説明

導電性高分子化合物及びこれを用いてなる電子素子

【課題】高い電気伝導性を有する導電性高分子化合物及びこれを用いた有機電子素子、特に光電変換効率に優れ、長寿命な有機発光素子、光起電素子、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子、光トランジスタ素子を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする導電性高分子化合物(D)及びこれを含有する電子素子。


[式中、X1は硫黄原子、酸素原子、セレン原子、アミノ基又はシリル基である。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性高分子化合物及び電子素子に関する。詳しくは、例えば有機発光素子、光起電素子、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子、有機薄膜トランジスタ素子及び有機メモリ素子等の電子素子に使用される導電性高分子化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子素子とは、光エネルギーと電気エネルギーの相互変換を行う素子であり、その代表例としては、有機発光素子、光起電素子、エレクトロクロミック素子、電気泳動装置、(光)トランジスタなどが挙げられる。現在、これらの電子素子に用いられる導電性高分子組成物として、電荷(キャリア)の移動効率を増大させるための研究が多数なされている。
【0003】
例えば、有機発光素子(OLED:Organic Light−Emitting devices)は電流が流れると、電子と正孔が、蛍光性又はリン光性の有機化合物から形成される発光層で再結合することによって光が発生する、能動型の表示素子である。有機発光素子の効率の向上及び駆動電圧の低減の為には、発光層のみを用いるよりも、導電性高分子組成物を用いた正孔注入層、及び電子注入層を用いることが一般的であり(特許文献1参照)、その導電性高分子組成物の性能が重要になってくる。
【0004】
その他の電子素子に関しても導電性高分子組成物の性能が、その電子素子全体の性能に大きく関与しており、導電性高分子組成物の性能の向上が求められている。特に、バイエル社で製造され、Baytron(登録商標)Pという製品名で市販されている、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)−ポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS)水溶液は、電子素子における導電性高分子組成物に広く利用されている。
【0005】
ポリマー酸であるポリ(4−スチレンスルホン酸)(PSS)が、導電性高分子であるポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)にドーピングされたPEDOT/PSSという導電性高分子組成物は、3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)をPSS水溶液に溶かして重合させることで調製される。しかし、得られたPEDOT/PSSは、50nm以上の粒子サイズで、水相に分散した状態となり、それゆえ、PEDOT/PSSの粒子の大きさによって、電導度、有機発光素子での正孔注入能力、膜の均一性などが大きく左右される。更に、PEDOT/PSSが重合されるバッチによって、PEDOT/PSS分散液の特性が異なり、電子素子での性能の偏差を招く。
【0006】
また、PEDOT/PSS組成物中のPSSは、水分を良く取り込み、それにより素子製造プロセスの際に、不活性ガス雰囲気下で、膜を加熱することにより水分を除去しなければならない。また、PSSは、電子との反応によって分解されるため、例えば硫酸塩のような副生成物を放出し、周囲の有機膜、例えば発光層に拡散させる。このように、他の有機層への物質の拡散は、励起子を消滅させ、有機発光素子の効率及び寿命の低下を招く。
更に、PEDOT/PSSにおいて、PSS自体が導電性を有しているわけではなく、それにより、PEDOT/PSSポリマーの導電性が低下する。
【0007】
従って、有機発光素子のような電子素子において満足すべき効率及び寿命を与え得る新しい導電性高分子組成物の開発の必要性が高まっている。
【0008】
高性能な導電性高分子組成物として、フロンティア軌道理論に基づく最低空軌道(LUMO;Lowest Unoccupied Molecular Orbital)と最高被占軌道(HOMO;Highest Occupied Molecular Orbital)の差、つまりバンドギャップを狭くすることで、導電性向上を図ることができる。例えばスピロ骨格を導入したものが挙げられるが(特許文献2〜5参照)、いずれも劇的にバンドギャップを狭くすることに成功してはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第00/65653号パンフレット
【特許文献2】特開2007−327058号公報
【特許文献3】特開2001−210473号公報
【特許文献4】特開2001−210474号公報
【特許文献5】特開2007−318145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、高い導電性を有する導電性高分子化合物及びこれを用いた光電変換効率に優れる電子素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。即ち、本発明は、一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする導電性高分子化合物(D)である。
【0012】
【化1】

