汚性、紫外線カット性、ガスバリア性、表示パネル破損防止性、からいずれか1つ以上選ばれる機能を有している機能性透明層を有する、上記15〜19のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
21. 赤外線遮蔽性を有する上記15〜20のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
22. 上記15〜21のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜を備えた光学フィルター。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高い電磁波シールド性と高い透明性とを有する透光性電磁波シールド膜が得られ、かつ圧力性に優れた導電性膜形成用感光材料が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の導電性膜形成用感光材料及びこの感光材料を用いて形成される透光性電磁波シールド膜について詳細に説明する。
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味として使用される。
【0018】
〈導電性膜形成用感光材料〉
[支持体]
本発明の製造方法に用いられる感光材料の支持体としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、およびガラス板などを用いることができる。
上記プラスチックフィルムおよびプラスチック板の原料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、およびポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVAなどのポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)などを用いることができる。
本発明においては、透明性、耐熱性、取り扱いやすさおよび価格の点から、上記プラスチックフィルムはポリエチレンテレフタレートフィルム又はトリアセチルセルロース(TAC)であることが好ましい。
【0019】
本発明の導電性膜がディスプレイ用の電磁波シールド材料として用いられる場合、支持体は透明プラスチック等の透明基材であることが好ましい。この場合におけるプラスチックフィルムまたはプラスチック板の全可視光透過率は70〜100%が好ましく、さらに好ましくは85〜100%であり、特に好ましくは90〜100%である。また、本発明では、前記プラスチックフィルムおよびプラスチック板として本発明の目的を妨げない程度に着色したものを用いることもできる。
本発明におけるプラスチックフィルムおよびプラスチック板は、単層で用いることもできるが、2層以上を組み合わせた多層フィルムとして用いることも可能である。
【0020】
本発明における支持体としてガラス板を用いる場合、その種類は特に限定されないが、ディスプレイ用電磁波シールド膜の用途として用いる場合、表面に強化層を設けた強化ガラスを用いることが好ましい。強化ガラスは、強化処理していないガラスに比べて破損を防止できる可能性が高い。さらに、風冷法により得られる強化ガラスは、万一破損してもその破砕破片が小さく、かつ端面も鋭利になることはないため、安全上好ましい。
【0021】
[乳剤層]
本発明の製造方法に用いられる感光材料は、支持体上に、光センサーとして銀塩乳剤を含む乳剤層(銀塩含有層)を有する。乳剤層は実質的に最上層に配置されている。ここで、「乳剤層が実質的に最上層である」とは、乳剤層が実際に最上層に配置されている場合のみならず、乳剤層の上に設けられた層の総膜厚が0.5μm以下であることを意味する。乳剤層の上に設けられた層の総膜厚は、好ましくは0.2μm以下である。
【0022】
乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダー、溶媒等を含有することができる。以下、乳剤層に含まれる各成分について説明する。
<染料>
感光材料には、少なくとも乳剤層に染料が含まれていてもよい。該染料は、フィルター染料として若しくはイラジエーション防止その他種々の目的で乳剤層に含まれる。上記染料としては、固体分散染料を含有してよい。本発明に好ましく用いられる染料としては、特開平9−179243号公報記載の一般式(FA)、一般式(FA1)、一般式(FA2)、一般式(FA3)で表される染料が挙げられ、具体的には同公報記載の化合物F1〜F34が好ましい。また、特開平7−152112号公報記載の(II−2)〜(II−24)、特開平7−152112号公報記載の(III−5)〜(III−18)、特開平7−152112号公報記載の(IV−2)〜(IV−7)等も好ましく用いられる。
【0023】
このほか、本発明に使用することができる染料としては、現像または定着の処理時に脱色させる固体微粒子分散状の染料としては、特開平3−138640号公報記載のシアニン染料、ピリリウム染料およびアミニウム染料が挙げられる。また、処理時に脱色しない染料として、特開平9−96891号公報記載のカルボキシル基を有するシアニン染料、特開平8−245902号公報記載の酸性基を含まないシアニン染料および同8−333519号公報記載のレーキ型シアニン染料、特開平1−266536号公報記載のシアニン染料、特開平3−136038号公報記載のホロポーラ型シアニン染料、特開昭62−299959号公報記載のピリリウム染料、特開平7−253639号公報記載のポリマー型シアニン染料、特開平2−282244号公報記載のオキソノール染料の固体微粒子分散物、特開昭63−131135号公報記載の光散乱粒子、特開平9−5913号公報記載のYb3+化合物および特開平7−113072号公報記載のITO粉末等が挙げられる。また、特開平9−179243号公報記載の一般式(F1)、一般式(F2)で表される染料で、具体的には同公報記載の化合物F35〜F112も用いることができる。
【0024】
また、上記染料としては、水溶性染料を含有することができる。このような水溶性染料としては、オキソノール染料、ベンジリデン染料、メロシアニン染料、シアニン染料およびアゾ染料が挙げられる。中でも本発明においては、オキソノール染料、ヘミオキソノール染料およびベンジリデン染料が有用である。本発明に用い得る水溶性染料の具体例としては、英国特許584,609号明細書、同1,177,429号明細書、特開昭48−85130号公報、同49−99620号公報、同49−114420号公報、同52−20822号公報、同59−154439号公報、同59−208548号公報、米国特許2,274,782号明細書、同2,533,472号明細書、同2,956,879号明細書、同3,148,187号明細書、同3,177,078号明細書、同3,247,127号明細書、同3,540,887号明細書、同3,575,704号明細書、同3,653,905号明細書、同3,718,427号明細書に記載されたものが挙げられる。
【0025】
上記乳剤層中における染料の含有量は、イラジエーション防止などの効果と、添加量増加による感度低下の観点から、全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
【0026】
<銀塩>
本発明で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀などの無機銀塩および酢酸銀などの有機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0027】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
本発明においては、光センサーとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0028】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素およびフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0029】
尚、ここで、「AgBr(臭化銀)を主体としたハロゲン化銀」とは、ハロゲン化銀組成中に占める臭化物イオンのモル分率が50%以上のハロゲン化銀をいう。このAgBrを主体としたハロゲン化銀粒子は、臭化物イオンのほかに沃化物イオン、塩化物イオンを含有していてもよい。
【0030】
なお、ハロゲン化銀乳剤における沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1.5mol%であることが好ましい。沃化銀含有率を1.5mol%とすることにより、カブリを防止し、圧力性を改善することができる。より好ましい沃化銀含有率は、ハロゲン化銀乳剤1モルあたり1mol%以下である。
【0031】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。
尚、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0032】
ハロゲン化銀粒子の形状は特に限定されず、例えば、球状、立方体状、平板状(6角平板状、三角形平板状、4角形平板状など)、八面体状、14面体状など様々な形状であることができ、立方体、14面体が好ましい。
ハロゲン化銀粒子は内部と表層が均一な相からなっていても異なっていてもよい。また粒子内部或いは表面にハロゲン組成の異なる局在層を有していてもよい。
【0033】
本発明に用いられる乳剤層用塗布液であるハロゲン化銀乳剤は、P. Glafkides 著 Chimie etPhysique Photographique (Paul Montel 社刊、1967年)、G. F. Dufin 著Photographic Emulsion Chemistry (The Forcal Press刊、1966年)、V. L.Zelikman et al著 Making and Coating Photographic Emulsion (The ForcalPress 刊、1964年)などに記載された方法を用いて調製することができる。
【0034】
すなわち、上記ハロゲン化銀乳剤の調製方法としては、酸性法、中性法等のいずれでもよく、又、可溶性銀塩と可溶性ハロゲン塩とを反応させる方法としては、片側混合法、同時混合法、それらの組み合わせなどのいずれを用いてもよい。
また、銀粒子の形成方法としては、粒子を銀イオン過剰の下において形成させる方法(いわゆる逆混合法)を用いることもできる。さらに、同時混合法の一つの形式としてハロゲン化銀の生成される液相中のpAgを一定に保つ方法、すなわち、いわゆるコントロールド・ダブルジェット法を用いることもできる。
またアンモニア、チオエーテル、四置換チオ尿素等のいわゆるハロゲン化銀溶剤を使用して粒子形成させることも好ましい。係る方法としてより好ましくは四置換チオ尿素化合物であり、特開昭53−82408号、同55−77737号各公報に記載されている。
好ましいチオ尿素化合物はテトラメチルチオ尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジンチオンが挙げられる。ハロゲン化銀溶剤の添加量は用いる化合物の種類および目的とする粒子サイズ、ハロゲン組成により異なるが、ハロゲン化銀1モルあたり10-5〜10-2モルが好ましい。
【0035】
上記コントロールド・ダブルジェット法およびハロゲン化銀溶剤を使用した粒子形成方法では、結晶型が規則的で粒子サイズ分布の狭いハロゲン化銀乳剤を作るのが容易であり、本発明に好ましく用いることができる。
また、粒子サイズを均一にするためには、英国特許第1,535,016号明細書、特公昭48−36890号広報、同52−16364号公報に記載されているように、硝酸銀やハロゲン化アルカリの添加速度を粒子成長速度に応じて変化させる方法や、英国特許第4,242,445号明細書、特開昭55−158124号公報に記載されているように水溶液の濃度を変化させる方法を用いて、臨界飽和度を越えない範囲において早く銀を成長させることが好ましい。本発明における乳剤層の形成に用いられるハロゲン化銀乳剤は単分散乳剤が好ましく、{(粒子サイズの標準偏差)/(平均粒子サイズ)}×100で表される変動係数が20%以下、より好ましくは15%以下、最も好ましくは10%以下であることが好ましい。
【0036】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、粒子サイズの異なる複数種類のハロゲン化銀乳剤を混合してもよい。
【0037】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤は、VIII族、VIIB族に属する金属を含有してもよい。特に、高コントラストおよび低カブリを達成するために、ロジウム化合物、イリジウム化合物、ルテニウム化合物、鉄化合物、オスミウム化合物などを含有することが好ましい。これら化合物は、各種の配位子を有する化合物であってよく、配位子として例えば、シアン化物イオンやハロゲンイオン、チオシアナートイオン、ニトロシルイオン、水、水酸化物イオンなどや、こうした擬ハロゲン、アンモニアのほか、アミン類(メチルアミン、エチレンジアミン等)、ヘテロ環化合物(イミダゾール、チアゾール、5−メチルチアゾール、メルカプトイミダゾールなど)、尿素、チオ尿素等の、有機分子を挙げることができる。
また、高感度化のためにはK4〔Fe(CN)6〕やK4〔Ru(CN)6〕、K3〔Cr(CN)6〕のごとき六シアノ化金属錯体のドープが有利に行われる。
【0038】
上記ロジウム化合物としては、水溶性ロジウム化合物を用いることができる。水溶性ロジウム化合物としては、例えば、ハロゲン化ロジウム(III)化合物、ヘキサクロロロジウム(III)錯塩、ペンタクロロアコロジウム錯塩、テトラクロロジアコロジウム錯塩、ヘキサブロモロジウム(III)錯塩、ヘキサアミンロジウム(III)錯塩、トリザラトロジウム(III)錯塩、K3Rh2Br9等が挙げられる。
これらのロジウム化合物は、水或いは適当な溶媒に溶解して用いられるが、ロジウム化合物の溶液を安定化させるために一般によく行われる方法、すなわち、ハロゲン化水素水溶液(例えば塩酸、臭酸、フッ酸等)、或いはハロゲン化アルカリ(例えばKCl、NaCl、KBr、NaBr等)を添加する方法を用いることができる。水溶性ロジウムを用いる代わりにハロゲン化銀調製時に、あらかじめロジウムをドープしてある別のハロゲン化銀粒子を添加して溶解させることも可能である。
【0039】
上記イリジウム化合物としては、K2IrCl6、K3IrCl6等のヘキサクロロイリジウム錯塩、ヘキサブロモイリジウム錯塩、ヘキサアンミンイリジウム錯塩、ペンタクロロニトロシルイリジウム錯塩等が挙げられる。
上記ルテニウム化合物としては、ヘキサクロロルテニウム、ペンタクロロニトロシルルテニウム、K4〔Ru(CN)6〕等が挙げられる。
上記鉄化合物としては、ヘキサシアノ鉄(II)酸カリウム、チオシアン酸第一鉄が挙げられる。
【0040】
上記ルテニウム、オスミニウムは特開昭63−2042号公報、特開平1−285941号公報、同2−20852号公報、同2−20855号公報等に記載された水溶性錯塩の形で添加され、特に好ましいものとして、以下の式で示される六配位錯体が挙げられる。
〔ML6〕‐n
(ここで、MはRu、またはOsを表し、nは0、1、2、3または4を表す。)
この場合、対イオンは重要性を持たず、例えば、アンモニウム若しくはアルカリ金属イオンが用いられる。また好ましい配位子としてはハロゲン化物配位子、シアン化物配位子、シアン酸化物配位子、ニトロシル配位子、チオニトロシル配位子等が挙げられる。以下に本発明に用いられる具体的錯体の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0041】
〔RuCl6-3、〔RuCl4(H2O)2-1、〔RuCl5(NO)〕-2、〔RuBr5(NS)〕-2、〔Ru(CO)3Cl3-2、〔Ru(CO)Cl5-2、〔Ru(CO)Br5-2、〔OsCl6-3、〔OsCl5(NO)〕-2、〔Os(NO)(CN)5-2、〔Os(NS)Br5-2、〔Os(CN)6-4、〔Os(O)2(CN)5-4
【0042】
これらの化合物の添加量はハロゲン化銀1モル当り10-10〜10-2モル/モルAgで
あることが好ましく、10-9〜10-3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
【0043】
その他、本発明では、Pd(II)イオンおよび/またはPd金属を含有するハロゲン化銀も好ましく用いることができる。Pdはハロゲン化銀粒子内に均一に分布していてもよいが、ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有させることが好ましい。ここで、Pdが「ハロゲン化銀粒子の表層近傍に含有する」とは、ハロゲン化銀粒子の表面から深さ方向に50nm以内において、他層よりもパラジウムの含有率が高い層を有することを意味する。
このようなハロゲン化銀粒子は、ハロゲン化銀粒子を形成する途中でPdを添加することにより作製することができ、銀イオンとハロゲンイオンとをそれぞれ総添加量の50%以上添加した後に、Pdを添加することが好ましい。またPd(II)イオンを後熟時に添加するなどの方法でハロゲン化銀表層に存在させることも好ましい。
このPd含有ハロゲン化銀粒子は、物理現像や無電解メッキの速度を速め、所望の電磁波シールド材の生産効率を上げ、生産コストの低減に寄与する。Pdは、無電解メッキ触媒としてよく知られて用いられているが、本発明では、ハロゲン化銀粒子の表層にPdを偏在させることが可能なため、極めて高価なPdを節約することが可能である。
【0044】
本発明において、ハロゲン化銀に含まれるPdイオンおよび/またはPd金属の含有率は、ハロゲン化銀の、銀のモル数に対して10-4〜0.5モル/モルAgであることが好ましく、0.01〜0.3モル/モルAgであることがさらに好ましい。
使用するPd化合物の例としては、PdCl4や、Na2PdCl4等が挙げられる。
【0045】
本発明に係る未化学増感乳剤について説明する。ハロゲン化銀写真感光材料においては、ハロゲン化銀乳剤は化学増感を施されるのが通常である。化学増感の方法としては、例えば特開平2000−275770号の段落番号0078以降に引用されている、写真感光材料の感度増感作用のあるカルコゲナイト化合物あるいは貴金属化合物からなる化学増感剤をハロゲン化銀乳剤に添加することによって行われる。本発明の感光材料に用いる銀塩乳剤としては、このような化学増感を行わない乳剤、すなわち未化学増感乳剤を好ましく用いることができる。未化学増感乳剤の調製方法としては、これら化学増感剤を乳剤に添加しないことによって容易に行うことが可能である。また、乳剤にカルコゲナイトあるいは貴金属を含有する化合物が添加されたでも、これらの添加を行わなかった場合に対する感度増加が小さい場合、本発明ではこの乳剤を未化学増感と見なす。本発明において好ましい未化学増感乳剤の調製方法としては、カルコゲナイトあるいは貴金属化合物からなる化学増感剤の添加量を、これらが添加されたことによる感度上昇が0.1以内になる量以下の量にとどめることが好ましい。カルコゲナイトあるいは貴金属化合物の添加量の具体的な量に制限はないが、本発明における未化学増感乳剤の好ましい調製方法として、これら化学増感化合物の総添加量をハロゲン化銀1モルあたり5×10−7モル以下にすることが好ましく、これら化合物の添加を全く行わないことがより好ましい。
【0046】
本発明では、さらに光センサーとしての感度を向上させるため、写真乳剤で行われる化学増感を施すこともできる。化学増感の方法としては、硫黄増感、セレン増感、テルル増感等カルコゲン増感、金増感などの貴金属増感、還元増感等を用いることができる。これらは、単独または組み合わせて用いられる。上記化学増感の方法を組み合わせて使用する場合には、例えば、硫黄増感法と金増感法、硫黄増感法とセレン増感法と金増感法、硫黄増感法とテルル増感法と金増感法などの組み合わせが好ましい。
【0047】
上記硫黄増感は、通常、硫黄増感剤を添加して、40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。上記硫黄増感剤としては公知の化合物を使用することができ、例えば、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか、種々の硫黄化合物、例えば、チオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾール類、ローダニン類等を用いることができる。好ましい硫黄化合物は、チオ硫酸塩、チオ尿素化合物である。硫黄増感剤の添加量は、化学熟成時のpH、温度、ハロゲン化銀粒子の大きさなどの種々の条件の下で変化し、ハロゲン化銀1モル当り10-7〜10-2モルが好ましく、より好ましくは10-5〜10-3モルである。
【0048】
上記セレン増感に用いられるセレン増感剤としては、公知のセレン化合物を用いることができる。すなわち、上記セレン増感は、通常、不安定型および/または非不安定型セレン化合物を添加して40℃以上の高温で乳剤を一定時間攪拌することにより行われる。上記不安定型セレン化合物としては特公昭44−15748号公報、同43−13489号公報、特開平4−109240号公報、同4−324855号公報等に記載の化合物を用いることができる。特に特開平4−324855号公報中の一般式(VIII)および(IX)で示される化合物を用いることが好ましい。
【0049】
上記テルル増感剤に用いられるテルル増感剤は、ハロゲン化銀粒子表面または内部に、増感核になると推定されるテルル化銀を生成せしめる化合物である。ハロゲン化銀乳剤中のテルル化銀生成速度については特開平5−313284号公報に記載の方法で試験することができる。具体的には、米国特許US第1,623,499号明細書、同第3,320,069号明細書、同第3,772,031号明細書、英国特許第235,211号明細書、同第1,121,496号明細書、同第1,295,462号明細書、同第1,396,696号明細書、カナダ特許第800,958号明細書、特開平4−204640号公報、同4−271341号公報、同4−333043号公報、同5−303157号公報、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・ケミカル・コミュニケーション(J.Chem.Soc.Chem.Commun.)635(1980)、 ibid 1102(1979)、 ibid 645(1979)、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイアティー・パーキン・トランザクション(J.Chem.Soc.Perkin.Trans.)1,2191(1980)、S.パタイ(S.Patai)編、ザ・ケミストリー・オブ・オーガニック・セレニウム・アンド・テルリウム・カンパウンズ(The Chemistry of Organic Selenium and Tellunium Compounds)、Vol 1(1986)、同 Vol 2(1987)に記載の化合物を用いることができる。特に特開平5−313284号公報中の一般式(II)(III)(IV)で示される化合物が好ましい。
【0050】
本発明で用いることのできるセレン増感剤およびテルル増感剤の使用量は、使用するハロゲン化銀粒子、化学熟成条件等によって変わるが、一般にハロゲン化銀1モル当たり10-8〜10-2モル、好ましくは10-7〜10-3モル程度を用いる。本発明における化学増感の条件としては特に制限はないが、pHとしては5〜8、pAgとしては6〜11、好ましくは7〜10であり、温度としては40〜95℃、好ましくは45〜85℃である。
【0051】
また、上記貴金属増感剤としては、金、白金、パラジウム、イリジウム等が挙げられ、特に金増感が好ましい。金増感に用いられる金増感剤としては、具体的には、塩化金酸、カリウムクロロオーレート、カリウムオーリチオシアネート、硫化金、チオグルコース金(I)、チオマンノース金(I)などが挙げられ、ハロゲン化銀1モル当たり10-7〜10-2モル程度を用いることができる。本発明に用いるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程においてカドミウム塩、亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩などを共存させてもよい。
【0052】
また、本発明においては、還元増感を用いることができる。還元増感剤としては第一スズ塩、アミン類、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合物などを用いることができる。上記ハロゲン化銀乳剤は、欧州公開特許(EP)293917に示される方法により、チオスルホン酸化合物を添加してもよい。本発明に用いられる感光材料の作製に用いられるハロゲン化銀乳剤は、1種だけでもよいし、2種以上(例えば、平均粒子サイズの異なるもの、ハロゲン組成の異なるもの、晶癖の異なるもの、化学増感の条件の異なるもの、感度の異なるもの)の併用であってもよい。中でも高コントラストを得るためには、特開平6−324426号公報に記載されているように、支持体に近いほど高感度な乳剤を塗布することが好ましい。
【0053】
なお、銀塩乳剤の塗設量は、銀量換算で4g/m以下であることが好ましく、2g/m以下であることがより好ましい。銀塩乳剤の塗設量を4g/m以下とすることにより、カブリが発生しにくくなり、圧力性を改善することができる。
【0054】
<バインダー>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、かつ乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダーを用いることができる。本発明において上記バインダーとしては、非水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーのいずれもバインダーとして用いることができるが、水溶性ポリマーを用いることが好ましい。
上記バインダーとしては、例えば、ゼラチン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロースおよびその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。
これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0055】
乳剤層中に含有されるバインダーの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層中のバインダーの含有量は、Ag/バインダー重量比率が1.5以上であることが好ましく、2.5以上であることがより好ましい。Ag/バインダー重量比率が1.5以上であることにより、メッキ処理の所要時間を短縮することができる。また、Ag/バインダー重量比率は20以下であることが好ましい。
【0056】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等アルコール類、アセトンなどケトン類、ホルムアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、酢酸エチルなどのエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、およびこれらの混合溶媒を挙げることができる。
本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダー等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0057】
<酸化防止剤>
本発明に係る乳剤層には、酸化防止剤を含有することが好ましい。乳剤層に酸化防止剤を添加することにより、カブリが発生しにくくなり、圧力性を改善することができる。
本発明に用いられる酸化防止剤は、分子量330以下のものが好ましい。下限は特に限定的でないが、分子量40以上が好ましい。特に好ましくは分子量200〜330のものである。
【0058】
更に本発明に用いられる酸化防止剤は、好ましくは酸化電位EoxがEox≦1.5(V)である化合物である。より好ましくはEox≦1.2(V)である。更に好ましくは0.3≦Eox≦0.8(V)である。酸化防止剤の酸化電位Eoxは当業者が容易に測定することができる。その方法は、例えば、エイ・スタニエンダ(A.Stanienda)著論文“ナトウールヴィッセンシャフテン”(Naturwissenschaften)47巻、353頁と、512頁(1960年)、ピー・デラヘイ(P.Delahay)著“ニュー・インストルメンタル・メソッズ・イン・エレクトロケミストリー”(New Instrumental Methods in Electrochemistry)(1954年)、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers)社発刊やエル・マイテス(L.Mites)著“ポーラログラフィック・テクニークス”(Polarographic Techniques)第2版(1965年)、インターサイエンス・パブリッシャーズ(Interscience Publishers)社発刊などに記載されている。上記Eoxの値は、その化合物がポルトアンメトリーにおいて陽極でその電子を引き抜かれる電位を意味し、そして、それは化合物の基底状態における最高被占電子エネルギーレベルと一次的に関連する。
【0059】
本発明におけるEoxは、以下に記す条件におけるポーラログラフの半波電位より求めた値である。即ち、酸化防止剤の溶媒としてはアセトニトリル、支持電解液として0.1N過塩素酸ナトリウムを用い、酸化防止剤の濃度10-3〜10-4モル/リットル、参照電極にはAg/AgCl電極を用い、Eoxの測定には回転白金板電極を用いて、25℃において測定した。
【0060】
この酸化防止剤は本発明に係る感光材料のハロゲン化銀乳剤層中に直接添加して含有せしめるのが最も好ましいが、中間層、保護層、黄色フィルター層、アンチハレーション層等の親水性コロイドをバインダーとする非感光層に添加してもよい。また感光性乳剤層と上記の非感光層の両方に添加しても有効である。この酸化防止剤の添加時期は、感光性乳剤層中に添加する場合、塗布加工までの任意の時期でよいが、好ましくは化学熟成から塗布加工までの時期、さらに好ましくは化学熟成終了後に添加すればよい。また、非感光層に添加して、塗布時に構成層全体に拡散させてもよい。
【0061】
酸化防止剤は、水又は水と相溶性のある低級アルコール、エステル類もしくはケトン類又はこれらの混合溶媒に溶解したのち添加すればよい。また高沸点溶剤等に溶解後分散添加してもよい。添加量はハロゲン化銀1モル当り10-2〜10-8モルの範囲が好ましく、10-3〜10-5モルの範囲が特に好ましいが、添加量はハロゲン化銀の種類、酸化防止剤の種類等によって適宜選択すればよい。また非感光性層に含有させる場合は、親水性コロイド1g当り0.01〜50gの範囲で、さらに好ましくは0.05〜10gの範囲で、酸化防止剤を含む親水性コロイドの水溶液を塗布することにより良好な結果を得ることができる。また、酸化防止剤は単独で用いてもよいが併用してもよい。
【0062】
酸化防止剤の具体例として下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
【化1】

