説明

導電性複合フィルム及びその製造方法

【課題】アルキレンカーボネートなどの極性溶媒に対しても安定で耐溶剤性が高く、かつ前記極性溶媒の透過性も低い導電性複合フィルムを提供する。
【解決手段】結晶性樹脂及び第1のカーボン系導電性フィラーを含む結晶性樹脂組成物で形成された第1の導電層と、光硬化性樹脂及び第2のカーボン系導電性フィラーを含む光硬化性組成物の硬化物で形成された第2の導電層とを積層して導電性複合フィルムを調製する。第1及び第2のカーボン系導電性フィラーは、導電性カーボンブラックであってもよい。前記結晶性樹脂はポリプロピレン系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂であってもよい。前記光硬化性樹脂は、3官能以上の多官能ビニル系化合物と、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物とを含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気二重層コンデンサー、リチウムイオン電池、電子部品、半導体素子などに利用される導電性複合フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品や半導体素子など、導電性が必要とされる各種分野において、成形性や可撓性に優れるため、樹脂で形成された導電性フィルムが使用されている。特に、近年、電子部品の小型化や薄肉化などに伴って、使用される導電性フィルムにも薄肉のフィルムが要求されている。
【0003】
特許第4349793号公報(特許文献1)には、導電性を有する基材層の少なくとも片面の最外層に、厚み方向への体積抵抗値が0.1〜1.0Ω・cmの低電気抵抗層を設けてなる導電性樹脂積層フィルムであって、前記低電気抵抗層の厚み方向への体積抵抗値が、前記基材層の厚み方向への体積抵抗値の1/5以下であることを特徴とする導電性樹脂積層フィルムが開示されている。この積層フィルムでは、カーボンブラックなどの導電剤を含むエラストマー組成物を押出成形で形成した基材に、微細な炭素繊維を含むエラストマー組成物のコーティング膜で形成された低電気抵抗層が積層されている。
【0004】
特開2008−207404号公報(特許文献2)には、熱可塑性樹脂に導電剤を混合してなる導電性樹脂層と、金属との接着性を有する熱可塑性樹脂に導電剤を混合してなる導電性接着樹脂層とを少なくとも有することを特徴とする導電性フィルムが開示されている。この導電性フィルムでは、カーボンブラックなどの導電剤を含むエラストマー組成物を押出成形で形成した導電性樹脂層に、カーボンなのファイバーやカーボン繊維を含む酸変性エラストマー組成物のコーティング膜で形成された導電性接着樹脂層が積層されている。
【0005】
しかし、これらの特許文献のように、導電性フィルムを薄肉化するためには、樹脂成分として軟質なエラストマーなどを使用する必要があるが、エラストマーなどの軟質樹脂や非晶性樹脂は耐溶剤性が低い。特に、リチウムイオン二次電池では、特開2006−32143号公報(特許文献3)に開示されているように、電解質液としてエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートなどの高分子に対して溶解性の高い極性溶媒を用いるため、高い耐溶剤性が要求される。さらに、特許文献1及び2では、基材が押出成形で形成されているため、薄肉化するためには、導電性フィラーの含有量が少量に限定されるとともに、導電性を向上できない。すなわち、導電性フィラーを含む高分子で形成された集電体では、薄肉化するために導電性フィラーの割合を低下させる必要があり、導電性を維持しながら、薄肉化することは困難であった。
【0006】
特開2010−170833号公報(特許文献4)には、樹脂と導電材とを有する層を1層以上備えてなる構造であって、前記樹脂として、120℃以上の融点を有する結晶性樹脂を用いる双極型二次電池用集電体が開示されている。この文献には、集電体の厚さ方向(膜厚方向)の体積抵抗率が10Ω以下、好ましくは10〜10−5Ωの範囲が好ましいと記載されている。さらに、実施例では、ポリプロピレンなどの結晶性樹脂に10重量%濃度のケッチェンブラックを添加してペレットを調製した後、このペレットを圧延機で混練・圧延して厚み50μmの集電シートを製造している。得られた集電シートの厚み方向の電気抵抗は10〜100Ω(1cm厚み当たりの体積固有抵抗率に換算すると、2000〜20000Ω・cm)であり、耐薬品、酸素バリア性、耐熱プレス性が良好であり、リチウムイオン電池など二次電池の集電体として有用であることが記載されている。
【0007】
しかし、このような集電体であっても、混練・圧延処理で薄肉フィルムを製造しているため、導電性フィラーの含有量が少量に限定されるとともに、導電性が低く、耐溶剤性も十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4349793号公報(請求項1、実施例)
【特許文献2】特開2008−207404号公報(請求項1、実施例)
【特許文献3】特開2006−32143号公報(請求項1、段落[0042]〜[0044])
【特許文献4】特開2010−170833号公報(特許請求の範囲、段落[0088]、実施例)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明の目的は、アルキレンカーボネートなどの極性溶媒(非プロトン性極性溶媒など)に対しても安定で耐溶剤性が高く、かつ溶剤透過性も低い導電性複合フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、薄肉であっても、導電性が高い導電性複合フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、高い導電性を有しているにも拘わらず、軽量性に優れた導電性複合フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明の別の目的は、熱伝導性が高く、柔軟性などの機械的特性にも優れた導電性複合フィルム及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、カーボン系導電性フィラーを含む結晶性樹脂組成物で形成された第1の導電層と、第2のカーボン系導電性フィラーを含む光硬化性組成物の硬化物で形成された第2の導電層とを積層することにより、アルキレンカーボネートなどの極性溶媒に対しても安定で耐溶剤性が高く、かつ前記極性溶媒の透過性も低い導電性複合フィルムが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0014】
すなわち、本発明の導電性複合フィルムは、結晶性樹脂及び第1のカーボン系導電性フィラーを含む結晶性樹脂組成物で形成された第1の導電層と、光硬化性樹脂及び第2のカーボン系導電性フィラーを含む光硬化性組成物の硬化物で形成された第2の導電層とが積層されている。第1及び第2のカーボン系導電性フィラーは、導電性カーボンブラックであってもよい。前記結晶性樹脂組成物において、結晶性樹脂とカーボン系導電性フィラーとの割合(重量比)は、前者/後者=90/10〜55/45であってもよい。前記結晶性樹脂はポリプロピレン系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂であってもよい。前記光硬化性樹脂は、3官能以上の多官能ビニル系化合物と、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物と含んでいてもよい。前記2官能ビニル系化合物は、鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記2官能ビニル系化合物は、さらに脂肪族環及び/又は芳香族環を有する環含有2官能(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。前記多官能ビニル系化合物は、3〜6官能(メタ)アクリレートであってもよい。前記光硬化性組成物は、電子線硬化性組成物であり、かつ重合開始剤を実質的に含有しなくてもよい。本発明の導電性複合フィルムにおいて、第1の導電層の厚みは1〜200μmであり、第2の導電層の厚みは1〜100μmであり、かつ第1の導電層と第2の導電層との厚み比が、第1の導電層/第2の導電層=1/1〜20/1であってもよい。第1の導電層の体積固有抵抗率は0.1〜1500Ω・cmであり、かつ第2の導電層の体積固有抵抗率は1〜1000Ω・cmであってもよい。本発明の導電性複合フィルムにおいて、25℃でテトラヒドロフラン中に24時間浸漬後の第1の導電層の重量変化率(重量増加率)が10重量%以下であってもよい。昇温速度5℃/分及び周波数10Hzの条件で−50℃から250℃まで測定した動的粘弾性試験において、第2の導電層のゴム状領域における貯蔵弾性率E′が200〜2000MPaであってもよい。
【0015】
本発明には、結晶性樹脂組成物を押出成形した後、得られたシートを加熱しながら延伸又は圧延処理する第1の導電層の成形工程、及び得られた第1の導電層の上に光硬化性組成物を塗布した後、光照射して硬化物を形成する第2の導電層の成形工程を含む前記導電性複合フィルムの製造方法も含まれる。第1の導電層の成形工程において、結晶性樹脂組成物を押出成形して厚み120〜500μmのシートを成形する押出成形した後、結晶性樹脂の融点をmpとしたとき、(mp−40)℃〜(mp−5)℃の温度で、得られたシートを加熱しながら延伸又は圧延処理してもよい。第2の導電層の成形工程において、光硬化性組成物に電子線を照射して硬化物を形成してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、カーボン系導電性フィラーを含む結晶性樹脂組成物で形成された第1の導電層と、第2のカーボン系導電性フィラーを含む光硬化性組成物の硬化物で形成された第2の導電層とが積層されているため、アルキレンカーボネートなどの極性溶媒に対しても安定で耐溶剤性が高く、かつ前記極性溶媒の透過性も低い。また、カーボン系の導電性フィラーが高密度で充填されているため、薄肉であっても、導電性が高い上に、高い導電性を有しているにも拘わらず、軽量性に優れている。さらに、熱伝導性が高く、柔軟性などの機械的特性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[導電性複合フィルム]