[式中、X1は硫黄原子、酸素原子、セレン原子、一般式(2)で表される基又は一般式(3)で表される基である。]
【0013】
【化2】

[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数7〜20の直鎖若しくは分岐のアラルキル基、複素環基又はポリアルキレングリコールから1個の水酸基を除いた残基である。]
【発明の効果】
【0014】
本発明の導電性高分子化合物(D)は、上記一般式(1)で表される構造単位を有することにより、高い導電性を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の導電性高分子化合物(D)は、一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする。導電性高分子化合物(D)が一般式(1)で表される構造単位を有することで、フロンティア軌道理論の観点から、LUMOとHOMOのバンドギャップが小さくなり、キャリアの移動速度が十分大きくなり、高い導電性が発現するものと推察される。。
【0016】
【化3】

【0017】
一般式(1)におけるX1は硫黄原子、酸素原子、セレン原子、一般式(2)で表される基又は一般式(3)で表される基であり、よりバンドギャップを狭くするという観点から好ましいのは硫黄原子である。
【0018】
【化4】

【0019】
一般式(2)又は(3)におけるR1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数7〜20の直鎖若しくは分岐のアラルキル基、複素環基又はポリアルキレングリコールから1個の水酸基を除いた残基である。
【0020】
一般式(1)で表される構造単位を有する導電性高分子化合物(D)の好ましい例としては、下記一般式(4)又は一般式(5)で表される化合物が挙げられ、導電性の観点から一般式(5)で表される化合物が更に好ましい。
【0021】
【化5】

【0022】
一般式(4)におけるX1及びX2はそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子、前記一般式(2)で表される基又は前記一般式(3)で表される基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数7〜20の直鎖若しくは分岐のアラルキル基、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキルチオ基、複素環基又はポリアルキレングリコールから1個の水酸基を除いた残基であり、l、m、n及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数であり、aは1〜20の整数である。
【0023】
よりバンドギャップを狭くするという観点からX1及びX2が硫黄原子であり、酸処理により更にバンドギャップを狭くできるという観点から、R4が水素原子でかつR5がメルカプト基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキルチオ基であることが好ましい。
また、後述の溶媒への溶解性の観点からは、R5は炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキルチオ基であることが好ましく、更に好ましくは炭素数6〜12の直鎖又は分岐のアルキルチオ基であり、l、m、n、qはそれぞれ独立に5〜15の整数であることが好ましく、aは5〜15の整数であることが好ましい。
【0024】
【化6】

【0025】
一般式(5)におけるl、m、n及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数であり、aは1〜20の整数である。
【0026】
一般式(4)で表される導電性高分子化合物の具体例としては、例えば、一般式(6)〜(9)で表される化合物が挙げられる。尚、一般式(6)〜(9)におけるl、m、n及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数であり、aは1〜20の整数である。
【0027】
【化7】