【0064】
【化2】

【0065】
【化3】

【0066】
【化4】

【0067】
【化5】

【0068】
【化6】

【0069】
【化7】

【0070】
【化8】

【0071】
【化9】

【0072】
【化10】

【0073】
【化11】

【0074】
【化12】

【0075】
【化13】

【0076】
【化14】

【0077】
酸化防止剤のうち好ましいものは下記の一般式(II)で表される。
【化15】

【0078】
式中、Z11は、炭素環または複素環を形成するに必要な原子群を表わし、炭素環の好ましい具体例としてはベンゼン環とナフタレン環を挙げることができ、また複素環の好ましい具体例としてはヘテロ原子として酸素原子を含む7員環が挙げられる。これらの環に置換しうる置換基の具体例としては、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、水酸基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0079】
一般式(II)の化合物の中でも、芳香族炭素環に少なくとも1つのスルホン酸基(スルホン酸塩)をもつ化合物が特に好ましい。酸化防止剤の特に好ましい具体例としては、前記の具体例II−(19)、II−(22)、II−(39)などが挙げられる。また分子量330以下の酸化防止剤としては、一般式(II)で表わされる化合物以外に、以下の(1)、(2)の酸化防止剤も好ましい。
(1)2位の置換基の一方がヒドロキシ基、アミノ基及び置換アミノ基から選ばれる基であり、他方が水素原子であって、かつ3位の置換基の一方がヒドロキシ基、アミノ基及び置換アミノ基から選ばれる基であり、他方が水素原子である2−シクロペンテン−1−オン誘導体。
(2)2位の置換基の一方がヒドロキシ基、アミノ基及び置換アミノ基から選ばれる基であり、他方が水素原子であって、かつ3位の置換基の一方がヒドロキシ基、アミノ基及び置換アミノ基から選ばれる基であり、他方が水素原子である2−シクロヘキセン−1−オン誘導体。(1)及び(2)において、さらに好ましくは、2位がヒドロキシ基、3位がアミノ基又は置換アミノ基の化合物である。(1)と(2)の中では(1)が好ましく、この中でも、3位がピロリジン−1−イル、ピペリジン−1−イル又はモルフォリン−1−イルであり、かつ2位がヒドロキシ基のものが最も好ましい。具体的には例示化合物の(II)−(48)、(II)−(49)が挙げられる。
【0080】
<酸化剤>
本発明に係る乳剤層には、酸化剤を含有することが好ましい。乳剤層に酸化剤を添加することにより、カブリが発生しにくくなり、圧力性を改善することができる。
添加量は1×10-8〜1×10-2mol/molAgの範囲が好ましく、1×10-6〜5×10-3mol/molAgモルの範囲がより好ましいが、添加量はハロゲン化銀の種類、酸化剤の種類等によって適宜選択することができる。
酸化剤とは、金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を有する化合物をいう。特にハロゲン化銀粒子の形成過程および化学増感過程において副生するきわめて微小な銀粒子を、銀イオンに変換させる化合物が有効である。ここで生成する銀イオンは、ハロゲン化銀、硫化銀、セレン化銀等の水に難溶の銀塩を形成してもよく、又、硝酸銀等の水に易溶の銀塩を形成してもよい。銀に対する酸化剤は、無機物であっても、有機物であってもよい。無機の酸化剤としては、オゾン、過酸化水素およびその付加物(例えば、NaBO2・H22・3H2O、2NaCO3・3H22、Na427・2H22、2Na2SO4・H22・2H2O)、ぺルオキシ酸塩(例えばK228、K226、K228)、ぺルオキシ錯体化合物(例えば、K2〔Ti(O2)C24〕・3H2O、4K2SO4・Ti(O2)OH・SO4・2H2O、Na3〔VO(O2)(C242・6H2O〕、過マンガン酸塩(例えば、KMnO4)、クロム酸塩(例えば、K2Cr27)などの酸素酸塩、沃素や臭素などのハロゲン元素、過ハロゲン酸塩(例えば過沃素酸カリウム)および高原子価の金属の塩(例えば、ヘキサシアノ第二鉄酸カリウム)がある。また、有機の酸化剤としては、p−キノンなどのキノン類、過酢酸や過安息香酸などの有機過酸化物、活性ハロゲンを放出する化合物(例えば、N−ブロムサクシイミド、クロラミンT、クロラミンB)が例として挙げられる。
【0081】
本発明で使用される特に好ましい酸化剤は、下記一般式(XX)、(XXI)及び(XXII)で表されるチオスルホン酸塩化合物であり、最も好ましい化合物の一般式は、一般式(XX)であらわされる化合物である。
【0082】
一般式(XX) R−SO2S−M

一般式(XXI) R−SO2S−R1

一般式(XXII) R−SO2S−Lm−SSO−R2
【0083】
一般式(XX)、(XXI)及び(XXII)において、R、R1及びR2同じでも異なっていてもよく、脂肪族基、芳香族基またはヘテロ環基を表し、Mは陽イオンを、Lは2価の連結基を表し、mは0または1である。一般式(XX)ないし一般式(XXII)の化合物は、(XX)ないし(XXII)で示す構造から誘導される2価の基を繰り反単位として含有するポリマーであってもよい。また、可能なときは、R、R1、R2及びLが互いに結合して環を形成してもよい。
【0084】
銀が存在するとチオスルフォン酸が下記の反応式で銀を酸化し硫化銀を形成することが、S.GahlerによってVeroff wiss.Photo lab Wolfen X,63(1965)に報告されている。
【0085】

RSO2SM+2Ag→RSO2M+Ag2

このような酸化がおこっていることが実験的に確認されている。以下チオスルホン酸塩化合物について説明する。
【0086】
R、R1及びR2が脂肪族基の場合、飽和又は不飽和の、直鎖、分岐状又は環状の、脂肪族炭化水素基であり、好ましくは炭素数が1から22のアルキル基、炭素数が2から22のアルケニル基、アルキニル基であり、これらは、置換基を有していてもよい。アルキル基としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、イソプロピル、t−ブチルがあげられる。アルケニル基としては、例えばアリル、ブテニルがあげられる。アルキニル基としては、例えばプロパルギル、ブチニルがあげられる。
【0087】
R、R1及びR2の芳香族基としては、単環又は縮合環の芳香族基が含まれ、好ましくは炭素数が6から20のもので、例えばフェニル、ナフチルがあげられる。これらは、置換されていてもよい。
【0088】
R、R1及びR2のヘテロ環基としては、窒素、酸素、硫黄、セレン、テルルから選ばれる元素を少なくとも一つ有し、かつ炭素原子を少なくとも1つ有する3ないし15員環のものであり、好ましくは3〜6員環が好ましく、例えばピロリジン、ピペリジン、ピリジン、テトラヒドロフラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ベンゾチアゾール、ベンズオキサゾール、ベンズイミダゾール、セレナゾール、ベンゾセレナゾール、テルラゾール、トリアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラゾール、オキサジアゾール、チアヂアゾール環があげられる。
【0089】
R、R1及びR2の置換基としては、例えばアルキル基(例えば、メチル、エチル、ヘキシル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ、オクチルオキシ)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、トリル)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えばフッ素、塩素、臭素、沃素)、アリーロキシ基(例えば、フェノキシ)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ、ブチルチオ)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ)、アシル基(例えば、アセチル、プロピオニル、ブチリル、バレリル)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル、フェニルスルホニル)、アシルアミノ基(例えば、アセチルアミノ、ベンゾイルアミノ)、スルホニルアミノ基(例えば、メタンスルホニルアミノ、ベンゼンスルホニルアミノ)、アシロキシ基(例えば、アセトキシ、ベンゾキシ)、カルボキシル基、シアノ基、スルホ基、アミノ基、−SO2SM基、(Mは1価の陽イオンを示す)−SO21基があげられる。
【0090】
Lで表わされる二価の連結基としては、C、N、SおよびOから選ばれた少なくとも1種を含む原子又は原子団である。具体的にはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、−O−、−S−、−NH−、−CO−、−SO2−等の単独またはこれらの組合せからなるものである。
【0091】
Lは好ましくは二価の脂肪族基又は二価の芳香族基である。Lは二価の脂肪族基としては例えば、−(C−(n=1〜12)、−CH−CH=CH−CH−、
【0092】
【化16】

【0093】
キシレン基があげられる。二価の芳香族基としては、例えばフェニレン基、ナフチレン基があげられる。
【0094】
これらの置換基は、更にこれまで述べた置換基で置換されていてもよい。
【0095】
Mとして好ましくは、金属イオン又は有機カチオンである。金属イオンとしては、例えばリチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンがあげられる。有機カチオンとしては、例えばアンモニウムイオン(例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム)、ホスホニウムイオン(テトラフェニルホスホニウム)、グアニジル基があげられる。
【0096】
一般式(XX)、(XXI)又は(XXII)で表される化合物の具体例を下記にあげるが、これらに限定されるわけではない。
【0097】
一般式(XX)、(XXI)および(XXII)の化合物は、特開昭54−1019;英国特許972,211;Journal of Organic Chemistry(ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー)53巻、396頁(1988)に記載されている方法で合成できる。
【0098】
【化17】

【0099】
【化18】

【0100】
【化19】

【0101】
【化20】

【0102】
【化21】

【0103】
【化22】

【0104】
【化23】

【0105】
【化24】

【0106】
【化25】

【0107】
【化26】

【0108】
一般式(XX)、(XXI)もしくは(XXII)であらわされる化合物は銀塩1モル当り10-7から10-1モル添加するのが好ましい。さらに10-6から10-2、特には10-5から10-3モル/モルAgの添加量が好ましい。
【0109】
一般式(XX)、(XXI)もしくは(XXII)で表わされる化合物を粒子形成中に添加せしめるには、乳剤に添加剤を加える場合に通常用いられる方法を適用できる。たとえば、水溶性の化合物は適当な濃度の水溶液とし、水に不溶または難溶性の化合物は水と混和しうる適当な有機溶媒、たとえばアルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、アミド類のうちで、写真特性に悪い影響を与えない溶媒に溶解して得た溶液として、添加することができる。
【0110】
化合物(XX)、(XXI)もしくは(XXII)で表わされる化合物は、銀塩乳剤の粒子形成中、化学増感前あるいは後の製造中のどの段階で添加してもよい。
【0111】
あらかじめ反応容器に添加するのもよいが、水溶性銀塩あるいは水溶性アルカリハライドの水溶液にあらかじめ化合物(XX)〜(XXII)を添加しておき、これらの水溶液を用いて粒子形成してもよい。また粒子製造工程中に化合物(XX)〜(XXII)の溶液を何回かに分けて添加しても連続して長時間添加するのも好ましい方法である。
【0112】
<マット剤>
本発明に係る乳剤層には、マット剤を含有することが好ましい。乳剤層にマット剤を添加することにより、カブリが発生しにくくなり、圧力性を改善することができる。 添加量は5〜400mg/mの範囲が好ましく、10〜200mg/mの範囲がより好ましいが、添加量はマット剤の種類等によって適宜選択することができる。
マット剤としては、特開平2−103536号公報第19頁左上欄15行目から同第19頁右上欄15行目に記載の化合物が挙げられる。
【0113】
<すべり剤>
本発明に係る乳剤層には、すべり剤を含有することが好ましい。乳剤層にすべり剤を添加することにより、カブリが発生しにくくなり、圧力性を改善することができる。
有用な滑り剤としては、例えば英国特許第955,061号明細書、同第1,143,118号明細書、米国特許第3,042,522号明細書、同第3,080,317号明細書、同第4,004,927号明細書、同第4,047,958号明細書、同第3,489,576号明細書、特開昭60−140341号公報に記載のシリコン系滑り剤、米国特許第2,454,043号明細書、同第2,732,305号明細書、同第2,976,148号明細書、同第3,206,311号明細書、独国特許第1,284,295号明細書、同第1,284,294号明細書に記載の高級脂肪酸系、高級脂肪アルコール系、高級脂肪酸アミド系滑り剤、英国特許第1,263,722号明細書、米国特許第3,933,516号明細書に記載の金属石鹸、米国特許第2,588,765号明細書、同第3,121,060号明細書、英国特許第1,198,387号明細書に記載の高級脂肪酸エステル系、高級脂肪アルコールのエーテル系滑り剤、米国特許第3,502,437号明細書、同第3,042,222号明細書に記載のタウリン系滑り剤等を挙げることができる。以下に具体例を示すが、本発明で用いることができる滑り剤はこれらに限定されるものではない。
【0114】
【化27】

