説明

導電材混合組成物

【課題】ピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体と導電材との均一な混合組成物を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される構成単位により構成され、テトラヒドロフラン(THF)溶媒に不溶であるピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体を液相における重合反応によって合成した直後に、該液相において導電材を上記重合体又は共重合体に混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリジル基を含有する高分子量重合体又は共重合体に導電材を配合した導電材混合組成物に関するものであり、詳細にはピペリジル基を含有する高分子量重合体又は共重合体をアニオン重合により重合した直後の反応液相に導電材を配合した導電性に優れる導電材混合組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ピペリジル基、特にニトロキシドラジカルを有する重合体は、様々な条件において安定であるポリマーとして知られており、樹脂耐候性改良剤や二次電池の安定剤、又は電極材料等として用いられている。非特許文献1及び特許文献1には、ラジカル重合反応を用いて製造したニトロキシドラジカルを有する重合体が、非特許文献2には、アニオン重合反応を用いて製造したニトロキシドラジカルを有する重合体が、それぞれ記載されている。
【0003】
しかしながら、ラジカル重合法によっては分子量及び分子量分布を制御するのが困難であり、また、従来のアニオン重合法によっては、収率が低い上に高分子量の重合体を得ることができないという問題があった。さらにこれらの重合体は、電池用の正極材料として用いる場合、そのままではほとんど導電性が無いため多量の導電材を添加しなくてはならない問題があった。
【0004】
また、特許文献2には、ヒンダードアミン構造を(メタ)アクリル酸エステルに組み込んだポリマー型のヒンダードアミン化合物を正極、負極またはセパレータに添加することが提案されている。しかし、(メタ)アクリル酸エステル型ポリマーに組み込んだヒンダードアミン化合物は、低分子量物では電解液への溶解性が高く、高分子量物の粉末をカーボンに配合した正極材料は効果にバラツキが多く実用的ではなかった。
【0005】
【非特許文献1】Polym.J.,14(5),363(1982)
【非特許文献2】J.Polym.Sci.,Polym.Chem.Ed.,10,3295(1972)
【特許文献1】特開2002−313344号公報
【特許文献2】特開2001−210314号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、導電材料として有用に用いることのできる、ピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体と導電材との均一な混合組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討した結果、ピペリジル基含有高分子量重合体を液相におけるアニオン重合反応によって重合し、該重合体が該液相に分散している状態で導電材を配合することにより、該重合体と該導電材との均一な混合組成物が得られること、そして該組成物が導電性に優れることを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下記一般式(1)で表される構成単位により構成され、テトラヒドロフラン(THF)溶媒に不溶であるピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体を液相における重合反応によって合成した直後に、該液相において導電材を上記重合体又は共重合体に混合して得られることを特徴とする導電材混合組成物を提供するものである。
【0009】
【化1】

(式中、R1 は、水素原子、水酸基、酸素遊離基、炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素原子数1〜18のアルコキシ基を示し、R2 及びR3 は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、R4 は、水素原子、アルカリ金属、炭素原子数1〜50のアルキル基、炭素原子数1〜50のアルケニル基、炭素原子数1〜50のアリールアルキル基又は炭素原子数1〜50のハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。nは30以上の数を表し、mは0又は正の数を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液相における重合反応によって合成したピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)を重合した直後に、該液相において導電材を混合することにより、均一で導電性に優れる、ピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)と導電材との混合組成物を効率よく提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、上記要旨をもってなる本発明について詳述する。
【0012】
上記一般式(1)において、R1 で表される炭素原子数1〜18のアルキル基としてはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(パルミチル)、ペプタデシル、オクタデシル(ステアリル)等が挙げられる。
また、R1 で表される炭素原子数1〜18のアルコキシ基としては、前記アルキル基から誘導されるアルコキシ基が挙げられる。
【0013】
上記一般式(1)において、R4 で表される炭素原子数1〜50のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル(ラウリル)、トリデシル、テトラデシル(ミリスチル)、ペンタデシル、ヘキサデシル(パルミチル)、ペプタデシル、オクタデシル(ステアリル)、エイコシル、ヘンエイコシル、ドコシル、トリコシル、テトラコシル、ペンタコシル、ヘキサコシル、ヘプタコシル、オクタコシル、ノナコシル、トリアコンチル(ミリシル、メリシル)等が挙げられる。R4 で表される炭素原子数1〜50のアリールアルキル基としては、フェニルメチル( ベンジル) 、1−フェニルエチル、2−フェニルエチル、1−フェニル−1−メチルエチル等が挙げられる。また、R4 で表される炭素原子数1〜50のアルケニル基としては、ビニル基、1−メチルエテニル基、2−メチルエテニル基、プロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ペンタデセニル基、エイコセニル基、トリコセニル基等、前記アルキル基に対応するアルケニル基等が挙げられる。R4 で表されるアルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、R4 で表される炭素原子数1〜50のハロゲン原子で置換されたアルキル基としては、上記の炭素原子数1〜50のアルキル基を上記ハロゲン原子で置換したものが挙げられる。
【0014】
上記一般式(1)で表される構成単位により構成される好ましいピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)としては、具体的には、以下の構成単位により構成される重合体(又は共重合体)No.1〜No.9が挙げられる。
【0015】
【化2】