【0028】
【化8】

【0029】
【化9】

【0030】
【化10】

【0031】
本発明の導電性高分子化合物(D)の製造方法として以下の方法を例示することができる。
一般式(1)で表される構造単位が有する4つの結合に臭素原子が結合したスピロ化合物1等量(a等量)に対して、共役系モノマー(例えば2,5−ジブロモ−3−ヘキシルチオフェン)を例えば0〜20等量(b等量)を加えた溶液(例えばテトラヒドフラン溶液)に、グリニヤー試薬[例えばMeMgBr(臭化メチルマグネシウム)]を全モノマーと等量数(a+b等量)加え、例えば25℃で1〜3時間攪拌し、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド等の重合触媒を例えば1mol%加え、例えば5〜30時間還流することで導電性高分子化合物(D)を得ることができる。具体的な製造方法は、Macromolecules,2007年,40号,8807―8811頁等に記載の方法で行なうことができる。
【0032】
本発明の導電性高分子化合物(D)を含有する導電性薄膜(A)を基板上に形成することにより、導電性に優れる電子素子(P)が得られる。
【0033】
基板としては、透明、不透明いずれでも良いが、基板面が受光体となる場合には透明基板が望ましい。この透明基板としては、外部から侵入する水分やガスの遮断性、耐溶剤性、耐候性等に優れているものが望ましく、例えば、石英ガラス等の剛直板、透明樹脂フィルム等のフレキシブル基板が挙げられる。更に、優れた加工性、低コスト、軽量化といった観点から、本発明においては、フレキシブル基板であることが望ましい。透明樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド又はポリメチルメタクリレート等からなるフィルムが挙げられる。
【0034】
導電性薄膜(A)の形成に際して、導電性高分子化合物(D)以外の導電性高分子化合物(G)を併用することができる。導電性高分子化合物(G)としては、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)等が挙げられる。導電性高分子化合物(D)と導電性高分子化合物(G)の重量比率は、良好な導電性を有すれば特に限定されるものではないが、(D)/(G)=5/0〜4/1が好ましく、他の各構成材料種の組み合わせによって、最適な混合比を適宜選択することができる。
【0035】
本発明において、導電性薄膜(A)の膜厚は特に限定されない。但し、膜厚が薄過ぎると短絡し、厚過ぎると、膜抵抗が高くなる為、一般的な電子素子に用いられている膜厚、例えば20〜800nmが好ましい。
【0036】
本発明において、上述した導電性薄膜(A)の形成法は、所定の膜厚に均一に形成することができる方法であれば特に限定されないが、例えば、スピンコート法及びディップ法等が挙げられる。
スピンコート法やディップ法を用いる場合、導電性高分子化合物(D)及び必要により(D)以外の導電性高分子化合物を溶媒に溶解させて使用する。溶媒としては、炭素数1〜10の塩素系、アミド系、エーテル系、芳香族炭化水素系、アルコール系、ケトン系又は硫黄系溶剤等が挙げられ、好ましいものとしてクロロホルム、塩化メチレン、クロロベンゼン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン(以下、THFと略記)、1,3−ジオキソラン、トルエン、メタノール、アセトン、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ジメチルスルホキシド及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0037】
本発明の導電性高分子化合物(D)を有機発光素子、光起電素子、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子、有機薄膜トランジスタ素子、有機メモリ素子等に使用する場合は、上記で説明した形態が好ましいが特に限定されるものではなく、各々の素子の特性に応じて変更することができる。
【実施例】
【0038】
以下、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下において特に規定しない限り、部は重量部、%は重量%を意味する。
【0039】
(製造例1)
[下記構造式(1)で表される化合物(以下、NOctSiBr4と略記)の合成]
【0040】
【化11】

【0041】
1−n−オクチルピロール17.9部[東京化成(株)製]と臭素[和光純薬(株)製]47.9部をクロロホルム100部に溶解させた後、25℃で24時間攪拌した。濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。残渣に酢酸200部、亜鉛粉末6.5部[和光純薬(株)製]を加え、100℃で24時間撹拌した。濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトブラフィー(展開溶媒;ヘキサン)で精製し、2,3−ジブロモ−1−n−オクチルピロール(以下、DBOPと略記)16.9部を得た。
【0042】
DBOP 33.7部とメチルマグネシウムブロミド(1M THF溶液)100部[関東化学(株)製]、[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド5.4部[東京化成(株)製]をTHF100部に溶解させた後、25℃で5時間攪拌した。濃度1Mの塩酸で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン)で精製し、3,3’−ジブロモ−1,1’−ジオクチル−1H,1H−[2,2’]ビピロール[以下、(BOP)2と略記]15.4部を得た。
【0043】
(BOP)2 51.4部とテトラクロロシラン8.5部[東京化成(株)製]をTHF100部に加えた後、55℃で5時間攪拌した。酢酸エチル100部を加えた後、濃度1Mの水酸化ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、下記構造式(2)で表される化合物17.0部を得た。
【0044】
【化12】

【0045】
上記構造式(2)で表される化合物28.4部とN−ブロモスクシンイミド71.2部[和光純薬(株)製]をクロロホルム200部に溶解させた後、25℃で24時間攪拌した。濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、上記構造式(1)で表されるNOctSiBr4 60.0部を得た。
【0046】
(製造例2)
[下記構造式(3)で表される化合物(以下、SeSiBr4と略記)の合成]
【0047】
【化13】

【0048】
1−n−オクチルピロール17.9部をセレノフェン13.1部(ALDRICH社製)に変更する以外は製造例1と同様にして構造式(3)で表されるSeSiBr4 86.0部を得た。
【0049】
(製造例3)
[下記構造式(4)で表される化合物(以下、SSiBr4と略記)の合成]
【0050】
【化14】