【0115】
【化28】

【0116】
【化29】

【0117】
滑り剤の使用量は、最外層のゼラチン付量、マット剤の種類等により最適量は異なるが、片面1m当たり5〜200mgであり、好ましくは15〜150mgである。
【0118】
<コロイダルシリカ>
本発明に係る乳剤層には、コロイダルシリカを含有することが好ましい。乳剤層にコロイダルシリカを添加することにより、カブリが発生しにくくなり、圧力性を改善することができる。 添加量は、添加層のバインダー(例、ゼラチン)に対して、乾燥重量比で0.01〜2.0の範囲が好ましく、0.1〜0.6の範囲がより好ましいが、添加量は適宜選択することができる。
本発明の好ましく用いられるコロイド状シリカ(コロイダルシリカ)は、平均粒径が1nm以上1μm以下の無水珪酸の微粒子のコロイド(膠質)を指し、特開昭53−112732号、特公昭57−009051号、同57−51653号等に記載されているものを参考にすることができる。これらのコロイド状シリカはゾル−ゲル法で調製して使用することもできるし、市販品を利用することもできる。コロイド状シリカをゾル−ゲル法で調製する場合には Werner Stober et al ; J.Colloid and Interface Sci.,26,62-69(1968)、Ricky D.Badley et al ; Langmuir 6,792-801(1990) 、色材協会誌 ,61〔9〕488-493(1988) を参考にして合成できる。また、市販品を使用する場合は日産化学(株)製のスノーテックス−XL(平均粒径40〜60nm)、スノーテックス−YL(平均粒径50〜80nm)、スノーテックス−ZL(平均粒径70〜100nm)、PST−2(平均粒径210nm)、MP−3020(平均粒径328nm)、スノーテックス20(平均粒径10〜20nm、SiO2/Na2O>57)、スノーテックス30(平均粒径10〜20nm、SiO2/Na2O>50)、スノーテックスC(平均粒径10〜20nm、SiO2/Na2O>100)、スノーテックスO(平均粒径10〜20nm、SiO2/Na2O>500)等を好ましく使用することができる(ここでSiO2/Na2Oとは二酸化ケイ素と水酸化ナトリウムの含有重量比を水酸化ナトリウムをNa2Oに換算して表したものであり、カタログに記載されている)。市販品を利用する場合はスノーテックス−YL、スノーテックス−ZL、PST−2、MP−3020、スノーテックスCが特に好ましい。コロイド状シリカの主成分は二酸化ケイ素であるが、少量成分としてアルミナあるいはアルミン酸ナトリウム等を含んでいてもよく、さらに安定剤として水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、アンモニア等の無機塩基やテトラメチルアンモニウムのような有機塩基が含まれていてもよい。
【0119】
また、本発明のコロイダルシリカとしては、特開平10−268464号公報記載の、太さ1〜50nm、長さ10〜1000nmの細長い形状を有するコロイド状シリカ、特開平9−218488号公報あるいは特開平10−111544号公報記載のコロイド状シリカと有機ポリマーとの複合粒子も好ましく用いることができる。
【0120】
<帯電防止剤>
本発明に係る乳剤層には、帯電防止剤を含有することが好ましい。乳剤層に帯電防止剤を添加することにより、カブリが発生しにくくなり、圧力性を改善することができる。
帯電防止層としては、表面抵抗率が25℃ 25%RHの雰囲気下で1012Ω以下の導電性物質含有層を好ましく用いることができる。本発明に好ましい帯電防止剤として、下記の導電性物質を好ましく用いることができる。
特開平2−18542号公報第2頁左下13行目から同公報第3頁右上7行目に記載の導電性物質。具体的には、同公報第2頁右下2行目から同頁右下10行目に記載の金属酸化物、および同公報に記載の化合物P−1〜P−7の導電性高分子化合物。USP5575957、特開平10−142738号段落番号0045〜0043、特開平11−223901号段落番号0013〜0019に記載の針状の金属酸化物等が用いることができる。
【0121】
本発明で用いられる導電性金属酸化物粒子は、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、MgO、BaOおよびMoO3ならびにこれらの複合酸化物、そしてこれらの金属酸化物にさらに異種原子を含む金属酸化物の粒子を挙げることができる。金属酸化物としては、SnO2、ZnO、Al23、TiO2、In23、およびMgOが好ましく、さらに、SnO2、ZnO、In23およびTiO2が好ましく、SnO2が特に好ましい。異種原子を少量含む例としては、ZnOに対してAlあるいはIn、TiO2に対してNbあるいはTa、In23に対してSn、およびSnO2に対してSb、Nbあるいはハロゲン元素などの異種元素を0.01〜30モル%(好ましくは0.1〜10モル%)ドープしたものを挙げることができる。異種元素の添加量が、0.01モル%未満の場合は酸化物または複合酸化物に充分な導電性を付与することができにくくなり、30モル%を超えると粒子の黒化度が増し、帯電防止層が黒ずむため適さない。従って、本発明では導電性金属酸化物粒子の材料としては、金属酸化物または複合金属酸化物に対し異種元素を少量含むものが好ましい。また結晶構造中に酸素欠陥を含むものも好ましい。
【0122】
上記異種原子を少量含む導電性金属酸化物微粒子としては、アンチモンがドープされたSnO2粒子が好ましく、特にアンチモンが0.2〜2.0モル%ドープされたSnO2粒子が好ましい。
【0123】
本発明に用いる導電性金属酸化物の形状については特に制限はなく、粒状、針状等が挙げられる。また、その大きさは、球換算径で表した平均粒径が0.5〜25μm である。
【0124】
また、導電性を得るためには、例えば、可溶性塩(例えば塩化物、硝酸塩など)、蒸着金属層、米国特許第2861056号および同第3206312号に記載のようなイオン性ポリマーまたは米国特許第3428451号に記載のような不溶性無機塩を使用することもできる。
【0125】
このような導電性金属酸化物粒子を含有する帯電防止層はバック面の下塗り層、乳剤層の下塗り層などとして設けることが好ましい。その添加量は両面合計で0.01〜1.0g/m2であることが好ましい。
また、感光材料の内部抵抗率は25℃25%RHの雰囲気下で1.0×107〜1.0〜1012Ωであることが好ましい。
【0126】
本発明において、前記導電性物質のほかに、特開平2−18542号公報第4頁右上2行目から第4頁右下下から3行目、特開平3−39948号公報第12頁左下6行目から同公報第13頁右下5行目に記載の含フッ素界面活性剤を併用することによって、更に良好な帯電防止性を得ることができる。
【0127】
<その他の添加剤>
本発明における感光材料に用いられる各種添加剤に関しては、特に制限は無く、例えば下記公報等に記載されたものを好ましく用いることができる。
【0128】
1)造核促進剤
上記造核促進剤としては、特開平6−82943号公報に記載の一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、(VI)の化合物や、特開平2−103536号公報第9頁右上欄13行目から同第16頁左上欄10行目の一般式(II−m)〜(II−p)および化合物例II−1〜II−22、並びに、特開平1−179939号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0129】
2)分光増感色素
上記分光増感色素としては、特開平2−12236号公報第8頁左下欄13行目から同右下欄4行目、同2−103536号公報第16頁右下欄3行目から同第17頁左下欄20行目、さらに特開平1−112235号、同2−124560号、同3−7928号、および同5−11389号各公報に記載の分光増感色素が挙げられる。
【0130】
3)界面活性剤
上記界面活性剤としては、特開平2−12236号公報第9頁右上欄7行目から同右下欄7行目、および特開平2−18542号公報第2頁左下欄13行目から同第4頁右下欄18行目に記載の界面活性剤が挙げられる。
【0131】
4)カブリ防止剤
上記カブリ防止剤としては、特開平2−103536号公報第17頁右下欄19行目から同第18頁右上欄4行目および同右下欄1行目から5行目、さらに特開平1−237538号公報に記載のチオスルフィン酸化合物が挙げられる。
【0132】
5)ポリマーラテックス
上記ポリマーラテックスとしては、特開平2−103536号公報第18頁左下欄12行目から同20行目に記載のものが挙げられる。
【0133】
6)酸基を有する化合物
上記酸基を有する化合物としては、特開平2−103536号公報第18頁右下欄6行目から同第19頁左上欄1行目に記載の化合物が挙げられる。
7)硬膜剤
上記硬膜剤としては、特開平2−103536号公報第18頁右上欄5行目から同第1
7行目に記載の化合物が挙げられる。
【0134】
8)黒ポツ防止剤
上記黒ポツ防止剤とは、未露光部に点状の現像銀が発生することを抑制する化合物であ
り、例えば、米国特許US第4956257号明細書および特開平1−118832号公
報に記載の化合物が挙げられる。
9)レドックス化合物
レドックス化合物としては、特開平2−301743号公報の一般式(I)で表される
化合物(特に化合物例1ないし50)、同3−174143号公報第3頁ないし第20頁
に記載の一般式(R−1)、(R−2)、(R−3)、化合物例1ないし75、さらに特
開平5−257239号、同4−278939号各公報に記載の化合物が挙げられる。
10)モノメチン化合物
上記モノメチン化合物としては、特開平2−287532号公報の一般式(II)の化合物(特に化合物例II−1ないしII−26)が挙げられる。
11)ジヒドロキシベンゼン類
特開平3−39948号公報第11頁左上欄から第12頁左下欄の記載、および欧州特
許公開EP452772A号公報に記載の化合物が挙げられる。
【0135】
[バインダー層]
本発明に係る感光材料には、乳剤層の下層にバインダー層を有することが好ましい。ここで下層とは、支持体からの距離がより近くかつ同じ面に位置していることを意味する。本発明においては、銀塩乳剤層よりも下層に親水性コロイド層からなるバインダー層を好ましく設置することができる。
バインダーとしてはゼラチンを用いるのが有利であるが、それ以外の親水性コロイドも用いることができる。たとえばゼラチン誘導体、ゼラチンと他の高分子とのグラフトポリマー、アルブミン、カゼイン等の蛋白質、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロース硫酸エステル類等の如きセルロース誘導体、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体などの糖誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール部分アセタール、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルイミダゾール、ポリビニルピラゾール等の単一あるいは共重合体のような多種の合成親水性高分子物質を用いることができる。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンのほか、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチン加水分解物、ゼラチン酵素分解物も用いることができる。
本発明の感光材料において、銀塩乳剤層よりも下層にバインダー層を設ける場合の好ましいバインダー層の厚みは0.2μmから2μmの範囲であり、より好ましくは0.5μmから1μmの範囲である。
【0136】
〈導電性膜の製造方法〉
上記の感光材料を用いて、透光性電磁波シールド膜として好適な導電性膜の製造方法について説明する。
本発明の導電性膜の製造方法は、支持体上に感光性ハロゲン化銀塩を含有する乳剤層とを有する感光材料を露光し、現像処理を施すことによって露光部および未露光部に、それぞれ金属銀部および光透過性部を形成し、さらに前記金属銀部に物理現像および/またはメッキ処理を施すことによって前記金属銀部に導電性金属を担持させることを特徴とする。
なお、本発明によって得られる導電性膜は、パターン露光によって金属が支持体上に形成されたものだけでなく、面露光によって金属が形成されたものであってもよい。
【0137】
本発明の導電性膜の製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(2)物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
上記(1)の態様は、一体型黒白現像タイプであり、感光材料上に透光性電磁波シールド膜などの透光性導電性膜が形成される。得られる現像銀は化学現像銀又は熱現像であり、高比表面のフィラメントである点で後続するメッキ又は物理現像過程で活性が高い。
上記(2)の態様は、露光部では、物理現像核近縁のハロゲン化銀粒子が溶解されて現像核上に沈積することによって感光材料上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電膜などの透光性導電性膜が形成される。これも一体型黒白現像タイプである。現像作用が、物理現像核上への析出であるので高活性であるが、現像銀は比表面は小さい球形である。
上記(3)の態様は、未露光部においてハロゲン化銀粒子が溶解されて拡散して受像シート上の現像核上に沈積することによって受像シート上に透光性電磁波シールド膜や光透過性導電膜などの透光性導電性膜が形成される。いわゆるセパレートタイプであって、受像シートを感光材料から剥離して用いる態様である。
いずれの態様もネガ型現像処理および反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理が可能となる)。
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Prosess, 4th ed.」に解説されている。本件は液処理であるが、その他の出願については現像方式として、熱現像方式も適用される。例えば、特開2004−184693号、同2004−334077号、同2005−010752号、特願2004−244080号、同2004−085655号公報等が適用できる。
【0138】
[露光]
本発明では、支持体上に設けられた銀塩含有層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線などの光、X線などの放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。
【0139】
上記光源としては、例えば、陰極線(CRT)を用いた走査露光を挙げることができる。陰極線管露光装置は、レーザーを用いた装置に比べて、簡便でかつコンパクトであり、低コストになる。また、光軸や色の調整も容易である。画像露光に用いる陰極線管には、必要に応じてスペクトル領域に発光を示す各種発光体が用いられる。例えば、赤色発光体、緑色発光体、青色発光体のいずれか1種又は2種以上が混合されて用いられる。スペクトル領域は、上記の赤色、緑色及び青色に限定されず、黄色、橙色、紫色或いは赤外領域に発光する蛍光体も用いられる。特に、これらの発光体を混合して白色に発光する陰極線管がしばしば用いられる。また、紫外線ランプも好ましく、水銀ランプのg線、水銀ランプのi線等も利用される。
【0140】
また本発明では、露光は種々のレーザービームを用いて行うことができる。例えば、本発明における露光は、ガスレーザー、発光ダイオード、半導体レーザー、半導体レーザー又は半導体レーザーを励起光源に用いた固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発光光源(SHG)等の単色高密度光を用いた走査露光方式を好ましく用いることができ、さらにKrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、F2レーザー等も用いることができる。システムをコンパクトで、安価なものにするために、露光は、半導体レーザー、半導体レーザーあるいは固体レーザーと非線形光学結晶を組合わせた第二高調波発生光源(SHG)を用いて行うことが好ましい。特にコンパクトで、安価、さらに寿命が長く、安定性が高い装置を設計するためには、露光は半導体レーザーを用いて行うことが好ましい。
【0141】
レーザー光源としては、具体的には、波長430〜460nmの青色半導体レーザー(2001年3月の第48回応用物理学関係連合講演会で日亜化学発表)、半導体レーザー(発振波長約1060nm)を導波路状の反転ドメイン構造を有するLiNbO3のSHG結晶により波長変換して取り出した約530nmの緑色レーザー、波長約685nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6738MG)、波長約650nmの赤色半導体レーザー(日立タイプNo.HL6501MG)などが好ましく用いられる。
【0142】
銀塩含有層をパターン状に露光する方法は、フォトマスクを利用した面露光で行ってもよいし、レーザービームによる走査露光で行ってもよい。この際、レンズを用いた屈折式露光でも反射鏡を用いた反射式露光でもよく、コンタクト露光、プロキシミティー露光、縮小投影露光、反射投影露光などの露光方式を用いることができる。
【0143】
[現像処理]
本発明では、乳剤層を露光した後、さらに現像処理が行われる。現像処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもでき、市販品では、例えば、富士フィルム社製のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトール、KODAK社製のC−41、E−6、RA−4、D−19、D−72などの現像液、またはそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。
リス現像液としては、KODAK社製のD85などを用いることができる。本発明では、上記の露光および現像処理を行うことにより露光部に金属銀部、好ましくはパターン状金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。
【0144】
本発明の製造方法においては、上記現像液としてジヒドロキシベンゼン系現像主薬を用いることができる。ジヒドロキシベンゼン系現像主薬としてはハイドロキノン、クロロハイドロキノン、イソプロピルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノスルホン酸塩などが挙げられるが、特にハイドロキノンが好ましい。上記ジヒドロキシベンゼン系現像主薬と超加成性を示す補助現像主薬としては、1−フェニル−3−ピラゾリドン類やp−アミノフェノール類が挙げられる。本発明の製造方法において用いる現像液としては、ジヒドロキシベンゼン系現像主薬と1−フェニル−3−ピラゾリドン類との組合せ;またはジヒドロキシベンゼン系現像主薬とp−アミノフェノール類との組合せが好ましく用いられる。
【0145】
補助現像主薬として用いられる1−フェニル−3−ピラゾリドンまたはその誘導体と組み合わせられる現像主薬としては、具体的に、1−フェニル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4,4−ジメチル−3−ピラゾリドン、1−フェニル−4−メチル−4−ヒドロキシメチル−3−ピラゾリドンなどがある。
上記p−アミノフェノール系補助現像主薬としては、N−メチル−p−アミノフェノール、p−アミノフェノール、N−(β−ヒドロキシエチル)−p−アミノフェノール、N−(4−ヒドロキシフェニル)グリシン等があるが、なかでもN−メチル−p−アミノフェノールが好ましい。ジヒドロキシベンゼン系現像主薬は、通常0.05〜0.8モル/リットルの量で用いられるのが好ましいが、本発明においては、0.23モル/リットル以上で使用するのが特に好ましい。さらに好ましくは、0.23〜0.6モル/リットルの範囲である。またジヒドロキシベンゼン類と1−フェニル−3−ピラゾリドン類若しくはp−アミノフェノール類との組合せを用いる場合には、前者を0.23〜0.6モル/リットル、さらに好ましくは0.23〜0.5モル/リットル、後者を0.06モル/リットル以下、さらに好ましくは0.03モル/リットル〜0.003モル/リットルの量で用いるのが好ましい。
【0146】
本発明においては、現像開始液および現像補充液の双方が、「該液1リットルに0.1モルの水酸化ナトリウムを加えたときのpH上昇が0.5以下」である性質を有することが好ましい。使用する現像開始液ないし現像補充液がこの性質を有することを確かめる方法としては、試験対象の現像開始液ないし現像補充液のpHを10.5に合わせ、ついでこの液1リットルに水酸化ナトリウムを0.1モル添加し、この際の液のpH値を測定し、pH値の上昇が0.5以下であれば上記に規定した性質を有すると判定する。本発明の製造方法では、特に、上記試験を行った時のpH値の上昇が0.4以下である現像開始液および現像補充液を用いることが好ましい。
【0147】
現像開始液および現像補充液に上記の性質を与える方法としては、緩衝剤を使用した方法によることが好ましい。上記緩衝剤としては、炭酸塩、特開昭62−186259号公報に記載のホウ酸、特開昭60−93433号公報に記載の糖類(例えばサッカロース)、オキシム類(例えばアセトオキシム)、フェノール類(例えば5−スルホサリチル酸)、第3リン酸塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩)などを用いることができ、好ましくは炭酸塩、ホウ酸が用いられる。上記緩衝剤(特に炭酸塩)の使用量は、好ましくは、0.25モル/リットル以上であり、0.25〜1.5モル/リットルが特に好ましい。
【0148】
本発明においては、上記現像開始液のpHが9.0〜11.0であることが好ましく、9.5〜10.7の範囲であることが特に好ましい。上記現像補充液のpHおよび連続処理時の現像タンク内の現像液のpHもこの範囲である。pH設定のために用いるアルカリ剤には通常の水溶性無機アルカリ金属塩(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)を用いることができる。
【0149】
本発明の製造方法において、感光材料1平方メートルを処理する際に、現像液中の現像補充液の含有量は323ミリリットル以下、好ましくは323〜30ミリリットル、特に225〜50ミリリットルである。現像補充液は、現像開始液と同一の組成を有していてもよいし、現像で消費される成分について開始液よりも高い濃度を有していてもよい。
【0150】
本発明で感光材料を現像処理する際の現像液(以下、現像開始液および現像補充液の双方をまとめて単に「現像液」という場合がある)には、通常用いられる添加剤(例えば、保恒剤、キレート剤)を含有することができる。上記保恒剤としては亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、亜硫酸アンモニウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸カリウム、ホルムアルデヒド重亜硫酸ナトリウムなどの亜硫酸塩が挙げられる。該亜硫酸塩は、0.20モル/リットル以上用いられることが好ましく、さらに好ましくは0.3モル/リットル以上用いられるが、余りに多量添加すると現像液中の銀汚れの原因になるので、上限は1.2モル/リットルとするのが望ましい。特に好ましくは、0.35〜0.7モル/リットルである。また、ジヒドロキシベンゼン系現像主薬の保恒剤として、亜硫酸塩と併用してアスコルビン酸誘導体を少量使用してもよい。ここでアスコルビン酸誘導体とは、アスコルビン酸、および、その立体異性体であるエリソルビン酸やそのアルカリ金属塩(ナトリウム、カリウム塩)などを包含する。上記アスコルビン酸誘導体としては、エリソルビン酸ナトリウムを用いることが素材コストの点で好ましい。上記アスコルビン酸誘導体の添加量はジヒドロキシベンゼン系現像主薬に対して、モル比で0.03〜0.12の範囲が好ましく、特に好ましくは0.05〜0.10の範囲である。上記保恒剤としてアスコルビン酸誘導体を使用する場合には現像液中にホウ素化合物を含まないことが好ましい。
【0151】
上記以外に現像材に用いることのできる添加剤としては、臭化ナトリウム、臭化カリウムの如き現像抑制剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジメチルホルムアミドの如き有機溶剤;ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン、イミダゾールまたはその誘導体等の現像促進剤や、メルカプト系化合物、インダゾール系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾイミダゾール系化合物をカブリ防止剤または黒ポツ(black pepper)防止剤として含んでもよい。上記ベンゾイミダゾール系化合物としては、具体的に、5−ニトロインダゾール、5−p−ニトロベンゾイルアミノインダゾール、1−メチル−5−ニトロインダゾール、6−ニトロインダゾール、3−メチル−5−ニトロインダゾール、5−ニトロベンズイミダゾール、2−イソプロピル−5−ニトロベンズイミダゾール、5−ニトロベンズトリアゾール、4−〔(2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール−2−イル)チオ〕ブタンスルホン酸ナトリウム、5−アミノ−1,3,4−チアジアゾール−2−チオール、メチルベンゾトリアゾール、5−メチルベンゾトリアゾール、2−メルカプトベンゾトリアゾールなどを挙げることができる。これらベンゾイミダゾール系化合物の含有量は、通常、現像液1リットル当り0.01〜10mmolであり、より好ましくは、0.1〜2mmolである。
【0152】
さらに上記現像液中には、各種の有機・無機のキレート剤を併用することができる。上記無機キレート剤としては、テトラポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム等を用いることができる。一方、上記有機キレート剤としては、主に有機カルボン酸、アミノポリカルボン酸、有機ホスホン酸、アミノホスホン酸および有機ホスホノカルボン酸を用いることができる。
上記有機カルボン酸としては、アクリル酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、コハク酸、アシエライン酸、セバチン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。
【0153】
上記アミノポリカルボン酸としては、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三プロピオン酸、エチレンジアミンモノヒドロキシエチル三酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコールエーテル四酢酸、1,2−ジアミノプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3−ジアミノ−2−プロパノール四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、その他特開昭52−25632号、同55−67747号、同57−102624号の各公報、および特公昭53−40900号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0154】
有機ホスホン酸としては、米国特許US第3214454号、同3794591号の各明細書、および西独特許公開2227639号公報等に記載のヒドロキシアルキリデン−ジホスホン酸やリサーチ・ディスクロージャー(Research Disclosure)第181巻、Item 18170(1979年5月号)等に記載の化合物が挙げられる。
上記アミノホスホン酸としては、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等が挙げられるが、その他上記リサーチ・ディスクロージャー18170号、特開昭57−208554号、同54−61125号、同55−29883号の各公報および同56−97347号公報等に記載の化合物を挙げることができる。
【0155】
有機ホスホノカルボン酸としては、特開昭52−102726号、同53−42730号、同54−121127号、同55−4024号、同55−4025号、同55−126241号、同55−65955号、同55−65956号等の各公報、および前述のリサーチ・ディスクロージャー18170号等に記載の化合物を挙げることができる。これらのキレート剤はアルカリ金属塩やアンモニウム塩の形で使用してもよい。
【0156】
これらキレート剤の添加量としては、現像液1リットル当り好ましくは、1×10-4〜1×10-1モル、より好ましくは1×10-3〜1×10-2モルである。
【0157】
さらに、現像液中に銀汚れ防止剤として、特開昭56−24347号、特公昭56−46585号、特公昭62−2849号、特開平4−362942号の各公報記載の化合物を用いることができる。また、溶解助剤として特開昭61−267759号公報記載の化合物を用いることができる。さらに現像液には、必要に応じて色調剤、界面活性剤、消泡剤、硬膜剤等を含んでもよい。現像処理温度および時間は相互に関係し、全処理時間との関係において決定されるが、一般に現像温度は約20℃〜約50℃が好ましく、25〜45℃がさらに好ましい。また、現像時間は5秒〜2分が好ましく、7秒〜1分30秒がさらに好ましい。
【0158】
現像液の搬送コスト、包装材料コスト、省スペース等の目的から、現像液を濃縮化し、使用時に希釈して用いるようにする態様も好ましい。現像液の濃縮化のためには、現像液に含まれる塩成分をカリウム塩化することが有効である。
【0159】
本発明における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明における定着処理は、銀塩写真フィルムや印画紙、印刷製版用フィルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0160】
上記定着工程で使用する定着液の好ましい成分としては、以下が挙げられる。
すなわち、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、必要により酒石酸、クエン酸、グルコン酸、ホウ酸、イミノジ酢酸、5−スルホサリチル酸、グルコヘプタン酸、タイロン、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸これらの塩等を含むことが好ましい。近年の環境保護の観点からは、ホウ酸は含まれない方が好ましい。本発明に用いられる定着液の定着剤としてはチオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウムなどが挙げられ、定着速度の点からはチオ硫酸アンモニウムが好ましいが、近年の環境保護の観点からチオ硫酸ナトリウムが使われてもよい。これら既知の定着剤の使用量は適宜変えることができ、一般には約0.1〜約2モル/リットルである。特に好ましくは、0.2〜1.5モル/リットルである。定着液には所望により、硬膜剤(例えば水溶性アルミニウム化合物)、保恒剤(例えば、亜硫酸塩、重亜硫酸塩)、pH緩衝剤(例えば、酢酸)、pH調整剤(例えば、アンモニア、硫酸)、キレート剤、界面活性剤、湿潤剤、定着促進剤を含むことができる。
【0161】
上記界面活性剤としては、例えば硫酸化物、スルホン化物などのアニオン界面活性剤、ポリエチレン系界面活性剤、特開昭57−6740号公報記載の両性界面活性剤などが挙げられる。また、上記定着液には、公知の消泡剤を添加してもよい。
上記湿潤剤としては、例えば、アルカノールアミン、アルキレングリコールなどが挙げられる。また、上記定着促進剤としては、例えば特公昭45−35754号、同58−122535号、同58−122536号の各公報に記載のチオ尿素誘導体;分子内に3重結合を持つアルコール;米国特許US第4126459号明細書記載のチオエーテル化合物;特開平4−229860号公報記載のメソイオン化合物などが挙げられ、特開平2−44355号公報記載の化合物を用いてもよい。また、上記pH緩衝剤としては、例えば酢酸、リンゴ酸、こはく酸、酒石酸、クエン酸、シュウ酸、マレイン酸、グリコール酸、アジピン酸などの有機酸や、ホウ酸、リン酸塩、亜硫酸塩などの無機緩衝剤が使用できる。上記pH緩衝剤として好ましくは、酢酸、酒石酸、亜硫酸塩が用いられる。ここでpH緩衝剤は、現像液の持ち込みによる定着剤のpH上昇を防ぐ目的で使用され、好ましくは0.01〜1.0モル/リットル、より好ましくは0.02〜0.6モル/リットル程度用いる。定着液のpHは4.0〜6.5が好ましく、特に好ましくは4.5〜6.0の範囲である。また、上記色素溶出促進剤として、特開昭64−4739号公報記載の化合物を用いることもできる。
【0162】
本発明の定着液中の硬膜剤としては、水溶性アルミニウム塩、クロム塩が挙げられる。上記硬膜剤として好ましい化合物は、水溶性アルミニウム塩であり、例えば塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、カリ明バンなどが挙げられる。上記硬膜剤の好ましい添加量は0.01モル〜0.2モル/リットルであり、さらに好ましくは0.03〜0.08モル/リットルである。
【0163】
上記定着工程における定着温度は、約20℃〜約50℃が好ましく、さらに好ましくは25〜45℃である。また、定着時間は5秒〜1分が好ましく、さらに好ましくは7秒〜50秒である。定着液の補充量は、感光材料の処理量に対して600ml/m2以下が好ましく、500ml/m2以下がさらに好ましく、300ml/m2以下が特に好ましい。
【0164】
現像、定着処理を施した感光材料は、水洗処理や安定化処理を施されるのが好ましい。上記水洗処理または安定化処理においては、水洗水量は通常感光材料1m2当り、20リットル以下で行われ、3リットル以下の補充量(0も含む、すなわちため水水洗)で行うこともできる。このため、節水処理が可能となるのみならず、自現機設置の配管を不要とすることができる。水洗水の補充量を少なくする方法としては、古くから多段向流方式(例えば2段、3段など)が知られている。この多段向流方式を本発明の製造方法に適用した場合、定着後の感光材料は徐々に正常な方向、即ち定着液で汚れていない処理液の方向に順次接触して処理されていくので、さらに効率のよい水洗がなされる。また、水洗を少量の水で行う場合は、特開昭63−18350号、同62−287252号各公報などに記載のスクイズローラー、クロスオーバーローラーの洗浄槽を設けることがより好ましい。また、少量水洗時に問題となる公害負荷低減のためには、種々の酸化剤添加やフィルター濾過を組み合わせてもよい。さらに、上記方法においては、水洗浴または安定化浴に防黴手段を施した水を、処理に応じて補充することによって生じた水洗浴または安定化浴からのオーバーフロー液の一部または全部を、特開昭60−235133号公報に記載されているようにその前の処理工程である定着能を有する処理液に利用することもできる。また、少量水洗時に発生し易い水泡ムラ防止および/またはスクイズローラーに付着する処理剤成分が処理されたフィルムに転写することを防止するために、水溶性界面活性剤や消泡剤を添加してもよい。
【0165】
また、上記水洗処理または安定化処理においては、感光材料から溶出した染料による汚染防止に、特開昭63−163456号公報に記載の色素吸着剤を水洗槽に設置してもよい。また、水洗処理に続いて安定化処理においては、特開平2−201357号、同2−132435号、同1−102553号、特開昭46−44446号の各公報に記載の化合物を含有した浴を、感光材料の最終浴として使用してもよい。この際、必要に応じてアンモニウム化合物、Bi、Alなどの金属化合物、蛍光増白剤、各種キレート剤、膜pH調節剤、硬膜剤、殺菌剤、防かび剤、アルカノールアミンや界面活性剤を加えることもできる。水洗工程または安定化工程に用いられる水としては水道水のほか脱イオン処理した水やハロゲン、紫外線殺菌灯や各種酸化剤(オゾン、過酸化水素、塩素酸塩など)等によって殺菌された水を使用することが好ましい。また、特開平4−39652号、特開平5−241309号公報記載の化合物を含む水洗水を使用してもよい。水洗処理または安定化温度における浴温度および時間は0〜50℃、5秒〜2分であることが好ましい。