本発明の導電性複合フィルムは、第1のカーボン系導電性フィラーを含む結晶性樹脂組成物で形成された第1の導電層と、第2のカーボン系導電性フィラーを含む光硬化性組成物の硬化物で形成された第2の導電層とが積層されている。
【0018】
(第1の導電層)
第1の導電層は、結晶性樹脂と第1のカーボン系導電性フィラーとを含む結晶性樹脂組成物で形成されている。
【0019】
(A)結晶性樹脂
結晶性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂(高密度ポリエチレンなどのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)、スチレン系樹脂(シンジオタクチックポリスチレンなど)、ポリアセタール系樹脂(ポリオキシメチレンなど)、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリアルキレンアリレート、液晶ポリエステルなど)、ポリアミド系樹脂(脂肪族ポリアミドなど)、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレンなど)などが挙げられる。これらの結晶性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0020】
これらの結晶性樹脂のうち、耐熱性や機械的特性などに優れる点から、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド系樹脂、ポリエーテルエーテルケトンなどが好ましく、耐薬品性や成形性、軽量性などに優れる点から、ポリプロピレン系樹脂、ポリアミド系樹脂が特に好ましい。
【0021】
(A1)ポリプロピレン系樹脂
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)の他、プロピレンコポリマー(プロピレン系共重合体)であってもよい。コポリマーとしては、プロピレンとα−オレフィン類[例えば、エチレン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチルペンテン、4−メチルペンテン、4−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセンなどのプロピレン以外のα−C2−16オレフィン(特にエチレンやブテンなどのα−C2−6オレフィン)など]との共重合体、例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム三元共重合体などが挙げられる。本発明では、耐溶剤性や耐熱性などの点から、マレイン酸や(メタ)アクリル酸などの極性基を有する共重合性単位及び/又はスチレンなどの芳香族ビニル単位を実質的に含有しないのが好ましい。共重合体の形態としては、ブロック共重合、ランダム共重合、グラフト共重合などが挙げられる。
【0022】
共重合体において、プロピレンとα−オレフィン(特にエチレン)との割合(モル比)は、プロピレン/α−オレフィン=90/10〜100/0、好ましくは95/5〜100/0、さらに好ましくは99/1〜100/0程度である。α−オレフィンの割合が少なすぎると、結晶性が低下し、耐溶剤性や耐熱性が低下する。本発明では、ホモポリマーが好ましい。
【0023】
ポリプロピレン系樹脂は、アタクチック重合体であってもよいが、結晶性を向上できる点から、アイソタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有する構造が好ましく、アイソタクチック重合体が特に好ましい。
【0024】
さらに、ポリプロピレン系樹脂は、チーグラー触媒などを用いた重合体であってもよいが、低分子量のタック成分が少なくかつ分子量分布の狭い重合体が得られる点から、メタロセン触媒を用いたメタロセン系樹脂(特にメタロセン系共重合体)を少なくとも含むのが好ましい。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂の比重は1.00以下(特に0.95以下)であり、例えば、0.80〜0.95、好ましくは0.85〜0.95、さらに好ましくは0.87〜0.93(特に0.89〜0.91)程度である。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂の融点(示差走査熱量計DSCでの融解ピーク温度)は、例えば、100〜170℃程度の範囲から選択できるが、耐熱性の点から、例えば、110〜170℃、好ましくは120〜168℃、さらに好ましくは130〜166℃(特に160〜166℃)程度である。なお、本明細書では、ポリプロピレン系樹脂の融点は、導電性フィラーと溶融混合して調製されたペレットの状態で測定される。
【0027】
(A2)ポリアミド系樹脂
ポリアミド系樹脂としては、例えば、ジアミンとジカルボン酸とを重縮合して得られるポリアミド、アミノカルボン酸を重縮合して得られるポリアミド、ラクタムを開環重合して得られるポリアミド、これらのモノマーを組み合わせて重合して得られるポリアミドなどが挙げられる。
【0028】
ジアミンとしては、例えば、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン;ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンなどの脂環族ジアミンが挙げられる。また、フェニレンジアミン、メタキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンを併用してもよい。これらのジアミンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0029】
ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、オクタデカン二酸などのC4−20脂肪族ジカルボン酸;二量体化脂肪酸(ダイマー酸);シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸やシクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸やテレフタル酸、ナフタレンカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。これらのジカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0030】
アミノカルボン酸としては、例えば、アミノヘプタン酸、アミノノナン酸、アミノウンデカン酸などのC4−20アミノカルボン酸が例示される。アミノカルボン酸も一種で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのアミノカルボン酸は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0031】
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ビバロラクタム、カプロラクタム、カプリルラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、ドデカラクタムなどのC4−20ラクタムが挙げられる。これらのラクタムは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0032】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミド、芳香族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸および/又はイソフタル酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン、ノナメチレンジアミンなど)とから得られるポリアミド、芳香族及び脂肪族ジカルボン酸(例えば、テレフタル酸とアジピン酸)と脂肪族ジアミン(例えば、ヘキサメチレンジアミン)とから得られるポリアミドなどが挙げられる。これらのポリアミド系樹脂は、ホモポリアミドに限らずコポリアミドであってもよい。これらのポリアミド系樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0033】
これらのポリアミド系樹脂のうち、結晶性が高く、耐熱性に優れる点から、ポリアミド46、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12などの脂肪族ポリアミドが好ましい。これらの脂肪族ポリアミドは、用途に応じて選択でき、耐熱性やガスバリア性が重要な用途など、結晶性を向上させる場合には、C2−12アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド(特に、ポリアミド46やポリアミド66などのC3−8アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド)が好ましい。また、成形性や耐溶剤性が重要な用途では、C8−16アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド(特に、ポリアミド11やポリアミド12などのC10−14アルキレン鎖を有する脂肪族ポリアミド)が好ましい。