【0051】
1−n−オクチルピロール17.9部をチオフェン8.4部[和光純薬(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして構造式(4)で表されるSSiBr4 67.2部を得た。
【0052】
(製造例4)
[下記構造式(5)で表される化合物(以下、OSiBr4と略記)の合成]
【0053】
【化15】

【0054】
1−n−オクチルピロール17.9部をフラン6.8部[和光純薬(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして構造式(5)で表されるOSiBr4 60.8部を得た。
【0055】
(製造例5)
[下記構造式(6)で表される化合物(以下、3HSBr2と略記)の合成]
【0056】
【化16】

【0057】
3−ヘキシルチオフェン16.8部[東京化成(株)製]とN−ブロモスクシンイミド35.6部[和光純薬(株)製]をクロロホルム100部に溶解させた後、25℃で24時間攪拌した。濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン)で精製し、構造式(6)で表される3HSBr2 32.6部を得た。
【0058】
(製造例6)
[下記構造式(7)で表される化合物(以下、MNBr2と略記)の合成]
【0059】
【化17】

【0060】
3−ヘキシルチオフェン16.8部をN−メチルピロール8.1部[東京化成(株)製]に変更する以外は製造例1と同様にして構造式(7)で表されるMNBr2 23.9部を得た。
【0061】
(製造例7)
[下記構造式(8)で表される化合物(以下、3DSSBr2と略記)の合成]
【0062】
【化18】

【0063】
デカンチオール17.4部[和光純薬(株)製]をDMF100部に溶解させた後、水素化ナトリウム(60%流動パラフィン分散)4.0部[東京化成(株)製]を加え、25℃で1時間攪拌した。更に3−ブロモチオフェン16.3部[和光純薬(株)製]、臭化銅(I)8.6部[和光純薬(株)製]を加え、110℃で10時間撹拌した。濃度1Mの塩化アンモニウム水溶液で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。残渣をTHF100部に溶解させた後、N−ブロモスクシンイミド35.6部[和光純薬(株)製]を加えて、25℃で24時間攪拌した。濃度1Mのチオ硫酸ナトリウム水溶液で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製し、構造式(8)で表される3DSSBr2 24.9部を得た。
【0064】
[導電性高分子化合物(D)の製造]
(実施例1)
[下記構造式(9)で表される化合物(D−1)(式中、l+m+n+q=10)の合成]
【0065】
【化19】

【0066】
NOctSiBr4 60.0部、3HSBr2 326.1部、メチルマグネシウムブロミド(1M THF溶液)1200部[関東化学(株)製]及び[1,3−ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン]ニッケル(II)ジクロリド5.4部[東京化成(株)製]をTHF100部に溶解させた後、25℃で5時間攪拌した。濃度1Mの塩酸で有機層を3回洗浄し、溶媒を減圧留去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒;ヘキサン)で精製し、構造式(9)で表される化合物(D−1)(式中、l+m+n+q=10) 1165.9部を得た。
【0067】
(実施例2)
[下記構造式(10)で表される化合物(D−2)(式中、l+m+n+q=10)の合成]
【0068】
【化20】

【0069】
「NOctSiBr4 60.0部、3HSBr2 326.1部」を「SeSiBr4 86.0部、MNBr2 238.9部」に変更する以外は実施例1と同様にして構造式(10)で表される化合物(D−2)(式中、l+m+n+q=10) 221.8部を得た。
【0070】
(実施例3)
[下記構造式(11)で表される化合物(D−3)(式中、l+m+n+q=10)の合成]
【0071】
【化21】

【0072】
「NOctSiBr4 60.0部、3HSBr2 326.1部」を「SSiBr4 67.2部、3DSSBr2 414.3部」に変更する以外は実施例1と同様にして構造式(11)で表される化合物(D−3)(式中、l+m+n+q=10) 173.8部を得た。
【0073】
(実施例4)
[下記構造式(12)で表される化合物(D−4)(式中、l+m+n+q=10)の合成]
【0074】
【化22】