【0166】
本発明に用いられる現像液や定着液等の処理液の保存には、特開昭61−73147号公報に記載された酸素透過性の低い包材で保管することが好ましい。また、補充量を低減する場合には処理槽の空気との接触面積を小さくすることによって液の蒸発、空気酸化を防止することが好ましい。ローラー搬送型の自動現像機については米国特許US第3025779号明細書、同第3545971号明細書などに記載されており、本明細書においては単にローラー搬送型プロセッサーとして言及する。また、ローラー搬送型プロセッサーは現像、定着、水洗および乾燥の四工程からことが好ましく、本発明においても、他の工程(例えば、停止工程)を除外しないが、この四工程を踏襲するのが最も好ましい。また、水洗工程の代わりに安定工程による四工程でも構わない。
【0167】
上記各工程においては、現像液や定着液の組成から水を除いた成分を固形にして供給し、使用に当たって所定量の水で溶解して現像液や定着液として使用してもよい。このような形態の処理剤は固形処理剤と呼ばれる。固形処理剤は、粉末、錠剤、顆粒、粉末、塊状またはペースト状のものが用いられる。上記処理剤の、好ましい形態は、特開昭61−259921号公報記載の形態或いは錠剤である。該錠剤の製造方法は、例えば特開昭51−61837号、同54−155038号、同52−88025号の各公報、英国特許1,213,808号明細書等に記載される一般的な方法で製造できる。さらに顆粒の処理剤は、例えば特開平2−109042号、同2−109043号、同3−39735号各公報および同3−39739号公報等に記載される一般的な方法で製造できる。また、粉末の処理剤は、例えば特開昭54−133332号公報、英国特許725,892号、同729,862号各明細書およびドイツ特許3,733,861号明細書等に記載される一般的な方法で製造できる。
【0168】
上記固形処理剤の嵩密度は、その溶解性の観点と、0.5〜6.0g/cm3のものが好ましく、特に1.0〜5.0g/cm3のものが好ましい。
【0169】
上記固形処理剤を調製するに当たっては、処理剤を構成する物質の中の、少なくとも2種の相互に反応性の粒状物質を、反応性物質に対して不活性な物質による少なくとも一つの介在分離層によって分離された層になるように層状に反応性物質を置き、真空包装可能な袋を包材とし、袋内から排気しシールする方法を採用してもよい。ここにおいて、「不活性」とは、物質が互いに物理的に接触されたときにパッケージ内の通常の状態下で反応しないこと若しくは何らかの反応があっても著しくないことを意味する。不活性物質は、二つの相互に反応性の物質に対して不活性であることは別にして、二つの反応性の物質が意図される使用において不活発であればよい。さらに不活性物質は二つの反応性物質と同時に用いられる物質である。例えば、現像液においてハイドロキノンと水酸化ナトリウムは直接接触すると反応してしまうので、真空包装においてハイドロキノンと水酸化ナトリウムの間に分別層として亜硫酸ナトリウム等を使うことで、長期間パッケージ中に保存できる。また、ハイドロキノン等をブリケット化して水酸化ナトリウムとの接触面積を減らす事により保存性が向上し混合して用いることもできる。これらの真空包装材料の包材として用いられるのは不活性なプラスチックフィルム、プラスチック物質と金属箔のラミネートから作られたバッグである。
【0170】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得ることができるため好ましい。
【0171】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0172】
[物理現像およびメッキ処理]
本発明では、前記露光および現像処理により形成された金属銀部に導電性を付与する目的で、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させるための物理現像および/またはメッキ処理を行う。本発明では物理現像またはメッキ処理のいずれか一方のみで導電性金属粒子を金属性銀部に担持させることが可能であるが、さらに物理現像とメッキ処理とを組み合わせて導電性金属粒子を金属銀部に担持させることもできる。尚、金属銀部に物理現像および/またはメッキ処理を施したものを「導電性金属部」と称する。
本発明における「物理現像」とは、金属や金属化合物の核上に、銀イオンなどの金属イオンを還元剤で還元して金属粒子を析出させることをいう。この物理現象は、インスタントB&Wフィルム、インスタントスライドフィルムや、印刷版製造等に利用されており、本発明ではその技術を用いることができる。
また、物理現像は、露光後の現像処理と同時に行っても、現像処理後に別途行ってもよい。
【0173】
本発明において、メッキ処理は、無電解メッキ(化学還元メッキや置換メッキ)、電解メッキ、または無電解メッキと電解メッキの両方を用いることができる。本発明における無電解メッキは、公知の無電解メッキ技術を用いることができ、例えば、プリント配線板などで用いられている無電解メッキ技術を用いることができ、無電解メッキは無電解銅メッキであることが好ましい。
無電解銅メッキ液に含まれる化学種としては、硫酸銅や塩化銅、還元剤として、ホルマリンやグリオキシル酸、銅の配位子として、EDTA,トリエタノールアミン等、その他、浴の安定化やメッキ皮膜の平滑性向上の為の添加剤としてポリエチレングリコール、黄血塩、ビピリジン等が挙げられる。
電解銅メッキ浴としては、硫酸銅浴やピロリン酸銅浴が挙げられる。
【0174】
本発明におけるメッキ処理時のメッキ速度は、緩やかな条件で行うことができ、さらに5μm/hr以上の高速メッキも可能である。メッキ処理において、メッキ液の安定性を高める観点からは、例えば、EDTAなどの配位子など種々の添加剤を用いることができる。
【0175】
[酸化処理]
本発明では、現像処理後の金属銀部、並びに、物理現像および/またはメッキ処理によって形成された導電性金属部には、酸化処理を施すことが好ましい。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理など、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。上述の通り、酸化処理は、乳剤層の露光および現像処理後、或いは物理現像またはメッキ処理後に行うことができ、さらに現像処理後と物理現像またはメッキ処理後のそれぞれで行ってもよい。
【0176】
本発明では、さらに露光および現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により無電解メッキまたは物理現像速度を促進させることができる。
【0177】
[導電性金属部]
次に、本発明における導電性金属部について説明する。
本発明では、導電性金属部は、前述した露光および現像処理により形成された金属銀部を物理現像またはメッキ処理を施し、前記金属銀部に導電性金属粒子を担持させることにより形成される。
前記金属部に担持させる導電性金属粒子としては、上述した銀のほか、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、コバルト、スズ、ステンレス、タングステン、クロム、チタン、パラジウム、白金、マンガン、亜鉛、ロジウムなどの金属、またはこれらを組み合わせた合金の粒子を挙げることができる。導電性、価格等の観点から導電性金属粒子は、銅、アルミニウムまたはニッケルの粒子であることが好ましい。また、磁場シールド性を付与する場合、導電性金属粒子として常磁性金属粒子を用いることが好ましい。
【0178】
上記導電性金属部において、コントラストを高くし、かつ導電性金属部が経時的に酸化され退色されるのを防止する観点からは、導電性金属部に含まれる導電性金属粒子は銅粒子であることが好ましく、少なくともその表面が黒化処理されたものであることがさらに好ましい。黒化処理は、プリント配線板分野で行われている方法を用いて行うことができる。例えば、亜塩素酸ナトリウム(31g/l)、水酸化ナトリウム(15g/l)、リン酸三ナトリウム(12g/l)の水溶液中で、95℃で2分間処理することにより黒化処理を行うことができる。
【0179】
上記導電性金属部は、該導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して、銀を50質量%以上含有することが好ましく、60質量%以上含有することがさらに好ましい。銀を50質量%以上含有すれば、物理現像および/またはメッキ処理に要する時間を短縮し、生産性を向上させ、かつ低コストとすることができる。
さらに、導電性金属部を形成する導電性金属粒子として銅およびパラジウムが用いられる場合、銀、銅およびパラジウムの合計の質量が導電性金属部に含まれる金属の全質量に対して80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
【0180】
本発明における導電性金属部は、導電性金属粒子を担持するため良好な導電性が得られる。このため、本発明の透光性電磁波シールド膜(導電性金属部)の表面抵抗値は、10Ω/sq以下であることが好ましく、2.5Ω/sq以下であることがより好ましく、1.5Ω/sq以下であることがさらに好ましく、0.1Ω/sq以下であることが最も好ましい。
【0181】
本発明における導電性金属部は、透光性電磁波シールド材料としての用途である場合、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、菱形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形などの(正)n角形、円、楕円、星形などを組み合わせた幾何学図形であることが好ましく、これらの幾何学図形からなるメッシュ状であることがさらに好ましい。EMIシールド性の観点からは三角形の形状が最も有効であるが、可視光透過性の観点からは同一のライン幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がり可視光透過性が大きくなるので有利である。
なお、導電性配線材料の用途である場合、前記導電性金属部の形状は特に限定されず、目的に応じて任意の形状を適宜決定することができる。
【0182】
透光性電磁波シールド材料の用途において、上記導電性金属部の線幅は20μm以下であることが好ましく、線間隔は50μm以上であることが好ましい。また、導電性金属部は、アース接続などの目的においては、その線幅が20μmより広い部分を有していてもよい。また画像を目立たせなくする観点からは、導電性金属部の線幅は15μm未満であることが好ましく、10μm未満であることがさらに好ましく、7μm未満であることが最も好ましい。
【0183】
本発明における導電性金属部は、可視光透過率の点から開口率は85%以上であることが好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが最も好ましい。また、「開口率」とは、メッシュをなす細線のない部分が全体に占める割合であり、例えば、線幅10μm、ピッチ200μmの正方形の格子状メッシュの開口率は、90%である。尚、本発明における金属銀部の開口率について特に上限の限定はないが、表面抵抗値および線幅値との関係から、上記開口率としては、98%以下であることが好ましい。
【0184】
[光透過性部]
本発明における「光透過性部」とは、透光性電磁波シールド膜のうち導電性金属部以外の透明性を有する部分を意味する。
なお、本発明における「光透過性部の透過率」とは、支持体の光吸収および反射の寄与を除いた380〜780nmの波長領域における透過率の平均で示される透過率を指し、(透光性電磁波シールド材料の透明部の透過率)/(支持体の透過率)×100(%)で表される。上記光透過性部の透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましく、97%以上であることがさらに好ましく、99%以上であることが最も好ましい。
【0185】
本発明における光透過性部は、透過性を向上させる観点から、実質的に物理現像核を有しないことが好ましい。本発明は、従来の銀錯塩拡散転写法とは異なり、未露光のハロゲン化銀を溶解し、可溶性銀錯化合物に変換させた後、拡散させる必要がないため、光透過性部には物理現像核を実質的に有しない。
ここに、「実質的に物理現像核を有しない」とは、光透過性部における物理現像核の存在率が0〜5%の範囲であることをいう。
【0186】
本発明における光透過性部は、前記乳剤層を露光および現像処理することにより、金属銀部と共に形成される。光透過性部は、透過性を向上させる観点から、前記現像処理後、さらには物理処理またはメッキ処理後に上述の酸化処理を行うことが好ましい。
【0187】
[透光性電磁波シールド膜]
本発明の透光性電磁波シールド膜における支持体の厚さは、5〜200μmであることが好ましく、30〜150μmであることがさらに好ましい。5〜200μmの範囲であれば所望の可視光の透過率が得られ、かつ取り扱いも容易である。
【0188】
物理現像及び/又はメッキ処理前の支持体上に設けられる金属銀部の厚さは、支持体上に塗布される銀塩含有層用塗料の塗布厚みに応じて適宜決定することができる。金属銀部の厚さは、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、0.01〜9μmであることがさらに好ましく、0.05〜5μmであることが最も好ましい。また、金属銀部はパターン状であることが好ましい。金属銀部は1層でもよく、2層以上の重層構成であってもよい。金属銀部がパターン状であり、かつ2層以上の重層構成である場合、異なる波長に感光できるように、異なる感色性を付与することができる。これにより、露光波長を変えて露光すると、各層において異なるパターンを形成することができる。このようにして形成された多層構造のパターン状金属銀部を含む透光性電磁波シールド膜は、高密度なプリント配線板として利用することができる。
【0189】
導電性金属部の厚さは、ディスプレイの電磁波シールド材の用途としては、薄いほどディスプレイの視野角が広がるため好ましい。さらに、導電性配線材料の用途としては、高密度化の要請から薄膜化が要求される。このような観点から、導電性金属部に担持された導電性金属からなる層の厚さは、9μm未満であることが好ましく、0.1μm以上5μm未満であることがより好ましく、0.1μm以上3μm未満であることがさらに好ましい。
本発明では、上述した銀塩含有層の塗布厚みをコントロールすることにより所望の厚さの金属銀部を形成し、さらに物理現像及び/又はメッキ処理により導電性金属粒子からなる層の厚みを自在にコントロールできるため、5μm未満、好ましくは3μm未満の厚みを有する透光性電磁波シールド膜であっても容易に形成することができる。
【0190】
なお、従来のエッチングを用いた方法では、金属薄膜の大部分をエッチングで除去、廃棄する必要があったが、本発明では必要な量だけの導電性金属を含むパターンを支持体上に設けることができるため、必要最低限の金属量だけを用いればよく、製造コストの削減及び金属廃棄物の量の削減という両面から利点がある。
【0191】
<接着剤層>
本発明に係る電磁波シールド膜は、光学フィルターや、液晶表示板、プラズマディスプレーパネル、その他の画像表示グラットパネル、あるいはCCDに代表される撮像用半導体集積回路などに組み込まれる際には、接着層を介して接合される。
接着剤層における接着剤の屈折率は1.40〜1.70のものを使用することが好ましい。これは本発明で使用するプラスチックフィルム等の透明基材と接着剤の屈折率との関係で、その差を小さくして、可視光透過率が低下するのを防ぐためであり、屈折率が1.40〜1.70であると可視光透過率の低下が少なく良好である。
【0192】
また、接着剤は、加熱または加圧により流動する接着剤であることが好ましく、特に、200℃以下の加熱または1Kgf/cm2以上の加圧により流動性を示す接着剤であることが好ましい。このような接着剤を用いることにより、この接着剤層に導電層が埋設されている本発明おける電磁波シールド膜を被着体であるディスプレイやプラスチック板に接着剤層を流動させて接着することができる。流動できるので電磁波シールド膜を被着体にラミネートや加圧成形、特に加圧成形により、また曲面、複雑形状を有する被着体にも容易に接着することができる。このためには、接着剤の軟化温度が200℃以下であると好ましい。電磁波シールド膜の用途から、使用される環境が通常80℃未満であるので接着剤層の軟化温度は、80℃以上が好ましく、加工性から80〜120℃が最も好ましい。軟化温度は、粘度が1012ポイズ以下になる温度のことで、通常その温度では1〜10秒程度の時間のうちに流動が認められる。
【0193】
上記のような加熱または加圧により流動する接着剤としては、主に以下に示す熱可塑性樹脂が代表的なものとしてあげられる。たとえば天然ゴム(屈折率n=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ−1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.513)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.456)、ポリオキシプロピレン(n=1.450)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.459)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.456)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.467)、ポリビニルプロピオネート(n=1.467)などのポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)、ポリエチルアクリレート(n=1.469)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t−ブチルアクリレート(n=1.464)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメチレン(n=1.465)、ホ゜リメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.473)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.475)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.487)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.489)、ポリメチルメタクリレート(n=1.489)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのアクリルポリマーは必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使用することも可能である。
【0194】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート(n=1.48〜1.60)、ウレタンアクリレート(n=1.5〜1.6)、ポリエーテルアクリレート(n=1.48〜1.49)、ポリエステルアクリレート(n=1.48〜1.54)なども使うこともできる。特に接着性の点から、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1、6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートなどのように分子内に水酸基を有するポリマーは接着性向上に有効である。これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。これらの接着剤となるポリマーの軟化温度は、取扱い性から200℃以下が好適で、150℃以下がさらに好ましい。電磁波シールド膜の用途から、使用される環境が通常80℃以下であるので接着剤層の軟化温度は、加工性から80〜120℃が最も好ましい。一方、ポリマーの重量平均分子量(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレンの検量線を用いて測定したもの、以下同様)は、500以上のものを使用することが好ましい。分子量が500以下では接着剤組成物の凝集力が低すぎるために被着体への密着性が低下するおそれがある。本発明で使用する接着剤には必要に応じて、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。接着剤の層の厚さは、 10〜80μmであることが好ましく、導電層の厚さ以上で20〜50μmとすることが特に好ましい。
【0195】
また、幾何学図形を被覆する接着剤は、透明プラスチック基材との屈折率の差が0.14以下とされる。また透明プラスチック基材が接着層を介して導電性材料と積層されている場合においては、接着層と幾何学図形を被覆する接着剤との屈折率の差が0.14以下とされる。これは、透明プラスチック基材と接着剤の屈折率、または接着剤と接着層の屈折率が異なると可視光透過率が低下するためであり、屈折率の差が0.14以下であると可視光透過率の低下が少なく良好となる。そのような要件を満たす接着剤の材料としては、透明プラスチック基材がポリエチレンテレフタレート(n=1.575;屈折率)の場合、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、レゾルシン型エポキシ樹脂、ポリアルコール・ポリグリコール型エポキシ樹脂、ポリオレフィン型エポキシ樹脂、脂環式やハロゲン化ビスフェノールなどのエポキシ樹脂(いずれも屈折率が1.55〜1.60)を使うことができる。エポキシ樹脂以外では天然ゴム(n=1.52)、ポリイソプレン(n=1.521)、ポリ1,2−ブタジエン(n=1.50)、ポリイソブテン(n=1.505〜1.51)、ポリブテン(n=1.5125)、ポリ−2−ヘプチル−1,3−ブタジエン(n=1.50)、ポリ−2−t−ブチル−1,3−ブタジエン(n=1.506)、ポリ−1,3−ブタジエン(n=1.515)などの(ジ)エン類、ポリオキシエチレン(n=1.4563)、ポリオキシプロピレン(n=1.4495)、ポリビニルエチルエーテル(n=1.454)、ポリビニルヘキシルエーテル(n=1.4591)、ポリビニルブチルエーテル(n=1.4563)などのポリエーテル類、ポリビニルアセテート(n=1.4665)、ポリビニルプロピオネート(n=1.4665)などのポリエステル類、ポリウレタン(n=1.5〜1.6)、エチルセルロース(n=1.479)、ポリ塩化ビニル(n=1.54〜1.55)、ポリアクリロニトリル(n=1.52)、ポリメタクリロニトリル(n=1.52)、ポリスルホン(n=1.633)、ポリスルフィド(n=1.6)、フェノキシ樹脂(n=1.5〜1.6)などを挙げることができる。これらは、好適な可視光透過率を発現する。
【0196】
一方、透明プラスチック基材がアクリル樹脂の場合、上記の樹脂以外に、ポリエチルアクリレート(n=1.4685)、ポリブチルアクリレート(n=1.466)、ポリ−2−エチルヘキシルアクリレート(n=1.463)、ポリ−t-ブチルアクリレート(n=1.4638)、ポリ−3−エトキシプロピルアクリレート(n=1.465)、ポリオキシカルボニルテトラメタクリレート(n=1.465)、ポリメチルアクリレート(n=1.472〜1.480)、ポリイソプロピルメタクリレート(n=1.4728)、ポリドデシルメタクリレート(n=1.474)、ポリテトラデシルメタクリレート(n=1.4746)、ポリ−n−プロピルメタクリレート(n=1.484)、ポリ−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート(n=1.484)、ポリエチルメタクリレート(n=1.485)、ポリ−2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート(n=1.4868)、ポリテトラカルバニルメタクリレート(n=1.4889)、ポリ−1,1−ジエチルプロピルメタクリレート(n=1.4889)、ポリメチルメタクリレート(n=1.4893)などのポリ(メタ)アクリル酸エステルが使用可能である。これらのアクリルポリマーは必要に応じて、2種以上共重合してもよいし、2種類以上をブレンドして使うこともできる。
【0197】
さらにアクリル樹脂とアクリル以外との共重合樹脂としてはエポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ポリエステルアクリレートなども使うこともできる。特に接着性の点から、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートが優れており、エポキシアクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、アリルアルコールジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、ソルビトールテトラグリシジルエーテル等の(メタ)アクリル酸付加物が挙げられる。エポキシアクリレートは分子内に水酸基を有するため接着性向上に有効であり、これらの共重合樹脂は必要に応じて、2種以上併用することができる。接着剤の主成分となるポリマーの重量平均分子量は、1,000以上のものが使われる。分子量が1,000以下だと組成物の凝集力が低すぎるために被着体への密着性が低下する。
【0198】
接着剤の硬化剤としてはトリエチレンテトラミン、キシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタンなどのアミン類、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水ドデシルコハク酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの酸無水物、ジアミノジフェニルスルホン、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ポリアミド樹脂、ジシアンジアミド、エチルメチルイミダゾールなどを使うことができる。 これらは単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。これらの架橋剤の添加量は上記ポリマー100重量部に対して0.1〜50重量部、好ましくは1〜30重量部の範囲で選択するのがよい。この添加量が、0.1重量部未満であると硬化が不十分となり、50重量部を越えると過剰架橋となり、接着性に悪影響を与える場合がある。本発明で使用する接着剤の樹脂組成物には必要に応じて、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、充填剤や粘着付与剤などの添加剤を配合してもよい。そして、この接着剤の樹脂組成物は、透明プラスチック基材の表面に導電性材料で描かれた幾何学図形を設けた構成材料の基材の一部または全面を被覆するために、塗布され、溶媒乾燥、加熱硬化工程をへたのち、本発明に係る接着フィルムにする。上記で得られた電磁波シ−ルド性と透明性を有する接着フィルムは、該接着フィルムの接着剤によりCRT、PDP、液晶、ELなどのディスプレイに直接貼り付け使用したり、アクリル板、ガラス板等の板やシートに貼り付けてディスプレイに使用する。また、この接着フィルムは、電磁波を発生する測定装置、測定機器や製造装置の内部をのぞくための窓や筐体に上記と同様にして使用する。さらに、電波塔や高圧線等により電磁波障害を受ける恐れのある建造物の窓や自動車の窓等に設ける。そして、導電性材料で描かれた幾何学図形にはアース線を設けることが好ましい。
【0199】
透明プラスチック基材上の導電性材料が除去された部分は密着性向上のために意図的に凹凸を有していたり、導電性材料の背面形状を転写したりするためにその表面で光が散乱され、透明性が損なわれるが、その凹凸面に透明プラスチック基材と屈折率が近い樹脂が平滑に塗布されると乱反射が最小限に押さえられ、透明性が発現するようになる。さらに透明プラスチック基材上の導電性材料で描写された幾何学図形は、ライン幅が非常に小さいため肉眼で視認されない。またピッチも十分に大きいため見掛け上透明性を発現すると考えられる。一方、遮蔽すべき電磁波の波長に比べて、幾何学図形のピッチは十分に小さいため、優れたシールド性を発現すると考えられる。
【0200】
特開2003−188576号公報に示すように、透明基材フィルムと金属箔との積層は、透明基材フィルムとして、熱融着性の高いエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、もしくはアイオノマー樹脂等の熱融着性樹脂のフィルムを単独、または他の樹脂フィルムと積層して使用するときは、接着剤層を設けずに行なうことも可能であるが、通常は、接着剤層を用いたドライラミネート法等によって積層を行なう。接着剤層を構成する接着剤としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合樹脂、もしくはエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂等の接着剤を挙げることができ、これらの他、熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂(紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等)を用いることもできる。
【0201】
一般的には、ディスプレイの表面はガラス製であるので、粘着剤を用いて貼り合わせるのは透明プラスチックフィルムとガラス板となり、その接着面に気泡が生じたり剥離が生じたりすると画像が歪む、表示色がディスプレイ本来のものと異なって見える等の問題が発生する。また、気泡および剥離の問題はいずれの場合でも粘着剤がプラスチックフィルムまたはガラス板より剥離することにより発生する。この現象は、プラスチックフィルム側、ガラス板側ともに発生する可能性が有り、より密着力の弱い側で剥離が発生する。従って、高温での粘着剤とプラスチックフィルム、ガラス板との密着力が高いことが必要となる。具体的には、透明プラスチックフィルム及びガラス板と粘着剤層との密着力は80℃において10g/cm以上であることが好ましい。30g/cm以上であることが更に好ましい。ただし、2000g/cmを超えるような粘着剤は貼り合わせ作業が困難と成るために好ましくない場合がある。ただし、かかる問題点が発生しない場合は問題なく使用できる。さらに、この粘着剤の透明プラスチックフィルムと面していない部分に不必要に他の部分に接触しないように合い紙(セパレーター)を設けることも可能である。
【0202】
粘着剤は透明であるものが好ましい。具体的には全光線透過率が70%以上が好ましく、80%以上が更に好ましく、85〜92%が最も好ましい。さらに、霞度が低いことが好ましい。具体的には、0〜3%が好ましく、0〜1.5%が更に好ましい。本発明で用いる粘着剤は、ディスプレイ本来の表示色を変化させないために無色であることが好ましい。ただし、樹脂自体が有色であっても粘着剤の厚みが薄い場合には実質的には無色とみなすことが可能である。また、後述のように意図的に着色を行なう場合も同様にこの範囲ではない。
【0203】
上記の特性を有する粘着剤としては例えば、アクリル系樹脂、α−オレフィン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル共重合物系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エチレン−ビニルアセテート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。これらの内、アクリル系樹脂が好ましい。同じ樹脂を用いる場合でも、粘着剤を重合法により合成する際に架橋剤の添加量を下げる、粘着性付与材を加える、分子の末端基を変化させるなどの方法によって、粘着性を向上させることも可能である。また、同じ粘着剤を用いても、粘着剤を貼り合わせる面、すなわち、透明プラスチックフィルムまたはガラス板の表面改質を行なうことにより密着性を向上させることも可能である。このような表面の改質方法としては、コロナ放電処理、プラズマグロー処理等の物理的手法、密着性を向上させるための下地層を形成するなどの方法が挙げられる。
【0204】
透明性、無色性、ハンドリング性の観点から、粘着剤層の厚みは、5〜50μm程度であることが好ましい。粘着剤層を接着剤で形成する場合は、その厚みは上記範囲内で薄くするとよい。具体的には1〜20μm程度である。ただし、上記のようにディスプレイ自体の表示色を変化させず、透明性も上記の範囲に入っている場合には、厚みが上記範囲を超えてもよい。
【0205】
<剥離可能な保護フィルム>
本発明に係る透光性電磁波シールド膜には、剥離可能な保護フィルムを設けることができる。
保護フィルムは、必ずしも、電磁波遮蔽用シート1(透過性電磁波シールド膜)の両面に有していなくてもよく、特開2003−188576号公報の図2(a)に示すように、積層体10のメッシュ状の金属箔11’上に保護フィルム20を有するのみで、透明基材フィルム14側に有していなくてもよい。また、上記公報の図2(b)に示すように、積層体10の透明基材フィルム14側に保護フィルム30を有するのみで、金属箔11’上に有していなくてもよい。なお、上記公報の図2および図1において共通な符号を付した部分は同じものを示すものである。
【0206】
電磁波遮蔽用シート1における透明基材フィルム14、および開孔部が密に配列したメッシュ状の金属箔11’からなる透明性を有する電磁波遮蔽層とが少なくとも積層されて構成された積層体の層構成、および積層体の製造プロセスについて、次に上記公報の図3(a)〜(f)を引用しながら説明する。なお、保護フィルム20または/および保護フィルム30の積層については、積層体の製造プロセスの説明の後に、改めて説明する。
【0207】
まず、上記公報の図3(a)に示すように、透明基材フィルム14および金属箔11が接着剤層13を介して積層された積層体を準備する。透明基材フィルム14としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリサルホン樹脂、もしくはポリ塩化ビニル樹脂等のフィルムを用いることができる。通常は、機械的強度が優れ、透明性が高いポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂のフィルムを好ましく用いる。透明基材フィルム14の厚みは、特に限定されないが、機械的強度があり、折り曲げに対する抵抗性を大きくする点から、50μm〜200μm程度であることが好ましく、さらに厚みが増してもよいが、電磁波遮蔽用シート1を他の透明基板に積層して使用する場合には、必ずしも、この範囲以上の厚みでなくてもよい。必要に応じ、透明基材フィルム14の片面もしくは両面にコロナ放電処理を施したり、あるいは易接着層を設けるとよい。
【0208】
電磁波遮蔽用シート1は、後に上記公報の図4を引用して説明するように、上記の積層体を赤外線カットフィルター層を介する等して基板上に積層したものの表裏に、さらに、最表面の強化、反射防止性の付与、防汚性の付与等の効果を有するシートを積層して使うものであるので、上記の保護フィルムは、このようなさらなる積層の際には剥離する必要があり、このため、保護フィルムの金属箔側への積層は、いわゆる剥離可能に行なうことが望ましい。
【0209】
保護フィルムは金属箔上に積層した際の剥離強度は5mN/25mm幅〜5N/25mm幅であることが好ましく、より好ましくは10mN/25mm幅〜100mN/25mm幅である。下限未満では、剥離が容易過ぎ、取扱い中や不用意な接触により保護フィルムが剥離する恐れがあり、好ましくなく、また上限を超えると、剥離のために大きな力を要する上、剥離の際に、メッシュ状の金属箔が透明基材フィルム(もしくは接着剤層から)剥離する恐れがあり、やはり好ましくない。
【0210】
本発明の電磁波遮蔽用シート1において、透明基材フィルム14上に接着剤層13を介してメッシュ状の金属箔が積層された積層体(黒化層を伴なってもよい。)の下面側、即ち、透明基材フィルム側に積層する保護フィルムは、透明基材フィルムの下面が、取扱い中や不用意な接触により損傷しないよう、また、金属箔上にレジスト層を設けてエッチングする各工程において、特にエッチングの際に透明基材フィルムの露出面が汚染もしくは侵食を受けないよう、保護するためのものである。
【0211】