【0034】
ポリアミド系樹脂の比重は1.05以下であり、例えば、0.80〜1.04、さらに好ましくは0.85〜1.02程度である。
【0035】
ポリアミド系樹脂の融点(示差走査熱量計DSCでの融解ピーク温度)は、例えば、100〜250℃程度の範囲から選択できるが、耐熱性の点から、例えば、140〜220℃、好ましくは150〜200℃、さらに好ましくは160〜190℃(特に170〜180℃)程度である。なお、本明細書では、ポリアミド系樹脂の融点は、導電性フィラーと溶融混合して調製されたペレットの状態で測定される。
【0036】
これらの結晶性樹脂のうち、前記特性に加えて、耐薬品性、ガスバリア性、靱性、経済性にも優れる点から、ポリプロピレン系樹脂が特に好ましい。特に、ポリプロピレン系樹脂を用いると軽量化の効果が著しい。さらに、水分透過性もしくは吸水性が低いことが求められる用途においても、ポリプロピレン系樹脂がより好ましく用いられる。
【0037】
(B)第1のカーボン系導電性フィラー
第1のカーボン系導電性フィラーとしては、例えば、人造黒鉛、膨張黒鉛、天然黒鉛、コークス、カーボンナノチューブ、導電性カーボンブラック、炭素繊維などが挙げられる。本発明では、導電性フィラーとして、カーボン系導電性フィラーを用いるため、金属フィラーに比べて軽量性に優れ、多量のフィラーを前記結晶性樹脂に配合しても、軽量性が大きく損なわれない。これらの導電性フィラーは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0038】
カーボン系導電性フィラー、とりわけナノレベルの粒子状フィラーの真比重を求めることは難しいものの、カーボン系導電性フィラーの比重としては2.5以下であり、例えば、0.30〜2.5、好ましくは0.45〜2.0、さらに好ましくは1.0〜2.0(特に1.4〜1.9)程度である。
【0039】
これらのカーボン系導電性フィラーの形状は、例えば、粒子状(粉末状)、板状(又は鱗片状)、繊維状、不定形状などが挙げられる。これらの形状のうち、略球状や多角体状などの粒子状が汎用される。
【0040】
本発明では、これらのカーボン系導電性フィラーのうち、導電性や軽量性などの点から、導電性カーボンブラックが好ましい。
【0041】
導電性カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ガスブラック、アセチレンブラック、アークブラック、ケッチェンブラックなどが例示できる。これらの導電性カーボンブラックは、用途に応じて選択でき、例えば、油分の少ないアセチレンブラックを用いて難燃性を向上してもよく、中空シェル構造のケッチェンブラックを用いて軽量性を向上してもよい。これらの導電性カーボンブラックのうち、導電性などの点から、ファーネスブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラックなどが好ましい。さらに、これらの導電性カーボンブラックを組合せた導電性複合カーボンブラックでもよい。
【0042】
導電性カーボンブラックの市販品としては、ケッチェンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製「EC600JD」)、ケッチェンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製「EC300J」)、ケッチェンブラック(ケッチェン・ブラック・インターナショナル(株)製「MBP1853」)、アセチレンブラック(電気化学工業(株)製「デンカブラックHS−100」)、ファーネスカーボンブラック(東海カーボン(株)製「トーカブラック#5500」、「トーカブラック#4300」)や三菱化学(株)製「#3030B」、「#3400B」)など、粒子径や凝集性など各種特性が異なる導電性カーボンブラックが挙げられる。
【0043】
第1のカーボン系導電性フィラー(例えば、導電性カーボンブラック)の平均一次粒径(透過型電子顕微鏡観察で得られる算出平均粒径)は、10μm以下程度の範囲から適宜選択できるが、薄肉の層中で分散させる点から、1μm以下が好ましく、さらに第1の導電層の平滑性、ピンホールや裂けを抑制できる点などから、例えば、1〜1000nm、好ましくは5〜100nm、さらに好ましくは10〜60nm(特に10〜50nm)程度である。
【0044】
第1の導電層において、第1のカーボン系導電性フィラー(例えば、導電性カーボンブラック)は、このような一次粒径を有しているが、層中の一次粒子は、凝集体(アグリゲート)をさらに形成していると推定できる。このアグリゲート構造は、薄肉の層中においても維持され、粒子間の接触点が多いネットワーク構造を形成し、フィルムの導電性を向上させていると推定できる。
【0045】
第1のカーボン系導電性フィラー(例えば、導電性カーボンブラック)のDBP(ジブチルフタレート)吸油量(JIS K6221のA法)は、用途に応じて、10〜1000cm/100g(例えば、30〜500cm/100g)程度の範囲から選択でき、窒素吸着BET比表面積は20m/g以上、好ましくは30m/g以上(例えば、30〜2000m/g)、さらに好ましくは100m/g以上(例えば、100〜1500m/g)程度の範囲から選択できる。
【0046】
結晶性樹脂と第1のカーボン系導電性フィラーとの割合(重量比)が、前者/後者=90/10〜55/45であり、好ましくは85/15〜55/45、さらに好ましくは85/15〜60/40(特に80/20〜60/40)程度である。導電性フィラーの含有量が少なすぎると、薄肉の第1の導電層の体積固有抵抗値が高くなり、逆に多すぎると、シート成形性やシート物性が低下する傾向がある。
【0047】
なお、中空構造やチューブ構造などの内部空隙又は空洞を有する特殊なフィラー(ケッチェンブラックなど)では、見掛け密度が小さいため、樹脂組成物に対する添加重量に対し、体積が大きくアグリゲート構造を形成し易い一方、混錬や溶融押出特性におけるフィラーの影響がより大きくなる。従って、少量の添加量でも組成物の真比重が低く、導電性が高いフィルムを得ることができるものの、組成物の加工性から添加重量の上限は、他の見かけ密度の大きなカーボン系フィラーに比べて低い傾向となる。また、内部空隙又は空洞を実質的に有さないフィラー、例えば、アセチレンブラックなどに比べ、混錬、押出成形、延伸、圧延などの機械的なせん断力により空隙又は空洞を有する構造が破壊される傾向がある。そのため、内部に空隙を有するフィラーを使用する場合は、各工程での条件に注意する必要がある。
【0048】
結晶性樹脂と第1のカーボン系導電性フィラーとの割合は、カーボン系導電性フィラーの比重に応じて調整してもよく、ナノレベルの粒状カーボンブラックの真比重を求めることは難しいものの、例えば、比重が2.0〜1.7(特に1.9〜1.8)のフィラー(例えば、アセチレンブラック)の場合、結晶性樹脂/第1のカーボン系導電性フィラー=80/20〜55/45、好ましくは75/25〜55/45、さらに好ましくは70/30〜60/40程度であってもよい。また、比重が0.3〜1.6(特に0.4〜1.5)のフィラー(例えば、アセチレンブラック)の場合、結晶性樹脂/第1のカーボン系導電性フィラー=90/10〜70/30、好ましくは90/10〜80/20、さらに好ましくは90/10〜85/15程度であってもよい。
【0049】
(C)他の添加剤
第1の導電層は、さらに慣用の添加剤、例えば、他の高分子(非晶性樹脂、非晶性エラストマー、結晶性エラストマー、ゴムなど)、可塑剤、他の導電性フィラー、導電性ポリマー、安定化剤(熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、分散剤、帯電防止剤、着色剤、潤滑剤、結晶核剤、難燃剤、難燃助剤、充填剤、耐衝撃改良剤、補強剤、発泡剤、抗菌剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤の割合は、結晶性樹脂及び第1のカーボン系導電性フィラーの合計100重量部に対して、例えば、10重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部(特に0.1〜2重量部)程度である。
【0050】
第1の導電層は、前記割合であれば、エラストマーやゴムなどの軟質成分を含有していてもよいが、エラストマーやゴムなどの軟質成分(特に非晶性エラストマーなどのエラストマー)を実質的に含有していなくてもよい。本発明では、軟質成分を含有することなく、樹脂成分として実質的に結晶性樹脂で形成されているにも拘わらず、薄肉で導電性の高い第1の導電層を調製できる。
【0051】
(第1の導電層の特性)
第1の導電層は、厚み200μm以下の薄肉の層である。詳しくは、第1の導電層の厚みは、5〜150μm(例えば、5〜120μm)程度の範囲から選択でき、好ましくは10〜110μm、さらに好ましくは15〜100μm(特に20〜100μm)程度であり、薄肉が要求される用途では、例えば、25〜50μm(特に30〜45μm)程度であってもよい。
【0052】
第1の導電層は、厚みの均一性も高く、厚み変動比(最大厚み/最小厚み)が、例えば、1.5以下(例えば、1〜1.5)、好ましくは1.01〜1.4、さらに好ましくは1.03〜1.3(特に1.05〜1.25)程度であり、例えば、1.1〜1.2程度であってもよい。第1の導電層は、均一な厚みを有するため、例えば、複数のフィルムを積層しても大きな空隙が生じることなく、密着性が高い上に、導電性の均一性及び安定性も高い。厚み変動比の測定方法は、後述する実施例に記載の方法で測定できる。