【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
【化7】

【0021】
【化8】

【0022】
【化9】

【0023】
【化10】

【0024】
本発明に係るピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体は、テトラヒドロフラン(THF)溶媒に不溶である。その要因としては、重合度が高いこと、ポリマー主鎖の立体規則性が高く結晶性が高いこと、架橋剤との共重合により高分子量化されていること等が挙げられる。
【0025】
本発明に係るピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体は、上記一般式(1)で表される構成単位より構成される重合体又は共重合体に、さらに共重合性架橋剤を共重合させて架橋構造を取るようにしたものであってもよい。
【0026】
上記共重合性架橋剤としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、2,4−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリシジルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート化合物;N,N’−メチレンビスアクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド化合物;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ブタジエン、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等のジビニル化合物等が挙げられ、中でもジ(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0027】
上記共重合性架橋剤は、本発明に係るピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体における上記一般式(1)で表される構成単位で構成される部分の合計量に対して、通常0〜10質量%、好ましくは0〜5質量%となる範囲で用いることができる。
【0028】
本発明に係るピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体は、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6、−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TMA)等のモノマー化合物をグリニャール試薬等の重合開始剤を用いてトルエン等の溶媒中でアニオン重合反応させることにより、製造することができる。
【0029】
上記アニオン重合反応において用いることができる重合開始剤は、アニオン重合用の通常の開始剤の中から選択することができ、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属;上記アルカリ金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物等の有機アルカリ金属;アルカリ土類金属のアルキル化物、アリル化物、アリール化物等の有機アルカリ土類金属;有機アルミニウム;グリニャール試薬;ナトリウムアミド;金属水酸化物;アルフィン触媒を挙げることができる。これらの重合開始剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができ、グリニャール試薬が特に好ましく用いられる。重合開始剤は、モノマー化合物1モルに対して、0.01〜0.5モルの割合で用いるのが好ましい。
【0030】
上記重合開始剤として用いられる上記有機アルカリ金属としては、エチルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、エチルナトリウム、n−ブチルナトリウム、リチウムビフェニル、リチウムナフタレン、リチウムトリフェニル、ナトリウムナフタレン、カリウムナフタレン、α−メチルスチレンナトリウムジアニオン、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム、1,4−ジリチオ−2−ブテン、1,6−ジリチオヘキサン、ポリスチリルリチウム、クミルカリウム、クミルセシウム、ジフェニルメチルナトリウム、ジフェニルメチルカリウム、ジフェニルメチルリチウム、1,1−ジフェニルヘキシルリチウム、1,1−ジフェニル−3−メチルペンチルリチウム等を挙げることができる。
【0031】
上記重合開始剤として用いられる上記有機アルカリ土類金属としては、n−ブチルマグネシウム、n−ヘキシルマグネシウム、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t−ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウムt−ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、ケチルバリウム等が挙げられる。
【0032】
上記重合開始剤として用いられる上記有機アルミニウムとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムハクロリド、ジヘキシルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ヘキシルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムクロリド;ジメチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジプロピルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジヘキシルアルミニウムヒドリド等のアルキルアルミニウムヒドリド;メチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、エチルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ)アルミニウム、イソブチルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム等のアルキルアルミニウムアルコキシドが挙げられる。
【0033】
上記重合開始剤として用いられる上記グリニャール試薬は、一般に、下記一般式(2)で表される化合物であり、好ましい具体例としては、t−ブチルマグネシウムクロリド、t−ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムブロミド、シクロペンチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムブロミド、s−ブチルマグネシウムクロリド、s−ブチルマグネシウムブロミド、i-ブチルマグネシウムクロリド、i−ブチルマグネシウムブロミド、i−プロピルマグネシウムクロリド、i−プロピルマグネシウムブロミド等が挙げられる。
【0034】
【化11】