前述した保護フィルムの場合と同様、この保護フィルムも、積層体のさらなる積層の際には剥離する必要があるので、保護フィルムの透明基材フィルム側への積層も、剥離可能に行なうことが望ましく、剥離強度としては、保護フィルムと同様、5mN/25mm幅〜5N/25mm幅であることが好ましく、より好ましくは10mN/25mm幅〜100mN/25mm幅である。下限未満では、剥離が容易過ぎ、取扱い中や不用意な接触により保護フィルムが剥離する恐れがあり、好ましくなく、また上限を超えると、剥離のために大きな力を要するからである。
【0212】
透明基材フィルム側に積層する保護フィルムは、エッチング条件に耐える、例えば、50℃程度のエッチング液、特にそのアルカリ成分によって数分間の浸漬中、侵食されないものであることが好ましく、あるいは、ドライエッチングの場合には100℃程度の温度条件に耐えるものであることが望ましい。また、感光性樹脂層を積層する際に、積層体をディップコーティング(浸漬コーティング)するときは、コーティング液が積層体の反対面にも付着するので、エッチング等の工程の際に、感光性樹脂が剥離してエッチング液の中を漂うことがないよう、感光性樹脂の密着力が得られるものであることが好ましいし、エッチング液を用いるときは、塩化鉄や塩化銅等を含むエッチング液による汚染に耐える耐久性、もしくは、アルカリ液等のレジスト除去液による侵食もしくは汚染等に耐える耐久性を有するものであることが好ましい。
【0213】
上記の各点を満足させるために、保護フィルムを構成するフィルムとしては、ポリオレフィン系樹脂であるポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、もしくはアクリル樹脂等の樹脂フィルムを用いることが好ましく、また、上記した観点により、少なくとも、保護フィルムの、積層体に適用した際に最表面となる側の面にコロナ放電処理を施しておくか、易接着層を積層しておくことが好ましい。
【0214】
また、保護フィルムを構成する粘着剤としては、アクリル酸エステル系、ゴム系、もしくはシリコーン系のものを使用することができる。
【0215】
上記した保護フィルム用のフィルムの素材、および粘着剤の素材は、金属箔側に適用する保護フィルムについても、そのまま適用できるので、両保護フィルムとしては、異なるものを使用してもよいが、同じ物を、両保護フィルムとすることができる。
【0216】
<黒化処理>
特開2003−188576に示す構成図を例にして述べると、金属箔は、透明基材フィルム側に、黒化処理による黒化層(を有したものであってよく、防錆効果に加え、反射防止性を付与することができる。黒化層は、例えば、Co−Cu合金メッキによって形成され得るものであり、金属箔11の表面の反射を防止することができる。さらにその上に防錆処理としてクロメート処理をしてもよい。クロメート処理は、クロム酸もしくは重クロム酸塩を主成分とする溶液中に浸漬し、乾燥させて防錆被膜を形成するもので、必要に応じ、金属箔の片面もしくは両面に行なうことができるが、市販のクロメート処理された銅箔等を利用してもよい。なお、予め黒化処理された金属箔を用いないときは、後の適宜な工程において、黒化処理してもよい。なお、黒化層の形成は、後述する、レジスト層となり得る感光性樹脂層を、黒色に着色した組成物を用いて形成し、エッチングが終了した後に、レジスト層を除去せずに残留させることによっても形成できるし、黒色系の被膜を与えるメッキ法によってもよい。
【0217】
また、黒化層を含む構成の例としては、特開平11−266095号公報に示した構成であってもよい。上記の電磁波遮蔽板において、例えば、横方向のラインxと縦方向のラインyとが交叉して構成するメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成する第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等を構成する黒化層としては、次に述べる考え方に基づいて適宜に選択して利用することにより形成することができる。本発明においては、主目的であるメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成する方法として二つの方法があり、その一つの方法は、金属メッキ法であり、他の方法は、エッチング法である。本発明においては、上記のいずれかの方法を採用することにより、第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等の形成法、使用する材料等が異なる。すなわち、本発明において、第1の黒化層3a、第2の黒化層3b等の上に、導電性パタ−ンPを金属メッキ法等で形成するためには、金属メッキが可能な導電性黒化層が必要であり、また、エッチング法または電着法等により最終工程において黒化する場合には、非導電性材料等を使用して非導電性黒化層を形成することができる。上記の導電性黒化層は、一般に、導電性金属化合物、例えば、ニッケル(Ni)、亜鉛(Zn)、銅(Cu)等の化合物を使用して形成することができ、また、非導電性黒化層は、ペ−スト状黒色高分子材料、例えば、黒色インキ等、あるいは、黒化化成材料、例えば、金属メッキ表面を化成処理してなる黒色化合物を形成したもの、更には、電着性イオン性高分子材料、例えば、電着塗装材料等を使用して形成することができる。本発明においては、上記のような黒化層形成方法を利用し、電磁波遮蔽板の製造法における製造工程等に応じた適宜の方法を選択し、それを採用して黒化層を形成することができる。
【0218】
次に、本発明における黒化層を設ける方法としては、特開平11−266095号公報の図5に示すように、上記で作製した金属板等の導電性基板11の上に電着を阻害する絶縁性膜で構成するメッシュ状のレジストパタ−ン12を有する電着基板14を、まず、例えば、黒化銅、黒化ニッケル等の電解液中に浸漬し、電気化学的な公知のメッキ法でメッキして、黒化銅層、あるいは、黒化ニッケル層等からなるメッシュ状の第2の黒化層3bを形成する。なお、本発明において、上記の黒色メッキ浴は、硫酸ニッケル塩を主成分とする黒色メッキ浴を使用することができ、更に、市販の黒色メッキ浴も同様に使用することができ、具体的には、例えば、株式会社シミズ製の黒色メッキ浴(商品名、ノ−ブロイSNC、Sn−Ni合金系)、日本化学産業株式会社製の黒色メッキ浴(商品名、ニッカブラック、Sn−Ni合金系)、株式会社金属化学工業製の黒色メッキ浴(商品名、エボニ−クロム85シリ−ズ、Cr系)等を使用することができる。また、本発明においては、上記の黒色メッキ浴としては、Zn系、Cu系、その他等の種々の黒色メッキ浴を使用することができる。次に、本発明においては、同じく、上記公報図5に示すように、上記で第2の黒化層3bを設けた電着基板14を、電磁波遮蔽用の金属の電解液中に浸漬して、該電着基板14の第2の黒化層3bに相当する箇所に、所望の厚さにメッシュ状の導電性パタ−ン4を積層、電着する。上記において、メッシュ状の導電性パタ−ン4を構成する材料としては、前述の良導電性物質としての金属が最も有利な材料として使用することがでる。而して、上記の金属電着層を形成する場合には、汎用金属の電解液を使用することができるので、多種類の、安価な金属電解液が存在し、目的に適った選択を自由に行うことができるという利点がある。一般に、安価な良導電性金属としては、Cuが多用されており、本発明においても、Cuを使用することが、その目的にも合致して有用なものであり、勿論、その他の金属も同様に用いることができるものである。次にまた、本発明において、メッシュ状の導電性パタ−ン4は、単一金属層のみで構成する必要はなく、例えば、図示しないが、上記の例のCuからなるメッシュ状の導電性パタ−ンPは、比較的に柔らかく傷がつき易いので、その保護層として、NiやCr等の汎用の硬質金属を用いて2層からなる金属電着層とすることもできる。次に、本発明においては、同じく、図5に示すように、上記でメッシュ状の導電性パタ−ン4を形成した後、例えば、該メッシュ状の導電性パタ−ン4の表面を化成処理して、具体的には、例えば、導電性パタ−ンPが銅(Cu)からなるものであれば、硫化水素(H2 S)液処理して、銅の表面を硫化銅(CuS)として黒化して、該メッシュ状の導電性パタ−ン4を構成する金属電着層の表面を黒化処理して第1の黒化層3aを形成し、上記の第2の黒化層3b、導電性パタ−ン層4、および、第1の黒化層3aの順で順次に重層して構成したメッシュ状の導電性パタ−ンPを形成するものである。なお、本発明において、上記の銅表面の黒化処理剤としては、硫化物系や硫化物系化合物を用いて容易に製造でき、更にまた、市販品も多種類の処理剤があり、例えば、商品名・コパ−ブラックCuO、同CuS、セレン系のコパ−ブラックNo.65等(アイソレ−ト化学研究所製)、商品名・エボノ−ルCスペシャル(メルテックス株式会社製)等を使用することができる。
【0219】
上記の電磁波遮蔽板において、エッチングレジストパタ−ン35は、除去してもよく、また、残留させてもよく、更に、エッチングレジストパタ−ン35を除去する場合には、エッチングレジストパタ−ン35を除去後、残留する導電性金属層33の表面を黒化処理することができる。而して、上記の黒化処理には、例えば、ブラック銅(Cu)、ブラックニッケル(Ni)等のメッキ法や化学的な黒化処理法等の公知の黒化処理方法を利用して行うことができる。
【0220】
[光学フィルター]
本発明に係る光学フィルターは、上記の透光性電磁波シールド膜の他に、複合機能層を備えた機能性フィルムを有することができる。
<複合機能層>
ディスプレイは、照明器具等の映り込みによって表示画面が見づらくなってしまうので、機能性フィルム(C)は、外光反射を抑制するための反射防止(AR:アンチリフレクション)性、または、鏡像の映り込みを防止する防眩(AG:アンチグレア)性、またはその両特性を備えた反射防止防眩(ARAG)性のいずれかの機能を有していることが必要である。光学フィルター表面の可視光線反射率が低いと、映り込み防止だけではなく、コントラスト等を向上させることができる。
【0221】
反射防止性を有する機能性フィルム(C)は、反射防止膜を有し、具体的には、可視域において屈折率が1.5以下、好適には1.4以下と低い、フッ素系透明高分子樹脂やフッ化マグネシウム、シリコン系樹脂や酸化珪素の薄膜等を例えば1/4波長の光学膜厚で単層形成したもの、屈折率の異なる、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、窒化物、硫化物等の無機化合物またはシリコン系樹脂やアクリル樹脂、フッ素系樹脂等の有機化合物の薄膜を2層以上多層積層したものがあるが、これらに限定されるものではない。反射防止性を有する機能性フィルム(C)の表面の可視光線反射率は2%以下、好ましくは1.3%以下、さらに好ましくは0.8%以下である。
【0222】
防眩性を有する機能性フィルム(C)は、0.1μm〜10μm程度の微少な凹凸の表面状態を有する可視光線に対して透明な防眩膜を有している。具体的には、アクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂に、シリカ、有機珪素化合物、メラミン、アクリル等の無機化合物または有機化合物の粒子を分散させインキ化したものを、基体上に塗布、硬化させる。粒子の平均粒径は、1〜40μmである。または、上記の熱硬化型または光硬化型樹脂を基体に塗布し、所望のグロス値または表面状態を有する型を押しつけ硬化することによっても防眩性を得ることができるが、必ずしもこれら方法に限定されるものではない。防眩性を有する機能性フィルム(C)のヘイズは0.5%以上20%以下であり、好ましくは1%以上10%以下である。ヘイズが小さすぎると防眩性が不十分であり、ヘイズが大きすぎると透過像鮮明度が低くなる傾向がある。
【0223】
光学フィルターに耐擦傷性を付加させるために、機能性フィルム(C)がハードコート性を有していることも好適である。ハードコート膜としてはアクリル系樹脂、シリコン系樹脂、メラミン系樹脂、ウレタン系樹脂、アルキド系樹脂、フッ素系樹脂等の熱硬化型または光硬化型樹脂等が挙げられるが、その種類も形成方法も特に限定されない。これら膜の厚さは、1〜50μm程度である。ハードコート性を有する機能性フィルム(C)の表面硬度は、JIS(K―5400)に従った鉛筆硬度が少なくともH、好ましくは2H、さらに好ましくは3H以上である。ハードコート膜上に反射防止膜および/または防眩膜を形成すると、耐擦傷性・反射防止性および/または防眩性を有する機能性フィルム(C)が得られ好適である。
【0224】
光学フィルターには、静電気帯電によりホコリが付着しやすく、また、人体が接触したときに放電して電気ショックを受けることがあるため、帯電防止処理が必要とされる場合がある。従って、静電気防止能を付与するために、機能性フィルム(C)が導電性を有していても良い。この場合に必要とされる導電性は面抵抗で1011Ω/□程度以下であれば良い。導電性を付与する方法としてはフィルムに帯電防止剤を含有させる方法や導電層を形成する方法が挙げられる。帯電防止剤として具体的には、商品名ペレスタット(三洋化成社製)、商品名エレクトロスリッパー(花王社製)等が挙げられる。導電層としてはITOをはじめとする公知の透明導電膜やITO超微粒子や酸化スズ超微粒子をはじめとする導電性超微粒子を分散させた導電膜が挙げられる。ハードコート膜や反射防止膜、防眩膜が、導電膜を有していたり導電性微粒子を含有していると好適である。
【0225】
機能性フィルム(C)表面が防汚性を有していると、指紋等の汚れ防止や汚れが付いたときに簡単に取り除くことができるので好適である。防汚性を有するものとしては、水および/または油脂に対して非濡性を有するものであって、例えばフッ素化合物やケイ素化合物が挙げられる。フッ素系防汚剤として具体的には商品名オプツール(ダイキン社製)等が挙げられ、ケイ素化合物としては、商品名タカタクォンタム(日本油脂社製)等が挙げられる。反射防止膜に、これら防汚性のある層を用いると、防汚性を有する反射防止膜が得られて好適である。
【0226】
機能性フィルム(C)は、後述する色素や高分子フィルムの劣化等を防ぐ目的で紫外線カット性を有していることが好ましい。紫外線カット性を有する機能性フィルム(C)は、後述する上記の高分子フィルムに紫外線吸収剤を含有させることや紫外線吸収膜を付与する方法が挙げられる。
【0227】
光学フィルターは、常温常湿よりも高い温度・湿度環境化で使用されると、フィルムを透過した水分により後述する色素が劣化したり、貼り合せに用いる粘着材中や貼り合せ界面に水分が凝集して曇ったり、水分による影響で粘着材中の粘着付与剤等が相分離して析出して曇ったりすることがあるので、機能性フィルム(C)がガスバリア性を有していると好ましい。このような色素劣化や曇りを防ぐ為には、色素を含有する層や粘着材層への水分の侵入を防ぐことが肝要であり、機能性フィルム(C)の水蒸気透過度が10g/m・day以下、好ましくは5g/m・day以下であることが好適である。
【0228】
本発明において、高分子フィルム(A)、導電メッシュ層(B)、機能性フィルム(C)および必要に応じて後述する透明成型物(E)は、可視光線に対して透明な任意の粘着材または接着剤(D1)(D2)を介して貼り合わされる。粘着材または接着剤(D1)、(D2)として具体的にはアクリル系接着剤、シリコン系接着剤、ウレタン系接着剤、ポリビニルブチラール接着剤(PVB)、エチレン−酢酸ビニル系接着剤(EVA)等、ポリビニルエーテル、飽和無定形ポリエステル、メラミン樹脂等が挙げられ、実用上の接着強度があればシート状のものでも液状のものでもよい。粘着材は感圧型接着剤でシート状のものが好適に使用できる。シート状粘着材貼り付け後または接着材塗布後に各部材をラミネートすることによって貼り合わせを行う。液状のものは塗布、貼り合わせ後に室温放置または加熱により硬化する接着剤である。塗布方法としては、バーコート法、リバースコート法、グラビアコート法、ダイコート法、ロールコート法等が挙げられるが、接着剤の種類、粘度、塗布量等から考慮、選定される。層の厚みは、特に限定されるものではないが、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜30μmである。粘着材層を形成される面、貼り合わせられる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理により濡れ性を向上させておくことが好適である。本発明においては、前述の可視光線に対して透明な粘着材または接着剤を透光性粘着材と呼ぶ。
【0229】
本発明においては、導電性メッシュ層(B)上に機能性フィルム(C)を貼り合わせる際、特に透光性粘着材層(D1)を用いる。透光性粘着材層(D1)に用いる透光性粘着材の具体例としては前記と同じだが、その厚さが導電性メッシュ層(B)の凹部を十分埋め込むことができることが肝要である。導電性メッシュ層(B)の厚さより薄すぎると、埋め込み不十分で間隙が出来て凹部に気泡を噛み込み、濁りのある、透光性の不足したディスプレイ用フィルタとなってしまう。又、厚すぎると粘着材を作製するコストがアップしたり部材のハンドリングが悪くなる等の問題が生じる。導電性メッシュ層(B)の厚さがdμmの時、透光性粘着材(D1)の厚さは(d−2)〜(d+30)μmであることが好ましい。
【0230】
光学フィルターの可視光線透過率は、30〜85%が好ましい。更に好ましくは35〜70%である。30%未満であると輝度が下がりすぎ視認性が悪くなる。また、ディスプレイ用フィルタの可視光線透過率が高すぎると、ディスプレイのコントラストを改善できない。尚、本発明における可視光線透過率は、可視光線領域における透過率の波長依存性からJIS(R−3106)に従って計算されるものである。
【0231】
また、機能性フィルム(C)を透光性粘着材層(D1)を介して導電性メッシュ層(B)上に貼り合せると、凹部に気泡を噛み込み、濁って透光性が不十分になることがあるが、この場合、例えば加圧処理すると、貼り合わせ時に部材間に入り込んだ気体を脱泡または、粘着材に固溶させ、濁りを無くして透光性を向上させることができる。加圧処理は、(C)/(D1)/(B)/(A)の構成の状態で行っても、本発明のディスプレイ用フィルタの状態で行っても良い。
【0232】
加圧方法としては、平板間に積層体を挟み込みプレスする方法、ニップロール間を加圧しながら通す方法、加圧容器内に入れて加圧する方法が挙げられるが、特に限定はされない。加圧容器内で加圧する方法は、積層体全体に一様に圧力がかかり加圧のムラが無く、また、一度に複数枚の積層体を処理できるので好適である。加圧容器としてはオートクレーブ装置を用いることが出来る。
【0233】
加圧条件としては、圧力が高い程、噛み込んだ気泡を無くすことが出来、且つ、処理時間を短くすることが出来るが、積層体の耐圧性、加圧方法の装置上の制限から、0.2MPa〜2MPa程度、好ましくは0.4〜1.3MPaである。また、加圧時間は、加圧条件によって変わり特に限定されないが、長くなりすぎると処理時間がかかりコストアップとなるので、適当な加圧条件において保持時間が6時間以下であることが好ましい。特に加圧容器の場合は、設定圧力に到達後、10分〜3時間程度保持することが好適である。
【0234】
また、加圧時に同時に加温すると好ましい場合がある。加温することによって、透光性粘着材の流動性が一時的に上がり噛み込んだ気泡を脱泡しやすくなったり、気泡が粘着材中に固溶しやすくなる。加温条件としては光学フィルターを構成する各部材の耐熱性により、室温以上80℃以下程度であるが、特に限定を受けない。
【0235】
さらにまた、加圧処理、または、加圧加温処理は、光学フィルターを構成する各部材間の貼り合わせ後の密着力を向上させることが出来、好適である。
【0236】
本発明の光学フィルターは、高分子フィルム(A)の導電性メッシュ層(B)が形成されていない他方の主面に透光性粘着材層(D2)を設ける。透光性粘着材層(D2)に用いる透光性粘着材の具体例は前述の通りであり、特に限定はされない。厚みも、特に限定されるものではないが、0.5μm〜50μm、好ましくは1μm〜30μmである。透光性粘着材層(D2)を形成される面、貼り合わせられる面は、予め易接着コートまたはコロナ放電処理などの易接着処理により濡れ性を向上させておくことが好適である。
【0237】
透光性粘着材層(D2)上に離型フィルムが形成されていても良い。すなわち、少なくとも機能性フィルム(C)/透光性粘着材層(D1)/導電性メッシュ層(B)/高分子フィルム(A)/透光性粘着材層(D2)/離型フィルムである。離型フィルムは、粘着材層と接する高分子フィルムの主面上にシリコーン等をコーティングしたものである。本発明の光学フィルターを後述の透明成形物(E)の主面に貼り合せる際、または、ディスプレイ表面、例えばプラズマディスプレイパネルの前面ガラス上に貼り合せる際には、離型フィルムを剥離して透光性粘着材層(D2)を露出せしめた後に貼り合わせる。
【0238】
本発明の光学フィルターは、主として各種ディスプレイから発生する電磁波を遮断する目的で用いられる。好ましい例として、プラズマディスプレイ用フィルターが挙げられる。
【0239】
前述した様にプラズマディスプレイは強度の近赤外線を発生する為、本発明のディスプレイ用フィルタは、実用上問題無いレベルまで電磁波だけでなく近赤外線もカットする必要がある。波長領域800〜1000nmにおける透過率を25%以下、好ましくは15%以下、更に好ましくは10%以下とすることが必要である。また、プラズマディスプレイに用いる光学フィルターはその透過色がニュートラルグレーまたはブルーグレーであることが要求される。これは、プラズマディスプレイの発光特性およびコントラストを維持または向上させる必要があったり、標準白色より若干高めの色温度の白色が好まれる場合があるからである。さらにまた、カラープラズマディスプレイはその色再現性が不十分と言われており、その原因である蛍光体または放電ガスからの不要発光を選択的に低減することが好ましい。特に赤色表示の発光スペクトルは、波長580nmから700nm程度までにわたる数本の発光ピークを示しており、比較的強い短波長側の発光ピークにより赤色発光がオレンジに近い色純度の良くないものとなってしまう問題がある。これら光学特性は、色素を用いることによって制御できる。つまり、近赤外線カットには近赤外線吸収剤を用い、また、不要発光の低減には不要発光を選択的に吸収する色素を用いて、所望の光学特性とすることが出来、また、光学フィルターの色調も可視領域に適当な吸収のある色素を用いて好適なものとすることができる。
【0240】
色素を含有させる方法としては、(1)色素を少なくとも1種類以上、透明な樹脂に混錬させた高分子フィルムまたは樹脂板、(2)色素を少なくとも1種類以上、樹脂または樹脂モノマー/有機系溶媒の樹脂濃厚液に分散・溶解させ、キャスティング法により作製した高分子フィルムまたは樹脂板、(3)色素を少なくとも1種類以上を、樹脂バインダーと有機系溶媒に加え、塗料とし、高分子フィルムまたは樹脂板上にコーティングしたもの、(4)色素を少なくとも1種類以上を含有する透明な粘着材、のいずれか一つ以上選択できるが、これらに限定されない。本発明でいう含有とは、基材または塗膜等の層または粘着材の内部に含有されることは勿論、基材または層の表面に塗布した状態を意味する。
【0241】
上記の色素は可視領域に所望の吸収波長を有する一般の染料または顔料、または、近赤外線吸収剤であって、その種類は特に限定されるものではないが、例えばアントラキノン系、フタロシアニン系、メチン系、アゾメチン系、オキサジン系、イモニウム系、アゾ系、スチリル系、クマリン系、ポルフィリン系、ジベンゾフラノン系、ジケトピロロピロール系、ローダミン系、キサンテン系、ピロメテン系、ジチオール系化合物、ジイミニウム系化合物等の一般に市販もされている有機色素があげられる。その種類・濃度は、色素の吸収波長・吸収係数、光学フィルターに要求される透過特性・透過率、そして分散させる媒体または塗膜の種類・厚さから決まり、特に限定されるものではない。
【0242】
プラズマディスプレイパネルはパネル表面の温度が高く、環境の温度が高いときは特に光学フィルターの温度も上がるため、色素は、例えば80℃で分解等によって顕著に劣化しない耐熱性を有していることが好適である。また、耐熱性に加えて色素によっては耐光性に乏しいものもある。プラズマディスプレイの発光や外光の紫外線・可視光線による劣化が問題になる場合は、紫外線吸収剤を含む部材や紫外線を透過しない部材を用いることによって、色素の紫外線による劣化を低減すること、紫外線や可視光線による顕著な劣化がない色素を用いることが肝要である。熱、光に加えて、湿度や、これらの複合した環境においても同様である。劣化するとディスプレイ用フィルタの透過特性が変わってしまい、色調が変化したり近赤外線カット能が低下してしまう。さらには、媒体または塗膜中に分散させるために、適宜の溶媒への溶解性や分散性も重要である。また、本発明においては異なる吸収波長を有する色素2種類以上を一つの媒体または塗膜に含有させても良いし、色素を含有する媒体、塗膜を2つ以上有していても良い。
【0243】
上記の色素を含有する方法(1)〜(4)は、本発明においては、色素を含有する高分子フィルム(A)、色素を含有する機能性フィルム(C)、色素を含有する透光性粘着材(D1)、(D2)、その他貼り合わせに用いられる色素を含有する透光性の粘着材または接着剤のいずれか1つ以上の形態をもって、本発明の光学フィルターに使用できる。
【0244】
一般に色素は紫外線で劣化しやすい。光学フィルターが通常使用条件下で受ける紫外線は、太陽光等の外光に含まれるものである。従って、色素の紫外線による劣化を防止する為には、色素を含有する層自身および該層より外光を受ける人側の層から選ばれる少なくとも1層に、紫外線カット能を有する層を有していることが好適である。例えば、高分子フィルム(A)が色素を含有する場合、透光性粘着材層(D1)および/または機能性フィルム(C)が、紫外線吸収剤を含有したり、紫外線カット能を有する機能膜を有していれば、外光が含む紫外線から、色素を保護できる。色素を保護するのに必要な紫外線カット能としては、波長380nmより短い紫外線領域の透過率が、20%以下、好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。紫外線カット能を有する機能膜は、紫外線吸収剤を含有する塗膜であっても、紫外線を反射または吸収する無機膜であっても良い。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系やベンゾフェノン系等、従来公知のものを使用でき、その種類・濃度は、分散または溶解させる媒体への分散性・溶解性、吸収波長・吸収係数、媒体の厚さ等から決まり、特に限定されるものではない。尚、紫外線カット能を有する層またはフィルムは、可視光線領域の吸収が少なく、著しく可視光線透過率が低下したり黄色等の色を呈することがないことが好ましい。色素を含有する機能性フィルム(C)においては、色素を含有する層が形成されている場合はその層よりも人側のフィルムまたは機能膜が紫外線カット能を有すれば良く、高分子フィルムが色素を含有する場合はフィルムより人側に紫外線カット能を有する機能膜や機能層を有していれば良い。
【0245】
色素は、金属との接触によっても劣化する場合がある。このような色素を用いる場合、色素は導電メッシュ層(B)と出来るだけ接触しない様に配置することが更に好ましい。具体的には色素含有層が機能性フィルム(C)、高分子フィルム(A)、透光性粘着材層(D2)であることが好ましく、特には透光性粘着材層(D2)であることが好ましい。
【0246】
本発明の光学フィルターは、高分子フィルム(A)、導電性メッシュ層(B)、機能性フィルム(C)、透光性粘着材層(D1)および透光性粘着材層(D2)が、(C)/(D1)/(B)/(A)/(D2)の順に構成され、好ましくは導電性メッシュ層(B)と高分子フィルム(A)とからなる導電性メッシュフィルムと機能性フィルムとが透光性粘着剤層(D1)で貼合され、高分子フィルム(A)の導電性メッシュ層(B)とは反対側の主面に透光性粘着剤層(D2)が付されている。
【0247】
本発明の光学フィルターをディスプレイに装着する際には機能性フィルム(C)を人側に、透光性粘着剤層(D2)がディスプレイ側となるように装着する。
【0248】
本発明の光学フィルターを、ディスプレイの前面に設けて使用する方法としては、後述の透明成形物(E)を支持体とした前面フィルター板として使用する方法、ディスプレイ表面に透光性粘着材層(D2)を介して貼り合せて使用する方法がある。前者の場合、光学フィルターの設置が比較的容易であり、支持体により機械的強度が向上し、ディスプレイの保護に適している。後者の場合は、支持体が無くなることにより軽量化・薄化が可能であり、また、ディスプレイ表面の反射を防止することが出来、好適である。
【0249】
透明成形物(E)としては、ガラス板、透光性のプラスチック板があげられる。機械的強度や、軽さ、割れにくさからは、プラスチック板が好ましいが、熱による変形等の少ない熱的安定性からガラス板も好適に使用できる。プラスチック板の具体例を挙げると、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)をはじめとするアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、透明ABS樹脂等が使用できるが、これらの樹脂に限定されるものではない。特にPMMAはその広い波長領域での高透明性と機械的強度の高さから好適に使用できる。プラスチック板の厚みは十分な機械的強度と、たわまずに平面性を維持する剛性が得られればよく、特に限定されるものではないが、通常1mm〜10mm程度である。ガラスは、機械的強度を付加するために化学強化加工または風冷強化加工を行った半強化ガラス板または強化ガラス板が好ましい。重量を考慮すると、その厚みは1〜4mm程度である事が好ましいが、特に限定されない。透明成形物(E)はフィルムを貼り合せる前に必要な各種公知の前処理を行うことが出来るし、光学フィルター周縁部となる部分に黒色等の有色の額縁印刷を施しても良い。
【0250】
透明成形物(E)を用いる場合の光学フィルターの構成は、少なくとも機能性フィルム(C)/透光性粘着材層(D1)/導電性メッシュ層(B)/高分子フィルム(A)/透光性粘着材層(D2)/透明成形物(E)である。また、透明成形物(E)の透光性粘着材層(D2)と貼り合せられる面とは反対の主面に、機能性フィルム(C)が透光性粘着材層を介して設けられても良い。この場合、人側に設けられる機能性フィルム(C)と同じ機能・構成を有する必要は無く、例えば、反射防止能を有している場合は、支持体を有する光学フィルターの裏面反射を低減することができる。同じく、透明成形物(E)の透光性粘着材層(D2)と貼り合せられる面とは反対の主面に、反射防止膜等の機能膜(C2)を形成しても良い。この場合は、機能性膜(C2)を人側にしてディスプレイに設置することもできるが、前述の通り、紫外線カット能を有する層を色素含有層および色素含有層より人側の層に設けることが好ましい。
【0251】
電磁波シールドを必要とする機器には、機器のケース内部に金属層を設けたり、ケースに導電性材料を使用して電磁波を遮断する必要があるが、ディスプレイの如く表示部に透明性が必要である場合には、本発明の光学フィルターの如く透光性の導電層を有した窓状の電磁波シールドフィルタを設置する。ここで、電磁波は導電層において吸収されたのち電荷を誘起するため、アースをとることによって電荷を逃がさないと、再び光学フィルターがアンテナとなって電磁波を発振し電磁波シールド能が低下する。従って、光学フィルターとディスプレイ本体のアース部が電気的に接触している必要がある。そのため、前述の透光性粘着材層(D1)および機能性フィルム(C)は、外部から導通を取ることが出来る導通部を残して導電性メッシュ層(B)上に形成されている必要がある。導通部の形状は特に限定しないが、光学フィルターとディスプレイ本体の間に、電磁波の漏洩する隙間が存在しないことが肝要である。従って、導通部は、導電性メッシュ層(B)の周縁部且つ連続的に設けられている事が好適である。すなわち、ディスプレイの表示部である中心部分を除いて、枠状に、導通部が設けられている事が好ましい。
【0252】
導通部はメッシュパターン層であっても、パターニングされていない、例えば金属箔ベタの層であっても良いが、ディスプレイ本体のアース部との電気的接触を良好とする為には、金属箔ベタ層のようにパターニングされていない導通部であることが好ましい。
【0253】
導通部が、例えば金属箔ベタのようにパターニングされていない場合、および/または、導通部の機械的強度が十分強い場合は、導通部そのままを電極として使用できて好適である。
【0254】
導通部の保護のため、および/または、導通部がメッシュパターン層である場合にアース部との電気的接触を良好とするために、導通部に電極を形成することが好ましい場合がある。電極形状は特に限定しないが、導通部をすべて覆うように形成されている事が好適である。
電極に用いる材料は、導電性、耐触性および透明導電膜との密着性等の点から、銀、銅、ニッケル、アルミニウム、クロム、鉄、亜鉛、カーボン等の単体もしくは2種以上からなる合金や、合成樹脂とこれら単体または合金の混合物、もしくは、ホウケイ酸ガラスとこれら単体または合金の混合物からなるペーストを使用できる。ペーストの印刷、塗工には従来公知の方法を採用できる。また市販の導電性テープも好適に使用できる。導電性テープは両面ともに導電性を有するものであって、カーボン分散の導電性接着剤を用いた片面接着タイプ、両面接着タイプが好適に使用できる。電極の厚さは、これもまた特に限定されるものではないが、数μm〜数mm程度である。
【0255】
本発明によれば、プラズマディスプレイの輝度を著しく損なわずに、その画質を維持または向上させることができる、光学特性に優れた光学フィルターを得ることが出来る。また、プラズマディスプレイから発生する健康に害をなす可能性があることを指摘されている電磁波を遮断する電磁波シールド能に優れ、さらに、プラズマディスプレイから放射される800〜1000nm付近の近赤外線線を効率よくカットするため、周辺電子機器のリモコン、伝送系光通信等が使用する波長に悪影響を与えず、それらの誤動作を防ぐことができる光学フィルターを得ることができる。さらにまた、耐候性にも優れた光学フィルターを低コストで提供することが出来る。
【実施例】
【0256】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。
〔実施例1〕
(乳剤Aの調整)
・1液:
水 750ml
ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005% KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001% NaCl 20%水溶液) 7ml
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005% KCl 20%水溶液)およびヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001% NaCl20%水溶液)は、粉末をそれぞれKCl 20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0257】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0258】
その後、常法にしたがってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、下記に示すアニオン性沈降剤−1を3g加え、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた。(pH3.2±0.2の範囲であった)次に上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返し(第三水洗)て水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤にゼラチン30gを加え、pH5.6、pAg7.5に調整し、ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム10mg、ベンゼンチオスルフィン酸ナトリウム3mg、チオ硫酸ナトリウム15mgと塩化金酸10mgを加え55℃にて最適感度を得るように化学増感を施し、安定剤として1,3,3a,7-テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。(最終的に乳剤として、pH=5.7、pAg=7.5、電導度=40μS/m、密度=1.2×103kg/m3、粘度=60mPa・sとなった。)
【0259】
【化30】