【0053】
第1の導電層は、薄肉でありながら、高い導電性を有する。すなわち、第1の導電層の体積固有抵抗率は0.1〜1500Ω・cmであり、好ましくは1〜1000Ω・cm、さらに好ましくは2〜500Ω・cm(特に3〜100Ω・cm)程度であり、例えば、1〜50Ω・cm(特に2〜10Ω・cm)程度であってもよい。また、第1の導電層の体積抵抗値は、例えば、0.001〜5Ω、好ましくは0.01〜3Ω、さらに好ましくは0.1〜1Ω程度である。
【0054】
第1の導電層は、耐溶剤性にも優れており、25℃でテトラヒドロフラン中に24時間浸漬後の重量変化率(重量増加率)が10重量%以下であり、例えば、0.05〜8重量%、好ましくは0.5〜5.0重量%、さらに好ましくは0.5〜4.0重量%程度であり、高い耐溶剤性を要求される用途などでは、例えば、0.5〜3.0重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%、さらに好ましくは0.5〜1.5重量%(特に0.5〜1.0重量%)程度であってもよい。
【0055】
第1の導電層の比重は、例えば、0.75〜1.20、好ましくは0.80〜1.18、さらに好ましくは0.85〜1.15(特に0.90〜1.15)程度である。結晶性樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合、第1の導電層の比重は、例えば、0.95〜1.2、好ましくは0.96〜1.18、さらに好ましくは0.97〜1.15(特に1.0〜1.1)程度であってもよい。
【0056】
(第2の導電層)
第2の導電層は、光硬化性樹脂及び第2のカーボン系導電性フィラーを含む光硬化性組成物の硬化物で形成されている。
【0057】
(A)光硬化性樹脂
光硬化性樹脂は、3官能以上の多官能ビニル系化合物と、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物とを含む。
【0058】
(a)多官能ビニル系化合物
多官能ビニル系化合物としては、分子内に3以上(例えば、3〜8程度)の重合性基(α,β−エチレン不飽和結合)を有していればよく、具体的には、3以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートが汎用される。
【0059】
多官能(メタ)アクリレートとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、例えば、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート;ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに、これらの多官能(メタ)アクリレートにおいて、多価アルコールは、アルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのC2−4アルキレンオキシド)の付加体であってもよい。アルキレンオキシドの平均付加モル数は、例えば、0〜30モル(特に1〜10モル)程度の範囲から選択できる。これらの多官能(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0060】
これらの多官能ビニル系化合物のうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの3〜6官能(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどの3〜4官能(メタ)アクリレートが汎用される。さらに、多官能ビニル系化合物は、アミンで変性されていない未変性多官能ビニル化合物(マイケル付加などによりアミン類が付加していない多官能ビニル化合物)が好ましい。
【0061】
(b)単官能及び/又は2官能ビニル系化合物
単官能及び/又は2官能ビニル系化合物としては、分子内に1又は2つの重合性基(α,β−エチレン不飽和結合)を有していればよく、具体的には、スチレンやジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル化合物などであってもよいが、光重合性などの点から、1又は2つの(メタ)アクリロイル基を有する単官能又は2官能(メタ)アクリレートが汎用される。
【0062】
(b1)単官能ビニル系化合物
単官能ビニル系化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどのC1−24アルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレートなどの橋架け環式(メタ)アクリレート;フェニル(メタ)アクリレート、ノニルフェニル(メタ)アクリレートなどのアリール(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシC2−10アルキル(メタ)アクリレート又はC2−10アルカンジオールモノ(メタ)アクリレート;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレートなどのフルオロC1−10アルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレートなどのアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどのアリールオキシアルキル(メタ)アクリレート;フェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェニルカルビトール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアリールオキシ(ポリ)アルコキシアルキル(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールモノ(メタ)アクリレート;2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基又は置換アミノ基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0063】
(b2)2官能ビニル系化合物
2官能ビニル系化合物としては、例えば、アリル(メタ)アクリレート;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのアルカンジオールジ(メタ)アクリレート;グリセリンジ(メタ)アクリレートなどのアルカンポリオールジ(メタ)アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールSなど)のC2−4アルキレンオキサイド付加体のジ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトール脂肪酸エステルなどのアルカンポリオール部分エステルのジ(メタ)アクリレート;トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの橋架け環式ジ(メタ)アクリレートなどが例示できる。
【0064】
さらに、2官能ビニル系化合物としては、例えば、エポキシジ(メタ)アクリレート(ビスフェノールA型エポキシジ(メタ)アクリレートなど)、ポリエステルジ(メタ)アクリレート(例えば、脂肪族ポリエステル型ジ(メタ)アクリレート、芳香族ポリエステル型ジ(メタ)アクリレートなど)、(ポリ)ウレタンジ(メタ)アクリレート(ポリエステル型ウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエーテル型ウレタンジ(メタ)アクリレートなど)、シリコーン(メタ)アクリレートなどのオリゴマー又は樹脂も例示できる。
【0065】
これらのビニル系化合物は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのビニル系化合物のうち、反応性や耐溶剤性などの点から、2官能(メタ)アクリレートが好ましく、硬化物の柔軟性を向上できる点から、鎖状脂肪族骨格を有する鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートを含む2官能(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0066】
(b2−1)鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレート
鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートとしては、アルキレン鎖を有していればよく、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどのC2−12アルカンジオールジ(メタ)アクリレート;アルカンポリオール脂肪酸エステルのジ(メタ)アクリレート;脂肪族ポリエステル型ジ(メタ)アクリレート;脂肪族ポリエステル型ウレタンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、脂肪族環及び/又は芳香族環を有する(メタ)アクリレートに鎖状脂肪族骨格が導入されていてもよい。さらに、鎖状脂肪族骨格を構成するアルキレン鎖の炭素数は、例えば、3〜20程度の範囲から選択できるが、柔軟性と耐溶剤性とのバランスの点から、例えば、4〜12、好ましくは4〜10、さらに好ましくは4〜8(特に5〜8)程度が好ましい。これらの鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0067】