(式中、Rは置換されていてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基等を表し、Xは塩素、臭素、ヨウ素等を表す。)
【0035】
上記アニオン重合反応に用いることができる重合溶媒は、重合反応に関与せず、かつ重合体又は共重合体と相溶性のある溶媒であれば特に制限されず、具体的には、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル系溶媒;ペンタン、シクロペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン等の飽和炭化水素系溶媒;トルエン、ベンゼン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒等を例示することができ、特にテトラヒドロフラン、トルエンが好ましい。また、これらの溶媒は、単独で又は2種以上の混合溶媒として用いることができる。これらの溶媒を使用する場合、その使用量は使用する重合開始剤の種類、目的とする重合体又は共重合体の分子量、溶媒の種類等に応じて適宜調整し得るが、反応の円滑な進行等の点から、一般的には、モノマー化合物の合計量100質量部に対して200〜3000質量部の範囲内で溶媒を用いることが好ましい。
【0036】
上記アニオン重合反応では、反応系内への水分の混入を可能な限り阻止することが望ましい。したがって、モノマー化合物、他の任意の化学物質(例えば、有機溶媒)等の系中に供給する化学物質については、できるだけ水分を含有していないものを使用することが好ましく、そのために、必要に応じて予め脱気及び脱水処理しておくことができる。また、反応は、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0037】
さらに、上記アニオン重合反応は、反応系内の反応条件が均一になるように、例えば、十分な撹拌条件下で行うことが好ましい。
【0038】
上記アニオン重合反応において、反応系の温度については特には限定されず、重合開始剤の種類、モノマー化合物の種類等に応じて適宜好適な温度条件を選択すればよいが、−100℃〜50℃が好ましく、−20℃〜20℃がさらに好ましい。また、通常、該反応の所要時間は10秒間〜72時間の範囲内である。
【0039】
また、本発明で使用するピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体と混合する導電材の種類としては、カーボン材料又は導電性高分子が挙げられ、カーボン材料としては、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛の微粒子等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素の微粒子等、カーボンナノファイバー、グラファイト、カーボンナノチューブ、非晶質炭素等の炭素質材料等が挙げられる。さらに導電性高分子としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等が挙げられる。これらの中でも特にカーボン材料が好ましく、特にアセチレンブラック、ケッチェンブラックが好適に用いられる。
【0040】
本発明に係るピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)と導電材との混合方法は、ピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)をトルエンやキシレン等の溶媒中でアニオン重合させた直後の、ピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)が溶解した状態の重合反応液相に、導電材を添加、混合する方法が挙げられる。ピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)を単離した後に導電材と混合させる方法の場合、単離した重合体(又は共重合体)が溶媒に不溶のため、導電材と混合することが困難であり、熱を加えて無理に混合した場合でも最終的にゲル化し、均一な混合物として取り出すことが困難である。
【0041】
本発明で使用されるピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)と導電材との配合質量比は、前者/後者=99/1〜10/90の範囲が好ましく、より好ましくは、90/10〜30/70の範囲であり、更に好ましくは85/15〜50/50の範囲である。
【0042】
本発明の上記ピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)と上記導電材との混合組成物は、導電性材料として有用に用いられる。特に用途は限定されないが、例えば非水電解液二次電池の正極活物質として有用に用いられる。
【0043】
上記非水電解液二次電池とは、正極、負極、セパレータ及び非水電解液を用いたことを特徴とする二次電池であり、電池の電極材料としては、正極及び負極があり、正極としては、正極活物質と結着剤と導電材とを有機溶媒又は水でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥してシート状にしたものが使用される。正極活物質としては、本発明に係るピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)の他に、必要に応じてTiS2 、TiS3 、MoS3 、FeS2 、Li(1-x) MnO2 、Li(1-x) Mn24 、Li(1-x) CoO2 、Li(1-x) NiO2 、LiV23 、V25 等から選ばれる物質を配合してもよい。なお、これらの正極活物質における化学式中のXは0〜1の数を示す。本発明に係るピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)以外のこれらの正極活物質の中でも、リチウムと遷移金属との複合酸化物が好ましく、LiCoO2 、LiNiO2 、LiMn24 、LiMnO2 、LiV23 、LiFePO4 等が好ましい。正極活物質の結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、EPDM、SBR、NBR、フッ素ゴム等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
負極としては、通常、負極活物質と結着剤とを有機溶媒又は水でスラリー化したものを集電体に塗布し、乾燥してシート状にしたものが使用される。負極活物質としては、リチウム、リチウム合金、スズ化合物等の無機化合物、炭素質材料、導電性ポリマー等が挙げられる。特に、安全性の高いリチウムイオンを吸蔵、放出できる炭素質材料が好ましい。この炭素質材料は、特に限定されないが、黒鉛及び石油系コークス、石炭系コークス、石油系ピッチの炭化物、石炭系ピッチの炭化物、フェノール樹脂・結晶セルロース等樹脂の炭化物等、及びこれらを一部炭化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維、PAN系炭素繊維等が挙げられる。負極活物質の結着剤としては、上記の正極活物質の結着剤と同様のものが挙げられる。
【0045】
正極の導電材としては、本発明の導電材混合組成物に含有される導電材以外にさらに必要に応じて配合することができる。該導電材としては、黒鉛の微粒子、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素の微粒子等、カーボンナノファイバー等が使用されるが、これらに限定されない。特に好ましく用いられるものはアセチレンブラック、ケッチェンブラックが挙げられる。スラリー化する溶媒としては、通常は結着剤を溶解する有機溶剤が使用される。該有機溶剤としては、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N−N−ジメチルアミノプロピルアミン、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
負極の集電体としては、通常、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用され、正極の集電体としては、通常、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等が使用される。
【0047】