【0260】
(塗布試料1−1の作製)
下記に示す両面が塩化ビニリデンを含む防湿層下塗りからなるポリエチレンテレフタレートフィルム支持体上に、UL層/乳剤層/保護層下層/保護層上層保護層の構成となるように塗布して試料1−1を作成した。以下に各層の調製方法、塗布量および塗布方法を示す。
<乳剤層>
乳剤Aに増感色素(sd-1)5.7×10-4モル/モルAgを加えて分光増感を施した。さらにKBr3.4×10-4モル/モルAg、化合物(Cpd-3)8.0×10-4モル/モルAgを加え、良く混合した。
次いで1,3,3a,7-テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAg、ハイドロキノン1.2×10-2モル/モルAg、クエン酸3.0×10-4モル/モルAg、2,4-ジクロロ-6-ヒドロキシ-1,3,5-トリアジンナトリウム塩を90mg/m2、ゼラチンに対して15wt%の粒径10μmのコロイダルシリカ、水性ラテックス(aqL-6)を100mg/m2、ポリエチルアクリレートラテックスを150mg/m2、メチルアクリレートと2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩と2-アセトキシエチルメタクリレートのラテックス共重合体(重量比88:5:7)を150mg/m2、コアシェル型ラテックス(コア:スチレン/ブタジエン共重合体(重量比37/63)、シェル:スチレン/2-アセトキシエチルアクリレート(重量比84/16)、コア/シェル比=50/50)を150mg/m2、ゼラチンに対し4wt%の化合物(Cpd-7)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。このようにして調製した乳剤層塗布液を下記支持体上にAg3.4g/m2、ゼラチン1.1g/m2になるように塗布した。
【0261】
<保護層上層>
ゼラチン 0.3g/m2
平均3.5μmの不定形シリカマット剤 25mg/m2
化合物(Cpd-8)(ゼラチン分散物) 20mg/m2
粒径10〜20μmのコロイダルシリカ(日産化学製スノーテックスC)
30mg/m2
化合物(Cpd-9) 50mg/m2
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 20mg/m2
化合物(Cpd-10) 20mg/m2
化合物(Cpd-11) 20mg/m2
防腐剤(プロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)) 1mg/m2
【0262】
<保護層下層>
ゼラチン 0.5g/m2
1,5−ジヒドロキシ−2−ベンズアルドキシム 10mg/m2
ポリエチルアクリレートラテックス 150mg/m2
化合物(Cpd-13) 3mg/m2
防腐剤(プロキセル) 1.5mg/m2
【0263】
<UL層>
ゼラチン 0.5g/m2
ポリエチルアクリレートラテックス 150mg/m2
化合物(Cpd-7) 40mg/m2
化合物(Cpd-14) 10mg/m2
防腐剤(プロキセル) 1.5mg/m2
【0264】
なお、各層の塗布液は、下記構造(Z)で表される増粘剤を加え、粘度調整した。
【0265】
【化31】