【0075】
「NOctSiBr4 60.0部、3HSBr2 326.1部」を「OSiBr4 60.8部、3DSSBr2 414.3部」に変更する以外は実施例1と同様にして構造式(12)で表される化合物(D−4)(式中、l+m+n+q=10) 17.0部を得た。
【0076】
(実施例5)
[下記構造式(13)で表される化合物(D−5)(式中、l+m+n+q=10)の合成]
【0077】
【化23】

【0078】
上記構造式(11)で表される化合物(D−3)(式中、l+m+n+q=10) 289.7部をトリフルオロメタンスルホンサン[和光純薬(株)製]134.1部に溶解させた後、25℃で5時間攪拌した。減圧留去した後、残渣にピリジン79.1部を加え25℃で5時間攪拌した。クロロホルム300部を加え、イオン交換水で3回洗浄した後に溶媒を減圧留去し、構造式(13)で表される化合物(D−5)(式中、l+m+n+q=10) 1179.4部を得た。
【0079】
(比較例1)
[下記構造式(14)で表される化合物(D’−1)の合成]
【0080】
【化24】

【0081】
「NOctSiBr4 60.0部、3HSBr2 326.1部」を「3HSBr2 358.7部」に変更する以外は実施例1と同様にして構造式(14)で表される化合物(D’−1) 109.7部を得た。
【0082】
[導電率の測定]
透明基板として、大きさが25mm角のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記)フィルムを用いた。そのPETフィルム上に(D−1)〜(D−5)又は(D’−1)のクロロベンゼン溶液(濃度0.5%)をそれぞれスピンコートした後、窒素気流下で1時間25℃で乾燥し、更に25℃で3時間減圧乾燥を行い、導電性膜を形成した。導電性膜の膜厚をデジタル膜厚計DG−925[小野測器(株)製]を用いて測定し、導電性膜の表面抵抗を、Lоresta GP TCP−T250[三菱化学(株)製]を用いて4端子法により25℃で測定し、得られた表面抵抗値と膜厚から、導電率を下式により算出した。
導電率(S/cm)=1/{膜厚(cm)×表面抵抗(Ω/□)}
測定結果を表1に示す。
【0083】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の導電性高分子化合物は、太陽電池やカラーセンサー、光電変換素子を備える電子機器、電子部品等に広く適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される構造単位を有することを特徴とする導電性高分子化合物(D)。
【化1】

[式中、X1は硫黄原子、酸素原子、セレン原子、一般式(2)で表される基又は一般式(3)で表される基である。]
【化2】

[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数7〜20の直鎖若しくは分岐のアラルキル基、複素環基又はポリアルキレングリコールから1個の水酸基を除いた残基である。]
【請求項2】
前記一般式(1)におけるX1が硫黄原子である請求項1記載の導電性高分子化合物。
【請求項3】
一般式(4)で表される請求項1又は2記載の導電性高分子化合物。
【化3】

[式中、X1及びX2はそれぞれ独立に硫黄原子、酸素原子、セレン原子、一般式(2)で表される基又は一般式(3)で表される基であり、R4及びR5はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数7〜20の直鎖若しくは分岐のアラルキル基、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキルチオ基、複素環基又はポリアルキレングリコールから1個の水酸基を除いた残基であり、l、m、n及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数であり、aは1〜20の整数である。]
【化4】

[式中、R1、R2及びR3はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数7〜20の直鎖若しくは分岐のアラルキル基、複素環基又はポリアルキレングリコールから1個の水酸基を除いた残基である。]
【請求項4】
前記一般式(4)におけるR4が水素原子であり、R5がメルカプト基又は炭素数1〜20の直鎖若しくは分岐のアルキルチオ基である請求項3記載の導電性高分子化合物。
【請求項5】
一般式(5)で表される請求項1又は2記載の導電性高分子化合物。
【化5】

[式中、l、m、n及びqはそれぞれ独立に0〜20の整数であり、aは1〜20の整数である。]
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか記載の導電性高分子化合物を含有する導電性薄膜(A)を有する電子素子(P)。
【請求項7】
有機発光素子、光起電素子、エレクトロクロミック素子、電気泳動素子、有機薄膜トランジスタ素子、有機メモリ素子からなる群から選ばれる素子である請求項6記載の電子素子(P1)。

【公開番号】特開2012−111829(P2012−111829A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261156(P2010−261156)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】