上記セパレータとしては、通常用いられる高分子の微多孔フィルムを特に限定なく使用できる。該フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリルアミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエチレンオキシドやポリプロピレンオキシド等のポリエーテル類、カルボキシメチルセルロースやヒドロキシプロピルセルロース等の種々のセルロース類、ポリ(メタ)アクリル酸及びその種々のエステル類等を主体とする高分子化合物やその誘導体、これらの共重合体や混合物からなるフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、単独で用いてもよいし、これらのフィルムを重ね合わせて複層フィルムとして用いてもよい。さらに、これらのフィルムには、種々の添加剤を用いてもよく、その種類や含有量は特に制限されない。これらのフィルムの中でも、ポリエチレンやポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンからなるフィルムが好ましく用いられる。
【0048】
これらのフィルムは、電解液がしみ込んでイオンが透過し易いように、微多孔化がなされている。この微多孔化の方法としては、高分子化合物と溶剤の溶液をミクロ相分離させながら製膜し、溶剤を抽出除去して多孔化する「相分離法」と、溶融した高分子化合物を高ドラフトで押し出し製膜した後に熱処理し、結晶を一方向に配列させ、さらに延伸によって結晶間に間隙を形成して多孔化をはかる「延伸法」等が挙げられ、用いられるフィルムによって適宜選択される。
【0049】
本発明のピペリジル基含有高分子量重合体(又は共重合体)と導電材との混合組成物には、使用する用途に応じて、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)、紫外線吸収剤、リン系、フェノール系、硫黄系の抗酸化剤、造核剤、難燃剤、金属石けん、加工助剤、充填剤、分散剤、乳化剤、滑剤、着色染料、着色顔料、帯電防止剤、防腐剤、抗菌剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、粘度調整剤、レベリング剤、界面活性剤、蛍光増白剤、pH調整剤、増粘剤、凝集防止剤、香料等の一般に用いられている添加剤等を併用することができる。
【0050】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ビス(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス [2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル] −1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス [2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル] −1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス [2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ] ウンデカン、1,6,11−トリス [2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ−s−トリアジン−6−イルアミノ] ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニルオキシ)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン等が挙げられる。
【0051】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−アクリロイルオキシエチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三オクチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−5−第三ブチルフェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三アミル−5−(2−メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−メタクリロイルオキシプロピル)フェニル〕ベンゾトリアゾール等の2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシロキシフェニル)−4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(3−C12〜13混合アルコキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル〕−4,6−ビス(4−メチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(2,4−ジヒドロキシ−3−アリルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−3−メチル−4−ヘキシロキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等の2−(2−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジアリール−1,3,5−トリアジン類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、オクチル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ドデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、テトラデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ヘキサデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、オクタデシル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート、ベヘニル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシ)ベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;各種の金属塩又は金属キレート、特にニッケル又はクロムの塩又はキレート類等が挙げられる。
【0052】
上記リン系抗酸化剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、ジフェニルアシッドホスファイト、2,2' −メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニルオクチルホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、ジブチルアシッドホスファイト、ジラウリルアシッドホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)・1,4−シクロヘキサンジメチルジホスフィト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,5−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12−15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルホスファイト、ビス [2,2’−メチレンビス( 4,6−ジアミルフェニル)]・イソプロピリデンジフェニルホスファイト、テトラトリデシル・4,4’−ブチリデンビス( 2−第三ブチル−5−メチルフェノール) ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3−トリス(2−メチル−5−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、トリス(2−〔(2,4,7,9−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2−ブチル−2−エチルプロパンジオール・2,4,6−トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト等が挙げられる。
【0053】