さらに、鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートは、ラクトン由来の単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位を含むのが特に好ましい。
【0068】
ラクトンとしては、例えば、γ−ブチロラクトン(GBL)、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、β−メチル−δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、エナントラクトン(7−ヒドロキシヘプタン酸ラクトン)などのC3−10ラクトンなどが挙げられる。これらのラクトンは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのラクトンのうち、バレロラクトンやカプロラクトンなどのC4−8ラクトン(特にC5−8ラクトン)が好ましい。
【0069】
脂肪族ポリエステルとしては、例えば、脂肪族ジカルボン酸又はその無水物(コハク酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などのC4−20アルカンジカルボン酸)と、脂肪族ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレンエーテルグリコールなどのC2−10アルカンジオールなど)との反応生成物、開始剤に対して前記ラクトンを開環付加重合させた反応生成物などが挙げられる。ポリエステル単位の重合度は、例えば、2〜100程度の範囲から適宜選択でき、例えば、3〜90、好ましくは5〜80、さらに好ましくは10〜70程度であってもよい。
【0070】
ラクトン由来の単位及び/又は脂肪族ポリエステル単位を含む鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、カプロラクトンなどのC5−8ラクトンが開環重合したポリエステル単位を有する脂肪族ポリエステル型ジ(メタ)アクリレート、前記ポリエステル単位を有するウレタンジ(メタ)アクリレート、前記ポリエステル単位を有するエポキシジ(メタ)アクリレートなどが利用できる。
【0071】
さらに、ポリエステル型ウレタンジ(メタ)アクリレートのポリイソシアネート単位としては、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネートのいずれでもよく、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートなどが汎用される。前記ポリエステル単位を有するエポキシジ(メタ)アクリレートは、ビスフェノールAなどのビスフェノール型エポキシ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0072】
(b2−2)環含有2官能(メタ)アクリレート
単官能及び/又は2官能ビニル系化合物は、耐溶剤性を向上させる点から、前記鎖状脂肪族骨格を有するビニル系化合物に加えて、さらに脂肪族環及び/又は芳香族環を有する環含有(メタ)アクリレートを含んでいてもよい。
【0073】
環含有2官能(メタ)アクリレートとしては、分子内に脂肪族環及び/又は芳香族環を有していればよく、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどのC6−20(特にC8−12)橋架け2〜4環式ジ(メタ)アクリレート;2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンなどのビスフェノール類(ビスフェノールA、Sなど)−C2−4アルキレンオキシド付加体[アルキレンオキシドの平均付加モル数0〜30モル(特に1〜10モル)程度]のジ(メタ)アクリレート;オリゴマー[ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート、ノボラック型エポキシ(メタ)アクリレートなどの芳香族エポキシ(メタ)アクリレートなど]などが挙げられる。これらの2官能(メタ)アクリレートは、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0074】
これらの環含有2官能(メタ)アクリレートのうち、硬化物の耐溶剤性及び強度が高い点から、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジ(メタ)アクリレートなどの多環式脂環族骨格を有するジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレートなどのビスフェノール骨格を有するジ(メタ)アクリレートが好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートなどのC8−12橋架け2〜4環式脂環族骨格を有するジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0075】
環含有2官能(メタ)アクリレートの割合は、目的の粘弾性に応じて、鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレート100重量部に対して0〜500重量部程度の範囲から適宜選択でき、例えば、5〜200重量部、好ましくは10〜100重量部(例えば、20〜80重量部)、さらに好ましくは30〜60重量部(特に40〜50重量部)程度である。本発明では、このような割合で鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートと環含有2官能(メタ)アクリレートとを組み合わせることにより、耐溶剤性を維持しながら、柔軟性を向上できる。
【0076】
単官能及び/又は2官能ビニル系化合物の割合は、前記多官能ビニル系化合物100重量部に対して1〜1000重量部程度の範囲から選択でき、例えば、5〜500重量部、好ましくは10〜300重量部程度である。
【0077】
本発明では、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物の種類に応じて、前記範囲から選択でき、例えば、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物が鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートと環含有2官能(メタ)アクリレートとの組み合わせである場合、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物の割合は、多官能ビニル系化合物100重量部に対して、例えば、30〜500重量部、好ましくは50〜300重量部、さらに好ましくは100〜200重量部(特に120〜150重量部)程度である。
【0078】
また、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物が鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートである場合、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物の割合は、多官能ビニル系化合物100重量部に対して、例えば、1〜100重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部(特に20〜30重量部)程度である。
【0079】
(B)第2のカーボン系導電性フィラー
第2のカーボン系導電性フィラーとしては、第1のカーボン系導電性フィラーの項で例示されたカーボン系導電性フィラーを使用できる。第2のカーボン系フィラーの比重及び形状も第1のカーボン系フィラーと同様であり、第2のカーボン系フィラーとしても、導電性カーボンブラックが好ましい。
【0080】
第2の導電性カーボンブラックとしても、第1のカーボン系導電性フィラーの項で例示された導電性カーボンブラックを使用できる。第2のカーボンブラックの平均一次粒径、DBP吸油量、比表面積も第1のカーボン系導電性フィラーと同様である。
【0081】
第2のカーボン系導電性フィラーの割合は、光硬化性樹脂(多官能ビニル系化合物と単官能及び/又は2官能ビニル系化合物との総量)100重量部に対して1〜100重量部程度の範囲から選択でき、例えば、3〜80重量部、好ましくは5〜50重量部、さらに好ましくは10〜40重量部(特に15〜35重量部)程度であり、特に、硬化物の柔軟性を確保する点から、45重量部以下(特に5〜40重量部程度)であってもよい。
【0082】
(C)他の添加剤
光硬化性組成物は有機溶媒を含んでいてもよい。有機溶媒としては、例えば、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、ハロゲン化炭素類(ジクロロメタン、ジクロロエタンなど)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチルなど)、水、アルコール類(エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、アミド類(ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)などが挙げられる。これらの有機溶媒は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの有機溶媒のうち、メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエンなどの芳香族炭化水素などが汎用される。なお、塗布性などの特性を改良する目的を兼ねて、スチレンなどの単官能ビニル系化合物や、(メタ)アクリル酸などの前記他のビニル系化合物を反応性希釈剤として使用してもよい。