【0266】
なお、本発明で使用したサンプルは下記組成のバック層および導電層を有する。
<バック層>
ゼラチン 3.3g/m2
化合物(Cpd-15) 40mg/m2
化合物(Cpd-16) 20mg/m2
化合物(Cpd-17) 90mg/m2
化合物(Cpd-18) 40mg/m2
化合物(Cpd-19) 26mg/m2
1,3−ジビニルスルホニル−2−プロパノール 60mg/m2
ポリメチルメタクリレート微粒子(平均粒径6.5μm ) 30mg/m2
流動パラフィン 78mg/m2
化合物(Cpd-7) 120mg/m2
硝酸カルシウム 20mg/m2
防腐剤(プロキセル) 12mg/m2
【0267】
<導電層>
ゼラチン 0.1g/m2
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム 20mg/m2
SnO2 /Sb(9/1重量比、平均粒子径0.25μ) 200mg/m2
防腐剤(プロキセル) 0.3mg/m2
【0268】
【化32】

【0269】
【化33】

【0270】
【化34】

【0271】
<支持体>
二軸延伸したポリエチレンテレフタレート支持体(厚味100μm)の両面の下記組成の下塗層第1層及び第2層を塗布した。
【0272】
<下塗層1層>
コア−シェル型塩化ビニリデン共重合体(1) 15g
2,4−ジクロル−6−ヒドロキシ−s−トリアジン 0.25g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μ) 0.05g
化合物(Cpd-20) 0.20g
コロイダルシリカ(スノーテックスZL:粒径70〜 100μm日産化学(株)製)
0.12g
水を加えて 100g
さらに、10重量%のKOHを加え、pH=6に調整した塗布液を乾燥温度180℃2分間で、乾燥膜厚が0.9μmになる様に塗布した。
【0273】
<下塗層第2層>
ゼラチン 1g
メチルセルロース 0.05g
化合物(Cpd-21) 0.02g
C12H25O(CH2CH2O)10H 0.03g
プロキセル 3.5×10-3
酢酸 0.2g
水を加えて 100g
この塗布液を乾燥温度170℃2分間で、乾燥膜厚が0.1μmになる様に塗布した。
【0274】
<塗布方法>
上記下塗層を施した支持体上に、まず乳剤面側として支持体に近い側よりUL層、乳剤層、保護層下層、保護層上層の順に4層を、35℃に保ちながらスライドビードコーター方式により硬膜剤液を加えながら同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた後、乳剤面とは反対側に支持体に近い側より、導電層、バック層の順に、カーテンコーター方式により硬膜剤液を加えながら同時重層塗布し、冷風セットゾーン(5℃)を通過させた。各々のセットゾーンを通過した時点では、塗布液は充分なセット性を示した。引き続き乾燥ゾーンにて両面を同時に乾燥した。
【0275】
【化35】