上記フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、トリデシル・3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジルチオアセテート、チオジエチレンビス[(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2−オクチルチオ−4,6−ジ(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェノキシ)−s−トリアジン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、ビス[ 3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド] グリコールエステル、4,4’−ブチリデンビス(2,6−ジ第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−3−メチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、ビス [2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル] テレフタレート、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、1,3,5−トリス [(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル] イソシアヌレート、テトラキス[ メチレン−3−(3’,5’−ジ第三ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート] メタン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、3,9−ビス[ 2−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルヒドロシンナモイルオキシ)−1,1−ジメチルエチル] −2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリエチレングリコールビス[β−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート]等が挙げられる。
【0054】
上記硫黄系抗酸化剤としては、例えば、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類及びペンタエリスリトールテトラ(β−ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0056】
〔実施例1〕
窒素雰囲気下、攪拌機を付けた2リットル4口フラスコに4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TMA)135g(0.563モル)、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート6.75g(0.034モル)、n−ヘキシルメタクリレート1.35g(0.008モル)及び乾燥トルエン780mlを仕込み、−10℃まで冷却した。内温が−5℃を超えないようにシクロペンチルマグネシウムクロリドの2Mエーテル溶液14.0ml(0.028モル)をゆっくりと滴下した。そのまま−10℃で5時間攪拌してから、室温で5時間さらに攪拌した。反応溶液に酢酸34gとメタノール34gを添加して触媒を失活させてから、ケッチェンブラック28.6gを添加して、均一のスラリーとなるまで攪拌した。水/メタノール(1/9)の混合溶媒10リットルに攪拌しながらこのスラリーを滴下し、30分攪拌を続けた後にろ過および乾燥することによって濃灰色の粉体(本発明の導電材混合組成物)143gを得た。
ケッチェンブラックは100%回収できたと考えると、ピペリジル基含有高分子量重合体の収率は80%ということになり、本発明の組成物中のケッチェンブラックの含有量は20質量%ということになる。
【0057】
〔実施例2〕
窒素雰囲気下、攪拌機を付けた2リットル4口フラスコに4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TMA)135g(0.563モル)、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート4.09g(0.017モル)、ベンジルメタクリレート1.35g(0.008モル)及び乾燥トルエン780mlを仕込み、−10℃まで冷却した。内温が−5℃を超えないようにフェニルマグネシウムブロミドの3Mエーテル溶液9.4ml(0.028モル)をゆっくりと滴下した。そのまま−10℃で5時間攪拌してから、室温で5時間さらに攪拌した。反応溶液に酢酸34gとメタノール34gを添加して触媒を失活させてから、アセチレンブラック28.6gを添加して、均一のスラリーとなるまで攪拌した。水/メタノール(1/9)の混合溶媒10リットルに攪拌しながらこのスラリーを滴下し、30分攪拌を続けた後にろ過および乾燥することによって濃灰色の粉体(本発明の導電材混合組成物)127gを得た。
アセチレンブラックは100%回収できたと考えると、ピペリジル基含有高分子量重合体の収率は70%ということになり、本発明の組成物中のアセチレンブラックの含有量は23質量%ということになる。
【0058】
〔実施例3〕
窒素雰囲気下、攪拌機を付けた2リットル4口フラスコに4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(TA)127g(0.563モル)、ジエチレングリコールジアクリレート3.64g(0.017モル)、ステアリルアクリレート2.60g(0.008モル)及び乾燥トルエン780mlを仕込み、−10℃まで冷却した。内温が−5℃を超えないようにs−ブチルマグネシウムクロリドの2Mエーテル溶液14ml(0.028モル)をゆっくりと滴下した。そのまま−10℃で5時間攪拌してから、室温で5時間さらに攪拌した。反応溶液に酢酸34gとメタノール34gを添加して触媒を失活させてから、アセチレンブラック25.2gを添加して、均一のスラリーとなるまで攪拌した。水/メタノール(1/9)の混合溶媒10リットルに攪拌しながらこのスラリーを滴下し、30分攪拌を続けた後にろ過および乾燥することによって濃灰色の粉体(本発明の導電材混合組成物)105gを得た。
アセチレンブラックは100%回収できたと考えると、ピペリジル基含有高分子量重合体の収率は60%ということになり、本発明の組成物中のアセチレンブラックの含有量は24質量%ということになる。
【0059】
〔比較例1〕
実施例1と同様のアニオン重合反応を行ってから、反応溶液に酢酸34gとメタノール34gを添加して触媒を失活させて、導電材(ケッチェンブラック)を添加することなく、水/メタノール1/9の混合溶媒10リットルに攪拌しながら滴下した。30分攪拌を続けた後にろ過および乾燥することによって橙色の粉体(ピペリジル基含有高分子量重合体)113gを得た。得られたピペリジル基含有高分子量重合体の収率は79%であった。この粉体は、トルエンやTHFには熱しても全く不溶であった。そこでNMP2リットル中に分散させて100℃に加熱することによって溶解させた。そこにケッチェンブラック28.6gを添加させて激しく攪拌することによって均一のスラリーとすることができたが、温度を下げるとゲル化してしまった。そこで再び100℃に加熱することによってゲルを溶解させて、温度が下がらないうちに水/メタノール(1/9)の混合溶媒10リットルに攪拌しながら滴下した。滴下したスラリーは粘度が高く、滴下後も分散せずに混合溶媒中に粘土状の固まりとして沈下してしまい、粉体として得ることはできなかった。
【0060】
実施例1〜3の結果から、ピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体をアニオン重合により合成した直後の反応液相に、導電材を添加、混合することにより、該ピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体と該導電材との均一な混合組成物が得られることが確認できた。これに対し、比較例1の結果から明らかなように、ピペリジル基含有高分子量重合体として単離した後に導電材と混合させた場合、ピペリジル基含有高分子量重合体は溶媒に溶解しないため、導電材と均一に混合することが出来ず、粉体として取り出すことも不可能であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位により構成され、テトラヒドロフラン(THF)溶媒に不溶であるピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体を液相における重合反応によって合成した直後に、該液相において導電材を上記重合体又は共重合体に混合して得られることを特徴とする導電材混合組成物。
【化1】