【0083】
溶媒の割合は、光硬化性樹脂100重量部に対して10〜1000重量部程度の範囲から選択でき、例えば、50〜500重量部、好ましくは80〜300重量部、さらに好ましくは100〜200重量部(特に120〜180重量部)程度である。
【0084】
光硬化性組成物は、さらに慣用の添加剤、例えば、第1の導電層で例示された添加剤を単独で又は二種以上組み合わせて含んでいてもよい。添加剤の割合は、光硬化性樹脂及び第2のカーボン系導電性フィラーの合計100重量部に対して、例えば、10重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.05〜3重量部(特に0.1〜2重量部)程度である。
【0085】
但し、光硬化性組成物は、電子線で硬化する場合、重合開始剤(例えば、光重合開始剤、光増感剤、熱重合開始剤など)を実質的に含有していなくてもよい。さらに、光硬化性組成物は、耐溶剤性の点から、樹脂成分として、熱可塑性樹脂(特に、ポリフェニレンオキシド系樹脂)を実質的に含有しないのが好ましい。
【0086】
(光硬化性組成物の硬化物)
硬化物で形成された第2の導電層は、後述するように前記光硬化性組成物を光照射して硬化することにより得られ、昇温速度5℃/分及び周波数10Hzの条件で−50℃から250℃まで測定した動的粘弾性試験において、ゴム状領域における貯蔵弾性率E′が200〜2000MPaであり、好ましくは300〜1500MPa、さらに好ましくは350〜1200MPa(特に400〜1000MPa)程度である。なお、ゴム状領域とは、貯蔵弾性率−温度曲線が、1010Pa程度のガラス状領域から、温度の上昇と共に大きく低下する転移領域を経た後で、10〜10Pa付近でほぼ平坦になる領域を意味する。
【0087】
第2の導電層(硬化物)は、このような貯蔵弾性率E′を有するため、適度な架橋密度を有し、耐溶剤性に優れ、かつ第2のカーボン系導電性フィラーを含有して導電性にも優れているにも拘わらず、適度な柔軟性を有している。特に、耐溶剤性と柔軟性との関係、さらに導電性フィラーの配合による導電性の向上効果と前記特性の向上効果との関係はいずれもトレードオフの関係にあり、これらの特性をバランス良く充足するのは困難であるが、第2の導電層は、樹脂成分の種類や比率、官能基数、分子量(粘度)、導電性フィラーの種類及び配合量などを調整して、光硬化物の粘弾性を前記範囲に制御することにより、両特性を併せ持つ。
【0088】
第2の導電層は、導電性に優れ、体積固有抵抗率が10Ω・cm以下であってもよく、例えば、10Ω・cm以下(例えば、0.01〜10Ω・cm)、好ましくは10Ω・cm以下(例えば、0.1〜10Ω・cm)、さらに好ましくは10Ω・cm以下(特に10Ω・cm以下)であってもよい。
【0089】
第2の導電層の厚みは、用途に応じて1〜100μm程度の範囲から選択でき、例えば、1〜80μm、好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μm(特に8〜20μm)程度である。
【0090】
(導電性複合フィルムの特性)
第1の導電層と第2の導電層とを積層した導電性複合フィルムは、耐溶剤性に優れ、薄肉であるにも拘わらず、導電性も高い。導電性複合フィルムの体積固有抵抗率は10Ω・cm以下であってもよく、例えば、1〜10000Ω・cm(例えば、2〜1000Ω・cm)、好ましくは3〜500Ω・cm、さらに好ましくは5〜100Ω・cm(特に10〜50Ω・cm)程度であってもよい。
【0091】
導電性複合フィルムは、耐溶剤性が高く、特に極性溶媒に対する透過性が低い。具体的には、後述する実施例に記載の方法に準拠して、第2の導電層同士を対向させて積層した2枚の導電性複合フィルムの間にプロピレンカーボーネートを封入し、14日間経過後の重量変化率(重量増加率)は、例えば、5重量%以下、好ましくは1重量%以下(例えば、0.01〜1重量%)、さらに好ましくは0.5重量%以下(例えば、0.1〜0.5重量%)であってもよい。
【0092】
導電性複合フィルムの厚みは、用途に応じて1〜300μm程度の範囲から選択でき、例えば、1〜250μm(例えば、5〜200μm)程度の範囲から選択でき、好ましくは10〜150μm、さらに好ましくは15〜120μm(特に20〜100μm)程度であり、通常、25〜80μm(例えば、30〜50μm)程度である。
【0093】
第1の導電層と第2の導電層との厚み比は、第1の導電層/第2の導電層=1/10〜100/1程度の範囲から選択えきるが、1/5〜50/1、好ましくは1/3〜30/1、さらに好ましくは1/1〜20/1(特に2/1〜15/1)程度であり、2/1〜10/1(例えば、3/1〜9/1)程度であってもよい。
【0094】
本発明の導電性複合フィルムは、二層構造に限定されず、例えば、第1層の両面に第2層を積層した三層構造、第2層の両面に第1層を積層した三層構造、又は第1層と第2層とを交互に積層した四層以上の多層構造などであってもよい。本発明の導電性複合フィルムは、さらに他の層、例えば、機能層(ハードコート層、他の導電層、帯電防止層、光学層など)を積層してもよい。これらのうち、バイポーラ電池の集電体としては、薄肉性の点から、二層構造が好ましい。
【0095】
本発明の導電性複合フィルムは、柔軟性にも優れ、シート化してロール・ツー・ロール方式での製造が可能であるため、生産性が高く、工業的な価値が高い。
【0096】
[導電性複合フィルムの製造方法]
本発明の導電性複合フィルムの製造方法は、結晶性樹脂組成物を押出成形した後、得られたシートを加熱しながら延伸又は圧延処理する第1の導電層の成形工程、及び得られた第1の導電層の上に光硬化性組成物を塗布した後、光照射して硬化物を形成する第2の導電層の成形工程を含む。
【0097】
(第1の導電層の成形工程)
第1の成形工程に供される結晶性樹脂組成物は、結晶性樹脂と第1のカーボン系導電性フィラーとを予め溶融混練することにより調製したペレットであってもよい。溶融混練の方法としては、慣用の方法、例えば、加圧ニーダー混錬機、バンバリーミキサー、ミキシングロールなどの混合機を用いる方法を利用できる。さらに、溶融混錬後にフィーダールーダーなどを用いてペレット化してもよい。本発明では、ペレット化することにより、シート加工の各工程間の調整などの作業性を向上できる。なお、溶融混錬の方法としては、各成分をヘンシェルミキサーやリボンミキサーで乾式混合し、単軸又は二軸押出機などを用いて溶融混錬とペレット化を同時に行ってもよい。
【0098】
得られたペレット又は乾式混合物は、押出成形機(例えば、単軸又は二軸押出機など)やカレンダー成形機を使用してシート状に製造され、通常、ペレットを押出成形機内で溶融混練し、押出成形機の先端部の口金(ダイ)のスリットから押出すことにより成形される。前記口金(ダイ)は、インフレーション成形に利用されるリングダイであってもよいが、通常、マルチマニホールドダイなどのTダイまたはフラットダイなどが使用できる。さらに、押出成形されたシートは、冷却ロールにより冷却されて、シート巻き取り機に巻き取ることができる。
【0099】
押出成形の条件は、押出成形機や結晶性樹脂の種類などに応じて選択でき、通常、成形温度は100〜280℃、好ましくは150〜260℃、さらに好ましくは180〜250℃程度である。冷却ロールによる冷却温度は、例えば、80〜200℃、好ましくは100〜180℃、さらに好ましくは120〜160℃程度である。また、押出しスリットのギャップ(クリアランス又は隙間)は、0.5〜2.0mm、好ましくは0.6〜1.5mm、さらに好ましくは0.7〜1.0mmである。引き取り速度(巻き取り速度)は、例えば、0.1〜70m/分、好ましくは0.5〜40m/分、さらに好ましくは1.5〜30m/分(特に2〜10m/分)程度である。
【0100】
本発明では、押出成形によって、各樹脂組成物ごとに、120〜500μm、好ましくは130〜400μm、さらに好ましくは130〜300μm(特に130〜250μm)程度の厚みになるように、装置の特性に合わせた巻き取り速度で調整される。
【0101】
本発明では、押出成形により、一旦このような厚みにシートが調整されるが、この状態では、第1のカーボン系導電性フィラーは、シート中において適度に凝集(アグリゲート)してネットワーク構造を形成しているためか、高い導電性を示す。得られたシートの体積固有抵抗率は1000Ω・cm以下であり、好ましくは0.1〜500Ω・cm、さらに好ましくは0.2〜200Ω・cm(特に0.3〜100Ω・cm)程度である。
【0102】
押出成形により得られたロール状シートは、巻き戻されて延伸又は圧延処理される。延伸又は圧延処理はシートを加熱した状態で処理されるが、本発明の方法では、前記押出成形により形成された導電性フィラーのネットワーク構造を延伸又は圧延処理で破壊しないために、延伸又は圧延処理における加熱温度を制御することを特徴とする。延伸又は圧延処理における加熱温度は、結晶性樹脂の融点をmpとしたとき、(mp−40)℃〜(mp−5)℃の温度範囲であり、好ましくは(mp−35)℃〜(mp−5)℃、さらに好ましくは(mp−30)℃〜(mp−10)℃[特に、(mp−30)℃〜(mp−15)℃]程度である。加熱温度が高すぎると、溶融したポリマーの分子鎖が導電性フィラーのネットワーク構造に進入するためか、導電性が低下する。また、ポリマーが軟化又は溶融し、回転ロールに密着したり、裂けて巻き取ることが困難になる傾向がある。一方、加熱温度が低すぎると、樹脂組成物に高い剪断力が負荷され、前記ネットワーク構造が破壊されるためか、導電性が低下する。また、ポリマーの流動性が低いため、シートが十分に薄肉化せず、裂け易くなる。これに対して、本発明の方法では、延伸又は圧延における加熱温度が適度な範囲に制御されているため、例えば、パンタグラフが畳まれるように前記ネットワーク構造が厚み方向に縮小するためか、延伸又は圧延処理後も高い導電性を維持できる。