【0276】
得られた塗布試料1-1は、乳剤層中に、本発明の導電性膜形成用感光材料に好ましく用いられる銀塩である沃化銀含有率1.5%以下のハロゲン化銀乳剤を含む。また、銀塩塗設量は銀換算で3.4g/mであり、本発明の導電性膜形成用感光材料に好ましく用いられる銀塩塗設量である。また、乳剤層のAg/バインダー重量比率は1.8であり、本発明の導電性膜形成用感光材料に好ましく用いられるAg/バインダー比率1.5以上に該当している。また塗布試料1−1の乳剤層中には、本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられる酸化剤であるベンゼンチオスルフォン酸ナトリウム、本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられる酸化防止剤であるハイドロキノンおよび本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられるコロイダルシリカを含有している。しかしながら塗布試料1-1は、乳剤層よりも上層に2層の保護層を有しているため、本発明の導電性膜形成用感光材料には該当しない。
【0277】
(塗布試料1−2の作製)
塗布試料1−1に対して、本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられる酸化剤であるベンゼンチオスルフォン酸ナトリウム、本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられる酸化防止剤であるハイドロキノンおよび本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられるコロイダルシリカを除去し、保護層上層および保護層下層の塗設を行わず、さらに保護上層に用いていた界面活性剤であるCpd-9およびCpd-10を塗布試料1−1と同じ塗設量になるように乳剤層に添加したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−2とした。
【0278】
(塗布試料1−3〜1−5の作製)
塗布試料1−2に対して、本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられる酸化防止剤であるハイドロキノンを乳剤層に塗布試料1−1と同量添加したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−3を得た。また、塗布試料1−3に対し、酸化防止剤を下記表1に記載の化合物および塗設量に変更したことのみ異なる塗布試料を作成し、それぞれ塗布試料1−4〜1−5を得た。
【0279】
(塗布試料1−6の作製)
塗布試料1−2に対して、乳剤調製時にチオ硫酸ナトリウムおよび塩化金酸の添加を行わないことにより、乳剤を未化学増感乳剤に変更したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−6を得た。
【0280】
(塗布試料1−7〜1−9の作製)
塗布試料1−2に対して、本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられる酸化剤であるベンゼンチオスルフォン酸ナトリウムを、塗布試料1−1と同量、同じ添加時期に添加したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−7を得た。また、塗布試料1−7に対し、酸化剤を表1に記載の化合物および添加量に変更したことのみ異なる塗布試料を作成し、それぞれ塗布試料1−8、1−9を得た。
【0281】
(塗布試料1−10の作成)
塗布試料1−2に対し、塗布試料1-1に用いたコロイダルシリカを、塗布試料1−1と同量乳剤層に添加したことのみ異なる塗布試料を作成し、塗布試料1−10を得た。
【0282】
(塗布試料1−11〜1−13の作製)
塗布試料1−2に対し、本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられるマット剤である塗布試料1-1の保護層上層に用いたものと同じ不定形シリカマット剤(平均3.5μm)を表1の量乳剤層中に添加したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−11を得た。また塗布試料1−11に対し、マット剤を表1に示す化合物および塗設量に変更したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−12、1−13を得た。
【0283】
(塗布試料1−14〜1−15の作製)
塗布試料1−2に対し、本発明の導電性膜形成用感光材料の乳剤層に好ましく用いられるすべり剤化合物(Cpd-9)を表1の量乳剤層中に添加したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−14を得た。また塗布試料1−14に対し、すべり剤を表1に示す化合物および塗設量に変更したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−15を得た。
【0284】
(塗布試料1−16の作製)
塗布試料1−1に対して、保護層上層および保護層下層の塗設を行わなず、本発明の導電性膜形成用感光材料に好ましく用いられる不定形シリカマット剤、および本発明の導電性膜形成用感光材料に好ましく用いられるすべり剤を表1に示す量乳剤層に添加し、さらにCpd-9およびCpd-10を塗布試料1−1と同じ塗設量になるように乳剤層に添加したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−16とした。ここで不定形シリカマット剤は塗布試料1-1の保護層上層に用いたものと同じ、平均3.5μmのものを使用した。
【0285】
(塗布試料1−17の作製)
塗布試料1−16に対して、乳剤調製時のヨウ化カリウム添加量を9.4gに変更したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−17を得た。
【0286】
(塗布試料1−18の作製)
塗布試料1−16に対して、乳剤調製時にチオ硫酸ナトリウムおよび塩化金酸の添加を行わないことにより、乳剤を未化学増感乳剤に変更したことのみ異なる試料を作成し、塗布試料1−18を得た。
【0287】
(塗布試料1−19〜1−20の作製)
塗布試料1−16に対して、乳剤層の塗布流量を変更したことのみ異なる試料を作成し、試料1−19および、1−20を得た。各々表1に示す塗布銀量の試料を得た。
【0288】
このようにして得られた塗布試料1−1から1−20に対して、下記の露光、現像およびメッキ処理を施した。
【0289】
(露光・現像処理)
乾燥させた塗布膜にライン/スペース=15μm/285μm(ピッチ300μm)の現像銀像を与えうる格子状のパターンを、大日本スクリーン(株)製のイメージセッターFT-R5055を使用して露光した。このとき露光量は各試料に合わせて最適となるよう調節した。
露光後の各試料に対し、下記処方の現像液(A)および定着液(B)を使用し、FG−680AG自動現像機(富士写真フイルム株式会社製)を用い、35℃30″の現像条件で処理した。
【0290】
・現像液(A)処方 濃縮液1Lあたりの組成を示す。
水酸化カリウム 60.0g
ジエチレントリアミン・五酢酸 3.0g
炭酸カリウム 90.0g
メタ重亜硫酸ナトリウム 105.0g
臭化カリウム 10.5g
ハイドロキノン 60.0g
5-メチルベンゾトリアゾール 0.53g
4-ヒドロキシメチル-4-メチル-1-フェニル -3-ピラゾリドン 2.3g
3-(5-メルカプトテトラゾール-1-イル)ベンゼンスルホン酸ナトリウム
0.15g
2-メルカプトベンゾイミダゾール -5-スルホン酸ナトリウム 0.45g
エリソルビン酸ナトリウム 9.0g
ジエチレングリコール 7.5g
pH 10.79
使用にあたっては、母液は上記濃縮液2部に対して水1部の割合で希釈し、母液のpHは10.65であり、補充液は上記濃縮液4部に対して水3部の割合で希釈し補充液のpHは10.62であった。
【0291】
・定着液(B)処方 濃縮液1Lあたりの処方を示す。
チオ硫酸アンモニウム 360g
エチレンジアミン・四酢酸・2Na・2水塩 0.09g
チオ硫酸ナトリウム・5水塩 33.0g
メタ亜硫酸ナトリウム 57.0g
水酸化ナトリウム 37.2g
酢酸(100%) 90.0g
酒石酸 8.7g
グルコン酸ナトリウム 5.1g
硫酸アルミニウム 25.2g
pH 4.85
使用にあたっては、上記濃縮液1部に対して水2部の割合で希釈する。使用液のpHは4.8である。補充液は上記使用液と同じ希釈したものを用い、感材1m2当たり、258mlで行った。
【0292】
(メッキ処理)
上記現像処理によって得られたメッシュパターン用の銀像を有するフィルムに対し、引き続き下記組成の活性化液および無電解銅メッキ液に浸漬することにより、メッシュパターン銀像の上に無電解銅メッキを施した。ここで活性化処理は35℃で5分間行った。また無電解銅メッキは35℃にて、表面抵抗率が0.3Ω/□以下になるまでの期間処理を行った。
【0293】
(活性化液組成):1Lあたり
PdCl 0.2g
HCl(2規定水溶液) 25.6ml
水を加え上記を溶解し1Lとする。
【0294】
(無電解銅メッキ液組成):
硫酸銅 0.06モル/L
ホルマリン 0.22モル/L
トリエタノールアミン 0.12モル/L
ポリエチレングリコール 100ppm
黄血塩 50ppm
α、α’−ビピリジン20ppmを含有する水溶液
pH=12.5
【0295】
各試料に上記の露光、現像およびメッキ処理を行ったことにより、金属細線部および金属が実質的に存在しない光透過部からなる、光透過性導電性膜が形成された。ここで金属細線部は露光パターンに応じたメッシュ状パターンを呈しており、ライン/スペース幅はいずれの試料においても15μm/285μmであった。またいずれの試料においても、光透過部の開口率は約90%であった。
【0296】
(評価)
得られた導電性薄膜に関し、メッキ進行性および圧力耐性を下記方法によって評価した。
(1)メッキ進行性
三菱化学(株)低抵抗率計ロレスターGP/ASPプローブを用いて、JIS7194に従いメッキ後の表面抵抗率を測定した。各試料につき得られた表面抵抗率とメッキ時間との関係から、表面抵抗率が0.3Ω/□になるまでのメッキ所要時間を内挿により求めた。
【0297】
(2)圧力耐性
上記露光に先立って各試料の表面をキクロンたわしによりこすった場合の非露光部状に形成される金属の発生頻度を、光学顕微鏡によって観察し下記ランクづけを行った。
<評価>
5:非露光部での金属形成がほとんど認めらず、非常に好ましいレベル。
4:非露光部での金属形成が極稀に認められるが、好ましいレベル。
3:非露光部での金属形成が稀に認められるレベル。
2:非露光部での金属形成が散見されるレベル。
1:非露光部での金属形成が頻繁に認められるレベル。
金属形成レベルが上記の評価値いずれかの中間のレベルの場合には、該当する評価値の平均値によって評価値とした。
【0298】
得られた評価結果を表1に示す。
【0299】
【表1】

【0300】
【化36】

【0301】
表1から、本発明の優れた効果を窺い知ることができる。すなわち、比較サンプルである塗布試料1−1を用いた場合に対し、本発明の試料はいずれもメッキ所要時間が大幅に短縮されることが表1に示されており、本発明の試料を用いることによって迅速に導電性膜を形成しうることが分かる。一方、本発明の試料を用いると、圧力耐性が悪化する場合があることが同時に表1に示されている。この圧力耐性の悪化に対しては、本発明の感光材料において好ましく用いることのできる酸化防止剤、酸化剤、マット剤、すべり剤、コロイダルシリカを用いることによって、改善し得ることが表1に示されている。また、本発明の好ましい態様の一つである、未化学増感乳剤の使用は圧力耐性を改善し得ることが表1に示されている。また、本発明の好ましい態様の一つである、限定された沃化銀含率の乳剤の使用によって、圧力耐性が改善し得ることが表1に示されている。
【0302】
〔実施例2〕
(塗布試料2−1〜2−7の作製)
実施例1の用いた試料1−18と全く同じ方法により、試料2−1を得た。
塗布試料2−1に対し、乳剤層中のゼラチン量、乳剤層およびUL層の塗設量を表2に示す如く変更した試料を作成し、試料2−1〜試料2−7を得た。
【0303】
得られた各試料に対し、実施例1と同様の露光、現像処理、活性化およびメッキ処理を施すことにより、メッキ進行性および圧力耐性を評価した。結果を表2に示す。
【0304】
【表2】

【0305】
表2から、本発明の優れた効果を窺い知ることができる。すなわち、圧力耐性が、本発明の好ましい態様の一つである、限定された塗布銀量の範囲で改善し得ることが表2に示されている。また、本発明の好ましい態様の一つである、限定された乳剤層のAg/バインダー比の設定により、メッキ所要時間がさらに短縮し得ることが表2に示されている。また、本発明の好ましい態様の一つである、乳剤層よりも支持体側に位置するUL層の塗設によって、圧力耐性が改善することが表2に示されている。塗設銀量の低減はメッキ所要時間の増大につながる傾向があるものの、本発明の好ましい態様の一つである、限定された乳剤層のAg/バインダー比の設定により、塗設銀量の低減に伴うメッキ所要時間の増大を軽減し得ることが表2に示されている。
【0306】
〔実施例3〕
実施例1で作成した各試料1−1〜1−20に対し、分光増感色素SD−1を下記SD−2に変更し、Cpd-14を下記Cpd−YFに変更し、さらにバック層の塗設を行わなかったことのみ異なる試料を作成し、試料3−1〜3−20を得た。ここでSD−2およびCpd−YFの塗設量は、各々SD−1およびCpd-14と同量(モル/m)とした。
得られた試料に対し、高圧水銀灯を光源とする密着プリンターで最線幅10μm、格子間隔300μmのメッシュ状フォトマスクを介して露光を与えた後、実施例1と同様の現像処理、活性化およびメッキ処理を施すことにより、メッキ進行性および圧力耐性を評価した。実施例1と同様の評価を行ったところ、本発明の優れた効果が確認された。
【0307】
【化38】

【0308】
〔実施例4〕
実施例3で作成した各試料に対し、青色半導体レーザーを搭載したイメージセッター(ESCHER−GRAD社製Cobalt8、レーザー波長410nm)を用いて、線幅15μm、ピッチ300μmのメッシュパターン状の露光を与えた。露光後の各試料に対し、実施例1と同様の現像処理、活性化およびメッキ処理を行った。
得られた各試料に対し、アドバンテスト法で電磁波シールド能を調べたところ、いずれの試料においても30MHzから1GHz範囲で30dB以上のシールド特性を有しており、本発明の感光材料は電磁波シールド性を有する導電性膜の製造に有効であることを確認した。また、いずれの試料においても85%以上の開口率を有しており、本発明の感光材料はプラズマディスプレイパネル用等の透光性電磁波シールド膜作成に有効なことを確認した。本発明によって、圧力耐性が改善され、かつメッキ時間が短縮された導電性膜製造用および/または透光性電磁波シールド膜製造用として好ましい感光材料の提供が可能である。また、本発明の感光材料を用いることにより、導電性膜および/または透光性電磁波シールド膜を好ましく製造できる。
【0309】
〔実施例5〕
実施例2の塗布試料2−1に対して、導電層の塗布を行わないことにより、帯電防止層を設けなかったことかったことのみ異なる試料を作成し、塗布試料5−1を得た。
得られた塗布試料5−1および塗布試料2−1を実施例を実施例2と同様の露光、現像処理、活性化およびメッキ処理を施した。ただし、圧力耐性の評価に際し、キクロンたわしではなく試料の表面と裏面とを重ね合わせて摩擦させ、非露光部に形成される金属の発生頻度を評価した。実施例1と同様光学顕微鏡を用いて観察したところ、試料2−1の圧力耐性はレベル5、試料5−1の圧力耐性はレベル3であった。試料5−1は帯電防止層を設置しないことにより、試料表面にほこり等の異物が観察され、圧力耐性が悪化したと推定された。帯電防止層の設置によって本発明がより有効となることが示された。
【0310】
〔実施例6〕
実施例2の塗布試料2−1を用いて作製した電磁波シールド膜を、2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(以下PET)フィルム(厚さ:100μm)上に作成した。次いで、銅黒化処理液で処理して銅表面を黒化した。使用した黒化処理液は市販のコパーブラック(株式会社アイソレート化学研究所製)を用いた。PET面側に、総厚みが28μmの保護フィルム(パナック工業(株)製、品番;HT−25)をラミネーターローラーを用いて貼り合わせを行った。
また、電磁波シールド膜(金属メッシュ)側に、ポリエチレンフィルムにアクリル系粘着剤層が積層された総厚みが65μmの保護フィルム((株)サンエー化研製、品名;サニテクトY-26F)をラミネーターローラーを用いて貼り合わせを行った。
【0311】
次いで、PET面を貼り合わせ面にして厚さ2.5mm、外形寸法950mm×550mmのガラス板に透明なアクリル系粘着材を介して貼り合わせた。
【0312】
次に、外縁部20mmを除いた内側の該導電性メッシュ層上に、厚さ25μmのアクリル系透光性粘着材を介して、厚さ100μmPETフィルム、反射防止層、近赤外線吸収剤含有層からなる反射防止機能付近赤外線吸収フィルム(住友大阪セメント(株)製 商品名クリアラスAR/NIR)を貼り合わせた。該アクリル系透光性粘着材層中にはディスプレイ用フィルタの透過特性を調整する調色色素(三井化学製 PS−Red−G、PS−Violet−RC)を含有させた。さらに、該ガラス板の反対の主面には、粘着材を介して反射防止フィルム(日本油脂(株)製 商品名リアルック8201)を貼り合わせ、ディスプレイ用フィルタを作製した。
【0313】
得られたディスプレイ用フィルタは、保護フィルムを有した電磁波シールドフィルムを用いて作成されたため、傷や金属メッシュの欠陥な極めて少ないものであった。また金属メッシュが黒色であってディスプレイ画像が金属色を帯びることがなく、また、実用上問題ない電磁波遮蔽能及び近赤外線カット能(300〜800nmの透過率が15%以下)を有し、両面に有する反射防止層により視認性に優れていた。また、色素を含有させることによって、調色機能を付与できており、プラズマディスプレイ等のディスプレイ用フィルタとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記乳剤層に酸化防止剤を含有することを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
【請求項2】
支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記乳剤層に酸化剤を含有することを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
【請求項3】
支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記銀塩乳剤が実質的に未化学増感乳剤であることを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
【請求項4】
支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記銀塩乳剤が沃化銀含有率1.5mol%以下であるハロゲン化銀乳剤であることを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
【請求項5】
支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記銀塩乳剤の塗設量が銀量換算で4g/m以下であることを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
【請求項6】
前記乳剤層におけるAg/バインダーの重量比率が1.5以上であることを特徴とする請求項5に記載の導電性膜形成用感光材料。
【請求項7】
前記乳剤層の下層にバインダー層を有することを特徴とする請求項5又は6に記載の導電性膜形成用感光材料。
【請求項8】
支持体上に銀塩乳剤を含む乳剤層を有し、前記乳剤層を露光して現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことにより導電性膜を製造可能な導電性膜形成用感光材料であって、
前記乳剤層が実質的に最上層に配置され、前記乳剤層にマット剤、すべり剤、コロイダルシリカ、帯電防止剤の少なくともいずれか1種を含有することを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの組み合わせからなることを特徴とする導電性膜形成用感光材料。
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載の導電性膜形成用感光材料を、露光後現像処理を施し、さらに物理現像および/またはメッキ処理を施すことを特徴とする導電性膜の製造方法。
【請求項11】
導電性膜が電磁波シールド性を有することを特徴とする請求項10に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項12】
前記導電性膜形成用感光材料を部分的に露光することによって導電性金属部を部分的に形成することにより、露光パターンに応じた導電性金属パターンを形成することを特徴とする請求項10又は11に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項13】
前記露光部のみに導電性金属部を形成することを特徴とする請求項12に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項14】
前記導電性金属部以外の部分が光透過性であることを特徴とする請求項13に記載の導電性膜の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の製造方法によって製造されることを特徴とする透光性電磁波シールド膜。
【請求項16】
請求項15に記載の透光性電磁波シールド膜を有することを特徴とするプラズマディスプレイパネル用透光性電磁波シールド膜。
【請求項17】
接着剤層を有する請求項15又は16に記載の透光性電磁波シールド膜。
【請求項18】
剥離可能な保護フィルムを有する請求項15〜17のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
【請求項19】
導電性パターン表面の表面積で20%以上が黒色であることを特徴とする請求項15〜18のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
【請求項20】
赤外線遮蔽性、ハードコート性、反射防止性、妨眩性、静電気防止性、防汚性、紫外線カット性、ガスバリア性、表示パネル破損防止性、からいずれか1つ以上選ばれる機能を有している機能性透明層を有する、請求項15〜19のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
【請求項21】
赤外線遮蔽性を有する請求項15〜20のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜。
【請求項22】
請求項15〜21のいずれかに記載の透光性電磁波シールド膜を備えた光学フィルター。

【公開番号】特開2006−228469(P2006−228469A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−38188(P2005−38188)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】