(式中、R1 は、水素原子、水酸基、酸素遊離基、炭素原子数1〜18のアルキル基又は炭素原子数1〜18のアルコキシ基を示し、R2 及びR3 は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示し、R4 は、水素原子、アルカリ金属、炭素原子数1〜50のアルキル基、炭素原子数1〜50のアルケニル基、炭素原子数1〜50のアリールアルキル基又は炭素原子数1〜50のハロゲン原子で置換されたアルキル基を示す。nは30以上の数を表し、mは0又は正の数を表す。)
【請求項2】
上記導電材がカーボン材料から選ばれる請求項1記載の導電材混合組成物。
【請求項3】
上記カーボン材料がアセチレンブラック又はケッチェンブラックから選ばれる請求項2記載の導電材混合組成物。
【請求項4】
上記ピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体と上記導電材との配合質量比が、前者/後者=99/1〜10/90の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の導電材混合組成物。
【請求項5】
上記ピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体と上記導電材との配合質量比が、前者/後者=90/10〜30/70の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の導電材混合組成物。
【請求項6】
上記ピペリジル基含有高分子量重合体又は共重合体と上記導電材との配合質量比が、前者/後者=85/15〜50/50の範囲である請求項1〜3のいずれかに記載の導電材混合組成物。

【公開番号】特開2007−211145(P2007−211145A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32989(P2006−32989)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】