【0103】
延伸又は圧延処理において、処理後の薄肉フィルムの厚みは、処理前のシートに対して、1/1.2〜1/10倍程度に調整してもよく、例えば、1/1.5〜1/8倍、好ましくは1/2〜1/5倍、さらに好ましくは1/2.5〜1/4.5倍程度に調整してもよい。
【0104】
延伸処理は、一軸延伸であってもよく、二軸延伸であってもよい。また、二軸延伸は、同時二軸延伸であってもよく、逐次二軸延伸であってもよい。延伸倍率は、薄肉フィルムの厚みが前記範囲になるように調整すればよく、例えば、1.1〜10倍程度の範囲から選択でき、好ましくは1.5〜5倍、さらに好ましくは2〜5倍程度である。
【0105】
圧延処理の負荷荷重は100kN以下程度から選択でき、例えば、0.1〜100kN、好ましくは0.5〜50kN、さらに好ましくは1〜30kN(特に2〜10kN)程度である。圧延処理圧が高くなると、肉厚シートに掛かるせん断力が大きくなるためか、薄肉フィルムの体積固有低効率が高くなる傾向があるため、加熱ロールからシートに掛かる荷重は小さいことが好ましい。
【0106】
また、圧延処理において、原反シートの供給速度より巻き取り機の巻き取り速度を早くすることにより、シートの縦方向に延伸処理を加えてもよい。供給速度に対する巻き速度の比率(巻き速度/供給速度)は、例えば、1〜10倍、好ましくは1.5〜8倍、さらに好ましくは2〜5倍(特に3〜4.5倍)程度である。この比率は、処理温度、負荷荷重に応じて、この範囲から選択でき、これらの条件を調整することにより、フィルムの厚みを調整してもよい。なお、圧延処理において、負荷荷重と前記速度比との関係は、フィルム厚みを均一にし、かつ導電性を向上できる点から、荷重を小さくして、前記速度比を大きくするのが好ましい。さらに、フィルム厚みを均一にし、かつ導電性を向上させる点から、荷重を負荷しない延伸処理であってもよい。特に、ケッチェンブラックなどの空洞構造を有する導電性フィラーでは、空洞構造の破壊を抑制できるためか、延伸又は圧延後も高い導電性を保持できる。
【0107】
さらに、延伸又は圧延処理において、加工性を向上させるために、シート表面に滑剤や離型剤を塗布してもよく、複数のロールを組み合わせてもよい。
【0108】
得られた第1の導電層は、薄肉化された層内の残留歪みを開放するために、慣用の方法によりアニール処理してもよい。アニール処理の温度としては、例えば、結晶性樹脂の融点をmpとしたとき、(mp−60)℃〜(mp−5)℃であり、好ましくは(mp−55)℃〜(mp−10)℃、さらに好ましくは(mp−50)℃〜(mp−20)℃程度である。
【0109】
(第2の成形工程)
第2の導電層の成形工程において、光硬化性組成物の塗布方法としては、慣用の方法、例えば、ロールコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、リバースコーター、バーコーター、コンマコーター、ディップ・スクイズコーター、ダイコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、シルクスクリーンコーター法、ディップ法、スプレー法、スピナー法などが挙げられる。これらの方法のうち、バーコーター法やグラビアコーター法などが汎用される。なお、必要であれば、塗布液は複数回に亘り塗布してもよい。
【0110】
光硬化性組成物が有機溶媒を含有する場合など、塗布後は、必要に応じて乾燥を行ってもよい。乾燥は、例えば、30〜150℃、好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは50〜70℃程度の温度で行ってもよい。
【0111】
光硬化性組成物を光照射する方法としては、放射線(ガンマー線、X線など)、紫外線、可視光線、電子線(EB)などの光エネルギー線を照射する方法を利用できる。これらの方法のうち、紫外線、電子線を照射する方法が好ましい。
【0112】
紫外線を照射する方法において、光源としては、例えば、紫外線の場合は、Deep UV ランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、レーザー光源(ヘリウム−カドミウムレーザー、エキシマレーザーなどの光源)などを用いることができる。照射光量(照射エネルギー)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、50〜10000mJ/cm、好ましくは70〜7000mJ/cm、さらに好ましくは100〜5000mJ/cm程度であってもよい。
【0113】
電子線を照射する方法としては、電子線照射装置などの露光源によって電子線を照射する方法などが利用できる。照射量(線量)は、塗膜の厚みにより異なるが、例えば、1〜200kGy(グレイ)、好ましくは10〜180kGy、さらに好ましくは30〜150kGy(特に50〜120kGy)程度である。加速電圧は、例えば、10〜1000kV、好ましくは50〜500kV、さらに好ましくは100〜300kV程度である。
【0114】
なお、電子線の照射は、必要であれば、不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなど)雰囲気中で行ってもよい。
【0115】
本発明では、重合開始剤を使用せずに重合ができ、高い耐候性を有する硬化物を製造できる点から、電子線で照射する方法が特に好ましい。
【実施例】
【0116】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。実施例及び比較例で用いた配合成分、実施例及び比較例で得られた導電性複合フィルムの特性の評価は、以下の方法で測定した。
【0117】
[比重]
JIS K7112に準拠して、電子比重計(アルファ・ミラージュ(株)製「エレクトロニックデンソメーターSD−200L」)を用いて測定したサンプル密度より比重を求めた。なお、嵩高いサンプルなどにおいて、測定に適正なサンプル形状が得られない場合は、予め熱プレスで成形した後、サンプルを切り出した。
【0118】
[メルトフローレート(MFR)及びメルトテンション]
溶融混錬して調製した樹脂組成物(例えば、ペレット)のMFR(g/10分)は、JIS K7210に準拠し、キャピラリーレオメーター((株)東洋精機製作所製「キャピログラフ1D」)を用い、230℃、21.2N荷重の条件で測定を行った。また、同じ機器を用いて、上記組成物の200℃、240℃のメルトテンションの測定も行った。なお、測定条件は、押出し速度:0.05m/分、引っ張り速度:3m/分、キャピラリー径:2mmφ、ランド長:20mmでメルトテンションの測定を行った。
【0119】
[融点・ガラス転移温度]
溶融混錬して調製した樹脂組成物(例えば、ペレット)の融点(mp)及びガラス転移温度(Tm)を測定した。測定は、示差走査熱量計(DSC)(ティー・エイ・インスツルメント社製、商品名「Q2000」)を用いて、通常の熱分析法により行った。
【0120】
[第1の導電層の厚み及び均一性]
マイクロメータ((株)ミツトヨ製「デジマチックマイクロメータMDC25MJ」)を用いて、フィルムの幅方向(TD)に25mm間隔をおいて10点以上の箇所で測定し、またフィルムの流れ方向(MD)で25mm間隔をおいて10点以上の箇所で測定し、計20点以上の測定値から算術平均値を求めた。同様に、厚みの均一性(又は安定性)は、フィルム中央で流れ方向(MD)の長さ1mを、50mm間隔で厚みを測定し、得られた測定値の最大5点の平均値と最小5点の平均値を、厚み変動比=(最大平均値/最小平均値)として算出した。この比が小さいほどフィルムの厚みが安定しているとした。
【0121】
[導電性(体積固有抵抗率)]
サンプル両面にΦ3mmの穴を開けたシールを貼り、銀ペーストを塗布、テスターにて抵抗値(Ω)を測定、以下の式により体積抵抗率(Ω・cm)を算出した。
【0122】
体積抵抗率(Ω・cm)=抵抗(Ω)×面積(cm)/厚み(cm)。
【0123】
[第1の導電層の耐溶剤性]
フィルムを100mm×100mmにカットし、初期重量:A(mg)を測定した。次いで、25℃のテトラヒドロフラン(THF)中に、フィルムを完全に浸漬して24時間放置した後、取り出したフィルムの表面を拭き取り乾燥し、再び重量:B(mg)を測定した。下記式に基づいて、重量変化率(重量増加率)を算出した。
【0124】
重量変化率(%)=[(B−A)/A]×100(%)
◎:±1%未満
○:±1%以上±5%未満
△:±5%以上±10%未満
×:±10%以上。
【0125】
[第2の導電層の貯蔵弾性率E′]
得られた試験片について、動的粘弾性測定装置(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製、RSA−III)を用い、昇温速度5℃/分及び周波数10Hzの条件で、−50℃〜250℃の貯蔵弾性率(E′)を求めた。
【0126】
[第1の導電層又は導電性複合フィルムの屈曲性]
試験体(参考例は第1の導電層)を2cm×15cmの短冊にカットし、JIS K5600に従って屈曲性試験を行い、直径10mmのマンドレルで割れが発生するか否かを確認し、以下の基準で評価した。
【0127】
○:割れやひびは発生しない
×:割れやひびが発生した。
【0128】
[導電性複合フィルムの溶媒透過性]
導電性複合フィルムを10cm×10cmのサイズに2枚切り出し、硬化塗膜を外側にして3方向をそれぞれ幅1cm分溶着した。未溶着部分から、プロピレンカーボネート2gを添加し、幅1cm分溶着して密閉した。さらに、溶着部分をアルミテープでシールし、試験体とした。試験体をデシケーター中に入れ、23℃、50Rh%で静置し、重量の経時変化を、下記式に基づいて算出し、評価した。なお、この試験において、14日経過後の重量変化量(%)が0.5%以下であれば溶媒透過性に優れることを示す。
【0129】
重量変化率(%)={[(溶媒封入直後の試験体重量)−(14日経過後の試験体重量)]/(封入した溶媒重量)}×100
[配合成分]
(第1の導電層)
ポリプロピレン:(株)プライムポリマー製「E−100GPL」、比重0.90
ポリアミド12:ダイセルエボニック(株)製「L1901」、比重1.01
カーボンブラック:電気化学工業(株)製「デンカブラックHS−100、平均粒経48nm、BET比表面積39m/g、比重1.9
(第2の導電層)
3官能アクリレート:ペンタエリスリトールトリアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製「PETIA」
環含有2官能アクリレート:トリシクロデカンジアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製「IRR214K」
2官能ウレタンアクリレート:高耐候性ウレタンアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL8402」
2官能エポキシアクリレート:変性エポキシアクリレート、ダイセル・サイテック(株)製「EBECRYL3708」
光重合開始剤:ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、BASFジャパン(株)製「Irgacure184」
ファーネスカーボンブラック:導電性カーボンブラック、平均一次粒経50nm、BET比表面積33m/g、東海カーボン(株)製「#4300」。
【0130】
[第1の導電層の製造例1]
樹脂成分としてホモポリプロピレン68重量部、導電性フィラーとしてカーボンブラック32重量部を加圧ニーダー混練り機に配合し、溶融混合し、さらにフィーダールーダーにてペレットとした。このペレットの特性を測定すると、比重1.08、融点(mp)166℃、ガラス転移温度(Tm)−22℃であった。
【0131】
得られたペレットをTダイ押出し成形機に供給し、押出スリットのギャップ:0.8mmから押出温度230℃でシート状に押出し、巻き取り速度2.5m/分で巻き取って、厚み140μmの導電性シートを得た。このシートの体積固有抵抗率は8Ω・cmであった。
【0132】
次いで、ロール状のシートを巻き戻しながら、加熱ロールの表面温度140℃(熱延伸温度差=組成物融点−加熱ロール表面温度=−25℃)の二本の加熱ロールの間を、ロール荷重5kNにて、シートの両面から加熱しながら、送り速度1m/分、巻き取り速度2.8m/分で通過させることで熱延伸処理を行った。得られた第1の導電層は、厚み40μmで体積固有抵抗率が8Ω・cmであり、厚み変動比は1.1、THFによる重量変化率が0.8%であり、平滑で厚み変動がほとんど無く、耐溶剤性に優れていた。
【0133】
[第1の導電層の製造例2]
樹脂成分としてポリアミド12を70重量部、導電性フィラーとしてカーボンブラックを30重量部加圧ニーダー混練り機に配合し、溶融混合し、さらにフィーダールーダーにてペレットとした。このペレットの特性を測定すると、比重1.17、融点(mp)178℃、ガラス転移温度(Tm)50℃であった。
【0134】
得られたペレットをTダイ押出し成形機に供給し、押出スリットのギャップ:0.8mmから押出温度:220℃でシート状に押し出し、巻き取り速度1.6m/分で巻き取り機で巻き取って、厚み205μmの導電性シートを得た。このシートの体積固有抵抗率は80Ω・cmであった。
【0135】
次いで、ロール状のシートを巻き戻しながら、加熱ロールの表面温度150℃(熱延伸温度差=組成物融点−加熱ロール表面温度=−28℃)に代えた以外は製造例1と同様にしてシートの両面から加熱しながら、熱延伸処理して、導電性フィルムを得た。得られた第1の導電層は、厚み90μmで体積固有抵抗率が67Ω・cmであり、厚み変動比は1.3、THFによる重量変化率が9%であり、平滑で厚み変動がほとんど無く、耐溶剤性に優れていた。
【0136】
[実施例1〜2(第2の導電層の製造例1〜2)]
150mlの蓋付容器に、表2の割合で、アクリレートを秤量し、メチルエチルケトン(MEK)及びトルエン(TOL)の混合溶媒[MEK/TOL=50/50(重量比)]に溶解した。この溶液にカーボンブラックを添加し、自公転式混合脱泡機((株)シンキー製「ARE−250」)で分散組成物を作製した。
【0137】
得られた分散組成物を、離型紙上にバーコーターにより約50μmの厚みに塗工し、60℃で乾燥した。乾燥後の組成物に、窒素雰囲気中で、加速電圧150kV、線量100kGyの電子線を照射し、硬化塗膜(第2の導電層)を作製した。離型紙を剥離して得られた第2の導電層について、貯蔵弾性率を評価した。
【0138】
さらに、前記分散組成物を、前記製造例1又は2で得られた第1の導電層の上に、約10μmの厚みに塗工し、60℃で乾燥した。乾燥後の組成物に、窒素雰囲気中で、加速電圧150kV、線量100kGyの電子線を照射し、硬化塗膜(第2の導電層)を作製した。得られた導電性複合フィルムについて、屈曲性、溶媒透過性及び導電性を評価した。
【0139】
これらの結果を表1に示す。なお、参考例1〜2として、第1の導電層単独の特性を表1に示す。
【0140】
【表1】

【0141】
実施例の導電性複合フィルムは、柔軟で、溶媒透過性も低く、導電性も高い。これに対して、参考例の導電フィルムは、溶媒透過性を95重量%以上もあり、溶媒透過性が高い。
【産業上の利用可能性】
【0142】
本発明の導電性複合フィルムは、導電性及び耐溶剤性を要求される各種の分野に利用され、溶媒と接触する用途、例えば、電子部品、半導体素子、半導体ウエハーの保存容器、ガソリンタンク、電子・電気機器や半導体製造工場における床材や壁材、各種の電池用部材(例えば、電気二重層コンデンサー、リチウムイオン電池など部材)などの材料として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性樹脂及び第1のカーボン系導電性フィラーを含む結晶性樹脂組成物で形成された第1の導電層と、光硬化性樹脂及び第2のカーボン系導電性フィラーを含む光硬化性組成物の硬化物で形成された第2の導電層とが積層された導電性複合フィルム。
【請求項2】
第1及び第2のカーボン系導電性フィラーが、導電性カーボンブラックである請求項1記載の導電性複合フィルム。
【請求項3】
結晶性樹脂とカーボン系導電性フィラーとの割合(重量比)が、前者/後者=90/10〜55/45である請求項1又は2記載の導電性複合フィルム。
【請求項4】
結晶性樹脂がポリプロピレン系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂である請求項1〜3のいずれかに記載の導電性複合フィルム。
【請求項5】
光硬化性樹脂が、3官能以上の多官能ビニル系化合物と、単官能及び/又は2官能ビニル系化合物とを含む請求項1〜4のいずれかに記載の導電性複合フィルム。
【請求項6】
2官能ビニル系化合物が、鎖状脂肪族2官能(メタ)アクリレートを含む請求項5記載の導電性複合フィルム。
【請求項7】
2官能ビニル系化合物が、さらに脂肪族環及び/又は芳香族環を有する環含有2官能(メタ)アクリレートを含む請求項6記載の導電性複合フィルム。
【請求項8】
多官能ビニル系化合物が、3〜6官能(メタ)アクリレートである請求項1〜7のいずれかに記載の導電性複合フィルム。
【請求項9】
光硬化性組成物が、電子線硬化性組成物であり、かつ重合開始剤を実質的に含有しない請求項1〜8のいずれかに記載の導電性複合フィルム。
【請求項10】
第1の導電層の厚みが1〜200μmであり、第2の導電層の厚みが1〜100μmであり、第1の導電層と第2の導電層との厚み比が、第1の導電層/第2の導電層=1/1〜20/1である請求項1〜9のいずれかに記載の導電性複合フィルム。
【請求項11】
第1の導電層の体積固有抵抗率が0.1〜1500Ω・cmであり、かつ第2の導電層の体積固有抵抗率が1〜1000Ω・cmである請求項1〜10のいずれかに記載の導電性複合フィルム。
【請求項12】
25℃でテトラヒドロフラン中に24時間浸漬後の第1の導電層の重量変化率が2重量%以下である請求項1〜11のいずれかに記載の導電性複合フィルム。
【請求項13】
昇温速度5℃/分及び周波数10Hzの条件で−50℃から250℃まで測定した動的粘弾性試験において、第2の導電層のゴム状領域における貯蔵弾性率E′が200〜2000MPaである請求項1〜12のいずれかに記載の導電性複合フィルム。
【請求項14】
結晶性樹脂組成物を押出成形した後、得られたシートを加熱しながら延伸又は圧延処理する第1の導電層の成形工程、及び得られた第1の導電層の上に光硬化性組成物を塗布した後、光照射して硬化物を形成する第2の導電層の成形工程を含む請求項1記載の導電性複合フィルムの製造方法。
【請求項15】
第1の導電層の成形工程において、結晶性樹脂組成物を押出成形して厚み50〜500μmのシートを成形する押出成形した後、結晶性樹脂の融点をmpとしたとき、(mp−40)℃〜(mp−5)℃の温度で、得られたシートを加熱しながら延伸又は圧延処理する請求項14記載の製造方法。
【請求項16】
第2の導電層の成形工程において、光硬化性組成物に電子線を照射して硬化物を形成する請求項14又は15記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−218185(P2012−218185A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−83077(P2011−83077)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000002901)株式会社ダイセル (1,236)
【Fターム(参考)】